ボ ク と 魔 王 の 物 語
DIARY







君が
何をやってきたのか、
何を感じたのか、
何に心奪われたのか、
書き記してごらん。

それは、人間になるための第一歩、だから。
































心奪われたものって
ボクに心なんか、あるの――?
































あるとも。

もしなければ、わたしに質問などぶつけたりはしまい。

 そう、それが――心だ。
































これが   心?
































さぁ書き記すがいい。
お前の”心”を。

お前の光を
そしてお前の闇を。
































そうして、
ボクは魔王に言われるまま
綴った。

それがボクの心かどうかわからないけど。
































 綺麗だ。
 覚えておくがいい。
 綺麗、というのは、
その生き方に、その精神に対して、
つかう言葉なのだということを。
































 生き方? 精神?
魔王、ボクは唄っただけだよ?
なのに――なぜ?
……綺麗といわれたのは、嬉しいけど。
































そのものを表すのに
そのものにふさわしいものがある。
お前の場合、それは、歌、だ。
ゆえに、それこそお前の精神。お前の生き方。
































ボクの生き方?
ボクは唄っていたの?
そうして――生きてきたの?
































 その者の過去はその者でしかわからない。
 たとえどのような評価を受けるにしても。
 それは他者の視点であって、
 己の視点ではない。
































 ボクの視点?
 じゃあボクが決める。
 ボクは唄っていたんだ。
 そう――決めた。
































 そうだ。
 そう考えること。
   自律し、自戒し、自省し、自我をもつこと。
 それこそ――人間なのだ。
































 そんな難しいことはわからないよ。

 ボクはただ決めた。
 ただ――それだけだよ、魔王さん
















決めたのならば、それでよい。

重要なことは

己の意志で定めた、

ということなのだから。