クールトー君のヴァレンタイン
きました! 雄として試される日が! クールトー君、これでも前のご主人が学者先生だったこともあって、人間社会の仕組みについてもほんの少しばかし知っていたり。 ヴァレンタインにチョコが貰えればきっと地位アップに違いない! 思わず尻尾をパタパタふっちゃったり。 だってこの群れには雄は二匹だけ。そう、確率的には半分! 勝てる! いける! いけるいける! クールトー君、ニヤリとわらって待っています。 あ、ご主人様の妹が来ました。しずかに足音も立てずにやってきます。 ぴしっと背筋をたてて、でも尻尾をパタパタさせて待ちかまえていると。 ――――――あれ? あれれ? そのまま通り過ぎてしまいました。 …………。 …………。 …………。 …………(汗) こ、こほん 狼が咳払いできるかどうかはいささか疑問だけど、クールトー君は頑張って咳払いして、次にチャレンジです。雌は一匹ではないのですから! ゴーゴーです。 偉そうにしているリーダーの妹がきました。 今度もぴしっと背筋をたてて、でも頑張って尻尾をふらずに待ちかまえていると。 そのまま通り過ぎていきました。 しかも一瞥することさえしません。 …………。 …………。 …………。 …………(汗) ヤバい。ヤバいです。とにかくヤバいです。 番狼として役に立っていないといわんばかりの冷たい仕打ちに、クールトー君のハートはズタボロです。千切れて穴があいてしまって、哀しみに打ちひしがれてしまうほどです。 思わずおろろんと鳴いちゃいそうなぐらい――狼がそんな風になけるかどうかは不明ですけど。 すると次はご主人様がきました。 そうです、リーダーの妹もご主人様の妹も、やはりあてにはなりません。 こういうときこそ、ご主人様が! ご主人様だけが、クールトー君の味方なのです。 今度は背をむけてその広い背中に雄々しさを感じさせてみようと努力してみたり。 ぱたぱたぱた ご主人様のスリッパの音。 どんどん近づいてきます。 ドキドキドキ ぱたぱた……。 止まりました。止まりましたとも! ドキドキドキドキ。 「あは、クールトー君」 きたぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!! きましたともぉ! 勝利です。雄として勝利を収めたのです! すぐさま、くるりと振り返って尻尾をふりふり。 狼王の尊厳とか矜持はいったいどこに? といった風情。 でも狼王として名誉よりも実利をとるのです。 そこには割烹着のご主人様があはーと笑って、こう一言。 「もうすぐ夕飯ですから、テラスの方にいっていてくださいな」 …………。 …………。 …………。 …………(涙) 大粒の涙がひとつ、ぽろりとこぼれ落ちたり。 くぅ〜〜んと、うなづいて、とぼとぼと敗残者としてテラスへと向かうのでした。 クールトー君も雄いや漢です。雌から親愛の印がもらえないぐらい、どうってことないです。狼王の矜持に従って孤高にいきるのです。 ………………ぐっすん。 テラスにいくと、あの黒猫がいました。 どきどき そっと話しかけてみます。 孤高に生きるといった舌の根もかわかないまま、同じ四足動物として、チョコは? とつい尋ねてみたり。狼王の矜持は棚の上に置き去りですとも。 すると黒猫の返答に、クールトー君、びっくり。 なんと、 ヴァレンタインは 2日前 だったのです。 俄然、元気です。もりもりです。もりもりのもりもりです。 貰えなくて当然なのです。 2日前なんですから! やっほーです。 つい蔑ろにされてしまったかと思ってうなだれていた尻尾がぴぃんと伸びて。 いつものクールトー君の力強い姿になりました。 そうだ。そうなんだ。 クールトー君は目を輝かせて、来年チョコでその体が埋もれる夢をみて、にんまり。 ……でもクールトー君、2日前に貰えなかったでしょう? そんなことに気づかないクールトー君は、とても幸せな気分になったそうな。 おしまい あとがき
ヴァレンタインものです。えぇ時間もあわせてズらしました。クールトー君、頑張れ(笑) クールトー君シリーズは20作に1作の割合だった予定だったのに(苦笑) まぁそれもすべてはクールトー君の可愛さゆえということで。 ……クールトー君、人気投票で何位になったのかな? 意外な順位だったらSS書きます(笑)
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