頭が真っ白になる。
 朱鷺恵さんの時には、なんとかうまくいったのに……。
 なぜ
 どうして
 …………
 わからない。

 呆然としている俺に、一子さんは話しかけてくる。

「若いんだから気にするな」

 そう言われても気になってしまう。
 どういっていいのか、わからない。
 なぐさめてくれても――。
つい、飛び散った白濁液を見つめてしまう。
すると、一子さんは、俺の分身をゆっくりとこすり上げる。
粘液がぼたぼた落ちていく。

「一子さん、いったい……」

 あの白い指が俺の出した白濁液で汚れていく。
 それでもかまわずしごく。
 出したばっかりで敏感になっているそこを責められて、思わずうめき声をあげた。
 あのライターをいじるような指捌きで、俺の陽根を弄ぶ。
そしてある程度回復すると、

「さ、今度が本番だ……」

 ぶっきらぼうの優しさに包まれて、俺をまた導いてくれる。
 痒みに似たニブい痛みが分身に残ったまま、入れた。
 熱い。
それが最初に思った感想。
 溶けていく。
それが次の感想。
 思わず、腰を振る。
 何にもっともっと入れたくて。
 もっと溶けたくて。
 もっとひとつになりたくて。
   この悦楽に導かれて、腰を振った。

「がっつくな……といった……ろ……」

一子さんは、受け入れながらも、また指導してくれる。

「ただ――つくだけじゃ駄目だ」

でも止まらない。
ただただ高まりを目指して――。
腰の奥からむず痒さが昇ってくる。
 たまらない。
 そして――。
また爆ぜた。
そのまま肉体どころか魂まで出してしまったかのような、放出。
 気持ちよくて、痙攣しそうなほど。

「……駄目だ、有間」

彼女はそっと俺を抱きすくめて、耳元で言う。
 煙草の匂いとあの甘い香り。

「男だけ先にイっても、不合格だぞ」

そして頬に口づけする。

「女はズルいものだ。言ったな。
 だから、イったふりをする。男にあわせてな。
 嬌声をあげて、媚びを売る」

ここでいったん言葉をきる。

「だから有間。ちゃんと女を本当にイかせるように努力しろ。
――それがイイ男の条件だ」

そして、入れたままの俺の分身は締め付けられる。
 声が漏れるほど、たまらない。

「まだだ。頑張れ」

 出したばかりのそれを、一子さんの女は締め上げ、こねてくる。

 まだ固いままのそれを突き入れる。
 達したばかりのそれはやはり感覚が鋭くて、痛いぐらいである。
でも熱く、とろけていく。

「……」

一子さんの指導がなくなる。
見てみると、目を閉じ、唇を噛みしめ、何かに耐えているようだ。
何度も腰とを入れる。
 腰をつきいれるだけでなく、回してみる。
 雑誌やらなにやらで読んだ知識を総動員して、目の前の女性のために感張る。

「い……いい……ぞ、有間……あぁ!」

彼女ははじめて感じてきたのか、しがみついてくる。
背中に爪が立つ。
 痛い。
 でもそれでも腰の動きは止められない。
 そして口づけする。
 今度はしたこともないような――舌と舌をからめるような激しいモノ。

「……いい」

 彼女は脚も組み合わせ、腰に巻き付けてくる。

「いいぞ、もっと……もっとっ!」

 彼女が感じてくれる。啼いてくれる。喘いでくれる。
それだけで頑張れた。
 気が遠くなりそう。
 つりそうなほどの勢い。
 すぐにでもたっしそうなほどのとろとろの熱壺に入れながらも、耐えていた。
 彼女がいくまで。
 イかせるまで。
 男として頑張らなくてはならない。
 しかしその淫らな喘ぎ声が。
 甘い吐息が。
 しなやかな肉体が。
 柔らかな姿態が。
 たまらない。
 淫らな水音が響く。

「――――ああああ」

 たかまってきたのか、一子さんは首を降り始める。
 爪をたててくる。
 たてられるたびに甘露な電流が神経を流れる。
 それに痺れて、喘ぐ。
 秘裂がぐぐっと飲み込み、きゅぅっと絞り込む。
 柔らかくでも強く絞り込まれる。
 どろりと溶けた熱いなにかに突っ込んでいて
 そのままとけていく快感。
 快楽に身がとろけいく。とろけていく。

 「…………あああああっ!!!」

 そして一子さんは抱きつき、噛みついてくる。
 とたん、俺は達した。
 あついドロドロとしたニブい痒みは、陰嚢から昇り、女へとそそぐ。注ぎ込む。
 同時に彼女達して、享楽に躰をうち震わせた。
 ………………
 …………
 ……
 …




















 煙草に火がつけられる。
今回は銀のジッポー。
紫煙が立ち上る。

 心地よい脱力感に包まれ、ベットの上でまどろんでいた。
 一子さんは紫煙を吐き、今さっきまでの嬌態と煙草にまどろんでいるようだ。

「……ま、たまには恋人プレイも悪くないな」

 ………………
 …………
 ……
 …
 今なんとおっしゃりました、イチゴさん?
 ガバッと起きあがる俺に対して、にやりと笑う年上の女性。
 めじりにほのかに赤く余韻が残っていて、とても淫らに見える。
 いや、そんなことじゃなくて――プレイって……
 ………………
 わからない。
 ワカらない。
 ワカラナイ。
 目の前の女性どころか、全世界の女性がわからなくなった気がする。

「まぁ気にするな、有間」

煙草をうまそうに吸いながら言う。

「もぅ大丈夫だな」
「――え」

そして微笑む。
そこにいるのは、今までの淫らな女性ではなく、いつものイチゴさん。
 なにかわかったような気がした。
しかしそれをつかむ前に。

「ただいまーっと、姉貴いるのか?」

有彦の声で心臓が止まる。
わたわたとする俺を前に、イチゴさんは冷静に服をなげつけて、窓を開ける。
 幸いイチゴさんの部屋は一階で、脱出に便利そうである――ってなぜ慣れているんですか、イチゴさん。

服をとにかくひっかぶって、外へ出る。

 今抱いたばかりの女性は、餞別とばかりに、吸っている煙草を俺にくわえさせる。

「ん――」

しばし考え、イチゴさんは言葉を紡ぐ。

「今度は間男プレイもいいかな」

 いったいなにを考えているのでしょうか、イチゴさん。

 そしてかすかに笑いながら、片目を閉じ、そして窓を締める。

「うるさーい、わたしがいる時は静かにしろといったろ」

と、いつものイチゴさんの声が聞こえてくる。
 夜風に吹かれながら、庭先で服を整え、靴を履く。
 ふと、口にくわえている煙草に気づき、吸ってみる。
 むかむかするはずなのに――。
 それはとても、甘い香りが。
 一子さんの香りがした、気がした。


あとがき

 一子さんの18禁を思いついたのは、早2日前。
 まだ一子さんの性格がつかめていなくて、少し性格がおかしいところがるかもしれませんが。
 それは瑞香の技量不足というものです。
 一子さんファンの方、ゴメンなさい(と先に謝っておく臆病なわたし)。
 しかし、書けてしまうモノですね。
 えぇ、びっくりです。

 本当は「テレビという情景」をまとめるでしたのに――なぜか違うのを書いています。

 朱鷺恵さんか一子さんでいこう、と最初から考えておりました。
 というのは、絶倫超人志貴は誰かにインプリティングされたに違いない、とふんでいたからですね。
 シエル先輩にいきなりバックとか、秋葉でも指いれちゃうとか、一人3回とか、こういうところ、初体験かその近くで強烈なインパクトをうけないとしませんからね。ふつー。
 となると。
 最初朱鷺恵さんと転げるようにおちて、開発(笑)されていく志貴くん、というものよかったのですが。
 煙草と食卓のシーンはどうしても、一子さんでしたので。
 一子さんにしてみました。

 まぁなんというか、楽しんでいただければ――妄想炸裂とか爆裂とかいわれそうですが(笑)、幸いです。

 では別のSSでお会いしましょうね。



24th. April. 2002 #021

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