起きないのが悪いんですからね 「……兄さん」 そう言ってわたしは兄さんの部屋をノックする。 わたしは時折こうして、消灯時間が過ぎた後、兄さんの部屋を訪問する。 兄さんがいることを確認するために。 兄さんはバカです。 愚か者です。 愚鈍です。 唐変木です。 朴念仁です。 わたしがこんなにも心配しているというのに、勝手に出ていって大怪我をすることも……。 本当に兄さんは莫迦です。 こんなにも兄さんを心配しているというのに、それに気づいてくれなくて、みんな平等に愛してしまうから……みんなに不安を与える。 ――なんて、酷い人 でも兄さんの良いところはそこで、とても素晴らしいところで、だから――止められない。 何も知らない兄さんをまったく別の所につれていって絹に包み込んでこれ以上ないほど大切に、そして幸せに生きて欲しいというのに――。 幸せの中、ただ微睡んでいて欲しいというのに。 なのに、夜歩きする。 どんなに寝心地の良い揺り篭を用意しても、兄さんはそこから出ていってしまう。 だから、わたしはこうして時折兄さんの部屋を確認する。 ノックしても返事はない。 まぁ外出していても、就寝していても返事はないのだから、これはただの礼儀作法。 そっと扉をあける。 何もない部屋。 ベットと机とクローゼットとそなえつけの暖炉だけ。 なんて殺風景。 ここにくるたびに兄さんの心が見えてしまう。 何にも執着しない、何にも拘らない兄さん。 執着してしてほしいのに、 拘って欲しいのに、 そう願っているのに、 兄さんはそれらをばっさりと切り捨ててしまう。 何もない。 だから――わたしは怖い。 兄さんはふらりとわたしを見捨てて出かけてしまいそうで。 どこか遠くへ出ていってしまいそうで。 別れの挨拶も告げずに消えてしまいそうで。 もっと――もっとこの部屋が荷物でいっぱいになればいいと思うのに。 そうすれば兄さんはどこにも行かないと思えるのに。 でも――。 兄さんは何もいってくれない。 いってくれれば何でも買って差し上げるというのに。 わたしに頼っていってくださればいいのに。 何も――言ってくれない。 だから――怖い。 そっとベットに近づくと、兄さんは静かに寝ていました。 その姿を見て、思わず安堵の息を吐き出します。 月の光で差し込み、顔を照らしています。窓枠の陰がかぶり、コンストラクトができていて――しばし見惚れます。 静かに深く眠る兄さん。 その姿はまるで死んでしまっているように。 永遠に眠り続ける、眠り姫のよう。 その鼻梁 その唇 その眉 ずっと見惚けてしまいます。 このままずっと時が凍りついてしまえばいいのに。 何もない世界でただ兄さんとわたしだけ。 ふたりっきり。 それ意外、なにもない世界。 そしてこんな風にずっとまどろんで、わたしの側にいてくれればいいのに。 なぜ、わたしに頼ってくださらないのですか、兄さん。 すっと手が伸び、その頬を撫でます。 血の通っていないような冷たい感触。 まるで――死んでいるよう。 死んでいればいいのに。 ついそんなことさえ思ってしまう。 死んでいれば――もうここから居なくなるなどということはない。 わたしの側から居なくなるなどということはけっしてない。 一緒に、わたしが死ぬまで一緒に、ずっとずうっといられる。 そして兄さんを綺麗な棺桶の中を花で埋め尽くして静かに眠らせてあげる。 そして毎日毎日 それを見ながら過ごすわたし。 話しかけるわたし。 なんて――ひどい妄想。 でも――なんて甘い妄想。 こういうのは妄執というのでしょうね――兄さん。 もう一度撫でても兄さんはピクリともせず、ただ静かに横たわっているのみ。 今度は兄さんの瞼にふれます。 次は鼻。 そして唇。 何の反応も示さない。 つい怖くて、胸に手を当ててみる。 すると心臓の鼓動が聞こえて、ほっとする。 死んでいた方がいいと思っているのに……死んでいると思って慌てるなんて――。 なんて愚かなんでしょうね。 兄さんが目の前にいても、 兄さんに触れていても、 兄さんのぬくもりを感じていたとしても、 それでも なんて――遠い。 そして触れているその意外と引き締まった胸にときめく。 引き締まったその体は意外に筋肉質でしなやかで、わたしのような女とは違う。 そっと胸を撫でてみる。 まずは爪先で。 あの傷痕を撫でてみる。 この傷痕。 わたしとの契約の証。 兄さんがわたしのものという証拠。 わたしが兄さんとともにいるという契約。 わたしの兄さんであるという――約束。 その醜く引きつりみみず腫れの傷痕が愛おしくて、 だからそっと触れてみる。 あのときを思い出す。 この傷が血まみれで、どんどんあふれてしまって、どうしようもなかった。 そこから『生命』が流れ落ちていくのがわかった。 キラキラと輝く生命の奔流。 それがこぼれ落ち、兄さんの肉体から枯渇していくのが『視えて』しまった。 このままでは死んでしまう。 そのときわたしにはできるとわかっていた。 止める方法がわかった。 補えばいい。 無くなった分をわたしが背負えばいい。 ただそれだけ。 だから、救えるとわかった。 あのとき、わたしは唯一のものを選んだのでしょうね。 父槙久でもなく、兄四季でもなく――たった一人、唯一の人。 お兄ちゃん そのみみず腫れをそっと触れるか触れないか、愛おしく撫でる。 まるで愛撫のよう。 「……兄さん、起きて下さい」 わたしはそういって寝間着のボタンを外す。 そしてその鎖骨を撫でる。 なんて太い骨。 男性の骨。 そのたくましさにくらくらしてしまう。 そしてそこに口づけする。 ずっと長く吸う。 そして離れる。 あつく粘ついた息が漏れる。 躰が熱かった。 火照っていた。 「……兄さん、まだ起きないのですか」 その鎖骨に残ったキスマークにとても自分を感じて、身震いしてしまう。 わたしのものだという所有の印。 だからまた口を胸に這わせる。 少ししょっぱい汗の味。 とても男の匂い。 その匂いで頭がどんどん胡乱になっていく。 馬鹿になっていく。 愚鈍になっていく。 舌を這わせ、口づけし、そして吸う。 胸にキスマークをたくさんつける。 わたしのもの。 兄さんはわたしのもの。 わたしの――兄さん。 指先でさらにボタンを外していく。 「……兄さん」 呼びかけるけれども、まだ起きない。 ――起きない兄さんが悪いのですからね。 そして今度は兄さんの乳首を吸う。 舌で強く押し、舐め上げ、吸い、そして唇で挟む。 それでも兄さんは反応してくれない。 わたしは腰の奥がジンジンと痺れ、その疼きに従って、兄さんの乳首を弄ぶ。 その意外に柔らかい感触を十分に堪能する。 感じているのか乳首は少し勃起していた。 男の人でも乳首が勃つことに軽い驚きを覚えながらも、歯を立ててみた。 兄さんが甘く息を吐いた。 ようやく反応してくれたので、もっと嬲ってみる。 ボタンをもっと外し、今度は腹筋を撫でてみる。 引き締まっていて、割れていた。 よくボディビルダーでみるようにあんなにくっきりとはしていない。 でも寝ていて弛緩しているというのに、兄さんのそれは割れていて――それがとても好ましかった。 男を感じさせて。 逞しさを感じさせて。 ゆっくりと舌をはわせていく。 そのわれた筋肉ひとつひとつの繊維に沿って舐め上げる。 そしておへその中に舌を入れてみる。 兄さんは微かに躰を動かし、首をふる。 いつの間にかわたしも荒い息をしていた。 体中に淫靡なざわつきが這いまわり、妖しい刺激が体を疼かせていた。 まだ下着は濡れていないけれども、秘肉の奥には、熱い蕩けるような悦びのしるしがわきあがろうとしているのを感じた。 そして――。 寝間着のスボンに手をやる。 生唾を飲み込んだ。 アソコがうずく。 そっとずらそうとするが、寝ているためお尻にひっかかって脱げない。 それでも兄さんは起きない。 ――悪いのは兄さんですからね。 そしてわたしは股のところにおそるおそる手を入れてみる。 布地越しでもそこに男があることがわかった。 そして入れてみると、パンツそれともトランクス? ごしに触れた。 布地越しでも熱かった。 今までのことで興奮しているのか、熱く逞しい。 触れるだけで躰がわなないてしまう。 熱く固いそれはわたしのオンナをひどく疼かせた。 何もしていないというのに、アソコがじっとりと熱くなっていく。 女の蜜がゆっくりとたまっていくのがわかる。 触れている指先も熱くなっていく。 それがじわじわと広がっていき、全身がまるで心臓になったかのよう。 ――なんて熱い。 熱くてたまらなくて、口を半開きにして震えるように息を吐く。 このねっとりとした息を吐けば少しでも涼しくなれるかのように。 でも、実際はそうでなく。 もっと熱い高ぶりが。 うねりとなって昇ってくる。 全身の産毛一本一本がそそり立つような、そんな感触。 気持ちよすぎて、トリ肌が立ってしまっていた。 何もしていないのに、ただ触れているだけだというのに。 わたしは興奮しきっていた。 いやらしい滴がこぼれ落ち、下着を濡らしてしまいそうなほど。 そして手を太股の方へまわして、足の方から手を下着の中へ入れる。 まずふれるのは柔らかくしこったなにか――たぶん陰嚢。 そして恥毛。 それから――あれ。 直接触れると熱く脈打っていて。 そういう知識はあるというのに、激しく動揺した。 思わず媚声が漏れる。 つい太股を擦りあわせてしまう。 熱く潤んできて、いやらしい女の蜜がこぼれてきそう。 なんてはしたない、とは思うのだが。 すべてこれは―― 起きない兄さんのせい。 起きないのが悪いんですからね。 そして指でそっとなぞってみる。 とたんびくんと跳ね、その生々しさに声を失ってしまう。 これが兄さんの……兄さん、なのね……。 また生唾のを飲み込むと、その茎にそって指を這わせる。 それから伝わる熱さは、たぎる血潮を感じさせて、とてもあおり立てる。 そして湯気がたちそうなほどのねちっこい男の匂いがわたしを駆り立てる。 手のひらから伝わる脈動、かすかなうめき、ますますふくれあがる手の中の肉棒。 その感触が その匂いが その熱さが わたしをますます胡乱にさせてしまう。 わたしは躰にある熱情に従って一心不乱に擦り上げる。 兄さんの匂い、兄さんの固さ、兄さんの熱さ、兄さんの逞しさ――それらがわたしを責め立てる。 そして先からなにかぬるぬるとした液で、ぬちゃぬちゃとしてくる。 その音が淫らに響いて、それをこすりつけるようにしごく。 男根が狂わせていく。 必死に太股を擦りあわせながら、兄さんのをしごく。 その指先からの欲望と、オンナからの熱いとろみがどんどん体中にいっぱいになっていって。 カラダが燃えるよう。 たちまちのうちに全身から汗が噴き出してくる。 兄さんを求めるただのオンナになっていく。 悦びをもとめて、兄さんを求めて、すすり泣く。 兄さん わたしのにいさん 秋葉のおにいちゃん 子供のころと違い、思春期を迎えた躰がわななき、オンナとして男を、オスを求めてしまう。 性欲であふれかえっていた。 その熱いとろみが、切ないような渇きが、わたしを蕩けていく。 卑猥な感情がどんどんとろみとなってわき上がり、全身を嬲っていく。理性は弄ばれていき、どろどろに犯されていく。 手の中の熱い塊が神経をふやけさせていく。はっきりとした意識が保てない。 何度も何度も熱く粘ついた息を吐くというのに。 それはどんどん躰に満ちあふれていく。 そして兄さん自身をなんとか外へと導き出す。 こわばったそれをスボンから出すのはとても大変だったけれども。 出し終えたとき、その逞しさに痺れていた。 雄々しく立派な兄さん自身は時々脈うち、生命そのものに思えた。 また知らずのうちに生唾を飲み込むと、そっとショーツを脱いだ。 脱ぐだけで、アソコから熱いものがこぼれてきそうだった。 ちらりと兄さんを見るけれど。 まだ目覚めず、気づいてもいなかった。 気づかない兄さんが悪いんですからね。 そしてまたがると、そっと腰を下ろしていった。 触れるとその熱さに痺れてしまう。 ぬちゃり、と――粘膜どうしが触れ合う淫らな音。 ゆっくりとゆっくりと入ってくる感触に痺れていった。 その甘い痛みのような痒みのような痺れは、飢えたオンナを癒していく。 淫唇をかきわけ、入っていくこの感触はたまらず、背筋に甘い電撃が幾度も疾り、脳髄までもが熱くいやらしいとろみにぐずくずにとけていく。 そしてついに兄さんの肉塊をすべて納めた時の充実感といったら! アソコに熱い兄さんでみっちりといっぱいになって、粘膜がぴったりと吸い付き、兄さん自身の形が鮮明に感じられた。 中でびくんと動くのさえ感じられて。 愛おしさと性悦がこみ上げてくる。 この充実感にしばし浸ると、今度は腰を上げて抜きさる。 でっぱったところに擦られてえぐられパチパチとスパークする。 淫らな水音が響く。 抜けていくその切なさが、入ってくるその期待が、そしてみっちりとはいった充実感が。 ――わたしを狂わせる。 腰を大きく動かし、前に後ろに、時には浅く時には深く。 その淫らな本能に従って、腰をふるう。 じんじんとしたものが、どろどろとしたものが、熱いとろみが、わたしを犯していく。 そして兄さんの胸の傷痕に触れながら、これまでになく大きく腰を動かす。 もうそれしか考えられない。 息も上がっているのというのに。 息する気さえおきない。 悦楽に溺れ、ただ貪るわたし。 ゆっくりとゆっくりと天国へと近づいていく感じがする。 その切なさに急き立てられて、腰をふる。 じりじりとした焦燥感がわたしの神経を灼く。 ゆっくりとしたうねりが急ピッチへと代わり、そのリズムに合わせて腰をふるう。 兄さんのそれがわたしの秘所をえぐり、擦り上げ、官能を高めていく。 兄さんとともにいる、というこれだけの感覚が、わたしを高めていく。 そしてそれがわたしの気持ちいいところにあたりねより深い快感を引き出してくれる。 そこに何度もあてる。 躰がわななくほどの悦楽が背骨をぐにゃんぐにゃんにしてしまう。 力が入らなくなっていく。 兄さんを感じたくて締め上げているはずなのに。 そこはとろとろにゆるみ、もっと深く兄さんを受け入れようとしている。 貫かれていく感触がより深くなり、内蔵が圧迫され、そのまま口から出てしまいそうなほど深く挿入されている。 兄さんのもので体中がいっぱいになる快感に酔いしれる。 腰骨はすでにとけてなくなり、躰を起こしているのも辛い。 でも蕩ける愉悦に導かれて、腰は淫らにふるう。 もっともっとふるう。 そして高まりが、そのまま意識を上へ上へと持ち上げていく。 意識が肉体から、躰から離れようとする。 突然の浮遊感。 真っ白になる。 一瞬だけ達する。 それを求めて。 また腰を大きく揺する。 また白くなる。 真っ白になる。 意識がとぎれる。 でも躰には熱いとろみがまだまだ残っていて。 幾度も幾度も果てることなく、わたしを絶頂へと導いてくれる。 部屋はわたしの淫らな匂いに満ちあふれ、 鼻にかかった吐息だけが響き、 興奮の坩堝に飲み込まれながらも、 愉悦の波紋が全身に広がっていく。 神経を焼き尽くすほどの灼熱した悦楽、女の悦びだけで埋め尽くされてしまう。 肢体を、心を、魂までも、ばらばらにうち砕き、蕩けされてしまう。 そして淫らに乱れる。 すべてがそれだけになってしまったかのように。 漏らしてしまったかのように、あそこが濡れている。 垂れ流している。 それほど、気持ち良くてたまらない。 よがってしまう。 たまらない。 もしかしたら本当に漏らしてしまっているのかも知れない。 それほどの充実感。 声を上げる。 あげてしまう。 嬌声というものではない。 叫び声。 よがり狂ったメスの淫乱なうめき。 幾度も押し寄せる絶頂の荒波に、もう成す術もなく弄ばれる。 頭の中を悦びで染め上げられる。 脳天まで貫くような鋭い閃光に身を任せ、全身を思いっきりのけ反らせて、その悦びに溺れ、そして浸った……。 志貴の体が朝日に身震いする。 そして眼鏡をとり、延びをする。 まだ――翡翠はきていないようだ。 首をならして――ふと布団の上になにか白い物があることに気づいた。 それを手に取ってみると、濡れていて。 そしてそれがなんだかわかると志貴の頭は真っ白になった。 それは女物の下着――ショーツ――で、淫らな匂いと液でじっとりとしていた。 「……なに……これ?」 それがなにを意味するのかは、志貴にはどうしてもわからなかった。 それよりも、翡翠がくる前にこれをなんとかしないと、ただ焦るばかりであった。 - Fin -
30th. May. 2002 #33 |
あとがき |
これは実はMoonGazerさんのシチュ固定大会「のーぱん秋葉」に送る予定の作品でした。 今日が締め切りなので一気に仕上げたのですが……でも最後にのーぱんであるということを匂わせるだけであって、あまりにも変則的なため、今回は自らボツにして、自分のサイトに掲載することにしました。 たぶん、こういうのも、 阿羅本さん的にはOKなのでしょう。となると、はっきりいってこの固定シチュ大会にはまったくといっていいほど縛りはないのですけどね(笑) まぁ自ら律するということで(笑) 最初のシリアスなシーンが一転して妄想炸裂秋葉さんになるのは、書いていて楽しかったです。 もぅ起きなさいよ志貴くん、と言いたくなるシチュエーションでした(笑) シチュエーション的には、俺の「永遠」の秋葉さんバージョンともいえますけど(笑) 寝込みを襲ってしまったのは、やはりMoonGazerさんのbbsの書き込みが引き金でして(笑) ながされていますね、わたし(笑) まぁこのとおり、bbsにアップして予定表は一切無意味であることがわかってもらえると思います。 神様きたら書いちゃうから。 一気に。 何の前触れもなく。 構想もなにもなく。 というわけでbbsにアップしたのはあくまで目安なんですよ(笑) そう受け取ってくださいませ。 追伸 と思ったら、MoonGzserさんの締め切り延びてますね(笑) もっと書け、書くんだ、と言われているようです(笑) |
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