この作品は無名SSスレで開催された品評会作品である Never End に頂いたご批評ご意見を加味して加筆訂正したバージョンです。
 違いをお楽しみ下さい。


Passion ( Never End 改 )


 ラウルは目を覚ました。体が熱く、どこかぼんやりしていて、息は粘っこく、すぐに酔っているとわかった。
 聞こえるのは叩きつけるような激しい雨音。まるで耳鳴りのように低く響いてくる。そしてそれに負けないような祭りの声。祭りの音楽。祭りの狂乱。この激しい雨音に負けず、ここまで響いていた。
 今日はリオのサンボドロモのサンバパレード・コンテストの日だった。バーを経営しているラウルにはもっとも忙しい時期。
 こんなどしゃぶりだというのに――とちらりと外を見る。ストリートの方は煌びやかな電飾の光が暗闇の中に浮かび上がっていた。
 聞こえてくるのは自然に躰が揺れてしまうリズム。昂揚するいきいきとしたメロディ。生への喜びに満ち溢れた音楽サンバだった。
 周囲を見回してみると、照明はつきっぱなし。テーブルは隅に片づけられ、中央でダンスしていたという記憶はあった。そうしていつものとおりにみんなに奢り、また奢られて、もう一杯と、あと一杯とグラスを重ねて、それから――――はて?
 少し濁った青い瞳で周囲を見回し、白くてもじゃもじゃな髭を擦り上げながら、顔を手のひらで拭った。顔は寝汗と脂にまみれていた。ねっとりとした脂を手のひらで拭うと、水面に浮かんだ魚のように大きく口を開けて喘いだ。アルコールとピンガーの香りが吐き出される。
 遠くからはカルニバルの音。地響きにも似た歌と音楽。サンバのアップテンポの2拍子をかき消すような雑音あまおと
 まわりにいるはずの若い奴らはどこかに行ってしまっていた。横目でレジを見ると、一応お金はある。しかし少ない気もする。そもそもレジが開いていたかどうか記憶が定かではない。
 盗られていてもご祝儀みたいなもんさ、とラウルはうそぶくと、一気に立ち上がる。酔いもあって一気に目が回る。軽い酩酊感と浮遊感とちょっと気持ち悪さ。
 しかしそれがよかった。まだ宿酔いになっていないために頭は痛まない。まるでぬるま湯に浮いているような感じ。ゆらりゆらりとクラゲのように世界が揺らめき、アルコールに浸った神経が心地よい。
 グラスに残っていたカイピリーニャを一気にあおった。溶けた氷で薄くなった味が爽やかで心地よい。
 薄まったアルコールの刺激と冷たい氷、鮮烈なライムととろりとしたカサーシャの香りが乾いた喉に沁み、ラウルは盛大に溜め息に似た歓声を上げた。
 自分の店を見回す。煤けた場末のバー。バーというのもおこがましいような酒場。今年もいつものとおりお客に酒を振る舞い、振る舞われるという、リオのカルニバルに付きものの舞踏会バイレを行っいたはずだが、どうやら酔ってつい寝てしまったらしい。酔って寝てしまうだなんて、儂ももう歳だなと思う。
 あの夜が沸騰し、闇が滾っているリオのお祭りに客はラウルを置いて出ていってしまったのだ。ざわめきが大気さえも揺すぶり、揺り動かすほどの熱狂の坩堝へと向かうのは当然だとラウルは思った。あの狂乱。降りしきる雨にも関わらず、群衆は声をあげ、陽気なリズムのままに踊り続ける夜。
 喉を震わせ、躰を震わせ、心を震わせて、なお騒ぎたてているだろう。強烈なサンバのリズムに汗みどろになっての陽気ならんちき騒ぎ。血が騒ぐままに、ただひたすらに、情熱的に、狂おしいまでに騒ぎ立てる若々しい祭り。
 そんなエネルギッシュな情景を思い浮かべて、ラウルはかぶりをふった。
 やれやれ、と頭に手を置くと髪が薄く、地肌に直接触れることが出来る。親父と同じように剥げてきたなとも思った。
 立ち上がるのに右膝が痛む。時折ひねったかと錯覚するほどの痛みが膝から発するときもしばしば。首も寝違えてからずっと痛い。気づかないうちに手を当てて揉んでしまう。昔ならすぐに治ったのに、今は治ることはなく持病となって体に潜んでしまう。昔撃たれた左手も時折しくしくと痛む。
 アップテンポの2拍子を遠くに聞きながら、ずいぶん歳をとったな、とラウルはしみじみと実感した。
 馴染みの客さえ寝ているラウルを起こさずに置いてけぼりにしていった。その事実がなにか気に障った。話って寝てしまったのも、置いていかれたのも、なにかも気に障って仕方がない。
 もう一度、アルコール臭い息を吐くと、周囲を見回す。グラスのいくつかは騒ぎのために床に落ち、そのうちの数個は割れていた。瓶は転がり、木製の床にアルコール臭い染みを作っていた。
 せっかく丹念に掃除し綺麗に磨き上げてきた店が汚れているのも、グラスが割れているのも、何もかも気に障る。
 しかしかぶりをふる。こんなことにいちいち目くじらをたてるなんて、とも思う。ただ客は行ってしまつて、自分が置いてけぼりにされたという事実がなぜか胃にもたれるかのように重く感じられる。体もぎくしゃくして重く、まるで錆びついた機械のよう。
 置いていかれたという事実。酔って寝てしまったという事実。
 それがなぜか癇に障る。もう若くないんだ。もう年寄りなのさ、と言われているようで、何かわびしい。ちゃんと朝はきちんと起きることができるし、押し込み強盗だって幾度も追い払ってきた。

 酔いさ。酔いのせいさ。

 うそぶき肩をすくめると、椅子を引き寄せる。このまま寝てしまおう、そうラウルは思った。
 明日さ、明日やればいいさ、とラウルは椅子を並べて寝場所を作る。クッションしかないが、2階の寝床にまで、のそのそとあがるよりは体が楽だった。それほどに体は重く、なにか軋んでいるかのようだった。

 そうだ。儂はまだ若いんだ。すべては――酔いのせいさ。

 そこにごろりと横たわろうとして、顔をしかめる。
 ふと玄関が開きっぱなしなことに気づいたのだ。
 ラウルが眠るまではこの酒場には客はいたはずなのに今はいない。ということば出ていったわけで、出ていった彼らがラウルのことを思って鍵を閉めることなんてありえない。
 目蓋が閉じてとろんと夢見ることのない深い眠りへと落ちたくなる。耐えがたい睡眠の誘惑に心は揺れたが、それを振り切ると入り口へと向かった。このまま寝ても夏だから風邪をひくことなどはないが、次の日、この脂肪のたっぷりとついた腹にナイフが突き立てられているなんていうことは洒落にもならない。

 入り口に目を向けると、外はいつものとおり雨だった。この夏季のカルニバルが行われる時期は雨期なので、毎年雨の中行われる。叩きつけるような雨なのに、聞こえるのは熱狂的な音楽と声。魂を揺り動かす情熱的な灼熱の祭り。
 昔なら一番隅っこのコンクリートの壁の脇で見ず知らずのヤツとともに楽器を鳴らし、踊ったいたであろう。なのに今はこうして遠くから見るだけ。
 やれやれ今夜はカルニバルに似合わず湿っぽいな、と考えると、その考えを振り払うかのように肩をすくめ、またかぶりを振ったその時。
 この激しい雑音とカルニバルの熱狂の間をぬって、何かが軋む音がラウルの耳に届いた。扉の入り口にある看板を外そうとしてした時、そこに人が立っていることに気がついた。
 こそ泥か? と思い、体を緊張で強張らせる。
 このサンパウロの片隅で酒場を経営しているのだ。こんなことにはラウルは慣れていた。ロケットランチャーを――それは運良く不発だったが――打ち込まれたことさえある。相手が銃を持っていても怖じ気づくことはない。数年に1度はある出来事だ。
 人影を見ない。見たら気づいたことが相手にばれてしまう。テーブルの上のグラスを手に取って、カウンターへと向かう。普通に片づけするかのように、相手に気取られないように、かるく鼻歌でも歌いながら。灯りが煌々とついている室内ではただの的でしかない。
 カウンターに行けばどうにかなる。わざと入り口から離れたところに作ったのだし、防犯のためにカウンターには2mmの鉄板が張ってある。さらにカウンター裏にはショットガンが隠してある。
 入り口からカウンターまではざっと10ヤード(約9m)。この距離なら腕がいいヤツでなければ、まずあたることはない。腕の立つヤツならばこそ泥なんてしない。ストリートギャングなんていうものは腕がないヤツがやる仕事だった。
 カウンターまでいけば銃撃戦になってもまず助かる。そのことを気取られないように恐る恐る動き、いつものとおり振る舞おうとした。
 カウンターに回り込むと安堵のためつい息を吐きそうになるが堪える。相手の不意をつく為のはこちらが気づいていることを知らせてはいけない。そのことを思いだし、いつものとおりに見える様に動き続けた。

 “相手が思うとおりに行動してやる。そうすれば相手の思考は最初たてた計画のままに硬直し、こちらの思い通りに動くただの操り人形になる”

 あの頃一緒に血と硝煙の中を駆けたマクンバまじない師の言葉を思い出す。そう、あの時に覚えたことを、あの時に実践したことを、またやるだけ。簡単なことだ。
 手に持っていたグラスをシンクに入れる。ゆらゆらと煌めく水の中へ、とぷんと沈んでいった。
 まだ入ってこない。聞こえるのは雨音とサンバのリズム。群衆のざわめきがまるで木霊のように遠くから響いていた。
 そうしてコップをひとつシンクから引き上げると、磨くふりをしてワザと落とした。その破片を拾うふりをしてしゃがむ。完全にカウンターに体が隠れると、置かれているショットガンを掴む。
 ベネリM3スーパー90。1mもある黒鉄をにぎる。グリップのところはすべらないようにビニルテープを巻き付けてあるが使い込んで剥げかかっていた。すらりと美しく延びた銃身がラウルに安心感を与える。冷たく硬く、そしてずっしりとした重みに頼もしささえ覚えた。飲み代の代わりに取り上げたものだが、これのおかげで何度も助かっている。
 そいつを握ったとたん、体が熱くなる。サンバのリズムよりも激しく心臓が高鳴る。
 笑っていた。気づかないうちに口元に笑みを浮かべていた。歳だの何だのと思っていたくせに、イザとなればこうして血を滾らせてしまう自分に、ラウルはただ苦笑した。
 銃をにぎり、指にトリガーをかけるだけであの頃を思いだしてしまう。
 熱かったあの頃。サンバよりも、酒よりも、女よりも、熱く昂ぶって、ギラついていたあの頃。血も細胞も沸騰し、魂がシャウトしていたあの時。若さという愚かさゆえに無謀がゆるされたあの頃。
 耳に聞こえるサンバのリズムが心地よい。心音と重なって、さらに高鳴っていく。
 灼熱の太陽の下で赤茶けた大地を駆け抜けたあの頃に戻ったかのよう。いやに熱い息に肺から吐き出すと立ち上がり、入り口に向かってショットガンを構える。

「入ってこい!」

 威勢のいいことを言っていると思った。儂でもまだこんなことができるのだと、体が興奮していた。今さっきまで飲んでいたアルコールのせいか、それともこの銃を構えたということのためか、まるで灼けているかのように体が熱い。

 その間も神経は入り口に集中していた。いつ飛び込んでくるか、いつぶっぱなしてくるのか、注意深く耳を澄まし、目を凝らした。
 叩きつけるような雨音。風があるのか、ざぁざぁっとまるで水をまき散らすかのような奇妙なリズムをつくっていた。
 入り口はぽっかりと黒い穴があいているかのよう。そこから入り込んでくる熱く湿った風がラウルの太った体と火照った頬を撫でていく。

オーイ、コモ ヴァーイ?やあ、元気かい?

 あまりにも気軽な挨拶だったため、ラウルは思わず聞きこぼしそうになった。
 そうしてそのぽっかりとあいた黒い入り口から人影が滑り込んできた。
 トリガーの指に力をかける。しかしリラックスしていた。使い慣れてすりへったようなトリガーが指に馴染んでいた。
 ラウルはすこし濁った青い瞳を瞬きもせずに、入り口を見据える。
 人影に見覚えがあった。その人影はラウルが反射的に仕掛けないようにゆっくりと動く。そいつはわかるようにのろのろと両手をあげて、何の害意もないことを示した。
 ややふてぶてしさを含んだ、けれども細い声。激しい雨音で聞き取りづらかったけれども、その発音にラウルは聞き覚えがあった。その顔にも見覚えがあった。

「おまえは……」
「――ぶっぱなさないでくれ、ラウル」

 一歩踏み出た人影は照明に照らされ、その姿を闇の中に浮かび上がる。
 この赤茶けた大地に見慣れた日系の顔つき。まとまっているのだかまとまっていないのだかわからないボサボサな髪に髭。少し歳をとったためか目尻に小皺が増えていたが、その顔に確かに見覚えがあった。

――オイ、キリツグ。やあ、切嗣。ムイント ベーン。儂は元気さ。イ ヴォセー?おまえさんは?

 と、懐かしい友人である切嗣に向かってやさしく話しかけた。
 ラウルはすっかり興奮から醒めていた。感じられるのは、あの熱い昂ぶりではなく郷愁。あの頃、あの無謀で無茶で若さだけで疾走してきたあの時に横にいた男がひさしぶりに現れたのだ。
 ラウルの顔がほころぶ。皺が目立ち始めた顔がさらにくしゃくしゃになる。もじゃもじゃの髭が笑いの形をつくった。

 ベーン元気さ、と静かに切嗣は答えた。
 ラウルはカウンターにショットガンを置くと、慌てて入り口に駆け寄る。そしてこの雨でずぶ濡れなのもかまわず、切嗣を抱き締めた。
 アミーゴ親友、と呼びかける声はかすかに震えていた。久しぶりにあう友人に感極まってしまう。
 濡れるのもかまわず、ただ力いっぱい抱きしめて、背中を片手でさすった。ブラジル式の親愛の表現で応えてやる。切嗣も目を閉じ、抱きしめ、そして同じように背中をさすった。

「――ラウル」
「なんだい、アミーゴ」

 ラウルはようやく離れて切嗣を見た。切嗣は肩をすくめ、水がしたたっている濡れた髪を掻き上げると、タオルを貸してくれないか、と信じられないことに笑いながら言った。



 ラウルは信じられなかった。
 こいつが、あのキリツグだなんてとても信じられなかった。
 あのキリツグがこうして笑っているだなんて、とても信じられなかった。思わず目を擦ってしまいたくなる。
 目の前でこうしてタオルで雨を拭い、遠くから聞こえるサンバのリズムに合わせて脚を踏み鳴らしている男が、あのマクンバだとはとうてい信じられなかった。
 親友のように出迎え抱き合ったのは確か。しかし目の前にいて柔和な笑み、人懐っこい光をたたえた優しい瞳の男が、ラウルが知っているマクンバとはどうしても信じられなかった。
 あのギラギラとしていて、まるで抜き身のナイフのような鋭く刺々しい雰囲気を纏い、けっして人を寄せ付けない孤高の男。無口で冷酷なまでに非情で、情け容赦なく、そして計算高い男。
 負傷した儂に向かって、役立たずはいらない、と言い切った非情さ。
 それがラウルが知っているキリツグという男。なのに、目の前の男は優しく、柔和に笑っているのだ。
 ありえない。信じられない。信じたくもない。なにか悪いもんでも食べたかと言ってしまいそうだった。
 ラウルはついついじぃっと観察してしまう。しかしその顔はどうみて切嗣だった。なにかが化けたわけでもないらしい。
 もしこいつがまた笑いかけてきたら、卒倒してしまいそうだとさえ思ってしまう。そのくらいの違和感を感じた。
 その視線に気づいたのか、切嗣はラウルを見ると、どうした、と尋ねてきた。
 いいや、なんでも、とぶっきらぼうに答える。笑いかけてこなくてよかったと内心胸をなで下ろす。
 親友の登場にラウルは興奮してしまったが、それも醒めてくるとなんだか化かされている気がしてきた。
 だからラウルは試しに呼んでみた。

「なぁ、うさぎどん」

 うさぎどんと呼ばれると切嗣はラウルの方をいやそうに見た。憮然としているが、それはラウルが知っているキリヅクの顔だった。

「――その名で呼ぶなといったろう」
「お前みたいな臆病者はうさぎどんで十分さ」

 返答に切嗣は顔をしかめて抗議する。しかしその表情は嬉しいことに昔のまま。

「さて再会を祝って――何にする、うさぎどん」
「――テキーラを」
「テキーラ!?」

 ラウルはわざと大きな声をあげた。その顔には笑いが浮かんでいた。切嗣は渋面のまま。同じだった。最初出会った時と同じ会話にラウルの顔は綻んでしまう。ゆるんだ顔のまま大きく肩をすくめ、わざとらしくかぶりをふり、両手をあげて、わざとお手上げのポーズをとる。

「テキーラをあおって、ライムを囓るのかい。ここはブラジルだよ、うさぎどん。
 しかも“神様は6日間で地球を創り、残りの1日でリオを創った”といわれるこの麗しきリオだよ。メキシコじゃないんだからさ、うさきどん」

 同じだった。まったく同じ台詞に、どうしても笑いがこみ上げてしまう。
 あの時はバーテンだったが、今はオーナー。切嗣は今と同じ格好。あの時にはジョルジが横にいたが、今はいない。その程度の違いでしかなかった。
 それに気づいているのか切嗣もくすりと笑みを浮かべて、あの時と同じことを言う。

「では、お勧めはなんだい?」
「そりゃもちろん――」

 ラウルがしゃべった瞬間、切嗣も口を開く。

 カイピリーニャさ

と、ふたりの声が重なり、しんと静まりかえる。そしてくすくすという互いの忍び笑いが響く。

 ああ――こいつはキリツグだ、とラウルは思った。こんなに丸くなっても、柔和な表情を浮かべるようになっても、こいつは儂が知っているうさぎどんだとわかった。

「――ではうさきどんのご注文どおり、カイピリーニャを」

 まだ笑いはとまらなかったが、ラウルはカウンターに向かうと切嗣に見せるようにカクテルを作り始める。
 冷蔵庫からライムを取り出す。きちんと冷えているのを確認すると、ざく切りにして、オールドファッショングラスにいれる。
 それにグラニュー糖をひとつまみ。その手のマニュアルには溶け残らない滑らかなシュガーシロップを使うとされているが、ラウルはこの舌に残るざらつきが気に入っていた。
 そうして砕いたアイスを数個放り込むと、カサーシャ51を注ぐ。それからマドラーで7回転半まわす。こうすると氷と砂糖が少しだけ溶け、ピンガのとろりとした匂いとライムの爽やかな香りが立ちのぼり、鼻をくすぐる。
 溶けた分の氷を足して、今度は3回転半。一度その氷のいれ方はウィスキーのだと言われたことがあるが、ラウルは気にしなかった。これが儂の入れ方だからだと割り切っていた。それに客にも評判がいいのだから、あえて変える必要なんてどこにもないと考えていた。

「ほい、うちのカイピリーニャだよ」

 恭しくテーブルに2つグラスを置く。この前の時には飲んで貰うことが出来なかったから、こうして切嗣に飲んで貰えるだけで嬉しかった。

「乾杯」
「ほい、うさぎどん」

 カチンとグラスを合わせ、マドラーでライムを潰し、かき混ぜながら、一口飲む。
 ラウルはじぃっと切嗣を見た。なんだかワクワクした。この男がラウル特製のカイピリーニャをどう評するのか、楽しみだった。
 切嗣は舌の上で転がすように飲み、味わってから飲み干すと、その香りと味を堪能するかのように目を閉じた。そうしてから目を開けると、にやりと笑った。ただ口元を歪めたたけの笑み。しかしラウルにはそれだけで充分だった。そうしてラウルも自分のを飲んだ。

 静かな夜だった。
 あんなに激しく聞こえた雨音もカルニバルの狂乱も、ふたりには遠く感じられた。
 聞こえるのは氷とグラスが触れあう音だけ。
 ただ静かにカクテルを味わう。
 雨が降り蒸していたが、それさえも心地よい。
 肌の上を流れ落ちる汗を感じながら、冷えたカテクルを口にする。
 ライムとピンガがいりまじった清々しい香り。
 冷たく喉元を通り過ぎると、胃の中で灼けるように熱くなるカイピリーニャ。
 舌の上にザラリと残る甘さにまた一口飲む。
 それが美味い。
 遠くで聞こえるサンバのリズムはまるで潮騒のよう。
 ただ静かに響いて、消えていく。
 何もなかった。
 何もいらなかった。
 ただふたりで差し合って、ひたすら呑むだけ。
 ただそれだけ。
 それがとても心地よかった。



「――――なぁ、うさぎどん」

 口火をきったのはラウルだった。口当たりがよいがアルコール度数の高いカイピリーニャを数杯飲んで、すっかり酔いがまわっていた。

「なんだい、ラウル」

 切嗣もやや酔ったような、煤けた声で返す。

「今頃来たのはなんだい」
「――――――ああ」

 からんとグラスが鳴る。ステアで掻き回され、ゆるゆるとグラスの中を動くカテクルを切嗣は黙って見つめていた。

「カイピリーニャを飲みにきただけだ」
「嘘をいえ、うさぎどん」

 切嗣の言葉を鼻で笑ってあっさり否定する。片手でグラスをぶらぶらと揺すりながら、ラウルは目の前にいる親友を見つめた。いくら柔和に笑っても、うさぎどんだ。そんなやさしい玉なんかじゃないことはラウルは重々承知していた。
 グラスを机の上に置くと、カクテルが温まるのもかまわず、両手でグラスを握る。ただ静かに目の前の男を見つめた。
 粋なのかそれともただズボラなのか判らないよれよれの服装。髭をはやしているのかはえてしまっているのか。その姿から昔見せてもらった水墨画というのを連想した。
 黒一色の濃淡だけて描いた風景画。このリオの色彩豊かな風景とは違い、あっさりとしていた。なのに枯れて色褪せたものを感じた。
 目の前で座っている男がまさにそうだった。傷つき、年老いた獣。それがまさに今の切嗣に合っていた。薄い墨をといたようなその雰囲気は、目をそらした途端消えてしまうかも知れないとラウルに思わせた。
 切嗣は溜め息をつくと、ぼそりとしゃべり始めた。

「――――――引退しようかと思ってな」

 その言葉を聞いた途端、感じていた違和感が消え、腑に落ちた。こうしてここにやってきたのも、こうしてカイピリーニャを飲みにわざわざ来たのも、そしてこうして丸くなって笑っているのも、何もかも腑に落ちた。
 何か言おうとして口を開いたが、何を言っていいのかわからず、呟きは音にならず、ただこの静かな空気に溶け込んで、消え去った。
 なぜか涙腺がゆるみそうになる。アミーゴに涙を見せたくなくて、上を向いた。
 煤けた天井。一度も掃除したこともない天井は紫煙が染みつき、ヤニで薄汚れていた。サーキュレーターのファンが澱んでいる熱気をのろのろと掻き回している。
 もうこんな長い間ここで仕事をしてきたのかと、ふとラウルは思った。ここまで必死だったと思った。路上生活者だった少年時代。それからなんとか認められてバーテンとして雇われた。自分が作るカクテルがうまいと先代も喜んでくれた。そうして少しずつ売れていった矢先に、切嗣とジョルジに出会って、そして――――あの熱い日々を。いままでの中で一番ギラギラと輝いた瞬間を迎えた。生きているという充実感。それは死と隣り合わせであったが、それでもなお煌めきに満ちていた。今思いだしても、眩しくて仕方がない。
 どこまでも高く、どこまでも蒼い空と灼熱の太陽の下で、はいずり回って、逃げまどって、撃ちまくって、なんとか生き延びたあの時。
 魔女の集会。マクンバの呪い。カルラという呪術師。密林への逃亡。パウル・ミキオ・フジムラの救出劇。
 あの目の眩むような日々。ただ巻き込まれただけなのに、傷だらけになり、銃に撃たれて、死にかけて、二度とこんなことに首を突っ込むものかと幾度思ったことか。
 なのに。
 こうしてふりかえってみると、何もかも懐かしい。キラキラと輝く繊細な硝子細工のよう。あんな酷い目にあったのに、それがなんだか懐かして、恋しくて、眩しくて、こんなにも堪らない。

 遠くから聞こえてくる雨音とサンバのリズム。
 今頃、若い奴らは踊り狂っているだろう。
 ただこの瞬間のためだけに、灰になるまで踊るだろう。何もかも焼き尽くすような一夜だけの衝動に身を任せて、たた駆け抜けるということ。ジュルジは今踊っているだろう。もしかしたら一夜だけの恋人をみつけてベットの中かもしれない。徹夜で騒いでも、けろりと笑って仕事できるだろう。それが若さということ。今夜この店であったバイレを思い出す。その最中に寝てしまった自分。
 もう若くないんだ、とわかった。わかってしまった。わかってしまうと寂しい。寂しくて胸がぎゅっとなる。まだ人生は終わってないと頭でわかっていても、苦しかった。胸が痛い。そう――まだ終わりではない。けれども、時とともに終わりにしなくちゃいけないことがあるのだと、はじめてわかった。それがなんだか悔しくて、切なかった。
 それは祭りが、真夏が終わりだとわかった時に感じるものと同じ。あの煌めくパレードが終わり、平凡な日常に戻らなければならないと諭され、それを噛みしめなければならない、そんなわびしさ。
祭りから外れて夏が終わってしまったんだという切なさが二人を包み込んだ。
 はぁと溜め息をつく。そんなことで胸の痛みはとれることはなかったが、少しでも吐き出してちょっとでも楽になりたかった。
 ラウルはようやく顔を降ろし、グラスを持ち上げると一気にカクテルをあおった。美味いはずなのに、どこか苦かった。そうして目の前のマクンバを見た。
 いつもの表情。乾いた笑み。乾いた瞳。なのに――それはなぜか濡れているように思えた。その乾いた瞳が潤んでいるような気がしてならなかった。
 うさぎどんは泣かないからなぁ、と思った。うさぎどんは、キリツグはいつもそうだった。涙は見せないで泣くことをしっている哀しい男だった。こんなに強くて、あの恐ろしい悪魔のようなマクンバを退治した男。なのに常に淋しさとともに生きていた。
 そう思うと、涙がこぼれそうになる。堪える。堪えなければならない。目の前で儂が泣いたら、うさぎどんはまた心でそっと泣く。だからアミーゴのためにも、笑ってやらなければならなかった。
 もう引退なのだと、あのぎらついた灼熱の祭りは過去の出来事になったんだと、笑ってやらないと。

マクンバまじない師を引退するのかい、うさぎどん?」
「――――ああ」

 そういって切嗣もグラスを一気にあおる。
 聞こえるサンバの若々しいリズムがあまりにも遠くて、それが二度と手に入らないもののように思えて、ラウルは哀しくなった。
 切嗣を見る。あのギラギラとした切嗣はどこにもいなかった。年老いて丸くやさしくなった男。儂もこんな風になっちまったんだなとしみじみと感じた。

「うさぎどん、おまえさんはあの恐ろしいマクンバに勝った偉大なマクンバだ。そのおまえさんが引退を口にするんだ。儂は何も言わんよ」
「跡継ぎができたしな」
「ほお、うさぎどん。身を固めたかい?」
「いや――引き取って僕の子にした」
「ジョルジと同じかい」
「ああ、似たようなものさ。――そういえばジョルジは?」

 今ごろ気づいたようにあたりを見回す。

「おいおい、うさぎどん。そこまでぼけたら本当に引退しかないな。今日はカルニバルだぞ。若いヤツが家にいるわけないだろう」
「そうだな」

 またふたりでくくくと喉奥で笑う。すべてにおいて計算尽くのあのマクンバがジョルジのことを考えないなんて――――それがなんだかおかしくて笑ってしまう。
 歳をとってこうして会うという事は年寄り臭いと考えていたが、やってみるとなかなか乙なモンだな、とラウルは思った。



 突然、切嗣が立ち上がる。
 その目には酔いなどなく澄み切っていて、今まで穏和に語りあっていたとは思えない。その視線が入り口へと向けられいた。

「どうした、うさぎどん」
「――伏せろ」

 素早く言うとラウルの襟首をつかむと強引に椅子から引きずり降ろし、伏せさせ、切嗣も同じく伏せた。
 とたん、轟音が鳴り響く。
 耳をつんざくような音が世界を支配する。
 扉が、机が、椅子が、次々に穴だらけになっていく。瓶が砕け、窓ガラスが割れ、飛び散った。
 素早く頭を両手で押さえ、あげないようにすると、あたらないように口の中でマリア様の御名を唱える。
 この音にラウルは聞き覚えがあった。
 あの頃にいつも聞いた音。
 爆竹を鳴らしたかのような乾いた銃声が、サンバと雨音に紛れて、響いてくる。

「う、うさぎどん。こ、こいつは――」

 ちらりと目だけで切嗣をみると、伏せながらも切嗣は銃を抜いていた。凶々しく蒼く光るジェリコ941。イスラエル製の軍用拳銃を伏せたまま両手で持つと、まっすぐ入り口に向かって構えた。

 切嗣はちらりとラウルを見ると、ふてぶてしく笑った。あの時、あの頃、浮かべていたものと同じ笑みだった。

「わからないな」
「わからないって――――うさぎどん!」

 銃撃はさらに続く。カウンターが、壁が、床が、机が、椅子が、穴だらけになって弾け飛んでいく。
 無茶苦茶だった。信じられないことだった。ラウルは神の御名で汚らしく罵る。

「――まぁ天災だと思って、諦めてくれ」
「こ、こ、こ」

 ラウルの声は怒りに震えた。銃声の鳴り響く中、怒声がひときわ大きく響いた。

「この、疫病神のうさぎどんがっ!」

 その怒声と同時に切嗣のジェリコ941が火を吹く。轟音が怒声を切り裂いた。入り口へと2発撃ち込む。

 おいおいおい、うざきどん、これは何の冗談だ? とラウルはまだ目の前の銃撃戦が信じられずにいた。
 しかしそれが現実だと教えるかのように、目の前の床にぽっかり穴が開き、木々の破片が顔に降りかかる。バリンとグラスが砕け、せっかく買ったお気に入りの絵が蜂の巣になって、床に落ちた。

 ああ、なんてこったい。

 切嗣は2発撃っただけなのに弾倉を慣れた手つきで素早く取り替えると、カウンターへと走った。

「ラウル! 早く! こっちだ」

 ああと頷くと這いながらカウンターへと急ぐ。太った腹がつっかかってうまく伏せたまま動くことができない。
 せっかく愛着を注いで丹念に磨いてきたカウンターは穴だらけになり、壁にならんだ瓶は割れ、アルコールの水たまりを作っていた。次々は銃弾は打ち込まれ、千切れ、吹き飛び、砕け散っていく。

 ああ、なんてこったい。

 カウンターに滑り込み一息つくラウルの目の前にベネリM3スーパー90が突き出された。
 それをあわてて掴み、きちんと持つと、オートに切り替える。
 ああ、なんてこったい、こん畜生。ラウルは思った。せっかく馴染んだ儂の店をこんなにしやがって。歯がぎりっと鳴る。

「カウンターは?」

 切嗣の問いに、2mmの鉄板が仕込んである、と答えながら、カウンターの下にある箱から弾を取り出す。にぶい真鍮色に輝くごろりとしたショットシェルをズボンのポケットに詰め込んだ。

 ああ・・なんてこったい・・・・・・・儂の店をこんなにしやがって・・・・・・・・・・・・・

「肉の塊なんかないか?」

 切嗣の視線は入り口だけではなく、割れた窓など外から入り込めるところを見回しながら尋ねてきた。

「ああ。いいブロックがあるよ、うさぎどん。シュハスコにするつもりで仕入れた塊だ」
「ラウル。お前のとこバーなのにシュハスコをするのか?」

 呆れたような切嗣の顔に、にやりと笑ってラウルは答えた。

「ああ――ジャポネーズの観光客相手に週末な」
「ぼり過ぎるなよ」
「まぁ、そこそこにしているさ」
「ところでそいつは――」
「ねかせるために、ここの冷蔵庫に入ってる」

 そういってバーの後ろの業務用の冷蔵庫をあけると、そこにごろりと肉塊があった。
 鉄板にあたり、カン高い音が響く。カウンターに隠れていると目星をつけたのか、照準はカウンターに集中しはじめていた。

 ラウルは思わず笑ってしまった。
 年老いた、とか、引退とか、もう若くないとか色々考えていた今さっきがバカらしくて苦笑してしまう。なにを深刻になっていたんだか。額をパンと叩いて、大声でげらげらと笑いたくて仕方がない。
 ちらりと切嗣を見る。そこにはあの頃の切嗣がいた。ギラギラとして、鋭く刺々しい雰囲気を纏う男。冷酷なまでに非情で、情け容赦なく、そして計算高い。臆病なうさぎだと思えば、攻めるときは豹のように獰猛。自己紹介で、僕はマクンバまじない師だ、と言ったジャポネーズがそこにいた。
 冷蔵庫から肉の塊を取り出すと切嗣に渡すと、ショットガンを構えた。

「――援護を」
「――ああ、わかっているさ、うさぎどん」

 手順はわかっていた。あの頃と同じ。こうして銃撃して追い詰めたら、手榴弾あたりを放り込んでくる。それで死ねばよし、でなくてもいぶりだせればよし。基本的な戦術だ。だからこそ、今のうちに反撃する。

 ああ――――――まったく変わらない。あの頃と、あのギラつく灼熱の太陽の下、赤茶けた大地を駆け抜けたあの時と、まったく同じだ。

 あの時、あの頃、過ぎたはずの祭り。灼熱の日々。その頃のうさぎどんが横にいるのなら、ここにいる儂は――――そう考えてにやりとラウルは笑った。今まで浮かべていたものではなく、力あふれる若々しい笑み。


 当たり、弾け、砕ける音が耳に心地よい。
 瑞々しい躍動感。
 飛び散る木の破片。
 若々しい生命の奔流。
 きらめく硝子の破片。
 狂おしいまでの衝動。
 轟音。
 銃撃の音があたかもサンバのよう。
 狂乱につつまれ、命のままに踊り狂えと、それは叫んでいた。

 あの時、いやだと言いながらもうさぎどんについていったのは、これを感じたかったから。
 年老いても変わらない、いくら時を経ても変わらないものがあるのだと理解した。
 魂さえも揺さぶるような、熱く滾った衝動。
 鼓動。
 サンバのリズム。
 重なる。
 重なっていく。
 高鳴っていく。
 荒々しい原始的なリズム。
 体内に刻まれる狂おしいまでに滾った鼓動。
 滾って、昂ぶって、ラウルは弾けそうになる。
 何も考えられない。
 夏のカルニバルのただ中にいると実感していた。

 目の前のカウンターが弾け、頬を掠めていく。でも痛くない。逆にワクワクする。

 歳だなんて、引退だなんて、そんなものなんて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・――――――くそっくらえ・・・・・・

 切嗣が指でサインするのを横目で確認すると、ラウルはトリガーに指をかけた。
 とたん切嗣は肉塊を楯にして横へ飛び出す。
 肉塊に銃弾がめり込むニブい音。
 銃撃が切嗣に集中する。
 そのタイミングで、立ち上がる。
 高鳴る心臓。
 狙いを定め、ぶっ放す。
 鼻につく硝煙。
 じんと骨の芯まで痺れる感触。
 扉が派手に吹き飛ぶ。
 笑いがこみ上げてくる。
 跳ね上がる銃身。
 暴れる銃身を押さえつける。
 反対側の窓へ向く。
 こん畜生めっ! ともう一発。
 ぶるんと体が震える。
 ぶるんと心が騒ぎ出す。
 急げと。
 騒げと。
 何かが喚いている。
 額に汗がにじむ。
 硝煙の匂いが、やけに心地よい。
 しゃがみ、空薬莢を取り出す。
 手早く詰め込む。
 まるで踊るかのように小気味よいビート。
 軽やかな指先。
 その動きは軽快。
 いける。
 遠くからサンバのリズム。
 ふふんと鼻で笑う。
 近くの銃撃の音。
 そして心臓の鼓動。
 雨音さえも心地よい。
 リズミカルに動く。
 そして酔いしれる。
 このリズムに。
 このビートに。
 この暑さに。
 この熱さに。
 この夏の祭りに相応しいサンバに。

 もしかして、とラウルは思った。
 店にくればこうなるとうさぎどんは知っていたのではないか? 
 あの計算づくで、狐のようにズル賢くて、臆病なうさぎのようなマクンバがそんなことを考えないわけはない。
 もしかして、儂のため? こうしてただのろのろと生きている儂のため?

 ――――まさか。

 とすぐに否定した。あの冷徹にして非情なキリツグがそんなことするわけないと、かぶりをふった。
 勘違いに違いないと思いながらも、ラウルは笑った。
 でも、もしそのためだけにこの儂を巻き込んだというのなら、一発殴らせてもらわんとな、とラウルは思った。
 それよりもまずは――――。
 活き活きとした声で、ラウルは切嗣に命じた。
 激しく、短く、リズムにのって。

「行け、うさぎどん!」

 若々しい笑みを浮かべたラウルは立ち上がり様、腰溜めにしたショッガンを派手にぶっ放した。

Fin.


あとがき

 まず批評してくださった千年雨様、MISSION QUEST様、藤村流後継者様、shuntaro様、和泉麻十様、主催していただいた竹家千楽様、そして読んでくださりました皆様方、ありがとうございます。

 今回の改訂版はご意見を踏まえた上で、なおかつ30kに拘り訂正したものです。30kをこえてよいのならばいくらでもかきようがあるわけですが、そうではなくやはり30kという枠組みで批評され書いたものであるのならば改訂も30kという枠組みで頑張らないと、と思い、あえてこうしました。
 ただこういう話である以上、最初の20行以内で切嗣をだすのは無理でした。みなさんに指摘された冒頭はこんな感じにまとめてみました。
 また指摘されたラストの銃撃戦のテンポの悪さは短文(単語)によってスピード感とリズム感がでるように心がけてみました。
 いかがでしょうか?

 この作品は批評し意見していただいた皆様によってできあがった作品です。
 本当にありがとうございました。