「式って、やっぱ穿いてないの?」 コトコトと吹き出る、醤油とダシの混じった暖気の中、幹也のたわけた一言に、俺は大根もろとも自分の親指を切り落としかけた。 「なっ・・・・・・はっ・・・・・?」 「いやさあ、式っていつも着物だろ? 女の人は和服の下にはパンツ穿かないって言うし、じゃあ式はいつもノーパンなのかなあって。」 なにをほざいてやがるのかこの脳内筋肉番付(?)は!!? ガラにもなく顔を真っ赤にさせながら・・・・・いや、こういうときぐらいは赤面してもいいだろうが、俺はベットでぼーっと雑誌を読みふける幹也に向き直った。 確かに俺はいつも着物を愛用してるし、事実今も着物、しかも料理中ってのもあって、その上からエプロンと言う、あのバカに言わせれば内角ギリギリとてつもない格好をしていて――いやいや、それだって最近は幹也の家に厄介になりっぱなしだから貸しは作りたくなくてやってるわけで、けっしてこー、半同棲生活とか、すっかり積極的になったアイツの甘美且つ妖艶自堕落な肉欲絵巻で、昔のカミソリのような俺は影もなく、・・・・・じゃなくて!! 「・・・・で、穿いてるの穿いてないの?」 こいつの一言は、いつになく冷静でむかついた。 両儀式の
インナータレントに挑戦 vol.1 40%の60L
「Yes!! やっぱ常時ノーパンなんだ!!?」 何がイエスなのかわからないが、結局口を割ってしまった俺に、幹也は大仰な歓声を上げた。 食事も終わって俺の手料理を残らず平らげられた1DK、何か、もっと大事なものまで喰われてしまったような気がする。 俺は膝をテーブルの下に潜り込ませ、極力アイツから隠れるように、恐る恐る地雷原を渡るように、返事を返した。 「うるさいな、大体お前もなんだよ今更、別に俺のはだ・・・・いや、体見たことないわけじゃないクセに・・・・。」 「いや、その時はいつもシャワー浴びてベットに直行だったからなぁ、考えてみたら着衣の状態から式を犯したことって、まだないよ。」 「“犯す”とかそーいう表現使うなバカタレ!!!!」 と、今や俺と幹也の間では恒例になりつつあるボケと突っ込みが、今日も今日とて繰り返された。 この頃の幹也はいつもこうだ、 少し前までは鈍感、いやストイックが服を着て歩いてる奴だったのに、いつからか一線を越えてしまってからは、加速度的に俺への要求もエスカレートしてる。 何処をどう間違ってこんなコトになったのだろう、ただ単に今まで『きっかけ』がなかっただけで、一度はまったら、際限まで探求し尽くすタイプなのか。 ―――――――――――――あり得る。 ―――――――――――心当たりがありすぎる!!! そういう俺も、幹也にいいように引き摺られて、 『まあ、宅の式さんは至る所に丸みが出てらっしゃったわねえ?』と 橙子に言いたい放題になっているのだが、 「でもさあ、パンツないとナプキンとか着けれないんじゃないの?」 「別に・・・・俺はた、○○○○使ってるから・・・・」 「でも、タンポンだってパンツがないとズリ落ちるんじゃ・・・?」 「知らないよバカ!!!!! てか、人がせっかく伏せ字使ってるのにストレートに言うなよ!!」 バシインと鳴り響くテーブルへの衝撃に、踊るように揺れる茶碗や皿、 実際に、いやその・・・・愛し合ってる時以上の気恥ずかしさだ。 人のコトをノーパンノーパンって、まるで俺が、好きで内部露出して人目を趣向する変態みたいに俺だって好きでサラシや腰巻なんか使ってるわけじゃないんだ、両儀の家が洋服なんて着せてくれなかっただけなんだよ! 「まあでもさ、式もこれからは下着くらいちゃんと着けたほうがいいよ。やっぱりないよりあったほうが便利だからここまで普及したんだろうし、それに先々、子供を産む時にも、プロポーションを崩さない為のショーツってのがしっかりあるんだって。 式も絶対今のうちに慣れとくべきだよ。」 何を言い出すのかと、ここでは突っ込みを入れるべきなのだが、『子供』、というたった1フレーズに過敏に反応した俺は、理論的に正論をたれる幹也そっちのけで、顔をポッポさせてしまう、 不覚、こんなコトで心を乱そうとは。 ここは多少無理でも話に乗ろう、奴に悟られると、どんなセクハラを受けるか判ったもんじゃない。 「・・・・幹也、なんでそんなコト知ってるの? 体型の矯正なんて、女の俺でも知らないのに・・・」 「遠野君に聞いてね、彼の奥さんも妊娠中で、そんな話よく聞くんだ」 ああ、遠野志貴、 最近橙子の所にバイトに入った高校生か、 何でもあの歳で女孕まして結婚して、養育費が必要なんだとか。 なるほど、最近とみに拍車のかかってきた幹也のはっちゃけぶりにはあいつの影があったのか、 明日会ったら殴っておこう。 「そういうわけで、式も早速、初インナーに大ちょーうせーん!!」 と、おもむろにベットの下からカードケース大の紙箱を取り出す幹也。 その中途半端な厳重ぶりがかえって不快と不安を呼ぶ。 そして神聖なまでにシールで封じられたその蓋を、処女幕が破られたかの如くベリッと爽快なる音をたてて開ける。 その中身は、もはや察するまでもないだろう、純白のやや光沢のあるショーツがそれ自身が輝くかのような煌びやかさで顔を出した。 「・・・・・・・・絹?」 と俺は思わず繊維の綺麗さに素直な感想を洩らしてしまった。織物に関わって蓄財された知識が、ここでは見事に受難を呼ぶ。 「そう、シルクって化学繊維じゃなくて天然繊維だから、アレルギーの心配もなくて衛生的なんだって。 しかも素材的に保温や吸湿性もダンチだから、拘る人には一番人気らしいよ。」 へえ・・・って、なんでそんなに詳しい? 「うん、この前遊びに来た遠野君のお嫁さんに教えてもらった。 彼女、仏人のハーフらしくて、それでか結構オープンに教えてくれた、」 うあああああ!!?日本の恥を世界に晒すなーーー!!!! 「まあそれはいいから、ともかく着てみよ? 僕もこれ買うためだけに渋谷まで言ってきたんだから」 シルクのショーツをみょいんみょいん伸ばしたり縮めたりする幹也、 俺は頭を抱えながらも、ああいいよと頷くしかなかった。 覚悟を決めて、ショーツを受け取るべく奴の方に手を差し出しす。 「・・・・・・・・・・。」 「・・・・どうしたの?」 「どうしたのって、下着よこせよ、着てやるんだから」 「やだなあ、そんなの式が煩う必要もなく、僕が穿かせて上げるって」 はっっっっ!!? この男のとてつもない提案に、俺は今度こそ、目の前が白くなった、 穿かす!!? 幹也が、俺に下着を!!? 子供が大人にしてもらうみたいに!!? それって、幹也の手が、当然下着を上まで持ち上げていって、 俺の足や、太腿や、お尻とか、アソコまで幹也の前に、 それら全部、ずっと前に彼に蹂躙されて久しいのに、 それ以上に重大な危機感が、 “それはいくらなんでも”と、電撃的に脊髄を走り抜けた。 「そっ・・・そんな恥ずかしい真似ができるか!!!」 破綻的に、そう叫ぶしかなった、 「えー?だめだよー 遠野君たちから聞いたんだけど、パンツの穿き方にもちゃんと 手順があって、僕がきっちり教えてもらってきたよ、 式も穿いたことないから判んないだろ? だから、これが一番 いいやり方だよ」 遠野、とその嫁さんか。 畜生、前々からアレな奴かと思っていたが、それに惚れる女もかなりアレと言うことか、 だが、どうする? 既に幹也は、俺の前にしゃがんで、もの欲しそーな顔で見上げている。 やめろ、そんな子犬みたいな目で見られても出来ないよ。 一糸纏わぬ普通の裸だって、まだ暗い処でしか見られたことないのに、こんな明るい部屋の中で、一番汚い部分だけ曝け出すなんて、そんなの恥ずかしくて死んでしまう。 できない、できないけど、 なんで俺の手は、着物の裾に掛かっているのか、 私の羞恥心とは正反対に、まるで自分が幹也からの無線で動くロボットになってしまったように、体が、幹也に愛され尽くされた躯が、俺の脳とは無関係に幹也の期待に応えてしまう。 ・・・こんなの反則だ。 「・・・うわ、こういうのも新鮮だねえ」 幹也の頭と、曝け出した俺の陰部がちょうど同じ高さに合わさって、秘部から噴き上がる感覚が、頭蓋骨の内側にぶち当たってはね返り、体の中で堂堂巡りを繰り返す。 俺の下半身は、足元まで下がった着物を腰までたくし上げて、当然下着のないあられもない陰部を、幹也の前に晒していた、 (・・・いや、あられもないから、こーいう目に合っているのだが。) 幹也が「式もここだけは遠慮がちだね」と言う薄めの陰毛が、白色光で鮮明に晒される、 彼の吐息がフルフル掛かって、吸って吐くのリズムで震えてる。 そして幹也は、初々しいねえとばかりにご満悦で、右足、左足と、順番にショーツを通し、踝、下腿、太腿、お尻、腰とシルクのキメ細かさを持った舌がサラサラと摩擦する。 (・・・・・・冷た・・・。) 持ち上げるようにしてヒップの全体を覆い、ヒップライン優しく包み込むように裾を引っ張って調整。 これで、ヒップラインが美しく保てるというコトらしい。 そうして、今まであまりに無防備だった俺の陰部を絞める布地は、幹也の体温が移ったせいか、冷たさはなく、ただ局部からお尻までを覆う肌触りのよさだけが、気持ちよく感じた。 「・・・・・・どう?感じは、」 「判んないよ・・・・。ちょっと窮屈なだけで・・・」 「んー、まあ着けたばっかりだから、もう少し動いてみないとわかんないか。じゃー、僕の方の実験を・・・・。」 「え?――――きゃっ!!!?」 幹也は何をするかと思ったら、いきなりわっと、俺の腰めがけて抱きついてきた。 いや、抱き寄せてきた、と言うのが正しいか。 ラインの露わなお尻に、鷲掴みの感触が二つ食い込んできたら有無も言わさず前に引き寄せられて、薙ぎ倒されるように幹也めがけて倒れこむ、 密着する俺の下腹部と彼の頬、筋肉も贅肉も薄い、陰部と腹部の間に幹也の温もりが伝わり、でもそれ以上に、下腹部が直接耳に当たって。 体の中を流れる小水の音が彼に聞こえるんじゃないかと、ありもしない羞恥心で顔がはじけ飛びそう。 「なっ、何するんだよ幹也!?」 「いや、シルクのパンティの触り心地、僕も知りたかったから。んん、いいなあ、絹のキメ細かさもさることながら、弾力のある肉質が布地を押し戻し、適度な主張を繰り返してる。 パンティのミクロな肌触りと、お尻のマクロなむっちり感。この二つの見事な調和があってこそ、女の子のお尻は至高の性感帯へと羽化を遂げたり遂げなかったり・・・・・」 「バカなこと言ってないで離れろよ!! やだっ・・・止めて・・・・・・・離してぇ!!!」 「・・・・・・式、喋り方が女になってる。」 間髪ない指摘で、今自分がどんなに情けない声を出したかハッと気付いた。 子犬が、組み伏せられる時に出すような、潰れて泣くような声。 いつからこんな声を出すようになっていたんだ俺は、 幹也が、アイツが俺に何かするたびに、 幽霊も、異能者も、僧侶も、魔術師も、狂人にも屈しなかった俺を 無力な女々しい俺に変え、鏡の前に突きつける。 どんなに剣術に通じ、筋力を鍛え、殺人の趣向に秀でても、 愛欲に飲まれる愛撫より、愛情の籠もった抱擁の方が自分の中の『女』を刺激されてならなかった。 大好きなこの人に大事な処をむしゃぶり尽くされてると言う事実、 それが脳髄をとかして、背骨から蕩け落ちそうなほど、甘美。 「・・・・・・幹也・・・・。」 「・・・・・・・・ん?」 「・・・・・・・・・俺・・・・あ、私・・・・・もっと・・・・・」 私は涙声で訴える。 着物の裾をたくし上げた、純白のインナー越しの、股間への抱擁、 シルクの吸湿性が彼のぬくもりと吐息を貪るように吸い込んで、膣の奥まで潜り込む、 こんなものが恋人の睦事と呼べるのだろうか、 私の経験が浅いせいか、とても淫猥で背徳な雰囲気。 両儀式の回路が、完全に『女性』に切り替わるのを確認したように、『女』である部分が、女である証を、しっとりと湿らせる。 「やっ・・・・・・・・はあぁ・・・・・あああああぁぁぁぁ・・・・・!」 今までとは比べ物にならない強烈な感覚が、後ろに走った。 さわさわと、シルクの上からお尻をまさぐる幹也の手。 どんなに鍛えようとも、女性である以上取り去ることのできない柔らかいラインの贅肉は、今こそ女の喜びを解き放つ、本来の役目を果たそうと、手の動きに従って、ぷるん、ぷるんと揺れ廻て。 彼の指にあわせシワの軌跡を作るショーツも、私のお尻にきめ細かい肌触りの爪痕を残して、彼に触れられてるという自覚を快感込みで倍増させる。 ダメ、私、侵(おか)されてる、 お尻、嬲られるように、無抵抗に震えるだけの普通の女みたいに下着の上から。 こんな、こんなに下着が気持ちいいなんて、 初めて味わうゴムの吸着感が、そのまま幹也に拘束されるみたい、 幹也に縛られて、 幹也に捕えられて、 幹也だけのモノになった証のように、 もう耐えられない、下着越しだけじゃもう我慢できない、 ショーツの上からでいいから犯して、 汚れてもいいから貫いて、 そんな、もう何もかもどうでもいい私がいた。 端正な顔にも、熱く高鳴る胸にも触れず、下半身だけを愛される屈辱的な逢瀬、 それなのに私は融け尽くされて、淫らな女だけが、絹越しの芯に残った。 もう止めようのない私の女が、獲物にむしゃぶりつくように、自分から幹也に覆い被さった。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・幹也?」 はて、どういうことか 期待していた、手が一向に来ない、まるでダムにヒビが走ったまま、いくら待っても決壊が起きぬように。 「・・・・・・・・・・幹也ぁ・・・?」 とろんとした目で、今だ私の秘宮に顔を埋めるあの人を覗き込む、 手も止まって、ダラリと下がって、 また私をじらす気なんじゃないだろうか? そんな不安に駆られた私は、裾を持った手をやっと離し――、 バタン、 倒木の如く後ろに倒れた。 白目を剥き口から泡を出して、――あ、股間が湿ってたの私のじゃなかったんだ。 ――――完全に意識を失っている。 ・・・・もしかして、私感じてる間ずっと幹也を股間に押し付けて、そーいえば、最後にバンバンお尻を叩いてたの、何かのプレイじゃなくて・・・・・? ・・・・・・幹也・・・・・・・・おい幹也? 「幹也ァァァァァァァァァァァァ――――――!!!!?」 股間に顔を埋めて窒息死。 殺人趣向者の俺でも、そうそう思い付かない最低な殺し方で、俺は危うく最愛の人を失うところだった。 呼吸口圧迫、布地が皮膚の間の細かい隙間を埋めた。 たとえあんな布でも、俺が持てば、立派な凶器になるらしい。 ――続く。(?)
後書き
どうもはじめまして、40%の60Lと申すものです、 今回は駄作ながら64(略称)のはじめてのエロ及びらっきょ作品を出させていただきました。略して「はじるす」、 初めて故に至らないところ〜といういい訳もありますが、楽しんでいただけたら幸いです。 それでは手短ですが、次があったらもっと踏み込みたいなあ。 |