消えない夜に
















 夜の風に吹かれて、揺られながら、ベランダで流れていく月を見てた。

兄さん、どうして、兄さんの心を側に感じるほど、








 秋葉は・・・



秋葉の心は淋しいのでしょう・・・。










 ふぅ、と息を吐く。
ここに立って何度目のため息なのだろう。

懐中時計を見る。

兄さんのことを、考えていたら、眠れなくて、ここに来たのが一時間前。
それから、ずっと、月と星を眺めながら、ため息ばかりついている。










ねぇ、兄さん?


はやくここにきて。


秋葉の隣で、笑って?










 ねぇ、兄さん?
秋葉は、どうして、兄さんにきつい態度で接したかわかりますか?
・・・わからないでしょうね。
兄さんは、秋葉を置いて8年も、外で暮らしていました。
その間、いろんなことを見て、聞いて、知って、体験したのでしょうね。
・・・でも、兄さんは何も変わってなくて、少しくらい変わっていてくれたら、こんなに思わないのに・・・。
どうして、この人は、屋敷の外に出ても変わらないのだろう?って
もっと、外のことを教えてほしかったのに、聞けないから、悔しくて、あんな態度で接したんです。










ごめんなさい・・・。兄さん。











 私が兄さんの学校に転校した最初の日、一緒に帰りましたよね。
それで、兄さんと、屋敷に戻って部屋に戻るとき、後ろ頭を横目で、見たんですよ。
ため息ついて、沈んだ、頭と、肩が可愛くて、くすっと、少しだけ笑っちゃったんですよ。
 あの日、いろんなことがあって、秋葉には、とても、とても、楽しかったんですからね。
それは、あのシエルという方はキライです。
でも、兄さんが、あんなに楽しそうに、気兼ねなく話せる存在であるあの人が羨ましかったんです。
それが、何か・・・人の業じゃなかったとしても。








 兄さんがいなくなって、どれくらいになるんでしょう?







ねぇ、兄さんのその瞳が夢に見ていたものは何?







 その夢の中には秋葉はいる?






 
・・・そこで笑ってますか?









 私が目覚めた朝・・・多分、あの日の夜でしょうね。
兄さんは私の約束を守らないで、姿を消してしまったのは、兄さんが見せた、兄としてのプライドなんですか?
妹の言うことなんか聞かないっていう、プライドだったのでしょうか?










 ・・・最近、思うんです。
私が兄さんと同じ立場でも、こうするように思うんです。
それくらい、秋葉は、兄さんのことを想ってるんです。









 本当は、もっと、もっと兄さんと抱き合っていたかった。
 でも、兄さんが、「嫌だな」って思うかなって、触れられなかったんですよ。
 あの日、私が私じゃなくなっても、シキじゃなくて、兄さんを、見ていたんですよ。
 あの時、兄さんを襲うくらいなら、自分で、この胸を引き裂こうって思ったくらいに。








 ・・・それくらい、兄さんのそばにいたかったんだって、



 思ってもいいですか?








 少女は、ターンするように、くるりと、ベランダで一度だけ、回る。
そして、また月を見上げる。








ねぇ、兄さん?




 秋葉は、兄さんがいなくても、変わらずに元気にしていますよ。




ねぇ、兄さん?



 秋葉は、兄さんがいなくても、ちゃんと笑えていますよ。










今夜は、こんなに光があって、
星は、まばゆく空に輝いているのに・・・







この目には、兄さんが映らないんです。



ねぇ、兄さんの影が映らないんです。










映らないんです・・・

















〜〜〜Fin〜〜〜





あとがき



 久々に寄贈させていただきました。
 始めましての方もいるかもしれないです。
 秋葉のトゥルーエンドのあとのお話です。
 セリフというか、言葉がないのは、効果です。自分なりの。
 実験ですね。
 こう、静かな夜に佇む秋葉ってなんか綺麗ですから。
 最後は、わかりにくいラストになってしまいましたね。
 また、瑞香さんに「本編で説明しましょう」って言われそうですが、
 秋葉は、失明したわけではありません。
 ただ、志貴が目の前に、いないだけ、それだけです。
 ここら辺を改善したいなぁ・・・とは思うんですが、中々、うまくいきません。
 まぁ、自分のペースで勉強していきたいです。

 それでは。

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