改訂版・百話物語 31〜40


メッセージ一覧

1: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:23:22)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(31)

<真夏の終わりに・・・>

時間は少し遡り、7月

屋敷の電話が鳴り響く。

トゥルルルル、トゥルルルル、トゥル・・・ガチャ

「はい、遠野家ですが・・・ああ、久我峰様・・・えっ・・・はあー、わかりました、少々おまちください」
彼女の名前は<琥珀>、遠野家に残る数少ない使用人だ。
タタタタタタタ、廊下を歩く音が近づいてくる。
「琥珀、今電話が鳴らなかった?。」
彼女の名前は<遠野秋葉>、成人さえしていないと言うのに遠野家当主という立場にある。
「あ、秋葉様ちょうど良かったです。久我峰様からお電話です」
「・・・はあー、まったく何であんな男が・・・」
と言って電話の受話器を受け取る。
「はい変わりました。・・・はっ?、えーと・・・確か・・・に、会った事は・・・なっ、暴行事件?。な、なな、・・・は?・・・何故あの子をこちらに呼ばなければならないのですか?」
次第に不機嫌になる秋葉。
「・・・わかりました、この事はよく話し合う、という事で・・・それでは」
電話が切られる。
「秋葉様?、どうかされましたか?」
「・・・はあ、何であの子が・・・」
「秋葉様?」
「あっ、え・・・どうやら分家の一人が問題を起こしたようなのよ」
そして、秋葉は事情を話した。





遠野家の敷地面積はとてつもない大きさだ。
そして、そこにそびえたつ屋敷もかなりの大きさだ。
その屋敷内の一箇所に人が集まっている。
「それでは、兄さんの退院を記念して・・・」
「「「「「「カンパーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイ」」」」」」
ガチャン、グラス同士がぶつけられる音。
当然その場の主人公<遠野志貴>も飲む。
・・・酒を。
「フー、皆ごめんね、迷惑かけて」
と、志貴は言った。
「いいよいいよ別に〜、志貴が無事なら〜」
彼女の名前は<アルクェイド・ブリュンスタッド>、<真祖の姫君>と恐れられる者だ。
「そうですよ。・・・まあ、心配をかけた代償としてデート一回ですね〜」
彼女の名前は<シエル>、<教会>という退魔機関の人間で本名を<エレイシア>という
「・・・あ〜ら先輩、何か仰りましたか?」
・・・ちなみに秋葉の髪は赤。
「その通りです。し、し、志貴さ、様は、は、私とデートに、に行くのです」
彼女の名前は<翡翠>、遠野家に残る数少ない使用人の一人。
「・・・あの、皆、勝手に・・・」
「何言ってるのよ、志貴は私とデートに行くんだから」
志貴の言葉は聞こえていない。
「何言ってやがんですかあなたは、と、遠野君は、私と・・・」
「・・・お二人ともふざけないでくださる?。兄さんは・・・」
「あは〜、私とですかね〜?」
「・・・琥珀・・・あなたまで・・・」
その時、黒い物体が志貴の膝へ向かった。
「ニャ〜ン」
(しーきーのーひーざー)
この猫・・・彼女の名前は・・・。
「あら、レン。最近見ないと思ったらこんな所に居たんだ」
彼女は・・・。
「ああ、アルクェイドの使い魔ですね・・・何で遠野君に?」
<使い魔>という単語で皆一斉に振り向く。
「ああ、皆には言ってなかったね。この際だから言うけど俺、レンと<契約>して主になったから」
・・・沈黙。
・・・で。
「兄さん?。使い魔と<契約>とは一体・・・。」
「ああ、実はレンが死にそうでね、それで俺が主になったんだ」
さらり、と言った。
「に、兄さん?。兄さん自分の体がどうなっているかわかっているんですか。」
「大丈夫だよ妹、志貴には<直死の魔眼>があるわ。レンへの供給<は>問題ないわ」
その言葉に三人を除いて皆安心する。
「ええ、それは問題ありません・・・が、遠野君、本当に<契約>したんですか?」
ジャキッ。突如俺の喉に<黒鍵>が突き付けられる。
「せ、先輩?」
なんか、めちゃめちゃ怒って・・・切れている。
「しーきー?、レーンー?」
アルクェイドもだった。
「えっ、なっ・・・」
何かやばい・・・。
「ちょ、ちょっと二人とも兄さんに何を?」
「し、志貴様に何をなさるのですか」「あはー」
最後の発言者だけは楽しそうにしている。
「だ、だから、俺はレンに俺の血を与えて主になった。それに問題があるんですか先輩」
その言葉で二人の動きが止まる。
「志貴の・・・」
「血を・・・」
<黒鍵>が引っ込められる。
「「あっ、あは、ははははははは」」
と、苦しそうに笑い出す二人。
・・・俺何かしたか?。


で、二人に説明をちゃんとしてもらった。
「あはー、つまりお二人は志貴さんが、<淫夢>で<契約>した、と思ったんですね」
<淫夢>の辺りで顔を赤くする、翡翠。・・・可愛いなあ、と眺めてしまった。
「に・い・さ・ん?」
「・・・はい」


その後、レンの人間の姿を見せた。アルクェイドはともかく皆驚いていた。
なんせ見た目は本当に幼い少女なのだから・・・。


ちなみに、秋葉はレンをこの屋敷に置く事をしぶしぶながら承諾してくれた。
・・・条件に<レンには手を出さない>何てのがあった。
どうやら信用されていないらしい。


そして、パーティーは続く。・・・はずだった。
「いい加減消えなさいこのアーパー吸血鬼ー」
「そっちこそバチカンでもどこでも行っちゃっへばー」
「・・・どうせなら二人とも・・・消えなさい」
と、大喧嘩が始まる。
もしかしたら、俺は一生<安息日>が来ないのかもしれない、と思ってしまった。


一時間後、安全のため身を隠していた翡翠と琥珀さんが戻ってきて一緒に掃除をする事になった。
・・・琥珀さんだけはレンの相手をしてもらおうとしたが・・・レンが逃げ、それを琥珀さんが追うと言う追いかけっこに・・・。
(琥珀さん? 何かレンにしたんですか?)


そして、見事元通りになった頃、秋葉が皆を呼んだ。
「妹ー、用事って何?」
「そうですね、これまた改まって・・・」
実は俺も知らない。
「はい、これは私と琥珀しか知らない事で、兄さんにも言ってはいません」
「えっ、何で言わなかったんだ?。」
もう少し<兄>として自分を頼ってほしい。
「申し訳ありません。言う必要が無いと思い黙っていた事なんですが・・・どうやら説明が必要になりそうなんです」
秋葉は申し訳なさそうにしている。
一体どんな事なのだろうか。
「姉さん」
「何?、翡翠ちゃん?」
「どうして私にも教えてくれなかったの?」
「う〜ん、実はどうなるかまだ確定した訳じゃないだけど・・・」
「いいわ、琥珀。私が説明するから」
皆秋葉の言葉を待つ。
その気配にレンも注目する。
「実は、もしかしたら何ですが・・・この屋敷に新しい同居人がくるかもしれないんです」
「「「「「えっ」」」」」
その言葉には皆驚いた。



話を要約すると、
<今宮隆一>という少年が俺達の親父の命令で<久我峰家>に居たが、学校で暴力事件を起こしたため手に負えなくなったので<遠野家>に押し付けようとしている、という事だった。
そして、彼の家族は皆死んでおり、俺とは・・・まあ俺は養子だが・・・従兄弟になるらしい。
しかも異端の血が色濃く、反転の対策としてそれなりの家柄でないといけないらしい。
「ふーん、そんな奴が居たんだ」
まあ、知らなくても当然もしれないが。
「・・・実は隆一は一度この屋敷に来ているんです」
「えっ、そうなの?」
「はい、と言っても兄さんが来る少し前・・・入れ違いと言った方がいいかもしれませんが、とにかく来たんです。まあ、その時の隆一の年齢は確か三歳ですから覚えているかあやしいですが・・・」
俺が来る前・・・四季がまだ反転していなかった時だろう。
「ふ〜ん、でもなんで私とシエルにそんな事話す訳?」
「わかりませんか、アルクェイド?」
先輩が答える。
「要するにその隆一君が来たらこれまでのような騒ぎはなくしてほしい、と言う事ですね?」
なるほど、それならわかる。
「はい、なにせ隆一の<遠野家の鬼の血>については、お父様が記憶を操作して忘れさしているんです。・・・そうしないと隆一は壊れていたかもしれないから・・・」
壊れていた?・・・どういう事だ?。





そして、説明が終わった。・・・俺はしばらく立ち上がれなかった。
「・・・兄さん」
「・・・志貴様」
「・・・志貴さん」
「・・・遠野君」
「・・・志貴」
家族を殺され、その相手に復讐した男。
・・・そして施設、久我峰家と、たらいまわしされた挙句にここへ来る。
何故だろうか。
俺は<今宮隆一>という人物に会ってみたくなった。
「いいんじゃないか?、ここに来ても」
それが俺の出した答えだった。

2: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:23:48)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(32)

時間は大体午後の4時、真夏なのでまだとても明るい。
今の俺は緑色の半袖と青色の薄い長ズボンに軽い荷物の入ったリュックという姿だ。
三咲町に入ったのは大体3時頃。
もう、一時間くらい歩いた事になる。
坂を登る。
この先にこれからお世話になる<遠野家>がある。
おそらく、当主の秋葉さんは俺が記憶を取り戻して<異端の血筋>の事を知っているとは思っていないだろう。
まあ、表面上家族にならないといけないからこういう話題には触れない方がいいだろう。
小さい頃ここに来た事を覚えていてくれているだろうか。
あの時遊んだ皆さんはどうしているだろうか。
・・・もしかしたらかなり変わっているかもしれない。
一応ここは金持ちなのだ。性格が歪んでいてもおかしくない。
(テレビノミスギジャナイノカ?)
(・・・そうかも)
最近そういう金持ちの醜い争いの事件物を良く見る。
・・・考えすぎかもしれない。
とにかく、今の俺の最大の問題は・・・


      結局、<さん>と<様>どちらで呼ぶのか、という事だ。(・・・オイ)


まさに、死活問題。
(ナ、ワケガアルカ)
(だって、目上なんだし・・・)
(ソレハイイカラ、チャントクラセルカ、カンガエロ)
・・・最もな意見だ。
何て俺自身と話している内に・・・大きな門に辿りついた。





まず、<デカイ>というのがこの屋敷の第一印象だった。
屋敷の周囲を囲む高い壁。
外からでもわかる中庭の森林。
来る人全てを威圧する広大な土地。
小さい頃とイメージが大分違う。
・・・まあ、暮らせばなれるだろう、と考えながらチャイムを鳴らした。
ピンポーン・・・沈黙・・・声が聞こえた。
「はい、どちら様でしょうか?」
女の人の声だった。
「あ、はい、あの・・・今宮隆一ですが・・・」
「隆一様ですね、お待ちしておりました。お入り下さい」
門に手をかけ中に入る。
・・・門から屋敷のドアまでかなりでもないが離れている。
「やっぱ、他の異端者や退魔の襲撃を恐れてこうなったのかな?。」
ありえない事ではなかった。
タ、タ、タ、タ・・・ゆっくりと周りを見ながら歩く。
・・・そしてドアの前に立つ。
コンコン、ドアを叩く。
・・・ガチャ、ドアが開けられた。
「ようこそおこし下さいまし・・・た」
ペコリと頭を下げられる、が途中で止まりこちらをじっと見ている。
声からしてさっきの女の人だろう。
久我峰家でも頭を下げられる事はあったが、じっと見られたのは始めてだった。
「あ、いえ・・・こちらこそこれからよろしくお願いします」
こちらもリュックを下ろして頭を下げる。
「は、あ、いえ、おやめ下さい、隆一様は今日から私の主の一人になるのですから」
じっと見るのをやめたが、今度は困っている。・・・よしだったら。
「じゃあ、主として命令します。自分にも敬語で話させて下さい」
そう言うと、向こうはさらに困ったような顔をした。
久我峰家でも同じ事をした。
まあ、大抵どこでもこんな事を言えばこうなるだろう。
「・・・それは・・・その・・・」
・・・ちょっとふざけすぎたかもしれない。
・・・ま、この事は後でゆっくり話そう。
「それではしばらくの間よろしくお願いします。翡翠さん」
今度は驚いた顔をした。
・・・まあ、名前を覚えていた事に驚いたんだろう。





「・・・居間で秋葉様がお待ちです。お荷物はお持ちいたします」
リュックを渡し翡翠さんの後について行く。
・・・と言っても目的地の居間にはすぐに着いた。
ま、予測していた通り、なかなか手の込んだ造りだと思う。
しかもかなり広い。
そんな空間を一人で支配するかのように一人の女性が座っている。
「あ、え・・・お久しぶりです、秋葉・・・様」
居間の入り口でお辞儀する。
が、なかなか返事が返ってこない。顔を上げる。
「・・・ええ、久しぶりね隆一。・・・そこにお座りなさい」
言われた通り秋葉・・・様の目の前の椅子に座る。
何故だろう、この人も驚いた顔をした。
「隆一、まずあなたに言っておく事があるわ」
「はい」
例えるなら<透き通った声>、という感じだった。
「久我峰家で何をしていたかは聞かないわ。でもここは遠野家、勝手な振る舞いは許さない、わかったかしら?」
「はい」
覚悟はしていた。
・・・ま、理由はどうであれ、学校の校長と担任を殴ったんだ。
退学ではなく転校としてくれただけ感謝しないといけないのだ。
「そう、わかってくれればいいわ。それと・・・」
秋葉様は少し笑みを浮かべた。
「<様>ではなく<さん>でいいわ」
「・・・はい、秋葉さん。よろしくお願いします」
もう一度頭を下げた。





「さてと、翡翠」
「はい」
「兄さんを呼んできて」
「わかりました」
<兄さん>・・・おそらく<志貴さん>の事だろう。
最近、二人の漢字の名前を知った、というかさすがに知らないと不味いと思い調べた。
「琥珀」
「・・・はい、秋葉様」
秋葉さんが呼ぶともう一人別の部屋から女性が出てきた。
・・・確かこの屋敷に使用人は二人しかいないという事だったはず。
おそらくもう一人のほうだろう。
・・・って言うか、この人を俺は知っていた。
「・・・あ、隆一様ですね。私、この屋敷に仕える琥珀と申します」
また頭を下げられる。
・・・でもこの人も一瞬沈黙した。
「はい、お久しぶりです、琥珀さん。」
こちらも頭を下げる。
「は?、どこかでお会いしましたか?」
どうやら忘れているようだ。
・・・まあ、チラッと見ただけだから。
「はい、小さい頃屋敷の外から琥珀さんの事を見ました。まあ、覚えていなくて当然ですね」
笑ってみせる。
「あはー、そうなんですか?、よく覚えてますね〜」
向こうも笑った。
・・・でも何故だろう、何となく目が笑っていない気がする。
「はい、でもそれほど強く覚えてる訳・・・」
「秋葉様、志貴様をお連れしました」
翡翠さんが戻って来た。
・・・そして後ろに男の人が居た。





「君が隆一君・・・だね、秋葉の兄の遠野志貴だ、よろしく」
手を出される。
「あ、はい、こちらこそよろしくお願いします」
こちらも手を出し握手する。
「いやーでも志貴さん雰囲気変わりましたね」
それが率直な意見だった。
・・・どこをどうと聞かれても困るのだが。
「あ、まあね、隆一君こそ変わったんじゃないか?」
そうかもしれない。
・・・<色々>あったから。
「そうですね・・・でも志貴さん」
「なに?」
「できれば昔みたいに呼び捨てにしてくれるとうれしいんですけど・・・」
そう、その方が何故か気が楽になる。
「・・・わかった、じゃあ隆一、なれないかもしれないがお互いよろしくな。俺も帰って来た時は大変だったし・・・」
「兄さん」
秋葉さんが止めに入る。・・・ああ、その事か。
「いいですよ、志貴さんがどうして当主に成れなかったかは聞きましたから」
その言葉に皆沈黙した。
・・・そんなに不思議かな?。
「へー、誰がそんな事説明したんだ?。」
「斗波さんです。確か事故で体が弱くなって・・・その・・・追い出された・・・とか」
その言葉に秋葉さんが反応した。
「そう、久我峰が・・・」
苦々しげ、という感じだ。
まあ、あの人の部屋にあった・・・いや忘れよう。


「それでは隆一様、お部屋へ案内します」
「あ、はい。それじゃ皆さん、また」
そして俺は居間を出ていった。
俺の部屋は館の東館の二階だった。案内された部屋に入る。・・・で。
「広い・・・」
まあ、予測はしていた。
でも、実際に入ればやはりこう言ってしまう。
しかし、久我峰家の部屋より広いとは・・・。
「どうされましたか?」
翡翠さんは平然としている。
・・・改めて遠野家の資産の凄さがわかった気がした。





「ふーう」
俺はさっきまで隆一が座っていた席に座った。
「しかし、驚きましたね〜」
琥珀さんだ。
「ええ、驚いたわ」
秋葉だ。
「俺もだ」
一応騙すのは気が引けたがそれよりも・・・。
「似てますね」
「似てるわね」
「・・・ああ、そうかもな。翡翠が言っていたけどまさか本当とはな」
そう、似ているのだ。
髪型や細かい所は少し違ったが・・・。
あれは・・・。
あの時に・・・。
学校でアルクェイドと戦った後に・・・。
会った奴に似ていた。
     

       
        七夜志貴・・・つまり俺自身に・・・。

後書き
 実は隆一の人物設定を書かなかったのはこの時のためです。
要は隆一は、シエルのトゥールエンディングの時に出てきた赤い着物を着た少年、七夜志貴に似ているのです。
ちなみに髪は黒髪で志貴より少し短め、という感じです。
よくわからないかな?。
それでは〜。 


3: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:24:19)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(33)


じ〜・・・俺はこれからしばらく使う部屋のベットから天井を見る。
たった少しの会話で、ここの人達は良い人だとわかった。
しかし、うまくやっていけるかは別問題だ。
ガバッ、ベットから起き上がる。
そう、俺はこんな事をしていてはいけないのだ。
「さて、やるぞ」
気合をだす。
何故なら、

          部屋に・・・ダンボールが五個もあるんだから。(しかも大きめの)





しばらく居間に沈黙が流れる。
タタタタタタ・・・、翡翠が戻ってきた。
秋葉が言う。
「翡翠、隆一の様子はどう?」
「はい、どうやら落ち着いてはいるようです」
「・・・そう」
とにかく、これから隆一は家族の一員となるのだ。
家族らしく・・・何をするんだろうか。
「志貴さん」
「何ですか、琥珀さん?」
「いつも通りでいいじゃないですか」
確かにそうだ。
いつものように・・・でも。


          琥珀さん、あんた何で人の心がわかるんですか?。





久我峰家でのお小遣いが毎月千円。
それで、漫画を買ったりゲームを買ったりした。
ゲーム機は友達に千円で貰った(買った?)。
理由は、○○○○2は○○○○1の方のディスクも使えるので必要が無くなったからだ。
久我峰家の人達に頼べば買ってもらえただろうが、そういう事はしたくなかった。
とにかく、そういった<俗物>がダンボール三個分だ。
まあ、そのうち一個はテレビとノートパソコンに占領されているので多いとも言い切れない。(・・・ソウカナ?。)
この二つも実は直接買った物ではない。
両方とも久我峰家で粗大ごみとして捨てられそうだったので、<勿体無いから>と理由を付けて手に入れた。
お金持ちが捨てる物はまだ使える物が多い。
ただし、捨てられた物を勝手に持って行くのは犯罪だそうだ。
まあ、貰ったからこの点も問題は無い。
(・・・<ゲームキ>ハ?)
残りの二個は衣服などが入っている。
部屋のクローゼットにしまおう。
最初から置いてあった机にノートパソコンを設置。
テレビを・・・持ってきた<捨てられそうだった折り畳み式のテーブル>に乗せる。
後は・・・漫画やゲーム関係を・・・組み立てる本棚に入れる。
少し前に、ある店で買ってここにダンボールごと送ったのだ。
こういう本棚は完成している物より、自分で組み立てる物の方が遥かに値段が安い。
だから簡単に購入できた。
そして、ここに来て二時間程で、部屋は整った。





そして、だいぶ落ち着いた頃、ドアがノックされた。
「隆一様、夕食の準備が整いました」
「はい、わかりました。すぐに行きます」
翡翠さんが立ち去る。
「ふう〜、・・・さて行くか」
部屋の外に出る。






夕食はなかなか美味しいものだった。
詳しくはわからないがそれなりに高い食材を使っていただろう。
前にここに来た時、マナーが悪くて何度も睨まれたが今回はちゃんと久我峰家で基本は勉強したので睨まれなかった。
しかし、話しながら食べる、なんて事は無いようだった。





夕食後、居間でお茶会が開かれた。
最初の話題は俺が主役だった。
「どうだい、何とかこの家に慣れそうかな?」
志貴さんだ。
「はい、何とかなりそうです」
そう言って、手に持った高そうな紅茶を飲む。
・・・味は苦くてよくわからないが。
「あは〜、志貴さんも来た時そうでしたよね〜」
「ええ、何せ八年間も離れて暮らしてましたから・・・」
へえ〜、そんなに長い間・・・。
「まあとにかく隆一にはこの家に早くなれてもらわないと・・・」
秋葉さんが言った。
しかし・・・。
「志貴さん」
「何だ?」
「幸せ者ですね〜」
「えっ」
首を傾げている。
「だって・・・こんなに美人の人達に囲まれて暮らしてるじゃないですか。」
と言って、皆の顔を見る。
「はっ」
「えっ」
「・・・あ、あは〜」
あれ、何か動揺して固まった。
「・・・そう・・・見えるか」
「えっ、志貴さん何か言いました?」
「いや、何も」
何か一瞬だけ疲れた顔をした気がした。
「りゅ、隆一、な、何を言ってるのよ」
お、秋葉さんが復活した。
「いえ、ただ皆さん美人だな〜、って純粋に思っただけなんですから」
そう言うと、また三人は固まった。
「私が美人・・・」
「美人・・・美人」
「ほえ〜。」
・・・このリアクションは何を意味するのだろうか。





ニャ〜ン、何て声が聞こえてきた。
「えっ」
声がした方を振り向く。
「レン、こっちに来るかい?」
ポンポンと自分の膝を叩く志貴さん。
シャッ、オリンピック選手顔負けの速さで移動した。
「ニャォ」
(し〜き〜)
「志貴さん、その黒猫は?」
「ああ、紹介してなかったね、この子は<レン>。見ての通りの<ただの>黒猫だ」
へえー、黒猫は不吉だと言うけど意外と可愛い。
しかも体と同じ黒色のリボンを付けているとは・・・。
「リボンまで付けるとは・・・おしゃれですね〜」
はて?、前にも黒で自分がおしゃれだとか抜かした奴がいたかも・・・ああ、あいつか。
・・・忘れよう。
「え、うん、まあね」
「しかし、猫ですか」
そっと立って近づく。
スッ。あっ、何か身を引かれた。
膝の上だからそれ程移動は無いが動くのはよくわかる。
・・・触るのは今度にしよう。
座る。
「こらこら、隆一は大丈夫だぞ」
「いいですよ、暮らしてればその内に何とかなりますよ」
そう言って紅茶を飲む。
・・・やっぱり味はよくわからない。


         でも、何だろう。この猫に対する違和感は・・・。





こうしている内に就寝時間が近づいた。
居間を出て少し先にある風呂場で体を洗い、部屋に戻った。
十時に寝る、これがこの家の決まりの一つ。
・・・久我峰家は特に無かったんだけど。
ベットに寝る。
どうやらすぐに眠れそうだ。
普通はなれない場所ではこう簡単に眠れないらしいが俺は関係なしにすぐに眠ってしまう。
色々考える事もあるが、今日は寝る事にしよう。
・・・おやすみ。





「はあ〜」
俺は自分の部屋でもう何度目かの溜息をついた。
そう、俺は隆一を騙している。
向こうはまだ気づいていないが、時期に気づくかもしれない。
もしかしたら気づかないかもしれない。
真実を話すべきなのか、それとも・・・。
「そういえば、ここに来た時も秋葉たちは俺に話さなかったな」
歴史は繰り返す、とはよく言ったものだ。
俺は今度は騙す側だ。
・・・果たしてこの行為がどういう結果をもたらすのだろうか。





「はあ〜」
私は自分の部屋でもう何度目かの溜息をついた。
そう、私はまた人を騙している。
これが本当に良い判断なのか・・・そう信じたい。
「・・・兄さんが来た時もこうだったわね」
繰り返される歴史、この先もまた繰り返されるのだろうか?。





「・・・姉さん」
「何も言わなくて良いわ翡翠ちゃん」
ここは台所。私達二人は片づけをしている。
そう、皆で私達は隠したいのだ。
過去を。
でも・・・。
「これが一番良いのかは誰にもわからないの。でも、私達はこうする事を選んだ。これが正しいと思いましょう」
・・・本当にそれでいいの、姉さん。私は・・・。


こうして、夏の夜は終わりを告げる。







赤、朱、紅、血、血、血・・・
ああ・・・何て不思議な色。
自分にも人間と同じ色の物が流れている。
不思議、ふしぎ、フシギ、何で、こんなにも・・・
            
               心が
震える
                      不思議で
    素晴らしい

               なんだ・・・。

さあ、早くあそこへ。
                              血塗れの  

              あの場所こそ・・・。







朝起きると時間は八時、早くも無いが遅くも無い。
まだ夏休みだが、色々手続きをしないといけないだろう。
この町の地理も頭に入れたい。
ベットから出て着替える。
服が置いてあった。
・・・さすがはお金持ち。
気配りが行き届いている。
・・・でも久我峰家でもあったが届きすぎはよくないだろう。
例えばいつの間にか部屋に置いといたゴミがちゃんと処理されているという事はこの部屋で何かしたという事だ。
・・・まあ、本当は感謝しないといけないが。
居間に行くと琥珀さんがいた。
「おはようございます」
「はい、おはようございます」
笑顔で返された。
・・・笑顔がとても似合う人だ。
「朝食ですね。今できたところですよ」
「ああ、はい、ありがとうございます」
台所で食べる。
居間に戻る。
・・・あ、志貴さんだ。
「志貴さん、おはようございます」
「ああ、おはよう、昨日は眠れた?」
「はい、ぐっすりでした」
そうか、と言って笑う。
志貴さんは笑顔が良く似合う。
これなら異性に結構もてそうだ。
と、琥珀さんが来た。
「ああ、志貴さん、今日は早いですね〜」
「はは、もう九時ですけどね」
・・・へえー、意外と朝弱いんだ。
「あ、隆一様。秋葉様が学校の手続きなどで呼んでますよ」
「あ、そうですか」
「はい、お部屋でお待ちになってます。案内しましょうか?」
「はい、お願いします」
頭を下げる。
・・・翡翠さんからこの家の仕組みは聞いたが歩いてもいないので一人でいかないほうがいいだろう。
「それじゃ志貴さん、朝食はいつもの所にありますから」
「はい、いただきます」
そうして、二人で居間を出て階段を登る。・・・そう言えば。
「琥珀さん」
「はい?、何ですか?」
階段を登った所で歩みが止まる。
「どうして、<志貴様>じゃなくて<志貴さん>何ですか?」
「ああ、それは志貴さんが<様>はいらない、と仰ったからなんですよ。翡翠ちゃんは<様>で呼んでますけど・・・」
なるほど・・・それなら。
「自分も変えてくれませんかね?」
頼んでみた。
向こうは少し驚いた顔をした後・・・笑った。
「それじゃ、<隆一君>で良いですか?」
「はい、お願いします」
こちらも笑った。





秋葉さんの部屋はさすがに広かった。
で、そこで色々転校手続きなどの話し合いをする。
・・・この間は<私立>だったがこの町には<市立>しかないらしい。
まあ、通えるならどうでも良いが・・・。
そして、学校の下見やら手続きやら学力試験などで時間はあっと言う間に過ぎ九月迎えた。





ところで、一つ見方を変えた事があった。
それは・・・。
「志貴〜、遊ぼう」
「何言ってやがんですか。アー・・・この、えーと」
「とにかくお引取り下さい」
「・・・志貴様」
「まあまあ、落ち着いてくださいな。


志貴さんって、意外と罪な人だと思った。


「ち、違うんだ、りゅ、隆一〜」
まあ、それなりに楽しい夏休みにもなった。
「お、おい待って・・・」
「し〜き〜」
「「「「あーーー」」」」

しかし、アルクェイドさんって人じゃないような気がする。
・・・まあ、一応異端者の一族だし、指摘するのも悪いから気づかなかった事にしよう。
(・・・イイノカナ?。)





だが、彼は知らなかった。目の前に起きている騒ぎは・・・<かなり抑えた>物だという事に・・・。






4: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:24:40)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(34)

<番外編・〜青子先生の特別補習〜 (1) >

(注意)この話は<月姫本編>と<歌月十夜>のネタが多数含まれます。


ここは、本編主人公<遠野志貴>の学校とそっくりの場所。
教室は人影は三人ほど。・・・とても普通の生徒には見えない。
三人とも教壇の近くに座っている。まあ、隣同士ではないが。
一人は不機嫌そうにしている。
一人はニヤツいている。
一人は寝てる。

ガラガラ、ドアが開く。コツコツ、教壇へ向かう足音。で・・・。
「はあ〜い、皆補習を始めるわ。注目〜」
先生こと・・・蒼崎青子はうれしそうにしている。

「先生〜。質問があります」
三人の中で一番背の低い生徒が手をあげる。
「はい、どうぞ」
ガタッ。立つ。
「僕、つい最近死んだ気がするんですが〜。」
その発言に残りの二人も目を向ける。
「ええ、その通りよ。今回はどこぞの<カレー教なんちゃって女子高生>先生のをパクッたものだから」
さらりとトンデモネー事を言う。
「おいおい、それじゃここに居る奴ら皆死人かよ?」
言っていて悲しくないのだろうか?。
「まあ、いいんじゃない。結構おもしろそうだし〜〜〜」
一番背が高い奴が言った。
「はい、という訳で見事死んでしまった悪役三人組に補習を行います。ちゃんと受けるのよ、武忌君、烈矢君、無者君。ここしか出番ないからね」
この発言に皆黙った・・・。



ここからは発言に名前の頭文字を書きます。



武「また質問がありま〜す」
青「はあ〜い、何かしら?。武忌君?」
武「ズバリ、これを行う理由は?」
青「いい質問ね。まあ、今回の補習の課題でもあるから、しっかり聞くのよ。今回の課題は・・・」


<遠野志貴の人生設定説明〜かなり無理に〜>


三人「「「・・・。」」」
黙る三人。
青「・・・いいじゃない私の大事な生徒をネタに使っても」
烈「生徒って、一人だけだろ」
無「僕、会った事ないよ」
武「僕はあるけどそんなに関わっていないな〜」
青「・・・随分と口が達者なようね・・・」
いきなり険悪ムード。
烈「大体<遠野家>の養子とはいえ長男の話なんざ聞きたたかねよ。それより俺はあんたの<年齢>を聞きたいぜ。この、年齢不詳者」

キーーーーーーーーーーーン

辺りが光に包まれた。
・・・で。
烈「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
そして彼はこの世から消えた。
無「こ、こ、怖い・・・あの二人より・・・」
武「へえー、これはこれは・・・いつかお手合わせ願いたいな〜〜〜」
それぞれの思案は違いながらも補習は始まった。





青「さて、何故これを行うか言ってなかったわね。答えは作者が説明したかったからよ」
武「・・・それなら作品で明かせばいいのに。」
無「・・・確かに、まあ<混沌>のネタを書きたいから書くような人だからね。でも、これ以上<夢十夜>のネタはパクらない方がいいと思う・・・」
痛い所を突いてくる。
青「・・・さて、改めて補習を始めるわ」
無「無視か」
青「今回の作品で使われる<遠野志貴>は本編を混ぜこぜにしてるわ」
武「ふ〜ん。て事は<死徒四人衆>全員出すわけか。まあ、<歌月十夜>を元にするとそうなるね〜」
無「<死徒四人衆>って、いいのかな勝手に本編に出てくる<死徒>をそんなふうにしちゃって・・・」
青「まっ、わかりやすいからいいわ。さて、手元の教科書を開いてね」
無「い、いつの間に・・・」
武「さっき、烈矢君が消された時だね〜」
パラッ、本が開かれる音。
青「さて、まずは悲劇のヒロインの代表格とされる<弓塚さつき>からね」
武「う〜んなるほど・・・でも彼女の死んだ場所って<歌月十夜>で<路地裏>に定着してるよね〜」
無「うん、それが一番いいね。後、戦った順番も<死徒>の中では一番最初がいいんじゃないかな。素質があってもこの中じゃ一番弱いし」
青「二人ともやるわね。さすが、<邪皇>のトップクラスね」
武「まあ〜ね〜〜、それじゃ次は・・・順番だと四季君?かな〜」
青「ええ、そうなるわね」
無「フムフム・・・この殺人貴と殺人鬼の語り合いは<歌月十夜>でもあった事になってるけどどうするんですか?」
武「もしあるとすると・・・四季?君を仕留めるのは妹さんだね〜」
青「・・・すばらしわ、正にそれでいくつもりよ」
かなり動揺する先生。セリフがなくなるかも・・・。
青「ま、まあいいわ。えーと、こうなるとこの主人公の妹さんは暴走するわね。そしてそれを止めるけど・・・」
無「で、ここで<感応者>の出番だね」
青「ふふふふふふふふふふッッッ」
無「ひっ、こ、怖い。」
青「ここが違う。主人公は<共有>を使って復活するのよ。ちなみに<遠野家の黒幕>さんは先に学校に行ってる事になるわ」
どうだ見たかー、何て顔をする先生。
武「・・・要するに、契約すると<ヒロイン>が決定してしまうからしないだけだね〜〜〜」
無「だろうね。っていうかこの作者、<吸血鬼の話何だから二人の能力も精より血を吸った方が都合が良いんじゃ>なんて言うとんでもねー人だからね」
青「・・・さて、ここの後は・・・」
二人「「十七分割だよね〜(でしょ)」」
ハモル声・・・意外と気が合うのかもしれない。
青「あなたたち私のセリフを・・・」
武「で、<混沌>との戦いだね〜〜〜、無者く〜ん〜〜〜」
無「ううっ、この時<混沌>が勝っていれば僕はーーーーーーー」
武「まっ、あきらめな。これが宿命なのさ〜〜〜」
青「いい加減にしなさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい」
教室中に響く声。
武「うひゃっ、怖い怖い」
全然怖くなさそうだ。
無「あうあうああああ」
こちらはマジで怖がっているようだ。
青「はあ、はあ、はあ、せっかくの私の出演を・・・ただでさえ本編しかないのに・・・」
武「確かにね〜、でも僕ら予測つくんだよね〜〜〜」
青「へっ、へえーおもしろそうじゃない、じゃ言ってみなさい」
無「ぶ、武忌さん」
武「う〜ん、でも<混沌>までなんだよね〜」
青「・・・いいわ、言ってみなさい」
武「<混沌>の襲撃はそれほど変える事は無い。あるとすれば倒した後の主人公への治療だね。」
無「た、多分、作者は<黎明>を考えているから・・・治療は<混沌>を使ったもの、だから治療は<真祖の姫君>の担当ではないかと・・・」
恐る恐る聞く無者。
青「・・・正解」
武「やっぱりね〜。でもここからは先生の出番」
青「えっ。」
無「そ、そうそう。月姫にて主人公に対し一番影響力のあるあなただからこその出番ですよ」
青「・・・ま、良いとしましょ」
無「ふー。」
青「さて、かくして<混沌>を倒した主人公、しかしある日の夜屋敷の前で包帯男に遭遇」
二人「「・・・えっ」」
青「何とか切り抜けるもの、学校の茶道室で再び遭遇、まあこの辺りは<弓>のルートだと思いなさい」
武「ちょ、ちょっと待って、何故<アカシャの蛇>様が肉体を・・・」
無「そうだよ、だって妹が仕留めた・・・あっ・・・まさか」
青「ええっ、仕留め損ねたの。ちなみに包帯は<略奪>が原因とすればわかりやすいわ」
武「確かに・・・無理やりかもね〜」
無「同感。・・・なるほど、さっきの妹さんとの戦いでの共有は四季?さんのほうだった訳か・・・」
青「そういう事。という訳で、この後はお姫様が仕留め、めでたしめでたし・・・にならないと」
まあ、そうなるだろう。
武「<転生>がないと<夢十夜>の<朱い月>の話がなくなるからね〜」
無「でも、その後は・・・色々あるけど・・・どれを採用するんですか?」
青「まず、選択は<おいかえさないと>で次に<電話しない>を選択するわ」
武「でも、それって・・・」
青「その後、<お姫様から逃げる>で、<カレー教なんちゃって女子高生>とのバトル」
無「バットのような・・・」
青「このあと、わかるかしら?」
と、聞かれ、顔を合わせる二人。
武「・・・メガネはずす〜〜〜」
無「・・・で、和解」
青「正解」
武「・・・その後は・・・<弓>の学校のエンディングの方で・・・」
無「お姫様は一度帰るけど・・・また戻ってくるだったりして・・・」
何か引いている二人。
青「・・・その通りよ。まあ、これで五人のヒロインの内、戦闘派とは全員戦った事になるわね」
二人「「・・・」」
・・・沈黙。
・・・で。
無「ちょ、ちょっと待ってよ、最後かなり無茶苦茶じゃないですか」
武「・・・。」
青「いいのよ、これが一番会話が成り立つんだから」
無(いいのか、これで・・・)
武(・・・ま、いいや・・・この方が僕にとって・・・ふふ)

青「付け足しておくと、この後<夢魔>とのいざこざね。最後はストーリーの関係上<血を舐める>よ」





キーン、コーン、カーン、コーン。そして、補習は終わった。
青「はい、皆おつかれ。それでは機会があれば・・・さよなら」
コツコツ。教室を出て行く先生。
無「はあ〜、これで出番は終わりか。さみしいですね」
武「・・・さあ、どうかな?。何かの回想で出演できるかもよ〜〜〜」
無「やけにプラス思考ですね・・・」
武「そ〜〜〜う?」
何か嫌な予感がする無者。
無「・・・武忌さん」
武「なんだ〜い?」
無「いくら肉体が使われたからって、<黎明>みたいに自分が体から離れられるとは思わない方が良いですよ」
そう、何気に隆一の体には武忌の体が使われている。
武「・・・じゃ、さよなら〜〜〜」
教室を出て行く武忌。
無「ほ、本気ですか?。ちょ、ちょっと待って・・・」
走る無者。

その後彼らがどうなったかは・・・わからない。

5: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:25:04)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(35)

<死姫の遺産>

気が付いた時は居なかった

どこだろう

たまに早起きするのは知っている

学校に好きな人がいるらしい

いつも、洗面台の鏡とにらめっこしている

でも、今日はいない

お母さんもお父さんも心配している

それでも、私は学校へ行った

学校から帰って来ても・・・居ない

お母さんが捜索願をだした

最近、通り魔がいるから心配

夜、まだ帰ってこない。

お母さんが寝なさいと言ったので、寝る

でも、心配

だから、こっそり家を抜け出した

始めて一人で夜の街を歩く

いない

いない

いない

あれ、だれか路地裏に入っていく

行ってみよう

少しだけ声が聞こえる

「弓塚、・・・・・・手を隠してるんだ」
「バレちゃった?遠野・・・・・・昔っからいいなあ・・・・・・志貴くん」

ああ、やっと会えた

会いたかった

でも何で

体が震えて動かないの

ピチャ、なんて音が聞こえた

「・・・・・・生きていくためには・・・・・・仕方なく<殺した>んだから」

えっ?今何て言ったの

何を言ってるの

「待っててね、・・・・・・一人前の吸血鬼に・・・・・・会いに行くから」

ザッ。何かが通り過ぎた

ダッダッダッ、人が目の前を通り過ぎた

二人とも私に気が付いていない

何、何、何、今何て言ったの

殺した?吸血鬼?

私は震える体を無理やり動かしながら家に向かった

次の日、私は学校を休んだ

お母さんもお父さんも居る

私はまだ震えていた

もう、頭では理解している

でも、心では否定している

そして、また夜がきた

もう一度、街に行く

あれは、全部夢だった

そう、に決まっている

いない

いない

いない

疲れた

喉が渇いた

公園の近くの自動販売機でジュースを飲む



何か音がした

もしかして・・・

私は公園に入った

また、声が聞こえてきた

「今夜は、わりと楽しめそうだよね、志貴くん?」

動けない

動けない

ここから、先には行ってはいけない

その時、悲鳴が聞こえた

「あっ。」

でも、私は動けない

走り去る音、それを追う音、

私は凍ったように固まった体を動かした

早く

早く

もっと早く

どれくらい経っただろう

私は道端に座り込んだ

もう、体が言う事を聞かない

タ、タ、タ、タ・・・足音が聞こえてきた

見ると、そこには

昨日の男の人が居た

でも、こちらには気づかずに通りすぎた

まるで、魂を抜かれたような顔

その時わかった

私の<お姉ちゃん>はもう・・・



もう、どうやって帰ったかわからないが

私は自分の部屋で寝ていた

その後は色々あった

警察の人が来てお姉ちゃんは死んだと言われた

お母さんは泣いた

お父さんも泣いた

私は・・・泣けなかった

もう、知っていたから

その時からだろう

私の周りが少しずつ

おかしくなっていったのは・・・



6: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:25:18)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(36)

http://shuss.hp.infoseek.co.jp/
   SHUさん

7: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:25:37)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(37)

http://www.aa.bb-east.ne.jp/~syamuneko/
   邪夢猫さんの黒姫祭

8: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:26:08)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(38)


玄関から志貴さんと一緒に出発する。
「じゃあ、行ってくるね翡翠」
「行ってきま〜す」
「はい、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
ペコリ、と頭を下げられる。
今日からいよいよ二学期の始まり。
まあ、俺は転校初日で初登校だが。
途中まで志貴さんと一緒なので歩く。
秋葉さんは通っている学校が隣の県なのでもう家を出ている。
「どう?緊張してる?」
「いえ、それほどでは有りません」
「・・・そうか」
そんな会話をしながら歩く・・・と、
「遠野君、おはようございます」
突然、横の道からシエルさんが出てきた。
「・・・ええ・・・おはようございます」
「・・・おはようございます」
そろって身を引く。
「・・・何なんですかその態度は」
「「・・・。」」
だって、どう見ても<待ち伏せ>にしか・・・。
「・・・いいじゃないですか、かわいい後輩の様子を見に来ても」
「昨日も来ましたよね・・・アルクェイドさんと一緒に」
<アルクェイド>と聞いた途端、こちらを睨んできた。
・・・視線が痛い気がする。
「私の前で今居もしない・・・」
「しーーーきーーーー」
あ、居る。
ドゴッ、志貴さんが吹っ飛ばされた。
「な、な、何しやがるんですかあなたはーーーーーー」
「もう、だらしないなー」
アルクェイドさんはシエルさんが見えないようだ。
「・・・志貴さん大丈夫ですか?」
「ああ・・・おい・・・アルクェイド」
「えへー、おはよう志貴〜」
・・・あっ、一気に怒りが抜けた。
さすがはアルクェイドさん、持ち前の明るさで志貴さんの牙を折るとは。
「・・・頼むから、後ろからの突撃は勘弁してくれ」
「いいじゃない〜、恋人同士のスキンシップぐらい・・・」
「だれが恋人ですかーーーーーー」
やっと、シエルさんの存在に気が付いたアルクェイドさん。
「ああ、おはようシエル。居たんだ。」
「・・・今本気であなたに殺意が沸きました。」
「ええ、いつもそうじゃないの〜?。」
「・・・二人とも俺これから学校なんだけど。」
あっ、<おもしろいコント>ですっかり忘れていた。
「え〜、学校何か行かないで・・・。」
「駄目ですよ、アルクェイドさん。」
何が言いたいか見当がつく。
「志貴さんは学校に行きたいと思っている、これを曲げさせるんですか?。」
「う〜。」
この人は<志貴さんがこう思っている>と言えば大体下がる。
「それと、シエルさん。」
「はい? 何ですか?。」
「<メシアン>はいいんですか?。」
「あ、朝は時間が・・・。」
「・・・。」
じっとシエルさんを見る。
あっ、逸らした。
「やっぱり、材料の仕込みとかあるんでしょう?。・・・その程度だったんですか、あなたのカレーへの思いは・・・。」
「な、な、け、決してそのような事がある訳・・・。」
もし、自分が<志貴さん争奪戦>の参加者の一人だったらこんな事を言っても二人は引かないだろう。
でも俺は中立の立場に有り、正論を言っている。
二人は引くしかないのだ。





「それじゃあ志貴さん、自分はこっちなので。」
「ああ、またな。」
住宅街にある十字路で別れる。
志貴さんは真っ直ぐ行った先に学校が有り、俺は右に曲がって行った所に学校が有る。
そして、俺が今日から通う<三咲中学校>についた。
夏休み中にこの学校には何度か来て大体の物の位置はわかる。
・・・しかし、生徒がいる学校の様子はまた違ったものなのだ。
正門を抜け、生徒用の下駄箱から職員室に向かう。
途中見慣れない顔だな、と周りから見られたが気にしない事にする。
「おはようございます。」
職員室は始業式の準備で少し急がしそうだったが、それでも今日から担任になってくれる二年二組<田坂>先生はちゃんと迎えてくれた。
「おはよう、今宮君。」
言い忘れたが先生はまだ新米の女教師。
それでも、クラスは学級崩壊などはしていないらしく生徒にも人気があるそうだ。
・・・まあ、俺から見てもかなりの美人だろう。
全体的に細身で身長は170少し無いぐらい。
キリッとした顔つきだが笑顔がよく似合うやさしい先生、というのが俺の先生に対する感想だろう。
「ごめんね、見た通り何かゴタゴタしてるんだけど・・・。」
「いえ、覚悟はしてました。そう言えば始業式の時はどうしたらいいんですか?。」
できれば、クラスに早めに馴染みたいのだが。
「ええ、始業式が始まるのが九時十分なの。その前に少しクラスでホームルームがあるからその時クラスの皆に紹介して、そのまま皆と一緒に始業式を行うでいいかしら?。」
「はい、それでお願いします。」





その後、言われた通りクラスの皆の前で自己紹介をおこなった。
「<鳳凰中学校>から転校してきた今宮隆一です。よろしくお願いします。」
ペコリ、と頭を下げる。ガヤガヤ、と皆騒ぎ出す。
それはそうだろう。
少し前の話だがマスコミを賑わせた名前なのだから。
「さて、それじゃ・・・ああ、そうだった。今宮君、席替えをするから席は後で決めるからね。」
「はあ、わかりました。」
そういえば、新学期になればクラスで席替えをするのは当たり前だろう。
「それじゃ皆、体育館に行くわ。」
俺は転校生なので出席番号が最後になる。
だから、整列も最後だ。
体育館に整列し終わった時、前の男子が話しかけてきた。
中々かっぷくのいい体格・・・要するに太っている食いしん坊と言った感じだ。
「おう、よろしくな。俺は<若山>って言うんだ。」
握手を求めてきたので返す。
「よろしく〜。」
そして、始業式が始まる。
と言っても校長が色々長い話をして、夏の間に何かしら部活動の功績を褒めたりするだけだったので四十分ぐらいで終わった。
クラスに帰る時周りが色々聞いてきた。
どうやら、若山君と気軽に話した事で話せる奴、と思われたのかもしれない。
「なあ、<鳳凰中>ってやっぱ・・・。」
「うん、それ。」
「あ、やっぱりそうなのね。」
「ねえ、テレビで言っていた事って本当なの?。」
やれやれ、嫌な事を聞いてくる。
まあ、それもしょうがないだろう。
「・・・大体はあってると思うけど・・・。」
「けど?何?。」
「・・・実際どれくらい苦しかったかは・・・彼女しか・・・わからないと思う。」
俺は・・・何もできなかった。
あの時切れたのも、自分に対する力の無さをただ・・・。
「お前もいじめに関わっていたんじゃないのか?。」
声のした方を振り向く。
制服をボタンを付けずにだらしなくした格好の奴が居た。
「ちょっと<壇上>君! 言って良い事と悪い事があるわよ。」
女子の一人が注意してる。
「俺は事実を言っただけだ。」
見ると周りも壇上君を見ている。
・・・どうやら、嫌われ者、いや不良と言う奴だろう。後ろに似たような奴らが二人ほどいる。
「あなたね、いい加減・・・。」
「へえー、よくわかりますね。」
「あん?。」
俺の発言にその場にいる全員が振り向く。
「・・・はんっ、関わっていて怖くなって転校したのか?。」
「まさか、俺はただ何もしなかった。何もしなかったから関わった。<見て見ぬ振り>ってさ、罪だと思うだろ?。」
どうやら、思ってもみなかった発言に驚いている。
「へえー、<見て見ぬ振り>ねえ、ほんとはイジメてたんじゃないのか?。」
「はは、だったら転校はしないよ。」
「どういう意味だ?。」
「実はさ、学校側も知ってたんだ、いじめ。」
そして、彼をじっと見る。
「何もしない学校にムカついてさ、お偉い校長先生<様>と担任<様>を殴っちゃってね、それで転校してきた訳。」
沈黙が支配する。
どうやら向こうは俺に調子に乗るなと言いたかったのだろうが、計算が狂ったようだ。
「・・・ケッ、暴力事件起こすような奴とはな、驚いた。でも、結局お前は<退学>じゃなくて<転校>ですんだんだろう?。はっ、ママとパパはうまく動いたな〜。」
なるほど、どうやら俺の親が何かしらやって転校で済んだ、と思っているようだ。
・・・まあ、確かに俺が通っていた所は名門で金がかかるエリート校、久我峰家がそこに行けと言ったので行ったが、間違ってはいない。
だが・・・。
「いい勘してるな、でも俺家族居ないんだよね。」
「・・・えっ。」
切り札のつもりだったのだろうが、失敗だな。
「皆死んじゃってさ、親戚の家でお世話になってる。まあ、暴力事件でこっちの親戚に押し付けられたんだけど・・・。」
「うっ・・・。」
さすがに向こうは動揺している。
それはそうだ、お坊ちゃんだと思ってからんだ奴が実はかなり暗い人生を送ってきているのだから。
ふむ、止めに足しておくか・・・。
「<壇上>君だっけ?、家族は生きてるの?。」
「なっ・・・ああ生きてるよ、死んでほしいくらいにな。」
どうやら、お互い複雑な家庭環境らしい。
・・・が、言っておく。
「じゃあ、仲良くしなよ。今の時代、いつ俺の所みたいに<学校から帰って来たら両親が通り魔に殺されていた>なんて事になるかわからないからね。」
「「「「「なっ。」」」」」
周りもかなり驚いている。
それはそうだろう、自分の家族が殺された事を笑いながら話す奴が目の前にいるんだから。
「お、おい、行こうぜ、何かこいつの近くに居たくねえよ。」
後ろの一人が言った。
「・・・ああ。」
三人はそのままクラスに向かっていった。
・・・沈黙が流れる。
・・・さて。
「壇上君ってさ。」
「えっ。」
「単純だね、こんな嘘に引っかかるなんて。」
「「「「「えーーーー。」」」」」
めちゃめちゃ驚いている。
「あれ?もしかして皆も信じちゃったの?。こんな漫画のネタにもなりそうな話を・・・。」
「いや、信じるって、今の言い方は・・・。」
と、若山君に突っ込まれた。





クラスに戻って席替えをする。・・・で。
「よろしく壇上君。」
「・・・ちっ。」
俺は窓側の一番後ろの席、そして隣には壇上君。
・・・運命か宿命か・・・。
ちなみに前と右斜めは女の子達だが、机を出来るだけ前に押して離れている。
要は俺らの周りはかなり広い。
・・・本当に彼は評判が悪いようだ。
まあいい。
そんな事をしてる内に学校は終わった。
今日は午前で終わりなのだ。





帰り道、普通漫画などでは<生意気な転校生>はいじめられるらしいが、そんな事は現実には・・・あった。
「おい、嘘だったんだってな、あれ。」
さっきの二人を連れて壇上君が言った。
「うん。」
「ふざけやがって・・・。」
「でもさ、本当の事もあったよ。」
「何だと・・・。」
「学校から帰ってきたら両親と<妹>が殺されていて、その犯人を俺は・・・。」
この上もない満面の笑みを浮かべる。
「殺した。それと犯人は通り魔じゃなく恨みで俺の家族を殺したんだ。だから、二つは嘘。後は本当。」
また、動揺している。
意外とわかるものなのだ、俺が真実を話していると。
「い、行くぞ。」
また、逃げる三人組。ま、これで俺の相手はしたくなくなっただろう。


   超えてはいけない<一線>を、俺は超えているのだから・・・


歩く。
で、坂の前まで来た時だった。
「あの〜う。」
「えっ。」
見ると俺と同じ学校の制服を着た女の子が居た。
「何?。」
「あっ、私一年の・・・絵理って言います、先輩。」
はて?、何故名字を言わないのだろうか・・・まあいいか。
(・・・ハア。)
「もしかして何ですが、<遠野家>の人何ですか?。」
「・・・ああ。」
「じゃ、じゃあもしや<遠野志貴>という人は・・・。」
「志貴さん?ああ居るけど、何の用?。」
そう言うと彼女・・・絵理はペコリ、とお辞儀をして向こうに走っていった。
「あ、おい・・・あっ。」
まさか・・・<志貴さん争奪戦>に参加希望?。
・・・有りえる、志貴さんかなり・・・罪人だから。





そんなこんなで初日から色々あったが、まあ学校生活は何とかなった。
屋敷は相変わらず騒がしい。
<志貴さん争奪戦>は激しさを増してる気がする。
まあ、絵理という子はそれっきり姿を見ていないが。
そんな時だ。

「行ってらっしゃいませ〜。」
「ああ、行って来る。」
腕に黒猫のレンちゃんを抱えながら、志貴さんは出かけた。何でも今日はレンちゃんの誕生日だとか。


     誕生日・・・か・・・


さて、俺はゲームでもするか。
そして、俺の遠野家での生活は続いた。

9: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:26:33)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(39)

俺の名前は<遠野志貴>。
今日は自分の愛猫レン(人型)と散歩・・・デートをしている。
レンは今日が誕生日なのだ。(ちなみに今日は日曜。)
屋敷には隆一がいるので人型を見せる訳にはいかない。
・・・まあ、他の皆には<邪魔しないで>と頼んだので今日は二人っきりだ。
・・・<自分の誕生日も>と頼まれたが。





手を繋ぎながら歩く。
街中まで来た時、レンが止まった。
「どうしたの?。」
「・・・。」
レンは何も言わない、と。

グー

お腹の音。
「・・・。」
「・・・(真っ赤)。」
「じゃあ、ケーキでも食べる?。」
コクン、と頷くレン。
・・・そういえば夢でも似たような事があった気がする。





カチカチ、ジャキ、ドン、ダッダッ、スッ、シャキ、ズバッ

・・・只今、一度クリアしたRPGを久しぶりにしている。
画面には、三人の戦士と一人のラスボス。
・・・終わった。

ガタッ、ガサガサ、パチン

丁寧にゲーム機を仕舞う。
「ふー、さてどうしようかな?。」
昼食はさっき食べた。
今日は志貴さんが居ないため、かなり静かだ。
まあ、これが普通なのだろう。
考える。
琥珀さんと翡翠さんは屋敷の事で忙しいだろう。
秋葉さんは当主の仕事で居ない。
「・・・散歩でもするか。」
そうと決まれば、すぐ実行する。





街中をぶらぶらしながら歩く。
大体の地理はわかったが全て知っている訳でもない。
・・・まあ全て知っている人なんていないだろう。
ゆっくりと街を散歩していると、見覚えのある人がいた。
「・・・あれ?。」
あの青いショートヘアーは、シエルさんだ。
・・・ああ、そうか。
ここは・・・。
「シエルさ〜ん。」
「あっ、隆一君。」
隠れ店メシアンだ。
シエルさんはテレビで見るコックさんの格好をしている。
・・・何気に似合っている。
「どうしたんですか?こんな所で?。」
「散歩ですよ、シエルさんは買出しですか?。」
「はい、ちょっと色々ありまして・・・。」
右手に買い物袋を持っている。
何かの材料が足りなくなったのかもしれない。
「そうだ隆一君、試作品を試食していきません?。」
「えっ、いいんですか?自分のような素人が・・・。」
「いえ、<素人だから>なんです。やっぱりそういう意見も取り入れないといけませんから。」
それなら、付き合ってもいいかもしれない。
「じゃあ、お願いします。」
「はい。こっちですよ。」
こうして、俺は試食品をいただける事のなった。
・・・しかし、知らなかった。
まさか・・・これが夜までかかるなんて・・・。





「あっ、雨か・・・。」
あと少しで屋敷に着く、という所で降ってきた。
「・・・しょうがない走るか。レン、戻って来てくれ。」
そう言うと、レンは物陰に隠れ猫モードに戻った。
「じゃあ、行くぞ。」
レンを腕で抱えながら大急ぎで走る。
「はあ〜、天気予報は一日中晴れだったのにな。」
まあ、デートの間はもったから良しとしよう。





「うう、もう無理です。」
「ふふふふふふふふ、良いんですか?。」
事の発端は、<もうちょっと甘い方が>という俺の発言からだった。
俺は辛いのは本当は駄目なのだ。
どちらかと言うと<甘口>である。
それでもここに来たのは<たまには辛口でも>何て甘い考えをしたからだ。
最近の若者は<辛口>らしいが、俺はてんで駄目だった。
なんせ、キムチ漬けの漬物を一枚食べただけでヒーヒー言う。
とにかく、その発言に店の人全員を敵にまわした。
このカレーは<辛口>だから美味さがでるらしい。
・・・大論争の末<甘口も考えよう>という事で収まる・・・はずだった。
「じゃあ店長、今ここでこれの<甘口バージョン>を色々作って隆一君に食べてもらいましょう。」
そして、今まで新作の<甘口バージョン>を喰わされたのだ。
「雨さえなければ・・・。」
そう、雨さえなければここから逃げられた。
だが、無常にも雨は降り続き俺は足止めをくった。
・・・傘はこれが食べ終わってからだった。
ちなみに、屋敷にはシエルさんがちゃんと連絡してくれた。
そうして、ギブアップ。
「もう、無理です。」
キッパリと言った。
「そうですか、残念です。」
こういう時はちゃんと言った方が良い。
カレー(と言うか料理)は無理して食べさせるものでは無いからだ。





結果的に、もう七時前だった。
傘はシエルさんが貸してくれた。
「それじゃあ、また。」
「ええ、またのご来店お待ちしております。」
当分来る気は無かった。





ザーーーーーーーーーーーーー

少し強めの雨の中早歩きで屋敷に帰る。
「ついていけないなあ〜、シエルさんって。」
話によるとシエルさんは志貴さんの一年上の先輩だそうだ。
しかし、この不況の中よく進学をせずによく就職できたものだ。
・・・まあ、カレー屋だけど。
「・・・そう言えば、志貴さんは今高3だったよな。進路どうするんだろう?。」
どうも、いつも周りがうるさく忘れていた。
進学だろうか?。就職だろうか?。
それとも遠野家の仕事をするのだろうか?。
「・・・今度、参考までに聞いておくか。」
自分もいずれは志貴さんの立場になるのだから・・・。





ビクッ、急に妙な気配を感じた。
昔の俺は他の気配を探るのは苦手だったが、<部隊>のおかげで周りの<他の存在の位置>ぐらいはわかる。
そしてこの気配は・・・人じゃない・・・いや、人も居る。
「どこだ・・・どこだ・・・向こう?・・・路地裏か?。」
ダッ、走る
。雨のおかげで人通りは無い。
「ここか。」
ザッ、入ろうとした時、傘が壁に当たる。
パチ、一応借り物なので閉じる。
邪魔になるかもしれないからここに置いておこう。
近い。やはりここだ。
中に入る。・・・と。
「おい、何・・・。」
「うわーーーーーー。」
ドガッ、何て音がして二人とも倒れる。
何とか上半身を起こす。
「いってえー、何する・・・。」
「おい、そこ・・・。」
「「あっ。」」
それは、壇上君だった。
「あれ、壇上君。何してるの。」
「・・・あっ、やべえんだよ。どけっ。」
壇上君は俺を無視して行こうとした時、後ろから手が伸びてきた。
いや、性格には殴ってきたのだろう。
「やばっ。」
「ひっ。」
思わず、体が壇上君を守っていた。
・・・まったく俺はバカだ。
(・・・アア。)
ドゴッ、俺が殴られ・・・いや、殴り飛ばされた音。
ドッ、そして壁にぶつかった。
「ぐ、ごっ、がごほっ。」
口から血を吐いた。山の時以来だ。
「あ、ああわああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」
その間に壇上君は逃げた。
まったく、恩知らずな奴だ。まあ、これで戦いやすくなった。





「ギギッ。」
何て声を出している。どうやら、人じゃない。
いや、元は人だったのだろう。男のようだ。
背は俺より5,6cmぐらい上。
格好はボロボロのスーツ姿。
会社帰りにでも襲われたのだろう。
「・・・<兵鬼>・・・だよな?。」
何か違う気がする。
・・・まあどうでもいい。
「<兵鬼>は主がいなくなると負のエネルギーが集まって<邪鬼>になる。で、人格を持つ。」
でも、こいつは人格を持っていないようだ。
となれば主がいる事になる。
「まあ、いいか。居るなら・・・そいつも狩る。」
ダッ、と勢い良く跳ぶ。
「ギッ。」
右手を振ってくる・・・が遅い。
「はっ。」
攻撃をかわし、相手の懐入りパンチを顎にヒットさせる。
普通の人間にはこんなは出来ないだろう。
まず、向こうの攻撃をかわす速さがいる。
そして、顎にヒットさせてもこいつらは動じる事なくこちらを掴んでくる。
だが俺は異端者だ。
これぐらいの相手を吹き飛ばすぐらい簡単だ。
ドスンッ、何て音がして奴は倒れた。
「・・・ギギギッ。」
短刀さえあれば<線>か<点>を引いて簡単に倒せるのだが、残念な事に短刀は屋敷の部屋の荷物の中に隠してある。
・・・視る。
やっぱりこいつの<線>と<点>は本当に少ない。
おそらく僅かな命で行動しているのだろう。
俺が出来る事はこいつを殺すぐらいなもの。
「苦しいか?。」
「ギ・・・ギギギギーーーーーーーーーーー。」


それは、その動きは、ただ単純に、無駄の無い、突進だった・・・。


視る。
「ギィッ。」
奴は少し怯(ひる)んだ。
まあ、怯まなくても結果は同じだ。
人で言う心臓の部分よりほんの少し上、それはとても小さい<点>。
短刀でも刺すのが難しいそこを・・・手で貫く。
ゴスッ、<点>より遥かに大きい俺の手がそこを貫いた時・・・それは消滅した。





「ふう、ズブ濡れだ。」
傘を差しながら屋敷へ向かう。
たぶん怒られるだろう。
あれから、壇上君には会っていない。
・・・まあ、あんな化け物に会えば逃げたくなるのは当然だ。
(イイノカ、ソレデ?。)
(ああ、それに彼の前では戦えなかっただろうし。)
(タシカニナ・・・。)
少し地面に血をたらしたがこの雨だ、もう消えてるだろう。
「・・・何でこうなるんだろうな。」
もしかしたら、さっきの人にも家族がいたのかもしれない。
死は、それを一瞬で破壊する。
(コウカイカ?、ハヤクカエッテイレバ・・・。)
(もう、忘れたよ。)
(・・・。)
俺は起きた事をいつまでも見ている気はない。
・・・それは残酷な事だ。
それでも・・・。
「俺は・・・過去にこだわらない。」(・・・ソウダナ。)
次の日、学校に行くと壇上君とばったり会った。
向こうは怯えるように逃げた。
・・・まあ、彼がどう思おうと関係ない。
それから三日間は、平和だった。





そこは路地裏。
黒い服を着た青い髪の人が立っている。
「確かに死者の気配。でも、肉体はもう他の誰かに滅ぼされてますね。」
ここに来てもうすぐ一年なる。
だが、未だにここの街を浄化しきれていない。
「・・・遠野君は変わった所は有りませんでしたから・・・アルクェイドですね。」
昨日の雨のせいで痕跡はわからないが、おそらくそうだろう。
「はあ〜、この場所は最早手が付けられない程の<邪気>に満ちてますね。」
ここまでくると<教会>のかなりのレベルの式典や儀式を行わないと消す事はできない。
だが、このような<極東>にそれほどの概念武装を送ってくれるとは思えない。
「まあ、当分は問題ないでしょう。」
そして、彼女は立ち去った。





「・・・すごい<邪気>。」
彼女・・・シエルが立ち去った後、他の女性・・・いや少女がやって来た。
「・・・ああそっか、お姉ちゃん以外にもいたんだ。ここで・・・。」
持って来た花束を置く。
「お姉ちゃん、色々あって遅くなっちゃった。ごめんね。あっ、<志貴>って言う人がどこにいる人かわかったよ。」
まるで語りかけるように話す。
「お姉ちゃんが<吸血鬼>になっちゃって、そんで志貴さんが助けてくれたんでしょ?。でも・・・私、納得してないから。」
周りの空気が凍ったように冷たくなった。
「あれから、皆おかしくなっちゃった。皆お姉ちゃんを<吸血鬼>にした奴と志貴って人のせいでしょ。あれから何も起きてないから<吸血鬼>は居なくなったんだよね。もしかしたら志貴さんがやってくれたのかも。でも、だからって、お姉ちゃんを殺す必要、無かったんじゃないかな?。うん、きっと戻る方法があったはずだよ。それなのに・・・。」
その目は狂気。
「私、あの人を・・・許さない。」
平穏、それを破壊する大きな復讐の炎が近づいている事に、彼らは知らなかった・・・。

10: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:26:54)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(40)

木曜日、いつもの要に学校へ行く。・・・が。
「うわーーーーーーーーーーーーー遅ーーーーーーーーーーーーー刻ーーーーーーーーーーーーーーーー。」
オリンピック選手ではないか、と疑われるぐらいの速さで走る。

何故こうなったか?。
簡単だ。
<志貴さん争奪戦>の影響だ。要するに・・・。
「・・・隆一、あなた誰の味方なのかしら?。」
秋葉さんが言ったこの言葉が俺を追い詰めた。
「いえ・・・自分は誰の味方で・・・。」
「あら?、誰があなたをここに置いてるのかしら?。」
「うっ・・・。」
今日は朝から騒がしい。
何でもアルクェイドさんが志貴さんの部屋に侵入し、それを追ってシエルさんと秋葉さんが志貴さんの部屋に入って大喧嘩したらしいのだ。
・・・どういう喧嘩だったかは知らないが・・・皆服が破けたり手当てをした後がある。
(こりゃ、異端者の力も使ったな・・・。)
(モットモ、オレニ、サトラレナイ、レベルニオサエテ、ダロウナ。)
かなり騒がしかったのだろうが俺はぐっすりと眠っていて琥珀さんが起こしにくるまで気づかなかった。
居間に行けばまた何か騒いでいて、さすがに止めに入った。
・・・でも。


    志貴さん・・・朝食を理由に逃げないでください・・・。


そして、今の発言だ。
・・・確かに俺は秋葉さんのお世話にはなっている。
身の周りは翡翠さんと琥珀さんだが、ここに居られるのは秋葉さんのおかげなのには違いない。


    さらに厄介なのは・・・全員俺を見ている、という事だ。


はっきり言って、志貴さんは誰も選べずに困っている。
こうなると少しでも自分を見てもらえるようにアピールするしかない。
しかし、周りが考える事もまったく同じ。
細かい違いはあるが皆の行動は大体そんな所だ。
・・・えっ、何が言いたいのか?。
要は、俺は中立。
・・・しかも何気に志貴さんとの接触が多く男同士。
これほど味方に付ければ強力な者はここには居ない。
だから皆俺にはやさしく接してくれている。
・・・まあ家族としてもあるだろうが・・・。
「えーと、自分は・・・やっぱり志貴さんの味方です。」
「・・・なるほどね。」
納得したような声を出しながら、めちゃめちゃ睨んでくる秋葉さん。
・・・何故俺がこんな事を・・・。
「あはー、秋葉様、そんなに睨んでは隆一君怖がってしまいますよ〜。」
とかなんとか言いながら、「あは〜、私に付きなさい。」って目線をやめてほしい。
琥珀さんはとても良い人だが計算高くていけない。
「隆一君、カレー美味しかったですよね?。」
シエルさん・・・残念ながら、それは脅しのネタにはなりません。
「隆一様。」
唯一、何も言ってこない翡翠さん。
・・・まあ、本当は味方になってほしいのだろうが。
「あー、志貴〜、逃がさない〜。」
「「「「はっ。」」」」
「くそっ。」
アルクェイドさんは俺を利用しようとはしてない・・・ていうかそういう考え自体持ってなさそうだ。


    にしても志貴さん、この五人か本気で逃げられるとでも思ってたんですか?。


で、気づけば全力疾走しないと間に合わない時間。
・・・とりあえず今は逃げられたが、屋敷に帰るまでに何か対策を練らないといけない。





クラスにギリギリで入った。
まだ田坂先生は来ていない。
席に座る。
「はあー、疲れた。」
ちなみに、隣の席の壇上君は月曜に来たきり休んでいる。
そのせいか前の女生徒も定位置に戻っていた。
でも俺から見て壇上君はそれほど悪い奴とは思えない。
・・・多少薄情な所はあるが、それでも根はそんなに悪い奴ではない気がする。
まあいい、授業を受けよう。





昼休み、暇なので図書室にで本でも借りようかと思い廊下を歩く。
・・・と。
「「あっ。」」
図書室前の廊下のど真ん中で、この間の<絵理>という子に会った。
あの時と同じツインテールの茶髪に制服姿だった。
「こんにちは。」
「えっ、はい、こんにちは・・・先輩。」
どこかぎこちないが返事を返してくれた。
しかし、この学校に来てまだ日が浅いのに<先輩>と呼ばれるのはなんか慣れない。
「やっと、会えたね。」
「えっ、何でですか?。」
そう聞かれると困ってしまう。
「えーと、ほら、そっちはちゃんと名前言ったのにこっちはまだだったから・・・。」
「あっ、でも私も名前しか・・・。」
名字ではなく名前を名乗るというおかしな話だが別に気にしていない。
(・・・ハア)
(何だよ!)
(ベツニ)
「<今宮隆一>、これが俺の名前。」
「・・・。」
何か言いにくそうに顔を下に向けた後・・・顔を上げて言った。
「<弓塚絵理>です。」
「へえー<弓塚絵理>か、じゃあ<弓塚さん>かな?。」
「あ、いえ、先輩なんで呼び捨てで良いですよ。」
「そう?、じゃあ改めてよろしく、<弓塚>。」
「はい、先輩。」
お互いお辞儀した。





この学校に来て始めて名前を知った後輩ができた。
「へえー、先輩は<鳳凰中学校>から転校して来たんですか。」
図書室で本を選びながら喋る。
「ああ、色々問題起こしてね。」
「・・・ごめんなさい変な事言って。」
申し訳なさそうに頭を下げられる。
「い、いや良いって、そんな風に頭を下げなくても・・・。」
「いえ、やっぱり・・・。」
お互い変な所で張り合う。





そんなこんなで昼休みが終わる。
図書室を出る。
結局何も借りなかった。
「それじゃ先輩、また。」
「うん、色々楽しかったよ。」
走っていく弓塚。良い子だな〜、とオヤジ臭い事を言ってしまった。・・・しかし何か・・・。
「・・・なかなか、良い子に目をつけたね。」
なぬっ、また後ろを取られた。振り向く。
「いつから居たの、若山君。」
「・・・へへ、僕は図書委員だよ。」
あっ、スッカリ忘れていた。
「それにしても弓塚とは・・・。」
「何かある訳?。」
「あの子、結構人気あるんだよね〜。・・・まあ、あれだけ明るければね。」「・・・。」
本当にそうなのか?、と思ってしまった。
(タシカニ、キニナル。)
(この違和感は一体・・・。)
(コノケハイ、ダレカニ・・・。)
「でも・・・あの子も大変なんだよね。」
「えっ、どういう事?。」
「去年、あの子のお姉さんが通り魔に殺されたんだ。」
何だと・・・。
「・・・その話、詳しく聞かせてほしい。」





「大量の血痕が発見されたが死体は見つかっていない、か。」
帰り道での一人事。
これが、若山君が知っている事の全てだった。
(まさか通り魔がいた事は知っていたが・・・彼女がね。)
(セケンハセマイ、ダナ。)
どうして彼女・・・弓塚に違和感を持ったか、よくわかった。
そして、誰に似ているかも。
「華連、だな。」
そう、<閻魔華連>と何となく似ているのだ。
確かに笑ってはいる。
だが、それは仮面。
おそらく本当の笑顔ではない。
「はあ〜、何で俺の周りにはこういう悲しい奴が来るのかな〜。」
類は友を呼ぶ、と言うが俺もそうなのだろうか?。





「お帰りなさいませ。」
「・・・はい、ただいま戻りました。」
何故か、未だになれない。
「カバンを・・・。」
「いいですよ、翡翠さんは仕事に戻ってください。」
「・・・わかりました。」
ちょっと、おこってる・・・かな?。
まあ、これも翡翠さんの仕事なのだろうが・・・。
部屋に入ってベットに倒れる。
「はあ〜、少し寝るか。」
そうして、俺はすぐに寝てしまった。





赤、朱、紅、血、血、血、血、血、肉、肉、肉、肉、肉、肉、肉・・・肉を・・・魂を・・・よこせ・・・。
「あ、あ、あ、あああああああああーーーーーーーーーーーーーー。」
悲鳴・・・ひめい・・・ヒメイ・・・女ノ・・・。
バリッ、ボリッ、グリッ、ガリッ。
何て良い音だ。食欲をそそる・・・ああ、幸せだ・・・。
いつカら・・・こウナったのダロウ・・・ワスれた・・・アア今はカンけいナイ。
 
    今はコノ快楽を味わオう





「わっ・・・はあ、はあ、はあ。」
気が付くと俺はベットの上。
どうやら眠っていたらしい。
「隆一様、大丈夫ですか?。」
「わあっ。」
目の前に翡翠さんの顔があった。
「・・・あの、お体の具合が悪いのでしたら、何かお薬でも・・・。」
「い、いえ、ただ・・・そう、ちょっと昔の夢を・・・。」
「昔・・・。」
その言葉で翡翠さんは黙った。
おそらく、家族が殺された事の夢とでも思ったのだろう。
「あっ、もしかして夕食ですか?。」
「・・・はい。」
「じゃあ、すぐ行きますね。」
笑ってみせた。
「・・・本当に大丈夫なのですか?。」
「はい。」
「わかりました。」
そうして、翡翠さんは出て行った。
「・・・何だったんだ、今のは・・・。」
まさか<未来予知>・・・な訳ないか。
「でも、何でだ?。」
そう、俺は確かに驚きはした。でも・・・。

    この夢に恐怖を感じず、逆に高揚感があるのは・・・。





屋敷の夕食は静かに食べる。
まあ、たまに乱闘が起きるが・・・。
その後、今日は気分が悪いと言って早めに部屋に戻った。
「何だったのかな?。」
ベットに寝ながら言った。
だが、結局俺はそのまま寝てしまった。





それは、直感と言うかもしれない。
ふと目が覚めた。
体が熱い、灼い、あつい、アツイ。
<行かないと>それが今の俺の頭に出てきた最初の言葉。
<念のため、武器を>それが次に出てきた言葉。
短刀を出す。
そのままズボンに挟む。
このズボンは睡眠用だが、このまま出かけても私服と間違えやすいデザインだ。

階段を下りる。
ドアを開ける。
門を開ける。
坂を降りて街へ行く。

居ない、居ない、居ない、何かを探す・・・そう、俺の獲物・・・殺す・・・ための・・・。

居た、あそこだ、歩道橋の上にいるいるいる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・跳ぶ。





ここは、路地裏・・・今仕留めた獲物を喰らう。

バリッ、ボリッ、グリッ、ガリッ

ああなんて・・・美・・・?。
ジャキン、空から剣が降ってきた。
「・・・そこまでです。死にな・・・隆一・・・く・・・ん?。」
ビルの上に・・・ああ、誰だっけ。
ああ、青い髪と目・・・シエルさんだな。
「何してるんですか?シエルさん。こんな時間に女の人がうろついたらいけませんよ。」
まったく、コノ人の親は・・・ナニヲしてるんだロウか?。
「あなたは・・・正気?・・・いえ・・・反転ですね。」
反転?。
俺が?。俺は・・・。
「俺は正常ですよ〜。いや、むしろ気持ち良過ぎますね〜〜〜〜〜。」
笑う。
「・・・残念です。死になさい。」
その目は機械のように冷たかった。
・・・でも。
投降される八本の剣をかわし、上に居たシエルさんの目の前に行く。
「なっ・・・速・・・。」
腹に一撃をお見舞い。
吹っ飛んだ。ああ、あまりおもしろくないな〜。
「ガホッ。」
血を吐き出すシエルさん。
「くっ。」
再び投降される剣。
今度は四本。
全部エモノで・・・いや爪十分だ。弾く。
「そんな・・・ばかな・・・。」
コノ人はヨワい。
つまらナイ。
?。
何か違ウな。
マアいイ。
今日はカエロう。
・・・あれ?、カエル?。

    イったいドコへ・・・カエるんダっけ?




「ちょ、ちょっと、シエル大丈夫なの?。」
私が来た時、いつもの喧嘩相手が倒れていた。
「・・・あんまり・・・大丈夫では・・・ありませんね・・・。」
驚いた。
あのシエルがここまでやられるなんて・・・。
「・・・新しい<死徒>でも来たの?。」
「・・・いえ、それより厄介・・・ですね。」


    そして朝日が昇り始め、人は活動を始める。






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