許された唯一つの剣製


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1: 計架 (2004/04/23 23:43:22)[keika at mail2.dnet.gr.jp]

体は剣で出来ていた

血潮は鉄で心は硝子

幾たびの戦場を越え不敗

一度の勝利も無く

一度の敗走も無い

其の者は唯剣の丘で鉄を鍛える

故にその生涯に意味は無く

体はきっと無限の剣で出来ていた



Fate/stay night
       許された唯一つの剣製


「答えは得た。大丈夫だよ遠坂。オレも、これから頑張っていくから」

その瞬間、自らの体が光の粒子に還って行く事を知覚した・・・
名残惜しくないといえば嘘になる。
しかし、後悔は無い。この世界の衛宮士郎は、おそらく私と同じ道は進まない。
私と戦い、私を超えた。それに、何より彼女が着いている。
おっちょこちょいな所が玉に傷だけど彼女なら正しい道に彼を導くだろう。
其れが、私でないことは残念だが・・・

とうとう終わりだ・・・
私は輪に戻り、またあの地獄を繰り返す。
しかしそれも、悪くは無い。
答えは得た。私が信じ続けた道・・・もう一度信じるのも悪くは無い。

そして、私の意識が光に呑まれた・・・



「ッ!? ここはどこだ?」

気がつけば、暗い校舎に一人・・・ん?
どこかで見たような光景だ?
どこだったか・・・

まだふらふらする頭を支えながら状況の把握に努める・・・
けだるそうに壁についた背中・・・
いつまでたっても拭えない倦怠感・・・
廊下にこびりついているのは血か?
ん? 私はこんなに白かったか?
それに・・・かすかに見える前髪は赤・・・
赤だと!? 私の髪は度重なる心労で白く色あせたはずだ!!
それに・・・血まみれの廊下・・・まさか!?

「私が・・・衛宮士郎になっているのか?」

いやいや、もともと私は衛宮士郎だ。しかしこれは・・・
戻った? 魔法使いでもない私がか?
平行世界? 其れこそ魔法だ。
世界の意思? 理由が思い当たらん。

「いつまでも悩んでいても仕方あるまい・・・
 ならば好都合。私の好きにさせてもらおう。」

いまさら過去を変えようなどとは思わん。
だが、この世界の未来を、私の未来と同じにする気は無い!
自分勝手な思惑だが・・・知ったことか!





(くっ! 体が思うように動かん!)

家に戻り、ランサーに奇襲を受けた。
衛宮士郎ならともかく、私がそう簡単にやられるわけが無い・・・が、この体でこの動きは少々きつい・・・
やはり彼女に頼るしかないか・・・

「なかなかしぶとかったが・・・これで終わりだ!!」

ランサーが最後の一突きを出す。
其れは絶対の死。
真名を開放していないとはいえ心臓を穿つ槍。
人のみではそれだけで死に至る。

だが、このようなところで終わるわけにはいかん!

「来い! セイバー!!」

小声でつぶやく・・・しかし其れは・・・やはり言霊となってはるか遠くの『彼女』を呼ぶ!!

   ガギィィィン!!

赤い稲妻は、無色の閃光によって阻まれる。
史実道理・・・最強の剣が舞い降りた・・・




「セイバー! 気を付けろ!
 そいつはクー・フーリンだ!!」

「ッ!?」

「何だと!?」

セイバーと、ランサーが驚いたように振り替える。

「刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)を使わせるな!
 たとえ君でも危険だ!」

「承知した!」

「チィ!」

ランサーが塀の上に飛び上がる。

「今回はここまでだ。追って来るならそれでも良いが・・・そのときは覚悟してもらう。」

「待て!」

「追うな!! どの道戦うことになる。今戦うのは得策ではない。」

「・・・判りました。」

「よし。それでは行くか。」

「?」

その顔に浮かぶは困惑、そして疑惑。
状況からして私は巻き込まれたようなものだ。
其れは彼女も感づいているだろう。
だからこそ、私の行動が読めないのだ。
本来ならこんな事が起こって平然としている人間などいない。

「マスター?」

「衛宮士郎。其れが私の名だ。士郎、と呼んでくれたら嬉しい。」

「判りましたシロウ。・・・なぜ彼がクー・フーリンだと?」

「簡単なことだ。槍兵には最速のものが選ばれる。
 私はランサーが戦っているところを見たからな。
 それに、ゲイ・ボルグは見たことがある。
 ・・・まさか、親父から聞いた聖杯戦争、私が出ることになるとは思わなかったが・・・」

「親父?」

「・・・なんでもない。気にするな。」

唯の伏線だ・・・とはいえないな。
さて・・・彼女をどうするか・・・
出来れば戦いたくは無いが・・・

「あ、あんた!」

「ふむ・・・きてしまったか・・・」

これは幸先が良いのか悪いのか・・・微妙なところだな。





さて・・・どうするべきか・・・な?

「何であんたがマスターになってんのよ・・・」

「仕方あるまい。状況が状況だった。
 其れに私は衛宮キリツグの息子だ。何らかの要因があっても不思議ではなかった。
 もっとも、私自身聖杯戦争に参加することになろうとは思わなかったが・・・」

私たちが話し合っている間もセイバーとアーチャーがにらみ合っている。
あぁ、アーチャーにはじったいかしてもらっている。特に意味は無いが・・・

「だからって何であんたみたいな半人前が・・・」

「偶然・・・とはいうまい。何らかの要因があったことは確かだ。
 しかし其れが何かわ判らんな。
 が、なぜセイバーに当たったのかはおよそ見当が着く。
 あのランサーは七人目、と言っていた。
 残り物には福が有る・・・とはよく言ったものだ。」

「・・・・・・・そうね・・・で? 私を家に連れ込んで何のよう?
 私たち敵なのよ。」

「・・・其れをいわれると困るが・・・実はな・・・」

「?」

「聖杯戦争の管理者と言うのがよく判らん。
 其れに私の知識は親父から端的に聞いただけだ。
 あわよくば何か教えてもらおうと思ったのだが・・・」

「あ、あんた・・・馬っ鹿じゃないの!?」

まぁ、彼女の性格ならこういうだろうな。

「もう一つの理由として・・・」

私はポケットに入っていたあるものを取り出す。

「!? それは!?」

「命を助けてもらっておいていきなり攻撃するのは人としてどうかと思ったのだ。
 遠坂もせっかく生き返らせた者をその場で殺すのは気が乗るまい。」

「な!?」

「なぜ判ったか? 簡単なことだ。私がランサーの槍に倒れたとき私に治療を施せたのはランサーと戦っていた彼か・・・
 そのマスターの君しかいない。」

「・・・そうね・・・」

「さらにいえばここは私の家で、君のサーヴァントはランサーとの戦いで多少なりとも疲弊している。
 いわば檻に飛び込んできた獲物だ。」

「!! 見逃すとでも?」

言い返しては来るが・・・その顔が顕著に語っている。
『忘れてた・・・』と。
相変わらず鋭いんだか鈍いんだか・・・

「君の目から見てどうだ? この状況で私たちに勝ち、なおかつ自分も無事でいるような策が見つかるかな?
 もし無いのであれば・・・素直に引いたほうが良いだろう。」

「・・・くっ!」

「私としてはこのまま戦いたくは無いが・・・私の呼びかけに答えたものがいる以上私から裏切るわけにもいかん。」

と言って私は、目はアーチャーを睨みながらも手はお茶請けの羊羹をパクパク口に運んでいるセイバーを見やった。

「「「・・・・・・・・(汗」」」

「・・・? 何ですかマスター? その顔は・・・」

「いや、よく食べるのは良い事だと思う。」

コクコクうなずいてまた食べ始めるセイバー。

「おそらく、これから衛宮君の家のエンゲル係数は右肩上がりね。」

「怖いことを言わないでくれ。さて、出来れば監視者にあわせてほしいのだが・・・
 なに、今夜のうちに私から仕掛けることはしないさ。
 言わば今夜一晩限りの休戦と言うことだな。
 そちらが嫌というのならやらないでもないが・・・」

「・・・判ったわ。案内しましょう。」





「よかったな衛宮士郎。お前の夢がかなうぞ。」

「夢・・・か。夢とは叶わないから夢なのだ。だからこそ望み続け、そのために歩き続ける。
 夢とは常に理想であり望み続けることにこそ意味がある。
 叶える必要は無い。自らがそれを忘れないのなら。
 それに・・・望みと言うのなら私の望みはすでに叶っている。」

私はそれだけ言うとエセ神父に背を向け歩き出す。
もう語るべきことは無い。
次にあうときは・・・敵だ。




「マスター・・・」

「セイバー、聖杯に何を願う?」

「!」

「世界の理を超えた存在に何を望む?」

「それは・・・」

「・・・質問を変えよう。本当に聖杯は必要なものなのか?」

「はい。私の望みをかなえるには絶対に。」

「たとえそれが穢れていたとしても?」

「え?」

「まぁ、いい。セイバーが必要と言うなら私は協力しよう。
 それが私の呼び声に答えてくれた気味に対する礼儀だ。」

私は歩き出す。もう語ることは何もないといわんばかりに。
もう、この話題を続ける気は無い。




「お話は終わった?」

「「!!」」

セイバーと凛は驚いた顔をしている・・・が、アーチャーはやはり何も感じていないようだ。
むしろ彼女が現れないほうが驚くだろう。
それは歴史が変わることだから。

「バーサーカー・・・」

凛がそうつぶやく・・・その視線の先には黒い鋼の体をした巨人と、対照的に白い少女が見下ろしていた。
その威圧感たるやまさに死を目の前にしているようなものだ。
今の私では・・・死ぬ気でかかっても三回殺せるかどうかだろう。
出来れば戦いたくない。
が、そうは思ってはくれないだろうな。

「驚いた・・・戦闘能力ならサーヴァント中最強じゃない・・・」

確かに。しかし、仮にも聖杯によって理不尽に呼び立てられた英霊だ。どこかしら無理はある。
そもそも、そのクラス自体がすでに枷なのだ。
ふむ・・・そう考えると私にも何らかの形で太刀打ちすることが出来るかも知れんな・・・
もっとも、この肉体は軟過ぎて長時間は無理だが・・・

「はじめまして凛。私はイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンって言えば判るでしょ。」

「アインツベルン・・・・・・」

「そっちのお兄ちゃんにあうのは二回目だね。じゃあ・・・死んで。」

その言葉に呼応するように巨人がほえる!
そしてそのまま一息で坂を跳び下ってくる!

「シロウ! 下がって!!」

「判ってる。」

「アーチャー、貴方は貴方の戦いに徹して。」

「しかし守りはどうする? 凛ではあれの突進は防げまい。」

「こっちは三人よ。大丈夫。」

「遠坂の言うとおりだ。トレース・オン」

体を無理やり魔術で強化してバーサーカーの突進に備える。
と、同時にその手に双剣が生み出される。

「何!?」

「何をぼやぼやしてる? 早く行け!」

「何であんたがそれを持ってんのよ!?」

「私の持ち物だからに決まっているだろう?
 何を言っているんだ?」

ま、凛の疑問は当然だ。何せこれを使っていたのはほかならぬ彼女のサーヴァント。
もっとも、アーチャーの驚きは別のところからきているのだろうが・・・
そんなことは今は関係ない。




はっきり言って分が悪い。
アーチャーの弓も、私の剣も、遠坂の魔術も、セイバーの剣もたいした効き目が無い。
それは判りきったことだったが・・・
強化を使ってもこの差を埋めることはきつい。
元の力があればともかく、この体ではせいぜい元と同等か、それ以下。
本来の力があれば彼相手でも引けは取らない自信が有る。
何せ一度目の人生ではアーチャーは彼を六回殺している。それも固有結界を使わずに、だ。
なら私でも同じことが出来たはずだ。
・・・と、今言っても仕方ないか。
しかし・・・どうすればこの状況を打破できる?
考えろ・・・考えろ・・・

・・・そうだ!
私はそれに思い至りバーサーカーに向けて双剣を投げつける。
しかし見向きもしない・・・当然だ。
今までもそうだったが、私や凛やアーチャーなど彼は気にも留めていない。
まずはこの中で最強を誇るセイバーを倒そうと言うのだろう。
それは確かに有効では有る。
何せこっちの攻撃は効かない。
ならほうっておいても問題は無いからな。
しかしこれはどうかな?

「壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)」

その瞬間、バーサーカーの目前に迫っていた双剣が爆発する!
もっともダメージは少ないだろう。
しかしそれに驚いて凛とセイバーがこちらを向いた。
その二人に教会を示し、私は少しずつ後退を開始した。




そして舞台は墓地に移動。
私のあの攻撃に驚いたのかそれからは私のほうにも気を配っている。
おかげでやり辛い事この上ない・・・

そしてそれも終幕に来た。

「アーチャー、援護を!」

闇に走る二条の閃光! それは寸分の狂いも無くバーサーカーの目を目指して飛んだ。
それを防ぐために一瞬無防備になる。

「我が骨子は荒れ狂う・・・」

  ザシュ!

その鋼鉄の体に一本の線が奔った。それだけではあまり効果は無いだろう。
しかし、それは鎧を破壊したことを告げている。

「セイバー! 跳べ!!」

私の手には弓。そして番えられる矢は・・・

「偽・螺旋剣(カラド・ボルグ)」

私を一目見てすぐに跳び退ったセイバーのいた場所を閃光が駆け抜ける。
そして・・・

「壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)」

それはバーサーカーの鎧を内側から食い破った。




「貴方・・・何者? 四人がかりとは言えヘラクレスを一回殺すなんて・・・」

「別に驚くことではないさ。英霊も肉体を持った以上人が殺すことが可能だよ。
 殺人貴ならもっとうまくやるだろう。
 だが、私にはこれが精一杯だ。」

「・・・まぁ、良いわ。帰りましょうバーサーカー。」

何を言っている? 
バーサーカーは死んだ。あれだけの傷を受けて生きていられるサーヴァントはいない。
いや、サーヴァントに限らず生物はみな死ぬだろう。
・・・真に恐ろしいのはシロウの戦闘能力か・・・
それに彼はカラド・ボルグと言った。それは宝具の名ではなかったか?
いったい何者なのだ彼は?

「■■■・・・・・・」

「何!?」

「ギリシャの英雄ヘラクレス・・・その身に刻まれた十二の試練が彼の宝具か・・・」

「そういうことよ。散々苦労して一回殺したみたいだけど、まだあと十一回殺さないとバーサーカーは倒せないわ。
 どうする? 戦う?」

「遠慮しておくよ。今日は疲れた。
 投影なんかやるもんじゃないな。」

「・・・今日のところは引いておくわ。でも、見逃すわけじゃないからね。」

「・・・後悔の無い様にな。姉さん。」

「え?」

「セイバー、帰ろう。」




この後いろいろ聞きだされるが、口先三寸で切り抜け、何とかなりました。っと。
思いっきり怪しまれてるけど。




 

2: 計架 (2004/04/24 20:54:51)[keika at mail2.dnet.gr.jp]


宵闇の中、月の明かりに照らし出されている寺。
その境内に立つのは二つの影。

「こんな時間に呼び出すとは・・・
 礼儀知らずにもほどがあるな。」

「ごめんなさいね。でも、貴方と少し話してみたかったから。」

「それなら態々こんな事をしなくてもこちらから出向いたものを・・・
 まぁいい。で、用件は何だ?」

「いきなりね・・・じゃあ此方も単刀直入に言わせてもらうわ。
 休戦しない?」

「ふむ・・・理由は?」

「私、別に聖杯がほしいわけじゃないのよ。ただ自分の安全が保障されればいいの。
 私の願いはこの世界にとどまる事だから。」

「・・・なるほどな。・・・つまりこういうことか?
 こっちから関わらないから私にも関わるな・・・と。」

「そうよ。どう?」

「・・・近頃出ている栄養失調というのはあんたの仕業か。」

「なぜ疑問形じゃないのか気になるけど、その通りよ。」

「・・・いいだろう。この休戦、受け入れよう。」

「? おかしな人ね。近頃の事件が私のせいだって判ったのに休戦するの?」

「? なぜだ? あんたはまだ人を殺してない。こんなのに出る輩としては常識を踏まえていると思うが・・・?
 そもそも、キャスターというランクはそういうものだろう。」

「・・・そうね。」

「まぁ、今回は比較的常識を持ったものが集まっているようだが・・・
 これなら私の思惑もうまくいくかも知れんな。」

「何を言ってるの?」

「私の目的は聖杯の破壊だ。いや、消滅というべきか?
 今の聖杯は闇に犯されている。だから、私は聖杯を壊す。」

「!! それを、セイバーは?」

「知らないな。それに、自分でたどり着かねばならないことだ。
 自分のしていることの無意味さと罪に。
 とりあえず、休戦には応じる。
 セイバーが来たようだ。私は帰る・・・!
 かわせ! キャスター!」

「え? キャアァ!」





「アーチャー・・・」

「まさか、お前が休戦に応じるとはな・・・」

「見損なったか? それとも・・・」

「お前は何だ?」

「私は衛宮士郎。それ以上でもそれ以下でもない。
 アーチャー、貴様こそなんだ?
 なぜ私の魔術を使える?」

・・・本気なのか?
それとも・・・
まぁいい。私の目的はこいつを殺すことだ。
それ以外には何も無い。

「それは私の台詞だ。なぜ貴様がそれを使える?」

「こんなもの、自分の心と向き合えば誰でも気づく。
 禁呪、などと呼ばれているがそんなもの自分の心にも気づけない愚か者の戯言だ。」

つまり、自分でその境地に至ったと。
私がそれを使えるようになったのはもっと後だったのだがな・・・

「やってくれたわね・・・アーチャー!」

「ふん・・・死にぞこなったか・・・魔女が!」

「! 私を魔女と呼んだものは、生かして帰さないわ!」

「挑発だ。そんなのにいちいち乗るな。
 で? ここに来たお前の目的は何だ?」

ふむ・・・意外と冷静か・・・
いったいこいつはなんだ?

「・・・凛、イリヤ、桜とはもう休戦になった。今、キャスターとアサシンとも休戦をした。
 このままいけば戦わずに聖杯戦争を終わらせることも出来よう。」

「!? 何だと!?」

「私はもともと聖杯など要らないし、イリヤと桜はその危険性を知っている。
 キャスターの目的はこの世界にとどまること。
 アサシンはキャスターにしたがっている。
 凛との休戦はお前も知っての通りだ。で、何をしにここに来た?
 無駄に戦いの輪を広げるか?」

・・・判っているさ。これがただの八つ当たりだということくらい。
しかし、なぜ私に出来なかったことをこいつがやっている!
私だって戦わずに住む方法を模索した。
精一杯被害が出ないようにしたんだ!
確かに私も聖杯などいらない。こいつは自分を持ってその目的に進んでいる。
ならば私が殺したいのはこいつではない。
しかし・・・

「私の目的など一つだけだ。」

「私を殺すことか? 未来の私、英霊エミヤ!」





「な・・・」

いったい何がどうなっているの?
未来の私・・・って・・・

「アーチャーが貴方だって言うの?」

「私とて認めたくは無いさ。だが、そう考えればつじつまがあう。
 私の魔術を使ったことといい、この場に来たことといい・・・」

「正解だ。驚くまでもないか・・・」

「そうだな。どうしてあんたが気に入らないのかもこれで説明がつく。
 自分の思想すら貫けないような腑抜けが私の成れの果てとは・・・」

「言ってくれるな。確かにその通りだ。
 だが、多くの人を救いたいと思って英霊となっても所詮それはただの掃除矢田。
 人を殺すことしか出来ん。借り物の夢を抱いたままそれに気づくことは無い。
 エミヤシロウは生まれてくるべきではなかった。」

いったいどんな人生を歩んだというの?
自分のことをそこまで嫌うなんて・・・いえ、私のいえたことではないわね・・・

「エミヤシロウが生まれるべきではなかった、か。
 それはなぜだ?」

「決まっている。借り物の理想を抱いた。
 そんなものかなえられるはずが無い。それをかなえられるのはそれの本来の持ち主だけだ。
 だからこそそれをもち続ければ毒になる。そんなものを持ったとて、それは周りの人間にも被害を広げていくだけだ。
 貴様は、本当に守りたい者こそ真に守れない。」

「ふっ!」

「どうしたの?」

「あまりに馬鹿らしくて笑っただけだ。
 エミヤシロウが生まれるべきでなかったことの理由は唯一つ。
 借り物の理想を抱いたことではなく、それに疑問を持ったことだ。
 そんな事も判らんようだからそんなものに落ちるのだ!」

「何だと!?」

「もはや語るべき言葉は無い!」

「いいだろう! 逝くぞ!!」





私の今の力で彼に勝つことは出来ない。
絶対的な魔力が違いすぎる。
ならば、やることは決まっている。

同じ詠唱。
同じ魔力。

そこから作り出される世界もまた、同じもの。

「「無限の剣製(アンリミテッド・ブレード・ワークス)」」

その世界は侵食しあい、一つの世界として形作られる。
炎が渦巻き、熱風が吹き荒れる。
地はどこまでも続き、無限の剣が突き立てられている。

「ここが私たちの心・・・だが、私は負けるわけにはいかん。」

「それは此方の台詞だ。私の望みはお前を殺すことだけ。
 いくぞ!」

殺し合いが、始まった。




「アサシン、セイバーを通しなさい。」

「マスター? しかしなぜ?」

「貴様! シロウをどうした!?」

「私は貴方のマスターと休戦したの。
 だから、今のところは敵ではないわ。」

「そんなことが信じられるものか!」

「・・・貴方が信じようが信じまいが関係ないの。
 それより、貴方のマスターが危険よ!」

「なに?」

「あの子、アーチャーに生身で挑んでるわ。」

「なッ!」

「こっちよ。」





   ギィン
 キン     キュイン
      ガギィン

響き続ける剣戟の音。
始まってどのくらいの時間がたったのか、もう十数本の剣が無に帰した。

「チッ! なかなかやるな。」

「ふん。自分の道も貫けないような腑抜けに負ける訳にはいかんのでな!」

     ガギィィン!!

それぞれが同じ武器を振るい、砕け散る。
そして世界自体がほころびを見せる。

「そろそろ限界か? 私に負ける訳にはいかんのではなかったのかな?」

「・・・何、少々違和感を覚えただけだ。私の世界は・・・
 確かめてみるしかあるまい。」

そういって跳び退る。
と、同時に固有結界が解け、元の境内に戻る。

「何のつもりだ?」

「そろそろ、決着を付けようと思ってな。」

その手に握るは一振りの聖剣。
それは彼が始めて作り出した宝具であり、彼の人生に大きな影響を与えたといっても良い。

「面白い。なぜお前がそれを選んだかは知らんが・・・いいだろう。」

「「勝利すべき(カリ)」」

同じ剣を二人が掲げる。
そこに収束されていく魔力はそれまでの非ではない

「「黄金の剣(バーン)」」

閃光が、二人を包み込んだ。




「! それは!?」

「まずいわね・・・あの魔力・・・宝具に匹敵するわ・・・」

「何を言っている! あれは間違いなく宝具だ!
 カリバーン・・・私の持っていた、今は失われた剣だ。」




「・・・そういうことか・・・確かに私の中の何かが変わっていたらしい・・・」

「何を言っている? まだ終わっていないぞ。」

「そうだな。」

互いの魔力によって相殺された聖剣は、それぞれの持ち主に傷を与えられなかった。
同じ宝具、同じ人物が使った攻撃だ。
絶対量が低い士郎も、一撃に乗せるならアーチャーと同等の威力を出せる。

「シロウ!」

「! セイバー!? なぜここに?」

「なぜではありません! 何をしているのです!?
 サーヴァントと生身で戦ったりなど・・・」

「ごめん。でも、こいつは私が戦わないといけないんだ。」

「しかし!」

「・・・興が殺がれた。続きは次回だ。」

「・・・・・・・・後悔するな。私はまだ強くなってやる。」

「・・・・・楽しみにしていよう。」

そういって、私に背を向け去っていった。







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