DEEP RED  プロローグ 


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1: ゴールデンタスク (2004/04/21 00:48:31)[flarestar666 at hotmail.com]


イリヤは笑った、
「幸せだったよ」と。

藤ねぇは泣いた、
「行っちゃイヤだ」と。

桜は祈った、
「どうか、無事で」と。

遠坂は怒った、
「勝手にしろ、バカ!」と。

セイバーは言った、
「貴方を、愛している」と。

そして、俺は誓った、
「正義の味方になる」と。


                
                   DEEP RED
                  
                 プロローグ 『夜明け』

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「・・・イミヤ・・・イミヤ!おい、イミヤ!」
 
「・・・・・・何だ」
 
俺はそのダミ声を聞いて、思考の闇から覚醒した。目の前には大きめの窓があり、そこから夜の闇が延々と続いている。俺は窓の外に広がる昏い平原に少し目をやって、それら、その声の主のほうへゆっくりと振り向く。

「何だ、じゃねぇ!ボーっとしやがって。それより、見てもらってた俺の銃の調子はどうだ?」

「ああ、コレか。まぁ大丈夫だろう」

一度、手元の銃に目をやり、再び目の前の男に向き合った。この男の名前はジム、俺の同僚だ。デカイ体にヒゲもじゃの顔、三十がらみの典型的な白人である。彼が年がら年中被っている、トレードマークのベレー帽も健在だった。ちなみに、俺はジムが帽子を脱いだところを見たことがない。気さくな男で、部隊で気軽に俺に話しかけるのはジムと他数人くらいだ。

「おい、お前の方が大丈夫かよ、もうそろそろ作戦だってのに。お前らしくもねぇ、どうしたんだ?」

気のいいジムは心配そうに聞いてきた。確かに、俺は常に隙を見せない様に気を付けていたつもりだが、少し油断していたようだ。今まで、話しかけられるまで気づかないなんて無かったのだが・・・。

「ああ、少し昔を思い出していた」

最後の作戦前。そんな感傷からか、俺はほとんど語ったことが無い自分のことについて話していた。

「家族や昔の友人とか色々な」

「へぇ!お前さん、家族がいたのか!なんかそんな感じにみえねぇな」

「む、俺だって木の股から生まれたわけじゃない、家族くらいいる。今は、姉と妹みたいなのが一人づつって感じだけどな」

「元気なのか?」

「さあな。もうずいぶんと会ってないし、連絡も取ってない」

さっきまで考えていたことを、再び思い出す。最後に見た、姉と慕っていた人の泣き顔だったり、元後輩の心配そうな顔、そして、銀髪の少女の笑顔だった。

「冷てぇ奴だ。しかし、あのイミヤが家族について話すとはなぁ。じゃあ、恋人はどうなんだ、いるのか?」

ジムは変な指を立て、ニヤニヤしている。

「恋人か・・・」
 
俺の脳裏に彼女が浮かんだ。あの聖杯戦争を共に戦った、美しく、気高き王。食いしん坊な女の子。そして、黄金の別離。彼女は今、幸せな夢を見ているだろうか。

「・・・そうだな、昔はいたよ」

「なんだ、別れたのか?しょうがねぇなぁ、女は大事にしなきゃだめだぜ?その点、俺ときたら・・・」
 
その時、 「ウィン!ウィン!ウィン!ウィン!」 と、集合を告げる電子音が、狭い宿舎全体に鳴り響いた。

「集合だ」

サッと立ち上がり、手に持った銃を突き出す。

「はぁ、もう集合かよ・・・」

ジムは銃を取りながらぼやく。

「ワリィな、使いもしない銃を見てもらってな」

「たいしたことじゃない。銃のことなんて全然知らないしな。できるのは動作不良を起こさないように調整することだけだ」

「それで十分だよ。・・・しかし、信じられないのはお前だ」

俺に背を向け、ドアの方に歩きながら呟く。ジムの巨体が少し震えているように見える。

「あんな短剣2本だけで戦場に出るなんて、正気の沙汰じゃねぇ。俺は未だに、目の前でお前の戦いぶりをみても信じられねぇ。」

ジムは歩くのやめ、こっちを向く。いつものニヤケ顔だった。

「実際、お前はすごい奴だよ。これまでの戦いだって、敵さんの指揮官達の首をあげたのはほとんどお前だろう?さすが、 『レッド・デビル』だ。ほんと、イミヤが味方で良かったよ」
 
「『レッド・デビル』?」

「ああ。敵がお前さんに付けた愛称だ。ま、俺達も使わせてもらってるが。ガッハッハ!」

・・・レッド・デビル、赤い悪魔、あかいあくま、か。懐かしい響きだ。倫敦に行った彼女とは、もう4年近く会っていない。喧嘩別れだったし。あいつは今、どうしてるだろう。今頃、俺とは違ってすごい魔術師になってるだろうけど、相変わらず金欠なんだろうか。あいつ、けっこうツメが甘いしなぁ・・・。

「どうした、顔がにやけてるぞ?」

「・・・そうか?」

ジムが声をかけてくる。どうやら、顔が自然と笑みを浮かべていたようだ。そういえば、ここ最近笑ったことなどあっただろうか。最後に笑ったのはいつだったろう・・・。

「ああ、お前さんの顔が緩むのを見るのは初めてだぜ。じゃ、珍しいもんも見たし、そろそろ行くか」

気付けば集合を知らせる音はとっくに止まっていた。俺も頷き歩き出す。だが、その前に・・・。

「最後にもう一度だけ言っておく。俺の名前はエミヤだ!イミヤじゃない、いい加減覚えろ!」

いくら大声を張り上げても、

「だって、スペルはEだろ?Eならイミヤじゃないか。それに言いにくい」

などとぬかし、ニヤニヤしている。

「最後まで無駄だったか・・・」

「まあ、気にすんな。ガッハッハ!」

と、ジムは笑いながら部屋を後にし、部屋には俺一人が残された。静寂が降りる。

「・・・そうか、もうあれから5年か・・・」

なんとなく、口にだしてそう呟いてみる。あの聖杯戦争から5年。そんな感傷に意味が無いのはわかっている。しかし、あの頃の輝く思い出は、自分の選んだ道を信じ、走り続ける俺を支える掛け替えのない宝だ。その時の想いだけを胸に、俺は今も戦い続けている。

「さて、行かなければな」

俺は壁に掛かっている赤い外套を手に取り、それを着込んだ。そして、鏡の前に立ち、自分の姿を見てみる。赤い外套を纏い、しかめっ面で立っている鏡の中の男は、俺の嫌いだったアイツに似ていた。色素が薄れ、オレンジがかって来た髪。日焼けして、薄黒くなっている肌。そして、185を超える長身。今、実家に帰っても一目で俺だってわからないかもな。

「・・・アーチャーか」

不遜で自信家で皮肉屋で、とんでもなく相性が悪かったが、アイツの言葉は全て的確だった。最後まで正体の知れなかったアイツ。最強のサーヴァントとも、堂々と渡り合ったアイツ。アイツの最期の言葉は今でも俺の胸に刻まれている。アイツを超えることは俺の目標の一つだ。

「また考え込んでしまったな」

今度こそ、俺はドアを目指す。そして、誰もいない部屋を見やった。

「行ってくるよ、セイバー」


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俺が日本を飛び出してから、もう4年近くの時が流れていた。『正義の味方になる』という信念のもとに世界に旅立った俺だったが、どうすればいいか途方にくれた。最初は用心棒のようなことをしていたが、いつの間にか傭兵となり、戦争や紛争がある国へ赴くようになっていた。戦争が長引けば、罪のない人々や子供たちが苦しむ。そうさせないためにも、俺は早く戦争を終わらせるような戦いをしてきた。

この国に流れ着いたのは約一ヶ月前。貧しく小さなこの国で、人々は独裁的な政府と戦っている。そして、俺は「革命軍」と呼ばれている反政府の組織と共に、傭兵として戦っていた。


「諸君!!」

兵士たちが集まっている場所に着いたとき、革命軍の指揮官であるティミアット将軍が、恰幅のいい体を揺らしながら演説していた。

我々はとうとう、政府の豚共を追い詰めた!奴らの戦力も、この戦いが終わればほとんど無くなっているだろう!つまり、これが最後の戦いだ!これも、今まで私を信じてくれた同志達のおかげである!最後まで力を貸してくれ!共に政府のクズを排除しようではないか!」

「オオーッ!」

兵士達も士気が高い。それも当然、圧倒的だった戦力差をひっくり返してここまできたのだ。誰も今日の勝利を疑っていないだろう。

「フン、1年前まで政府で甘い汁吸ってた奴がよくいうぜ」

隣にいたジムが悪態を吐いた。将軍の演説は続いている。

「どうせ、甘い汁が吸えなくなった腹いせの『革命』なんだろうぜ」

「そんなことはないだろう。実際、彼は皆をよくまとめていると思うが」

「甘ちゃんめ、本気でそんなこと言ってると、すぐに裏切られて死ぬぞ」

ジムがいかにも不愉快そうに言った時、演説を終えた将軍が上機嫌な感じでこっちに近づいてきた。
 
「戦士エミヤ!!調子はどうだね!」

「良好です、ティミアット将軍」
 
ご機嫌な声で話しかけてくる将軍に、俺はそう返した。ジムは向こうを向いている。

「なんだ、他人行儀じゃないか!ティミアットでいいといつも言っとる!私たちは友人同士じゃないか!」

「いえ、それでは軍の規律が乱れます。傭兵とはいえ、規律は守らなければ」
 
将軍はますますご機嫌のようだ。ジムはしかめっ面をしている。

「そうだったな!それはすまない!だが友人というのは本当だ!なんていったって君はこの軍の英雄、戦士エミヤなんだからな!」

「お褒めに預かり光栄です、将軍」

慇懃な態度の俺に、将軍は俺の両肩に手を置き、バシバシと叩いてくる。

「君には本当に期待している!今日の戦いも頑張ってくれ!」

「全力を尽くします」

そうして、将軍は体を揺らしながら立ち去っていった。向こうを向いていたジムがこっちを向く。

「ホント、調子のいい野郎だぜ。最初は銃を使わないイミヤを馬鹿にしてたくせに」

ジムはまだブツブツ言っているが、取り合う必要はないだろう。

「行くぞ、作戦だ」

「わーったよ!」


作戦は単純だ。革命軍の主力が正面から戦い、俺を含める少数の部隊で相手の頭を叩くというものだ。もちろん、発案者は俺だが。この戦法で革命軍は、少ない戦力ながらも勝利を得ることができていた。そして、今日もこの作戦で行くことに、皆異存はなかった。

「行くのは、俺、ジム、マルコ、フランツ、ロシュトーの5人だ、いいか?加わりたくないものは、来なくてもかまわない」

俺は4人の目を見ながら、真意を伺うように問う。

「はっきり言って自殺行為だが、今までうまくいってるからなぁ」

帽子を弄りながら、ジムはあきれたように言った。

「大丈夫だよ!こっちには東洋の不思議、スーパー・ニンジャがついてるんだ、死にゃあしねぇよ!」
 
イタリア系の陽気な優男、マルコはそう喚いている。

「報酬がいいからな」

眼鏡のドイツ人、無骨なフランツもそう続ける。

「『レッド・デビル』の戦いぶり、一度拝見したいと思っていました」

生真面目そうなフランス人、金髪碧眼のロシュトーが最後にそう言った。

「わかった、では作戦を開始する」

俺は彼らの勇気に敬意を評しながら、そう宣言する。

そして、戦いは始まった。


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河と森に挟まれた道で、目的地に向かうジープの中、俺たちは思い思いの時間を過ごしている。周りを見張っている者、目を瞑り、集中力を高めようとする者。写真を見ている者。愛銃を磨いている者。そして、ずっと喋っている者――――。

「戦士エミヤはそんなにすごいのですか?私は新参者ゆえ、よく知らないのですが・・・」

つい数日前に来たばかりのロシュトーは、興味深そうに聞いている。

「いやー、すごいなんてもんじゃないね、もう化け物だよ、化け物!なんつったって、銃弾、普通に回避しちゃうからね!つーか弾当たっても効かないし。しかも、エミヤのナイフのスキルがこれまた半端じゃないんだよ!敵兵士50人、無傷でブッ倒してきたときは、感動通り越してちびりそうになったよ!」

マルコは運転しながら、何故か得意げにロシュトーに語っている。しかし、俺の干将莫耶はナイフじゃないんだが・・・。
 
「このこっ恥ずかしい赤いヒラヒラの服に穴すら開けないんだぜ!どうなってんだ、コレ?特殊素材か?」

といいつつ、助手席の俺の外套に触ってくる。

「撫でるな!作戦中だ、真面目に運転しろ!・・・俺の服は多少丈夫には作ってあるが、普通の物だ。別に特別製じゃない」
 
――――深い赤の外套。この外套を選んだのは、別にアーチャーに影響されたわけではない、とは言い切れないが、戦場でも目立つ赤色、敵の攻撃を防ぐのに適した大きめの外装、という点で優れたモノだった。

俺はマルコに怒鳴り返す、と同時に視界に何か違和感を覚えた。

「それじゃますます興味深いな。あんたは一体どんな・・・」

「止めろ!敵だ!」

「なっ!」 

俺の言葉にマルコは急ブレーキを踏む。

「敵!?一体何処に・・・」

「とにかく、直ぐにジープから出ろ!」

あの一瞬、魔術で強化された視界が光を捉えていた。ミサイルだったらマズい!
そして、皆がジープから出た瞬間、 

「ドォォォォン!!!」

爆音を響かせ、ジープが爆発した。

「マジかよ・・・」
 
皆は呆然とした顔をしている間に、俺は素早く周りを見渡した。

「敵の長距離攻撃だ。前方から、2キロ以上の地点からの発射だと思われる。急ぎ散開しろ!敵の狙いは正確だ。待ち伏せかもしれん、各員用心しろ!」

俺の言葉にハッとし、皆は思い思いに散っていく。
 
「イミヤ!お前はどうするんだ!」

「俺はミサイルを撃った連中を叩きに行く!皆、合流地点と時間は知っているな!遅れた者は置いていく!間に合わなかった者は帰還し、本部に報告しろ!あと無線は極力使うな、傍受されている可能性がある!以上だ!」

怒鳴りつけるように皆に告げた後、俺は光の視えた地点に全力で走っていく。

「了解!気を付けろよ、あとでな!」

ジムの声を背に受けつつ、俺はさらにスピードを上げていった――――。

 

森の入り口、ミサイルが発射されたと思われる地点まで半分というところまで来たとき、俺はスピードを緩めた。敵兵士がここで待ち構えているということは、すでにこの眼で確認している。呼吸の乱れはない。敵兵の数は計20人、左に5、正面に6、右に5、さらに向こうの装甲車のところに4というところか。この程度の数、なんの問題もない。
     
 「――――投影、開始」

俺は自らの魔術回路に働きかけ、投影を開始する。投影魔術において、大切なのはイメージだ。俺は心の中にある、 干将莫耶の正確なイメージを構築していく。アーチャーの持っていた夫婦剣、美しきその剣には魔除けの言葉が刻まれている。そして、今ではもっとも使い慣れた剣として俺の両手に現れていた。

「・・・行くぞ!」

馴染んだ双剣の感触を確かめつつ、敵に向かって疾る。敵が俺を視認できるまで接近したとき、俺の存在を気付いた敵兵が銃撃を開始しようとする。だが、遅い!

「ハッ!」

俺は一瞬にして加速し、まず左側の5人に向かう。奴らは忽然と目の前に現れた俺にたいして呆然としている。俺は一番近くの兵士に切り掛かっていく!
 
「ぐああああ!」

兵士の叫び声が響き渡る。俺はなんの音もなく、最初の一太刀めで相手の右腕を切り落とし、二太刀めでマシンガンを真っ二つにした。『レッド・デビル』のことは知っていただろうが、まさかここまでとは思っていなかったのだろう。奴らの顔には恐怖と驚愕が浮かんでいる。俺は倒した兵士には見向きもせずに、次の相手に向かっていく。

「うおおおおお!」
 
なんとか我を取り戻した兵士が、俺に銃を向けようとする。しかし、この近い距離では無駄だ!

シュッ! という音ともに、また腕と二つになった銃が落ちた。再び聞こえる絶叫。俺は止まらずに3、4、5人と敵兵士を切り伏せていった。

「・・・・・・」

一度の銃声も聞こえぬまま、5人は切り倒され、呻き声を上げている。俺は汚れた双剣を振るって血を飛ばし、他の兵士達と向かいあった。

「どうした、貴様らはこの程度か?」

挑発するように、俺は心底くだらなそうに言い、顔を歪めた。

「う、撃てエエエエエ!」

その声が響かないうちに、無数の銃弾が発射された。俺は弾丸の雨を潜り抜けながら、疾る。

――――銃弾を避けるといっても、俺は別に弾丸より速く動いている訳ではない。魔術で強化した視覚による擬似的な“千里眼”による動体視力の向上と相手の捕捉、そして、長い修練と聖杯戦争やこの4年間で培われた戦闘経験による驚異的な洞察力――“心眼”――で、銃口の位置、発砲のタイミング、行動の予測、戦闘の流れなどを感じ取る。そしてなにより、俺には弾丸の軌道がなんとなく‘読める’。俺はこれらによって弾丸の通らない場所を選び、移動を繰り返していく。

「何故だ!何故弾が当たらねえ!」

「ば、化け物だ!」

「めちゃくちゃだ!めちゃくちゃだぞ、アイツ!」

怒号と銃声が飛び交い、兵士達が恐怖と混乱で士気を失っていく中、俺は赤い外套を翻しながら、舞踏を舞うように敵を倒していく。そして、
 
「フン!」

16人目の敵兵を切り倒した。辺りは濃い血臭が漂い、呻き声が響いている。その中で、俺だけがかすり傷一つ負うこともなく、立ち尽くしていた。戦闘に費やした時間は1分にも満たない。そして、森の向こう側を見やる。

「まだ向こうにいるな。援軍を呼ばれるのも面倒くさい、早く倒しに行くか」

俺が装甲車のほうに向かおうとした時、

「ゴゴゴゴゴゴゴゴ!」
 
と、轟音と共に、装甲車が木を薙ぎ倒しながら向かって来るのが視えた。

「フッ、わざわざ来てくれるとはな。こっちから行く手間が省けた」
 
装甲車は機銃を撃ちながら突っ込んでくる。それを見据えて、俺はゆっくりと干将莫耶を構える。

「ハァーッ!!」
 
気合と共に、左右から干将莫耶を投げつける。投げられた双剣は弧を描きながら、装甲車に向かっていく。俺は続いて投影の準備に入る。

 「――――投影、開始」
 
あの装甲車を破壊し尽くすには、干将莫耶より一撃の強力な剣を用意しなければならない。俺は自分の内に無限に広がる“剣の丘”より最適な剣を選別し、探し出す。そして、俺は一振りの聖剣を創り出した。
 
――――『デュランダル』、パラディン・ローランが愛用したという聖剣で、三つの奇跡を持ち、決して切れ味を落とさない輝煌の剣。ギルガメッシュ戦により得た、魔剣・聖剣の中の一振り。

「ズガァァァン!」

同時に、装甲車の両輪に先程投げつけた干将莫耶が命中し、タイヤを木っ端微塵にした。タイヤを破壊された装甲車は、そのままの勢いで滑ってくる。俺は創り出した聖剣を両手で構え、迎え撃つ!

「セヤーーーー!」

そして、俺は装甲車を一刀両断した――――。
 
 
爆風を背中に浴びながら、俺は空を見上げた。月も星もない、完全なる暗黒の空。まるで、吸い込まれていきそうな闇。俺の心にはなんの感慨も浮かばなかった。
 
「・・・次の場所に行かなければ」

人々を守る為に人を殺すなど、もう慣れたことだ。俺はこの4年間で、そのようなことでは動じることのない鉄の心を手に入れていた。初めて他人を殺した時はずっと震えて、夜も眠れなかったくせに。俺は、しっかりと前を見据える。
 
そして、再び歩みを進めていく。
 

2: ゴールデンタスク (2004/04/21 01:21:03)[flarestar666 at hotmail.com]


蛇足ななかがき

ようやく半分です。残りは近日公開します。
コンセプトは「主人公はかっこ良く」。
なんか、男ばっかですねー。しかもオリキャラ。
後半もこんな感じっす。話の展開上、しょうがないだけど。
まあ、これからの展開によっては懐かしのあのキャラが!?
つーわけで、よろしく。


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