DARK HERO 第三集(M:沢山 傾:色々)


メッセージ一覧

1: kazu (2004/04/19 19:48:04)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

はじめに
自分の配慮に欠けた振る舞いで迷惑を蒙られた方々、不快に思われた方々に深く謝罪致します。すいませんでした。

2: kazu (2004/04/19 19:49:03)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第四十一話「ダンデライオン」




「ここは・・・・」


気付けば火の海の中に居た。

天空には巨大な月が浮かんでいる。


「夢の中のようなものさ」


背後から聞き覚えのあるが響く。

それに驚きバッと振り返ると、そこには―――――


「はじめましてかな、衛宮士郎?ぼくは遠野士郎、君であり決定的に君とは違う士郎だ」


金色の瞳に赤い髪――――――

反転者か。

確かに見た目は俺だが・・・・・。


「ゴルァ糞餓鬼。おふざけも大概にしないとお尻ぺんぺんだぞ」


「ふざけてなんかいないさ。君がセイバーと契りを交わしたコトで因子が目覚めた。その所為でぼくが浮上した」


呆れたように溜息を吐くと、俺を睨む。

因子だと?


「この身は夢幻、だが間違いなく衛宮士郎の一部だ。故に指摘しよう、君の矛盾を、怖れを」


そう厳かに告げる告げる姿は言峰に通じるものがあった。


「君の理想は、いや――――――信念は何も犠牲にしないコト。なのにこの光景はなんだろうね?」


直後、世界が変わる。

あの十年前の夜だ。

そして・・・・これは――――――


「そうだよ。君が必死に忘れようとした、封印した事実だ」


所々であがる悲鳴に命乞い。

ソレを無視して歩く赤茶の髪の子供。

時に足を掴む手を払い除け、耳を塞ぎながら歩く。


「もしかしたら救えたかもしれない人が何人居ただろうね?それを君は両親を助ける為に無視した――――」


――――言うな。

止めろ。

俺は、俺は・・・・・!!


「何かの為に何かを捨てる。お前はキリツグと何が違う?」


「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!

俺はあの男とは違うんだ!

全てを振り払うように、右手に投影した銃を遠野士郎に向ける。

だが――――――


「見苦しい。都合の悪い事からは目を逸らし否定する―――――――まるで餓鬼」


ザッ!!


突然周囲の炎の中から多数の槍や刀が飛び出し、俺の体を貫き縫い付ける。


「っがぁぁぁぁ!?」


痛みに声を張り上げ叫ぶ。

その叫びも無視して遠野は微笑む。


「死ねないし気絶も出来ないだろ?ここはそういう所だ。安心しなよ」


「あっ・・・ぐ・・・」


ブシュリと、右目から後頭部に貫通した槍を引き抜く。

すると直ぐに左目に視界が戻る。


「君がセイバーに言ったこともそうさ。確かに彼女は救われたかもしれない。だけど――――――」


そこで表情を消し、見下したように俺を見つめる。


「君のした事は彼女の想いも、信念も、心も全てを無視した最悪の行為だ!」


その言葉が容赦なく俺を貫く。


「素直にぼくに体を譲りなよ、心配しなくても君のしてきた事も清算してやるからさ」


そう言って優しく微笑む遠野。

だが、その言葉で目が覚めた。

都合の悪い事は全て無視、そして自分のやりたいようにしかしない。

たしかに餓鬼だよな。

全てを遠野に任せてここで終わるのが正しいのかもしれない。

そう思い苦笑する。

だけど、思い出させてくれた。

感謝するぜ遠野、もう少しで俺は潰れる所だった。


「何を笑う?自分に嫌気でも差したかい?」


「ハッ!ンなもん何時もだ。だがなぁ・・・・彼女の意思を尊重して、信念を貫かせて、それであんな小さな女の子から全て奪ってどうするんだよ!」


そして、と強い意志を篭めて続ける。


「それこそ彼女を裏切り嘲ったあのクズ共と何が違う!!偽善だ独善だ叫んで何になるんだ!彼女に何も与えず良い人間になる位なら、俺は最低の人間でも良い!あの一生懸命な子に、失くした物を渡してあげられるなら―――――それだけの価値はある!」


それは間違いない事実。

確かに俺の吐いた言葉は最悪に自分勝手なものだった。

でも、それでも彼女は進んでくれた。

あの一言で前に一歩進んでくれたんだ!


「俺は確かに多くの人を見殺しにした!だが、もう決して目を逸らさない!」


もう、逃げるのは止めだ。

これまで捨ててきたモノの為にも。

ま、今更だがな。


「今の俺が間違っているなら正せば良い!!それに――――――」


セイバーは前に一歩進んでくれた。

イリヤは心の闇を吐き出そうと頑張っている。

遠坂は俺が居るだけで楽しそうに笑っていてくれる。


「あの笑顔は、みんなの笑顔だけは絶対に間違いなんかじゃないんだ!」


思いを紡ぐ言葉と共に、十年前の光景を火の海が塗りつぶした。


「っ・・・!固有結界の上書きだと・・・・!?」


そこで初めて遠野が焦ったように呟く。

その表情に一片の余裕もなく、醜く歪む表情は見るに耐えないものだった。


思い浮かべるのは太陽。

陽光の無垢さ、真っ直ぐと伸びる凛々しさ、そして雨風に耐える強さ。

イリヤ、セイバー、遠坂、アーチャー、ライダー、がーねぇ、一成、美綴、雷画爺さん――――――

心が緩やかな熱で満たされ溢れる。


「悪いが俺はまだ舞台から降りる訳にはいかないんだ」


そう言って体中に刺さった武器を抜くと、即座に傷がなくなる。

この世界では死ねないし死なない。

それはただの武器だからだ。

ヤツは俺の心の欠片。

ならば、同じモノなら消せない道理はない。


俺の本質は贋作の作り手だ。

だが、贋作の作り手が自分自身のオリジナルを作れない訳ではない。

ならば作れ。

今の想いを、心を乗せて作れ。


地面から火の玉が飛び出し、突き出した右手を包み込む。

そして、炎に包まれた右手が輝きを放ち形を変えてゆく。

それを静かに遠野に向ける。

炎が消えた右手には、右手と一体化した異形の・・・・それでも不気味なものではなく、セイバーの宝具ような優雅さを持った銃が存在していた。


「咲き誇る(ダンデ)――――――」


想いを込めてゆっくりと引き金に指をかける。

暖かい――――

この銃の温もりは心を穏やかにする。


「気高き一輪(ライオン)!!」


引き金を引くと、銃口から光が迸り春の匂いが胸に満ちる。

優しい光が、力強く全てを貫いた。






















つづく












あとがき

んー・・・・・今回は自分的に赤点ギリギリの出来・・・

原作の士郎は相手を思うが故に、セイバーを手放してましたからねぇ・・・・
フェイトエンドが好きな人には地雷かもしれません。
作者的にフェイトエンドも好きなのですが、強引にでもセイバーを止める士郎が見たかったデス。


追記:ダンデライオンの形状は、FF-兇離罐Ε覆僚討隼たような感じです。サイコガン系では無いですよー

3: kazu (2004/04/19 19:49:20)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第四十二話「葛藤」






緩やかな熱に運ばれて目が覚めた。

目の前には遠坂の顔があった。


「起きたの?」


「・・・・ああ」


どうやら自室の布団で寝かされていたらしい。

魔力不足による脱力感が激しいが、それ以外は特に体に支障は無い。


「まさか固有結界を出すなんてね。驚いたわよ」


不思議と穏やかに遠坂が俺に言う。

なんだか遠坂がおかしい。

普段の遠坂なら、固有結界なんて出したら徹底追及されると思うんだが―――――


「私ね、アンタの固有結界から目を逸らしちゃったの」


ポツリと、何処か悲しそうに遠坂が呟く。


「アンタの心から目を逸らしたのよ。見てられないって」


言いながら目に涙浮かんでゆく。

何を悲しんでいるのか解らないが、こんな遠坂は見ていたくない。


「酷い女よね。今までずっと甘えてきた癖に―――――」


そう言って俯くと、遠坂の目から涙が一適零れ落ちた。

だが、多分遠坂が落ち込んでいる原因は、そんな事だけじゃないだろう。

昨日の影・・・・・・それとサクラとか言う呟きが引っかかる。


「気にするな。俺だって自分の心と向き合えていなかった。矛盾から逃げて、否定して、その結果がこのザマだ。酷いエゴイストが出来ちまったよ」


俺の言葉に、「そんなことない」と弱々しく答える遠坂。

だが、それは事実。

俺は一度も周りの心を見ようとはしなかった。

自分が楽しく生きるために、後悔しないために。

ただそれだけの為に誰かを救い、誰かを愛した。

それが普通の感情なのかもしれない。

だけど、俺のは度が過ぎている。

だから、セイバーの都合を無視した。

だから、サーヴァント相手に勝手に家族だなんてはしゃいだ。


「セイバーに謝らなきゃな・・・・」


そろそろ意識を保つのも限界だ。

ふと横を見ると静かに涙を流す遠坂が目に入った。

その小さな体が今にも壊れてしまいそうで、不安になってそっと抱き締めた。


「はは・・・・答えを出しても中々変われないもんだな・・・・」


結局俺は間違いに気付いただけで変われて居ないのだろう。

それでも、今できることをやろう。

そう考えてから、全く抵抗しない弱々しい遠坂の頭を軽くぽんぽんと叩くと、そのまま静かに意識を手放した。













キャスター視点



「戦っている場合ではない、か―――――」


アーチャーの残した手紙を机に置きながら溜息を吐く。

確かにその通りなのだろう。

使い魔の報告から見てもあの影はサーヴァントの天敵だ。

そんな相手に私とアサシンだけで立ち向かうのは無謀だ。

その前にルールーブレイカーで―――――

何度もそう考えた。

他のサーヴァントを無理やり仲間にしてしまえ、と。

だが、他の戦力が固まっている今、それは難しい。

それに――――――


「宗一郎様を危険な目に遭わす訳にはいかない」


故に、手を組むべきなのだろう。

そもそも私は何故聖杯を欲していたのだろうか?

わからない。

昔は確固たる目的があった筈だ。

それも多分、今が幸せ過ぎるから――――――

そこで思い至る。


「――――――私も馬鹿ね」


もう願いが叶っているから、聖杯の必要性を感じないのだ。

なら、迷う必要など無い。

精々彼等には頑張ってもらおう。

私達を守って貰う為に、ね。

答えの出た清々しさに少し心が軽くなる。


「ニャ」


そこに突然猫がトコトコと私の元まで歩いてきて、膝の上に置いた私の手の上に肉球をプニッと押し当てた。


「あら?アサシンの所に居なくて良いの?」


「ニャン」


その問いを理解してないのか、じっと私の目を見つめる子猫。

数瞬の沈黙の後、猫は嬉しそうに一声鳴くと、ぺろりと私の手を一舐めしてトコトコと部屋から出て行った。


「フフッ・・・・祝福してくれているのかしらね?」


答えを得た私を祝ってくれたのだろうか?

事の真意はどうでも良い。

だけど、私は今確かに生まれて初めてかもしれない温かさを感じていた。


「今度、猫缶でも買ってあげないとね」


勝手に緩む顔を必死で引き締めながら、ポツリとそう呟いた。

















慎二視点



今夜も桜がフラフラと夜の街から帰ってきた。

その姿は正に幽鬼。

何故だ?爺が何かしたのか?

だが―――――


「フン、僕には関係無いさ」


まるで空っぽの強がりを呟く。

白状すれば正直心配でたまらない。

自分でもムシのいい話だと思っている。

桜を散々苦しめてきたのは僕で、今尚家の呪縛から救ってやれないのも僕。

どうすれば救える?

いや、そもそも――――――


「僕にはその資格すらないよな」


衛宮に思い出させてもらった。

無力の辛さと、歪みの起源を。

正直に告白すると、僕はあの爺が怖い。

逆らえば凄惨な責め苦の中で死に絶える。

それだけは明確に想像できる。

いや、逆らう力すらないのだからその仮定は無意味だな。

それでもどうにかしなければならない時期なのかもしれない。

取り返しのつかない事態になる前に、桜を救い出せる最後のチャンスかもしれない。

手遅れでない事を祈るしかない。

最近の桜は何処かおかしいのだ。

体調もそうだが、時折凄惨な笑顔を浮かべる。


「衛宮、遠坂―――――――お前達なら桜を救うだけの力があるのか?」


静かな部屋に、意味の無い問いだけが何時までも蟠った。



















つづく




あとがき

何故だろう・・・・俺の中でキャスターとリツコさんのイメージが重なる・・・・・。

4: kazu (2004/04/19 19:49:36)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第四十三話「変わらぬ日常」






目が覚めたら朝でしたとさ。

最近こんなパターンばっかりだな・・・・・・。

隣にはあのまま寝たのか、遠坂の頭が布団から出ていた。


「おーい。起きなされー」


とりあえず遠坂の頬を引っ張ってみる。


「ん・・・・なによもう・・・・・へ?キャァァァァァァ!?」


起きた。

起きたのは良いんだが遠坂よ・・・・・。

腹にガンド打ち込むのはやめれ。


「な、何でアンタが―――――」


「ご、ゴロッとキタ―――――――!!!」


慌てて布団を弾き飛ばしてトイレに急ぐ。

遠坂に構ってる暇なんて無い。


「ヒィィィィィ!?漏れる!漏れてしまう!!」


ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ×∞

遠坂の野郎・・・・腹にガンドは凶悪過ぎるわ!!

半泣きで走りトイレのドアを目視!

理想郷発見!!


「トォウ!!」


全力でドアを開けて便座に座る。

安堵の溜息を吐きながら、ふと横を見てみると・・・・・。


「黄脳!紙が無いYO!!」












凛視点



「ったく。あのバカは」


確かに私が勝手に士郎の部屋で寝たのは悪かったが、それにしてもデリカシーってモノが無さ過ぎる。

普段なら何か飲むまでこうもハッキリと目が覚めないんだけど、今朝は士郎のお陰で眠気は無い。


「あれ?何してるのよセイバー」


居間の前の廊下で、士郎を背負ったセイバーとばったり出会った。

何故か士郎はかなりの冷や汗をかいており、尋常な様子ではない。


「ちょ、士郎!?」


「安心してください。一寸した過負荷のようなものらしいです」


と、何処か呆れた様子で士郎を見るセイバー。

過負荷?


「何でそんな事になっての?」


「はぁ、何でもトイレットペーパー投影したらこうなったと・・・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私の苦悩が酷く馬鹿らしく思えてきた。

ったく、このバカは。

思わずその苛立ちを、士郎の空っぽの頭に拳という形にしてぶつけた。


「ジュアッグ!?」


良くわからない悲鳴を上げて力尽きる士郎の姿に、少しだけスッキリしたので牛乳を飲む為に台所に向かった。











アーチャー視点



―――体は紙で出来ている。

血潮はネ○アで、心はT●TO。

幾千の便所を護り不敗。

ただの一度も出血は無く。

ただの一度も補充されない。

彼の者は常に独り トイレの隅で出番を待つ。

故に、生涯に悔いは無く。

その体は、きっと紙で出来ていた。



「――――――っ!?・・・・・ゼェッ・・・・ゼェッ・・・」


な、何だ?今のスペルは。

余りの恐怖に体が震える。

突然怪談話のお経の如く聞こえたスペルに、妙な恐怖を抱き辺りを見回す。

だが、周りには何も存在せず、魔力らしきものも―――――――


「トイレから凄まじい魔力?これは―――――小僧か」


この気配からして相当切羽詰まっているな。

妙に気になったので少し知覚領域を拡大して様子を探ってみるが――――――


―――体は紙で出来ている。


またあのスペルが聞こえた。

奴が実際に言っている訳ではない。

奴の思念が私の知覚を通り、私にとって理解しやすい形に修正されたのがあのスペルなのだろう。

つまり――――――


「奴が原因かァ!!」


プチッと何かが切れた。

広がる不思議な清々しさ。


「答えは得た。この胃痛の原因は貴様か」


胃を押さえながら顔に満面の笑顔を浮かべる。

朝陽が実に清々しい。


「―――――――カラドボルグ」


笑顔のまま弓とカラドボルクを取り出して構える。

多分今の私は、英霊となってからの笑顔の中で、一番の笑顔を浮かべているのだろうう。


「止めなさいアーチャー」


突然現れたライダーが私の前に立ちはだかり、弓の射軸を塞ぐ。


「どいてくれないか、ライダー。オレの邪魔をしないでくれ」


「・・・・・ソレが地ですか。これ以上続けるなら――――――」


「君が相手になるとでも言うのかな?」


「いえ、リンに言いつけます」


ピシリ、と体が固まる。

心では必死に抗おうとしても、体がソレを拒否する。


「ちなみに、有る事無い事適当に報告させてもらいます」


冷や汗がダラダラと流れ出る。

必死で強がりを言おうとしても声が出ない。

嗚呼、こんな状態になると―――――


「うぐっ!?」


案の定胃に激痛が走る。

痛みで集中が途切れた所為か、カラドボルグも弓も崩れ去ってしまった。


「どうぞ」


蹲っていると、ライダーがスッと胃薬と水のペットボトルを私に差し出す。

それをどうにか受け取り、粉薬を水で流し込む。


「何故・・・・?」


私の疑問には答えず、ライダーは何処か遠くを見るように顔を上げる。


「お互い、大変ですね」


その言葉には語り尽くせぬ思いが篭められていた。

ああ、変人の集団の中にも仲間が居た・・・・。

その事実に心が満たされる。


「ああ」


私はそう答えると、ライダーと同じように遠くを見る。

この瞬間、私達の間には確かな友情が産まれた。






















つづいたりする






あとがき

ギャグがイマイチ・・・・

5: kazu (2004/04/19 19:50:01)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第四十四話「見つけた幸せ」





あー、ちくしょー・・・・まだ腹が痛い。

あの後、結局朝飯も食い逃した。

その上セイバーに謝ったら、「はい?」って、訳ワカリマセンって顔された。

一応理由も説明したんだが、良くわかっていないご様子。

「アレはシロウの性格でしょう、何故謝るのです?私は嬉しかったんですよ?」なんて真顔で言われて、気恥ずかしくなって散歩がてらこの公園に逃げてきた。


「ぷぁ〜・・・・日曜なのにホントに人がいねぇな・・・・・ここは」


軽く煙草の煙を吸い込んで呟く。

本当に人が少ない。

ポツポツと散歩する人が居るだけだ。


「あれ?衛宮君だ。なにやってんスか?」


唐突に後ろから声をかけられたので、顔だけ後ろに向ける。


「おう、ノブか。こんな朝早くにどうしたよ?」


後ろにはいかにもガラの悪そうな金髪――――――――俺の後輩の相楽信行(サガラノブユキ)がポケッと突っ立っていた。


「お?その面はまた喧嘩か」


「ええ。ちょっと女の子がタチの悪いのに絡まれてましてね」


コイツは見た目はアレだが正義感が強い。

素行だけを見ればただの不良だが、理不尽な事はしない奴なので結構気に入ってる。


「衛宮君、最近全然遊んでくれないじゃないですか、みんな寂しがってますよ?」


「ちとゴタついててな。片付いたら飲みに連れてってやるよ」


どうも俺はこういう元気な輩が友達に多い。

まぁ、その原因が俺の髪の色を見て絡んできた馬鹿を潰して周ったことにあったりする。

昔は仲間の中には救いようの無い馬鹿が居たが、そんなのとはツルんでない。


「くぁ・・・・じゃ、失礼します。徹夜明けなんて寝に帰ります」


「ほいほい。んじゃな」


軽く手を振ってノブを見送ると、新しい煙草に火をつける。

はぁ・・・・・・平和だ。










「隣、宜しいかしら?」


煙草を咥えて目を瞑りながら天を仰いでいると、スッと影が覆いかぶさり可憐な声が降って来た。


「ん?ああ、どうぞ。煙草消しましょうか?」


「御気になさらずに」


何処かで聞いた覚えのある声に、首を傾げながら隣に座った人物を横目でちらりと見る。

その容姿は一言で言えば美人、もっと言えば隣のお姉さん。

尖った特徴的な耳が見えるがさほど気にならない。

しかも外人の割には日本語が普通に上手い。

隣に置かれた買い物袋から覗くネギが、妙に所帯じみていて親しみが持てる。


「久しぶりね、セイバーのマスターさん?」


その声に、体が勝手に反応した。

そのままワンアクションで銃を投影しようとして―――――


「落ち着きなさい。今日は戦いに来た訳じゃないわ」


無理やり魔術をキャンセルさせられた。

女性の声には先程までの柔らかさは無く、顔は氷の表情を浮かべていた。


「まさかとは思ったがキャスターかよ・・・・・。――――――つーかメッチャ美人じゃん」


「ふふ、ありがとう。いい加減にその露骨な殺気を収めたら?」


俺の素直な賞賛に、柔らかい雰囲気に戻りながら笑顔で答えるキャスター。

どうやら本当に戦いに来た訳じゃないらしいので、俺も素直に臨戦態勢を解く。

つーかどの道戦った所で勝てねぇし、今の状態では時間稼ぎも出来ない。


「賢明な判断ね」


殺気を引っ込めて、大人しく座りなおした俺を見てクスクスと微笑む。

キャスターの纏う雰囲気が以前とは別人だ。

憑き物が落ちた様な清々しさだ。


「フン・・・・・アンタも随分丸くなったな。この短期間で何があった?」


「驚いた、貴方鈍いようで中々鋭いのね」


失礼な事に本当に驚いているキャスター。

流石にちょっと傷付く。

しろうくん、ブロークンハートだ。


「手にしていた物の素晴らしさに気付いたって所かしらね・・・・」


そう言って嬉しそうに微笑む。

変われば変わるものだ、あの毒婦の様なイメージのあるキャスターが可憐なお姫様に見える。

いや、こちらが本質なのかもしれないな。


「じゃあ、聖杯なんて要らないんじゃないのか?」


場の雰囲気に流されて軽口を叩く。

だが――――――


「ええ。別に聖杯は必要ないわね」


その答えは俺の予想とは正反対のものだった。







キャスター視点



「ええ。別に聖杯は必要ないわね」


何の躊躇いも無く言い切った。

ここまでスルリと言葉が出たのは産まれて初めてかもしれない。

何故この少年にこんな事を話しているのか――――――

最初はただの好奇心だった。

手を組む以上は相手の腹を探る、それは必然であるので特に問題は無い。

なのに、何故かこんな話をしている。

まぁ、この日差しの所為と言う事にしておきましょう。

冬なのにポカポカと暖かい日差しを全身に受けて深呼吸をすると、少し顔を引き締めてセイバーのマスターに向き直った。





















つづく










あとがけ

今回は何故か短め。

・・・・・・・ごめんなさい、ホントはショートツーリング行ってました!春の陽気がいけないのさ!!

いや、ホントすいません、自分調子に乗ってました(超卑屈

6: kazu (2004/04/19 19:50:40)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第四十五話「儚い宝石」





冬なのにポカポカと暖かい日差しを全身に受けて深呼吸をすると、少し顔を引き締めて俺の方に向き直るキャスター。


「必要ない、だと?」


頭の中から様々思考が吹っ飛ばされて、中身が空になる。

それはおかしい。

サーヴァントは聖杯を手に入れる為に召喚に応じるのだ。

なのに、必要ない―――――

その絶対的矛盾を俺の思考で理解する事は出来ない。


「何が目的だ?」


人は理解できない事象には恐怖と疑いを向ける。

今の俺がソレだ。

騙されるな、裏がある、そんな根拠の無い疑いが俺の表情を自然と強張らせる。


「裏なんて無いわよ、真実そう思っているだけ。大体――――――何か裏があるにしても貴方に対して、そんな回りくどい事をする必要はないわ」


その言葉にハッとする。

確かにそうだ、力関係はハッキリしているのだからここで変に策略を練る必要はないのだ。

セイバーが目的なら俺を木偶にすればいいし、人質にするなら抵抗できないように何かすればいい。

どの道、力づくでどうにかなるのだ。

ならば本当に聖杯を必要としてないのか―――――――心ではそう理解できても、頭が未だ疑いをかけようとしている。


「信じられないって顔ね?―――――まぁ仕方がないんでしょうけどね・・・・・・」


そう言って少し気落ちしたように俯くキャスター。

おかしい、絶対的に。

腹の探り合いにしたってほのぼのとし過ぎてる。

これじゃあただの世話話じゃないか。


「貴方は何故この戦争に参加したの?」


暫らく無言だったキャスターが唐突に俺に問いかける。

その目には何の悪意も見えない。


「ソレを言う義務は?」


「無いわね。私もただの好奇心で聞いただけよ、嫌なら結構」


それでも聞きたそうな雰囲気は消さない。

その様子を見て、別に話してもデメリットは無いな――――といった答えに至ったので、適当に細かい所を省略して話し始める。


「第一の目的は強くなりたかったからかな。過程はどうでも良かった、ただ単に力が欲しかった」


俺の言葉に少し意外そうな表情をするキャスター。

何か言いたそうだが、それでも口を挟まない。

多分早く続きを聞きたいのだろう。


「第二に―――――これは出来たらだが、俺の体を健康体に戻したかった。こう見えても欠陥だらけの体なんでね」


そこまで言って言葉を切ると、大きく息を吐いて続ける。


「でも、最近は違うんだ。力よりも、安定した体よりも・・・・・・俺は『今』が欲しい。ある目的の為に力が欲しかったんだけどさ・・・・それよりも、ただの何でもない日常が欲しいんだ」


そう、確かに今は戦争中だが、セイバーが居る、アーチャーが居る、ライダーが居る。

こんなに楽しいのは産まれて初めてかもしれない。

復讐は、忘れた訳じゃない。

だけど、今の俺は復讐よりも『今』が大事なんだ。


「突けば一瞬で砕ける程儚く脆い、それでも宝石みたいにキラキラしてる『今』が欲しいんだ」


自分でも何を言ってる居るのか良くわからない。

ただ、その想いは間違いなく事実で――――――今の衛宮士郎は間違い無く、あの火の海から一歩踏み出していた。


「―――――私と同じね」


俺の話を最後まで静かに聞いていたキャスターは、そう言ってにっこりと美しい笑顔を浮かべた。

至近距離で受けたその笑顔の威力に、顔が真っ赤になるのが自分でもわかる。

顔が熱いッス隊長。










セイバー視点




「――――む」


道場で瞑想する私の背中を、何かおかしな悪寒が走った。

これは戦闘中の直感に似ている。

そう、敵に何か強力な増援が現れた時の様な――――――


「気のせいででしょうか・・・・?」


声に出して呟いてみるが、背中に残った悪寒は消えない。

まさかシロウの身に何か起こったのでは・・・・!?

急に心配になった私は、急いで立ち上がろうとして――――――


「あうっ」


かなり豪快に転んだ。

不覚、たかがこれだけの瞑想で足が痺れるなんて・・・・!!

激しく打った額がズキズキと痛み視界が滲む。


「いたくない・・・いたくない・・・いたくない」


零れそうな涙を必死で堪えながら自分に言い聞かせる。

普段戦闘ではもっと酷い痛みに襲われるが、泣いた事など無いのに・・・・・・。

やはりこういう時だと何故か涙が出てしまう。


「いたくないもん・・・・」


ポロリと一粒零れた涙に反論するように強めに言う。

でもやっぱり痛くて、恥ずかしくて―――――


「やっぱり痛いです、シロウ」


思わずそんな弱音を、今は居ないシロウに向かって呟いてしまった。

そう呟いてしまって、急にシロウに会いたくなってしまったので、涙を拭いながら立ち上がる。

このような失態は恥ずかしい事この上ないが、今はそんな事よりもシロウに会いたい。

自分が妙に弱くなってしまった原因は恐らくシロウなのだ。

ならば責任を取って貰わねば――――――

そんな子供みたいな言い訳を自分に対してすると、未だ痺れた足に苦戦しながらゆっくりとシロウの気配を探した。





















つづくらしい










あとがき

セイバーさん、無意識に甘える対象に士郎をロックオン済み。
そしてセイバー姉さんにライバル出現!?なキャス姉さん。
むぅ・・・・・魅力的なキャラを書くのは難しい・・・・。


関係無い話ですけど、最近厳しい意見が多いのでイチ作者として意見を述べておこうと思います。

オリキャラに関しては自分も上手く使いこなす自信が無いので、前話のように主人公の生活や人生をよりリアルにするために使うことが多いですね。
一人のキャラとして魅力的に書ききる自信が無いなら、こんな感じの餃子のラー油的存在で丁度良いとおもいます。

プロット無しで書くな、の意見に対してはごもっともだと思いますね。
自分は脳内プロットを少しずつ組み換えながらやっていますが、しっかりしたものじゃないので読者から見ればちぐはぐのモノになっていると思います。

文章に関しては――――――自分が下手なのに他人にどう言えと?って感じですね。

でもまぁ、批判で身が引き締まりましたよ。
やる気が殺がれるのも確かですが、なるほどって思う批判の方が多いんですよねぇ・・・・いや、的確だからこそ受けるダメージもある訳ですが。

キャラの名前を被ったオリキャラもの・・・・・ぐはぁ!!ハート・・・ハートが痛いよママン・・・・・。
その辺は・・・・・もう書き始めちゃったんで、嫌な人は終わるまで無視をお願いします。
まぁ極力士郎をスカスカな強キャラにしないように努力しますが、見る人が見ればスカスカなんだろうなぁ・・・・・。
あー・・・・段々自分のイタさが見えてきた・・・・・・

ソレと最後に、物書きは叩かれてナンボっ感じの意見には反対です。
そりゃ叩かれる事も必要ですけど、それだけじゃ人間は成長しませんよ。
叩かれてやる気無くすなら書くなって意見も多いですが・・・・誰だって凹みますよ、それなりに自信もって作品投稿してる訳なんですから。
本職ならまだしも、皆さんは趣味でやっている訳ですから、礼儀知らずでは無い限り一方的に攻撃するのはどうかと思います。
読者の方も、ほんの少しだけで良いから書いている側の事も考えてみてくださると嬉しいです。
まぁ、打たれ弱い自分を弁護してるだけに見えるかもしれませんが・・・・・。

以上、長々と書きましたが、これが俺個人の意見ですね・・・・馬鹿の戯言だと思って聞き流してください。

あと、ここの管理人様、無償でこれだけのサービスの提供は大変でしょうし、自分のページで好き勝手やられるのはストレスも溜まると思いますが、ご容赦の程を。
そして何より、管理頑張って下さい。
密かに生暖かくネットリと応援してます(マテ

7: kazu (2004/04/19 20:31:18)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第四十六話「心の闇」






何故だ?

朝食の後片付けをしながら自問する。

聖杯戦争が始まって未だ死者が出ていない。

少なくとも私の知る限り、だがな。

凛とイリヤは敵対していない、ライダーも引き込んだ。

そしてキャスターとあの侍も引き込むチャンスはある。

誰一人死なずに敵と手を取り合う―――――正に理想的。


「何故、私は小僧と同じ位置にいなかった」


勝手に言葉か溢れ出る。

だが、納得できるものではない。

黒い何かが心を蹂躙する。

何故奴ばかり上手くいく?――――何故だ。

何故私は小僧のように上手くやれなかった?

それは無意味な仮定、if。

私は精一杯やった。

命を投げ出し歪な理想に必死でしがみ付き、己の血で家族を汚しても必死で走った。

その果ての裏切り、終わらぬ絶望。

それなのにアイツは私が欲しかった結果を簡単に手に入れた。

どれだけ殺し、どれだけ救っても終わりの見えぬ呪われた人の世。

ソレを知り、死後もソレを見せられ続ける終わりなき地獄。

ソレすらもあの小僧は乗り越えるのだろうか?

何故私は奴ではない?

何故奴は私ではない?

考えるな、考えてはならない。

今私はやり直せている。

ならばいいではないか――――――――

だから、考えるな。

そう自分に言い聞かせる。

この醜い闇から自身を救い出す為に。
















???視点




「マキリの妖怪が最近妙に活発だな」


フム、とコトミネが頷く。

その表情には僅かな嫌悪と嘲笑いが浮かんでいる。


「偽りの器が本物を越えた。だがアレでは使い物にならん。―――――――――消すか?」


「放置しても構わん。アレはマキリの木偶だ。先ずは蟲を駆除するのが優先だな」


ワインを一口口に含むと、愉快そうに笑う。

この男は余程マキリ蟲が気に食わないと見える。

我とてあの様な醜悪は早々に消したいので、特に反論はせずにワインを飲む。


「それに―――――衛宮の倅とぶつければそれなりに楽しめる」


「フム・・・・・それも又一興か」


相変わらずコトミネの思考は読めぬ。

この空虚なる男の胸には何も入っていないのだろう。

心臓を失い呪いで生きる―――――この男には存外似合っているのかもしれんな。


「しかしどうする?―――――我が駆除しても構わんが、アレの駆除は面倒だ」


「私がやろう。聖典を手配済みだ」


その言葉に些か驚く。

この時代の埋葬機関という組織は封鎖的だ。

その組織の鬼札である聖典を、ただの平代行者でしかないこの男が簡単に手配できるものなのだろうか?

答えはNOだ。

何か強力なコネでもあるのだろう。

食えぬ男だ。


「しかしコトミネよ、あの程度の存在ならばお前の力だけで消せるだろう?」


「アレの生き汚なさを甘く見るな。それに――――――あの聖典は何かと便利だ。魂のぶつかりで合いであるサーヴァントの戦いに於いて、な」


「魂の破壊による転生拒否か。存外に教会も気前が良いものよ、それ程の武装をポンと寄こすか」


すると突然、言峰が口を歪める。

そのままワインを一杯軽く飲み干すと、何故か楽しそうに話を続ける。


「アレの性質は混沌に近い。混沌に至るのを恐れたのだろうよ」


「ネロ・カオスだったか?程遠いと思うがな」


「その通り、奴では混沌に至らんよ。ただの蟲の塊だ。―――――だが口実にはなる」


成る程、教会を騙したか。

この男には恐怖が存在しないのだろう。

平気で敵を作る。


「第七位が辞めたのが幸いした。教会もあの聖典を持て余していたようだからな。――――――この身で扱えたならば第七位に祭り上げようとしているのだろう」


「使い手を選ぶか。それなりの武装の様だな」


興味が沸いたが現物がまだ無いのでは仕方が無い。

これ以上話す事は無いので、ワインを飲み干して立ち上がる。


「では我は戦争を少し進めるとしよう。生き残りが多過ぎる」


「そうか、好きにしろ」


コトミネの言葉に無言で返し、そのままコトミネの部屋から出た。













???視点






まだ


まだ


まだ


まだ


栄養が足りない魔力が足りない時間が足りない怒りが足りない悲しみが足りない呪いが足りない死が足りない痛みが足らない


足りない


シロウ


アイタイ


食べたい犯したい殺したい蹂躙したい引き裂きその臓物を弄び性器を切り取りその悲鳴を子守唄にして共に眠る



人に呪われ世界に呪われ全てに呪われて尚、普通に話してくれた。



産まれたい。



初めてのトモダチ。



逢いたい。



喰いたい。




殺したい。













桜視点



「ふふ・・・・貴方も先輩が欲しいの?」


え――――――?


「私今、何を言ったの?」


わからない。

それでも怖くて。

最近夜になると意識が保てない。

私が消える?

―――――嫌だ。

怖い、怖いよ先輩。

私が消える前に助けて!!


「先輩・・・・っく・・・・衛宮先輩っ・・・・・・!」


何で私ばかりこんな目に遭わなくちゃいけないの?

姉さんは先輩とあんなに楽しそうに―――――

そこまで考えてハッとする。

私は最低だ。

姉さんは悪くないのに、憎いと思ってしまった。

『なら殺しちゃえ』と、一瞬でも思ってしまった。

穢れが心を覆い黒く染めて私を壊す。

壊れちゃう・・・・壊れちゃうよ・・・・

もう・・・いやぁ・・・・・
























続くらしい






あとがき

ゲフ・・・咳がマジ止まんねッス。
風邪とは違う気配・・・・煙草か?

さてさて、今回はほのぼのと一転、ダーク大集合。
マーボーvs蹄少女の早食い対決はありえるのか?
ちなみに言峰が大食い馬鹿なのは仕様です。

8: kazu (2004/04/21 21:27:38)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第四十七話「聖典」




晩飯で膨れた腹を擦りながらごろんと横になる。

あの後キャスターと別れた俺は、特にする事も無く家でダラダラしていた。

キャスターから預かった手紙をアーチャーに渡したりもしたが、それ以外は特に動いてない。

にしても・・・内容が気になる。

仲良くしましょ♪って感じの内容だろうか?

・・・・・まさかなぁ・・・。


「で、遠坂よ。見回りとかどうする?」


「するに決まってるでしょ。私の予測が正しければあの影は人を襲う・・・・・・キャスターとかは後回しね」


遠坂が何時に無く厳しい顔で言う。

その意見にセイバーはコクコクと頷き、ライダーは微妙に表情を曇らせる。


「ああ、キャスターに関しては考えなくてもいい。アレは戦争から降りた」


と、アーチャーがエプロンで手を拭いながら言う。

突然の事に女性三人が顔を顰めるが、アーチャーは特に気にした様子も無く続ける。


「こちらへの協力も吝かでは無い様だな。条件は身の安全の確保。この程度の条件なら安い物だろう」


「な―――――」


「何考えてるのよこの不良サーヴァント!!!」


と、セイバーの声を遮って遠坂が吼える。

キャスター云々よりも自分を無視して勝手に話を進めていたのが気に食わないらしい。

どうでもいいが遠坂よ、怒鳴る時に物を投げるのは癖か?

・・・・・・額が割れる様に痛い訳なんだが。









???視点




「久しぶりですね、教会のガン細胞さん」


「これはこれは、第七位が直々に聖典を届けてくれるとは光栄だ」


この男は教会では悪名高い言峰綺礼――――――ちなみに私は大ッ嫌いです。

同僚曰く、極東のユダだとか。

絶対にマトモな人間ではありませんね。

キレた時の遠野君とは異質のながら似通った雰囲気ですしね。


「人員不足なんですよ。日本には極端に代行者が少ない、かと言って聖典を宅配便で送る訳にもいきませんしね」


「引退後も顎で使われるか、哀れなものだな」


うぐっ・・・・!

恨みますよナルバレック・・・。

この仕事をこなさないと引退は無しだなんて。


「わかっていると思いますが、この聖典は―――――」


「使用には契約と制御刻印が必要なのだろう?―――――問題無い、必要なら手間は惜しまんよ」


「そうですか、それでは失礼します」


それだけ言って返事も聞かずに背を向ける。

ハッキリ言って聖杯戦争とやらも、この男もどうでもいい。

これで完全にあの殺人狂の年増と縁が切れるのですから、良しとしましょう。

セブンには悪いですが、これからはあの男と組んでもらいましょうか。










慎二視点



「ハァ・・・・ハァ・・・ッゲホッ・・・・・・・糞ジジイめ・・・・」


衛宮に全て話そうと決意したのは良かったが、その後が宜しくなかった。

僕の思考は見事にジジイに読まれており、殺されはしなかったがそれなりの拷問を受けた。

桜の受けたモノに比べれば軽い、だが、僕には耐え難いものだ。

そして今、屋敷の地下にある地下牢に閉じ込めてられている。


「すまんのぉ慎二。儂とて孫のお前にこんな事はしたくないんじゃがな」


狸がっ・・・・!!

地下牢に響く声に歯を食い縛る。

殺されなかった理由はわからないが、向こうはまだ殺す気は無い様だ。

本来なら喜ぶべき言なんだが――――――あの狸が相手だとかえって不気味だ。

殺す必要すら無いと断じられたか?


「そこで暫らく頭を冷やすが良い」


声が無くなり、蟲の蠢く音だけが闇を支配する。

居るだけで相当苦しい。

少なくとも蟲が苦手な人間なら発狂してもおかしくないだろう。


「・・・ッハァ・・・・ハァ・・・」


桜は―――――

桜はこんな地獄みたいな闇の中でアレ以上の責め苦に耐えてきた。

どれ程辛かっただろう?どれ程逃げ出したかっただろう?

なのに彼女は誰にも憎しみを向けず、ただひたすら耐えた。

心を凍らせて絶望を殺し、怒りを殺し、涙を飲み下し。

――――――強いな。


「僕じゃ・・・・届かないな」


僕は衛宮にも遠坂にも桜にも爺にも勝てない。

ライダーを操り好き勝手やっていた時の自分はまるで道化。

裸の王様とはよく言ったものだ。

辛い、痛い、苦しい。

何で僕がこんな目に―――――

幾度も拷問の中で考えた逃避。

だけど、逃げない。

ここから一歩進めなきゃ誰にも追いつけない、誰にも並べない。

だから考えろ。

体の痛みは無視して考えるんだ。

今の状況を衛宮達に伝える術を。


「手紙・・・・無理、蟲を使う・・・・僕には魔術回路が無い、却下」


結局僕自身が出るしか無いのか・・・・。

でも・・・・―――――

その時、頬を撫でる風を感じた。

この閉ざされた地下空間で風・・・・・!?


「何処だ!?」


部屋中を必死になって探し回る。

そして、程なくして壁の亀裂から漏れる風を捕まえた。


「はは・・・・やるしかないか」


その石間の隙間に手を差し入れ、力の限り引くと簡単に崩れた。

だが、その先は―――――――


「岩、岩、岩――――嫌になるね全く」


それでも必死で岩を退ける。

風が流れてきている以上外に繋がっている筈なのだ。

指先の皮は捲れ、血が噴出す。

でも痛みは麻痺して感じない。


「負けるかよ・・・岩なんかに・・・・・僕は間桐の長男なんだ!!」


必死に自分に言い聞かせて先の見えない作業に没頭する。

そうさ、岩なんかに負けてたまるかよ!!
























つづく






あとがけ
一話限りのゲスト、カレーさん参上

9: kazu (2004/04/22 22:52:11)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第四十八話「蟲」









「あのエセ神父・・・・・ハメやがったな畜生!!」


悪態を吐きながら左手のイングラムで蟲を攻撃して一旦距離をとる。

その隙に襲い掛かってきた蟲を右手に縛り付けた刀で両断する。

蟲といってもその大きさが半端じゃない。

小さなものでも拳並、大きなものになると中型犬程の大きさだ。

その姿は肉食の昆虫のモノが殆どで、まるでB級のモンスター映画の中に入り込んだような気分だ。

最悪な事に気味が悪い上に数が多く、サーヴァント三人組も俺と遠坂を守るので精一杯だ。


「綺礼の奴・・・・・絶対にブッコロス!」


と、怒声をあげながら遠坂も俺が投影した火炎放射器で応戦する。

遠坂の使う攻撃法が魔術である以上は、近代兵器の方が使い勝手で勝る――――――そう解析した俺が遠坂に渡したのだ。

それに・・・・遠坂の魔術じゃ出費もシャレにならんらしいしな。


先の見えない蟲の数に溜息を吐きながらこうなった原因を思い出す。

コトの始まりは、夕食後に掛かって来た言峰からの電話だった。

「サーヴァントを連れて前回の聖杯戦争終結の土地に来い」とか言う簡潔すぎる内容に、首を傾げながらもノコノコ来てみたらこのザマだ。

しかしおかしい。

言峰は腐っていても代行者だ。―――――――ソレがこんな魔に属する系統の使い魔を使うだろうか?

答えはNOだ。

なら言峰が死徒退治の露払いを俺達にやらせている?

その考えが一番近い気がしたが、考えていても事態は良くならないので思考を破棄して戦いに意識を集中した。








言峰視点





目の前で食い荒らされるヒトガタを気配を消して眺めながら思案する。

罪と罰、か――――

食い荒らされているヒトガタは、新都では名の通った無法者だった。

強姦、強盗、傷害――――――凡そ罪と言えるものは殺人以外全て犯している男だ。

その男が今、蟲に成す術も無く食われている。

因果応報――――――主よ、これが罰というのならば何故私を罰さない?

そんな愚かな思考を一笑で切り捨て第七聖典をケースから取り出す。

そろそろ衛宮の家に電話をしてから一時間程経過した頃だ。

それ程急かしてはいないのでそろそろ来る頃合だろう。

――――――予想通りにマキリの妖怪はこの場所で食事をしていた。

逃走経路の遮断兼露払いの手配も済んだ。

衛宮の倅ならばこの惨状を目の当たりにすれば、マキリを叩きに掛かるだろう。

それはマキリがサーヴァント3体を敵に回す事と同意義。

逃げ場は無い。


「始めるか」


背中に背負った第七聖典の感触を確かめながら一歩踏み出す。

重い―――――まさかこれ程の負荷とはな。

第七聖典の燃費の悪さに多少苦心しながらも歩を進める。


「何用じゃ、教会の狗よ」


マキリとの距離が目算にして10メートル程になった時に、蟲はやっと私に声を掛けた。

威厳に満ちた蟲の声に含まれる僅かな恐怖を読み取り、口元が思わず綻ぶ。

成る程、感だけは鋭い様だ。


「何、ただの害虫駆除だ。気にする事など何も無い」


「―――――ぬかせ」


老人が振り返ると同時に蟲が私を取り囲む。

数にして100と50余り。

恐らく使い魔ではなく、独自に調教した魔虫。

それならばこの数の多さも頷ける。

この老人は召喚するだけ、使い魔は己の体を構成する蟲のみ。

成る程、確かに効率が良い。

マキリの業に素直な賞賛を送ると、第七聖典を背負ったまま黒鍵を取り出して襲い掛かってきた蟲に突き立てる。

ふむ・・・・これだけの数をまともに相手をするのは無謀か。

そう思案し、詠唱を始める。


「如何に幸いな事か 神に逆らうものの計らいに従って歩まず 罪ある者の道にとどまらず 傲慢なものと共に座らず。

 主の教えを愛し その教えを昼も夜も口ずさむ人。

 その人は流れの辺に植えられた木。時が巡り来れば実を結び 葉も萎れる事が無い。その人のすることは全て、繁栄をもたらす。

 神に逆らうものはそうではない。彼は風に吹き飛ばされる籾殻。

 神に逆らうものは裁きに堪えない。

 神に従う人の道を主は知っていてくださる」


黒鍵で応戦しながら聖句を紡ぐ。

場に清らかな空気が流れ、私の周りの蟲共が焼かれたように煙をあげてもがき苦しむ。

その様子に些か満足しながら最後の句を紡いだ。


「神に逆らうものの道は滅びに至る」


ザラリ、と蟲が崩れ落ちた。

この程度の雑魚ならば聖句の詠唱だけでも即死だ。


「マキリも衰退したな。人の身であれば私では及ばなかっただろうに」


「おのれぇ・・・・・調子に乗るでないわ!」


ザッ、と力強く老人が腕を振るうと、草原を埋め尽くすほどの蟲が現れる。

だが――――――この術には術者保護の作用も在る為、マキリが再び呼び出した蟲も私に近づく事が出来ない。


「桜さえおれば・・・・・!」


無駄と悟ったのか、老人が逃げようと背を向け駆け出す。

その背に高速で近づき第七聖典を構えて、制御刻印に魔力を走らせる。


「否定しよう。その魂を、心を、命を」


ギシギシと軋む体が心地良い。

余程蟲を貫くのが嫌なのか聖典が反発してくるが、力で捻じ伏せてトリガーを引く。


「――――ガッ!?」


生々しい音を立てて巨大な杭が老人の背を貫いた。

ドスリ、そんな生易しい音ではない。

背中から巨大な杭に貫かれた老人が苦悶の声をあげて暴れる。

その苦悶は私を満たし、自然と口元の笑みが深まる。

口元から漏れる歓喜の笑いを噛み殺しながら、そのまま苦しむ老人を逃げられぬ様に持ち上げる。


「ギィィィィィ!ヒィィィィィィィ!」


「――――――冒涜しよう。その人生を」


そのまま悲鳴を上げる無様な蟲に、数回トリガーを引いて杭を撃ち込む。

ドガン、と強力な反動が体を貫通し、マキリの体を砕き細かい部品に分割する。

それで終わり。

マキリの妖怪は灰となり風に飛ばされ消えて逝った。


「どうか主よ、彼の者の魂をお救いください―――――――Amen」


十字を切り老人に手向けを送ると、そのまま蟲を放置して草原を後にした。

蟲の後始末は入り口付近で戦っている衛宮の倅が始末してくれるだろう。


















つづく






あとがけ


言峰の一人称は難しいッス。
頭の中が難解だし。

10: kazu (2004/04/23 22:27:59)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第四十九話「無限の剣製」






「つ・・・・疲れた・・・・」


ぜーぜーと荒い息を吐きながら仰向けに倒れこむ。

蟲の集団は街に逃げ出す前に一匹残らず始末した。

―――――主に俺が。

セイバー、アーチャー、ライダー、遠坂は攻撃に連射性が無い。

遠坂は金を惜しまなければ連射は出来るが、それでも弾数が足りない。

そこで俺が思いつく限りの兵器を投影しまくって戦った。

手榴弾、ガトリングガンは当たり前、果ては連装式のミサイルまで投影した。

お陰で辺り一面焼け野原――――――まぁ、元々何も無かった場所だが。

遠坂に事前に防音の結界頼んでおいて良かったなぁ・・・。


「フン、情けない男だ」


「うるせー役立たず。こっちは殆ど一人で戦ったんだぞ」


腕を組んで涼しい顔をしているアーチャーの挑発に軽く返す。

本当なら石でも投げつけてやりたい所だが、無駄な体力は使わないコトにした。


「あー・・・・・んとに疲れ――――――」


「シロウ!!」


突然の事だった。

誰かが寝転がって俺の足を掴み、強引に投げ飛ばされた。

直後、轟音。

取り乱す心を必死で押さえて、俺の寝ていた場所を睨む。

するとそこには――――――


「ライダー!!」


右腕を失ったライダーと、見覚えのある斧剣を振り下ろしたままの体勢の黒い巨人が居た。

その巨人はギロリとライダーを睨むと、そのまま地面に刺さった斧剣を抜く。

―――――ヤバイ!


「ライダー、霊体に戻れ!!」


その声にハッとした様に反応すると、ライダーが即座に姿を消す。

その直後にライダーが居た地点に轟音と共に突き立てられる即死の一撃。

そしてそのまま巨人の動きが止まる。

ライダーの無事にホッと一息といきたい所だがそうもいかない。

巨人は確かに動きを止めているが、殺気自体が微塵も減ってない。


「なぁ遠坂、アレってバーサーカーに見えるんだが?」


「奇遇ね、私もよ」


おかしい。

バーサーカーは影に殺された筈だ。

例え生きていたとしても、マスターであるイリヤが指示をしない限りは勝手に襲ってくるなんて事はないだろう。

そしてイリヤはこんな指示を出したりしないだろう。


「汚染・・・・いや、略奪か・・・・マキリの魔術も侮れないわね」


「マキリ・・・?」


遠坂が軽く爪を噛みながら呟く。

聞き取れてはいたが、内容がよくわからないので聞き返してみたが――――

「何でもない」と、気の無い返事を返されるだけで答えは得られなかった。


「来ます!!」


と、何かを感じたらしいセイバーが突然叫び剣を構える。

瞬間、濃密な気配が一体を包み足元が闇に包まれる。

野郎―――――全員喰うつもりかよ!?


「チッ―――――出し惜しみをする相手ではないか」


その時、苛立たしげな声が響いた。

赤い外套の男は闇の中で力強く立ち、とんでもない魔力を宿し始めた。


「―――体は剣で出来ている」


紡がれる言葉。

それは何処か痛々しく、聞いている方が切なくなるような強さが篭められていた。


「血潮は鉄で、心は硝子。

 幾たびの戦場を越えて不敗。

 ただの一度も敗走はなく、ただの一度も理解されない」


紡がれる言葉に世界が歪み始める。

だが、何故だろう?

―――――こんなにも、悲しいのは。


「彼の者は常に独り、剣の丘で勝利に酔う。

 故に、生涯に意味はなく。

 その体は、きっと剣で出来ていた」


その直後、地面に炎が走り世界を穿つ。

広がる赤い大地。

荒涼とした不毛の、正に剣の墓場。

その大地にポツンと一人佇む男は、その眼を閉じ静かに語り始めた。


「凛、これが私の宝具だ。固有結界『アンリミテッド・ブレード・ワークス』――――――この世界は全ての剣を創り出す」


「・・・・リアリティ・マーブルの保有者が身内に二人も居たなんてね・・・・・全く、嫌になっちゃうわ」


と、何処か呆れた様子で遠坂が溜息を吐く。

だが、寄せるのは絶対の信頼――――――宿すのは安心感。

この男が本気を出したのなら心配は無い、そう言外に語る遠坂の背中が眩しく見えた。

事実、影の侵食は俺達の居る固有結界の内側まで届いていない。

そして、アーチャーは静かに目を開き、バーサーカーを睨みながら腕を振り上げ―――――


「君には悪いが消えて貰おう。次に大物が待っているのでな」


不適にそう言い放つと腕を振り下ろした。

その直後、地面から数多の剣が浮き上がり彗星の如くバーサーカーに殺到した。


「■■■■■■―――――!!」


その剣の雨にバーサーカーは怯んだ様子も無く斧剣を振り下ろす。

正にその姿は狂戦士。

解析しただけでも眩暈のするような名剣や宝剣を、ただの石の塊と圧倒的な怪力で叩いて砕く。

それでも剣の数が多過ぎる。

打ち漏らした剣がバーサーカーの体に突き刺さり、血を撒き散らす。

だが、刺さったのは数本――――――打ち出された剣の数に比べて余りに少ない。

それもその筈、バーサーカーの体に届いた剣の大半はその鋼の肉体によって弾かれたいたのだ。


「チッ――――宝具ですら有効なのは一部だけか。アインツベルンはとんでもない化物を呼び出した様だな」


そう言って悔しそうに呟き、次の攻撃を加えようと構えるアーチャー。

そうはさせぬと巨人が怒涛の勢いで迫るが、その突進はセイバーに阻まれる。


「貴方の敵はアーチャー一人ではない!」


そう叫びバーサーカーと凄まじい打ち合いを繰り広げるセイバー。

正に超越した者達の戦い。

俺は何時か、己の力のみであの場所に立てるのだろうか?

心に産まれた僅かな羨望と嫉妬、そして―――――――あの侍の姿。

そんな心を無理やり押し込めて、俺はただ戦いに魅入った。























つづく

11: kazu (2004/04/26 20:59:25)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第五十話「エミヤ」






戦いが始まってどれ程経っただろうか?

永遠のようにも、一瞬のようにも感じられる。

剣戟の音がビリビリと鼓膜を震わせ、肌を刺す殺気が寒気となって背筋を襲う。

セイバーとアーチャーが有利な一方的な戦い――――――だがその猛攻にも決して怯まぬ狂戦士。

体は流した血で赤く染まり、所々に剣を生やして尚衰えぬ力強さ。

その姿は主を守り、立ったままその生涯を終えた弁慶を思わせる。


「くっ・・・・・化物め・・・」


肩で息をしながらセイバーが吐き捨てる。

魔力が残り少ないとはいえ、セイバーとまともに打ち合い、尚且つアーチャーの攻撃にも耐えているバーサーカーは余程異常なのだろう。

セイバーの顔色が少し青いことからもそれが理解できる。

だが、それでも絶対的有利は揺るがない。

揺るがない筈なのだが―――――――――


「この悪寒は何だ?」


俺は殺気とは質が違う、何か不気味さの様なモノを感じていた。

何かがおかしい。

だが、その答えもすぐに氷解した。


「アーチャー!影は何処だ!?」


その言葉に反応したアーチャーがバッと周りを見回し冷汗を流す。

足元のあの影がある以上、近くに奴はいるのだ。

――――何故姿を現さない?

臆したか?

いや、それは無いな。以前サーヴァントが五人揃っていた時にも構わず現れた。

なら何がある?

だが、俺とアーチャーが影を探している間にも戦いは続いている。


「っ!!」


アーチャーの攻撃が一瞬途切れた瞬間を好機と見たのか、バーサーカーがセイバーを力任せに蹴り飛ばした。

その威力は並の人間なら一瞬でミンチにされる程のものだ。

幾ら英霊と言っても女の子であるセイバーは、いとも簡単に吹き飛び気を失った。

元々魔力が残り少なく、充分に力を奮えないセイバーにはバーサーカーの相手を一人でするには無理があったのだ。


「クソッ・・・・セイバー!!」


セイバーに慌てて駆け寄り抱き起こし、アーチャーと遠坂に目配らせをする。

引き際だ、と。

それに関してはアーチャーも遠坂も同意なのか即座に頷く。

元々急ぐ戦いではない、無理なら無理で逃げればいいのだ。











アーチャー視点




小僧の視線に私と凛は無言で頷く。

前衛であるセイバーが倒れた今、私一人でマスターを守りながら戦うのは無理がある。

それに影の事もある。

奴を倒す手段すら無い現状で、今奴が現れれば危険だ。

未だ影の犠牲者がいない現状では、それ程急ぐ必要も無いだろう。

そう思案し、バーサーカーにありったけの剣を叩きつけて背を向けようとした瞬間―――――


「後ろだ凛っ!」


一足先に逃走に入っていたマスターの後ろにあの影が居た。

シュルリと帯状の触手を持ち上げ、そのまま凛に襲い掛かる。

固有結界の使用で魔力は空、夫婦剣を作る余裕すらない。

だが――――――死なせない!!

全力でスローモーションの世界を駆ける。

マスターを、自らの師であり憧れであったあの少女を救う為に。


届け届け届け届け届け届け届け届け!!


そこでふと思い出した。

私は、この気持ちを知っている。

何かを守りたいという衝動を、心の暴発を知っている。

その思案の中で、少女の小さな背中を無意識に突き飛ばした。

驚きに染まる凛の顔、駆け寄ろうとしている小僧の顔、未だ目を覚まさぬセイバーの顔。

それら全てを刻む。

その直後、トスリと軽い音と共に体に無数の異物が入り込んだ。


「アーチャー・・・・?」


呆然とする凛の方を辛うじて振り向く。

血が喉元にせり上がり、視界は霞み存在が薄れる。


「グッ・・・・はぁ・・・・・・すまんな、凛」


と、やっと一言吐きだした所で触手から開放され、地面の影に飲まれ始める。

ああ、これで終わりか――――――

だが、不思議と満ち足りている。

そうだ、間に合ったんだ。

俺、遠坂を守れたんだ。

今度は・・・・・守れた・・・・




良かっ――――















凛視点





「グッ・・・・はぁ・・・・・・すまんな、凛」


アイツの最後の言葉は謝罪だった。

なのに―――――


「なんで、笑ってるのよ」


膝ががくがくと震え、漏れそうな悲鳴を噛み殺す。

遠坂凛は魔術師、この程度で取り乱してはいけない。

何度も夢を見た。

必死に助けようとして頑張って、最後には悪魔と罵られ死んだ男の夢を。

なんで折れないの?

折れればどれだけ楽になるだろうか。

なんで恨まないの?

人を憎めばどれだけ楽だろうか。

なのに、その男は―――――アーチャーは―――――――

最後まで助けられた人の笑顔に笑い返していた。


『絶望して、磨耗して、人を見限ろうと必死になって理想を否定した。

 それでも私は、理想を捨てきることが出来なかった。

 ――――――――――その果てに、何があるか知っているのに。

 私は、また理想を追ってもいいのだろうか?

 この世界でやり直してもいいのだろうか?』


アイツの夢は途中からこう締めくくられるようになった。

この言葉はアーチャーの葛藤の具現。


―――――何よ、アンタ最初からやり直す必要なんて無いじゃない。


だってアンタ、笑ってる。

私に手が届いた時、本当にほっとしてたじゃない。

アンタはまだ、あの時の少年のまま―――――――何も変わってないじゃない。

これから楽しい事とかいっぱあるのに―――――

なんで

なんで死んじゃうかなぁ・・・・・。


「馬鹿アーチャー」


その一言で魔術師に変わる。

余計な感傷は捨てなければならない。

それが魔術師、それが遠坂凛。

それでこそ、人でなしの探求者なのだから。
































つづく

12: kazu (2004/04/27 21:49:33)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第五十一話「援軍」




「あ?」


一瞬だった。

影が現れて遠坂が突き飛ばされて――――――

アーチャーが影に飲み込まれた後、やっと出た一声がこれだ。

また何も出来ずにいた。

ただ立っていただけ。

何が今が欲しい、だ。

守れてないじゃないか。

こんなに一瞬で壊されちゃったじゃないか。

――――――なんだよ、それ。


「・・・・・はは・・・」


自然と口から乾いた笑いが漏れる。

大口叩いてこの程度かよ。

無力、何も出来ない、何も守れない、手に入れれば――――――全て零れ落ちていく。

もうたくさんだ。

何度もそう思ったのに、何度繰り返すんだよ。


「殺す・・・・!!」


即座に残った魔力を全て投影に注ぎ込もうとするが―――――


「落ち着けクソガキ」


懐かしい叱咤の声と共に魔力が霧散した。







バゼット視点



アレに言われて来てみれば・・・・・

なんともまぁ酷い状態だな。

バーサーカー健在、セイバーが戦闘不能、士郎なんぞ爆発寸前。

まぁ、遠坂のお嬢さんは流石といった所か。

自分を殺す術を心得ているな。

とりあえず馬鹿を止めるか。


「落ち着けクソガキ」


そう言って魔術を強制的にキャンセルする。

クソガキと呼ぶのは、士郎を叱る時の癖みたいなものだ。


「バゼットか――――――退けよ、アレを殺す」


「黙れ。貴様が向かっていっても無駄死にだ。感情的になるなと何度言えば解る?」


そう言って士郎の目を睨み返す。

士郎は私の視線に少し引くと、バツの悪そうに視線を逸らした。

フン、まだまだだな。


「キャスター、後任せたよ」


「そうね・・・・・アレの正体も見えてきた事だし、処理しちゃいましょうか」


そう言ってキャスターが居るであろう上空に声をかける。

上空に突然キャスターが現れる。

その下にはランサーとアサシンもいる。


「殺りなさい」


そう言ってアサシンとランサーに指示を出す。

その声に応える様に二人は武器を出すと、各々の必殺の構えをとった。


「ふむ、些か気が引けるのだがな」


「俺もだ。だが――――――敵である以上手加減はしねぇ」


三人の登場に士郎と遠坂が目を剥くが、三人は構っている余裕が無いのか無視して影を睨みつけている。

一瞬の対峙。

そして――――――


「ランサー、合わせろ」


「応っ!!」


殺気が弾けた。

アサシンが真っ先に駆け出し影に向かって刀を振り上げる。

そうはさせぬとバーサーカーがアサシンに迫るが、キャスターが大魔術を行使してその足を止める。

大して効いていない様だが、小刻みに空間固定でバーサーカーの動きを抑圧しているので足を止めるには充分だ。

それを横目に見ながらアサシンが刀軽く撓らせる。

その後ろには豹の如きスピードで迫るランサーが槍を構えていた。


「秘剣――――――」


「ゲイ――――――」


アサシンの刀が奇妙な軌跡を描きその数を増やす。

その後ろではキリキリとランサーの体が絞られ、その姿は張り詰めた弓を思わせる。

極限まで引かれた弦は既に臨界――――――爆発は近い。


「燕返し」


先に弾けたのはアサシンだった。

数を増やし隙間を無くした必殺の刃は、猛烈な速さを伴ってゆらゆらと揺れる影の触手を切り裂きながら影に迫る。

だが、その刃も折り重ねられた触手に数を減らしてゆく。


「―――――ボルク!!」


直後、赤い閃光が奔った。

その閃光はランサーの手を離れ猛烈な勢いで影に迫る。

刀と刀の間を擦り抜け、触手を蹂躙しながら飛ぶ様は正に赤い雷撃。

ならば影如きが防げる道理が無い。

赤い雷撃の助力を得た刀の群れは、そのまま数を減らした触手を切り裂き影を切り裂く。

だが、数を減らされた刃では致命傷を与える事は叶わない。

そのまま刃の群れは影を浅く切り裂き去っていく。

だが、影の生存を死翔の棘が許さない。

そのままの勢いで、触手を紙の様に切り裂きあっけなく影を貫き彼方に消えていった。


「チッ、逃がしたか」


影の消え去った地点を見つめながらランサーが不快そうに顔を顰める。

アサシンも些か不満そうだ。

何時の間にやらバーサーカーも消えている。


さてさて――――――厄介な事になりそうだ。


私はそう考え、明るいとは言えない未来予想に軽く顔を顰めて虚空を睨んだ。










桜視点




痛い痛い痛い痛い痛い痛い!

何であの子がやられたのに私が痛いの!?

何で、私がこんな目に・・・・・

そう思いながら歩く。


そこで、ふと道路のミラーに映った自分の姿が目に映った。


ぽっかりとお腹に穴が空いて、そこから新しい肉が盛り上がり再生している。

その様子は昔見た単細胞生物の増殖に似ていてグロテスク。


私は―――――――


そこで初めて、これは夢ではないんだという事に気がついた。


「っ・・・うっ・・・・」


急速に込み上げる嘔吐感に、衝動のままに胃液を吐いた。

吐く物がない嘔吐はとても辛い。

晩御飯はちゃんと食べたはずなのに――――――

そこでふと思い至った。

当然だ、さっきまでお腹がなかったのだから何か入っている筈がない。

その考えに鳥肌が立った。


怖い、怖いよ・・・・。


そんな思いが頭を埋め尽くし、私は吐きながら泣いた。


――――――――――助けて。


「助けて・・・・衛宮・・・先輩・・・・」


腹部に穴が開き、胃液で汚れたパジャマのままふらふらと先輩を求めて歩く。



せめて、私を■してください・・・・・。



先輩・・・・。













つづく

13: kazu (2004/04/29 01:48:24)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第五十二話「援軍供





「さて、士郎と遠坂のお嬢は何か聞きたい事があるようだな」


影が消えて暫らくの沈黙の後、バゼットは俺達を軽く睨んで話を切り出した。

ランサーと小次郎は面倒な事が嫌いなのか、影が消えたら即座に姿を消している。


「そうね・・・・・先ずは何故ランサーが居るのか聞きたいわ。それと貴方がキャスターと一緒に居る訳も」


嘘は許さない、そう言外に語りながらバゼットを睨む遠坂。

アーチャーを失って辛い筈なのだが――――――


「ランサーの元マスターだからな。キャスターと一緒に居るのはそっちの関係だ」


いつの間にか咥えていた煙草に火をつけながら軽く言い放つ。

それでも納得できないのか遠坂がバゼットを睨みつける。

―――――無論俺も。


「納得できないか・・・・・仕方がない、面倒だが話そう」


そう言って紫煙をふーっと吐き出しながら、気だるげにキャスターの方を見ながら口を開く。


「ランサーの元マスターである私を、ランサーに対する盾としてキャスターは欲した」


と、そこで突然ランサーが現れて誇らしげに語りはじめる。


「ああ。俺だって言峰に令呪を使われなきゃ、主替えに賛同しなかったしな。今でも俺の中ではバゼットがマスターだ」


「綺礼が!?」


遠坂が目を見開くが俺はそれ程驚かない。

あの狸・・・・・臭いと思ってたがそこまでやるか・・・・・。


「つまり利害の一致だ。キャスターは身を守る駒が欲しい、私は言峰に一泡吹かせたい――――――それだけだ」


「勘のいいボウヤは知っているようだけど、私の宝具は魔術破りよ―――――サーヴァントの契約すら破れる、ね。アサシンとの再戦目当てでノコノコとやってきたランサーをこちらに引き込む事は可能なのよ」


そう言ってキャスターが締めくくると、遠坂は脱力したように溜息を吐く。

アレは完全に呆れてるな・・・・気持ちは解るけど。

少し説明不足な感は否めないが、筋は通ってるので一応納得しておこう。

そーいや、ライダーの気配が無いな・・・・・・なんでだ?









慎二視点





「っぅ・・・」


岩をどかし、土を掘り――――――

既に原形を留めていない指で狂人の如く単純作業に打ち込み続けてどれくらい経っただろうか?

元々大して厚くなかった壁は、既に地下と外との仕切りとしては役不足なほど薄くなっていた。

地下の腐った空気から新鮮な空気に近づいているのが実感できる。

もう無理だ、そう思い何度手を止めても心が許さない。

何より――――――自分の罪を思い知らされるこの場所には居たくなかった。

爪が残っている指なんて僅か―――――爪の無い指は指先がくにゃくにゃと曲がりグロテスクだがもう慣れた。


「はっ・・・・まだまだこんなものじゃないさ」


初めの頃よりかなり上手くなった穴掘りの技術に苦笑しながら大きな岩を牢に投げ入れる。

もうかなり終わりは近い。

あの岩を退ければ――――――

願うような気持ちで最後の難関である筈の岩をずらす。

ゴトン、と大きな音を立てて牢に転がり落ちた岩を見送り、岩あった場所に視線を戻すと―――――


「は・・・ハハハハハハハ!!勝ったぞ!僕は爺に勝ったんだ!!」


丸い月と、スモッグで汚れた星空が僕を迎えてくれた。

思わず歓喜の叫びを上げながら必死に穴から這い出て場所を確認する。

どうやらここは庭にある石倉の成れの果てのようだ。

そこに思い至り、興奮で火照った頭が急速に冷えた。

―――――爺に気付かれる前に逃げないと。

そう答えを出してからの行動は早かった。

脇目も振らず走った。

門を乱暴に押し開け、街灯に照らされた夜道を狂ったように走る。

目指すのは衛宮の家だ。

とりあえず衛宮の家に行けば何とかなる。

悔しいがアイツは強い。

サーヴァントだって居る。

ならば―――――


「っ・・・ハァ・・・・ハァ・・・」


脳が酸素を求め、視界がぼやける。

何かを考える余裕なんてもう無い。

こんな事になるならしっかりと鍛えておけばよかったな。

酸素の足りない頭で終わりの見えない道を走る。

何時もの交差点に差し掛かった時に、新都からの帰りであろうガラの悪い連中が固まって何かを見ているのが目に入った。

普段なら相手にしない。

しないのだが―――――――

その集団の中心に、ボロボロの桜を見つけた以上は見過ごせない!


「どうするよ?確か一年の間桐だっけか。かなりの上玉じゃん」


「犯るってか?でもノブさんにばれたら―――――」


予想していた事態だった。

奴らの様子や、桜の服の状態からしてまだ桜は無事。

パジャマが派手に破れているが、暴行された形跡は無い。

飛び出すか?いや、でも―――――

煮え切らない自分の心にイラつきながら、暫らく様子を見るために曲がり角の影で耳を澄ませる。


「こんな所で寝てる方が悪いんじゃん。誘ってるんだよ」


「ま、そうだな。エロい体してるし、可愛い顔してヤリマンなんだろ。犯っちゃうか」


そこまで聞いて、我慢が出来なくなった。

聞き覚えがある汚い薄汚れた言葉。

まるで奴らは僕自身じゃないか。

この体の状態じゃ助けに入っても無駄?

―――――知るもんか。

ここで逃げ出せば僕は自分にすら負けた事になる。

そんなの、許せる訳無いじゃないか。

ギリッ、と歯を食い縛り拳を作る。

力が入っていないフニャフニャの拳―――――なら足がある、歯がある、頭がある。

形振りなんて構うものか、絶対に負けない。

尽きかけた体力を搾り出して腹に力を込めて息を吸う。

そして―――――


「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


叫び声をあげながら、桜の服に手をかけようとしている男三人に襲い掛かった。

















つづく


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