DARK HERO 四十四話以降はここ(M:沢山 傾:色々)


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1: kazu (2004/04/18 17:06:10)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第四十五話「儚い宝石」





冬なのにポカポカと暖かい日差しを全身に受けて深呼吸をすると、少し顔を引き締めて俺の方に向き直るキャスター。


「必要ない、だと?」


頭の中から様々思考が吹っ飛ばされて、中身が空になる。

それはおかしい。

サーヴァントは聖杯を手に入れる為に召喚に応じるのだ。

なのに、必要ない―――――

その絶対的矛盾を俺の思考で理解する事は出来ない。


「何が目的だ?」


人は理解できない事象には恐怖と疑いを向ける。

今の俺がソレだ。

騙されるな、裏がある、そんな根拠の無い疑いが俺の表情を自然と強張らせる。


「裏なんて無いわよ、真実そう思っているだけ。大体――――――何か裏があるにしても貴方に対して、そんな回りくどい事をする必要はないわ」


その言葉にハッとする。

確かにそうだ、力関係はハッキリしているのだからここで変に策略を練る必要はないのだ。

セイバーが目的なら俺を木偶にすればいいし、人質にするなら抵抗できないように何かすればいい。

どの道、力づくでどうにかなるのだ。

ならば本当に聖杯を必要としてないのか―――――――心ではそう理解できても、頭が未だ疑いをかけようとしている。


「信じられないって顔ね?―――――まぁ仕方がないんでしょうけどね・・・・・・」


そう言って少し気落ちしたように俯くキャスター。

おかしい、絶対的に。

腹の探り合いにしたってほのぼのとし過ぎてる。

これじゃあただの世話話じゃないか。


「貴方は何故この戦争に参加したの?」


暫らく無言だったキャスターが唐突に俺に問いかける。

その目には何の悪意も見えない。


「ソレを言う義務は?」


「無いわね。私もただの好奇心で聞いただけよ、嫌なら結構」


それでも聞きたそうな雰囲気は消さない。

その様子を見て、別に話してもデメリットは無いな――――といった答えに至ったので、適当に細かい所を省略して話し始める。


「第一の目的は強くなりたかったからかな。過程はどうでも良かった、ただ単に力が欲しかった」


俺の言葉に少し意外そうな表情をするキャスター。

何か言いたそうだが、それでも口を挟まない。

多分早く続きを聞きたいのだろう。


「第二に―――――これは出来たらだが、俺の体を健康体に戻したかった。こう見えても欠陥だらけの体なんでね」


そこまで言って言葉を切ると、大きく息を吐いて続ける。


「でも、最近は違うんだ。力よりも、安定した体よりも・・・・・・俺は『今』が欲しい。ある目的の為に力が欲しかったんだけどさ・・・・それよりも、ただの何でもない日常が欲しいんだ」


そう、確かに今は戦争中だが、セイバーが居る、アーチャーが居る、ライダーが居る。

こんなに楽しいのは産まれて初めてかもしれない。

復讐は、忘れた訳じゃない。

だけど、今の俺は復讐よりも『今』が大事なんだ。


「突けば一瞬で砕ける程儚く脆い、それでも宝石みたいにキラキラしてる『今』が欲しいんだ」


自分でも何を言ってる居るのか良くわからない。

ただ、その想いは間違いなく事実で――――――今の衛宮士郎は間違い無く、あの火の海から一歩踏み出していた。


「―――――私と同じね」


俺の話を最後まで静かに聞いていたキャスターは、そう言ってにっこりと美しい笑顔を浮かべた。

至近距離で受けたその笑顔の威力に、顔が真っ赤になるのが自分でもわかる。

顔が熱いッス隊長。










セイバー視点




「――――む」


道場で瞑想する私の背中を、何かおかしな悪寒が走った。

これは戦闘中の直感に似ている。

そう、敵に何か強力な増援が現れた時の様な――――――


「気のせいででしょうか・・・・?」


声に出して呟いてみるが、背中に残った悪寒は消えない。

まさかシロウの身に何か起こったのでは・・・・!?

急に心配になった私は、急いで立ち上がろうとして――――――


「あうっ」


かなり豪快に転んだ。

不覚、たかがこれだけの瞑想で足が痺れるなんて・・・・!!

激しく打った額がズキズキと痛み視界が滲む。


「いたくない・・・いたくない・・・いたくない」


零れそうな涙を必死で堪えながら自分に言い聞かせる。

普段戦闘ではもっと酷い痛みに襲われるが、泣いた事など無いのに・・・・・・。

やはりこういう時だと何故か涙が出てしまう。


「いたくないもん・・・・」


ポロリと一粒零れた涙に反論するように強めに言う。

でもやっぱり痛くて、恥ずかしくて―――――


「やっぱり痛いです、シロウ」


思わずそんな弱音を、今は居ないシロウに向かって呟いてしまった。

そう呟いてしまって、急にシロウに会いたくなってしまったので、涙を拭いながら立ち上がる。

このような失態は恥ずかしい事この上ないが、今はそんな事よりもシロウに会いたい。

自分が妙に弱くなってしまった原因は恐らくシロウなのだ。

ならば責任を取って貰わねば――――――

そんな子供みたいな言い訳を自分に対してすると、未だ痺れた足に苦戦しながらゆっくりとシロウの気配を探した。





















つづくらしい










あとがき

セイバーさん、無意識に甘える対象に士郎をロックオン済み。
そしてセイバー姉さんにライバル出現!?なキャス姉さん。
むぅ・・・・・魅力的なキャラを書くのは難しい・・・・。


関係無い話ですけど、最近厳しい意見が多いのでイチ作者として意見を述べておこうと思います。

オリキャラに関しては自分も上手く使いこなす自信が無いので、前話のように主人公の生活や人生をよりリアルにするために使うことが多いですね。
一人のキャラとして魅力的に書ききる自信が無いなら、こんな感じの餃子のラー油的存在で丁度良いとおもいます。

プロット無しで書くな、の意見に対してはごもっともだと思いますね。
自分は脳内プロットを少しずつ組み換えながらやっていますが、しっかりしたものじゃないので読者から見ればちぐはぐのモノになっていると思います。

文章に関しては――――――自分が下手なのに他人にどう言えと?って感じですね。

でもまぁ、批判で身が引き締まりましたよ。
やる気が殺がれるのも確かですが、なるほどって思う批判の方が多いんですよねぇ・・・・いや、的確だからこそ受けるダメージもある訳ですが。

キャラの名前を被ったオリキャラもの・・・・・ぐはぁ!!ハート・・・ハートが痛いよママン・・・・・。
その辺は・・・・・もう書き始めちゃったんで、嫌な人は終わるまで無視をお願いします。
まぁ極力士郎をスカスカな強キャラにしないように努力しますが、見る人が見ればスカスカなんだろうなぁ・・・・・。
あー・・・・段々自分のイタさが見えてきた・・・・・・

ソレと最後に、物書きは叩かれてナンボっ感じの意見には反対です。
そりゃ叩かれる事も必要ですけど、それだけじゃ人間は成長しませんよ。
叩かれてやる気無くすなら書くなって意見も多いですが・・・・誰だって凹みますよ、それなりに自信もって作品投稿してる訳なんですから。
本職ならまだしも、皆さんは趣味でやっている訳ですから、礼儀知らずでは無い限り一方的に攻撃するのはどうかと思います。
読者の方も、ほんの少しだけで良いから書いている側の事も考えてみてくださると嬉しいです。
まぁ、打たれ弱い自分を弁護してるだけに見えるかもしれませんが・・・・・。

以上、長々と書きましたが、これが俺個人の意見ですね・・・・馬鹿の戯言だと思って聞き流してください。

あと、ここの管理人様、無償でこれだけのサービスの提供は大変でしょうし、自分のページで好き勝手やられるのはストレスも溜まると思いますが、ご容赦の程を。
そして何より、管理頑張って下さい。
密かに生暖かくネットリと応援してます(マテ


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