DARK HERO 第四十一話「ダンデライオン」(M:無し 傾:シリアス )


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1: kazu (2004/04/15 02:51:02)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第四十一話「ダンデライオン」




「ここは・・・・」


気付けば火の海の中に居た。

天空には巨大な月が浮かんでいる。


「夢の中のようなものさ」


背後から聞き覚えのあるが響く。

それに驚きバッと振り返ると、そこには―――――


「はじめましてかな、衛宮士郎?ぼくは遠野士郎、君であり決定的に君とは違う士郎だ」


金色の瞳に赤い髪――――――

反転者か。

確かに見た目は俺だが・・・・・。


「ゴルァ糞餓鬼。おふざけも大概にしないとお尻ぺんぺんだぞ」


「ふざけてなんかいないさ。君がセイバーと契りを交わしたコトで因子が目覚めた。その所為でぼくが浮上した」


呆れたように溜息を吐くと、俺を睨む。

因子だと?


「この身は夢幻、だが間違いなく衛宮士郎の一部だ。故に指摘しよう、君の矛盾を、怖れを」


そう厳かに告げる告げる姿は言峰に通じるものがあった。


「君の理想は、いや――――――信念は何も犠牲にしないコト。なのにこの光景はなんだろうね?」


直後、世界が変わる。

あの十年前の夜だ。

そして・・・・これは――――――


「そうだよ。君が必死に忘れようとした、封印した事実だ」


所々であがる悲鳴に命乞い。

ソレを無視して歩く赤茶の髪の子供。

時に足を掴む手を払い除け、耳を塞ぎながら歩く。


「もしかしたら救えたかもしれない人が何人居ただろうね?それを君は両親を助ける為に無視した――――」


――――言うな。

止めろ。

俺は、俺は・・・・・!!


「何かの為に何かを捨てる。お前はキリツグと何が違う?」


「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!

俺はあの男とは違うんだ!

全てを振り払うように、右手に投影した銃を遠野士郎に向ける。

だが――――――


「見苦しい。都合の悪い事からは目を逸らし否定する―――――――まるで餓鬼」


ザッ!!


突然周囲の炎の中から多数の槍や刀が飛び出し、俺の体を貫き縫い付ける。


「っがぁぁぁぁ!?」


痛みに声を張り上げ叫ぶ。

その叫びも無視して遠野は微笑む。


「死ねないし気絶も出来ないだろ?ここはそういう所だ。安心しなよ」


「あっ・・・ぐ・・・」


ブシュリと、右目から後頭部に貫通した槍を引き抜く。

すると直ぐに左目に視界が戻る。


「君がセイバーに言ったこともそうさ。確かに彼女は救われたかもしれない。だけど――――――」


そこで表情を消し、見下したように俺を見つめる。


「君のした事は彼女の想いも、信念も、心も全てを無視した最悪の行為だ!」


その言葉が容赦なく俺を貫く。


「素直にぼくに体を譲りなよ、心配しなくても君のしてきた事も清算してやるからさ」


そう言って優しく微笑む遠野。

だが、その言葉で目が覚めた。

都合の悪い事は全て無視、そして自分のやりたいようにしかしない。

たしかに餓鬼だよな。

全てを遠野に任せてここで終わるのが正しいのかもしれない。

そう思い苦笑する。

だけど、思い出させてくれた。

感謝するぜ遠野、もう少しで俺は潰れる所だった。


「何を笑う?自分に嫌気でも差したかい?」


「ハッ!ンなもん何時もだ。だがなぁ・・・・彼女の意思を尊重して、信念を貫かせて、それであんな小さな女の子から全て奪ってどうするんだよ!」


そして、と強い意志を篭めて続ける。


「それこそ彼女を裏切り嘲ったあのクズ共と何が違う!!偽善だ独善だ叫んで何になるんだ!彼女に何も与えず良い人間になる位なら、俺は最低の人間でも良い!あの一生懸命な子に、失くした物を渡してあげられるなら―――――それだけの価値はある!」


それは間違いない事実。

確かに俺の吐いた言葉は最悪に自分勝手なものだった。

でも、それでも彼女は進んでくれた。

あの一言で前に一歩進んでくれたんだ!


「俺は確かに多くの人を見殺しにした!だが、もう決して目を逸らさない!」


もう、逃げるのは止めだ。

これまで捨ててきたモノの為にも。

ま、今更だがな。


「今の俺が間違っているなら正せば良い!!それに――――――」


セイバーは前に一歩進んでくれた。

イリヤは心の闇を吐き出そうと頑張っている。

遠坂は俺が居るだけで楽しそうに笑っていてくれる。


「あの笑顔は、みんなの笑顔だけは絶対に間違いなんかじゃないんだ!」


思いを紡ぐ言葉と共に、十年前の光景を火の海が塗りつぶした。


「っ・・・!固有結界の上書きだと・・・・!?」


そこで初めて遠野が焦ったように呟く。

その表情に一片の余裕もなく、醜く歪む表情は見るに耐えないものだった。


思い浮かべるのは太陽。

陽光の無垢さ、真っ直ぐと伸びる凛々しさ、そして雨風に耐える強さ。

イリヤ、セイバー、遠坂、アーチャー、ライダー、がーねぇ、一成、美綴、雷画爺さん――――――

心が緩やかな熱で満たされ溢れる。


「悪いが俺はまだ舞台から降りる訳にはいかないんだ」


そう言って体中に刺さった武器を抜くと、即座に傷がなくなる。

この世界では死ねないし死なない。

それはただの武器だからだ。

ヤツは俺の心の欠片。

ならば、同じモノなら消せない道理はない。


俺の本質は贋作の作り手だ。

だが、贋作の作り手が自分自身のオリジナルを作れない訳ではない。

ならば作れ。

今の想いを、心を乗せて作れ。


地面から火の玉が飛び出し、突き出した右手を包み込む。

そして、炎に包まれた右手が輝きを放ち形を変えてゆく。

それを静かに遠野に向ける。

炎が消えた右手には、右手と一体化した異形の・・・・それでも不気味なものではなく、セイバーの宝具ような優雅さを持った銃が存在していた。


「咲き誇る(ダンデ)――――――」


想いを込めてゆっくりと引き金に指をかける。

暖かい――――

この銃の温もりは心を穏やかにする。


「気高き一輪(ライオン)!!」


引き金を引くと、銃口から光が迸り春の匂いが胸に満ちる。

優しい光が、力強く全てを貫いた。






















つづく












あとがき

んー・・・・・今回は自分的に赤点ギリギリの出来・・・

原作の士郎は相手を思うが故に、セイバーを手放してましたからねぇ・・・・
フェイトエンドが好きな人には地雷かもしれません。
作者的にフェイトエンドも好きなのですが、強引にでもセイバーを止める士郎が見たかったデス。


追記:ダンデライオンの形状は、FF-兇離罐Ε覆僚討隼たような感じです。サイコガン系では無いですよー


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