聖杯戦争 もう一杯 まる22以降ここに纏めます


メッセージ一覧

1: 微妙 (2004/04/14 20:39:02)[sevenstar_2 at hotmail.com]

まったり紅茶を飲みながらアーチャーの事を考えていると

「ただいまー」

と、バーサーカーが気楽に帰って来た
なんか小躍りしている

「遠野君かっこよかったー!」

変な事を口走りながら
力を持て余すと言わんばかりにシャシャシャ!と何も無い空間に拳を放っている

「セイバー、バーサーカーどうしたの?」

「なんだか遠野君って人を見つけたんですが・・」

はぁ、とため息を吐きながら

「遠くから見て、部屋番号確認して満足して帰ってきました」

・・・・

「遠野くうううううううん!!」

体をねじって叫んでいる
かなり怖い
なんでそれだけであんなに舞い上がってるのかしら

「衛宮さん!台所借りていい!?」

「ん、別にいいけど?」

「ありがと!」

台所に向かうと、なにやら料理を始める
ああ、きっとお弁当作ってるのね

あの子の夢で見た
お弁当を作っては渡せず、部屋で寂しく自分で食べる
それの繰り返しが何年続いていた事か

(あのお弁当もきっと自分で食べる事になるんでしょうね・・)

なんだか見ていて辛くなってきたので、部屋で休む事にする






夢を見た
どこかの学校の裏庭、お昼休みでも人の少ない場所

隣ではお弁当を美味しそうに食べる男
女はそれを見て幸せを噛み締める

「凄く美味しいよ、弓塚さん」

「あ、ありがとう・・」

すっかり空っぽになったお弁当箱を笑顔で渡してくる男
ふと、真剣な顔にって

「これからも俺のためにお弁当作ってくれるか弓塚さん?いや、さつき・・」

「遠野君・・・」

ガシっと抱き合う二人

「さつき!もう君を放さない!」

「志貴君!」












「有り得ないわああああああああああああ!!」

恐ろしい夢を見てベッドから飛び起きる
時刻は午前2時

「サーヴァントとの繋がりが強くなると妄想まで流れてくるのね・・」

私まであっちの世界の住人にはなりたくない
少し気分を変えたいので水でも飲みに行こう

私は居間に向かう





居間にはバーサーカーが居た
ぼんやりとテーブルを見つめている

テーブルにはお弁当をもりもり食べているセイバー

・・・・・

セイバー、あんたソレがなんなのかくらい察してあげなさいよ

「ありがとうございますさっちん、とても美味しかった
 出来る事なら、これからも私にお弁当を作ってくれませんか?」

すっかり空っぽになったお弁当箱をバーサーカーに渡しながら言うセイバー
・・・・切ない

バーサーカーはぼんやりとしながら

「うん、前向きに検討するね・・・」

虚ろな声で言った

「楽しみにしています」

お腹一杯で心も幸せ一杯なのか嬉しそうに居間を出るセイバー

「バーサーカー・・・」

「あ、マスター
 お弁当ならもう全部セイバーさんに食べてもらっちゃったから、マスターの分は無いよ」

遠野君の分もね、と虚ろに言うバーサーカー

「・・・・頑張りなさい・・・」

「うん・・・頑張る」

私は水を飲んで部屋で寝た
今度はまともな夢を期待しながら














聖杯戦争  もう一杯   まる22














深夜、飛行機の中でギルガメッシュは考える
ライオンといったらアフリカだ

「何故我はドイツ行きの便に乗っているのだろう」

そう彼は飛行機を間違えた

「・・・・
 まぁ、ようは可愛い生き物を捕らえて来れば良いのだろう」

よかろう、ライオンの子供よりも騎士王に相応しい究極の愛玩動物を手に入れて見せよう
具体的には猫とか、犬とか

「ドイツにパンダとは生息しているのか・・?」

可愛い顔して獰猛な性質はまさしく騎士王に相応しいかもしん

「パンダか・・」

持ち帰るのには苦労しそうだが






「兄さん、何かいい事でもあったんですか?」

「ん?まぁな」

家に帰って来てから私のサーヴァントの様子がおかしい

「なんつーかさ
 英霊になって探してた奴がいるんだけど、駄目だろうと思ってたんだ」

「会えたんですか?」

「そ、生きてた上に
 立派に成長しててな、嬉しいんだ」

ってもしかして

「兄さん・・・子持ちですか?」

「あれ?知らなかったか?」

知りませんでしたよ・・
ああ、ますます兄さんが変な人に見えてきた
子持ちで暗殺者で英霊ですか?

――――釘バットで殴ればまた違うのに変わるのかしら?







長期間、宿を借りている代わりに
アーチャーは家事全般を引き受ける事になった

「アーチャー」

「どうした式」

「何でそんなに草むしりが様になってんだ?」

「様になってなどいない」

「凄く似合ってるぞ」

「似合ってなどいない」

「お前燈子の事務所で働けば重宝されると思うぞ」

「君はサーヴァントが何たるかを勘違いしてないか?」

立ち上がってお説教を始める
軍手を付けて長靴を履いてタオルを巻いている姿で説教されても

「困るな」

つい口に出る

「聞いているのか式?」

「まぁ、そんな事どうでもいいや
 暇だし寝てるよ」

「む、寝すぎは体に悪いぞ」

「・・・・解ったよ、散歩でもしてくる」

玄関へ向かう私に

「昼ご飯までには帰って来るんだぞー」

そう言う事言うからサーヴァントが勘違いされるんだ






「それじゃ、始めるか!」

「そうね、いい区切りになるだろうし」

「だね、ネロ・カオスやっつけちゃったんだし後はもうだらだらいけるもんね」

「まぁ、色々やる事は残っていますが、少し位息抜きも必要ですしね」

「いやーわりぃな!俺まで呼んでもらってさ!」

衛宮さんがくす玉を割る
中から「祝ネロ・カオス打倒!」と垂れ幕が落ちた


「「「「「おつかれさまー!」」」」」


5人で声を揃える
セイバーさんに頼んでランサーさんも呼んでもらった

(本当は遠野君も呼んで欲しかったんだけど)

まぁ、そんな事を言ってこの祝勝会に水を差すのもね


「なんだかんだでネロ倒せちゃったな遠坂」

「そうねー、100%無理だと思ってたんだけどねー
 後はアーチャー強奪してお終いかしらね」

「シロウ、今度私にも料理教えてくれますか?
 私もシロウに料理を振舞ってあげたい」

「セイバーが作っても全部自分で食べちゃうんじゃないかしら?」

「リン・・・
 いくら私でも料理とシロウを秤にかけたらシロウを取ります」

「って、俺は料理と秤にかけられるレベルなのか?」



―――――ク・・カ・・



「そういや嬢ちゃん名前何て言うんだ?」

「あれ?言ってなかったっけ?」

「いってねぇよ」

「弓塚さつきって言うんだ」

「なるほど、それでさっちんな訳か」

「ランサーさんは何て呼んだらいいの?
 クーさん?フーリンさん?」

「ランサーにしといてくれ、一応サーヴァントってのは真名を隠すもんなんだから」



――――ク・・カカ・カ・・カ!



「そういえばさっちんもこの料理を作ったんですよね?」

「うん、マスターと衛宮さんと一緒に作ったんだ」

「むぅ、秘密でさっちんに習ってシロウをビックリさせるというのもいいかもしれません」

「セイバーさんって料理はどれ位出来るの?」

「フライパンに油を引くことは出来ます」

「なるほど、教え甲斐がありそうだね」



――――クカカカカカカカカ!!!



「お爺ちゃん煩い
 スイカの皮あげるから外に出てて」

なんだか仲間に入れて欲しげに笑っていたジジイの口にスイカの皮をねじり込んで放り出す

「ったくあの爺さんなんで生きてんだろうな」

「確かに興味深いけど、調べるのは明らかに心の贅肉よね」

「というか、あんな爺さん調べたくないぞ、俺は」



宴も終わりに近づき、後片付けを皆で始める
その中でこっそりランサーさんを廊下に連れ出す

「あ、あのさランサーさん
 遠野君、その、元気かな・・?」

「ん?まぁ、元気ちゃ元気だけどな」

「そ、そっか・・良かった」

「気になるんならその内遊びにでも来ればいいじゃねーか」

気楽な調子で言うランサーさん
遊びに行きたいのは山々なんだけど

「そ、それはそうなんだけどね・・」

実際に遠野君を見てからだと、どういう顔で会ったら良いのか分からない
ああ、勢いに任せて飛び出しちゃえば良かったのに
下手に心の準備なんてしようとするから意識しちゃうんだ

「もしかして坊主に惚れてんのか?」

「な、何で解るの!?」

ズバリ言われてしまった

「え、いや勘だったんだけどな」

「その・・そう言うわけだからね」

「うん?」

私はひっそり隠し持っていたお弁当をランサーさんに渡す
この祝勝会で使う食材を使えたおかげで素晴らしい出来栄えのソレ
主成分・愛情

「わ、渡してくれない?遠野君に」

「・・・・はぁ
 やっぱこういう役どころかよ」

なんだか嫌そうにするランサーさん

「だ、駄目かな・・」

「いや、嬢ちゃんが悪いんじゃ無くてな
 俺の女運の無さが憎たらしいだけ、大丈夫だってちゃんと渡してやるよ」

「あ、ありがとう・・」

「けど何て言うんだ?
 英霊になったお前のファンからお弁当を貰ってきたって言うのか?」

「う、それはその・・
 まぁ、ランサーさんの判断に任せるよ!」

適当にお茶を濁して一気に逃げ
後片付けに参加する

「まぁ、上手くやっとく」

ランサーさん、頼んだ!






紅茶を飲みながらぼんやりと一日を過ごす

(なんだかいつも紅茶を飲んでいる気がするわ)

ライダーはなにやら楽しげにバイク雑誌を読んでいる
目の表情は分からないがきっと楽しいんだろう、ちょっと口元が綻んでいる

(まぁ、こうやって穏やかに時間を過ごすのも悪くないかもね)

ぼんやりした頭でなんとなしに思う
と、その時

「秋葉様!秋葉様!琥珀はただいま戻りました!」

穏やかな時間は破壊された

「そう・・」

琥珀感じ取りなさい、
私達は大きな戦いに乗り遅れたのよ

「秋葉様?」

「まぁ、帰ってきてくれて何よりだわ」

「いえいえ、これからもわたくし琥珀は秋葉様のために粉骨砕身で働く所存ですよ〜」

粉骨砕身で毒を盛られたらたまらないけどね

「秋葉様!早速ですがこの計画を見てください!」

「作戦でも考えていたの?」

「はい!1万ととんで101機の量産型メカ翡翠ちゃんを投入するという物量作戦です」

「・・・・」

「経費は80億ほど掛かりますが実行しますか?」

「他のプランは?」

「それではこの「黒服G化、殲滅作戦」などどうですか?」

「名前で既にアウトだわ」

「それじゃ、「似非固有結界・食人植物庭園」とかいかがでしょう?」

「パス」

「それじゃケミカルウェポンを撒き散らす
 「冬木市全滅!?謎の大量殺人鬼アキーハ現る!!」で行きますか?」


・・・・・


指をパチっと鳴らして翡翠を呼ぶ

「お呼びでしょうか秋葉様」

「琥珀を洗脳なさい、徹底的に」

「かしこまりました秋葉様」

慇懃と頭を下げる翡翠

「マスター、そんなことより見てくださいこのバイク
 一家に一台あるべきではないでしょうか?」

雑誌を広げて私にバイクを見せてくるライダー

「翡翠、ライダーも洗脳しておきなさい」

「了解しました秋葉様」












「ランサー、このお弁当誰からなんだよ?」

お弁当を渡したはいいが
何かに怯えるように、届け主を執拗に聞く坊主

「だからお前のファンだって
 元気そうで良かったって言ってたぞ」

俺の言葉にゴクリと喉を鳴らす坊主
何をそんなに怯えているのか

ランサーには分からないが
志貴の脳裏にはニッコリ微笑む秋葉、翡翠、そして割烹着の悪魔たる琥珀の笑顔が浮かんでいた
シエル先輩は確実にカレーを大鍋で送りつけてくるので除外

「まさかと思うが・・・
 これを届けた人は割烹着を着てなかっただろうな・・・?」

「本人がお前の前に出てきた時、そのお弁当が誰からなのか教えてやるよ」

パカリ、とお弁当のふたを開けて
出来栄えを確認する坊主
だんだんと顔色が悪くなっていく

「こ、こんな手の込んだお弁当を作るのなんて琥珀さんに決まってるじゃないか!
 ランサー!本当の事を言ってくれ!俺の命にかかわるんだ!」

「はぁ?なんで弁当で命に関わるんだよ」

「俺がお弁当に食べられたり、幻覚作用があったり、おっきくなったり、挙句その場で爆裂するかもしれないんだぞ!?」

「・・・・・」

坊主はどうやら少し頭がやられてしまっているみたいだ

「いいから食ってやれよ
 一途な嬢ちゃんだったし、弁当も美味そうじゃねーか」

悶々とお弁当を前にして悩み続ける坊主
俺のマスターはなにやら面白くなさ気にそれを見ていた

「なんだかなぁ、お前も結構苦労してんだな」

女運はあるかもしれないが強烈に女難の相がある坊主を見ながら呟く





―――――



まる22がダブっていたので
22と23に削除依頼だしときました
以降はここに一通り纏めます

2: 微妙 (2004/04/14 20:40:32)[sevenstar_2 at hotmail.com]

(23)

私はここ一番で、大ポカをする癖がある

いざって時に、普段やらないようなどうしようもないミスをする

それをしてしまった後は

もうそんなミスはしない様にと気を付けるが

大抵、そういうミスは忘れた頃にやってくる



まぁ、ぶっちゃけ今回も大ポカしたらしい訳で




居間に書置きが有った




自分の居場所を探しに旅に出ます
探さないで下さい
探したら逃げます
後、アーチャーさんと違って役立たずでごめんなさい
マスターなんかは電車に轢かれて下さい


      弓塚 さつき


朝起きたら、バーサーカーが家出していた

「リン・・・」

「遠坂・・・」

「・・・・心当たりは無い・・わよ」

「・・・・」
「・・・・」

二人の視線が痛い
何よ!本当に心当たりらしい心当たりなんて無いんだから!









聖杯戦争  もう一杯  まる23














      〜さっちん家出の一日前〜












「さっちん!甘過ぎます!大河の玉子焼きです!」

ゴシャ!

「びぶし!」

セイバーさんの殺人的指導が私に炸裂する
具体的には竹刀が頭にめり込んだ

「セ、セイバーさん・・・せめて防具つけていい・・?」

「ちょいさ!」

ヅバン!

「あ、頭が・・!頭が・・・!!」

「戦場で防具つけていい?などとアホな事を聞いている暇があると思ってるんですか!?
 大体、玉子焼きは砂糖入れればいいってもんじゃありません!」

ベシ!

「今日のさっちんは気が抜けています
 大河のかに玉丼の如し、です。何か重要な事を見落としている感じです」

セイバーさんの例えって食べ物ばっかりだね

「なんて言うか、もしかしたら遠野君が私のお弁当食べてくれたかもーって思うとなんだか気が抜けちゃうんだよね」

にへらと、擬音を出しているんだろう今の私

「喝っ!」

バシィ!

「ああ!セイバーさんまたぶった!」

「安心して下さいさっちん
 確実に不幸な事故が起こって遠野君には届いていないはずです」

今、酷い事言われた

「それ以前に、遠野君にお弁当作ったのに何故私には無いのか説明を要求します」

「セイバーさんはさっきの祝勝会で一週間分は食い溜めしてたからいいかなーって」

「・・・・・さっちんに欠けている物が分かりました」

「え?何か欠けてるの?私」







「不幸です」






めちゃくちゃ嫌な事言われた

















「やっぱり稽古の後は輸血パックだね!」

バーサーカーは戸棚から輸血パックを取り出し、ストローで一気に飲み干した

セイバーとバーサーカーの稽古が終わって
居間でお茶会、今日は二人にアルバイトがないからゆっくり出来る

それだというのに私は苛立っていた

(アーチャー・・)

どこの馬の骨が私のアーチャーを使ってくれてるのかしら?

(尻尾を出さないってのが気に入らないわね
 どこかに陣取っていれば簡単なんだけど)

はぁ、とため息を一つついて紅茶に口を付ける
目の前ではソワソワと落ち着きの無いバーサーカー
セイバーと士郎はいつも通り

「そういえばリン、今後の方針ですけど・・」

セイバーがふと、切り出す

「アーチャーのマスターを探し出すわ」

「それなんだけどねマスター
 ・・・私しばらく戦かうのお休みしていい?」

簡潔に言った私にバーサーカーが意見した

「どういう事?」

「えーと、遠野君が何処にいるか分かったから・・
 ちょっと色々やりたい事がある・・・かな?」

「却下よ、却下
 貴方は私のサーヴァントなんだからちゃんと言うこと聞きなさい
 サーヴァントの気配が分かるのは貴方だけなんだから」

かな・・?ってなによ
そんなの聖杯戦争が終わってからでもいいでしょうに
アーチャーを取り戻す機会は限られているのに

「でも折角会えるんだから・・」

なおも食い下がるバーサーカー

「駄目なものは駄目
 少しはあなたもサーヴァントとして戦う意思を持ってくれない?」

「だけど私がこうなったのって遠野君に会うためだし・・」

「駄目って言ってるでしょ
 大体、遠野君ってのにはいつでも会えるんだから
 暫く私の言う事を聞きなさい」 

「・・・・」

バーサーカーは釈然としない表情で黙り込んでる

「文句あるっていうの?」

「いいえ、何も文句なんてありませんマスター」

急に敬語になってプイっとそっぽを向くバーサーカー
なによ、間違った事いってないじゃない

「なら良いわ、夜になったら見回りに行くから
 それまで部屋で休んでる」

それだけ言って、私は居間を後にした










「リンはちょっと気が立っているみたいですね」

「仕方ないって言えば仕方ないからな」

「さっちん、気にする事はありません
 アーチャーが戻ったらさっちんの自由にさせてくれますよ」

セイバーさんが何気なくフォローを入れてくる

「気にしてなんか無いよ
 ただちょっと頭に来ただけだから」

そうだ、ちょっと頭に来ただけだ
テレビでも見て気分を変えよう

テレビを点けても面白くもないニュースしかやってない
点けた後すぐに消した

「大体マスターはなんでアーチャーさんにこだわるんだろ
 確かにかっこいいけど、なんか性格皮肉っぽかったじゃない」

あの人はどうにも性格が皮肉っぽくて好きになれない
前のサーヴァントって言ってたけど、何か有ったのかな

「さっちんはアーチャーとは初対面でしたから知らないでしょうけど
 私達の命の恩人みたいなものです、ああ見えていい所も有るんですよ?」

「・・・まぁ、嫌味な奴だったけど
 俺も感謝してるよ、一応な」

セイバーさんと衛宮さんもアーチャーさんの事、嫌いじゃないみたいだ

「なんだかなぁ」

ため息を付いて、考える
私としては同じアーチャーでも、ギルガメッシュさんの方が素直で好きかも
堂々と好きな人に好きっていえるガッツは凄いし

アーチャーさんは好きな人に嫌味言うタイプと見た
まぁ、誰彼構わず嫌味言う気もするけどね

「そういえばさっちん、
 私に料理を教えてくれるという約束はどうなったんでしょう」

「あ、そうだね
 暇だし今から練習する?」

「お願いします」

そう言って袖をまくって台所へ向かうセイバーさん
私もそれに習って台所へ行く

「じゃ、俺は夕飯の買出しにでも行くかな」








あーイライラするわ
何も上手くいかない状況って頭にくるものね

アーチャーのマスターの正体は掴めないし
バーサーカーはなんだか色ボケしているし

「確かに私の我儘だけど」

布団の上で寝返りを打つ

「バーサーカーには聖杯戦争中って緊張感が足りないわ」

それがいい所なんだろうけど
私としては今すぐにでもアーチャーのマスターを捕まえに行きたいのに

「よりによって「遠野君に会いたい」ですって?」

アホなんじゃないかしら?
まぁそれだけの為に英霊になったって言う根性は立派だけど
バーサーカーの我儘としか言えない事に付き合う必要はないはず
私の言い分の方が少しは正しいもの







「バーサーカー、見回りに行くわよ」

夕食を食べ終わってマスターの最初の言葉
なんか悔しいので無言で付いて行く

玄関を出て、道に出た時

「私、霊体化して付いてく」

と、言って霊体化させてもらう私
私はなんだか自分で霊体化とか出来ないので
マスターに魔力の供給を断ってもらって霊体化する
実体化するのは自分の持ってる魔力を使ってできるんだけど

「・・・・」

マスターも何も言わない
無言で町を徘徊する



住宅街、商店街、新都、教会、なんかのお寺



アーチャーさんの気配は無し

何も話さず黙々と歩くのはちょっと気まずいが
私から話しかけるのは悔しいので黙ってる

どうでもいい事を考えながらマスターの後ろについて行くと
公園に出た


「バーサーカー、アーチャーの気配は無いの?」











私はこの巡回に出てから初めて言葉を発した
すると

「ないよ」

と、バーサーカーがそっけなく答える声が聞こえた
相変わらず姿は視えないまま

「・・・・バーサーカー、いい加減に機嫌直してくれる?」

「私機嫌悪くなんて無いもん」

「だったらせめて実体化して、話し辛いわ」

私の言葉を聞いてバーサーカーは実態を持つ

「遠野君って人に会いたいのは分かるけど
 今だけはアーチャーを探すのを手伝って
 他のマスターに倒されちゃったらアーチャーは消えちゃうんだから」

できるだけ穏やかな声でバーサーカーを諭す

「別にそれはいいけど・・」

まだ納得してない、と言った表情だ
何がそんなに不満なのか解らない

「・・・・」

ぼうっとして私を見ているバーサーカー
やっぱり機嫌が悪いのは私のせいなのかしら

「私、他に何か気に障る事を言った?」

「気に障る事じゃないんだけど・・・」

バーサーカーは教えてはくれない

「・・・・・」

ただ黙ってぼんやり私を見ているだけだ

「ふぅ、とりあえず一旦帰りましょう」

なんだか調子が出ないし
バーサーカーが戦えるか疑問だったので家に帰る事にした







家について、貸してもらった部屋で休む
布団をかぶりながら考える

私が戦うの避けたかった理由

(アーチャーさんがマスターのサーヴァントになったら私はどうするんだろう)

ふと、思った
マスターは私よりきっとアーチャーさんの方が思い入れがあるんだろう
実際遠野君に会いたいって言うのもあったけど、

(マスターはアーチャーさん
 衛宮さんとセイバーさんは当たり前に)

皆自分の本当に気の許せる人がいる
けど私には事情を話せて尚且つ本当に安心できるような友人も居ない
私だって好きな人はいるけどセイバーさん達みたいに相思相愛な訳じゃない
呼び出された私にとって唯一本当に信頼できるのはマスターだ

「けどマスターは、私よりアーチャーさんの方がいいんだ」

マスターにとって私は今回の聖杯戦争で、たまたま引き当てたサーヴァントなだけ
それが何となく悔しかった
アーチャーさんを取り戻したら私はどうすればいいのか




それで気が付いたら


手元の広告数枚の裏に、殴り書きしていて
マスターの醤油入れにケチャップを入れた
後、マスターの歯磨き粉をマヨネーズに入れ替えておく
シャンプーの中にはちゃんと醤油を入れておいた


自分の荷物、と言っても何も無いが
棚の輸血パックを全部リュックに詰め込んで夜の内に家から出る

3: 微妙 (2004/04/14 20:42:49)[sevenstar_2 at hotmail.com]

(24)
「ねぇマスター、そろそろ真面目に仕事しましょうよ」

もりもりカレーを食べる私のマスター

「セブン、経費で落とせる分だけ落とすのは基本中の基本ですよ?」

マスターの胃袋に次々に収められていくカレー
教会からの経費はほぼ私的な事に使い尽くしている

「流石に真っ二つのビルをほったらかしじゃまずいですよぅ
 ホテルだって粉砕したままじゃないですか」

「知ったこっちゃありません
 私は今を生きるのです」

マスター、色気もへったくれもないです・・
暫く給料差し押さえでニンジン断ちになるかもしれないから、
教会に帰ったら私も食い溜めしておこう

(私も何かした方がいいかもしれませんねー)

「セブン、何か不穏な事を考えているみたいですが止めてください
 私は私の考えがあってこの戦いの監督役を勤めているのです」

「考えってカレーがですか?」

「その通りです」

「・・・」

駄目だこの人、頭悪い
今の内にニンジンを貯蔵して、
給料が止まった時に備えるのもいいかもしれません
などと考えていると

「やぁ、シエル
 相変わらずカレーばっかり食べているんだね」

と、誰かが来た













聖杯戦争 もう一杯  まる24













ああ、今日はいい天気だわ
午前6時、私はライダーを見送る

「マスター、ありがとう御座います」

深々と頭を下げる私のサーヴァント、ライダー

「いいのよライダー、たまには気晴らしして来なさい」

「はい、お言葉に甘えさせてもらいます」

バイクにまたがりエンジンを掛けた

ドッドッドッドッドッドッドッ

と、近所迷惑な音にウットリするライダー
なんだか私って、部下に恵まれないわね

「では、行って来ます!」

楽しそうにバイクを走らせていくライダー

「まぁ、面倒が無くていいわ」

翡翠と琥珀が石になってた時はビックリしたけど
バイク一つでご機嫌になるならそっちのほうが楽だわ







バイクと言う乗り物は、やはり中々に素敵であった
機械の乗り物というのも中々新鮮でいい

スピードを上げ、山道を駆け抜ける
ヘルメットはちゃんと付けている

(マスターは中々理解があっていい)

マスターの従者達はなにやら不穏な雰囲気を醸し出しているが
私のマスターはそれをねじ伏せる力技の持ち主だ

(賢く、力の有るマスター
 欠点を言えば魔力の供給がちょっと少ない事だけですが)

そこはマスターが不思議な事に常備していた血の入った袋で解決された
輸血パックと言うらしい、
時代は私達のような吸血種にも優しくなっているのか

「優しい人が多い事は良い事です」

バイクを走らせながら呟く
楽し気にバイクを走らせていると、道路に影が飛び出した

(危ないですね)

と、思いながらもあっさり避けるが


バシャァ!

「・・・・」

何故かこの晴れた日に、避けた方向に水溜りがあり
人影に泥水をもろに被せてしまった

「・・すいません」

バイクを止め、人影に謝る

「あ、貴方ライダーさん」

・・・・いつかのバーサーカーさんだ

「・・・・」

泥水まみれのバーサーカー
日傘を差しているのに森の中から飛び出さないで下さい
日傘差して森に入るのには何の意味が?

「あ、いやそんなに警戒しなくていいよ
 私今サーヴァント休業中なんだ」

買い物してきたんだ、とビニール袋をこちらに示す

「戦う気はないと?」

「服を強奪するくらいはしたいけどね」

ニッコリ笑って言う
・・・・申し訳ありませんでした






「・・・・・バーサーカー、やってくれるじゃない・・」

居間の書置きを発見した後
朝ご飯を食べる時に始まった数々のトラップ達

秋刀魚の塩焼きに赤々とかかるケチャップ
歯を磨きながら感じるマヨネーズの味
髪の毛を洗っていたときに匂った醤油の香り

・・・・
シャンプーが黒い時点で怪しいとは思ったのよ!

「リン、さっちんに一体何をしたのですか?」

「そうだぞ、温厚なさっちんがここまでするなんてよほど酷い事したんじゃないか?」

味方が居ない事が尚不機嫌に拍車をかける

「ただ、醤油入れのケチャップだけはいただけませんね・・
見つけ次第、ケチャップまみれにしてやりましょう」

そんな味方、いらない

「バーサーカーが何処に居るか私には分かるんだから
 ふんじばって連れ帰ってくる」

頭に来た
かなり頭に来た、どうしようもないくらい頭に来た
バーサーカーのアホは絶対捕まえてやる
その後モヒカンにしてやる








パチパチと、火の燃える音がする
川で洗った服を乾かすためにその辺の枯れ木を集めて焚き火をしていた
何でかこの森は殆どの木が弱っている感じだったので
簡単に枯れ木を集める事が出来た

服は乾かしているのでシーツに包まっている

「なるほど、貴方はマスターに捨てられそうなサーヴァントと言うわけですか」

「うん、しかもそれを私に手伝わせようとするんだから」

じゅ〜るるるるるるる

廃屋、私の新しいスイートスイート・マイルームである
そこにライダーさんと二人で体育座りして輸血パックを啜っている

「貴方もその年で死徒になるなんて、
 中々苦労しているんですね
 はじめて見た時はただの女子高生みたいだったのに」

「私としてはただの女子高生に見えたって言うのが、ちょっと嬉しいかな」

あはは、と笑いながら話す
なんだかライダーさんも血を吸う人みたい
仲間が出来たみたいでちょっと嬉しい

「さっちん、これからどうするんですか?」

ちょっと真剣な顔でライダーさんが尋ねてくる

「どうしようかなーって悩んでる所
 供給断たれても輸血パックがあれば暫くは現界していられるし
 実際はまだ魔力の供給切れていないみたいだし」

「遠野君とやらには会いに行かないんですか?」

「うーん、なんだかね
 今行くと遠野君優しくしてくれると思うけど
 家出して匿ってって言うのもねー」

流石に頼りっきりってのもね

「それじゃ今は当てがない?」

「そう言っちゃうとアレなんだけどね」

ふぅとため息を付いてみる
するとライダーさんは突然立ち上がって

「さっちん、少しだけ待っていて下さい」

と言ってバイクを担いで廃屋から出て行った
丁度いいのでライダーさんが戻るまで少し寝る事にしよう
もう寝る時間だし

















「・・・・・」

起きたら私のスイートルーム事、廃屋は火に包まれていた
目の前で灰になっている私の制服

ここで燃え尽きるのは流石に嫌だったのでシーツに包まったまま外に出た
リュックと日傘は忘れないけど

「心が寒い・・・」

「そこの死徒」

「!」

呆然と燃え尽きていくマイホームを見つめていると
後ろから声をかけられた

老人、と言うにはあまりに力強い
最近頭のおかしいお爺ちゃんしか見てなかったので
老人を見るとつい身構えてしまう

(この人死徒だ)

だって日傘差してるし

「!?」

突然老人は着ているマントを脱ぎだした

(ええ!)

激しく嫌な想像に吐き気がした
ますます身構える、というか殺す気満々の私を見て老人は

「これを着るといい」

と、マントを差し出してきた

「え?」

「では、急ぐのでな」

「あ、ありがとう・・ございます」

「なに、あまりに不幸で見ていられなくなったのでな」

はっはっはっと、健康的に高笑いしながらどこかに行った
助けてくれるんだったら私が血を吸われる時に駆けつけてくれれば良かったのに
・・・・
どうでもいいけどこれってまさしく吸血鬼マントじゃない

「まぁ、助かるけど・・・」

どこかのジジイとは大違いなナイス爺だった
ありがとう、お爺ちゃん供△舛腓辰箸っこよかったよ
好みとはかけ離れてるけど









「さっちん、何故下着にマントなどとショッキングな格好を?」

「服が燃えちゃったから」

「・・・服も買ってきましょう」





〜5分後〜





「早!」

「道路にたまたま背丈の似た人がいたので拝借しました」

「・・・・」

被害者は誰なんだろう・・・?
とりあえず着る事にする
これってマスターの学校の制服だ
上にマントを羽織った

「それはそうと、行く当てがないと言うのなら
 一緒にバイクでブラブラしませんか?」

ドスン、とバイクを肩から下ろす

「サイドカーを買ってきました、なんと日傘付きです」

ジャーンとバイクを自慢するライダーさん
まぁ、行く当てがないのは本当だしちょっと行くくらいいいかな?

「じゃ、一緒に行かせて貰って良いかな?」

「遠慮などしなくてもいいです
 では、とりあえず道路まで行きましょうか」

バイクを担いで歩き出すライダーさん
その時

「あなた、バーサーカーでしょ?」

謎の白いちびっ子が

「・・どちら様?」

「私、前の聖杯戦争でバーサーカーのマスターだったの
 なんだか私のバーサーカーとそっくりで話て見たくなって
 ホラ、そっくりでしょ?」

と、写真を手渡してくる
それを手にとって、見てみた


・・・・・


・・・


・・








     ガッデム!!





「どこがそっくりなのよ!」

怒り心頭で顔を上げると、既にその子はいなかった
あははははは、と笑い声が森に木霊しているだけだ

「さっちん、行きましょう」

ライダーさんに促されて私は森を後にする
変な人が多いなぁ、この森












今日も今日とてアーチャーは御飯を作っている
起きたら割烹着を着て、楽し気に台所に立つ姿が目に入る

「お早う式」

「なぁ、何でそんなに楽しそうなんだよ?」

「楽しいわけではないがマスターの命令であるなら仕方あるまい?」

「とりあえずお前の飯は美味いからいいけどさ・・」

「そう言ってもらえれば嬉しいな」

料理を再会するアーチャー
私はちゃぶ台に座って朝ご飯を待つ
燈子は既にタバコを吸いながら新聞を広げて朝ご飯を待っていた

「丁度良かった
 お前の日本刀、届いてるぞ」

秋隆に頼んでおいた品だ
ついでに幹也の様子も見てくれるように頼んでおいた

「・・・前の刀の方がいいな」

これもかなり立派な品だが
へし折られてしまった剣はこれより綺麗だった

「そう言うと思ってな
 お前の機嫌を良くする、面白いものを用意してある」

そう言って手紙を渡してくる

「なんだこれ?」

「その刀と一緒に送られてきたんだ
 いいから読んでみろ、中々笑えるぞ」


くくく、笑いをこぼす燈子
大抵こういう時は面白くも無いものだ
燈子が面白いと言ったもので、面白いと感じたことなど一回もない

カサ



拝啓、式様



幹也様は極度の栄養失調でただいま入院中です
うわ言で「ひぃ!今月も口座にお金が増えてない!?」
などと呟いておりました、
「魔術」という単語を聞くと、面白いほどに痙攣します


追伸 
   少々痙攣させすぎたらしく、今夜が峠だそうです



クシャ


知らずに手紙を握りつぶしていた

「燈子・・・」

「笑えるだろう?
 私も戻ったら軽く痙攣させたいな」

「線をなぞられるのと点を突かれるの、どっちがいい?」

「どっちも嫌だ」

4: 微妙 (2004/04/15 20:46:28)[sevenstar_2 at hotmail.com]

(25)
「ライダーさん、海ー」

「中々旅もいいものでしょう?」

さっちんとライダー、今日だけの二人旅
頬に当たる潮風が気持ち良い
戦うばかりで、昼間の海なんて見るの久しぶりだ

「まぁ、この町からは出てはいけないと言うのが惜しいですけどね」

「だねー、本当なら沖縄とかまで行きたいくらいだけどね」

日差しがキツイだろうけど
夜になっても綺麗だろうし、良いかも知れない

「もし行くんでしたら、さっちんもバイクに乗るといいです」

「悪くないんだけど私免許持ってないからなー」

「安心して下さい、私も持ってません」

「え?」












聖杯戦争 もう一杯  まる25














「・・・・」

「遠坂、ここはさっきも通ったと思うんだが?」

「お腹がすきましたシロウ」

朝、バーサーカーの書置きを見た後に御飯を食べてすぐに捜索に出た
で、森で迷っている時間が数時間

「さっちんの気配って分かるんだろ?
 どっちにいるんだ?」

「・・・・町にいる・・」

「お腹がすきましたシロウ」

ああもう、
なんでこんなことになってるんだか

「シロウ!いい加減に聞いて下さい!」

セイバーは腹ペコだし

「セイバー、持ってきた食べ物は全部セイバーが食べたじゃないか」

「それでもまだお腹がすいているから困っているんです」

堂々と、言い切るセイバー
二人ともあんまり役に立ちそうに無い

「全部食べたんじゃどうしようもないだろ?」

「シロウ、秋刀魚の塩焼きを投影して下さい」

・・・・
駄目だ、いい加減礼呪使おうかしら・・
この二人、何の役にも立たないわ


「――――トレース・オン」

「って!作れんの!?」

秋刀魚の形した刃物ができただけだった
セイバーはソレが分かっているのにかぶり付いて口の中を切った
ああ、セイバーがどんどん馬鹿になって行く











丁度良く海が見える喫茶店があったのでライダーさんと二人で入る事にした
入った瞬間、私達に視線が集まる

「まぁ、ライダーさんかっこいいもんね」

私はきっと制服の上に着ているマントのせいだろう

「さっちん、座りましょう」

「うん、そうだね」

ライダーさんはあんまり人の視線が気にならないらしい
女の私でも目のやり場に困る格好なのに・・

「血で」

「私も同じので」

「・・・・善処する」

ウェイトレスにオーダーを言う
後ろで蒼い髪を纏めた、なんだか悟った目をした女の子だ
身長はちっちゃいけど、大人っぽい・・って言うのかな?

「どうでもいいんですがさっちん」

「うん?」

「店の中ではマントを脱いだ方がいいんじゃないですか?」

「なんだか気に入っちゃって」

日光遮断の上に概念何とかっぽい
便利そうだし、なんか結構似合ってるし(多分)

「けどそれを言うならライダーさんの格好も凄いよ」

「そうですか?」

「うん、何て言うかエロい」

「・・・簡潔ですね」

うん、実にエロい

「そういえばこのマント、なんだか変なの入ってるんだけど」

なんとも言えない微妙な物体が結構な数マントに入っている
T字型の変なのだ

「サイコフレーム?」

形は似ていると思う

「絶対違います
 ちょっと見せてみてくれません?」

「うん、どうぞ」

T字の謎の物体をライダーさんに渡す

「これは剣ですよ」

「ライダーさん、とりあえず目隠し取ったほうがいいよ」

「・・・・けっこうキツイ事言いますねさっちん」

「そう?」

「見えてますから安心してください
 見ててください」

サイコフレームもどきは
私の前でシャキンと音を立てて剣になった

「・・・・」

「ほら、魔力で刀身を編むんです」

「・・・・」

「さっちん?」

「ちょっとトラウマが・・」

スパイシーな代行者が脳裏に浮かぶ










なんでもない話をしているとお昼に差し掛かった

「もうこんな時間ですね」

「あ、今日はアルバイトあるんだった」

思い出した
無断で休むわけにはいかない

「送っていきますか?」

「ううん、ここからなら歩いていっても間に合うから
 お金ここに置いとくね」

「そうですか」

「それじゃ、またどこかで会おうね」

「その内、嫌でも会いますよ」

ライダーさんが苦笑している
そうだった、一応サーヴァント同士なんだっけ

「さっちん」

「うん?」

「どうして貴方が家出したのか、
 ちゃんとマスターに事情を説明した方がいいですよ」

「そうかな・・?」

「貴方のマスターはきっと貴方の事を好ましく思っています
 いつか見たときは、貴方をサーヴァントと言うより友達として思っているように見えましたから
 大丈夫、きっと許してくれますよ」

ライダーさんが優しそうに言う

「そっか・・
 ありがとね、ライダーさん」

そう言って店を出る










喫茶店アーネンエルベでウェイトレスをする
なんでか今日はセイバーさんがサボって来ないらしいのだ
仕事をサボるなんてセイバーさんらしくない

「さっちん、中々仕事できるじゃないか」

「えへへ、実はセイバーさんの仕事を盗み見してたんです」

店長は結構私の仕事ぶりに満足しているらしい
実は日傘を差しながら仕事をしているが、
視界に入る人に片っ端から魅了の魔眼かましているので問題ない

「いらっしゃいませー
 ご注文はお決まりですか?」

割と仕事は楽しい

「愛を、お腹一杯の愛を」

この人がいなければ


ゴシャ


もういい加減これと話すのが疲れたのでぶん殴って捨てておく

「段々ワシの扱いがぞんざいになっておると思うんじゃー!
 さっちんをヒロインとすればワシはいわばヒーローじゃよ!?
 ヒーローなのにこの扱いはどうなんじゃよ!?さっちん!」

「さっちんって呼ばないで、ジジイちゃん」

もういい加減この人嫌なので道路に放り投げた
森で会ったかっこいいお爺ちゃんがこのジジイちゃんの存在意義を奪い去った





「おーい、俺もオーダー」

「あ、はーい」

「愛を一杯」


バグシャ


コンクリートを粉砕する拳を顔面に打ち込んだ

「痛っ!痛っ!」

「お客様、ふざけた事を言わないで下さい」

「だからって顔殴るか!?
 そんなんじゃ嫁の貰い手ねーぞ!?」


ズバン!


今度は顎を狙ったショートアッパーだ

「オーダーはなんでしょう?」

「ちょっとふざけただけなのによ、殺す気か?」

頭を振りながらうめいてる

「ランサーさん、何しに来たの?」

「ちょっと見かけたから一緒にお茶でもどうかと思ってよ」

はははと笑いながら言ってくる

「ごめんなさい、大の大人がタイツってどうかと思う」

「言うじゃねぇか、コノ野郎」

こめかみをピクピクさせながら

「大体これはタイツじゃねぇよ、鎧だ鎧」

「ランサーさんの国ではタイツを鎧って言うんだ」

「だからタイツじゃねーんだよ!」

「タイツを着て戦争とかするなんて、卑猥な国なんだね」

「タイツじゃねーって言ってんだろうが!!」









  〜暫くタイツ論争中〜










「で、今日は何しに来たの?」

「ん、たまたま通りかかったんだけどな
 ちょっとサーヴァントの気配がしたもんだから寄ってみただけだ」

「そうなんだ、
 けどこういう落ち着いた喫茶店にタイツで来るのはどうかと思うよ?」

「タイツじゃねーって言ってんだろうが!!!」

ランサーさんって怒ってばっかりだ











  〜タイツの歴史についての考察〜













「なんだか嬢ちゃんって俺にだけ遠慮がまるで無いよな」

「なんだかタイ・・・ランサーさんは話し易いから」

「そりゃ光栄だ
 それはそうと何やってんだよこんな所で」

「アルバイト」

「・・・まぁいいや
 それはそうとあれだ、いつになったら坊主に会いに来るんだよ?」

唐突にランサーさんが爆弾を落とした

「え、それはまた今度で、その」

「なんだよ、こっちは修羅場を楽しみにしてんのに」

バキャン!

「・・・・なんでコップ投げつけるんだ?」

「鎧って言うのが本当か調べてみたくて」

極上の笑顔で答える

「頭に当てたら意味ねーだろうが」

「実は薄いタイツで覆われているという可能性も」

「ねーよ!!」

「よく考えればそうかも、ごめんねランサーさん」

「絶対確信犯だろ・・」

「けど紅茶が滴っていい男だよ?」

中身入りの紅茶が直撃したランサーさん
かぐわしい香りと滴る紅茶がセクシーだね

「・・・・ここで怒ってたら話が進まねーからな、許してやる」

「じゃ、またやっていい?」

「いい加減死なすぞテメェ!!」

また怒ってるランサーさん、高血圧になりそう

「で、話ってなんなの?」

「く、いきなり素に戻りやがって・・」

「ほら、話が進んでないよ」

「・・・ちっ!なんだか荒れてるように見えたんだがよ
 もういい、そんだけ元気がありゃ問題なしだ。じゃーな」

言うだけ言ってさっさと帰ってしまった

(けど、元気付けに来てくれたのかな?)

ちょっと悪かった様な気がする

(まぁ、次はもうちょっと仲良くしよう)

そう決めて仕事に戻る



どうでもいいけど代金払ってない、食い逃げだ











この惨状で、相変わらずタバコを吸っている私のマスター

「燈子」

「うん?」

「流石に不味いと思うぞ、この状況」

不機嫌そうな顔をしていた少女はいない
散々暴れまわって、家に帰った

「式が帰るほど怒るとは思わなかったが
 まぁ実際の聖杯戦争はマスターとサーヴァントでやるものだろう?」

「だが式が抜けたとなると戦力が三割減だ」

「私がいる」

「燈子の戦力は一割だぞ?」

それで私が六割だ

「・・・・随分と評価が低いな?」

「燈子には戦う意思が見られないからな」

実際に、他人に戦わせて自分は報告待ち
というタイプだと思う

「安心しろ、直にその意見を撤回する羽目になるだろうから」

相変わらずタバコを吸って、まるで動くつもりの無いマスター
勝つ気があるのか、甚だ疑問だ









石になった琥珀と翡翠は放って置いたら治った、適当ね

「秋葉様〜」

「今度は何?」

「私暫くお暇を頂いてよろしいでしょうか〜?」

「何を企んでいるの?」

「いえいえ、秋葉様の勝利の為に少し仕込みをしておくべきかと思いまして」

嘘臭いわ、確実に

「翡翠」

「なんでしょう?」

「琥珀の監視をお願い」

「ええ!秋葉様のためにできる事をしようとしてるだけなのに!?」

「姉さん、行きましょうか」

ずるずると翡翠に引き摺られて視界から消える琥珀
不安の芽は速めに潰すに限るわ

5: 微妙 (2004/04/16 22:40:05)[sevenstar_2 at hotmail.com]

(26)



(今日は何処で寝よう)

アルバイトが終わり日が暮れた町で
ボーっと道路際のガードレールに腰掛けて缶ジュースに口を付ける

(結局今日は起きっぱなしだったし)

血ばっかり飲んでたから、コーラの味が凄く新鮮だ
人間だったころを思い出すよね

けどやっぱり半分くらいで飽きる

くずかごに半分残ったコーラを放り投げる
ヅバンと、弾丸のようにくずかごに突き刺さる缶

(うん、いい事ありそう)

吸血鬼になってから、この運占いは必ず成功するようになった
軽くガッツポーズをとって気合を入れる
ちょっとはいい事あるよね



バキャン



「え?」

浮遊感がした
突然ガードレールが倒壊して道路に放り出される

ブレーキの音がした後、鈍い音がして


「あれ?」


私は空を飛んだ







ああ―――気付かなかった






こんなにも綺麗な――







――――――――――紅い月(私の血で)















      聖杯戦争 もう一杯 まる26
















森から帰って来た3人、散々迷子になって
家に着いたのは既に日が暮れてからだった

「・・・・・」

「遠坂、飯食わないのか?」

「食べないのなら私が食べましょうか?」

「ちょっとセイバー、食べるわよ
 バーサーカーが何をしているのかちょっと心配になって」

「多分平気だと思うぞ
 結構したたかに生きてる様な気がする、輸血パックも持ってったし」

もりもり、と御飯を食べながら言う士郎
ちょっとは心配しなさいってのよ

「リンは少し心配しすぎです
 さっちんを痴漢が襲った所で、痴漢がミンチになるだけです
 大体、いい加減さっちんの家出の理由に気が付くべきだと思います」

家出の理由が解らないから困ってるんじゃない

「仕方ないし、ランサー辺りにでも探すの手伝ってもらおうかしら・・」

バーサーカーは今新都にいる
けど私達が森に行ったら森から出たって事は私達から逃げてるのかもしれない

「はぁ、なんでこんなことになったのかしら?」

とりあえずお腹一杯にしよう
考えるのはそれからだ


「坊主おかわり」


誰かいるし

「「・・・・」」

「おのれランサー!私の御飯に手を出すなど言語道断!死刑!」

いち早く状況を飲み込んで、剣を抜きランサーに突きつけるセイバー
ランサーはそれをわき目でチラッと見た後

「美味いなこれ」

と、何事もなかったかのように御飯を頬張っていく

「ちょ!ランサー!こっちを向きなさい!」

「お、これ美味そう」

ひょい、とから揚げを箸で掴む

「ああ!そ、それは私も狙ってたのに・・!」

「うん、美味い」

「ランサー!食べるのを止めなさい!」

「これも貰い」

ひょい、と玉子焼きを摘む

「・・・ああ・・・!」

セイバーが恐怖に打ち震える

「相変わらずこの家の飯は美味い、これって浅漬けっつーんだろ?」

「・・・・・」

「なんか意外にこういうのも美味いんだよな」

もりもり、御飯を食べ続けるランサーを見て
ガックリと膝を突くセイバー

「もう私の負けでいい・・・
 だから・・・・だからもう食べるのを止めて下さいランサー・・」

そんなんでいいのかアーサー王



「まぁ、気にすんな
 それより気になる事があって来たんだけどよ」

「気になる事?」

「嬢ちゃんが荒れてたからな、何かあったのかと思ってな」

嬢ちゃん・・・?もしかして

「バーサーカーに会ったの!?」

思わず身を乗り出す

「な、なんだよ・・?」

「あの子家出中なのよ!何処で何してたの!?」

「何かアーネンエルベでバイトしてたぜ?」

「はっ・・・・?」

目の前が真っ白になる
ああ、私が心配しすぎだったのね
あの馬鹿バーサーカーはなんだかんだでしぶとく生きてるのね
というかいつも通りの生活を送っているのね?

「大丈夫か?遠坂」

「・・・なんか探す気なくなっちゃったわ
 ランサー、あんた暫くアーチャー探しを手伝いなさい」

「はぁ?」

「いいから手伝いなさい!
 バーサーカー見つけたのに連れ戻さなかった罰よ!」

「何で俺が・・」

不満そうなランサー
あんたが気を利かせてバーサーカーを連れてくればこんな事にはならなかったのよ!

「遠坂、それじゃさっちんはどうするんだよ?」

士郎が口を挟む

「セイバーにバイトのシフト確認してもらって
 入っている時間に襲撃すれば簡単でしょうが」

「まぁ・・そうだろうけど」

セイバーはまだ御飯のショックから立ち直っていないが
まぁ、直に回復して御飯を食べだすだろう

「なぁ、遠坂」

「まだ何かあるの?」

「いや、さっちんの家出の理由にまだ気が付かないのかなって」

「そんなの解る訳無いでしょ」

答えた私をガッカリした目で見る士郎

「なによ」

「・・・なんでもない、思ったよりも鈍いんだな遠坂」












居酒屋、
なんとも言えない雰囲気が心を解す憩いの場所

そこに居るの居酒屋にはどうしたって相応しくない黒髪の少年
普段は来ないのだろう、居酒屋で唯一浮いた存在に見える

「なぁ志貴、お前ってなんで遠野なんだ?」

俺は引っ張りまわしている少年にぼんやりと聞いた

「七つ夜が無くなって引き取られたって聞いてる」

「そうか」

大分飲んだから頭がぼんやりする
言ってはいけない事は言わないようにしないと

「でだ、今遠野志貴で幸せか?」

「まぁ、色々大変な毎日だけど中々楽しんでるよ」

「そうか」

今更、親父ですよーなんて言えるか
最初はこうして生きているのを確認して満足したのに
結局それだけじゃ満足できなくなって話しをするために連れまわしている

「そういやあんたの事、俺はなんて呼べばいいんだよ?」

志貴が聞いてくる

「アサシンでいいだろ」

お父さんって呼んでもらいたいような気もするが
今更だしな

「まぁいいや、取り合えず志貴も飲めよ」

「俺はいいよ、これでも結構飲んだほうなんだぞ?」

「素面で何言ってんだよお前は
 そう言う台詞はベロンベロンになるまで呑んでから言えっての」

ドンと志貴の前に日本酒の一升瓶を置く
ま、今日はこの楽しい時間を大切にするか







大分飲んでるけど大丈夫かアサシンの奴
なんか目が据わってるぞ?

「ほら、少し飲んでみろよ
 日本酒だって結構美味いんだぞ?」

ヒック、とべたな音を出しながら酒を勧めてくるアサシン
酔っ払うとまるっきし親父そのものだ

「・・・じゃ、ちょっとだけ」

流石にここまで勧められて「飲めません」はないしな

チョビ、と口を付ける

「・・・・」

「どうだ?」

「まずっ!」

不味い、甘口辛口とかじゃなくて
さっきまでサワーやら軽いものを飲んでいた俺には無理
脇においてあるグレープサワーで口直しをする

「はっはっは、お前にはまだこの美味さがわかんねーか!」

何が面白いのか大爆笑をしている

「あんた頭おかしいぞ、こんな不味いもん良く飲めるな」

俺が言うとアサシンは楽しそうに答える

「お前も後数年したら美味いと感じるんだって
 そうだな、子供でも出来たら飲んでみろよ」

子供、と聞いてアルクェイドの顔が頭に浮かんだ
子作りには勤しんでいる・・
数年といわず、今年中に出来るのかもしれない・・

「お、今お前女の事考えてただろ?」

「なっ!」

頭の中にピンク色の画像が出てきた所で
アサシンに指摘された

「まさかもう子供作っちまったとか?」

「んな訳あるか!4月に高校卒業したばっかりだぞ!?」

いや、出来てもおかしくないかも知れない・・
心当たりが凄い量

「ははは、お前の子供なら顔見てみたいもんだな」

「なんであんたが見たがるんだよ?」

「お前そっくりの女の子だったら大爆笑してやりたくてな」

言って、あははと楽しそうに笑う
こんな酔っ払いを相手にする趣味は無いんだが
どうしてかさっさと帰る気にもならない

「ったく、あんたはホントに変な奴だな」

「気にするな、普段は全然別だからよ」

絶対嘘だ












夜の街をフラフラ徘徊中
セイバーとランサーがセットで居れば怖いものなんて何も無い
ついでに士郎もいるし

「気配は無いの?」

「気配って簡単に言うけどよ
 会った事も無けりゃ、見たことも無いんだぞ」

「ランサー、食べた分位は働いてもらいます」

セイバーさんちょっと不機嫌
楽しみに最後まで取っておいたエビフライを取られたのがかなりキたんだろう

「かの高名なアーサー王がエビフライで怒るとはな
 伝説信じてる子供が見たら泣くぜ?」

「アイルランドの光の御子が全身タイツだと知ったら
 アイルランドの国民が一斉に自殺してしまうかもしれませんね」

バチバチと効果音を鳴らしてにらみ合う二人
なんでエビフライでこんなに真剣ににらみ合えるのか不思議でしょうがない

「はぁ、こんなんで見つかるのかしら・・」











家を探して三千里
フラフラと町を歩いても手ごろな廃屋は見つからない

(橋の下とかいいかな・・)

全身打ち付けてちょっと血が減った
どこかで隠れて輸血パックを吸うつもりで、人目につかない場所を探す

そうこうしている内に小さな橋を見つけた

「今日はここにしよう」

テクテクと橋の下に向かう
手ごろなダンボールを探して臨時マイルームにしよう

「あれ、先客が居たんだ」

既にダンボールで家が拵えてあった
しかも結構しっかりしていて、表札もある
表札にはシオン、と

「外人さんなのかな?」

隣にお邪魔してもいいか聞いてみよう



トントンと、ノックをすると

ドサ

と、戸が外れた
・・・ダンボールだしね

「こんな夜中にどちら様ですか?」

ミカンの筋と格闘している女性と目が合った

「あ、ちょっと隣に家を建てても良いかなって聞こうと思ったんですけど」

意外にもホームレスの人は女性、しかも結構な美人さん

「なるほど、家出中なんですか
 家を建てる必要はありません
 上がって下さい、家の無いものは皆兄弟です」

「・・・はぁ」

気の抜けた返事をする私
お邪魔してみれば、中は意外にも快適な空間
コタツにみかんが乗っかっていて
ベッド、テレビ、電化製品も数多くある

・・・・どっから電源取って来ているんだろう

「それは後で教えてあげます
 家を作る基礎から、生活用水の調達、電源の確保まで完璧に伝授しましょう」

セロハンテープで戸を直した後振り向いてシオンさんが言った
心の中に突っ込まれたような気がするのは気のせいだろう

「いえ、宿を貸してくれるだけで十分です」

キッパリと断る、ホームレスで生涯を終えるつもりは無い

「そうですか・・・残念です、あなたには見込みがあるのに・・」

見込みがあっても嬉しくないです
むしろ見込みが無い方が嬉しいと思います

とりあえず寝る事にしよう
魔力消費を抑えるには、よく寝てよく食べる事だってセイバーさんが言ってたし


6: 微妙 (2004/04/16 22:40:39)[sevenstar_2 at hotmail.com]

(27)


日がな一日ぐうたら過ごすのマスター、燈子
私はそのすぐ横で家事に追われる

「コーヒーがぬるい、淹れなおせ」

もう本当に一発ぶん殴ってやりたくなる
しかし腐ってもマスター

「了解した」

私は大人しく本日数十回目のコーヒーを作りに行く

「早くな」

・・・・
あの無愛想な少女が天使に思える
あの無愛想が今思えば慈愛の微笑みに思える

「式・・君がマスターならどれだけ人権が守られたか・・」

届く事の無い願いを呟く



そこでふと楽しい事を思い付いた

(コーヒーに見える醤油をタップリと淹れてみるか)

決めたからには行動は早い、
陰になるような立ち位置に移動し
戸棚から醤油を取り出す

「クク・・地獄に落ちろ、マスター」


どぼどぼどぼどぼどぼ


醤油で一杯になったマグカップを燈子に持って行く

「淹れたぞ」

「お、早かったな」

コーヒーを口元まで持っていく

(醤油を抱いて溺死しろ・・)

笑いを堪えるのに一生懸命だ、燈子が口から醤油を噴出している姿を想像するだけで楽しみだ
ところが
ピタっと動きを止める燈子

「変だな」

バレたか!?

「どうした燈子」
       クール
だが、あくまで冷静に

「バーサーカーのマスターが見事なくらい正確にこっちに向かってるぞ」

バレてはいないようだが
ちょっと聞き捨てならない

「結界を作ったんじゃなかったのか?」

「簡易的な結界じゃ甘かったみたいだな
 監視の使い魔が見ているんだが・・どうにもお前に用があるみたいだな」

セイバーとバーサーカーが来たとなったらどうしようもない
式が居ない今、二対一で戦う事になる

「燈子、流石にそれの相手は無理だぞ」

「何だかバーサーカーが家出したとか言っている訳だが
 それでも無理か?」

「家出?」

「らしい」

「・・・」

正直何を考えているのか分からん
そこそこマスター想いのサーヴァントかと思ったんだが
家出だと?どう考えても遠坂のサーヴァントに相応しくない

「まさかバーサーカーはサーヴァントではなかったとか」

「いや、単に頭が悪いだけだろう」

「・・・・」

「さて、どうしたものかな」

燈子は面倒臭そうに呟き、新しいタバコに火をつけた

「打って出るか燈子?」

「いや、待ち伏せの方が戦いやすい」

「そうか、ならばコーヒーでも飲んでゆっくり待とう」

「そうだな、
 そういえば今日一日よく働いてくれたなアーチャー
 お礼と言ってはなんだが、このコーヒーをお前にやろう」

何の気なしに大爆弾を投下してくれた
まさか確信犯じゃあるまいな?

「・・・・・いや、私は紅茶派なのでな」

「遠慮するな、少しは私も働かせて悪いと思ってるんだぞ?
 戦闘になるだろうから少しは英気を養っておけ」

軽く笑ってコーヒー(醤油)を差し出してくる燈子
奇跡的にも今回は純粋な好意からの行動に見える

「・・・・・・」

「どうした?」

「・・・・頂こう」

コーヒーを受け取る
いくら鬼の様なマスターとは言え、純粋な好意からの行動を断るなどできん

「コーヒーは滅多に飲まないのか?」

「・・・ああ」

「そうか、初心者にブラックはキツイな
 ミルクと砂糖で少し飲みやすくしてやる」

「ああ!?」

止める間もなくミルクと砂糖が投下され
マグカップの中に一種の固有結界が展開される

(アンリミテッド・醤油・ワークス・・・)

心象風景まで変わりそうな物体だ・・

「それなら軽く飲めるはずだ
 これを機にお前もコーヒー派に鞍変えしたらどうだ?」

「考えておこう・・」
















聖杯戦争 もう一杯 まる27















私達はアーチャーを強奪するべく町に出た
私の我儘みたいなもんだから付き合わせるのはちょっと悪いけど

「本当にこっちに居るのかしら?」

「どうでしょう?ランサーの言葉を信じるなら居るんでしょうが」

「何もしないよりマシだろ
 元々情報が無かったんだし、信じてみよう」

ランサーにアーチャー探しを手伝わせていたら
「あっちにいるから行って見ろ」と、身も蓋もない台詞が飛び出した
ランサーはその後さっさとどこかへ消えてしまった
結局、ランサーに追いつけるはずも無く
嘘か本当か分からない言葉を信じて進んでいる訳で

「まぁ、嘘だったらアイツを町中引っ張りまわすだけね」

散々御飯食べて嘘吐いて帰ったなんて事だったら
ちょっと殺してしまうかもしれない

「それはそうと、あっちと言われても私達にはサーヴァントの気配が分かりませんが?」

「言われてみればそうだな、具体的な場所を聞いたわけでもないし」

「結界を張っているって聞いたの
 多分、実物を見れば分かるでしょ」

「なるほど」

3人で連れ立って歩く
本当は、バーサーカーも連れてくれば良かったんだけど

「ま、アーチャーを取り戻したらバーサーカーと会わせてやらないとね
 どっちも私のサーヴァントなんだから仲良くしてもらわないと困るわ」

「・・・・」
「・・・・」

私の一言に急に押し黙る二人
なんだか冷めた目で見られているのは気のせい?

「遠坂・・・お前いい加減気づけよ」

「なにが?」

「リン、あなたは少々愚鈍かと思います」

「・・・だから何がよ?」

ますます分からなくて理由を聞く私を見て
はぁ、と二人揃ってため息を付いてくれた
なんだかどっかの絶倫超人の気持ちが分かったような気がする

「何よ、二人に鈍感なんていわれるほど鈍感じゃないわよ私」

「「はぁ・・」」

何だか凄く悔しいのは気のせいだろうか













シオンさんのダンボールハウスで横になりながら
マスターの気配を感じ取る

(・・・町に出てきてる
 探しに来てくれてるのかな?)

ちょっと安心した
ライダーさんもマスターは私が嫌いじゃないって言ってたし
ここは大人しく捕まってあげてもいいかな

(寝るのはもうちょっと我慢して、マスターを待ってよう)

体を起こす
夜風にでも当たりながらマスターを待とう

ダンボールハウスから出て、橋の下
自分の主人を待つ













「志貴、お前長生きしろよ」

未だに飲み続ける俺達
雑談を交わしながら、俺はお冷をアサシンは焼酎を飲む
唐突にアサシンが妙な事を言った

「なんでそんな事言うのさ?」

「なんかお前、早死にしそうだしな」

ちょっと笑いながら言うアサシン

「なんだよそれ」

「なんてーか、さ
 家族を残して死んだりしない様にしろよって事だな」

そう言ってお猪口に残った焼酎を飲み干す
変な話だが、あったばかりのコイツの言葉は妙に胸に沁みる

「・・・」

「なんか湿っぽくなったな
 そろそろお開きにするか?」

黙り込んだ俺を見て
雰囲気を変える様に言う

「そうだな、もう大分飲んだし
 ・・・・・・って、金足りるかな?」

がま口を開ける
妙に軽いのはお札しか入ってないからだ、きっと

「いくら持ってる?」

「・・・・・500円」

銀色に輝くコインが目に入った

「・・・・いい根性してるなお前」

流石に500円は呆れられたようだ

「ああ、我ながらビックリした」

「・・・・」

「・・・・」

どうするべきかと悩む
この様子じゃアサシンも大して持ってきてなかったんだろう

「走るか?」

ふと、アサシンが口を開く

「走ろう」

その意図は解る
俺もそうするしかないと思っていた


七つ夜パワー全開で、食い逃げ















高級ホテルの最上階
サラリーマンが見たら卒倒する馬鹿みたいに広いスイートルーム
そこに居た、黒髪の少年は今は居ない
タイツを着ている青い騎士も居ない

少年ははなんだかどっかのおっさんと飲みに行った
タイツは相変わらずフラフラしているだろう

「暇ね・・・」

気紛れな真祖のお姫様はベッドに転がりながら呟いた

「あ、そうだ
 レーン志貴の夢見せてー」

夢魔の黒猫に呼びかける
夢魔なら好きな夢を見る事ができる、志貴との思い出ダイジェストとかいいかもしれない
が、
言った所で返事は無い
元々声など発する事は無いのだが

「あ、三咲町に置いて来たんだっけ・・
 大体もう私の使い魔じゃないんだよね・・」

その事実を思い出す

暇だ
すごく暇だ

(正直ちょっと寂しい・・)

一人ホテルの最上階でホロリと来た

7: 微妙 (2004/04/19 23:30:35)[sevenstar_2 at hotmail.com]

(28)


私のマスターの気配は順調に向かってきているみたいだ

(家に帰ったら衛宮さんの御飯食べよう)

橋の端っこに腰掛けて足をフラフラとさせながら考える

ライダーさんにランサーさんにシオンさん
色んな人に助けてもらったこの家出
ランサーさんには助けてもらってないような気もするが

(結構楽しかったかな)

占いの直後、車に轢かれちゃったのは痛かったけど
やっぱり今日はいい事あった
ちょっと嬉しくなったので、軽く歌を口ずさんでみる

(早く来ないかなー)

歌を口ずさみながら、主人を待つ











聖杯戦争 もう一杯 まる28














新築が目立つ住宅街を抜け
歴史のある家の立ち並ぶ、昔ながらの街並みに出る

そこに確かにソレはあった
ランサーが言う方向に向かうと確かに結界が張ってあった
ただ何故「駄菓子の沢村」に結界を張っているのかは解らなかったが

「なんだってこんな所に結界があるのよ・・」

「シロウ、この謎の物体達は食べれるのですか?」

陳列されるなんとも言えないお菓子達に興味津々のセイバー

「ああ、駄菓子だからな食べれるぞ
 セイバーの口に合うとは思えないけど」

それを優しく見守る士郎
あんたら、私達一応アーチャーと戦うことになるんだからちょっと緊張しなさい

「ちょっと食べてみても良いでしょうか?」

「店の人は居ないけど
 お金置いておけば良いんじゃないか?」

「あんたらもうちょっとなんか無いの?
 例えば「とうとう見つけ出したー」とか、何て言うか戦う気概が感じられないわ」

「私はリラックスして戦いに備えているのです」

こっちを見ることすらせずに言うセイバー
手元のイカのよっちゃんの袋を開けて、まじまじとソレを見ている

「このような食べ物は初めて見る・・・」

ゴクリと喉を鳴らす

「なんだか懐かしいな」

微笑ましいといった表情をしている士郎

「それ食べたら行くわよ」

諦めてセイバーの食欲を満たしてやる事にする

「では・・・いただきます!」

駄菓子食べるのに「いただきます」もないだろうに
はぁ、とため息を付いてセイバーを見る
セイバーは勢い良くイカのよっちゃんにかぶりついた



ボンッ!


「げふっ!」

「・・・・」
「・・・・」

口の中で爆発が起きたみたいだ

「・・・・シロウ、こういう食べ物なのですか?」

セイバー、どの国の料理も口の中で爆裂したりはしないわよ

「いや、罠だったみたいだセイバー」

「随分と陳腐な罠だけどね」

なんだかアーチャーのマスターの人格が不安になってくるわ
馬鹿なのかしら?


「引っかかった奴も居るんだ
 それほど馬鹿にしたものでもないだろう」


駄菓子屋に面した道から声がした、聞き覚えのある声
アーチャー、私のパートナーだったサーヴァント

「アーチャー・・!」

「今回はセイバーとして呼ばれたらしいがな
 不思議と私もそっちの方がしっくり来る」

肩をすくめて言う
こうして話していると前の聖杯戦争に戻ったような錯覚を覚える

(駄目、今は話をしている場合じゃない・・)

自制する、今は戦わなくてはいけない
マスターを突き止め、アーチャーを取り戻す。それが目的でここまで来たのだ
だが、自制も限度がある
いくらなんでも気になりすぎる

「アーチャー、顔色がおかしいわよ・・?」

元々は浅黒い肌をしていたが
今はなぜか、黒人に近いほど黒い

「・・・・・気にするな」

ちょっとうんざりした様に呟く
あんた拾い食いでもしたの?

「リン、シロウ、下がっていてください」

私と士郎の前に進み出て、アーチャーと対峙するセイバー
小さな背中は、なんとも頼りなく、同時に彼女を知っているから頼もしい

「・・・君が相手では手加減など効かないぞ?」

「私を馬鹿にしているんですか?
 手加減が欲しいのはそちらでしょう」

剣を握るセイバー
既に武装を終えている

「引く気はないか・・・・ならば仕方ないな」

赤い騎士の手には干将獏耶、二対の短刀が握られる

「・・・弓でなく、剣で戦うつもりとは・・」

「不満か?」

「呆れただけです」

瞬間、セイバーが疾走し、赤い騎士に切り掛かる――










初撃を干将で受ける
瞬間、衝撃が剣を伝って体に響いた
馬鹿みたいに大量の魔力を注ぎ込んで打ち込まれる一撃

(っつ!)

二撃目を獏耶で受ける
初撃に劣らぬその威力に体が軋む


――剣士としてセイバーと戦いたい


(思い上がりだったか・・!?)

少しだけ試してみようと思っただけだが
どうにもセイバーはかなり頭に来たらしい

(だが・・!)

防ぐ事なら得意分野だ
そうそう一撃を許してやるものか

そう思った時ピシッと剣が音を立てる
干将に早くもひびが入り、エクスカリバーに砕かれた

空手になるのはほんの一瞬、壊れた一瞬後には新しい剣を握っている

この猛攻は長くは続かないはずだ
人間である以上、一瞬息をつく間がある

(距離を取る、接近戦は無謀すぎた)

セイバーの手の内は解っている
共に聖杯戦争を戦ったのだから
バーサーカーと戦った際に見られたのは固有結界と投影魔術
衛宮士郎と遠坂にはほぼ手の内の全てを見られている、だがセイバーはその場に居なかった

私の手の内は知られていない


――セイバーに、勝てる


心が躍る






打ち合っていながら考える
全ての剣がどれも必殺の一撃と言っておかしくない
半端な技量では避けることなど不可能なはずだ

(おかしい、確かにアーチャーの剣技は素晴らしいが
 まるで私の剣を知っているような防ぎ方をする)

アーチャーとは一度戦ったことが有る
シロウに呼び出されてすぐの時だ、あの時は一瞬で勝負が付いた
あの一瞬で私の剣を見切れる訳もないし

(何より通常のサーヴァントは聖杯戦争の記憶は消されている、と聞いたんですが)

一瞬だけ攻撃の手を休め息を付く瞬間
アーチャーが後ろへ飛ぶ

(弓を使う気か)

接近戦では敵わないと悟ったんだろう
だが

「それを許す訳が――!」

弓を使われれば、万が一があるかもしれない
それ故、追撃する――








この瞬間
私が退き、セイバーが迫ってくるこの瞬間

――トレース・オン

魔術回路を開く

私と彼女の距離は5メートルも無かった
セイバーにしてみればほんの一足で飛び込める距離
弓を使うほどの余裕は無い、弦を引いてる間に負けるだろう

(だからこそ、隙がある)

地面を蹴って一足で飛び込んで来るセイバー

(ほんの一瞬、足は地面を離れている)

そのほんの一瞬に剣を投影し、打ち込む
あらかじめ準備しておいた剣達は一瞬で作り出す事が出来る

(投影魔術だから出来る奇襲)

素手の様に見えるが、実際は既に武装を終えている
知られていても有効だが
知られていないとなれば、こんな簡単な行動が決めの一手になる

―――ロール・アウト

「――なっ!」

例え不意打ちでも普通に打ち込んでしまえば
彼女の直感がそれを防ぐ

「だがこの瞬間は避ける事は出来ない」

無数の宝剣が飛ぶ







目の前に無数の剣

(これではまるで!)

まるでギルガメッシュの様な攻撃、今は何処にいるとも知れない私のサーヴァント
正真正銘の最強であるサーヴァントだ

大量の宝具を持っているギルガメッシュならばこの攻撃は可能だが
私の知る限り過去にギルガメッシュ以外でこれほどの宝具を所有した英雄など居ない
未来の英雄だとすれば、既に失われた宝具まで持っているのはおかしい

ならば何故出来る?

(考える時間など有りはしないか・・!)

今はこの攻撃から逃れる事だ
避ける事は不可能、ならばこの攻撃を防ぐ!


「アヴァ―――
 全て遠き   

   ――――ロン!!」
       理想郷!

展開される聖剣の鞘
数百のパーツに別れありとあらゆる干渉から私を守る、究極の守り











一人部屋でコーヒーを飲む
監視の使い魔が状況を伝えてくれるので見に行く必要は無い
それにしても

「中々善戦しているようじゃないか」

まぁ、それもいつまで持つかも分からない
あの少女の正体がアーサー王だと聞いた時流石に驚いた

ああ、そういえばコーヒーを飲んだ途端、倒れて痙攣しだしたアーチャーにも驚いたな
泡を吹いて白目を剥いていたからな、きっとコーヒーアレルギーでもあるのだろう
悪い事をした

「そろそろ、私も戦いに行くかな」

後ろで見ているだけだった二人が何やらやっている、アーチャーがただの魔術師に負けるとも思えないが
あの二人は前の聖杯戦争を生き抜いたと聞いた、サーヴァントを如何にかする方法も知っているかもしれない

椅子から腰を上げ、トランクを持ち戦いの場へ向かう













「マスターが姿を見せない・・
 これじゃアーチャーを取り戻すなんて出来ないじゃない・・!」

苛立たしい、ここまで来て姿を見せないマスターだなんてとんだ卑怯者だ
尤もアーチャーのサーヴァントならば姿を見せない事が正解な訳だが

(ここまで来たんだから顔くらい見せなさいってのよ!)

無茶な注文である

「思い付きだけどな、いいアイディアがある」

意外にも士郎には状況を打開できそうな案があるらしい

「投影で前回のキャスターの短剣を作ってみる」

「キャスターの?」

私は直接キャスターを見ていない
当然宝具も知らないが、この状況を打破できる物なのだろう

「――トレース・オン」

見る間に士郎の手の中に剣が投影される
妙な形をした、どこで切っていいのか解らない剣
その剣にはきっと切れ味なんて関係ないんだろう

「それは?」

「多分、魔術破り
 キャスターがセイバーに使おうとしてた奴だ
 これならアーチャーを取り戻せるだろ?」

「す、凄いじゃない!」

ちょっと小躍りしそうになる
セイバーがアーチャーを無力化することが出来れば
そこでアーチャーを取り戻す事も出来る


「投影魔術か、面白いな」


「――!遠坂っ!」

士郎に突然押し倒される
歓迎したいがセイバーに殺されかねない

「え・・・!?」

黒い影が、私達の居た場所を通り過ぎる
使い魔・・!
マスターが出てきたの!?

「突然何するんだよ、あんた」

立ち上がって士郎が言う

「悪いが、まだまだ聖杯を諦めたつもりは無いんでね」

くくく、と意地の悪い笑みをこぼす女
どこかで見た事の有る顔をしている

(どこで・・・?)

確か魔術協会の・・・

「・・・封印指定の魔術師・・・青崎燈子・・?」

「なんだ知ってるのかつまらない、驚かせてやろうと思ったのに」

本当に驚かせるつもりだったのだろう
青崎燈子は本当に残念そうな表情を浮かべた

「・・・・封印指定って魔術協会の封印指定か?」

封印指定がなんなのかは士郎も知っていたようだ

協会最高の栄誉、封印指定
それ以後に再現できないであろう魔術を使う者に送られる栄誉
だが実際は文字通り封印して、魔術師ごと魔術を保存すると言う凶悪なものだ

「まさか会えるとは思って無かったわね・・」

身構える、確か青崎燈子はそれほど戦闘的な魔術を修めていなかったはずだ
妹さんの方が出てきていたらその場でアウトだったけど

「さて、どうする
 アーチャーが欲しいならそれなりの対価を置いていって欲しいな?」

「?」

ちょっと言っている意味が解らなかった
どうやらそれ相応の物があればアーチャーを手放してもいいらしい、数秒してその意味を飲み込んで

「渡す物なんてないわ、アーチャーに見合う物なんて持ってないし
 元々私のサーヴァントなんだから力ずくで貰っていく」

「随分我儘な魔術師だな
 ま、アレと釣り合うような物なんて世界中探してもそうそう無いからな
 仕方が無いか」

黒い影絵が襲い掛かって来た






 






渾身を込めて放った宝具の山は
セイバーにかすり傷一つつけることも出来ず、見事に全て防がれていた

「っち!」

聖剣の鞘、まさか持っているとは

「・・・・変な話だ、貴方は過去の英霊ではない。それだけ宝具を持っている英霊が知られないわけが無い
 私はあなたの生前を知らないが、貴方は私の戦い方を知っているように見えた」

聖剣の鞘を収め、呟くセイバー

「それほどの宝具を持っている者などギルガメッシュを除いて存在しない
 持っていない物を使える貴方の力」

「・・・・」

「貴方が本当に役目を果たそうとしたのならリンは死んでいた筈です
 先程の攻撃はリンには防げない、ですがそれをしなかったと言う事」

つらつらと矛盾した私の在り方を述べていく
鋭い、戦闘に入ると嫌になる位鋭くなる
だがなんとも懐かしい、共に戦った日々を思い出してしまう

「私を知っている貴方、持っていない物を使える貴方
 何よりリンへの直接攻撃を避ける貴方は・・・」

「セイバー、ここで気付いた事は忘れてくれると嬉しい」

機先を制して言う

「・・・・」

セイバーは苦虫を噛み潰したというような表情をする
きっと気付いたんだろう、私の真名に

「さぁ、戦おうセイバー
 気にする事など無い、ここにいるのはアーチャーなのだから」

私の一言に、剣を握りなおすセイバー

「どうあってもリンの下へ帰ってもらいます、アーチャー」

私は思わずその言葉に口を歪めた

「やってみろ、セイバー」



8: 微妙 (2004/04/21 18:00:11)[sevenstar_2 at hotmail.com]

(29)



セイバーとアーチャーの戦いは一進一退
対照的に俺達の戦いは一方的だ、攻撃を避けるので精一杯
黒い影絵は遠坂の魔術さえものともせずに襲ってくる
それを避けて体勢を直し、魔術を撃って、そのまま襲ってくる影絵の攻撃を避ける
その繰り返しだ

「あーもう!あの猫どうやったら殺せるのよ!」

「そんなん知るか!」

言いながら飛び込んできた影絵から逃れる

「全く、少しは反撃でもしてきたらどうだ?」

封印指定の魔術師――青崎燈子はトランクに腰掛けて、つまらなそうにタバコを吸いながら見ているだけだ
隙まみれだ、魔術破りは既に投影してある
サーヴァントとの契約を断てると言うのなら、マスターに使っても効果的なはずだ

(やってやる・・!)

「遠坂!影絵の猫は任せた!」

「どうするのよ!?」

「あいつにこの魔術破りを使う!」

言って、青崎燈子へと一直線に駆け出した









聖杯戦争 もう一杯 まる29













「っ!」

無数に飛び交う剣を避け、アーチャーへと進み出る
多少の傷は仕方が無いと割り切った
この男相手に無傷で勝つなどと都合のいい事は出来ない

渾身の剣を振り下ろすが、それを交差させた二対の剣で受けられる

(少しだけ癖が残っている)

少し悲しくもなるが、戦いの最中だ

もう一歩踏み込んで
全身を武器にして、敵を吹き飛ばす
要は、体当たり

「っぐ・・!」

アーチャーの顔が苦痛に歪む

「そこっ!」

下からすくい上げるように振るわれる私の剣

「我が骨子は 捻じれ 狂う!カラド・ボルグ!」

「!?」

アーチャーの手元に捻れた剣が現出され
それが私の剣を防ぐ


瞬間、カラド・ボルグがへし折れ、爆発が起きる


「っが!」

「っ!よくもこの一瞬でそんな物を投影する!」

腕から胸が焼けた
私のダメージも大きいがそれ以上にダメージが大きいのはアーチャー
私にはアヴァロンがある、この程度の傷など問題無い

故に怯む事など無い、もう一度踏み込む!

「トレース・オン」

「・・・!?」

アーチャーの手に握られる刀
長い長い曲線を描く、綺麗な刀だ
見覚えのある

「アサシンの!?」

「そういうことだ!」

アサシンの構えを取るアーチャー
振るわれる刀、三方向からの同時斬撃、多重次元屈折現象

「――!」









脇目も振らず、一直線に青崎燈子へと駆ける
魔術破りの短刀
切った場所がどこであれ確実にマスターとサーヴァントの繋がりを断つ

(ただ一撃入れるだけで、俺達の勝ちだ!)

黒い影絵の足止めは遠坂がやってくれている
青崎燈子本人はサーヴァントも使い魔もいない、まるで無防備な状態
足に力を込めて、距離を縮める

(行ける!)

短刀が届く距離に到達する
構えて振り下ろす瞬間


「そんな武器一つで襲い掛かってくるなんて、いい度胸じゃないか」


声が聞こえて、強い衝撃に視界が揺れた
何が起こったか分からないまま、腹に痛みが走って
体が中に浮いた

(は・・・?)

「士郎!」

蹴り飛ばされたと解った時に、地面に叩きつけられる

「いった・・蹴り上げられたのか・・」

節々が痛む、まぁあれだけ強烈に吹き飛ばされてこれで済むなら幸運だ
視界がグルグル回っているのは最初の一撃は顎でも殴られたのだろう

「士郎!生きてるわよね!?」

回る視界に遠坂を捉える
影絵の猫に魔術を放っているが、足止めしか出来ていない

「あれ位で死ぬわけ無いだろ・・」

「あんた自分がどんだけ空跳んでたか知らないでしょ!」

前にランサーの蹴り貰った時ほどじゃないとは思うけど
どうするか、なんか格闘技とかも出来るみたいだし

「頑張るしかないか」

結局、この短刀を突き立てるまで
何度でも突撃するしかない
再び青崎燈子へ向かい、走り出す














(完全には投影できなかったか)

セイバーは健在、見事に三つの刀を受けきる
「燕返し」はオリジナルほど完全な形には成らなかった
全ての刀を受けきったセイバーは尚前に出て来る

「アーチャー!」

振り下ろされる剣を、新しく投影した干将獏耶で受ける

「っつ!」

そのまま剣で防御ごと押しつぶすつもりなのか、ますます力が込められるエクスカリバー
打ち払う事も出来ず、その一撃を頭上で押し止め続ける

「今日は随分気合が入ってるなセイバー・・!」

「貴方が相手ですから・・!」

「光栄だな
 私もセイバーとは一度戦ってみたかった」

「成長を見せてくれるとでも?」

「見せてやるさ・・!」

その一言と共に、セイバーを中心に無数の剣を投影する

「っく!」

それを見て、一旦退くセイバー
一瞬後にセイバーの居た場所に剣の山が出来上がる

距離は4〜5メートル、直ぐにセイバーは向かってくるだろう
今度はそれを許さない
攻め手に回るのは、私だ











「芸が無いな、少年」

青崎燈子は、接近した所で負けるわけは無いと思っているんだろう
大して動じた様子も無い

(投影魔術、まともにやったら負けるんだからこれしかない)

ふと、頭に浮かんだのはセイバーではなく、赤い騎士の背中
あいつが使っている剣を投影しよう、
二対の内の一本だけでいい、片手には魔術破りがあるのだから

(――トレース・オン)

ただ投影するんじゃない
その刀が歩んできた歴史、経験をも共有する
刀の持ち主の戦い方を手に入れる

「なんだ・・・?」

青崎燈子は少し驚いたように目を開く
明らかに動きが変わった
直線的で稚拙な突撃が、さながらアーチャーの動きに変わっているのだから
驚くのは当然だ

「・・・・」

刀から引き出した経験が、次にどう動くかを教えてくる
体が借り物の経験と技術で動かされていく
本物じゃない俺には負担が掛かるが

(どうだっていい)

この瞬間は、目の前の敵に刀を突き立てることだけを考えろ













アーチャーが踏み込んでくる
接近戦なら私に敵わないと知っている上で踏み込んできているのだ、何かしら手段を講じてくるだろう
少しだけ楽しみに思う、昔に稽古を付けていた私にどんな方法を取るのか

(半端な攻撃ではないでしょう)

私の実力は分かっている筈だ
それでも踏み込んでくるという事は、必殺の一撃を隠し持っているという事であろう
手には二対の短刀

「行くぞ・・!」

剣が振るわれた、その速さはまさしく英霊の一撃に相応しい

だが、それだけだ

(防げない道理は無い・・!)

剣を打ち払い、返しの刃でアーチャーを戦闘不能に追い込む一撃を放つ

「終わりですアーチャー!」

 ロー  ・ アイアス!
「熾天覆う――七つの円冠!」

七枚の花びらの盾、ロー・アイアス

「な!?」

展開された七枚の花びらの向こう側で、アーチャーが最後の剣を投影するのが見えた

バーサーカーの斧剣

「・・・!?」

それが完成した瞬間、七枚の花びらは自ら消失して

「ナイン―――」

「あ・・!」

これを出させる訳には行かない
出されればそこで私は戦闘不能だ

「ああああああああ!!」

全力で、出されるより早くアーチャーを切り伏せるしかない












目の前の少年の動きが変わった
剣を投影してからの動きは明らかに別人の物だ

「どういう魔術だ・・・!」

突き出される短刀
体ごと後ろに飛んでそれを避ける
さらに踏み込んでそれを追う衛宮士郎

短刀、おそらく魔術破りであろうその短刀

(サーヴァントとの契約を断てるほどのものか・・!?)

後退しながら短刀を避ける
一体どうやったらこうまで突然に動きが変わるのか

(だが、ぎこちなさも有る)

どこか無理があるような動き
まるで誰かの真似を、体の機能が自分より優れている者の動きを無理矢理真似ている様な違和感
そこまで考えて気付いた

(アーチャーの動きに似ている・・?)

一瞬だけ気が取られるのを自覚した、致命的な隙を生んだのも分かっている

「!」

胸に魔術破りの短刀が突き刺さっている
薄れる礼呪、サーヴァントとの繋がりが断たれていった

「・・・・・っは」

少年は体に大分負担を掛けていたのか
その場で膝をついた

「負けか、まさかこんな未熟者に敗れる事になるとはな」

心残りはある
聖杯を手に入れてみたいというのも有ったが

「なによりアーチャーがまだコーヒーを美味いと言っていないな」

「 」はいいや、どっちでも







「タイム、セイバー」

アーチャーが何か言っている
剣を振り上げた状態でピタっと動きを止める私

「なんだか決着が付いた様なのでな、これ以上争うのは無意味だと思うぞ」

なるほど、なんだかんだ言って貴方もリンの下に戻れる方が良いと思っているのですね?

「確かにそうですが」

凄い気合入れて振り上げたこの剣を何処に下ろせと?

・・・・・・

「チェストー!」

「ふばっ!?」

とりあえずアーチャーの頭に峰打ちを打って下ろす事にした

「遊んでないで、契約しましょアーチャー」

もんどりうっているアーチャーの横にリンが歩いてきた
すっと手を差し出して、アーチャーに契約を促す

「・・・」

無言でそれを握るアーチャー
これで一通りもとの鞘に納まりましたね

「後はさっちんを見つけるだけですね」

「そうね」

リンはなんだか晴れやかな顔をしている
やっぱりアーチャーが戻ってきたのが嬉しいんだろう















夜も更けてきて、風が冷たくなる
時間は午前2時そこらだろう、橋の上で一人マスターを待つ
楽し気に口ずさんでいた歌はもう止まっていた

「ふふ、マスター遅いな・・」

マスターはなんだか来てくれないし
魔力供給はなんか減ってるし
非常に虚ろな笑顔を浮かべる私

「もしかして、私の事忘れてたりして・・あはは」

脳内ではドナドナが延々鳴り響いていた
流石にドナドナを口ずさむと、色々辛くなってくるので頭の中だけで留める

「・・寝不足だから嫌な考えが浮かんじゃうだけだよね!」

そこまで薄情ではないと信じたい、無理矢理自分を奮い立たせる
というか見捨てられたら消えてしまうのがサーヴァントの運命だし

「よし、私の方から謝りに行こう!」

橋から飛び降りる

マスターの所に行く前にシオンさんの家に書置きだけしないとね
シオン宅に書置きを残してマスターの後を追う
心の準備がまだまだなのでゆっくり歩いて行こう

9: 微妙 (2004/04/21 18:02:08)[sevenstar_2 at hotmail.com]

(30)





アーチャーを交えての帰り道
セイバーにアーチャー。私が、否私達が失ってもう二度と戻らないはずの時間がここにある
皮肉で誠実なアーチャー、頑固で高潔なセイバー
強情で優しい士郎、完璧な私

(実際、これからは昔みたいに馬鹿みたいにドタバタした時間が有るんだろうけど)

つい、顔がにやける
後はバーサーカー連れ戻せばもう聖杯戦争も終わりでいいわ
今回の聖杯戦争は失った物無しで得た物ばっかりだったし

悪趣味な戦争始めた馬鹿達に少しだけ感謝する

「そう言えばマスター」

アーチャーが私を呼ぶ
どうにも違和感が有るわね

「アーチャー、私の事は凛って呼んでくれない?」

「ん。了解した、凛」

「・・・」

ちょっと色々こみ上げたが
マスターとして威厳って物を今回は見せてあげないと

「凛?何やら考えている所悪いんだが」

「う、うん。どうかした?」

「バーサーカーはどうしているんだ?
 聞いた話では家出したとか、どうにも信憑性に欠けるんだが・・」

「家出したのよ、本当に」

「・・・・」

流石にアーチャーも呆れている
私だって呆れるわよ

「まぁ、この際家出したという事はいい
 だがこの状態、凛が二人のサーヴァントを抱えているという事はどちらも力を発揮できないという事だぞ」

「そりゃ解ってるわよ」

実際、聖杯戦争が終わったらどうなるのかは目に見えている
どちらもまともに維持できなくなるだろう
まぁ、もしそうなったら士郎に片方お願いすればいい
それにバーサーカーは契約さえしていれば輸血パックで力を維持できるみたいだし

「ま、その前に家出したバーサーカーを連れ戻さないとね・・
 ったくなんであんな事したんだか・・」

「・・・・」
「・・・・」

・・・・変な事を言ってないつもりなんだけど・・
セイバーと士郎の諦めと呆れの入り混じった視線が突き刺さるのは何故?

「・・・遠坂、なんでさっちんが家出したのか知りたいか?」

見ているだけだった士郎が割り込んだ

「な・・知ってるの!?」

ビックリした
知ってるなら早く教えてくれればいいのに

「リン、さっちんはアーチャーに嫉妬しているんです」

「・・・はぁ?」

私、そっちの気ないわよ
廃屋での出来事はやむなくだったのよ

「だから、さっちんはな
 遠坂の欲しがってるサーヴァントが自分じゃなくてアーチャーだ、って思ったんだよ」

「・・・・う・・ん?」

「リンはアーチャーをさっちんに探させたりしたじゃないですか」

「・・・・・?」

なんで二人にこんなに問い詰められてるのかは解らないが・・
ちょっと頭を整理しよう
アーチャーが出てきて、私がアーチャーを取り戻すって言って
バーサーカーがなんか不機嫌になって、私に手伝うの嫌がって、家出したと

そこまで整理して突然、閃いた
私ってば、もしかしたら天才かもしれない

「・・・・・もしかして
 バーサーカーってばアーチャーに嫉妬して、拗ねちゃったの?」

「だからそう言っているじゃありませんか」

「遠坂はちょっと鈍すぎると思うぞ・・」

盛大なため息を付く二人
なんだか凄く悔しい













聖杯戦争 もう一杯 まる30















マスターの気配は割と近くに残っている
走しればあっと言う間に追いつける距離だ

それにもかかわらず、進んで戻ってやっぱり進む、そんな奇行を繰り返す

「今更何ていって謝ろう・・」

素直に御免なさいとか良いかもしれない

「けどマスター結構性格歪んでるからなー・・」

苛められる事間違い無しだ
路上で行ったり来たりを繰り返して、辺りの人が奇異の視線を投げかけ始めた頃


「やぁ、今夜は良い夜だね?」


少年が話しかけてきた、金色の髪をした綺麗過ぎる少年
一目見て分かった

「死徒」

「鋭い、と言っても褒め言葉にもならないか
 こんばんわ、バーサーカー。家出中だなんて何だか可愛い所あるじゃないか」

楽しそうに言う少年、サーヴァントの事も知っているみたい
危険な相手だというのはすぐに分かった

(逃げよう)

逃げるための道はいくらでもある
跳躍で低いビルなら屋上まで上ることが出来る

(それはコイツも一緒だろうけど・・)

どうしたものか、逃げ出せば殺される様な気がする
かと言ってここに残っていてもロクな事にならないだろう

「ああ、そんなに警戒しなくていいよ
 僕は君を殺す事なんてしたくないし、何より君は僕の大事なサーヴァントになるんだから」

「え?」

分からない事を言われて、一瞬だけ気が抜け

「あ」

スッと吸い込まれるように妙な形の短剣が、私の胸に吸い込まれていた
周りの人間は私達に気付かない、こんなにも近くに居るのに・・

(結界ってやつ・・?けどそんな事より問題なのは――)

うろたえる私を見て少年は心底愉快そうに笑った

「これで君はマスターとの契約を解かれた
 消えたくなければ誰かと契約するしかないよ?」

事実だ、マスターから流れてきていた魔力が途絶え、マスターが何処に居るのかも解らなくなっている
コイツの言いたい事は解る、私を従えようとしている

(だけどマスター達と戦うのは・・)

「それにしても面白い剣だろ?
 教会の宝物庫にあったんだ、無理言って持ってきたんだよ」

私がマスターとの繋がりを断絶されて苦悩しているというのに
少年はまるで玩具を自慢するように言っている

「そうそう、逃げたら殺しちゃうよ
 君が死にたくないと言うのなら、ここで僕と契約してくれないと
 ああ、礼呪なら親切なお爺さんが譲ってくれたから心配しなくていい」

脳裏に浮かぶ、ジジイ
ネロの一部になっても礼呪残ってたんだ
とどめ刺しておくべきだったかな、刺しても生きてそうだけど

「・・・・」

「君だって目的があって世界と契約したんだろう?
 それならここで死んじゃう理由なんて無いじゃないか」

「私は・・・・」

遠野君に会う。それが目的で世界と契約したんだ
世界にこんな絶好の機会に巡りあわせて貰って、それでみすみす死ぬなんて―――

「私は死にたくない」

私の言葉に満足気に頷く少年

「だったら僕の手を取ればいい。何、君が心配しているのはきっと今のマスターの事だろう?
 大丈夫、サーヴァントがいないならマスターを殺したりしないよ」

「本当に?」

「これでも聖職者さ」

ふふん、と笑って言う自称聖職者の死徒
冗談じゃない、こんな性格の歪んだ聖職者が居るなら死刑囚でも聖職者だ
絶対に自分のマスターにしたくないタイプだと思う

(だけど、逃げたら殺されて。断っても殺されるだろうな)

仕方が無い、最初から逃げ道なんて全部潰されている

「・・・・」

「どうする?僕は短気だから早めに決断してくれないと殺しちゃうかもしれない」

「分かった、貴方のサーヴァントになる」

「そうか、これからよろしくね。バーサーカー」

少年が私の手を握ると霊脈が繋がるのを感じた
これで契約が完成してしまったんだろう
凄く不快だが、今死ぬのは絶対嫌だ

「自己紹介をしよう、これからは運命共同体だしね
 僕はメレム・ソロモン、埋葬機関の第5位にして死徒27祖の20位
 王冠の、メレム・ソロモン」

見ていて不快になる笑顔を浮かべて少年は言った



――――

そろそろ新スレッド立てます
一応検索しやすいよう数字を頭に持ってきてますが
役に立ってなさそうな罠


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