DARK HERO 二十話〜四十話(M:セイバー・イリヤ・凛 傾:ライトシリアス等)


メッセージ一覧

1: kazu (2004/04/14 00:52:28)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第二十話「作戦会議」




あの後、何とかがーねぇを落ち着かせ、遠坂達を起こして今後の方針を相談した結果、俺と遠坂は学校を休む事にした。

どうやってがーねぇを落ち着かせたのかは、思い出したくもない。


「それにしても、士郎もタラシよね。あんな歯の浮くようなセリフをよくもまぁ・・・・」


「だぁぁぁぁぁ!!忘れようと努力してるのに掘り返すな!!」


やはり遠坂はあくまだ。

むしろ魔王レベルかもしれない。

それはともかく、現在居間で俺、遠坂、セイバーが机を囲んでいる。

イリヤは目が覚めた後にあっさりと帰っていった。

次に会う時は聖杯戦争が終わった時だと良いんだがな、とイリヤに言った時に見せた寂しげな表情が妙に引っかかった。

さて、それより今は作戦会議だな。


「それで、これからどうするの?学校の結界だってほっとけないわよ?」


「は?学校の結界って何?」


それは初耳だ。

すると遠坂は急に険しい顔―――――バカかアンタ?みたいな表情で俺を見る。


「あんなわかり易い結界になんで気付かないのよ?魔力持ってたら誰でも気付けるレベルよ?」


「いや、つーかそんな結界仕掛ける意味あんのか?」


結界とは本来気付かせない為に使う物の筈だ。

仮に攻撃用の結界だとしても、発動までに見つかってしまったら本末転倒だ。


「攻撃用・・・・しかも発動中、か?」


「攻撃用ってのは的を射てるけど発動中じゃないわ。つまり、見つかっても並の魔術師じゃ解除できない物なのよ。だからああも堂々と設置できるの」


つまりアレか、消せれるもんなら消してみろ、と。


「で、並みの魔術師でないお前さんは消せるのか?」


「無理。せいぜい発動を遅らせる程度ね。それもランサーに邪魔されちゃったし」


ふむ・・・・。

しっかしなんで即座に結界を発動させないんだ?

俺達が狙いだったとしたら辻褄が合わない。

遠坂の話を聞く限りでは、ランサーと戦った時には既に設置済みだったと推理できる。

だったらさっさと発動させてしまえば良いのに―――――


「で、その結界の効果は?」


「人体を溶解して魂を摂取。ただし魔力の通った存在には効果無し。多分狙いはサーヴァントのエネルギー収集ね」


ああ、そういう事か―――――

それでも腑に落ちない。

さっさと発動しないのは何故だ?

誘き寄せる為の餌?いや、だったら何故学校なんかに?

仕掛けた人間の思考を模索していると、ある考えに思い至った。

ん?ああ、そうか、そういう事か。


「多分その結界を仕掛けたマスターは素人で臆病者だ。下手すりゃ魔術師ですらないぞ」


「は?何言ってるのよ?魔術師じゃなきゃマスターには――――」


「いえ、マスターになるだけなら魔術回路が存在しなくてもなれます」


ここで初めてセイバーが口を挟む。


「令呪自体が独立した魔術なんです。ですからそれを使用するだけなら素人でも出来ます」


「それにしたっておかしいわよ。召喚には魔力が必要なのよ?」


「簡単な話だ。サーヴァントによるマスター殺し、それが起きないとは言い切れないだろ?」


そう、サーヴァントといっても自由意志が存在する。

マスターが気に食わないから殺した――――なんて事も有り得るだろう。


「それについては理解したわ。でも何で仕掛けたマスターの性格までわかったの?」


「少し考えてみれば簡単な話だ。エネルギーら摂取が目的なのに即座に発動しない、つまり発動させてしまう度胸も無いが、何もせずには居られない。そして、あの結界の目立ち易さが理解できていない。慎重派って考えもあるが、そもそも慎重な奴はそんなバカな真似はしない。それに相手の手札も調べずに闇雲に誘うのは、ただのバカか好戦派のやる事だ」


そして、ただのバカや好戦派はこんなまわりくどい真似はしない。


「確かにそうかもね―――――」


そう呟いて一人考え込む遠坂。

人と話している途中に勝手に自分の世界に入るのはこいつの悪い癖だ。


「で、だ。俺達は好戦派の戦法を取ろうと思う」


「つまり、こちらから誘うの?」


やらなきゃ最悪全校生徒が死ぬしな。

学校に結界を仕掛けたマスターから仕留める。


「ああ。今日から毎日結界にちょっかいを出す」


「成る程。臆病なマスターは結界の心配をして様子を見に来る、と」


流石に鋭いセイバーがこくこくと頷きながら言う。


「その通り。こっちは二人もサーヴァントが居るんだ。余程の事が無い限り負けないだろ」


それに、と続ける。


「臆病者ならサーヴァントだけ寄こすだろうよ。つまり令呪を含めたマスターからのサポートは無い。バーサーカー級のバケモノじゃない限りそんな相手に負ける道理が無いさ」


それと後一つ、保険を掛ける事にする。


「遠坂、結界の発動を遅らせるってのはどれくらい制御できる?」


「最大で一週間。あとは一週間以内なら自由に出来るわ」


ふむ、なら文句無し!!


「だったら発動を日曜日にしてくれ。それなら居るとしても残業の職員だけだろ?結界の外に運び出すのは簡単だ。タイムオーバーでも最悪の事態だけは避けれる」


なんと我が高校には警備員が居ない。

安全上どうなのかと問い詰めたいが、今回は最悪の場合助ける人数が減る分ありがたい。


「それ良いわね。発動するにも仕掛けた本人が結界内に居る必要があるしね。見張っていれば見落とす可能性も無いでしょ。本人が居るなら結界発動前にケリをつければいいんだしね」


流石遠坂、理解が早くて助かる。


「じゃ、放課後になったら行くわよ」


「いや、学校関係者を調べたい。今日は昼から行くぞ」


みんな帰った後、じゃ遅いしな。

素人がマスターなら学校関係者全員が容疑者だ。

気張って調べんとなぁ・・・・・。

それにかかる途方も無い労力を想像して、げんなりとしながら登校準備をするために部屋に戻った。

しかし遠坂よ・・・・、何時の間に離れの部屋を占拠した?















続くらしい






あとがき

例によって矛盾点等に対するt(しつこい

2: kazu (2004/04/14 00:52:51)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第二十一話「弓道部女子特戦隊」



「消えた!?」


「周辺を警戒しつつ散開!衛宮を逃がすな!!」


どーも、妖怪蜘蛛男です。

じゃなくて―――――

何で俺は追われてる?

オーケー落ち着こう。

・・・・・・そう言えば弓道の大会が近かったな・・・・・。

あー・・・まだ関係者調べ切れてないんだけどなぁ・・・・。

まぁ、一成からどうにも怪しい人物を聞き出せたから良しとするが―――――


「衛宮ぁぁぁ!大人しく大会に出ろぉぉぉ!」


「衛宮せんぱぁぁぁい!部費がピンチなんですよぉぉぉぉぉ!!」


大声で人の名を呼ぶ美綴&後輩1人。

俺を追いかける部隊は何故か全員女子の弓道部員だ。

・・・・・前回の逃亡劇で男子相手に容赦無く迎撃したから懲りたか?

女子は攻撃できない、といった弱点を突く上手い戦法だ。

やるな美綴!

と、言っても埒があかないな。

しゃーない、説得だ。


「おーい、美綴」


「おわっ!?」


俺が声をかけると、天井に張り付いている俺の方を見上げてズザッと後ずさる。

いや、俺も何気に「俺って実はすごい?」なんて思っちゃってる訳だが。


「最近忙しいんだ。すまんが今回は退いてくれ」


「男子が足りないんだよ。お前以外に余ってるのは中途半端な実力な奴ばかり。ア・ン・タ・が慎二を辞めさせてくれたお陰でね」


実は、弓道部名物「衛宮狩り」の原因を作ったのは俺だったりする。

実力はそこそこなんだが性格が最悪な慎二に、奴のやっていた後輩いびりを全てやり返してやったのだ。

嫌がらせしていると何かと奴の妹に止められたが、俺と彼女は決して仲が悪いわけじゃないし、気の弱い彼女では俺を止めきれる訳が無い。

まぁ、軽く三倍にしてお返ししてやったんだが―――――その程度で辞めるとはな。

正直奴の所業は見るに耐えなかったし、俺自身も目の仇にされてたので仕方がないという事にしておこう。

実は奴との因縁の始まりは、遠坂がかなり絡んでいる。

高校に入ったばかりの頃に、一度奴が遠坂に強引に迫ってるシーンに遭遇。

その頃既に知り合いだった遠坂は、俺を見つけるや否やベタベタと俺にくっつき奴を挑発したのだ。

短気な慎二はそれに逆上して何故か俺に殴りかかってきたので、徹底的に打ちのめしてそこらに捨てておいた。

その所為で停学喰らいそうになったが遠坂のお陰で何とかなった。

向こうから襲って来た事を遠坂と俺が証言すれば流石に信じるだろう。

それが原因で慎二人気は大幅ダウン。

それでも貴方に憑いていくわ、なんて言う見た目しか見てないバカ女も多々居たが。

そして今に至る。

ちなみに俺の所業に関しては、喝采こそあれど批難は無かった。

まぁ・・・・いくら顔が良くったって性格がアレじゃあなぁ・・・・・・。

と、言った訳で―――――

俺にも責任があったりする。

慎二は中途半端な実力だったが、周りが弱いのでそれでも必要な戦力だった、って訳だ。

今まで幽霊部員に近い存在だった俺は、大会に出る気も無いし、出される事も無かったのだが――――――

成績が悪いと部費も下がる。

それに危機感を感じた弓道部の方々が、部費の為に俺を捕まえようと躍起になってる訳だ。

ちなみに俺の実力だが―――――――慎二よりはマシ、としか言えんな。


「む、何の騒ぎだ」


マイブラザー一成!?助かった・・・・・かなぁ?


「一成、頼むから弓道部の部費を前年と同じにしてくれ。主に俺の為に」


「ぬ、衛宮か?妖怪変化の真似事か?ふむ、部費か―――――そうしてやりたいのは山々なのだがな、政に私情を挟む訳にはいかんのだ」


「ではさらばだ。いい加減にサボリ癖を治せよ。日々精進也、だ。喝っ」なんて言いながら、かんらかんらと笑いながら去ってゆく薄情なマイブラザー。

要するに、「捕まって死ね、むしろ臓物をブチ撒けろこのゴミ野郎」って事か?そうなのかマイブラザー?だったらそれ相応の――――――


「ブツブツ言ってないで降りて来い。つーか降ろす」


ドン!!


「ほぐわーつ!?」


箒で一突き。

武術を嗜む者が、手加減無しで無防備な人間に攻撃するってのはどうかと思うぞ。














凛視点





「一応結界の発動の遅延は成功ね」


疲れた・・・・・。

それにしても、こんな結界を用意できる魔術師なんて居るのかしら?

まさかキャスター・・・・かな?

どうも考えがまとまらない。


「見事なものですね・・・・。貴方の実力は間違いなく魔術師として桁外れだ」


「ありがとう、セイバー」


私の作業をじっと見ていたセイバーは素直に賞賛の言葉をくれた。

この子、よく見るととんでもなく綺麗よね・・・・。

そしてふと思い出す。

この子もその・・士郎に抱かれたのよね・・・・。

複雑なものね―――――

確かに士郎に抱かれてから、今まで以上に士郎を求めている自分が居る。

でも―――――

ただ単に彼の中に父親を求めているだけなんじゃないだろうか?

それだけが気がかりで私は前に進めない。

ハァ・・・・いっそ単純に恋する乙女になれたら、どれだけに楽だろうか?

そんな馬鹿げた考えを首を振り否定すると、きょとんとしているセイバーに軽く微笑みかけて空を見上げる。

士郎――――サボッてないでしょうね。

そんな八つ当たりに近い疑問をぶつけてみても、私の心はあの空の様には晴れてくれなかった。


















つづくらしい









あとがき

つ、疲れた・・・・

3: kazu (2004/04/14 00:53:12)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第二十二話「襲撃」





あの後、美綴にシバかれてる所を遠坂に助けられた。

遠坂によると、遅延工作は成功したそうだ。

俺の方は怪しい外人の女が柳堂寺に居るらしい、と言う事を一成に聞いた事を遠坂に話した。

で、現在は居間で再び作戦会議をしてる訳だが――――


「柳堂寺に外人女性ね・・・確かに臭いわね。あそこは霊脈も集中してるし根城としては最適だしね」


「む・・・じゃあ結界張った奴を誘いがてら、寺の関係者を洗ってみるか?」


「そうね・・・・柳堂寺のマスター探しは任せるわ。私は引き続き結界にちょっかい出すから」


ま、そんな所か。

でもまぁ――――


「一成はシロだな。令呪が反応しなかった」


「なに言ってるのよ。もしマスターが魔力の無いただの人間だったら令呪自体にも魔力が通わないから、こちらの令呪も反応するわけ無いじゃない」


む、それもそうか。

俺としたことが―――――


ウゥゥゥゥ!ウゥゥゥ!


『侵入者あり!繰り返す、侵入者あり!各員戦闘配備につけ!これは演習ではない!』


俺の思考を遮り、我が家の結界が侵入者を感知した時の警報が鳴った。

・・・・・敵か?


「・・・・・誰の趣味よ?」


「俺の趣味。知り合いに親父の張った結界を改造してもらったんだ」


ちなみにこの声は本職さんに入れてもらった声だ。

こっちの方が基地っぽくていいし。


「頼むぞ、セイバー」


「アーチャー、出てきて」


俺と遠坂は二人に戦闘準備させながら、自身の戦闘準備も行う。


「でも何処から――――」


カラン


遠坂が周囲を警戒しながら発した言葉の直後、庭からなにかの音が聞こえた。


「奴さん庭に居るらしいぜ?さて―――――」


片手に投影した胴田貫を下げて襖を開ける。


「一戦やらかすか!」


その言葉を合図に皆庭に飛び出す。

庭には骨で出来た兵士が大量にひしめき、俺の思考を一瞬鈍らせる。


「シロウ!止まらずそのまま敵サーヴァントまで突っ切ります!私の後に付いて来て下さい!」


猛烈な勢いで駆けて行くセイバーの後を追い、俺と遠坂は全力で骸の群れを駆け抜ける。


「チッ、竜牙兵か・・・。こんな事をするのは――――キャスターだな」


後ろを守っているアーチャーの不快そうな舌打ちが聞こえたが、気にしている余裕なんて無い。

俺自身もセイバーが討ち漏らした竜牙兵を胴田貫で切り払いながら走っている為、もう息も切れ切れで思考もぼやけている。

程なくしてローブ姿の人影にセイバーが斬りかかる。

遠坂はそれを見届けると、アーチャーにテキパキと指示を出す。


「アーチャー、殿は任せたわよ。セイバーと私たちに敵を近づけないで!」


「了解した。なに、この程度の雑魚なら全滅も容易い」


不遜な言葉を残し、竜牙兵を次々と狩ってゆくアーチャーに背中を任せてセイバーの元に急ぐ。


「セイバー!長期戦は不利だ!」


「言われるまでもない。一瞬で切り伏せます!」


俺の指示に余裕で返すセイバー。

つーか、大魔術の直撃食らいながらそれですか?

これなら本当に心配は―――――

瞬間、奴の手に現れた歪な形の短刀に背筋が凍った。

やばい、もしかしてアレは――――


「逃げろセイバー!そいつは破戒剣だ!!」


「え―――――!?」


俺の声にはっとした様に振り返るセイバーの胸に、吸い込まれる様に歪な短刀が―――――

させるかよ!!


「ゲイボルク!!」


タァァン!!


あらゆる工程をとばして投影した、魔弾が装填されたデザートイーグルを奴の手に向けて放つ。


「あぐぅ!?」


奴の破戒の剣を持っていた手は、俺の魔弾によって粉々に砕け散り、キャスターは手を押さえて蹲る。


「今だセイバー!」


一瞬のタイムラグの後、固まっていたセイバーに指示を出す。


「はぁぁぁぁぁぁ!!」


キャスターに向けて振り下ろされる剣は、決して止まる事無く奴を両断すると確信した。

が、その直後――――


「なにっ!?」


奴が一瞬にして掻き消え、次の瞬間には上空に浮いていた。


「っく・・・・やってくれるじゃない、半人前。――――次は殺すわ」


忌々しそうに俺を睨むと、キャスターの姿は溶ける様に消えた。


「まさかキャスターが打って出るとはね」


「全く予想して無かったよ。てっきりキャスターは持久戦で来ると思ったんだが――――――」


「この戦争ではそんな既成概念は捨てる事だな。でなければ死ぬぞ」


「その通りです。シロウもリンも少々常識に拘りすぎている」


そんなサーヴァント二人の説教に、遠坂は苦い顔をしてアーチャーを睨む。

俺は無論無視だ。

それ以上に話さねばならない事がある。

それを遠坂に教えるために、苦い顔をしている遠坂の肩を叩く。


「何よ?」


「遠坂――――――キャスターのお陰で学校の結界が消せそうだ」


ニンマリと笑いながら言う俺に、遠坂が怪訝そうな表情を作る。


「さっきの剣だよ。恐らく宝具だ。アレの効果は全ての魔術の破戒―――――」


「そうか―――だからアンタはセイバーを逃がそうとした訳ね。確かにサーヴァントの契約を破戒できる程の物なら、あの結界も壊せるかもしれない」


まぁ、問題があるとすれば消耗の大きさだな。

元々あの短刀は武器としての概念が薄いせいか、どうにもイメージが難しい。

多分消耗もとんでもない事になるだろう。


「じゃあその作戦は明日決行ね。今日はもう疲れたし」


「ああ。多分結界を破壊すれば敵も出てくるだろうしな。万全の状態で行くぞ」


そんな会話をしながら、俺達は家の中に戻る為に歩き出した。



















つづくらしい






あとがき

次回「ライダーさん、Sに目覚める」の巻き(大嘘

4: kazu (2004/04/14 00:53:30)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第二十三話「苦労人」




結局あの後、俺も遠坂も疲れていたのか泥のように眠った。

そのせいで目が覚めたのが昼過ぎ。

そんな時間から学校に行く気なんて起きないので、俺と遠坂は夜の戦闘に備えてお互い自分の工房―――遠坂は離れの一室だが―――に篭った。

こちらから特定の場所に呼び出せるんだ、そんな美味しいチャンスを逃すわけにはいかない。

―――――日が暮れるまで屋根の上から延々とアーチャーの愚痴が聞こえた気がするが、気のせいにしておこう。

そしてセイバーよ・・・・・何を気張ってるのか知らんが俺の工房で瞑想するのは止めてくれ。

「手伝いたいんです」って・・・・その気持ちはありがたいが、なんか監視されてるみたいでイヤだからやめれ。




そんなこんなで日が暮れて出陣の時間が来た。




「―――――その荷物何よ?」


学校へ向かう道中、遠坂がジト眼で俺の背中に背負った荷物に一瞥をくれながら言う。


「ん?物事を有利に進める為の道具さ」


そんな会話をしながら学校に向かう。


「所でシロウ。自信があるようですが何か秘策でも?」


「秘策?んな大それたモンじゃないさ。戦いの基礎よ、基礎。今回はそれを使うだけ」


っと、着いたな。


「俺とセイバーは結界壊しに行くから、遠坂達はこの図通りに校庭にコレを設置しといてくれ」


そう言って、背負っていた荷物と一枚の紙を渡す。


「何よこれ?」


「開けてからのお楽しみだ」


そう言って怪訝そうな顔をする遠坂に荷物を押し付けると、そのままのんびりと校舎に向かった。














「セイバー。基点の位置を教えてくれ」


屋上に着いた俺は、セイバーに頼んで結界の基点の位置を教えてもらう。

どうにも俺は投影、強化、変化、維持以外の魔術が不得意で、この結界の基点を感じる事は出来てもはっきりとは見れないのだ。


「ここです。それより――――リン達は何をしているのです?」


と、セイバーは基点らしき場所を指差しながら、校庭を猛烈な勢いで掘り返すアーチャーと指示を出すだけの遠坂を不思議そうに見つめた。


「ん?敵が来てからのお楽しみ、だ。――――投影開始」


今回は急ぐ必要が無いので、魔力の節約の為に丁寧に工程をこなし宝具を投影する。


「投影完了」


程なくして出来上がった禍々しい短剣―――ルールブレイカー――――をセイバーの指差す基点に向けて振り下ろす。


「結界は消えたか?」


「いえ、消えてません」


失敗か!?

おかしい――――魔術である限り破戒可能な筈だ。

魔術じゃない―――――?

まさか宝具か!?

ヤバイなぁ・・・・、どうすっぺ・・・・。

あ、そーだ。


「セイバー、お前の真名聞いてなかったっけ?お前の宝具で、この結界破壊できないか?」


間が抜けてるというかなんというか――――

真名を聞き忘れてるなんてな。


「恐らく可能ですが―――――下手をうてば周囲の建物に甚大な被害が出ますよ?」


セイバーが困ったように言う。

む、そんなに強力な宝具なのか・・・・・。


「出力絞って撃つ位置考えれば何とかなる?」


上手くいけば特に被害無しで出来る、見たいな事言ったし。


「出来ますが消耗が激しいですよ?現界に支障はありませんがシロウの負担になります」


申し訳なさそうにセイバーが言うが、それで心は固まった。


「セイバー、真名を」


「私の名はアルトリア。宝具はエクスカリバーです」


凛とした声で堂々と告げるセイバー。

・・・・・・アーサー王?

つーか俺はアーサー王を抱いたのか?

ま、いいや。


「じゃ、やってくれ」


「わかりました」


彼女は透明ではない、輝く剣を取り出すと結界の基点らしき場所に構える。


「エクス――――――」


構えられた剣は輝きを増し、地を揺るがす。

遠坂達は驚いた眼でこちらを見ているが、特に止める様子も無い。


「カリバー――――――!!!」


セイバーが剣を切り上げると同時に光が迸る。

その光は夜空を切り裂き、ゆっくりと消えていった。


「破壊できたか?」


光が収まり、剣を消したセイバーに静かに問う。


「いえ、出力を絞り過ぎました。多大な損傷を与えたのですが消滅には至ってません」


申し訳なさそうな顔で俺に言うセイバー。

だが――――――


「上等。要は敵に危機感を抱かせればいいんだ。それで上出来だ」


俺の言葉にどこかほっとしたような雰囲気になったセイバーは遠坂達の方を見る。


「リン達の作業は終わったようですが・・・・」


ってか早いな遠坂。

まぁ、実質働いたのはアーチャーなんだろうけど・・・・。

確かにサーヴァントの身体能力なら楽勝だろうな。

つーか遠坂さん、何で俺を睨むかな?

怖いからやめて。













アーチャー視点




何故私はこんな事をしているのだろうか?

作業を始めてからそんな考えが頭をぐるぐると回っている。


「ハァ・・・・過去の清算も出来ずに、何をしているのだ私は」


唯一の希望が潰え、その上この扱いだ。

例えて言うなら、並んで買ったた○ごっちが偽物だった時の虚脱感に似ている。

そうか、奴はたま○っちのパチ物か・・・・。

嗚呼、何故私はこんな下らない事を考えているのだろう?


「アーチャー。動きが鈍ってるわよ」


これでも人を超越した速さで穴を掘ってるのだがな―――――

と、何時もの調子で返す気力も無い。

許せ、英雄の座に居る本体よ―――

私は今剣の丘の担い手ではなく、ただの穴の掘り手に成り下がってしまったようだ。


「ほらほら、ブツブツ言ってないでサッサと掘る!」


鬼め。

働けど働けど待遇は良くならず、か―――――

昔の人は上手い事を言うのだな・・・・。


「はいはい手が止まってるわよ。あと少しだから頑張りなさい」


せめて応援するならその楽しそうな顔はやめろ。


「はぁ・・・・」


私は何度目になるかわからない溜息を吐いて、止まっている手を黙々と動かし始めた。












セイバー視点





暗い廊下を黙々と歩く彼の背を見ながら考える。

私は彼をどう思っているのだろう?

好き?

いや、確かに彼の心は好ましいが好きと断言出来るほど共に居た訳ではない。

愛してる?

それに近いかもしれない。

彼に抱かれた後、彼の頭の重さを膝に感じながら時を過ごした。

その時の例え様の無い幸福感は愛故なのだろうか?

彼は強いようで弱い、大人びているようで幼い。

矛盾の塊のような心を抱えて必死で歩む姿は、守らねばならないという危機感に近い思いを抱かせる。

それ以上に―――――――

彼の匂い、温もり、感触、それら全てに引き寄せられる自分が居る。

まるでそれが当然であるかのような自然さ。

私は彼をどの様な対象として求めればいいのだろうか?

私はこのまま彼を求めていいのだろうか?

だがそれは許されない。

私は王でありヒトではない。

切り捨ててきた民の為にも私はいつか還らなければならない。

だがそれでも―――――

このまま夢の様な毎日を送れたらそれはどれだけ幸せな夢なのだろうか?

そんな答えの出ない葛藤を抱きながら、彼の背を追いかけた。






















続くらしい










あとがき


感想掲示板の指摘&マテ本の解説を読んだ結果、自分の恥かしい勘違いに気付き書き直しました。

エクスカリバーでそんな事が可能か不明ですが・・・・・

ちょっとこじつけな感が否めない話ですがご容赦を。

5: kazu (2004/04/14 00:53:58)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第二十四話「奇襲」








俺は結界を攻撃した後、一旦遠坂と合流してからセイバーを残し、俺一人でトランシーバー片手にある場所に隠れている。


『ザッ――――そろそろ来るみたいよ。全く・・・・いきなり宝具を使わせるバカが居るもんだから疲れちゃったわよ』


「う・・・・スマン。それよりアーチャーは配置に着いたか?」


『ええ、上手く隠れてるわ。なんかブツブツ文句言ってたけどね』


・・・・・むぅ・・・・許せ赤い奴。

後で角付けて三倍気分を味あわせてやるから我慢してくれ。


『それよりあの命令はどういう事よ?少しでも危険と感じたら無理に攻めずに退けって。セイバーすっごく不満そうよ?』


あー、戦いは勇猛果敢にって考えなのか?

俺がマスターである限りストレス溜まるだろうなぁ・・・・。

すまんセイバー、後で三○無双貸してやるから許せ。


「なに、勝てる勝負で危険を冒すのは賢いとは思えんのでね。今回は我慢してくれ、とでも伝えてくれ」


『ラージャ。―――――全く、変なことばっか思いつくんだから』


そんな失礼な言葉で締めくくり、無線を一方的に切られた。

さてさて、この作戦が上手くいくように、信じてもいない神にでも祈りますか。















凛視点




ったく、あのバカは――――

アイツの思考が掴めない事にイラつきながら無線を一方的に切る。


「士郎から伝言。今回は我慢してくれ、だって」


「む――――わかりました、不本意な戦い方ですが我慢しましょう」


そう言って不満そうに綺麗な顔を顰めるセイバーを見る。

やっぱ綺麗よねぇ・・・・・。


「リン、敵が来たようです」


「え?ああ、そうみたいね」


セイバーに見惚れていて反応が遅れたが、何とか持ち直して正門から入ってくる二人の人影を睨む。


「あれ、遠坂じゃん?結界を攻撃したのは遠坂だったのか」


その人影の内一人は私も良く知る間桐慎二だった。

あの嫌味ったらしい慎二が長身の女性――――――恐らくサーヴァントだろう―――――を引き連れて悠然と校庭を横切り私の元に歩み寄る。

多少驚いたが、魔術師である遠坂凛はこんな事では揺るがない。


「セイバー」


私の声に無言で頷くと、長身の女性に勢い良く斬りかかるセイバー。


「ま、待てよ遠坂!僕は戦う気は―――――」


「無い、とでも言う気?私の前にマスターとして現れた時点で私にとっては敵よ」


トランシーバーをONにしたまま話を続ける。

セイバーと長身の女性の剣戟をバックに、魔術師として慎二に詰め寄り睨みつける。


「僕は巻き込まれただけなんだ!生き残るのが目的なんだよ!だから聖杯には興味は無い!そうだ、手を組まないか!?聖杯は差し出すから僕に――――」


「悪いわね。もう衛宮君と組んでるの」


すると彼は士郎の名前を聞いた途端、顔を歪ませ本性を現した。


「衛宮・・・?なんで衛宮なんかと!?奴は無名の雑種だぞ!?」


顔を醜く歪めて士郎を罵倒し始める慎二。

腹が立つが今は我慢だ。


「クソックソックソッ!どいつもこいつも衛宮衛宮!あんな出来損ないのクズの何処がいいんだ!?僕は間桐の長男だぞ!!」


「――――――っ!!」


直後、セイバーが慎二のサーヴァントを弾き飛ばし慎二に襲い掛かる。

士郎が馬鹿にされたのが耐えられなかったのだろう。

私も同意見なので特に止めはしない。

が―――


「ひぃ!?ライダー、何やってるんだよこのノロマ!僕を守れ!!」


その声にライダーと呼ばれた女性は、鎖のついた巨大な杭のような武器をセイバーに投げつける。


ザッ!!


「あぐっ!?」


頭に血が上ったセイバーは、その杭をかわしきれずに肩を貫かれライダーの下に引き寄せられる。


「セイバー!!―――――っ、士郎!どんな作戦か知らないけど早くして!もうセイバーが――――」


『了解だ。敵マスターとサーヴァントの位置は?』


「敵マスターはアンタの近く、正門付近よ。サーヴァントはその近く」


彼の言葉で士郎の考えてる事が理解できたので、極力冷静に答える。

―――――よくもまぁそんな単純な作戦でサーヴァントに向かっていけるわね・・・・・。

そんな呆れ似も近い感情を抱いたが、実際に上手くいきそうなので黙っておく。


「セイバー!あと少しだけ頑張って!!」


士郎が何とかしてくれるから!!

そんな言外の叫びを汲み取ったのか、セイバーは痛みに顔を顰めながらライダーを全力で引き離す。

早く――――!

セイバーとライダーが近すぎて援護も出来ない事に歯噛みしながらも、まだ行動を起こさない士郎に怒りを向けた。












士郎視点





「アーチャー、3・2・1で飛び出してくれ」


『ここまで堪えさせる訳だ。確かにこの状況は好機。不愉快だが今回は貴様に従ってやろう』


こんな時にまで何時もの調子を崩さないアーチャーに苦笑しながら、俺自身も飛び出す準備をする。


「3」


天井を少しずらし準備完了。

少し土が降って来るが無視。


「2」


右手にあらかじめ投影してあったピースメイカーの撃鉄を下ろす。


「1」


天井を押さえる手に力を篭め、爆発寸前まで足を縮める。


「GO!」


と、同時に天井を払い除けながら全力で飛び上がる。

ふとアーチャーの方を見ると、地面に掘られた穴から俺よりも高く天井を打ち破り飛び出していた。

着地するまでマスターらしき人物を見つけ、敵マスターの元に全力疾走で向かう。


「慎二か!?」


多少驚くが速度は緩めない。

後ろから風切りの音が俺向かって来るが、アーチャーを信じて無視する。


「くっ!!」


後ろから焦りを含んだ女性の声が聞こえる。

そりゃそうだ、全く予測不可能な場所からいきなりサーヴァントが現れたんだ。

その上セイバーに集中していた事が決定的だ。

この機を得るために敢えて力押しをさせずに、アーチャーは俺が潜んでいたのと同様の穴に待機させたのだ。

それに、下手に力押しすれば宝具で一発逆転される可能性だってあった。

故に、安全策。

この機を突いて俺は――――


「ッラァ!」


「ひぃ!!」


マスターを押さえる!!


ザッ!!


「グッ!」


勢いをつけて慎二に足払いを掛けてうつ伏せに転ばすと、その勢いを殺さずに背中を片足で踏みつけながら腕を捻り上げて、慎二の頭に銃を突きつける。


「チェック・メイト」


恐怖に引きつる慎二の顔に向けて、不敵な笑みを向けて終わりを知らせてやる。


「っ・・・シロウ・・・」


セイバーがこちらに駆け寄ってくるが、慎二のサーヴァントはマスターを押さえられて何も出来ずに立ち尽くしている。


「俺達の勝ちだな」


勝ち誇った俺の声に、慎二は憎しみの篭った視線で答える。

こいつを押さえた時点で俺達の勝ち、故にその視線は負け犬の遠吠えと同意義のモノだった。
























つづく






補足:アーチャーが掘ってた穴は士郎とアーチャーが隠れていたものです。
   なんと二つも掘っていた。
   そりゃ校庭の地面からいきなり人が飛び出したら驚く。







あとがき


さて、ライダーさんはどうしてやろうか・・・・?






関係無い謎設定


クラス:ライダー

真名:アツシ

身長:162cm

体重:46kg

属性:混沌・善

筋 B+ 魔 B 耐 C+ 幸 A 敏 B 宝 A++


宝具

闇を切り裂く希望の翼 OVERS(ウイングオブサムライ)C++〜EX  ゴッドハンドとの併用により威力up

神が誇りし火の宝剣(ドラグンバスター)A++  悪しきゆめに絶大な威力を発揮する。反英霊に対しても同様

万物宿る精霊手(ゴッドハンド)C〜A++ 呼び出された世界の精霊の多さにより威力が変化


スキル

決戦存在(偽)A

世界に選ばれずして人類の決戦存在となった生きた伝説のみが持つスキル。
人々の希望を力に変える。
どれだけ傷付いてもこのスキルの保有者を信じる者が居る限り、消滅するまで立ち上がり戦う。
信じる想いがより強く、より数が多ければその分だけ各能力が上がる。


カリスマEX

人を統制する才能。
若くして世界を統一した男と同一存在である彼の呪いじみた魅力。
ヒーローであるが故にその人望は絶大。


絢爛舞踏A++

人にして人を超えた者が、屍の道を歩んだ末に辿り着く境地。
世界に夜明けを告げるとさえ詠われる力は人々に希望を与える。
カリスマのランクを二つ上げる効果もある。


冷酷B

自身の本性を隠し、平気で相手を騙し利用する。
アツシの本来の性格であるが、決戦存在(偽)の効力により無効化されている。





強いですね〜。
まぁ、ある世界では彼は全世界の英雄ですから。
このくらいの強さはあるんじゃないかと・・・・。


いつかこのサーヴァントをメインに小説書きたいな・・・・・。

正義の味方志望と本物のヒーローの出会い、みたいな。



おまけ

決戦存在(真)

世界に選ばれた者のみが持つ能力。
無意識に世界の運命すら変えてしまう。
その効力は既に運命の改竄と言っても良い。

6: kazu (2004/04/14 00:54:18)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第二十五話「奪取」





む?あの本は―――――?


「アーチャー」


怪我をしているセイバーを労わり、敢えてアーチャーを呼ぶ。


「何だ小僧」


「ちょっとコイツを捕まえといてくんない?暴れたら手足の三本や四本折っても良いから」


その指示にとてつもなく不快そうな顔をしたが、遠坂に睨まれてすごすごとこちらに歩いてきて慎二を踏みつけるアーチャー。


「ぐぇ」


「いい声で鳴くな。もっと聞かせろ」


アーチャーは憂さ晴らしでもするかのように慎二を踏みつけ続ける。

・・・・・・ストレス溜まってるんだな。

んな事より――――


「何だコレ?」


どうにも気になる魔術書のようなものを拾い上げる。


「か、返―――へぶっ!」


「元気一杯ではないか。もっと楽しませてくれ」


俺が本を拾い上げたのを見て慎二が顔色を変えてもがくが、機嫌の悪いアーチャーからは逃れることが出来ない。

その様子に少し同情するが、解放する気は無いので気にせずに本をぱらぱらと捲る。


「む―――――どのページを見ても令呪みたいな模様しか書かれてないぞ?」


つーか、わざわざこんな本を持ち歩く意味あるのか?

むぅ・・・・。

令呪みたい―――――?


「まさか・・・!」


ある考えに思い至って、慌てて慎二の服の上着を脱がせる。


「何をするんだ!」


「・・・・・マジっすか?」


慎二の抗議を無視して、とある事実に愕然とする。

こんな特例もあるのか?

いや、令呪システムを作ったマキリの末裔だ、これぐらいの事ならやってのけるか―――――?

とりあえず考えても仕方ないので試してみることにした。


「あんた、クラスは何だ?」


無表情に突っ立ってた慎二のサーヴァントに無遠慮に問いかける。


「ちょ、答えるわけないじゃない!」


遠坂が怒鳴り声を上げるが、それを無視してじっと返事を待つ。


「ライダーです」


仮説が的中した。

調子に乗った俺は更に質問を続ける。


「アンタは今の状態で現界に支障は?」


「いえ、特にありません」


「なら何で学校にあんな結界を張った?」


「慎二の指示です。使える魔力は多い方がいい―――と」


ここまで聞いて一息吐く。

セイバーや遠坂、果てはアーチャーまで敵マスターの質問に答えるサーヴァントという異常な光景に固まっている。


「そうか、じゃあ真名は?」


「・・・・・・・」


急に黙り込むライダー。

やっぱ元敵に言うのは良い気分がしない、か。


「真名は?」


「・・・・・・メドゥーサです」


俺の強めの質問に蚊の鳴くような声で答えるライダー。

その光景に、固まっていた遠坂達が動き出した。


「サーヴァントが敵マスターに真名を!?―――――在り得ない」


「な、シロウ――――どんな魔術を使ったのです!?」


「・・・・・・・どういう事だ?」


口々に疑問を口にする遠坂達を、とりあえず手の動きで制する。


「アーチャー、慎二を放してやれ」


「―――――フン、その本はそういった物か。成る程な」


俺の突然の行動に何か閃いたのか、アーチャーは不敵に微笑むと踏みつけていた慎二を解放する。


「バカアーチャー!何やってんのよ!!」


「シロウ、今の貴方の行動は正気の沙汰とは思えない!早急に敵マスターを排除すべきです!!」


まだ理解してない二人――――というか遠坂からは俺が持ってる本は見えてない訳だが―――――が、声を張り上げるが無視する。


「―――――ハッ!馬鹿め!ライダー、衛宮を殺せ!!」


慎二が勝ち誇りながらライダーに命令するが、ライダーは慎二の命令を完全に無視して突っ立ったままだ。


「なにやってるんだよ!命令が聞けないのか!?僕はマスターだぞ!!」


そんな罵倒にも表情一つ動かさないライダー。

いい加減聞くに堪えないので、俺は軽く指示を出す。


「ライダー。慎二を気の済むまで―――――は流石に死ぬから、一発だけ殴っていいぞ」


すると、余程慎二の行動に我慢していたのか、猛烈な勢いで慎二に突っ込むライダー。


ドゴォ!!!


「おごぉ!!!」


ライダーの黄金の右が腹にめり込み、吐瀉物を撒き散らしながら吹っ飛ぶ慎二。

・・・・・・うわぁ・・・・・・。

つーか、そんなに我慢してたの?

だが、その猛烈な一撃を受けても気絶しない慎二も凄いものがある。


「僕は・・・やっと力を手に入れたんだよ・・・・・返せ・・・・返せよ・・・・僕は・・・・・魔術師だ・・・・・間桐の跡取りなんだ・・・」


ズルズルと這いながらこちら向かってくる慎二。

そんな慎二を侮蔑しきった目で見ながら、双剣を取り出し飛び掛ろうとするアーチャーを目で制する。


「なぁ慎二。力がそんなに欲しいか?」


「当たり前だ・・・・・僕はお前なんかとは違って名門の一族なんだ・・・・!」


慎二の侮蔑の言葉にも今は何一つ感情は湧かない。


「普通そうだよな。――――――だが、お前はサーヴァントと言う名の武器を調子に乗って振り回すだけだった。そして強くなったと勘違いした。さっきまでのお前は銃持った小学生と同じだ。悪戯に振り回すだけ、ただそれだけなんだ――――――」


慎二の気持ちは判る気がする。

俺だって力は欲しい。

何だって救える、全てを制する事の出来る力が。

つまるところ慎二と俺の力を欲する理由は、根っこの部分では同じなのだ。

自分の思う通りにならないモノを何とかしたい。

人助けも、支配も、結局の所我を通すという点は全く同じなのだ。

ただ他人の利になるか害になるかの違いだけだ。

実際はもっと違うんだろうけど、結局力とは我を通すためのモノで―――――

その本質に於いては俺と慎二は何一つ変わらない。

よしんば手の届きやすい所に強力な力が、間桐という家が存在したから慎二は歪んでしまったが―――――


「悔しかったら這い上がって来い。お前は魔術を使えない。だが、それ以外を目指す力はある筈だ。違う道で追いついてみろ」


「・・・・クソッ・・・・クソォォォォ!!」


俺の眼に何かを感じたらしく、慎二は悔し涙を流しながら情けなく泣いた。

だが、その涙はさっきまでの力に憑かれた笑顔よりも綺麗なモノだった。






















続く



あとがき

慎二は成長するのか?それは作者にもわからない・・・(ぉ

7: kazu (2004/04/14 00:54:53)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第二十五話外伝「忘れていたモノ」




「悔しかったら這い上がって来い。お前は魔術を使えない。だが、それ以外を目指す力はある筈だ。違う道で追いついてみろ」


その言葉に、不意に涙が溢れ出た。

感涙なんかじゃない、ただの悔し涙が。

僕はただ力が欲しかった。

そうすれば遠坂も僕を認める!

―――――ずっとそう思っていた。

だけど、奴の―――――衛宮の目を見た時に思い出した。

僕は・・・・本当はそんな事の為に力が欲しかったんじゃない。

そうだ、違うんだよ。



その女の子の目は死んでいた。

来る日も来る日も泣いていた。

何故だかわからなくて僕は精一杯励ましたけど―――――

一度も彼女は笑ってくれなかった。

いつも、いつも彼女はお爺さまに連れて行かれて、泣きながら帰ってくる。

ぼくがかわりにがんばるから、さくらをいじめないで――――

そんな叫びは声に出なかった。

僕には才能が無い事はわかっていたし、妹の代わりになるなんて怖くてしょうがなかったから。

だんだん妹が疎ましく思えてきたのもその頃からだった。

死んだ目をしている桜なんて見たくなかった。

だから、虐めた。

泣かせた。

泣かせた。

何時しか僕は何もかも忘れ、桜を虐める爽快感に酔い痴れていた。

桜が中学に上がり、女としての魅力を持つようになると躊躇い無く犯した。

何度も何度も犯した。

それでも全く反応しない彼女が憎くて、尚更辛く当たった。

そんなある日。

桜の目は突然光を取り戻していた。

何故だか気になったが、それ以上に嬉しかったのを覚えている。

だけど、何が――――――誰が原因か気付いた時にはその喜びは憎悪に変わっていた。

――――衛宮士郎。

遠坂に唯一認められ、桜の目に光を取り戻した男。




衛宮は強かった。

そして桜はその強さに憧れていた。

その強さを履き違えた僕は愚か者だったのか―――――

桜が憧れた強さは暴力なんかじゃなくて、心の強さだった。

粗暴で下品、それでも誰からも好かれて何一つ諦めない負けず嫌い。

高校に入学した時に武術系の運動部のエースと試合して周り、勝つまで諦めない―――――そんな奇行が桜の目にとまったのだろう。

その時に付いたあだ名が「道場破りの衛宮」。

そんなバカな事をして周っても、リンチなんかを受けなかったのは奴の直向さ故だろうか?

あるいはリンチされかけても返り討ちにしたのだろうか?

アイツはますます学校の注目を集め慕われた。

そんな折、僕は遠坂に何度も迫っていた。

高校に入ってから女を知り、興奮していたんだと思う。

だけど、アイツが現れた。

衛宮士郎に執拗にくっつく遠坂を見た時に――――何かが切れた。

気が付けば僕は病院のベットの上だった。

それ以来ますます歪み捻じれて、昔の事なんて忘れたままで過ごしてきたのに――――――


衛宮の目が全てを思い出させた。


僕はただ衛宮が羨ましかった。

自分には無い強さに憧れもした。

でもそれ以上に――――――

桜の目に光を呼び戻す役割を奪われたのが悔しかった。

何を今更、忘れて・・・更に追い詰めたのは僕じゃないか。


涙が止まらない。


そうだ―――――


僕はただ、桜に笑って欲しかったんだ。


「・・・・クソッ・・・・クソォォォォ!!」


そう思い至って、絶望の余り声を出して情けなく泣いた。

















二十六話につづく






あとがき

回想部分のBGMはサントラの「消えない想い」を推奨。

8: kazu (2004/04/14 00:55:10)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第二十七話「目を逸らしてきたモノ」





ユメを見ている。


屍の丘と、赤い焼け野原のユメを――――――


何もかもちぐはぐで、何一つ結びつかないユメを同時に見ている。


「王は人ではない」


その言葉に反応したかのように衛宮キリツグが口を開く。


「人並みの感情ではとても耐えられない。殺すしかないのだから―――――」


ふざけるな、そう叫びたかった。

だけど―――――自分が好いている少女が、悲しい目で俺を見ていた。


「1000の民の為に村を一つ焼き払った。疫病を断つ為に一家を家ごと焼いた――――――」


白痴のように呟く金髪の少女が、自らを切り刻む。

聞きたくなかった。

それはきっと紛れも無い事実。

全て自身がセイバーと呼ぶ少女の所業なのだから。


「何故そんな辛そうな顔をする―――――?」


不思議そうなキリツグが癇に障る。

酷く不快で、それでいて自分の中の何かが必死に警鐘を鳴らしていた。


「お前は――――」


言うな――――


「お前だって――――」


やめろ!言うなっ!!!


「俺達の同類だろ?」


その言葉を聞いた瞬間、何かがガシャンと耳障りな音をたてて壊れた。

目の前が白く滅減する。

たまらなく不快で吐き気が止まらない。

なのに、俺自身はまるで当たり前のように受け止めている。


「当たり前だ。お前はもうずっと自覚してた―――――」


俺に良く似た誰かが言う。


「それから目を逸らして蛇蝎の如く嫌い、それを否定する―――――――――まるで餓鬼」


ああ、そうか―――――

俺は、衛宮士郎はあの日から一歩も進んでなかったんだ。

そんな簡単な事に気付いて、どうしようもなくおかしくてワラッタ。



















ふと気が付くと、僕を心配そうに覗き込むセイバーと目が合った。

また膝枕をされているようだ――――――

案外彼女のお気に入りなのかもしれない。


「シロウ・・・・?」


気遣わしげな彼女の声が降って来る。

なぜだかわからない僕はセイバーを不思議そうに見返すだけだ。


「何故、泣いているのですか?」


言われて初めて気が付いた。

頬を伝う熱い雫と、イビツに歪められた口元に。

おかしい、これではまるで狂人ではないか―――――

なのに、何故こんなにも涙が溢れるんだろう?

まるで、何かを置き去りにしてしまったかのような――――――


「ごめん、セイバー。僕は大丈夫だよ・・・・・大丈夫なんだ・・・・」


自分に言い聞かせるように、確かめるように言うと起き上がる。


「シロウ・・・?今自分の事を僕と――――――」


「あ?何言ってんだよ。んなガキみたいな一人称使うかよ」


そう反論する俺を、怪訝そうな目で見つめるセイバーを無視して居間に向かう。

慌てて付いてくるセイバーの気配を確認すると少し歩みを早める。

が――――


「士郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


不意打ちの虎の咆哮におもいっきりこけた。

ズドドドドド、と牛の大群でも突っ込んでくるような足音が近づいてくる。

スペインの牛追い祭りってこんな感じなのかなーと、ちょっと現実逃避している間にも足音は近づいてくる。

あ、来た。


「どうなってるのよぅ!人を住ませるなんてお姉ちゃん聞いてないよ!しかもその内三人が女の子なんて駄目だよーーー!」


と、俺の襟首を掴んでガクンガクと振り回しながら一気に捲くし立てる。

・・・・・遠坂の奴が話したか?


「落ち着け。必要だから住ませるだけだ。文句があるなら彼女達がいる間来なくて良い」


これ以上かき乱されるのも嫌なので、敢えて心を鬼にして言う。

その言葉に急にがーねぇは俯くと、涙を零しながらしゃくりあげ始めた。


「っぐ・・・だってぇ・・・士郎・・・女の子三人と裸で寝てたもん・・・」


ぐっ・・・・・・思い出したく無い事を・・・・。


「あー、確かに俺はあの三人とそういう関係だが、決して男女の感情とかそんなもんじゃないぞ?」


嘘は言いたくないので極力ソフトに言う。

情けない・・・・・こんな言い訳したくねぇのに。


「・・・・うっ・・・・」


あ、やば。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」


虎、大爆発。

・・・・・・嘘ついたほうが良かった?


「とにかく納得してくれ。大丈夫だ、何があってもがーねぇから俺が離れることなんてあるわけないんだ」


多分それが不安なんだと思う。

がーねぇはこう見えて誰かを失う事を人一倍恐れている。

だからこそ俺の家に毎日来ているのだ。


「じゃあ・・・・・キス」


はい!?

今なんかとんでもない空耳が・・・・

まぁ・・・・・それで信じてもらえるなら良いか。


「しゃあないな・・・」


そう呟いてがーねぇの頬に唇を近づける。

が―――――

あろうことかこの虎、顔を傾けて俺の唇に吸い付きやがった。

チュッと、こっ恥かしい音を立てて俺から顔を離すがーねぇ。

ちなみに俺はあまりのショックに石化。


「あははは♪ご馳走様♪じゃあねぇ〜」


と、泣いたカラスがなんとやらのノリで軽やかに駆けて行くがーねぇ。


「なななななななな・・・・」


俺はマトモに言葉が紡げない。

が、事態はそんな暢気なことを言ってる場合ではなかった。


「シロウ?随分と嬉しそうですね――――――」


感情の篭らないセイバーの声。

それが妙に恐ろしくて再び硬直する俺。

怖くてセイバーの方に向けない。

が、何とか勇気を振り絞って振り向くと――――――

そこには能面のようなセイバー様のお顔が。


「鼻の下が伸びてますよ?」


と、ウフフフフ、と笑いながら俺に微笑みかける。

ちなみに当然の如く目は笑ってない。


「え、とだな・・・・・ってか、何で怒って――――――」


言葉が途中で途切れた。

ああ俺のバカ・・・・。

何でか知らないが言ってはいけない事を言ってしまったらしく、セイバーこめかみにピシリと青筋が浮く。


「えーと、だ・・・・・・なんか知らんがおちつけぇぇぇぇぇぇ!!」


それだけ言うと真っ先に逃げ出す。

その直後にセイバーの怒声が聞こえたが、怖いので聞かなかったことにした。







???視点





「グッ・・・・・この程度の義手じゃ魔力は通らないか・・・・」


幾度と無く試した事だ。

どれだけ実物に近い義手でも魔力が通らなければ意味が無い。

一度協会に帰ればそれなりのモノがあるだろうが、今この町を出る気は無い。


「あの野郎――――!」


私の左手を奪った奴に対する殺意が漏れる。

今回の仕事が上手くいけば、かなりの収入になる筈だった。

それがもうパーになりかけている。

だが、それ以上に悔しくてたまらないのだ。

未だ痛む左手がその悔しさを増大させる。


「このままでは済まさんぞ――――――言峰」














つづくらしい







おまけ

アーチャーに言わせたいセリフ

「――――我が性根は捻じれ狂う」

9: kazu (2004/04/14 00:57:18)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第二十六話「強引グ・マイウェイ」






あの後慎二はすごすごと家に帰っていった。

それはいいんだが――――――

新たに問題が発生した。

そのお陰で俺達はまだ校庭にいた。


「で、何考えてるのよアンタは!?」


もう何度目になるかわからない罵倒が遠坂から投げつけられる。


「・・・・・」


セイバーに至っては無言だが、殺気とか怒気とかがもうなんか凄い事になっている。


「敵サーヴァントを連れ帰るって――――――アンタ脳味噌詰まってないの!?」


そう、何故二人が不機嫌かというと―――――

俺の後ろに静かに控えるライダーが原因だったりする。


「そりゃ、戦力は多い方が良いに決まってるからだ。令呪らしきものも奪ったしな」


と、言いながら本を遠坂の目の前に突き出す。

突き出された本を睨みながら怪訝そうな顔をした遠坂だが、やがて諦めたように溜息を吐く。


「これがさっきのタネ?・・・・真名を自ら明かした事から考えても効果はあるんでしょうけど・・・・」


言外に「裏切らないとは限らないのよ?」、と訴えてくる。

それはもっともの疑問なので、ライダーに意見を聞いてみる。


「で、お前さんは裏切る―――――じゃなくて、こっちに付く気はあるのか?」


「貴方が令呪を手にしている以上、そうするしかないのが現状です」


どうやら渋々らしいが味方になってくれるらしい。

無表情だから全然わかんないけど。


「口では幾らでも言えるわよ」


と、ライダーを睨みつける遠坂。

どうしても気にいらないしい。

セイバーも同意見の様でこくこくと頷いている。

どうでも良いがお前ら、ライダーの胸を見ながら話すのはヤメレ。


「無いものは無いんだ。嫉妬はみっともな―――――――い゛!?」


遠坂さん、踵で脚の甲踏むのは反則です。

それからセイバーさん、謝るからその不可視っぽい剣を収めてください。


「いつつつつ・・・・まぁとにかく、コイツを仲間にするってのは変わんないぞ。戦力は多い方がいい」


「何言ってるのよ。サーヴァントは多ければいいってモンじゃないわよ」


俺の強引な発言に鋭く切り返す遠坂。


「ああ、その辺は問題ないだろ。さっきもライダーは現界に支障は無いって言ってたし。前のマスターは魔力が無い慎二――――――つまりコスト0ってコトだ。何故かな」


なんでか知らないが、命令しても特に魔力を持ってかれたりしないのだ。

その癖ライダーは魔力に満ちている。

セイバーと全力で打ち合ったにもかかわらず、だ。

その辺は謎だが考えない事にする。

どーせわかんねぇし。

まだ何か言いたそうな遠坂だったが、キリがないので話を切り上げてライダーに指示を出す。


「ああ、忘れてた。ここに仕掛けた結界を解除してくれないか?」


「はい」


ライダーは了承しただけで特に動きを見せない。

だが、次の瞬間には心無いしか空気が軽くなった気がした。


「・・・・・はぁ・・・・まさか結界まで消すなんてね・・・。まだ信じないけど一応認めるわ」


遠坂は何故か悔しそうにそっぽをむいてライダーに言う。

セイバーの方はまだ納得できないのか、不機嫌なオーラを発している。


「問題無いさ。裏切るようなら始末すれば良いだけなのだからな」


完全に機嫌が悪い女性二人組みにアーチャーが物騒な事を平然と言い放つ。

その言葉に多少気分を害したのか、ライダーが微妙に顔を顰める。


「ったく、空気読めよアーチャー。仲間になった以上家族として扱う!無論セイバーも遠坂もアーチャーもライダーも、だ!!」


悪くなった空気を変える為に、以前から言おうと思っていた事を言う。


「嫌だ。私はその様な馴れ合いはしない」


そんな事を言うアーチャー以外は概ね満更ではない様子。

意外な事にライダーですら少し、ほんの少しだけど嬉しそうだ。


「アーチャー、お前の意思は関係無しだぞ?どんだけ嫌がっても家族扱いするからな。よろしくな、ア・ニ・キ♪」


俺の言葉にもの凄く嫌そうな顔をするアーチャー。

意見を言っても聞いてもらえない事に気付いたのか、そのまま「実家に帰らせて貰いますわ!」みたいな感じで霊体になった。


「かっかっかっかっかっ!愉快愉快」


アイツに対する嫌がらせは何故こうも楽しいのだろう?

そんな事を考えながら馬鹿笑いする。

そんな俺の姿を呆れたように見る遠坂と、何故か優しい微笑を向けてくるセイバー。

遠坂の視線はともかく、セイバーの微笑が妙にくすぐったくいので、俺は逃げるように急いで顔を引き締める。


「所でライダー、その目隠し取ったら?その方が可愛いぞ?」


「へっ・・・は!?・・・ぁう?」


俺の誤魔化しに近い何気なく放った一言に、さっきまでの無表情が嘘だったかのように顔を真っ赤に染めて後ずさるライダー。


「い、今なんと・・・・?」


「目隠し取った方が良いぞって」


「そ、その後です・・・!」


何故か必死なライダーに少し気圧されながらも、言った言葉を何とか思い出す。


「その方が可愛いぞ・・・って」


「な、何故私を可愛いと・・・?」


何故か未確認生物を発見した隊員みたいな顔で俺に詰め寄るライダー。

?――――おかしな事を聞くな。


「真っ赤になって慌ててる姿も可愛いじゃん。それ以前にその冷たい様でその実結構ぽわぽわしてる雰囲気が可愛いし」


取敢えず聞かれたので、素直に思っている事を言う。


「はぅ・・・」


俺の言葉を聞いたライダーは、もうこれでもか!って程真っ赤になって俯いてしまう。

身長の高いライダーのこんな姿を見ると、何故だか無性に頭を撫でてやりたくなる。


「はっはっはっはっ、照れるな照れるな。そんな姿も可愛いぞ」


と、やっぱり我慢するのもアレなので、ライダーのサラサラの髪をグリグリと力強く撫でる。

すると、今度こそ頭が完全に頭が茹ったのか、「・・んぅ・・・」と、謎の呻きを残し完全に硬直してしまう。

なんつーか、楽しい。

からかいつつも可愛がれる―――――これが噂のアニマルセラピーか!?


「・・・・・・衛宮君、セクハラよ?」


ほのぼのとした空気を作っていると、それを侵食する地獄の魔王が侵攻してきた。

ドドドドド・・・って効果音が流れてもおかしくないオーラだ。

ってかアーチャーが実際に効果音鳴らしてるし。

何処から出したんよ、そのラジカセ?

軽く現実逃避をしてみるが侵攻は止まらない。


「いっぺん死んで来い!!!」


メシィ!


遠坂の壮絶な握力で頭蓋を掴まれ、そのままブン投げられる。

・・・・・・・・・・・・・ホントに人間?

遠坂の馬鹿力にそんな疑問を抱きながら、重い衝撃と共に俺の意識は消し飛んだ。












つづくらしい











あとがき


いい加減酒飲みながら書くのやめようよ・・・・俺

10: kazu (2004/04/14 00:57:39)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第二十八話「凸凹コンビ」







「あうあ〜・・・・・」


「どうしたのだ、衛宮?――――――何時もは飢えた犬畜生の如く、飯を喰ろうておるお主らしくないぞ」


一成が非常に失礼な事を言うが、軽口で返す気力も無い。

今朝の疲れを昼休み―――――つまり今まで引き摺ってしまった。

今朝の騒ぎは酷いものだった。

気絶から目が覚める→虎に食われる→セイバー謎の暴走→遠坂参戦→俺死亡。

何気にライダーの姿を見てないが霊体にでもなってるんだろうか?

一応令呪は懐に持ってきているから不意討ちって事は無いだろうし。


「所で衛宮、モノは相談なんだが―――――」


「タンパク質が欲しいなら緑黄色野菜を寄こせ。それ以外の野菜は受け付けん」


ぐったりしながら飯をもそもそと喰ってると、動物系の栄養素が常に不足している小坊主からトレード要請があった。

なぜ緑黄色野菜なのかは謎だ。強いて言うなら今はそんな気分だから。


「衛宮ー、俺は玉子焼きとこの購買製の一口コロッケの等価交換を所望する」


「あ、私はこのウィンナーとひじきの交換ー」


と、次々とトレード要請が挙がる。

いつもコレのお陰で、味はともかく腹いっぱい喰える。

親指をビッと立てて了承の意を送ると、次々と弁当箱の中身がおかず一品と引き換えに増えてゆく。

んー、見た目はアレだが豪華な弁当だ。

ちびっと元気が出てきた。


「あー、そういや一成」


「む、何だ?」


そういえば伝えねばならない事があったのを忘れてた。

どうでもいいが一成、そんなに嬉しそうに冷しゃぶの肉を食うな。

なんかすっごく可哀想な家の子供に見えるから。


「暫く備品の修理は待ってくれー」


「む、別に構わんが何故だ?」


「気分が乗らん」


ズバリ、と言ってやると一成は「衛宮らしい」と、かんらかんらと笑いながら了承してくれた。

つーか一成、それじゃ俺がいい加減な奴みたいじゃねぇかよ。


「フム、元よりこちらが一方的に頼んでいた仕事だ。別に気にするでない」


「や、気にしてねぇぞ?元々好きでやってた事だし」


違いない、と一成にしては珍しくバカ笑いをする。

こんな姿を一成ファンの一年生が見たら凄い事になりそうだな。

と、考えながら弁当を食ってると、クシャッという異色の感触と味が口に広がった。

饅頭だ―――――しかも包装紙付き。

誰かがトレード材料として放り込んだんだろう。

誰かっつーか、こんな馬鹿な事するのは―――――――


「美綴、せめて漉し餡にしてくれ」


「問題はそこなの?」


と、こんな事をした本人の癖に呆れたような視線を投げつけてくれるレズッ娘期待の星、我らがヅカキャラ美綴お嬢。


「ヅカキャラ言うな。この赤毛」


なんて言いながら冷静に人の弁当に自分が飲んでいたコーヒー牛乳をぶっかけてくれる。

どうやら口に出てたらしい。

不覚、と反省しながら弁当箱を見つめると茶色くなった愛しの白米様が。

んーこれってまさか・・・・いやん間接キッス♪

って―――――――


「何しちゃってくれる!?メインディッシュの白米様を貴様如き下賎のコーヒー牛乳で汚すとは―――――――お前の矢の先端を全部吸盤に変えるぞゴルァ!!」


「ん?間接キスじゃ足りないか?何なら直にしてやろうか?」


と、俺の文句を聞き流しズイッと顔を近づけてくる美綴。

えらく男らしい。

そんな光景に教室の視線が一気に集まる。

「ディープだディープ〜」なんて無責任に言ってる後藤、後で電気アンマだ。

ついでに一成、顔を赤くしてないでこの馬鹿止めろ。

まぁ、一成に負けないぐらい俺の顔も赤い訳だが。


「赤くなっちゃって―――――――初心なんだねぇ、衛宮」


と、やっぱりおっとこまえな笑顔で微笑む美綴。

いい加減悔しいので反撃に出ることにする。


「無理するなよ、ファーストキスはまだの美綴ちゃんよ。ついでに初恋の人は小学校の頃の先生らしいな」


「な、な、な―――――――!?」


姐さんが混乱の極みだ。

もう真っ赤。

正気に戻った時が怖いので急いで飯を掻き込むと、席を立ち廊下に逃げる準備を始める。


「一成、後は任せた」


「え?う――――」


そう言って一成の肩をぽんと叩いてダッシュ!


「衛宮ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


俺の背後で美綴の咆哮が窓ガラスを震わした。

許せクラスメイトよ、俺は自分が一番可愛いのだ。


















おまけ




「衛宮ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


ブー!!


と、正面から牛乳の広域放射を受けた。


「と、遠坂さん大丈夫?」


と、慌ててハンカチを取り出す三枝さんを、やんわりと押しとどめて冷静に状況を判断する。

衛宮?そう、士郎が原因なのね――――――


「すいません三枝さん、私急用思い出しちゃって」


「あ、そうなんですか?」


ウフフフフフフ・・・・・・・・。


「うわっ、怖っ!」


「シッ、静かに。動かなければやり過ごせる」


私ゃ恐竜か。

喉元まで出かかった言葉を飲み込み、極力笑顔で三人に別れを告げて廊下に出る。


「最近掻き乱されてイライラしてたのよ、衛宮君。――――――ふふふふ」


さて、あの馬鹿にこの怒りをトコトンぶつけてやろうか。




















つづくらしい





あとがき

今回はまぁ箸休め的話です。

11: kazu (2004/04/14 00:57:55)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第二十九話「輝ける強さ」






私は穢れている。

蟲に犯され、兄に犯され、呪いに犯され――――――

私の体には綺麗な場所なんか無い。

心は既に腐り落ち、何も感じない。

なのに、なんで―――――

なんであの人の背中にこんなにも惹かれるのだろう?




初めて出会ったのは、兄を迎えに行った時だった。

あの人は体中に痣をつくって体育館の横で転がっていた。

初めは驚き取り乱して彼の体を揺すった。

すると彼は、短く声を上げて起き上がると、そのまま何事も無かったかようにまた体育館の横の武道場に入っていった。

私が間桐になって初めて姉さん以外の人に興味を持ったのもその時だ。



ただ何となく、彼が何をしているのか知りたくて武道場を覗いた。

そこでは彼が体格の良い胴着姿の人と、リンチに近い試合をしていた。

初めは虐めだと思った。

でも、周りの声は彼を野次る声ではなく、彼を止める声だった。

彼を攻撃している相手すら止めようとしていた。

それすらも聞かずに彼はひたすらに立ち向かっていた。

彼が対峙するのは三年生、しかも体格から言って空手部では上位の実力者だろう。

絶対勝てないってわからない程頭が悪いわけではないだろう。

なのに、何度痛打されても立ち上がる。

何度周りが止めても、「俺はまだ立てる。なら問題無い」と言ってやんわりと押しのける。

その全てが理解できなかった。

どうしょうもなく愚かだと思い、私は彼を馬鹿だと侮り始めていた。

それでも――――――

彼に対する興味は消えない。

やがて相手をするほうも呆れたのか姿を消し、静まり返った武道場には大の字になって荒い息を吐く彼と、入り口に立ち尽くしたままの私の二人きりになった。


「どうしてあんな馬鹿な真似を?超えられない困難だってあるんですよ?」


知らずに私は声を発していた。

言ってしまった後に、自分がどれだけ失礼な事を言ったか気付き猛烈に後悔した。

だが、彼は私のそんな言葉に気を悪くした様子も無くすんなりと答えてくれた。


「ン――――、別に困難に立ち向かうとかカッコいい事じゃなくてさ、相手が同じ人間なら勝てない道理は無いだろ?だから挑んだんだけどなぁ・・・・・今回勝てなかったのは俺の修行不足さ。我ながら不甲斐ない」


と、まるで平然と言ってくれた。

それは酷く当然の事で、その答えに酷く失望もした。

ああ、この人は本当に逃げられない事態には陥った事は無いんだな――――と。

私は彼に何かを期待していたのかもしれない。

もしかしたら彼ならこの無色の世界に色を加える方法を知っているかもしれない、そんな愚かな期待をしていたんだろう。


「おいアンタ、俺を馬鹿だと思ってるだろ?言うだけは簡単ってな」


帰ろうと彼に背中を向け時に、背中越しにかけられた声に思わずドキリとした。

まるで心を覗かれたような、そんな恐怖。

その様子が余程わかりやすかったのか、彼は苦笑しながら話を続ける。


「気にすんな、怒っちゃいねぇよ。――――――悟った気で全部諦めるのは簡単さ。ただ、何もかも諦められる程俺は弱くないんでな」


傲慢とも取れる言葉だった。

だけどそれ以上に、私には彼の姿が輝いて見えた。

一瞬、その一瞬で世界に色が蘇った。

言葉自体は愚かな、子供の言葉だった。

だけど―――――

その目には絶対的な強さがあった。

その姿に、素直に憧れた。

この人の様になりたいと、その為なら何を投げ打っても良いとすら思えた。

それ以来は彼を遠くから見ているだけで楽しかった。

いつかあの人に追いつくんだ、そう誓ってずっと兄さんの虐めにもマキリの拷問にも耐えた。

それでも彼は眩し過ぎた。

この穢れた体で近づく事なんて、畏れ多くてとても出来そうにない。

もし、私の穢れが彼を穢したら――――――

それだけは耐えられない。

彼は私の希望の雛形であり、同時に想い人でもあるのだ。

だから、私が俺に並び立つその日まで耐えるしかないのだ。

だけど―――――


姉さん、何故貴方は彼の隣に居るんですか?


私は嫉妬で穢れてゆく心を抑えながら今日も彼を見続ける。

彼を追いかける姉さんに僅かな憎しみを持ちながら―――――








「――――――衛宮先輩」






なんて浅ましいのだろう。

私が彼を勝手に想っているだけなのに、姉さんは何も悪くないのに。

それでも、一度穢れてしまった心は際限なく穢れ始める。

姉さんに微笑まないで

嬉しそうに話しかけないで


際限なく広がる嫉妬が恐ろしくなる。


お願いですから―――――――

私をここから救い上げてください。





「・・・た・・けて・・・・・助けてください・・・・衛宮先輩」








衛宮先輩―――――――







早く私を見つけてください。
















続く







あとがき

何気に何処かにありそうなストーカー的桜

12: kazu (2004/04/14 00:58:13)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第三十話「ライダーさんの憂鬱」





「サクラ」


アーチャーのマスターに追われているシロウをじっと見つめるサクラに、霊体のまま声をかける。


「ライダー、何処に行ってたの?兄さんは令呪を持っていなかったけど・・・・」


「他のマスターに奪われました。奪ったのはエミヤシロウ、セイバーのマスターです」


衛宮士郎、その名前を出した途端サクラは落胆したような、嬉しそうななんとも言えない表情をする。


「そう―――――衛宮先輩は参加しちゃったの・・・・。でも良かったわ、令呪を持っているのが先輩で」


何処か安心した表情のサクラは、マスターとしてあるまじき言葉を吐く。


「何故ですか?―――――今の言葉はおかしい」


流石に私も不快に感じたので、少し強めにサクラに問いかける。


「この戦争が終わるまで先輩を守って」


私の問いには答えずに、申し訳なさそうに言うサクラ。

それは、つまり――――――


「私に聖杯を諦めろ、という事ですか?」


声に殺気を篭める。

それでも、わかっていた事だ。

彼女は聖杯を求めないし、仮のマスターであった彼女の兄のシンジ程度では生き残れないという事は。

結局私は呼び出された時点で聖杯を手にするチャンスなんて無くしていたのだ。

それでも、サクラの元で戦えるならいいと思う自分が居た。

だからこそ、今の彼女の命令は許せない。


「訂正してくださいサクラ」


篭められた殺気はただの脅しだ。

元々彼女を殺す気なんて無い。

だが、彼女は私の殺気に表情一つ動かさずに、じっと私を見つめる。

このまま拒否を続ければ彼女は令呪を使うだろう。

つまり―――――――


「―――――――仕方がありませんね。不本意ですが了解しました」


私が折れるしかないのだ。

私の言葉に嬉しそうに微笑むサクラはズルイと思う。

あの、心が死んでしまったような少女が私の一言で笑うのだ――――――

もっと、笑わせてあげたくなってしまうではないか。

だから、サクラはズルイと思う。

それ以上に、本当に彼女を笑わせているシロウはズルイ。

彼がただ存在するだけで彼女は喜ぶのだから――――――








士郎視点




姉さん事件です。

ってゆーか今現在俺がヤバイです。


「なぁ遠坂・・・・・人間は解り合える生き物だとは思わないか?」


と、俺の後ろを歩く遠坂に持ちかけるが無視された。

今、俺と遠坂は普通に歩いている。

一見、だが。

遠坂も学校で猫を被っている以上、走って追いかけるなんて事はしないからだ。

だったら走って逃げればいいのだが、そんな事をしたら後が酷い。


「うふふふふふ・・・・衛宮君、いい加減止まらないと知らないわよ?」


ものごっつ猫なで声が背筋を凍らせる。

周り曰く可愛い声が、今ではただの死神の呼び声だ。


「いや、だから何で怒って・・・・遠坂さん?」


と、なにやら不穏な気配を感じて振り向くと、遠坂がプルプルと震えて俯いていた。

――――――最悪だ、いつの間にか雑木林に来てしまった。

どうやらチェク・メイトって事らしい。


「アンタは一体なんなのよ!?人が悩んでる時にふらふらと能天気に!!えぇいそこに直れぃ!その能天気なアホ面を気の済むまで殴れせろ〜!!」


遠坂姉さん大爆発。

つーか支離滅裂です。

とりあえずその強化した拳を下げてください。

いや、ホント謝りますから。


「落ち着け遠坂!人は解り合えるんだ!ララァだってそう言ってたぞ!」


「ララァって誰よ!!」


嗚呼、効果なし。

ニュータイプの名が泣くぞ、遠坂。

と、即死必至な拳を避けながら思う。

そんな感じで暫く俺の命を賭けた組み手を続けていたが、ガサリと落ち葉を踏む音に、じゃれあいはあっけなく終わった。


「魔力を感じたから来てみれば―――――餓鬼の痴話喧嘩か」


と、呆れたように呟く男装の麗人が無警戒にこちらに歩み寄る。

その歩みは無防備に見えて隙が無い。

俺達だけで挑めば間違いなく負ける――――――それ程の使い手だ。


「―――――魔術師?」


身構えて鋭い眼差しで問う遠坂だが、既に必要とあらば逃げる算段でいるのが気配でわかる。

遠坂に睨まれている女性は、そんな思惑などどうでもいいかのように涼しい顔をしている。


「貴方達はマスター?」


と、まるで今日の晩飯でも尋ねるように軽く聞いた。

咄嗟にアーチャーを実体化させる遠坂に続き、俺も銃を投影する。


「落ち着け。私は敵対する気は無い。むしろお前達に協力したいだけだ」


と、平然と言ってのける女。

何が目的か読めないので、取敢えず銃は出したままで対峙する。


「へぇ――――そんなオメデタイ事を信じるとでも?」


知らずに、自分でも驚く程冷たい声が出た。

が、女はそんな声に表情一つ変えない。


「何、私は仕事を完遂したいだけだ」


その言葉に遠坂が初めて警戒を少し解く。


「協会ね?」


「ああ、その通りだ。私の名はバゼット・フラガ・マクレミッツ。今回は聖杯戦争を最後まで見届ける事が任務だ」


二人は当然のように話しているが、彼女の言い分はおかしい。

ただの監視なら何故こちらに接触してきたのか――――――


「今回君らに接触した目的だがね。あるマスターを殺したい、むしろそちらが本命だ」


彼女は何でもないように軽く物騒な事を言ってのけた。























続くらしい



あとがけ

バゼット登場。さてどうなるのやら・・・・

何気にこの話、夕食のカレーを作りながら書きました(ぉ
キーボードが玉葱臭い・・・・

13: kazu (2004/04/14 00:58:26)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第三十一話「旧知」




「今回君らに接触した目的だがね。あるマスターを殺したい、むしろそちらが本命だ」


そう告げた彼女の目には確かな憎悪が浮かんでいた。

魔術師である以上そんな理由で動くとは考えにくい。

だが、それは普通の魔術師の話。

彼女にその考えは当てはまらない。


「そうか。なら働き次第ってトコだな。怪しいと思ったら容赦はしない」


いい加減この茶番にも飽きてきたので締めくくるように言うと、そのまま遠坂に視線で確認を取る。


「私は反対なんだけどね―――――――ま、いいわ。好きにしなさい。私か信用しなければいいだけの話なんだしね」


と、一応は了承してくれたものの、やっぱり不機嫌そうに言う。


「簡単な方針はソッチで話し合って。それと、バゼットさん?おかしな真似をしたら命の保障は―――――」


「言われなくても。私とてサーヴァントも居ないのに、マスターに手を出すなんて愚かな真似はしないよ」


遠坂の捨て台詞に、不敵に返すバゼット。

その返答が気に入らないのか、遠坂はズカズカと大股で校舎の中に入っていった。


「久しぶり。――――で、バゼット。その左手は誰に?」


と、妙な違和感を発する彼女の左手を指差しながら聞いてみる。

遠坂が去ったので、お互い芝居をするのをやめている。


「フン―――――旧知の代行者さ。騙まし討ちに遭ってね」


珍しいな、彼女がそんな手に掛かるなんて―――――


「――――で、士郎は何をしてるんだ?お前さんは確か教会の連中から逃げ回っていた筈だが?」


「とっくに関係は改善済みだ。偶々ある人に助けられてね―――――その人が教会側に掛け合って、手配を取り下げてくれた」


まさか協会の依頼で三咲町を調べに行っただけなのにあんな事態に陥るとはな。

いや、あれ正に地獄に仏だった。


「へぇ?死徒を助けて教会を敵に回して逃げ延びたんだ?」


「まー、実際は助けた死徒がその人の親しい人らしくてな。今現在はその人のお屋敷で匿われているそうだ」


つーか、普通刃物持った奴に女子高生が追いかけられてたら助けるだろ。

その時は相手が代行者だなんて気付かなかったし―――――代行者ならわかり易い服を着ろってんだ。

まぁ、夜じゃなくて夕方だったから仕方ないのかもしれんが。

にしてもあの代行者強かったなぁ・・・・・・逃げるだけで精一杯だった。


「お前は対人戦に於いて便利だからな。頼りにしてるよ」


「んー、最近はそうでもないぞ?良い武器仕入れたし」


と、互いに利き手で握手する。

彼女との出会いは、親父の死が切っ掛けだった。

形式だけの葬式での出会いが一度目の出会い。

そして、次に会ったのは俺の初仕事―――――死都の浄化作業でだった。

どうやら彼女は元同僚のキリツグのガキが、フリーで仕事始めたから見物したいってのが理由でその仕事を受けたらしい。

俺達の仕事は既に親が逃げ去った後の街に残留する死徒の掃討。

既にただの木偶に成り下がったヒトガタとは言え気分の良いものではなかった。

ちなみにこーゆー仕事をしているって事は、遠坂達は知らない。

言ったら何されるかわからんし。


「吸うか?」


スッと煙草を一本差し出される。

彼女は既に口に咥えてライターを探っている。

正に早業だ。


「あー、貰う。遠坂に強制的に禁煙させられてストレス溜まってたんだよ」


俺が煙草を吸い始めたのは仕事を始めてからだ。

煙草の精神安定効果はなかなか頼りになるのだ、特に長時間死都で過ごすとなるともう必須だ。


「ぷぁ〜・・・・うめぇ・・・」


久しぶりの煙の味に、体が弛緩する。

学校で煙草ってのもアレだが気にしないことにする。

そのまま暫くお互い無言で、午後の授業は空を見上げて煙草を吸って過ごした。










おまけ



「・・・・・・コレはどう使えばいいのでしようか?」


私は今、レンジと呼ばれる箱の前でシロウが作っておいてくれた昼食を手に立ち尽くしている。

シロウ曰く、コレを使ってから食べて欲しいとの事。

簡単な説明で、ボタンを押せば使えるという事は聞いたのたが――――――

押す場所がわからない。


「取敢えずやってみましょう」


いい加減埒があかないので、取敢えず箱の中に料理を詰め込む。


「えーと・・・・・・時間?」


どの位やればいいのかわからないので、以前キリツグが主食としていたカップラーメンとい食べ物を参考にすることにした。

三分と書いてある場所にメモリを合わせて、スタートと書かれたボタンを押して出来上がりを待つ。



一分経過


中の焼き魚から良い匂いが発せられるが、まだ時間が残っているので我慢。


二分経過


中からシュウシュウと油が滲み出る音がするが、まだ時間ではないので耐える。


三分経過


やっと完成したらしく、奇怪な音を発して動きを止めた箱から料理を取り出そうと手を伸ばすが――――――


「っ!―――――熱いです・・・・」


あまりの熱さについつい涙目になってしまう。

魚から滲み出てジュウジュウと音を立てる油が凶悪だ。

こんなものを掴むなんて――――――

結局私はどうすることも出来ずに、料理が冷めるまでただ立ち尽くした。


















続く





あとがき


士郎が三咲町に行ったのは一年前です。

志貴は遠野家ルートを通りつつしっかりとシエルとアルクのイベントをこなしたそうな。

なのでサチ-ンとは殺し合ってません。

ついでに士郎を助けたのは志貴君です。

14: kazu (2004/04/14 00:58:47)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第三十二話「限界突破」




「さて、んじゃあ夜の英霊釣りを始めますか」


あの後バゼットは自身が滞在するホテルに戻っていった。

協力と言っても常時べったりって訳じゃないそうだ。

そんなこんなで機嫌の悪いままの遠坂とサーヴァント三人で、夜の敵探しに街へ繰り出している。

今回は二手に分かれての行動になるため、遠坂にはライダーを付けてある。


「何で私にライダーを?アンタよりは戦えるわよ」


と、ぶちぶちと言う遠坂だが、これには一応理由がある。

遠坂の受け持ちは新都―――――

あそこにはホテルやなんかが密集しているので、外様のマスターはそこが活動拠点の筈だ。

遭遇率で言えば遠坂の方が高いのだ。

本来は俺がそちらに行きたかったのだが、遠坂の口に負けて結局こうなった。

それから何時もの交差点で分かれ、俺とセイバーは特にアテも無く歩いている。


「柳桐寺の方はどうするんです?」


と、突然セイバーが口を開く。


「あー、それな。戦力的には良いんだが、まだはっきりと調べがついてない以上踏み込むのはアレだ。警察沙汰なんて勘弁だからな」


確信が持てるまでは迂闊に攻め込めない。

もしただの外人女性だった場合は色々と面倒だし。

俺の発言にやっぱり不満そうなセイバーは、不機嫌そうに口を噤んで大股で歩き出した。


「あ、あのなセイバー――――」


「シロウ」


突然止まったセイバーに少し言い訳しようと思い話しかけたが、その言葉を殺気の篭った声で遮るセイバー。

・・・・・・死刑ですかセイバーさん?


「サーヴァントです」


「ん?令呪に反応は無いぞ?」


アレか?ランサーみたいに単独なのかな?

そう考えるが、そんな思考を隅に追いやり勝手に走り出したセイバーを追う。


「ばっ、セイバー!そこ人ン家だ!!」


何の躊躇いも無く他人の家のドアを蹴破り、家に駆け込むセイバー。

仕方がないので俺も後に続く。

すると、居間らしき一室の前でセイバーが立ち止まる。


「おいセイ――――――」


喉が詰まった。

吐き出しかけた言葉はそのまま意識から零れ落ち、俺の心が慌しく活動を始める。


「ほう、嫌な仕事にうんざりしていたが―――――存外仏は気紛れよな。この身のような剣鬼にこのような幸運をよこすとはな―――――」


吐き気がする程の血臭の中でその幽鬼は幽玄なる美しさを纏い、この場の惨状から浮き出ていた。

血の滴る長刀を肩に下げ、仮面の如き薄い笑みを貼り付けたまま悠然と存在する侍―――――

ソレに暫く目を奪われたが、セイバーが剣を構える音で我に返る。


「マスター、指示を」


セイバーの声が遠い。

俺は部屋の隅で返り血を浴びて忘我したように座り込み、ぶつぶつと呟く子供に目を奪われていた。


「死んじゃった・・・・・みんな死んじゃた・・・」


その呟きは自分に言い聞かせるなうなモノだった。

周りに倒れている三人は家族なのだろう。

突然奪われた日常、家族――――――

血が心を黒く染める。

頭に血が上りセイバーの声さえ届かない俺の眼に、返り血を浴びた侍の姿が目に入る。

そうか、この光景を作り出したのは貴様か――――――!!


「セイバー、場所を変えるぞ」


頭が氷を突っ込まれたように冷えてゆく。

怒りが湧かない?いや、違う。

――――――限界を超えただけだ。


「遠坂か?ああ、すぐ来てくれ。怪我人だ。代償は何でも払う、必ず助けろ。住所は―――――」


遠坂に携帯で電話を入れて住所を簡単に伝えると、侍に背中を向けて家から出る。

侍は何を考えているのか俺の後ろに静かに付いて来る。


「マスター、何を暢気な!今直ぐ指示を!!」


セイバーも先ほどの光景に怒り心頭なのか、目を血走らせて剣を握り締めている。

だが、それは駄目だ。


「いいから黙れ。二度目は無いぞ」


それだけ言って令呪をちらつかせると、セイバーは悔しそうに唇を噛む。

程なくして交差点に出る。

そこで侍は立ち止まり、刀を肩から下ろす。


「ここでよかろう。始めるか?」


と、嬉しそうに俺に言う。

それがまた癇に障った。


「一つだけ聞く。何で襲った?」


無感情な声。

でもその声には超越した怒りが含まれている。


「マスターの指示でな。死合を目撃されたら殺せ、とな。私とて力無き者に刀を向けるのは不本意」


その答えに、そうか―――とだけ返して空を見上げる。

直後――――――


タァァァン!!


極自然な動作で銃を投影し、予備動作無しで銃弾を放つ。

ソレを当然のように避ける侍をそのまま見送る。

追撃はしない。


「中々の不意討ち、そして素晴らしい怒り―――――――――楽しめそうだ」


そう呟き剣を構える侍。

だが、俺と侍の間にセイバーが立ち塞がる。


「シロウ、指示を。サーヴァントと戦うのは無謀です」


背中を向けたままこちらを見ずに言うセイバーには、反論を許さない強さがあった。

普段なら反論は出来ない―――――

普段なら、だ。


「セイバー。アイツを一発殴るまで待っててくれ」


「出来ません!私を止めたいのなら令呪を使いなさい!」


セイバーは恐らくそこまではしないだろうとタカを括っていたんだろう。

だが―――――


「俺があの侍を一発殴るまで動くな!!」


「シロウッ!?」


躊躇いなく令呪を使った。

これで舞台には侍と俺の二人だけ。

さて―――――


「―――――始めるぞ、侍」


「私の名は佐々木小次郎―――――いざ尋常に」


ジリジリと間合いを詰めて合図を待つ。


「勝負」


その声が鼓膜を震わす寸前に俺の脚は地面を蹴っていた。





















つづく







あとがき

セイバーの活躍はまだか?
・・・・・士郎が目立ち過ぎだな・・・・。

15: kazu (2004/04/14 00:59:10)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第三十三話「人間の限界」




「ッあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


右手にゲイボルクを投影し雄叫びを上げて突っ込む。

作戦も何も無い。

込上げる衝動に身を任せての突撃だ。


「気迫は良し。だが―――――」


渾身の一突きは、そのまま小次郎の脇腹に吸い込まれると思われたが―――――


ギィン!


「技も捻りも無い。獣同然よ」


そのまま刀に弾かれ、今度は俺の胴がガラ空きになる。

その隙をこの剣鬼が逃す筈も無く、神速の速さで胴を両断せんとする斬撃が俺を襲う。

それを殆ど感だけで感じ取り倒れるように後ろに飛び、何とか即死必至の刃を避ける。

だが、その程度で済む筈も無く、小次郎は一歩軽く踏み込んでバランスを崩した俺の脳天に唐竹割りに刀を振り下ろす。

その数瞬に、後ろに飛んだ時に予め投影しておいた左手のサブマシンガンを小次郎に突きつけ、狙いもつけずに乱射する。


ガガガガガガガガッ!!


「む・・・」


だがその必殺のカウンターすらも、小次郎は軽い足取りでかわすと大きく後ろに飛んだ。

流石に予想外のカウンターに反応が遅れたのか、俺と距離をとった小次郎の頬から一筋の血が流れ出る。


「鉄砲か・・・・・。便利な世の中になったものだ」


それでも笑みを貼り付けたまま、余裕で頬の血を指で掬い取りちろりと舐める。

そのまま暫らくの睨み合いが続く。


「では今度はこちらから仕掛けるとしよう」


そう言って、トンッと軽く地面を蹴って一瞬で肉薄する小次郎に向けて銃を乱射するが掠りもしない。

速い。

そんな言葉が馬鹿げて見える速さの斬撃を避けきれず、何とかサブマシンガンで防ぐ。

その折に、袈裟に振り下ろされる刀を受けきれずに右の肩を深く斬られた。

鍔迫り合いでは一瞬で負ける。

そしてそのまま袈裟に体を両断されるだろうと、サブマシンガンで刀を肩口までで受け止めた状態で思考する。

そんな事は簡単に予測できたので、力比べに入る前にゲイボルクを力づくで投げつけて何とか小次郎から距離をとる。


「これで三度。人の身で我が剣を受けるか―――――――」


と、嬉しそうに呟くと、そのまま刀を下ろしこちらを見据える。


「少年、名をなんと言う?」


「―――――――――――衛宮士郎だ」


侍の顔に浮かぶのは純粋な歓喜。

何処までやれるのか試しているのだろう。

あの侍が本気ならば、一合目の剣戟で俺の上半身は下半身と永遠の別れを告げていた。


「では少し速くしよう」


その瞬間、もう目の前には小次郎が居た。

知覚は出来ていたが反応が出来ない。

そのまま脳天に迫る刀を寸前で転がるように無様に避ける。

が―――――


「っぐぅッ!?」


プシャァァ!!


回避が間に合わなかった左手首から先を切り落とされていた。

痛みには馴れているつもりだったが、コレは効いた。

思わず傷口を押さえ蹲る。

だが、視線は決して侍から逸らしたりはしない。


「ほう・・・・・、この程度じゃ折れぬか。つくづく惜しいな」


そう呟き、一歩一歩ゆらゆらとこちらに近づいて来る侍。

チッ―――――ヤバイな。


「手向けだ。黄泉路で迷わぬよう苦しまぬように屠ろう」


首を狙って振り下ろされた刀を寸前で避けると、投影した煙幕を投げつける。

だが、その煙幕も小次郎の刀の一振りで全て弾き飛ばされる。


「中々に足掻くな、少年」


「テメェを一発殴るまでは死なねぇよ」


強がりなんかじゃない、心からの言葉を吐く。

もしかしたら調子に乗っていたのかもしれない。

バーサーカーとの戦い、アレが上手く行き過ぎたのだ。

正直サーヴァントの力を見誤っていた。


「仕切り直しだ」


遠の昔に反転していたが、来るのがわかっていても避けられるものじゃない。

俺の『能力』はアテにならない。

ならば――――――


「ふむ、真に惜しいものよな」


と、一言だけ言って小次郎が連撃を繰り出す。

ソレを命からがら、体中に傷を作りながら避ける。

一瞬、刀を振り下ろした一瞬奴の顔が無防備になった。

だが拳を振るえる程の隙ではない、ならばと手首より先が無い左手を振るう。


「・・・ッ!?」


左手の切り口から血が飛び散り奴の視力を奪う。

目潰しを受けて初めて侍が表情を崩すが、それも一瞬。

直ぐに微笑を浮かべると、そのまま見えているかのような攻撃が繰り出されてきた。

これ以上は拙いと感じ、咄嗟に踏み込む。

だが―――――


ザスッ!!


「ぐっ・・・・!」


小次郎の剣が一瞬早く俺の左肩を貫く。

だが、ソレが狙い。
刀を封じ俺が攻撃する唯一のチャンスだ。

目潰しもその為の布石。

目が見えている状態なら急所以外を突くなんて真似はしないだろう。


「セイバー、後は任せた!!」


そう叫んで、ありったけの魔力で強化した拳で小次郎の頬を殴り飛ばした。




















つづく

16: kazu (2004/04/14 00:59:36)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第三十四話「剣鬼」







「・・・っ!!」


小次郎を殴った衝撃で刀が抜け、体が自由になる。

激痛を我慢して形振り構わず後ろに飛ぶと、俺の居た場所を刀が通り過ぎた。

奴の視力は早くも回復したらしく、既にしっかりと両目を薄く開いていた。


「良い一撃であった。中々の一時を過ごさせてもらった―――――して、美麗なる英霊よ、次は君が相手をしてくれるのかな?」


痛みにぼやける視界をしっかりと凝らすと、いつの間にか俺の目の前には小さな背中が凛とした強さで立っていた。


「シロウ――――――今回の事は後でしっかりと追及します。今は指示を」


はは・・・こりゃ怖い。

んじゃま、セイバーに頑張ってもらうか。


「セイバー、援護はしない。全力で行け」


俺の指示に満足したのか、彼女には似合わない不敵な笑みを浮かべ剣を構えるセイバー。

その構えに答える様に小次郎の殺気も笑みも深みを増してゆく。


「ふむ、流石セイバーといった所か。隙が無い」


その言葉を合図にセイバーが神速の剣を振るう。

小次郎はその剣を軽く刀で弾いて受け流し、そのまま袈裟に刀を振るうが、セイバーの体が沈み込み髪の毛を数本斬るだけに終わった。

セイバーは沈み込んだ体制から不可視の剣で切り上げるが、小次郎の剣にまたしても軽く捌かれ、その瞬間に僅かな隙が生まれる。

それを逃さぬ小次郎は、鋭く、それでも風のような軽さで真上から脳天を割ろうと剣を振り下ろす。

だがそれもセイバーの剣に防がれ、そのまま力比べになるかと思ったが、小次郎は軽く剣を引くと大きく後ろに飛ぶ。


「刀身三尺余、幅は四寸といったところか。形状は西洋の両手剣か」


「・・・・っ!?――――――何故」


小次郎の呟きに初めてセイバーが表情を崩す。

恐らく俺も似たような顔をしているだろう。

あの野郎―――――剣を合わせただけで寸法から形状までを読み取りやがった。

ここにきてやっと理解した。

あの男は特殊な力も魔力も無い。

ただの人間が剣の才能一つでアーサー王の聖剣と渡り合っている。

読み取ってみてもあの刀は長いだけで、ただの刀―――――――名刀の部類に入るが、聖剣なんかとは比べ物にならないだろう。

打ち合えば折れる、故に受け流す。

その業は正に剣鬼。

剣一本で幽鬼にまで上り詰めた男――――!!


「これで武器の利が消えたな。では仕切り直しといこう――――――」


そう言って笑みを深めた小次郎が、軽やかな踏み込みでセイバーに刀を振り下ろす。

その一撃をセイバーは難なく防ぐが、二撃目、三撃目と連撃を重ねれらる内に防御が追いつかなくなってくる。

この男は間違いなく技量だけならセイバーより僅かに上。

故に攻めに転じられた場合、防ぎきるのは困難。

それでもセイバーは、剣の嵐の中から何とか抜け出し再び剣を構える。


「随分と舐められたものだ。剣を鞘に収めたままとはな」


唐突にそういうと、小次郎がはじめて笑みを消す。


「ならば、まずこちらの技を見せるとしよう」


ゆらり、と剣がしなった。


「秘剣――――――」


その動きは単調にして複雑。


「燕返し」


剣はそのまま数を増やしそのままセイバーの元へと迫る。

残像なんかじゃない、間違いなく刀が増えてやがる・・・・・・!!


「っ゛ぁ・・・!」


それを殆ど感のみでかわしたのだろう。

彼女が受身も取らずに転がっていた。

避け損なったのか、脇腹から夥しい血を流し倒れ伏せる。


「っ・・・・第二・・・・魔法・・・?」


そう呟きながら、痛みに顔を顰めながて必死に立ち上がろうとするセイバー。


「ある時戯れに燕を斬ろうと思ってな。甘く見ていたがそれが中々ままならぬ。奴らは空気の振動を感じ剣を避ける。ならば―――――――逃げ道をなくしてしまえば良い。気付けばこの技で燕を斬っておった」


淡々と語る顔には自慢も自信も無い。

ただ事実だけを語り、戯れにそれを語っているだけだろう。

剣のみで魔法に辿り付いただと・・・・・!?

これが、人の力か―――

知らずに笑みを浮かべていた。

何の事は無い、ただ嬉しかった。

怒りは消えないし消すつもりは無い。

だけど、あの男は可能性を示した。

人の身で、剣一本で魔法まで辿り付いたと。

それがただ嬉しくて、血の上った頭が冷えてゆく。


「気でも触れたか少年。何故笑う?」


「なに、つまらん事だ」


そう答えて立ち上がる。

いつの間にか左手はくっついていた。

無論、肩の傷も無い。

恐らく体内の魔具とかその辺だろうと思う。

我ながら不気味だが、今は都合が良い。


「アンタを尊敬する。だが――――――――」


そう、この男は尊敬に値する。

だけど―――――


「アンタの事は許さない」


これは必要な怒りだ。

俺が今の俺である為に、なにより復讐者で居続ける為に必要な怒り。

だが、そんな状況ではない。

頭が冷えたお陰で、伏せていた選択肢をアッサリと選ぶ。

今一番正しい選択は―――――――


「撤退!!」


そう、怒りに霞んだ頭では逃げる事なんて浮かばなかった。

だが、既に頭は冷えた。

ならば、無理をする必要はない。


「シロウ!?」


慌てるセイバーを小脇に抱えて一目散に逃げ出す。

無論地雷やなんかも設置済みだ。

だが、追ってくる気配が無い。

それを不思議に思いながら一直線に家に向かった。











小次郎視点



煙に覆われた直後に、気配が二つ遠ざかるのがわかった。

だが私は何故か追おう等とは考えなかった。

ここで殺してしまうには惜しい。

そう思わずにはいられまいて。

女狐には取り逃がしたと報せればよい。

この身一つままならぬが、それぐらいの自由は利く。

存外に現世というのも良いものだ。

あの美しく危険なまでに澄んだ目を思い出す。

もし自分があの少年に呼び出されていたのなら―――――

その愚かな夢想を、首を振って払うと寺に戻る為に歩き出す。

今宵も月だけは美しい。

月を見上げ、月見酒を味わいながら歩く。

真に、良い夜だ――――――

















つづく

17: kazu (2004/04/14 00:59:52)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第三十五話「第一回説教大会(の名を借りたドメスティックバイオレンス)」





やあ、僕はみんなのアイドル士郎君さ☆

命からがら家まで逃げてきたのはいいんだけどね、僕は今とっても困ってるんだ。

それは――――――――


「聞いてんの!?このヴァカ!!サーヴァントに一人で向かってったどういう事よ!!何とか言いなさいよ!むしろ言え!!」


居間で俺の胸倉を掴んで、恐ろしい形相で俺を振り回す魔王がいるからさ・・・・・・。

嗚呼・・・・刻が見えそうだ・・・・。


「その通りです士郎!あの時の貴方はどうかしていた!!」


あ、魔王一匹追加ね。

むしろ猛る王様か。

どうでもいいがその竹刀はなんだ。

ビシッと竹刀を突きつけながら説教するな。


「お、落ちつこうぜ遠坂。ソレにはちゃんとした理由が―――――――」


ズドムッ!!


と、俺の言葉を聞き終える前にリバーブローを全力で振りぬきやがった。

も、問答無用?

話し合いは平和への第一歩なんだぞ?

あ、なんか俺もう泣きそう。


「全く生きてるから良かったものの――――――」


や、今死にそうだ。

主にお前の所為で。

あの一家が助かったのは良かったが、今度は俺が死にそうだ。

しかも助けたのが言峰?

・・・・・良い事なんて何一つ無いじゃん。

――――――なんでさ。


「凛、その辺にしておけ。まぁ、この小僧が死んだら死んだで――――――――」


「黙ってなさい!アンタ赤いだけで大して役に立ってないじゃない!無能能無し茶坊主家政婦!大体何よその白髪に褐色の肌は!イケメン!?イケメンのつもりなの!?」


アーチャーの皮肉気なセリフすら遠坂には無効だった。

寧ろ矛先がアーチャーに向いた。

あまりに突然の事にアーチャーすら反論できずに、落ち込んでいた。

心なしか涙目だ。

遠坂、人の身体的特徴を貶すのは良くないぞ。


「無能能無し茶坊主家政婦・・・・赤いだけ・・・・・赤は伊達じゃないのに・・・・私は・・・私って・・・・ぐぅ、胃が・・・!!」


余程深く突き刺さったのか、両手を突いてずーんと落ち込む。

しかもストレスが胃に来たらしい。

大変なんだなぁ・・・・と、少しほろりと来たので後で胃薬を差し入れしようと誓う。


「あ、あの・・・・シロウも反省しているようですし・・・・」


「甘い!甘いわよライダー!この馬鹿に反省の文字は無いわよ」


ああ・・・ライダーが女神に見える・・・。

ボディコン女神か・・・・・ソレも中々・・・・・。


スパァン!!


「あぷすっ!?」


「・・・・・・・邪な気配を感じました。シロウは一度その態度を改めた方が良い」


と、セイバーに竹刀で脳天を叩かれた。

セイバーには俺と同じ能力があるのか?

笑顔がとっても怖いデスよセイバー様。

ふと、気になってライダーと遠坂が口論している方を見ているが、そこには呆れたように部屋の隅を見ている遠坂がいるだけだ。

疑問に思い遠坂の視線を追うとライダーがいた。

何故か体操座りで壁に向かってブツブツいっている。

その上髪の毛で顔が隠れて表情が見えないのでとんでもなく恐ろしい。

ってか遠坂――――――お前ライダーまで打ちのめしたのか?


「さて――――――」


やば・・・・邪魔者を消したから標的は俺に・・・・・!!

セイバーもこちらを無言で睨んでいる。

何気に素振りをしている竹刀から聞こえる恐ろしい風切り音が凶悪だ。


「覚悟はよろしくて、衛宮君?」

「その曲がった性根―――――――文字通り叩き直して差し上げます」


ひぃぃぃぃぃ!?目的が摩り替わってる!!

NOooooooooooooooooooooooooooooooo!!!

















イリヤ視点




「バーサーカー!?ねぇ!逃げよう!!バーサーカー!!!」


ずるり、と影が這い寄る。

アレには勝てない、バーサーカーでも勝てない。

なのに――――――


「なんで逃げないのよ!!早く霊体に戻ってよぉ!」


涙が溢れる。

バーサーカーが死んじゃう!

嫌だ・・・嫌だよぉ・・・・


「イリヤ、早く逃げる」


「離してよ!離してぇぇぇぇ!!」


「逃げましょう。私達ではどうする事も出来ません」


リズとセラがわたしを抱え上げて無理やり運ぼうとする。

でもバーサーカーが来ない。

聞こえるのはバーサーカーの雄叫びだけだ。

最後に見たバーサーカーの目は・・・・

わたしに逃げろとしっかりと語りかけていた。


「助けて・・・・バーサーカーを助けて・・・・シロウゥ・・・・・お願いだから・・・・助けて・・・」


わたしは生まれて初めて、他人の為に泣いて祈った。

お兄ちゃん・・・・バーサーカーを助けて・・・・!!

その想いも虚しく、森を抜ける頃にはバーサーカーとの繋がりは消えていた。


「いやぁ・・バーサーカー・・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」















つづく





































本編台無しな謎予告







「ワラキア?――――――タタリか!?」


再び現れる通り魔。


「セブン――――――」

「コード・スクウェア!!!」


炸裂する


「「バレルレプリンカ、フルトランス!」」


偽者と本物の同時攻撃!


「アンリ・マユ――――――――俺は・・・・なんてモノを不安に思っちまったんだよ・・・・・」


滅ぼした悪は蘇り、一夜限りの宴を踊る。





DARK HERO供州唯紕譯遙 Blood―





「なぁ士郎、見てみろよ。


          今夜はこんなにも、月が綺麗だ――――」






終わらぬ夜に踊り狂え。


18: kazu (2004/04/14 01:00:34)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第三十六話「這い寄る闇」




ああ・・・・・・日が昇る・・・・・。

あの二人による説教・・・・の名を借りた拷問は明け方まで続いた。

薄情な事にいじけていた二人のサーヴァントは途中で撤退しやがった。

で、これから寝ようと各自撤退って時に呼び鈴の音が響いた。

・・・・・こんな時間に誰よ?と思いながら玄関までのろのろと歩く。

相手は余程短気なのかドンドンとドアを叩き始める。


「はいはい〜、今出ますよ〜」


と、ガラガラと玄関を開けた瞬間に猛烈なタックルを喰らった。


「むぐぉ!?」


何とか踏ん張って踏みとどまって、腹にしがみ付く銀色の毛の塊を見る。

――――――イリヤか?

問いかける声は言葉にならず、服を濡らす暖かい液体に一瞬忘我する。

泣いてる・・・?

俺に力一杯抱きついたまま、ひっくひっくとしゃくりあげながらイリヤが泣いていた。

どうすればいいかわからないので、取敢えずしゃがんでイリヤの頭を肩に乗せるように抱きしめて頭を撫でてやる。


「――――――どうした?」


俺は極力優しく声をかける。

するとイリヤはビクンと震えて、蚊の鳴く様な涙声で話し始める。


「バーサーカーが・・・・・バーサーカーが殺されちゃった・・・・・・逃げろってバーサーカーがぁ・・・・うっく・・・」


切れ切れで支離滅裂だが大体解った。

恐らくバーサーカーでも敵わない敵に出会い、バーサーカーはイリヤを逃がす為に戦ったのだろう。

――――――そして、死んだ。

イリヤには辛いだろう。

一度戦った時に俺の能力で解った事がある。

イリヤはバーサーカーに父を求めていて――――――

不器用ながらもバーサーカーはそれに答えようとしていた。

理性を失って尚、あの男は英雄だった。


「サーヴァントか?」


だが、これは聖杯戦争。

サーヴァントとマスターによる殺し合いなのだ。

イリヤが生きているだけで良しとしなければならない。

なのに、この込み上げる感情は何だ?

簡単だ。

イリヤを泣かせた奴が許せない。

それに――――――

バーサーカーは敵だったが良い奴だった。

俺のこの感情は、遠坂の様な生粋の魔術師からすれば失笑すら出来ない物だろう。

だけど――――――

それでも許せないモノがある。


「違うの・・・・サーヴァントじゃない・・・・もっと怖い何か・・・・」


イリヤの言葉に不吉なものを感じた。

サーヴァントより怖いもの?

馬鹿げてる。

しかもあのバーサーカーがイリヤを逃がすのに精一杯だっただと?

こりゃ・・・・・ヤバイな。


「アーチャー」


「・・・・バレていたか」


俺の呼びかけに答えるように、アーチャーが背後からスゥッと現れる。


「うんにゃ。お前さんの事だから聞いてると思ってな。それより――――――――偵察を頼めるか?」


「一人でか?」


「ああ。悔しいが俺じゃ足手まといだ。無論遠坂もな。セイバーは突撃癖があるから偵察には向かん。お前さんなら単独行動も出来るし、もし何かと出会っても逃げ切れるだろう?」


そうなのだ、仲良こよしのノリで全員で偵察に行って、万が一バーサーカーを倒した奴に遭遇したら逃げる事すら困難だろう。

この男ならば無理に突っ込みはしないだろうし、何より引き際を弁えていそうだ。


「貴様の指示を受けるのは非常に不愉快だが、今回に限っては同意だ。イリヤスフイール、場所を教えろ」


と、珍しく俺に不敵に笑いかけるとイリヤに場所を詳しく聞いている。

その時――――――


「―――――シロウ」


背後からセイバーに声をかけられ、心臓が二秒ほど止まった。


「お前は駄目だぞ」


勤めて冷静に、反論を許さない声で振り向かずに言う。

その声から逃げるようにセイバーは走り去ってしまった。

・・・・・はて?

セイバーの行動に首をひねるが、わからないので気にしないことにした。

アーチャーはもう既に偵察に行ったのか姿が見えず、玄関には俺とイリヤだけが残された。


「あんたら誰?」


訂正。

外には謎の双子(?)が居た。









おまけ



「アサシン」


「・・・如何な用だ?」


「私は出かけるから門番は任せたわよ」


「了解した」


「にゃ!」


と、アサシンの懐から顔だけを出していた子猫が「了解」とでも言わんばかりに鳴く。

その光景はある意味微笑ましい。

ああ、抱きしめたい・・・・でも私は魔女なのよ、メディア。

ふわもこの生き物を愛でるなんて――――――


「ふむ、腹が減ったか。それ、煮干だ」


と、アサシンは懐から煮干を取り出し、懐の猫に与える。

常備してるのかしら?

そんな光景を眺めながら自分の失敗を思い出す。

そもそも、死に掛けた子猫を使い魔にしたのが間違いだったのだろう。

サーヴァントであり、魔女である私がそんな事を―――――――

何故そんな事をしたのか未だに自分でも理解できない。

そしてその後、アサシンを召喚したのは良いが―――――

寺の門にではなく、この子猫に縛ってしまったのは近年稀に見る大ポカだった。

そのお陰でこの侍は常に子猫のそばにいる。

幸い、縛ったのは存在だけであってマスターは私だ。

本当にそれだけが幸いだ。

もしもアサシンのマスターの権限までこの猫に取られていたら、きっと立ち直れない。

だが――――――


「もういいのか?」


「にゃ」


この猫がいつもアサシンの頭の上だったり懐だったり足元だったりに居る為に、アサシンに罰を与えることも出来ない。

アサシンを処断出来ないのは痛い。

本来なら猫ごと―――――――

いや、やめておこう。

そこまでする事はない。

そう考え、アサシンと猫の会話を背中に感じて階段を下りていった。
























つづくらしい




キャスターさん
好きのもの:可愛いアレとかソレ

19: kazu (2004/04/14 01:00:50)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第三十七話「光差す時」





アーチャー視点


「これは―――――――」


呪いの残照が城を焦がし、森を死なせている。

守護者として幾度と見てきた光景だ。


「私の感が正しければ厄介な事になるな・・・・・」


だがなんだ、この胸から溢れる歓喜は?

磨耗した心が再び形を取り戻そうとしている。

まだ、間に合う――――――

そんな確かな希望が胸に溢れていた。


「親父、俺は――――――」


どうすればいいんだ?

その声は言葉にならず、私の胸に深く抉りこんだ。









士郎視点



「おーい、セイバー?」


アーチャーが去った後に、謎の双子――――――なんかイリヤのメイドらしい――――――と、イリヤを居間に上げて落ち着くまでずっとイリヤを抱き締めていたが、どうもセイバーの様子が気になってので今はセイバーがいるであろう道場に居る。

俺の予想通りセイバーは道場で正座していた。

以前教えた時に喜んでいたのを覚えてて良かった・・・・・・。


「・・・・・シロウ」


するとセイバーは、正座したままこちらを真っ直ぐ見つめて口を開いた。


「私は――――――本当に貴方に必要なのだろうか?」


「はぇ?」


わけが解らない問いに一瞬顔が崩れる。

取敢えず冗談を言うのもアレなので真面目に答える。


「必要に決まってる。お前がいなきゃランサーに殺されてたし、バーサーカーの不意を突く事だって出来なかった」


「ですが――――――私は貴方を守れなかった。再生したから良かったものの・・・・左手を失うという事はリタイヤと同意義です。それにもしかしたらシロウはあの時コジロウに殺されていたかもしれません。いや、その確率の方が高かった」


話している内にセイバーの目がどんどん沈み込んでゆく。

あ、しかもかなり涙目だ。

・・・・・セイバーってこんなによく泣いたっけ?

ま、いいか。


「アホくぅわ。もしもの話をしてもしゃーないだろ?大体お前はもう家族だ、家族を必要としない奴が何処に居る?そんなのはどこぞの他人家族だけで充分じゃ」


「で、ですが私はサーヴァントです。そのような―――――――」


まだぐちゃぐちゃ言ってるので、セイバーの頭を軽く叩く。


「な、何をするんですか!?」


「ウダウダ言うな。態々辛い道を選ぶこともねぇだろ」


そう言ってセイバーに背中を向けて、ドカッとセイバーの隣に座り込む。

そんなに辛そうに自分の役目がどうとか言う馬鹿に、顔なんか合わせてやらん。


「それは出来ません。私は―――――民を殺し、国を滅ぼした。私だけがこんな幸せなユメを見る訳にはいかない」


力強い声だった。

彼女はこうやって何もかも誤魔化してきたんだろう。

正直、聞くに堪えないヤなモノだ。


「ハッ!何様のつもりだ。そんなのは所詮独り善がりだ。全部忘れてただの女の子になったって誰も責めやしねぇよ。それともお前がそのまま自己嫌悪を続けていれば国は復活し、殺した民は生き返るのか?それこそ馬鹿げてる」


「では――――――何故貴方は復讐を、私に復讐をしようとしたのですか?」


静かに、責める声だった。

ならばお前はどうなのだ、と。


「まぁ・・・・俺の為さ。そうでもしないと気が済まないだけ。タチ悪ぃだろ?」


と、半分苦笑しながら答える。

我ながらタチが悪いと思っているが、そう思っても止められるものじゃない。


「ならば、私は私の為に王を辞める事は出来ない」


「知るか。お前はただの女の子だ。王に戻る事は俺が許さない」


滅茶苦茶だな、俺も。

自分が何もフッ切れてないのに他人にそうしろだってな。

全く、ヤな性格だよ。


「傲慢な・・・!貴方は何様のつもりですか!!!」


明らかに軽蔑した怒声が俺の背中を叩いた。

だが、そんな罵倒は全然心に刺さらない。


「何様?お前さんのご主人様さ。そうだな、言う事聞かないなら性奴隷にでもして言う事聞かせるか?―――――ま、とにかく。俺からお前を取り上げてくれるなよ。俺は来る者は選び、去る者は離さんぞ」


と、言ってかっかっかっかっと笑う。

すると、背中にトンッと何かがもたれ掛かって来た。

ソレ細かく振るえ、暖かい雫を俺の背中に零す。


「っく・・・・本当に・・・・嫌な人です・・・・っ・・・・」


俺の背中をポカポカと叩きながらセイバーは泣いていた。

あえて気がつかないフリをして笑顔を浮かべる。


「自覚してるよ。俺の周りは御人好しが多くてね、俺くらい嫌な奴が居て丁度良いのさ」


そう言って、軽くセイバーにもたれかかる。

するとセイバーは、より一層俺に体重を預けて嗚咽を噛み殺しながら泣いた。





――――――全く、今日はよく人に泣かれる日だな。























おまけ



「・・・・・・」


私はデカ女じゃない・・・・・。

凛は酷い、人のコンプレックスを容赦なく突く。

やっぱり、背の高い女は駄目なのだろうか。

だけど士郎は可愛いと―――――――


「―――――今度魔眼殺しでも探してみましょうか?」


そんな馬鹿げた考えを首を振って否定する。

いや、でも・・・・

いやいや、それでも・・・・



私の馬鹿な葛藤は、シロウに呼ばれるまで終わらなかった。
















つづく

20: kazu (2004/04/14 01:01:51)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第三十八話「衛宮家夕食事情」





「起きろ小僧」


アーチャーの声で目が覚めた。

一睡もしていなかった俺は、セイバーと話した後自室で仮眠をとったんだっけ・・・・・。

外を見ると既に日は落ち、僅かに西の空に残る赤色だけが時刻を示していた。


「ん、どうだった?」


軽く身を起こすと、枕元に立つアーチャーに声をかけた。

どうやら良いタイミングで起こされたらしく、頭はスッキリしている。


「大した成果は無かった。だが確実に事態は悪い方向に向かっているな。下手をすれば聖杯戦争どころではないぞ」


顔を顰めて言うアーチャーに、そうか、とだけ答えて居間に向かう。

詳しい事がわからない以上、どうする事も出来ないのが現状なのだ。

ただ、それが少し悔しくて、襖を力一杯閉めた。









それから暫らくしてゾンビのように起きて来た遠坂に事情を話す。

今は全員で夕食を摂りながら作戦会議中だ。

何故かがーねぇが来てないが今回は好都合だったりする。


「で、その影ってなんなの?」


「詳しくはわからん。だが、危機である事には間違いない。奴が目覚めれば抑止力も動くだろうよ」


と、早くも食べ終わったアーチャーが、そう言ってから胃薬をサラサラと口に流し込む。

初め俺が胃薬を渡した時は嫌そうな顔をしていたが、背に腹は変えられないらしく、しっかりと飲んでるあたりちゃっかりしてると思う。

俺の横ではセイバーがかなりの健啖ぶりを見せている。

メイドの双子に至っては、胸の大きい方がやたら喰う。

イリヤは礼儀良く食べている辺り、レディというのもあながち間違いではなさそうだ。

遠坂は・・・・、ゆっくり食っているが量は女の子にしては多い方かな?

このメンバーの中では一番マトモかもしれない。


「小僧・・・・・貴様このお茶は―――――」


と、ずずっと食後のお茶を飲んでいたアーチャーが目を見開く。

フッ・・・・何時までも赤い不審者如きに負けている俺ではないのだよ。


「フッ―――――緑茶に関しては貴様に勝ったも同然よ」


未だに紅茶やら和食やらで負けているのは悔しいが、やっと一つ勝てたので良しとする。


「くっ・・・・負けるか!」


と、俺の挑発に過剰反応してお茶を淹れ出すアーチャー。

しっかりと緑茶で勝負して来る所見ると、余程悔しかったのだろう。


「む、それじゃあ聖杯戦争はどうするのよ?」


と、暫らく自分の世界に入り込んでいた遠坂が唐突にアーチャーに話を振る。


「――――恐らくは何か動きがあるまでは従来通りだろうな。む、少し湯の温度が低かったか」


アーチャーが俺の淹れたお茶と自分が淹れたお茶を飲み比べて、顔を顰めながら遠坂に答える。

どうやら納得の行く出来ではなかったらしい。


「ん、そう」


アーチャーのおざなりな返答を気にした様子も無い遠坂。

意外といいコンビなのかもしれない。


「それでシロウはどうするの?」


そこで初めて黙々と食事をしていたイリヤが口を開く。

まだバーサーカーのことを引きずってるのか元気が無い。


「極力サーヴァントをこちらの戦力に引き込む。それ以外は背後を突かれない様に排除だな。どちらにしろ先ずはマスター探しだ」


「引き込むとはどういう事ですか?」


と、セイバーが忙しく動いていた箸をぴたりと止めて俺に問う。

・・・・・どうでもいいが米粒が頬に付いてるぞ・・・・。


「正体不明の敵、しかも抑止力が動くレベルだぞ?――――――――そいつが産まれたら先ず真っ先に聖杯を狙うだろうな。聖杯っていうとんでもない餌を目の当たりにして、ほっとく訳無いだろ?つまり、聖杯を手に入れてもソイツに奪われるって事もあるのさ。だから先ずソイツから倒すってコト」


俺の言葉にふむ、と頷く一同だがその表情は冴えない。


「おかわり」


重い雰囲気の中、巨乳メイドの場違いな声が虚しく響いた。

・・・・・・マイペース万歳。

























おまけ

言峰食事事情



食べる、食べる、食べる。

ガツガツとうんざりする程に良く食べる。


「コトミネ―――――――我は未だに貴様の胃の容量が理解出来んのだがな」


目の前の男―――――コトミネはとにかく良く食べる。

我ももう十年程の付き合いがあるが、未だに底が見えない。


「・・・・ふむ、食べるか?」


スッと炒飯の乗った皿を差し出される。


「フン、王はその様な下賎の料理は食さん」


そう答えて皿を押し戻すが、コトミネは別段気にした様子も無くまた食べ始める。

そう言えば昔、「俺の胃袋は宇宙だ」なんてセリフが流行ったな。

今度コトミネに言わせてみるのも面白いかもしれない。

そう考えて、我はワインを軽く口に含んだ。
























つづく

21: kazu (2004/04/14 01:02:25)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第三十九話「混戦」






晩飯を食い終わった俺は、とりあえず夜の見回りの前にバゼットに電話をする事にした。


「ラーメン二つと餃子一人前。住所は――――――」


『士郎、用は何だ?』


ちょっとした悪戯だったがバレバレだった。

その所為かバゼットは心なしか不機嫌だ。


「あー、あのさ。柳桐寺ってマスター居るの?」


『ああ、サーヴァントが二体居る事は確認した。その際に使い魔は見事に迎撃されてご臨終。手強いぞ』


と、サラリと重要な事を教えてくれる。

彼女は戦力解析に関しては職業軍人より上、かなり頼りになるといってもいいだろう。

ついでに更に情報を出そうと更に続ける。


「ついでにクラスとかわかったりする?」


『あの寺は恐らく工房にされている。つまり、陣地製作能力を持つキャスターだ。残り一人はわからん』


それだけ聞くと、バゼットに別れを告げて電話を切り、皆の待つ玄関に向かう。

無論イリヤとメイド二匹は御留守番だ。

そこ、はじるすとか想像するな。











柳桐寺への道を三人で歩く。

アーチャーとライダーは霊体になって着いて来ている。


「へぇ・・・・キャスターね。ソレともう一人・・・・・私達みたいな協力関係かしら?」


「多分な。それか・・・・一人のマスターが二人のサーヴァントとかな。バゼットに聞いたんだけど、今あの寺にはとんでもない魔力が集まっているらしくてな、キャスターならその魔力をマスターに回すことくらいは出来るだろ」


そう言うと遠坂は一人で考え込む。

セイバーに至ってはもうずっと何かを考えている。


「なぁ、もしかして先客が居たりするか?」


耳を澄ますと、微かな剣戟の音が石段の上から響いていた。

それに気付いていたのか、ライダーもアーチャーも実体化している。

考え込んでいた筈のセイバーですら武装済みだ。


「その様ですね。この気配は―――――――コジロウとランサーですか」


「まぁいい、いく―――――」


ゾブリと脳髄を食われた。

嫌な汗が噴出し、心臓が早鐘を打つ。

俺達が上ろうとした石段を、ゆっくりと上る影が突然現れた。

サーヴァントじゃない、ましてや超越種でもない。

そう、例えるなら俺の中の―――――――


「あれは・・・・・!―――――――出たぞ!」


「・・・・・・っく・・・」


アーチャーが影を見て一斉に号令を取る。

セイバーは冷や汗をかきながら剣を握り締める。

だがライダーは口をぽかんと開けたまま固まって動かない。


「チィ!何なんだよコイツは!!」


「妖の類か・・・・・無粋な」


戦っていたランサーと小次郎が影に気付き、戦いをやめて影を睨む。

小次郎は涼しい顔をしているが、ランサーは冷や汗をかいている。

英霊すら圧倒する影。

何なんだよ畜生!


「ゲイボルク!!」


耐え切れなくなったのか、ランサーがいきなり宝具で影を攻撃する。

いきなり宝具――――――それだけとんでもない敵ってコトか。

ランサーの一撃は確かに影を貫いたが――――――


「なにぃ!?」


ランサーが貫いた槍から闇色に侵食されてゆく。

それに即座にアーチャーが反応して、侵食がランサーに達する前にランサーを蹴飛ばす。


「テメェ・・・・なんで助ける?」


「これ以上アレにサーヴァントを食わせるのは得策とは言えん。それだけだ」


そう言って、ランサーに背を向けて剣を構えなおす。

ランサーはそれ以上何も言わず、再び槍を出すと構える。

アーチャーに助けられたのが余程嫌なのかかなり不機嫌そうだ。


「――――やはり・・・・・サクラ!」


硬直が続くと思われたが、固まっていたライダーが突然飛び出す。

ソレと同時に影が帯状の触手でサーヴァントたちを攻撃し始める。


「・・・・・さくら・・・・?」


ライダーの叫びに遠坂が真っ青になる。

そのまま震えだすが、それに構っていられない。


「サクラ、目を覚ましてください・・・・・!サクラ!」


そう叫びながらライダーが影に取り付くが、そのまま触れている手から侵食されてゆく。

セイバー達は影の触手をかわすのに必死でライダーを救えない。


「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


両手にデザートイーグル50AEを投影し、影の触手を弾きながら接近する。

幸いな事にサーヴァントが周りに沢山居る為かマークが薄い。

一発撃つごとに腕が悲鳴をあげるが強化を重ねて無視する。


「馬鹿ライダー!早く戻れ!!」


いつの間にか地面にも黒い闇が広がり、そこからライダーが飲まれかけている。

既に腰まで飲まれたライダーを引き上げようと引っ張るが、力を込めるごとに自らも闇に飲まれ始める。


死ね


更には闇からの声が響き俺を誘う。


死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね


これは致死毒だ。

人では抜け出せない・・・・!!

ここまでかよ!!

悔しい、それ以上に―――――

ライダーぐらい引き上げてみろよ、俺の馬鹿野郎!!


「シロウ!早く逃げてください」


「バカ!何やってるのよ!!」


「小僧―――――!!」


皆の声が遠い。

肩まで闇に浸かった俺の脳には呪いの声が響き渡り、意識がぼやけ始める。


「シロウ、私を踏み台に・・・・!!」


その一言で、目が覚めた。

ふざけるな、そんな事をするくらいなら最初から助けはしない!!


「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


どうする事も出来ない悔しさから叫び、心から願う。

死にたくない!死なせたくない!!


―――――ドクン


その時、妙に大きな心音が響いた。


『―――――情けない。誇り高き我ら■■■の眷属がこの程度で』


声が響き、一瞬世界が止まる。

懐かしいのに知らない声だ。


『力の使い方を教えてやろう』


その瞬間、何かが壊れた。














つづく


































本編ぶち壊し注意報












「むぅ・・・・・お宅がマスター?あ、俺?衛宮士郎。一応イレギュラークラスのガンマンやってます」


「マスターのサーヴァントは私です!何者ですか貴方は!!」


「知らん。呼ばれたから来ただけだ」


ありえない二重召喚。





「し、忍ちゃんが男の子連れ込んでるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

「あ、コイツの兄貴の衛宮士郎です。今後ともヨロシク」


士郎の後ろ手にシ○プリが!

士郎による平行世界の自分妹化計画発動か!?

マスターを守れセイバー!作者は士郎×女士郎なんて書きたくない!!




DOUBLE HERO―駄目人間暴走伝―




「役目を果たして、お兄ちゃん」


「ヤダ、忍と一緒に居る」



―――――駄目人間が聖杯戦争をぶっ壊す。











徹夜明けで沸いた脳だとこんなネタが・・・・・
何気に最後のセリフで士郎の調教成功が確定してますしね(マテ



謎の設定

衛宮忍

平行世界の士郎。
性格は原作の士郎そのまんま。
押しが弱くて無防備。
容姿は三枝さんと藤ねぇを足して二で割ったような感じ。
見た目は癒し系だが、何気に胸囲で凛に勝利している。
押しの弱さ故に士郎に調教(爆)されてしまう不幸な少女。



衛宮士郎

クラス:ガンマン

DARK HEROの士郎が英霊化した存在。
世界との契約内容は『嫌な事は拒否OK』といったとんでもない条件。
滅茶苦茶だがギャグなので良しとしましょう。
そんな条件を付けたお陰で死後は悠々自適にぐーだらしてます。
何気に凛とセイバーとの付き合いは死後も続いている。

最近の趣味は積みゲーの処理。
英霊も結構暇らしい。


補足
凛は第二魔法に到達の偉業で英霊に。
セイバーは言うまでもなく英霊。

他のメンバーは偉業達成ならずか?それは作者にもわからない(ぉ

22: kazu (2004/04/14 01:02:46)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第四十話「世界侵食」




凛視点



「――――始まりに炎在り」


静かな声が響いた。

その声に惹かれるように時は流れを止め、サーヴァントすら魅入られた。


「己を焦がし 他者を焼く

 我が身を燃やし不滅

 総てを生み、灰にする」


詠うのは髪を赤く燃やし、瞳に金色の輝きを宿した士郎。

その声はとても深く、故に不可侵だった。


「作り手は常に無力 故に求め 鉄を打つ

 その力に命無く

 刃は“作り手の炎”より産まれ落ちるだろう」


膨大な魔力が世界を蹂躙し、世界を侵食し始める。

その魔力が臨海に達した瞬間、辺り一面に火が走り火の海になる。

星一つ無い空には視界の大半を占めるほどの巨大な月。

何処かから鐘の音が鳴り響き、炎は月を染め上げる。


「―――――ウソ・・・・・固有結界!?」


世界が展開されると同時に、士郎は影の中から弾き出された。

その際にしっかりライダーも助け出している辺りしっかりしている。

しかし、この世界は―――――――


「固有結界は術者の心象で世界を侵食する魔術――――――――つまり」


士郎の心の中は、夜の闇に抱かれた火の海ということになる。

こんな・・・・こんな世界が士郎の心象風景だって言うの!?


「―――――あ」


ソレは誰の呟きだっただろうか。

全ての人間が、いや、サーヴァントすらその光景に魅入った。

士郎はその金色の瞳に炎を反射し、その身を自ら生み出した炎で焦がしながらも、無垢な瞳でただ月を眺めていた。

その姿が、酷く痛々しくて私は思わず目を逸らした。















士郎視点


意識が遠い。

周囲の光景は映画の様に現実離れしていて、自分はその登場人物ですらなかった。

燃え盛る火の海、そして夜空の巨大な月。

―――――わからない。

何が起きたのだろう?

だが、そんな事を考えるまでもなく突然に終わりを迎えた。


「・・・・がっ・・・」


俺が突然の脱力に倒れ伏すと、周りの炎も夜空の月も消え失せ再びもとの世界に戻っていった。


「・・・シロウ・・・」


あの毒の所為なのか弱々しいライダーが俺を揺するが、今は反応する事すら難しい。

いつのまにか影は消え、妙な静寂が夜を支配する。


「チッ、日が悪かったようだな。マスターがうるせぇから、帰らせてもらうぜ」


そう言ってランサーが消える。


「ちっくしょ・・・・訳わかんねぇ・・・・」


その呟きを最後に、俺の意識は闇に閉ざされた。














アーチャー視点



予想はしていた事だが、やはり実物を見ると驚くものだな・・・・・。

そう考えながら倒れた小僧を観察する。

凛やセイバーが駆け寄っているが、自分はあの輪に入る気は無い。


「無限の剣製ではないか・・・・・」


あの炎に包まれた夜の世界があの小僧の心象なのだろう。

人の事は言えないが、あの小僧の心象も碌なモノではないな。

そう考えて思考を締めくくると、階段を上り侍と対峙する。


「どうする?」


「この身は門番でな。この門を通らぬ限りは何もせぬよ」


その答えに、そうか、とだけ答えて背を向ける。

先ほどの戦闘で私もセイバーも、程度の差は有れど汚染されている事には変わりない。

この状況で戦うのは不利・・・・ではないが、キャスターが出てきた場合拙いだろう。

汚染されて戦えないライダーに、魔力切れの半人前と一流魔術師一人、それに本調子ではないサーヴァントが二人。

向こうは余裕の侍一人に、無傷のキャスター。

セイバー自身に魔術は効かないので普通に考えれば勝てる戦いだ。

だが、向こうにはルールブレイカーが存在する。

その上ここはキャスターの庭だ、この調子では危険。

ならば――――と、懐からメモを取り出し手紙を書く。

それを二つ折りにして、侍に差し出す。


「コレをキャスターに渡してくれ。安心しろ、罠ではない」


「心得た」


侍は躊躇い無く紙切れを受け取ると懐に仕舞う。

その様子を見届けると、侍に背を向けて階段を下りた。


―――――先程の影は予想以上だった。

ならば聖杯戦争など後回しにすれば良い。


既に固まった決意は、その堅さを増していた。








???視点


あついあついあついあついあつい

夢を見ている。

始めは怖かった夢だ。

鉛色の巨人をボロボロにして捕らえたり、森を食べてみたり。

不思議で、怖くて、それでも何故か―――――


今日の夢はすごかった。

衛宮先輩も姉さんも居た。


せんぱいおいしそう

ねえさんおいしそう


クスクスわらう

でもせっかくおともだちがふえるとおもったのに、せんぱいがじゃましちゃた

だからね、たべちゃおうっておもった

そしたらせんぱいがひをぼーってだすの

びっくりしちゃってにげてきちゃった

ざんねんだなぁ・・・

くすくすわらう

だって

とってもたのしいから
























続く
















ネタバレ的あとがき

サイコホラーサスペンス『SAKURA-食いしん坊万歳-』。今夏発売予定。価格:時価。


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