混ぜるな危険!


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1: EVIL (2004/04/13 18:40:20)[madama0079 at hotmail.com]

夢。
夢を見ている。

〜北の国から少年闇鍋〜

interlude

眼を覚ますと見知らぬ天井が見えた。
「……なんでさ」
ベッドの上に体を起こすと、見知らぬ部屋だった。
「……だから、なんでさ」
ともかく、我らが主人公、護宮士郎。
大丈夫。
君は主人公なのだから。
主人公なのだから――おとなしく、この世界の主人公をしていてください。

interlude out

OK。現状を確認しよう。
この洋室。
それが自分の部屋だと言うことは分かる。
これから、自分が何をしなければいけないかということも、分かる。
……聖杯により呼び出された英霊が必要な知識を与えられるということは、すなわちこういうことだろう。
ならば致し方ない。俺も、覚悟を決めよう。
なに、大丈夫。普段どおりの生活だ。学校に行き、帰ってきて、眠る。それだけだ。
問題ない。
いつもどおり。
俺は魔術師なのだから。
この程度で動揺してはいけない。
取りあえず、起きる。そして行動。
とっとと済ませてしまおう。そう。問題ない。


そして、俺は二階の自室から降りてきた。居間へと赴き、そこに人間を見つける。
後姿だが、御飯を準備していると言うことは分かる。
まずは、いつもの挨拶から。
気付かれないように深呼吸。大きく息を吸って、吐く。
此方に気がついたのか、その人は振り返り――
「おはようございます、あき、こ、さ……ん?」
「おはようございます。士郎さん」
きゃ、言っちゃった。いやんいやん私ったら。
等と頬を桜色に染めつつMPが吸い出されそうな不思議な踊りを踊る女性。ちなみにお玉装備。
その名も桜。
ただし、私服バージョン。
その髪、その服、そのオーラ。
なるほど。かの年齢不詳、職業不明、趣味はジャム作りの美人奥様に似ている。
……秋桜と書いてコスモスと読むんだなー、とかくだらないことを考えてみる。
「……しょっぱなからそう来たか。ここは手堅くキャスター(28)あたりがいて、奥様は魔女だったのです、とか何とか言いながらバッドエンド直行かと思ったんだが」
「どうかしんたんですか?士郎さん」
「いえ、別に何でも有りませ――ていうか、桜」
「んもう。ダメじゃないですか。ここでは私のことは『さ・く・ら・さん』と呼んでいただかないと」
いや、一字ごとにポーズをつける必要はないと思いますが?
「ああ、でも、このまま甥と伯母の危険な関係になりたいと言うのなら、そのように呼び合うのも良いかもしれませんね?」
うふふふふぅふふ。と黒くないのに危険な笑いを浮かべる桜。
ああ、またファンが減りますよ?
「いや、そういうことじゃなくて……て、待て。お前がここに居らっしゃるっつーことは、イトコ役は誰じゃらほい?」
ああ、なんだか俺は動揺しているようだ。言語が崩壊するほど。
「よびましたか、士郎」
振り返った士郎くんが見たそれは、『あの』制服に身を包み、法具を使用して魔眼を封じているという奇妙な出で立ちのお嬢さん。
「おはよう、ライダー」
「おはようございます。お母さん」
「うわ、違和感しかしねえ」
「そうでしょうか?問題ないと思いますが」
「ええ、そうよね。ぴったりよ」
大人の魅力溢れる女性が女子高生の格好をする。
一般的にそれは『こすちゅーむぷれい』という大人の遊びであることに気付く二人ではないようです。
ふ。世知辛い世の中だぜ。
いつもの女王様風よりは露出度が少ないはずのライダー。
しかし、学校制服にしては妙にスカート丈が短いデザインの女子制服から除くその素肌。何てエロティック。
「し・ろ・う・さん?一体どこ見てやがりますか?」
流石は桜さん。
先ほどと同じように語尾にハートマークがつきそうな発音で、しかし、背後にアンリ・マユが憑いてそうな声音で俺の頭と心をがっしり鷲掴みにしております。
「い、いや、別に。ま、まあ、皆そろったことだし朝ごはんにしようか」
言いつつなんとか拘束を振り解いて、食卓に座る。
「?はい。そうしましょう」
「まあ、いいですけど。ここは取りあえず、お約束で洋食です」
「べつにいいけど。ん?ていうか、そのお玉は何?味噌汁、作ってたんじゃないの?」
「やだなぁ、もう。せんぱ、じゃなかった、士郎さん。ただのオプションですよ」
おほほほほほほほほー、と笑いながら、くるくる回って台所へと消えていく桜。
うわぁ、なんていうか、見なかったことにしてもいいですか?
「なあ、ライダー」
「なんでしょう」
「なんかさ、すっごく嫌な予感がするんだけど」
「そうなのですか?朝食に何か問題でも?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど」
「?」
うん。なんていうか、これは漠然とした不安だ。
「はーい。パンとコーヒーですよー」
おらぁ、とばかりに机にたたきつけられたのは、よく焼けたトースト。香りの良いコーヒー。
そして何より、黒いモノが入った、ビン。
「……これは一体なんでしょうか」
不思議いっぱい夢いっぱい、いっぱいいっぱいの表情のライダー。
「成る程。真の謎ジャムというものはこの世の全ての呪いと同じ色をしているんですね桜さん?」
ていうかむしろ、それが入っているビンは正しい意味での聖杯なのか?そうなのか?
ああ、そういえばアーチャー(英霊エミヤ)とライダー(マスター=桜)の幸運はEだったなぁ……。
「む?動いた?……え?サクラ、これを食べろと?」
なにやら魔術的繋がりで会話をしているらしいライダー。
ポーカーフェヰスでごまかしているつもりでしょうが、その額にびっしり浮いた汗はナゼなのか、と聴かれれば答える術は持たないと思われます。
喋りかたも素だし。
「どうかしましたか?士郎さん?」
それを塗って食べている桜は既に黒い。
その姿も。時折こちらを見てニヤリとする様も。とても小さい子にはみせられません。
ここは、正義の味方として全部喰らって後の世に禍根を残さぬようにと、立ち向かうべきだろう。
「ライダー」
「はい士郎」
見つめ合うふたり。
そこに言葉など不要。
今正に死地に赴かんとする戦友同士のみが可能なアイコンタクト。
目を見ただけで戦術を理解し、コンビネーションのタイミングを合わせ、絶対有利の状況を作り出す、真の意味での目は口ほどにものを言う。
ライダーは眼を封印してありますが。
頷きあう二人。
そして、引きつった笑を浮かべながらも、声を絞り出す。
「「行ってきます」」
ライダーは俺を抱えて居間を出る。その時既に俺は二人分の鞄を持っている。
戦略的撤退。
命は大切にね。東京電力。
何故かデンコちゃん(既婚)が頭に浮かびました。
「まちなさい!」
背後から迫り来る黒い何かの攻撃を、避けまくる。
流石はライダー、石化の魔眼=キュベレイを持つ存在。ハマーン様並の回避技能を見せ付けてくれます。
桜の声を置き去りにして、躊躇も、停滞もなく、家を飛び出す。
その速度、正に疾風。流石はライダー。敏捷A。
そうでなくては陸上部部長なイトコ役は出来ません。


「危ないところだった……」
「同感です。何かは分かりませんでしたが、アレは、とても危険なものだと思います」
登校路は、雪に覆われていた。
ある程度除雪されていて歩くのに支障はないが、それでも、随分不思議なもんだ。
「おはよう、衛宮君」
涼やかな声が聞こえて、
「ああ、おはよう美坂」
「誰よそれは」
同じ声で反撃してきた。
「いや、誰って……」
振り返れば、奴がいた。
「おはようございます、リン」
あかいあくまこと、『遠坂』凛嬢。
「……なるほど。そういうことか」
「そういうことみたいよ?」
二人して溜息を吐く。
「どういうことでしょうか?二人とも」
ライダーはよくわかっていません。
まあ、ライダーだから。ああ、考え込む仕草が可愛らしい。
うん。ポケポケライダーと名づけよう。
「オッハヨー!シローウ!」
「ぐはぁっ」
元気いっぱいの掛け声と供に突っ込んできた白い魔弾。
改めて見ると、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
ていうか、見事にストマックに入っていますけど?
等と考えているが、今現在衝撃を殺しきれずに背中から倒れているところ。が、腐っても俺は衛宮士郎、正義の味方を目指す男。
何とかイリヤをかばって、自分の上に抱え込む形で彼女の地面への接触を阻止。
「ぐふうっ」
二人分の体重がのしかかり、悲鳴を上げる内臓と自分。
さらに、むき出しのコンクリートに後頭部を強打。
星が見える……
「くあっ……」
「ああ!?大丈夫シロウ!?」
さらにがくがくと程よく脳をシェイクする白の小悪魔。
あれ?なんだか皆が歪んで見えますよ?
これは、なんだ?刻?
「刻が、刻が見える……」
「シロウ、シロウ!」
「大丈夫ですか、士郎!?」
そんなに心配しなくてもいいよ。みんな。俺は、ん?
あれは……おやじ?
「……大丈夫だから。うん。女の子には優しくしてるよ?」
「しっかりしてシローウ!」
「そう思うんだったら、どきなさい。イリヤ。ていうか、さっさと戻ってきなさい、アンタも」


ライダーに救助され(イリヤを剥がして、立たせてもらった、なぜか遠坂がもみあっていた)。何とか学校へ向かう四人組。
ライダー、凛、イリヤの三人が、同じデザインの制服。
実年齢はともかく(なにせ俺たちの中には18歳未満の人はいない)、見た目がちぐはぐ過ぎる。
ふ。だが寝起きから鍛えられた俺に、敵はない。そんなことには気付かない振りをしてくれる!
「シロウ、あくびでもした?涙がでてるよ?」
「いやいや、違うさ。これは心のあせだから。それより、一つ聞きたいんだが、イリヤ」
「ん、なに?」
「イリヤは、何の役なんだ?」
そう。これを確認しないことには、これからのスタンスが決められない。
ていうか、実際問題として、誰よ。
「私?気に食わないけど、リンの妹よ」
ああ、なるほど。確かに、一応は妹キャラだしな。
短命のようだし。
不治の病な……桜の立場はどうなるよ?
「気に食わないけど、ってどういうことよ」
「別に?聞いたままの意味よ。でも大丈夫。別に貴女が姉役なのに不満があるわけじゃなくて、単純に貴女が嫌いなだけだから」
「……奇遇ね、イリヤ。私もそろそろ貴女と決着を着けとかないといけないかな、って思ってたところなの」
「あら、リン。なんのことかしら?だめよ、レディがそんな物騒なこと言っちゃあ。ん?あ、そうか。貴女みたいに育ちの悪い貧乏魔術師に淑女たる作法を期待した私が愚かだったわ。ごめんなさいね?」
「別に謝らなくてもいいわ。もう罪は確定していて、執行猶予もつかないんだから。無駄なことはする必要はないもの」
「罪?私の美しさのことかしら。それとも、貴女の存在のことかしら?」
「へぇ……言うじゃない?」
「ふふ……当然でしょ?」
帯電しそうなほどの殺気を撒き散らす二人。
それでも笑顔なのは流石というべきか、頼むから笑顔のまま怒るのは勘弁してくださいと泣きつくべきか。
ていうか、今回の役どころは君達姉妹なんだから。
同じ家に住んでるはずですよ?
「やめてください。ここは公道です」
「ん」
「ふん」
彼女の言葉に、少し場が和らぐ。
ああ、ありがとう、ライダー。今日は朝から君に助けられっぱなしだ。
「ところで士郎」
「ん、何?ライダー」
「先ほどから考えていたのですが。謎の主婦役がサクラで、その娘役が私。リンの妹がサクラでなく、そこにはイリヤが入っている」
「うんそうだね」
「それはつまり、この状況においては、私たち、サブキャラの攻略ルートが存在するということですね?」
「あ」
「そうか」
完全に考えになかった、という形で絶句する紅白姉妹二人。
「ん?それって?」
ルート、って、どういうことさ?
ライダーが。ニヤリ、とその口の端を上げる。
って、なにそれ。
そのオープニングのアニメみたいな顔はどういうことを意味しているのか?
「今回のヒロインの座は、私が頂戴いたします」
ライダーはそのまま俺を引っつかみ――
「え、なに、どういうこと?え、あ、ちょっと、お?おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
そのまま高速ダッシュ!
「まちな――」
「抜け駆――」
ドップラー効果で声を残しつつ、一気に二人を引き離す!
「ちょ、ライダー!?」
「大丈夫です。士郎」
強い風にかき消されないように絶叫しながらの会話。
寒い空気が肌に痛い!空気を取り入れるだけで精一杯!どこも何も大丈夫ではなかですよー!?
「私は男性の扱いについてそれなりに知っておりますし、何より、あなたの願望をかなえることが出来ます。安心して身をゆだねてください。後悔はさせませんよ?」
「そういう問題か!っていうか、もしかして朝から俺のこといろいろ助けてくれたのはそのためかー!?」
フフフ、と妖艶に笑うことで答えとするライダー。うわぁ、流石メデューサ。嵌りすぎです。
さっきまで考え事してたのはこのことか!?
てか、ライダーさん。もしかしてFATEとU・B・Wで酷い扱いうけたの根に持ってますか?ヒロインになって挽回な勢いですか?まじめな話キャスターより出番有りますよ、貴女。
とか何とか思っているうちに学校に到着。流石に速い。
「……寝坊も遅刻もしてないのになぜ全力ダッシュで学校につくのだろうか」
「原作に忠実なのでしょう」
いや、合っているのは走っているところだけだ。俺は抱えられてただけだし。
てか未だに抱えられっぱなしだし。
「イリヤスフィールは学年が違い、リンはヒロインではない。これで今回は私が貰ったも同然ですね」
「何をだ、ライダー」
校門でばったり出くわしたのは、黄金の髪、聖緑の瞳、銀の鎧の我らがセイバー。
って、なんでいきなりフルアーマー!?
「む、セイバーですか。何を、といわれても。幼馴染のイトコと供に登校して来ただけですが?」
「ほう。貴女は本人の意思を無視し、脇に抱えて走ってくるのを供に歩む、というのか?」
「分からないことを言うのですね、セイバー。士郎も私も登校せねばならない。意思を無視したとは心外です。大体私は歩いてきた、とは言っていません」
「戯言を。そもそも貴女が真に士郎の事を思うのならば、そのような扱いをするはずがない」
と、こちらを見ながら言うセイバー。あ、まだ抱えられっぱなしだ。
ライダーが軽くこちらを向く。脇から開放され、軽く伸びをしてみたり。
「ん。取りあえずありがとうライダー。おかげで早くついた。もし今度が有るなら、もうちょっとソフトに運んでくれるとうれしいけど」
「はい。分かりました士郎」
「な、ばかな!シロウ、貴方はライダーの味方をするのですか!?」
「え、いや、味方というか。早くついたのは確かだし、楽だったのも確かだ。礼ぐらいはいっておかないと」
「く、確かにそれはそうですが」
悔しそうにするセイバー。いや、そんなにへこまれても困るんだけど。
「わかりましたかセイバー。私たちは目と目で通じ合う間柄なのですよ?」
だから、あなた、目を封じてる。いやまあ、確かに少しは通じてるけどさ。
「おのれ、ライダー。如何にしてシロウを誑かした!やはりその眼か!?」
「異なことを。誑かしてなどいません。ただ、彼は私を信用してくれただけです」
長い髪を掻き揚げながら余裕の表情で語る。
歯軋りせんばかりのセイバーとは対照的だ。ていうか、おれ、状況に流されてるだけんですが。
「まあ、もっとも」
ふ、と鼻で息をするライダー。赤の弓兵よろしく腕を組む。
そしてそれは、彼女の体型で行われると――。
「その貧弱な体では、士郎を満足させるどころか繋ぎ止めることも適わないのでしょうがね?」
そのボディラインを強調することになるんだね、これが。
「よく言った。ならば貴様が先に逝け」
ライダーさん性格変わってますとも、セイバーさんセリフが違うぞとも言うまもなく。
その場から一気に駆け出すライダー。
それを追うセイバー。
校舎の壁面でデスサーカスを繰り広げる二人。
そのまま屋上へいってなんか光ったり、光らなかったり。
うん。見なかったことにしよう。
取りあえず、学校へ到着。
……ていうか、俺まだ学校についただけじゃん。何故こんなに疲労してますか。

2: EVIL (2004/04/14 20:01:28)[madama0079 at hotmail.com]

interlude

さて、今ここで改めて状況を確認しよう。

北の街に来たセーラーいや、タイプムーンの面々。

法則.ャラの入れ替わりが微妙。
法則△修梁召砲い蹐い躡じってる。

以上である。

interlude out


教室にて現在着席中。朝目覚めてから初めて訪れた、安らぎの時間。
ああ、何と言う穏やかな空気……
辺りを見回すと、自分とは『関係ない』人たちがそこかしこで語り合ったりしている。
うむ。平和だ。
む?あそこに見えるのは後藤君。なるほど。『斉藤』の役回りか……。下の名前がない繋がりだな。
そういえばこの世界における友人は来ていない。おそらく慎二がそうなのだろうが。
と、自分の後ろの席を見ながら考える。
というか、転校生なのに一番後ろの席じゃないって、どういうことですか?ゲームの製作者に聞きたい。
ま、俺には関係なし。取りあえずはこの平和の空気を今しばし満喫すべし。
「ふう、世は並べて、こともなし……」
ダキュン!ビシッ!
不吉な音とともに、俺の横の壁に、何かがめり込む。
「な、」
「あんな分かれ方しといて、随分良いご身分じゃない、衛宮君?」
く。もうきたのかあかいあくめ。
そうか……RPGでいう所の――しかし、平穏は長くは続かなかった――という奴か……
「って、なんだよダキュンって!」
よく見ればそれは消しゴム。それが壁にめり込んで、放射状にひび割れている。
「何よ。別に良いじゃない。当たらなかったんだし」
「そういう問題か!?」
「当然じゃない」
「く、何てことを」
ただの腹いせで魔弾を打つなよ。しかも強力。
「だいたい、アレは俺のせいじゃないだろ!?」
「ふんだ。ライダーに抱えられて鼻の下伸ばしてた人に言われたくはありません」
脇に抱えられた時に女性としてのふくらみに頭が押し付けられていたのがばれていたらしい。
ああ、確かにアレは柔らかかったなぁ。
「何か言った?」
「いえ、何も」
哂うあくまに即座に否定。俺はまだ命が惜しい。
「……ま、許してあげる」
「へへ、そいつぁどうも」
「なんで時代劇調なのよ」
「いや、なんとなく。……イリヤは?」
「あの子は、学年が違うでしょ?一緒にいるとか騒いでたけど、放り込んできたわ」
そこで、ガラガラとドアが開く。
「話はHRのあとでね」
といって席に座る俺達。そこに入ってきた――
「はーい、皆さん、席に着いてくださいねー?」
眼鏡の先生。
『なんでさ』
同時に突っ込む俺と遠坂。ここは確か男の先生のはずだろ?だから来るのは葛木先生でしょ?
「はい?どうかしましたか。何かいいたいことありますか?」
『いえ、ぜんぜん』
そして二人とも首をふる。
そりゃそうでしょ。そんな見ただけで魔力で構築されたと分かる剣を構えられては。
流石にチョーク投げと同じ扱いというわけにはいきますまい。
「はーい皆さん納得していただいたところで、これから出席をとりたいと思いまーす」
知得留先生は何の問題も有りませんね?あるわけないですよねぇ、あはは、という顔で出席簿を開く。
『…………』
そして俺と遠坂はふたりで見詰め合う。
流石どのルートを通っても一度は協力関係になるオレタチ。息もぴったり。
大きく一つ、溜息をついた。


さて、異様な緊張の中始まった朝の点呼。不用意な発言は死を招くことが分かるが故に、皆、沈黙は金なりを実践している。
どうでもいいが、これは『沈黙は金、雄弁は銀』という格言のことで、この言葉が出来た当時は金より銀のほうが入手が困難だった。
それは銀の精製法の問題なのだが、本来は沈黙を保つよりは、雄弁である方が価値のあることである、という意味なのである。
なお、この話題は、これからの本編にまったく関係ない。
因みに俺は出席番号1番。『え』みやだから。
「はい、次はセイバーさん」
「はい」
と言って、ひょいと窓から入ってくるセイバー。
鎧が所々煤けてます。
「え。なんでセイバー?」
「む、シロウ。私が居るのはおかしいですか?……やはりライダーの方が良いということですか?」
「いや、そんなことはないけど」
そんなことはないから、こう、米マークをこめかみに浮かべるのはやめてください。
……む。まて。俺は何かを見落としている。
「はいはーい。別にどこから入って来てもいいですけど、さっさと座ってくださいね」
「はい。失礼しました」
そういって、鎧を解き、男子制服になるセイバー。
え?
そのまま俺の後ろに座る。
「って、北川かよ!」
ズゴン!
「はい、そこさけばない」
「すいません先生」
刺さった黒鍵。燃え上がるカーテン。謝る自分。
なるほど。黒『鍵』、ですか、先生。でも、別に先生役で出ることないと思うのですよ。そんなに出番が欲しかったのですか?言峰でもいいわけだし。
ともかく、座ったまま後ろをむく。
確かにセイバー。ライダーとバチバチやっていたらしいが、とにかくセイバー。それは間違いない。
いや、問題はそこではない。どういう繋がりなのか。
(シロウ?)
不思議そうにささやく彼女を無視して、同調、開始。
俺と同じ男子制服、結い上げられた金の髪、そして――。
そして、コピコと揺れる跳ねた髪。
なるほどね。
いや、銀狼の物まねをしている場合じゃないが、分かった。
そういうことですか。セイバーさん。
(大丈夫ですシロウ。私も英霊となる前は国の王として、男として、生活してきました。今この場で性別を偽ることに、それほど問題は有りません。見事演じきって見せましょう)
ひそひそと、しかし、世界を革命できそうなほど力を込めて語る。
いや、別段心配していたわけではないのですが、その設定はこの状況で有効なのか?
「…さん、はい、よろしい。……メデューサさん」
「はい」
やはり窓から入ってきた、ライダー。
ところどころ制服が破れてます。髪の毛もちりちりだし。
セイバーがギルガメッシュを見るかのごときすごい形相で睨みつけるが、そんなものはまったく分からない、効かないという様子のライダー。
いや、おそらく意図して無視しているのだろう。前を向いたまま微動だにしない。
何故分かるかといえば簡単だ。俺も先ほどから突き刺さる遠坂の視線を黙殺しているのだから。
……何故彼女だけ真名。
「弓塚さん」
「はい!ていうか、先生!なんでまた私こんな役なんですか!大体!ツインテール繋がりならそっちにいるFATEの凛さんでも良いのぷろっ!?」
ズダンダンダキュダン、ビスザスッビスドゴォッ!メラメラメラメラ。
「そこまで。貴女はヒロインCGの背景としてか存在しない役なんですから、そんなに喋っちゃだめでしょう?そもそも、ヒロインと、そこそこ人気があるとはいえ主人公に殺されるだけの人が、比較対象になるはずがないじゃないですか」
恐ろしいほど辛辣なことを言う。
ていうか、恐ろしいほど黒鍵を叩き込む先生。
鉄甲作用でぶっ飛び、教室の後ろに強制着壁。(地面に足がついていない。縫いとめられてる!?)火葬聖典で燃え上がる。
その様は正に『死の突っ込み』。
ていうか、多分アレだ。
下手したら月姫人気投票で自分を上回るかもしれなかった彼女を『今度』は無いように叩き潰しておく作戦だろう。
うむ。今現在、FATE人気投票では月と空のキャラには入れられないのだが、用心してのことだろう。
流石は蛇の娘。なんて狡猾さ。なんて執念。
「何か思った?衛宮くん?」
「いえ、なにも」
自分の命が計算に入っていないといわれた俺。
だがもう大丈夫。この世界に来て、俺は、保身と言うものを覚えた。
……ナゼだろう。涙がとまらないぜ。
「それじゃあ、ホームルームはここまで。次の授業の準備をして置いてくださいねー」
等と言いつつ去っていく知得留先生。
ピシャン、と教室の扉が閉まったのを確認して。
教室中の人間が、安堵の溜息をついた。
平和のありがたみを一人の尊い犠牲により思い知った我らがクラスで、
「で、よ」
そう切り出したのは、俺の後ろで弓塚さん(=尊い犠牲)に黒鍵に混ぜてガンドを叩き込んだ遠坂。
当然俺はそれには触れない。
うん。多分俺の気のせいだから。はははははー。
「なんだよ、遠坂」
「それよ、士郎」
「ん?それってなんだ?」
というと、遠坂は、なんだか、もじもじとうつむいてしまった。
それは、何というか、とても、かわいくて。
うん。かなり致死量なかんじ。
「だって、私のキャラは、貴方から名前で呼ばれるんだけど……貴方まだ呼んでくれないじゃない」
そのまま真っ赤になっていじいじと手遊びを始めてしまう。
うわぁ、なんてかわいいんだ……。
「え、いや、あ、それは、なんというか、俺がそれを言ってしまうとアーチャーとかぶるというか、まだその覚悟がないというか……」
「……ダメ?」
下から上目使いで覗き込む遠坂さん。
くっはぁぁぁぁぁぁっ。
ATフィールド貫通!
ダメなはずがないじゃないですか!
「やめなさい、リン」
「そこまでです。リン」
男としてのシールドを粉砕された俺の前に現れた壁は二人の英霊。
「確か貴方の役は士郎を名前では呼ばないでしょう」
「そうです。それにここまできたからには、今さらそのようなことにこだわる必要もない。いかに貴方の役がヒロインではなく攻略不能だからといえ、そのような手でシロウを篭絡しようとは……」
「ち」
うわぁ、遠坂さん。そんなあからさまに舌打ちしなくても。
「ま、いいわ。今のはついでみたいなものだし。」
ついでで男の純情もてあそばれたぁ〜!
「で、よ。私が知りたいのは、なんでこんな状況になったか、よ」
「意味のないことを論ずるなど時間の無駄でしょう、リン。今このような状態において、そのようなことは瑣末ごとでしかない。まあ、ヒロインになれなかった苦しみというのは判りますが」
「やかましいわね」
「いや、今のそのリンの話にはわたしも興味がある」
「ふ。まあ、いくら虚言を弄しようと、貴方が脇役であることはまったく何の変更もないのでしょうがね?」
勝利の笑を浮かべるライダー。なんだか見えない剣を構えるセイバー。
いや、そのあたりのことには突っ込みたくないので無視するわけだが。
というか――
「てか、あれだろ?簡単だ。そんなことは」
え?
という表情で三人がこちらを見る。
なんでさ。
当たり前のことだというのに。
「平行世界だよ、ここは」
「む。待ってよ。幾らなんでもこの状況は平行どころの騒ぎじゃないわ。おかしすぎるもの。虚数空間で直交してる、って感じよ」
流石、第二魔法の魔法使い、『宝石』の弟子の家系。そういったことには敏感なご様子。
「いや、そういうことじゃないんだ。魔法がどうとかはこの際どうでもいい」
「どういうことですか、シロウ?」
「だから、すごく簡単なんだ」
そう。それはすごく簡単。
歌月十夜と同じぐらい簡単。
アレは――――夢だったし。
「平行世界とか、それっぽい言葉いっとけば、なんとかなりそうだろ?だいたい、ファンディスクが出るなら間違いなく平衡世界ネタになるんだからさ。平行世界だから皆が幸せになった世界もあっていいよね、とかそういう理由で作るに決まってるんプベラッ!?」
な――!?
「シロウ!?」
一瞬にして視界がブラックアウト。
だが、その間際に――なにか、ミエテハイケナイモノヲ、見た、気がした。
「ふ……これも掃除屋のさだめか」
「アーチャー!?」
「馬鹿な!?これでは貴方と私の愛と絆の物語が!サクラをペガサスで轢く計画が台無しに!?」
「あんた、そんなこと考えてたの!?ていうか、やばいって!」
「ぐるるるるるるるぅ……」
「な、白い犬!?」
「ひどいです」
「あんたは出てくるな!アリストテレス!世界が、星が違うでしょ!?」
「下郎が。拙く、逝け」
「朱い月!?」
ああ、何故だか、世界が、回って――――

interlude

只今、士郎君が言ってはいけない事を言ったため、世界の抑止力とか、いろいろ強力なものから、カミーユばりの修正を受けております。
次回まで暫くお待ちください。

3: EVIL (2004/04/15 18:53:31)[madama0079 at hotmail.com]

おお しろう しんでしまうとは なさけない

interlude out


まさかフルアーマーダブルセイバー!?
この状況でその相手と相対するのは、正に命の危機!
何とか活路を見出すのだ士郎!
取りあえず説得だ!
そして、そこにいる彼女を見るため、振り返る。
そこには――
ブルマーなセイバー。
な!?ばかなぁ!?
『士郎よ、落ち着きなさい。テンパリすぎ』
どこからかそんな声が聞こえてきます。イリヤ?いや、ユスティーツアさん?
ああ、なんで貴方はセーラー服なのですか?


――って。
「ハッ!?」
チャイムの音で目覚める。
目覚める?なんでさ。
「おはようございます、シロウ。授業中に眠ってしまうとは、何事ですか」
なんだか怒りをたたえた様子のセイバー。
「え、いや、ちょっと待って。なんかおかしくないか?」
「全然おかしくなんかないわ。おかしいのは授業中寝てる貴方よ」
よく、わからない。
これまで授業中に寝ていたことなどないというのに。
いやまて。
「なんで、セイバーたち、なんていうか、そんなに疲れてるんだ?」
「気にしないで。むしろ、そこには触れないで」
なんでさ。
「なあ、ライダー」
よくわからない、なんとも奇妙な二人を置いて、ライダーは。
「怖がらなくとも大丈夫です。私に任せていただければ……ふふ。素的ですよしろ」
「いつまで寝ている、ライダー!」
危険な寝言を吐き出しながら、セイバーのチョップを受けていた。
「……何をするのですかセイバー」
「何を、ではない!」
「ええ、まったくその通りよね」
「せっかく私が今夜実行に移すシチュエーションを考えていたのに、それを邪魔するとは……」
「な、何と破廉恥な!そのようなこと、シロウの友として見過ごすことは出来ん!」
「そうよ!図に乗るのもいい加減にしなさい!」
「ふ。負け犬の遠吠えですか」
「犬と言ったなライダー」
「言いましたがどうしましたか?」
「あんたたち、また科白が違うわよ」
「そういう問題では――――!」
「――――!」
「――――!」
「――――!」
「ん?もう昼じゃないか」
三人ともなんだか良くわからないことを言い合うのを遠目に見ながら、そんなことを考えた。
ああ、クラスの視線が痛いぜ。


結局、なんだか良くわからないうちに遠坂チームで食堂へ行くことに。
「セイバー。これから行く先は、食堂で、学校を戦場とするならば、食料の配給所よ」
「食事を取るところでしょう?例えを持ち出されなくとも、理解していますが?」
「違うわよ。貴方は理解してない」
「どういうことでしょうか?」
「いい?あくまで食糧配給所。士郎の家にいたときのような、暖かく程よい硬さの御飯、おかわりの利くお味噌汁、総じて美味しいおかずの数々、なんて想像しちゃだめよ?」
「……なるほど、学校での食事はただ腹を満たすものでしかない、ということですか」
「そういうこと。それすらも満足に出来ないかもしれないけど。残念だけど諦めてね」
「……はい。覚悟を決めました。……くぅ」
いや、幾らなんでも落ち込みすぎだから、セイバー。
今にも泣き出しそうな顔をしなくても。
「意地汚いのですね、セイバー」
「貴方は食事というものの重要性を理解していない!」
「それはそうです。本来私はそのようなものを必要としないモノなのですから。そうですよね、士郎」
「え、あ、それはそうだろうけど」
なんで俺に振るのさ。
いや、そんな良い顔で微笑まれても、あまつさえ唇を舐められても。
もしかして俺、狙われてる?主に血液とか。
「おのれ、ライダー――」
「何でもいいけど、早いとこいきましょう?」
今正にけんかを始めんとする二人を遮って、場を仕切りなおす遠坂。
その手際は流石。もうこの二人の扱いのコツをつかんだ――
「あ」
そして、俺は唐突に思い出した。
「どうしたの?」
「――月姫で、ルート変更だ」
「?何よ」
なんてことだ。今は一体いつだ?昼休みだぞ?
く、こんな重要なことに気がつかないとは――。
「いや、月姫でさ。自宅のルートと、外のルートがあるだろう?」
すごいメタ発言だが、いまさらだ。
「あるわね――って、まさか」
顔を抑える遠坂。完全に失念していたという表情。
そして、気がつかなかった自分を悔いるように、沈んだ表情になる。
「ああ、そういうことだ」
こちらの世界にもあるはずだ。
飯を誘いに来てくれる先輩というものが――!
今が食事時だということは、それはすなわち、あちらの方々も同時進行しているということで。
そして、俺と遠坂は、セイバーを見る。
「お二人とも、なんでしょう?」
だが、その問いに答える余裕は、今の俺達にはない。
「でも、どういうこと?ここに『剣士』がいるわよ?」
あとそのほかに繋がりの触媒になりそうなことといえば、黒い長い髪、使い魔がいる、うさ耳、不思議な力、長身、無口、牛丼、……
「分からない。幾つか繋がりそうな項目は、ここの二人である程度補える感じがするが」
「……アレじゃないかしら、こちらの――仮に今はライダーとして――ルートが進んでる間、他のルートはなしになるとか、そういうのじゃあ」
「いや、いまさらルートもないだろ。それに俺たちの本編の方だと、ルートが変わるとキャラの動きも変わるし……」
「なんのことですか?」
「さて?貴女がここにいるのが邪魔なのでは?」
「どういう結論ですか、ライダー」
「話をつなぎ合わせた、当然の帰結です。今この場は私の領域で、剣士がいるのが不可解だそうですから」
「む」
しょうがないな。幾ら話しても結論は出ない。
「先に行っててくれ。俺は様子を見てくるから」
もし仮にこのまま放置した場合、後で何が起こるか分かったもんじゃない。
「分かったわ、任せたわよ」
決死の覚悟を決めた俺を励ましてくれる遠坂。
気分はギルガメッショとサシの勝負。
そして、またもや戦闘状態になるセイバーとライダーを押さえるのを遠坂に任せ、俺はあの場所を目指す。


そこは、異界だった。
第四次聖杯戦争の舞台となった――あの公園もかくやと思わせるほどに。
屋上に到達するための階段の踊り場。
いまだ見えぬそこから、不穏すぎる気配が漂ってくる。
俺は霊体化したサーヴァント並に気配を殺し、踊り場を階段の陰からそっと窺った。
そこに二人はいた。

――いちゃった。

「お弁当、おいしい」
「まだまだたくさん有りますよー」
「うん。……シロウが来ない」
「そうですね〜、来てくれないと、私たちヒロインになれないじゃないですか。困った方ですね〜」
「来たら、私のものに」
「いえいえ、私たちの、ですよ。特別に蒼と赤のお薬を二本とも使っちゃいましょう。きっと喜んでくれますから。そしてこの世界を動かすのは私たち、という事で」
「ふふ…………」
「あは〜」

俺は逃げ出した!
回り込まれたりしませんようにー!


全力疾走の結果、それほど時間も掛からずに食堂に到着。
この程度の距離を走っただけなのに、心臓は胸を突き破らんばかりに鼓動させ、足元はがくがくと頼りなく震える。
そこで、学食に存在する数多の四人掛けのテーブルの一つに、見慣れた二人組がいたことが、何より安堵を覚えさせた。
いつの間に掻いていたのか、額の汗を手のひらで拭い、乱れた呼吸を何とか抑えながらそこまでたどり着く。
「……誰だった?」
遠坂の声は、覚悟を決めた魔術師のものだった。
「全然問題ないですじょ?」
いや、おちつけ、俺。
「そんなに酷かった?」
「いや、酷いというか……黒セイバーだった」
「……そっか、確かに、黒い剣士だものね」
沈痛な表情でしたくもない納得をする遠坂。ああ、セイバーが二人いるということは、やはり彼女も黙殺らしい。
「しかもそれだけじゃなくて、リボンのお嬢様が、白いリボンの腹黒家政婦だった」
「そう……」
もう、今にも泣き出しそうだ。俺も、遠坂も。
ヤバイ、やば過ぎる。
何がやばいって、不必要な発言さえしなければ違和感がない辺りが致命的だ。
それに騙されて近づこうものなら、わが身の安全は保障できない。
いい加減ぎりぎりのキャラ設定だが、あのブラックコンビは、流石にどうなるか分からない。
あのクスリとか、あの戦いとか、エレイシアとかむしむしおじいちゃんも真っ青の展開になることは間違いがない!ちなみにこの二人は地下室と蟲つながりだ!
これ以上このSSがぶっ飛ぶのはだめだ。それこそ手が後ろに回る。
結論。あの二人には、触れるな!
「よくわかりませんが、早く御飯にしましょう」
と言ってこちらをせかすのは、遠坂の隣のノーマルセイバー。
「良かった。こっちの白セイバーは良かった」
多少元気がないが、いつもどおりのセイバーに(おそらく御飯があまりおいしくないと遠坂が教えたせいだろう)なぜかとても癒される俺。
「『しろせいばー』、ですか?」
くうぅ、これは、嬉し涙なのか?ああ、そんな首を傾げて考え込む仕草すら愛らしい。
「さ、士郎、癒されてないで、昼ごはん早く食べないと」
「あ、ああ、そうだな。皆はどうする?」
「ライダーに頼んだわ。彼女、器用だし、やってくれる、っていうから」
「お帰りなさい、士郎」
なんだかすごい言葉を聞いたところでやってきたのは、三つのお盆を持ってきたライダー。
「ああ、ライダー。ご苦労様」
「いえ、これぐらいでしたら。で、セイバーが大盛鯖味噌定食、リンがトマトサンドとミルクティー」
それぞれの前に品を置く。
「そして、私がAランチ。士郎、何か買ってきましょうか?」
因みにライダーが食べているAランチのデザートが存在するであろう位置には、赤い血液パックが置かれている。いや、共通点『赤』しかないから。
「……今戻ってきたのにそんなことをさせるわけには行かないだろ。自分で買ってくるよ。わざわざありがとう、ライダー」
「いえ。どういたしまして」
「……なるほど。自分から言い出して何をたくらんでいるかと思えば、そのような魂胆があったとは。やはり貴様は侮れん。そもそも、姑息な手段を使って士郎に取り入ろうとは……」
「何のことでしょうか」
なんだか分からないがいきなり火花を散らす二人。
この二人はケンカしっぱなしだ。いや、案外仲が良いのかもしれない。ケンカするほど、なんとやら、だ。
さて、昼飯だが。適当なあたりで、菓子パンでも……。
「シローウ!」
どこかで聞いたような声と供に。
ドカーン!
見事な破砕音の元、食堂の廊下側の壁が根こそぎ破壊された。衝撃波が、あたり一面を吹き飛ばした。

4: EVIL (2004/04/16 00:31:08)[madama0079 at hotmail.com]

interlude

さて、それでは、今回も!
ガンダムFATE!
レディー・ゴー!

interlude out


立ち込める煙、響き渡る悲鳴、そして、ガシャガシャと聞こえる金属音。
巻き起こった土煙で役に立たなくなった喉と眼は使い物にならないが、大きな音で麻痺しかかった耳は、まだ何とかその機能を果たしてくれた。
「……幾ら待っても、中庭に来ないんだから。こんなことだろうとは思ってたわ」
その耳で捕らえた、この声は。
――イリヤ?
しまった。
ブラックコンビが強烈過ぎて忘れてた。
「クソッ、ゴホッ、か、い、イリヤ、一体、何事!?」
「酷いな、シロウ。レディを待たすなんて。あんまり遅いから、ドレスアップしちゃったじゃない」
ああ、声が怒ってる。私のものにならないと聴かれて断った時並だ。このままに人形にされるわけにもいかないので、何とか涙で埃を洗い流し、イリヤの姿を確認する。
――なんてことだ。
白を基調とした、あまりに神々しいその姿。様々な機構を秘めているに違いない技術の結晶たるその姿。
それは正に完璧。英語で言うとパーフェクト。
ゆえにそれは、こう呼ばれる。 

パーフェクトガンダム

というか、その気ぐるみ(顔が出てたりする)をかぶったイリヤなんだが――!
「古過ぎるって!幾らなんでも、若い人置いてきぼりだから!」
「大丈夫。最近復刻されたみたいだから」
「そういう問題か!?」
「そうよ。それよりリン!」
「ん?なによ」
なぜだか、この異常事態に大丈夫そうな遠坂さん。吹き飛ばされた状態の机の脇から身を起こす。
「嘘をついたわね?何が『授業中に気がついてそっちに行くことになるから大丈夫』よ!」
「知らないわよ。本当の物語なら、士郎が授業中貴方の存在に気がついて行くかどうか決定するんだから。士郎がずっと居眠りしてたのは私のせいじゃないわ」
制服をはたきながら、説明する遠坂。うわ、随分と余裕くれてやがりマス。
「遺言はそれでおしまい?随分つまらない、胸も寿命も足りない人生だったわね?まあ、貴女がきちんと私が愚かでしたごめんなさい、って謝ってくれるなら何とかなるけど?」
「――貴女に成長について言われるとはね。それとも、貴女は現実認識が出来ないの?またどこかでサーヴァントを拾い食いでもしたの?」
「あら、私はいいのよ。これから先いくらでもファンディスクで補完してもらえるもの。成長後とか、ハッピーエンドとか。でも、もう貴女は終わってしまっている。不完全な完成と、未完成の不完全、これから先に希望があるのはどちらかしら?」
「有りもしない夢を抱くのは自由だけど。そんなこといっててまったく問題にもならなかった女の子がいるのを知らないわけでもないでしょう?完成していない作品は、作品ではないわ」
「セイバーがいるならセイバーに。サクラがいるならサクラに。自分が居るにも拘らず、元から周りに居た人達にシロウを持ってかれたくせに。現実認識が出来てないのはどこの誰?だからたくさん出番がある割りに、自分のルートでしか手に入れられないのよ。そのルートだってセイバーと桜が居ない時に何とか篭絡できたんでしょう?アベレージ・ワンとかいっても、器用貧乏ってことでしょう。貴女って、結局二流以下の作品なのよ。もし私があなたのルートで生きてたら敗北は必至なんだから」
「吼えるだけなら自由でしょうよ。――さっきから聴いてると希望的観測も良いところね、イリヤ。そんなことだから無敵のヘラクレスが敗北して、何度も士郎を殺して、挙句の果てには士郎は貴女じゃなくて桜を選んじゃうのよ」
……なんで、今この場はこんなにギスギスシテマスカ?
俺もう、そろそろ泣いていいですか?
お互いにお互いをただ傷つけあうだけの言葉。二人の発言が痛すぎます。
――しかし、冷静に考えると、イリヤがやはり不利だ。
だって、彼女は、結局サブキャラなのだから。
「希望的観測?今回貴女が私を遠ざけた事実が良い例だと思うけど?」
「事実、ね」
そこで、遠坂が、不敵に笑う。心の底からのデヴィルスマイルだ。
「む。なによ」
「まあ確かに――これ以上は時間の無駄みたいだから、あなたに現実というものを教えてあげるわ」
現実とは――なんだ?
「戦闘力で現すと、貴女は80で、桜は97、セイバーは297、私は340。わかる?あなた、アーチャーの127以下なのよ?」
桜もだけどな。
「そ、それは――」
「そういうこと。現在(2004/4/15、21:57)の登録SS数の数よ。もう少し言うと、月姫のヤオイ好きの87にも負けてるんだけど?」
「く――」
確かにそこを突かれては、もはやなんともいえまい。
「で、でもあの月姫のキャラは――」
「随分前から存在してるから、っていうのは無しよ。如何に有名とは言え商業と同人のを比較するとやはり人数に差があるし、そもそも、おおもとのSS総数だって、大差ない」
「――――」
「何より、あんなキャラと比較対象になる時点ですでに、貴女はだめだめなのよ」
もう俯いて肩を振るわせるだけのイリヤにそこまで突っ込みますか。鬼ですか貴女は。
「本編でルートがない女は、こんなところまできても影が薄いのね。せいぜいがブルマを穿いて、マニアックな人たちにピンポイント爆撃するぐらいが関の山かしら。まあ、あれよね。ここでは脇役といえども、世界は私の出番を求めているのよ。ヒロインはつらいわ……ん?なにか文句でもあるの?似非ヒロインさん?」
女の戦いって……
「…く…ふ……ぅふ」
「えーと、あの、イリヤさん?」
「ふ、ふふふふふふふふふふふふふふ」
うわぁ!泣いてるかと思ったら、良い感じに逝っちゃった目で笑ってます!
「貴女を、殺します」
いやいやいやいや、確かにイリヤ、君の瞳は赤いけどー!?
そんなツッコミを入れる間も無く、構えた武器が火を噴く。
「チィッ」
そんな声を残して緊急回避する遠坂。いや、その身体機能はどうよ?
「避けるなこの――!」
と叫んではなった一撃が、遠坂のアゾット剣で弾かれる。
……どこからだした?
「あなたがそう来るなら、私にも考えがある。イリヤ。そんなおもちゃキャラでは――この遠坂凛には通用しないわ」
剣を構えなおし、――左袖を捲り上げる。
「貴女の機体は重装型よね?まあ、正しく開発されたかどうかはともかくとして」
「――それが何よ?命乞いは聞かないわ」
「初期に開発された重装型と、後期に開発された重装型。普通に考えると、どちらが有利かわかるわよね?」
「何を言って……あ――」
そういうことか、遠坂。
赤い色、戦場用ナイフ=アゾット剣、ミサイル級の宝石魔術、そしてフィンの『ガトリング』とくれば――答えは一つ。
「ヘヴィーアームズか!?」
「そのとおり」
因みに、このアームズは『力が欲しいか』とか聴いてこない。
ていうか、ムチャすぎます!遠坂さん!幾らなんでも強引ですたい!
「残念ねイリヤ。本当に残念。もう少し分をわきまえたキャラだったなら、もう少し何とかなったでしょうに。主に私の引き立て役として」
「流石最もFATEに出ている女、先ほどから言うことが違いますね。この世が自分を中心に回っているかの如き思想。只者では有りません。やはり胸の話題に触れたのがまずかったのでしょう」
ていうか、なんで貴女は血液パック片手に観戦モード?
いつから英国の王立国教騎士団の切り札になりましたか、ライダーさん。
「く、この――本編の方ではサクラを殺す選択肢があって、今またここでも妹を亡き者にしようと!?そんなことして、ヒロインとしてどうなのよ!」
己の不利を悟ったか、イリヤは何とか相手の隙を探るべく相手の弱みを突こうとするが、さっきからの毒舌合戦で既になんだかよくわからない状態だ。
「まあね。ヒロインとしては良いとは言えない役どころね」
「―――え?」
「それは魔術師としては当然かもしれないけれど、人としては非道よね。それに、下種の勘繰りをすれば遠坂の家は『姉』の『妹』を間桐の家に売ったと、まあ、見ることも出来なくもないわね」
「は――?」
まさか全肯定されるとは思っていなかったのだろう。
イリヤがほうけた顔になる。
「さらに、桜が何をされているかも気がつかなかったし、イリヤが寒空の下待ってたなんて知らなかった。姉として、確かにそれはどうかと思う」
「なにを、言って」
「あっちの方でもこっちの方でも、妹を想ってはいたけれど、無視もしていた。ええ、それは確かに『姉』として、間違いのない大きな罪よ」
「一体何を――」
「でもね、イリヤ、これだけは言っておくわ」
何かを言いかけるイリヤをさえぎって、とても良い笑顔を浮かべる――
あかい■■■。
その髪を掻き揚げて、ハン、と鼻で笑う。
「『私に妹なんていないわ』」
ここで使うかこのあくま!
「だから、私は姉じゃないわけ。妹にしたら非道かもしれないけど、ただの女を相手にするなら、それはただの勝負よね?」
うわ、なんだか良くわからない、ていうか、破綻している理論ですよ遠坂さん。
「こ、の」
今にも泣きそうな顔だが、女としてのプライドでかろうじて持ちこたえるイリヤ。
「さよなら、イリヤ。出すぎじゃなければ、嫌いじゃなかったわ」
そして――
全弾一斉発射!
あたりに爆音と光と破片を撒き散らしながら、襲い掛かる魔術の嵐。
イリヤは何とか対抗しようと体を動かそうとして――きぐるみが邪魔で機敏には動けないようだ――吹き飛んでいった。
その吹っ飛び方はネオタイガーショットでも喰らわなければそうならないほど。
流石に悪魔と子悪魔では、勝負にならなかったか――。
「きゅう」
ありえない声を残して、パーフェクト・ガンダム・イリヤ、轟沈。渦巻きおめめはお約束らしい。特に大きな外傷がないところを見ると、気ぐるみが何とか守ってくれたようだ。
因みに、流れ弾が学食で端役Aをやっていた慎二の近くに炸裂し、第三新東京市に来たばかりのサードチルドレン並みに吹き飛ばされたが、そんなことにかかわっている余裕はない。
今こちらはそれどころではない危機に直面しているからだ。
「で、ライダー?」
なんで遠坂さんは、そんなきっつい目でこちらを見てますか?
「なんでしょう、リン」
「さっき、なんだか不穏当な発言をきいたのだけれど?」
ちぃ、これ以上被害を増やす訳にはいかん!何とかここはごまかして――。
「ああ、胸のサイズのことですか?」
何て直球!
「なに、気にすることはありません、リン。」
穏やかに告げるライダー。そこにはただ淡々と事実を語るだけで、卑下も蔑みもない、穏やかな顔があるのみだ。
「女の価値はそのようなもので決まるものではあり有りません。大切なのは、もっと別のものです。だいたい、胸などあったところで肩は凝るし、揺れて痛いし、戦闘の邪魔になりますし。まあ、アレですか。大きな胸が役立つ場面というのは、男性を篭絡する時ぐらいのものです」
……その男性に俺が入っていたりするのか?ライダー。
「重ねて言いますが、女としての価値に胸のサイズなど何の問題にもなりません。重要なのは、立ち居振る舞い、時折見せる色香、少しばかりのお茶目、何より、魂のきらめき。貴女は全て持っているではありませんか」
「まあ、そうだけどね」
あっさり認める遠坂。なんでさ。
うんうんと頷いて、良い顔で笑うライダー。
「ただ――それが私の足元にも及ばないが故に、今回士郎は私のものとなるだけの話ですから」
「ぶっ殺す」
宣言と同時にガトリング連射!
「ふ。無駄です」
ひらりひらりと全弾回避のライダーさん。
因みに俺はすでに射線からはずれ、さらに倒れ付した机を盾として強化。前に使った手だ。
「これならどう!?」
おもむろに掌を広げて、その中にある消しゴムやコインやサイコロなんかを指で弾く遠坂。
「全て、見えます」
ライダーはそれをジャンプで避けて――
全部で五発、軌道の曲がったそれを喰らうことになった。
「な!?」
墜落するライダー。
馬鹿な。何だ今の動きは。ありえない。
「甘いわよ、ライダー。何のために朝、あなたの体に触れたと思ってるの?」
「……何のことですか。今のはなんです?リン」
それは少し効いたのか、少しよろけつつも、臨戦態勢に移る。
制服ではなく、サーヴァントとしての衣服――。
「な、そういうことか、遠坂!」
「ええ、そういうことよ、衛宮君」
自信満々に宣言する遠坂。
「む!」
自分の体を見下ろすライダー。そこには――。
『的』の様な、黒い紋が、体に浮き出ていた。
「死紋十字斑!これで私の気を込めた攻撃は、必ず貴女に到達するわ」
「スナイパーかよ!」
「なるほど、仕組みはわかりませんが、すぐに発動しなかったのは、確実な一撃を決めるためですか」
「そうよ。朝逃げるあなたに使わなかったのもね。ただの魔力弾であるガンドはあなたには効かないだろうけど、弾が物理的にも強力にしたものなら話は別でしょう?しかもそれは避けられない」
「確かに。――流石はFATEの中で出てくる、唯一まともな魔術師、見事な策です」
「当然よ」
腰に手を当て、もはや私に敵はなし、みたいな余裕の表情だ。
「しかし」
ふ、と笑うライダー。
そう。しかし、だ。
「ん?なによ」
本人だけが気がつかない。
流石は遠坂。ここぞという時にボケをかましてくれる。しかも、こんな簡単な大ポカ!
「遠距離攻撃者が近距離攻撃を挑んでどうするのですか?」
「――あ」
と驚いた瞬間にはすでにライダーがその懐に潜り込んでいる。
とっさに何かを放とうとする遠坂の手を片手でひねり上げ、鳩尾に拳を叩き込み――閃光!
「ライトニングバスター!」
違うからそれも!
「くぁ……」
という微妙なうめき声と供に崩れ落ちる遠坂さん。意識を失ったことで、ライダーの紋が消えていく。
「大丈夫です。肋骨を折ったりはしてませんから。暫く寝ていてください。――この物語が終わるまで位は。さ、士郎」
「いや、何が『さ』なのさ」
「ふふ、言わずともわかっているでしょう?」
まあ、なんとなく予想はつく。物語の進行とか、いろいろお子様禁止な事態とか。
その前に言いたいことはいろいろあるんだけど。
「なあ、ライダー」
「なんでしょう。怖がらずとも大丈夫ですが」
「いや、そういうことじゃないんだ。もしかしたら知らないかもしれないけど、俺は前に、こういう場面に立ち会ったことがあってね?」
じりじりと近づいてきたライダーの動きが止まる。
「?どのような場面でしょうか。不可解です。説明を求めます。士郎」
どのような、というと。うん。ふじねぇが御飯を作ったり、昼ごはんがなかったりしたみたいな。そういう場面なんだけど。
「ああ、なんていうか、ライダーも結構ドジなんだな?」
遠坂ほどではないけれど。
なんだか怒った様子のライダーさん。
「撤回を求めます。私はドジではない。そもそも、あなたは何が言いたいのです?」
「あ、そうか。そうだな。うーん、何というべきか」
「士郎?――」
と、そこまで言って、ライダーはようやく。
彼女の存在に気がついたようだった。
顔だけ傾けて、横を見る。
そこに居たのは、銀の騎士。
当然完全武装。剣だって、鞘から抜いています。
何故そんなことになっているかは、先ほどまでのいろいろな事件で無残にも砕け散った食糧を見れば一目瞭然。
「懺悔を、聴いておかないと」
顔を伏せたまま、どこかの代行者のようなことを言うセイバーさん。
アレですか?やっぱりその後には転生も出来なくなるような、でかい一撃が来たりするわけですか?
魔力十分、怒り十二分。
ふ。避ける術はありませんか?
「魔眼で、動きを――」
無駄だよライダー。
クーフーリンがカラドボルクの前では一度敗北することが決定されている事象であるように。
その石化の魔眼は。
『キュベレイ』は。
フルアーマー『ダブルセイバー』に負ける運命なのだ。
「約束された勝利の剣!」
ああ、メガ粒子砲っぽい。
破壊の嵐に巻き込まれながら、そんなことを、考えていた。

5: EVIL (2004/04/17 23:32:26)[hotmail.com]

interlude

少年は言った。
「わかった、セイバー。美味いもん奢ってやるから!、五種類ぐらい!」
少年の友達は止まった。
その時、少年以外には、その食堂で動くものの影はなかったという。

interlude out


赤い空。
赤い雲。
赤い夕焼け。
今は放課後。
怒れる大魔神=セイバーを鎮めるために、俺は、今回限りの裏業を使うことにした。
それは功を奏し、今ここで、セイバーと平和に並んで商店街を歩くことに成功してる。
「で、シロウ、次はなんですか?」
「ああ、最後になるんだけど、この街にはタイヤキというものがあってな、味は……まあ、食べてみればわかるか」
「そうですか。ああ、楽しみですね」
そう。セイバーが食べたことのないものを連続しておごるという反則技を繰り出している。
財布のほうが財政難に陥る、という致命的欠陥はあるものの、それでも、セイバーが幸せに食べてくれるのを見るものは嬉しいものだ。
うん。別に暴れまくるのが怖いとか、そういうことではけしてない。はず。
その奢っているものの内容はここで語ることはしない。うん。
別にジャンボパフェが痛かった、とかそういう話はしない。うん。しないったら、しない。
くぅっ……。
「どうかしたのですか?シロウ」
「いや、別に」
ふ。上を向いて歩かなくちゃいけないようだぜ。
「――――!」
「む?」
セイバーが止まる。
その理由はわかっている。何か、危険な声を聞いたからだ。
「――――ぁ!」
その声が近づいてくる。
よくわからないが、同時に殺気が近づいてくる。
「シロウ、ここは危険だ!」
百戦錬磨のセイバーが進言するのだ。間違いなく危険だろう。
だが、しかし。
「むだだよ、セイバー」
「な、何を言う、シロウ?」
「タイヤキを食べることを決定した時点で、この出会いは回避できないモノだから。……そう。どうしようもない、決定された運命だったんだよ」
「……シロウ?」
だから、この手は使いたくなかったんだ。できればささっと家に帰って寝ていたかったのだ。しかししょうがない。
既に覚悟は決めた。
当然ここで来るのは、あのキャラ役になるわけだが。
さて。
誰が来るのか。
その道からやってくるものを索敵。
その危険なもの。それが吼えた!
「うがーーーーーーーー!」
肉眼で確認、パターン虎縞!
そういうことかふじねぇ!
最悪じゃないか!
「危ない、シロウ!」
突っ込んでくる虎に、セイバーが動く!
行動を阻止せんがため、振るわれた竹刀(なんでそんなもの持ってるのさ)の一撃をするりと避け、懐へ。
相手の速度と体重を利用し、タイミングを合わせてボディへ一発!
「う、ぐぅ……」
奇妙なうめき声をたてて崩れ落ちる虎。
流石セイバー。
放った一撃のエネルギーが確実に相手に響いているが故に、相手は吹き飛ばず、そこに崩れているのだ。
しかし、真面目な話助かった。出てきてすぐ、これほどの強敵が沈んでくれたのだから。 
蹲ってピクピク震えるそれは、もはや、我らが敵足り得まい。
「く、酷いじゃないセイバーちゃん!」
跳ね起きるふじねぇ。
なんでさ。
かなりいいのを貰ったはずなのに!
「なんでいきなり鳩尾に入れてくるのよう!」
「攻撃を受けたのでとっさに反撃してしまっただけです」
「なんて、こと」
いや、式の真似はいいから。
「む、タイガ、その手に持っているのは?」
確かに、ふじねぇは、右手に竹刀、左手に紙袋を持っていた。
紙袋の中身は考えるまでもあるまい。
ていうか、こぼれもしないのは何故なのか。
「これ?タイヤキ」
「ほお。私たちも食べに行くところだったのです」
「ああ、残念。いま全部買い占めちゃった。焼きたて」
「なんですと!?」
大人買いかよ。仮にも教師が。
さらには絶望にうちひしがれるセイバー。矢吹ジョーも真っ青の燃え尽きっぷりだった。
「焼き立てだから、おいしいよ?おすそわけ。あげる」
「な、なんと。ありがとうございます」
あっさりとわたすふじねぇ。あっさりと受け取るセイバー。
…………。
「ねえ、セイバーちゃん」
「はい、はんでひょう?ゴクン。タイガ。ああ、ありがとうございます。これは、おいしい」
きらきら光った眼をするセイバー。ああ、何て穢れのない。
今だけだけど。
「今見てわかったんだけど、セイバーちゃんは、男の子の役かな?」
「は、まあそうですが?」
「良し!」
といって、その手を引っつかむふじねぇ。
「は?」
「じゃあ、手伝いなさい。この街のどこかにあるトラストラップを!人形の代わりだから!」
「え?は?」
「良かった。ほんとに良かったよセイバーちゃん。貴女って、こっちの役では人形探す以外にたいして出番がないじゃない、だから、貴女が私の手伝いをするのは当然!」
いや、そんなことはない。
が、燃える瞳の虎に突っ込めるほど、俺は強くない。
「いや、あの、どういうことでしょうか?」
「うん。そのストラップには、願いをかなえる奇跡の力があってね、それをどこかに落としちゃったの」
「む、奇跡ですか」
「そう!それさえあれば、好きなことし放題!あの冗長した弟子にお仕置きできるし、道場ももっと増えるし、何より私のルートまで出来ちゃうのだ」
「それはすごいですが……」
流石に難色をしめすセイバー。それはそうだろう。そんな聖杯より怪しい話普通は信じない。トラストラップだし。
ていうか、どれもありえないから。取りあえず最後は確実に。間違いなく。
「このタイヤキ半分あげるし」
「わかりました、タイガ。いきましょう。どのあたりで落としたのですか?私のことでしたらお気になさらず。目的のタイヤキは手に入れられますし、何より情けは人のためならず、です。ああ、もし出来るなら取りあえずもう一ついただけませんか?そのほうが、なぜか私のやる気が出るような気がするのです」
変わり身はやっ!
先ほどのタイヤキはタイヤキの味をセイバーにわからせるための囮、いや、餌か。タイでセイバーをつるわけですか。
「やったね。んじゃー士郎。セイバーちゃん借りてくねー」
「申し訳ない、シロウ。しかし私は人として礼を尽くさねばならない」
「ああ、気にするなセイバー」
うん。セイバーをおとなしくさせるという目的は果たしたわけだし。
「それでは、シロウ」
「じゃーねー士郎。ふふふふ、今度は私のルートで出会うのダー」
ああ、頑張れよ。
と、遠ざかっていく背中に。声にならないエールを送るのだった。

6: EVIL (2004/04/19 05:06:26)[madama0079 at hotmail.com]

で、だ。
「どういうことかな、キャスターさん?」
「あら、気がついた?」
目の前にキャスターが居た。
「ああ、気がついたっていうか、これはどういうことか説明してくれっていうか、わかったからいいや」
「そう?」
そう。
今は夜。
家に帰ろうとして、急に体が動かなくなって、ふらふらとこの丘まで歩いてきた、否。歩かされてきたのだが。
「ああ、確かに夜に悪戯するのはあんただし、女狐繋がりだし、もういい加減どっちもキャラがネタ切れになってきたって言うか、ああ、もう!」
こんなことになるとは。少しは予測してた。
「で、一体どんな悪戯?ネズミ花火?こんにゃく?」
「悪戯?……ふふ、言いえて妙ね。悪戯ね、悪戯。ええ、いい響きだわ」
なぜか笑い出すミズ・メディア。
「ん?悪戯、じゃないのか?」
「いえ。悪戯よ」
……なんで貴女はそんなに良い笑顔ですか。
「少しぐらい貴方のことを改造しちゃうぐらいだから」
うわぁお。それはそれは。
「って、なんでさ!この世界でそんなことしたって意味ないぞ!?」
「意味はあるわ。セイバーをおびき出すための人形になってもらうの」
「セイバー狙いかよ!」
高速ツッコミ。
ああ、体が動かないことが悔しい。もし出来たなら神速で裏拳を決めていたところなのに。
「ええ、もちろんよ。セイバーを捕まえてウサギのヘアバンドをつけたり、白の水着を着せたり、ワンピースに麦藁帽子で川で水と戯れる様子とか、後は、ふふ、ふふふふふふふふ」
「このっ……」
なんてことだ。何てうらやましい、否、悪辣なことを!
おのれ、何とかここから逃げ出して、そんな悪の野望を打ち砕いてやる!
……なんてネガティブな正義の味方だ。
「安心して。腹話術の人形になるぐらいだから」
「どこも安心できねぇって!」
くそ、どうにかならないのか!?
動け!今動かなきゃ!今動かなきゃ!
「無駄よ。貴方ではその術は解けない」
にじり寄ってくるローブの女。
「くそ、やめろ、キャスター!ぶっ飛ばすぞ!」
「ほほほほほほ、ハッ!?」
いきなりその場から飛び退るキャスター。
そして、唐突に自由になる体。
わかる。夜の闇の中にあって、なお暗い。
黄昏よりも暗きもの。血の流れよりそれは違う。
ともかく、黒いそいつがやってきたせいで、俺が自由になった。
ああ、隠すのはやめよう。
「ありがとう。その、黒セイバー」
「問題ありません」
何の表情もないまま、黒セイバーが言う、
「『くろせいばー』?……これは、どういうことかしら」
「いや、あんたは知らないかもしれないけど、いるんだ、こういうキャラが」
そのまま難しい顔になってしまうキャスター。
「シロウ。確か原作では女狐を追い払うのは、私の役どころのはず」
「いや、たしかにそうだ、けど」
たしかに、どっちの原作でもそうです。学校だったり、衛宮邸だったりはするけれど。
「でも、黒くはないだろ?」
てか、なんでここに居るのさ。
「受けるが良い。我が法具を」
無視された。
と、黒のヘルムが発生し、目元を覆う。顔を隠すキャスターとあいまって、このとき、この場は確かにマスカレード(仮面舞闘会)。
おなかの辺りに手をやる黒セイバー。
いや、腰だ。そこにある甲冑……ベルトに手をかける。
黒い聖剣の赤い紋様の色をした剣が出てくる。しかし、その武器は――
「リボルケイン!」
「仮面・セイバー・ブラックってことかよ!ていうか、そういうのは、『ライダー』だろ!?」
「正確には『仮面セイバーブラックRX‐78』ですが」
「いや、それは混ざりすぎだから!『‐78』とか!」
「この名前になると二段変身後のいまいちセンスのない名前、『ロボセイバー』を回避できるのですが?ちなみに、黒い影に飲まれることにより『バイオセイバー』として特殊移動が可能になります」
「頼むからツッコミどころは一つにしといてくださいよ!黒セイバーさん!」
「シロウは、我侭」
「俺か?俺が悪いのか!?」
頭を抱えてうずくまる。様々な意味で大ピンチ。
「なんだか良くわからないけれど、まあいいわ。このまま貴方ともう一人のセイバーを捕らえて二人で、いえ、私もロリータ大変身して三人で白と黒のゴスロリ祭りを開いてあげる」
「……なんでさ」
ていうか、そんな自分のルートが消えたからって、そのネタをここで使わんでも。
「出来るかな、キャスター」
思い切りやる気になる黒セイバー。
「戦闘員の皆さん!」
号令一過、そこかしこから沸いて出る竜牙兵達。
「ふ、むだだ!」
言って切りかかる。一振りで、まとめて数体が粉々になる。
「む!やりますね」
「当然」
「しかしまだまだ!つぎはこれでどうです!」
いきなり消えるキャスター。空間転移か!
そして、どこから現れたのか巨大な岩が、複数、黒セイバーに降りかかる。
「む」
セイバーは恐ろしいほどの剣の冴。だが、
空間転移とダミーにより空間を乱れ飛ぶキャスターには無効。
如何にセイバーが強力だとて、当たらなければ意味がない。
直接魔力を当てるのではなく、魔力により大きく重圧をかけた石を大量に浮かべ大きく加速させセイバーに向かって降り注がせている。
いかに英霊といえでもその石の一撃を受けることは危険で、当然セイバーは迎撃するわけだが、そのタイミングを狙って足元の地面をいじり、陥没、隆起、汚泥と化し、十分な行動をさせないでいる。
単純な魔力では彼女には通用しないので、物理攻撃を狙ったわけだ。
なんだか強いぞキャスター!そんなこと出来るかどうかはしらないが!
「シッ!」
「まだまだ!」
戦いに気を取られている二人。
む。今がチャンス。
この場から離脱すべく、一息に脱出できそううなところまで下がる。
よし。ここで。
一気に駆け出そうとしたところで、後ろの気配に気がついた。
ゆっくりと振り返る。
そして、そこにいる人物に始めて気がついた。
その立ち姿。
相変わらず涼やかにして華麗――されど、無駄なし。
「……アサシン」
「ふむ。セイバーのマスターか」
いつでもこちらを切って捨てられるその立ち位置で。
ただ静かに戦場を見やっている。
「……アサシン」
「なにかな?」
死に直面したこの状況。ギャグキャラとなってもなお凛々しいその姿。
下手なことは、すぐデッドエンドに繋がる今、この時。
ああ、そうだ。ギャグなんだから、いつバッドエンドに行っても仕方ないのに、何とかここまで生き延びられた。
できれば、このまま平和に一日が終わって欲しい。
だが、しかし。
これは――例え切られることになろうとも。これだけは聞いておかねばならない。
「お前はなんで、ここにいる?」
「うむ。詳しい話はわからぬが。女狐キャスターの傍にいるのはアサシンたる私であり」
そして、彼にしては珍しいことだが、どこか自嘲をこめた顔で笑う。
「――古風な人間なのだそうだ」
古風、だな、確かに。
「………そうか」
「そうだ。なかなか酷というものだろう?」
確かに、古風つながりだけど――
なんでさ……


結局、異様に盛り上がる人達を置いて、寺もとい丘からさっさと撤退。
あのままで行くとシャドームーンすら出てきそうだったからな。二刀流のアーチャーとかどうよ。
まあ、いまごろはすごい勢いで寺の敷地を削り取っているのだろう。
あ、なんか光った。
んで、現在は自室のベッドの上。
ライダーは夜の散歩(意訳:吸血行為にれっつらごー)らしく、まだ帰ってきていない。
ふむ。危ないところだった。おそらく俺にやろうとしていなかったからだろう。もし桜にばれでもしたら……
――本当に危ないところだった。
何とか今は桜さんも就寝中。ルールブレイカー投影により黒い影と縁を切ったせいではないだろう。と、思いたい。
…………
さっさと寝よう。全てを忘れてただ眠る。すばらしい。
布団に入って、横を向き。
「…………」
黒猫と眼が合った。
「なるほど。ピロ役は君以外にはいないな」
確か原作では、(その飼い主と一緒に)布団に入ってきたりするのだが、レンの性格を考えるに、それを求めるのは酷だろう。
俺も求めないし。
「まあ、いいや。おやすみなさい」
そして、眼をつぶる。
ああ、明日の朝にはこのばかげた物語も終わっているだろう……。
明日の、朝になりさえすれ、ば……


Repeat again


朝!
朝はまだかー!

                                FIN?




疎遠だった父親の死。
温かく迎えてくれる四人の従姉妹。
毎夜繰り返される血と破壊の夢。
そして癒される(アヴァロンで)痕。


原作のイメージを粉に砕いて粉塵爆破!
EVILが送る、ギャルゲーの始まりで主人公が大抵夢を見ているということを逆手に取った、『混ぜるな危険!〜北の国から少年闇鍋〜』に続く、やってはいけないクロスオーバーシリーズ第二段!
今度はあのメーカーのあの作品とかだ!

秋葉「私が長女とはどういうことですか!?」
桜「次女、ですか…………ふ、ふふふ。そうですか……」
翡翠「私が三女、ですか。はあ」
セイバー「そうですか。私が四女ですか。……え?また、髪?」

混ぜるな危険!〜草葉の陰からムーンライト電鉄〜

近日公開、しません! 

7: EVIL (2004/04/19 05:07:26)[madama0079 at hotmail.com]

あとがき

まず始めにお詫びを。
このSSを投稿した際に、傾向等を記入し忘れました。申し訳ありません。

連載モノなのですが、一回一回の長さがばらばらなのは、故意です。
それぞれ、コンセプトに基づいて書いていたものです。それぞれの回に副題まで用意していました。いえ、個人の中で、ですが。
なぜかSSを書く時間的余裕に恵まれ、例え数キロとはいえほぼ一日一話のペースでかけたのは、個人的にすごいことでした。
さて、このSSは、今回あとがきを書いている時点で終了です。
長々とお付き合いありがとうございました。


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