聖杯戦争 もう一杯 まる20と21


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1: 微妙 (2004/04/11 18:50:18)[sevenstar_2 at hotmail.com]

焼けた居間を魔術で修理した後、簡単な紅茶タイム

「それにしてもさっちんが固有結界使えるなんてな」

「全く、真面目にコツコツ魔術を学んでる私の立場がないわよ」

なんだか遠坂は機嫌が悪い

「けど魔力を吸い上げるってそんなに強いのか?
 アーチャーはたんに相性が悪かっただけだろ」

「あれはまさしくサーヴァント殺しの固有結界よ
 バーサーカーは敵が生きてる限り魔力の供給が尽きない、敵は居るだけで衰弱していくのよ?
 しかも復元呪詛まで持ってるんだから
 少し戦い方を学べばセイバーやギルガメッシュに並ぶ化け物サーヴァントになっちゃうわよ、あの子」

なんだか良く分からないが

「まぁ、味方でよかったって事で」

そう結論付ける俺を

「分かってないわ、士郎貴方は何も分かってない」

怒りを込めて睨む遠坂

「無料なのよ!?無料で固有結界をだしてんのよあの子!」

バン、とテーブルを叩きながら力説する

「私なんて魔術一発で家が建つのに!
 その家一個分の魔術より強烈な固有結界を0円で出してんのよ!?
 分かる!?タダ!無料!打ち放題の使い放題よ!?しかも吸い上げるですって!?
 無料どころか、
    得 し て る じゃ な い!!」

「わ、分かった遠坂
 分かったから落ち着いてくれ・・」

「全く!宝石魔術はこんなに金が掛かるのに!
 投影魔術はいいわね!金を掛けずに使えるようで!?」 

「あ・・・う・・・」

「私は家計を真っ赤にしながら魔術を学ぶってのに
 あんたらは一切金を掛けずに魔術を覚えてくのね!?」

「・・・ご、ごめんなさい・・」

遠坂から食費の徴収は諦めてあげよう・・

「そこ!同情の眼差しで私を見ない!!」









聖杯戦争  もう一杯  まる20










暗い街を歩く男
男は暗い街より尚暗い

(真祖の姫君、近くに居るのか)

気配が近くにあるのが分かる

(それとは別に二つ気配がある、これはいつぞやの成り立てとアーサー王か)

取り込んだ老人は存外役に立った
聖杯戦争の事は全て知っていたし、何よりアーサー王の情報が助かった

(正面からではエクスカリバーの餌食、と言うわけか)

敵は多い、だが一人ずつ確実に取り込んでいけば問題なく全員倒す事が出来る
アーサー王は成り立てと共に居る
真祖の姫君は万全の状態で来るだろう

(ならば食らうべき相手は決まっている)

直死の魔眼
真祖さえ殺しきった究極の力














高級ホテルのスイートルームの中

「で、あんたなんなんだ?」

隠れていた男と対峙する
技術は自分と比べるべくも無い、熟練した暗殺者
七つ夜の動きを知っているからなんとか避けられただけだ

「・・・・」

黒い影は語らない
殺す相手に話す事など無いと言う事なんだろう

「だったら俺も、本気でやる」

先生に貰った眼鏡を外す

―――直死の魔眼
視界にあるもの全ての死を視る魔眼

獣じみた、鋭い疾走
ほんの少し、対峙した男の顔が驚いた様に固まるのが見えた

一瞬で距離を詰め、下から突き上げるように短刀を突き出す







下から突き上げられたナイフを鉢で弾け、一瞬で反撃に転じる

(驚いたな、これは七つ夜の体術だ)

敵は俺の鉢を体を捻って避け、その場で再びナイフを振るう
それを弾き、俺も反撃に転じる

(なんとも妙な戦いだ)

相手も俺も同じ体術だ
程度あるが、攻撃は予測できる
敵が攻撃をかわすのも予測できる、そして後に来る反撃も

(それにしても)

敵のナイフを一際大きく弾いて
後ろに飛ぶ

(まさか生き残ってるのが居たとはな)

あの化け物を相手にして
七つ夜は全滅すると確信したんがなぁ、何事にも例外はあるって事か
少し嬉しいな






「ネロ・カオス・・志貴の居るホテルに向かってるの?」

気配がホテルに向かっている

「追うのか?」

当たり前の事を聞くランサー

「当然でしょ、
 志貴の魔眼を使わせたくないから私達が出てきてるのに
 ネロが志貴に会いに行くのを許したら本末転倒じゃないのよ」

「そりゃそうだな
 で、どうするんだ?」

「私は少し遅れるわ
 あなたが足止めしといて」

できる?と尋ねると

「出来ないわけ無いだろ」

と、楽しげな声で言った

「任せるわよ」

「見事に足止めしといてやるさ、お姫様」









道路を小走りに走る二人

「さっちん、ネロ・カオスを殺すベストってなんでしょうね」

「シュレッダーに掛けてミキサーでシェイクした後、焼却処分にするのが一番だと思う」

「・・・・まぁ、可能であるならそれもいいかも知れません」

「それよりセイバーさん
 ネロ・カオスより強力そうなのがいるんだけど・・・」

「それなら気にしなくてもいいですよ
 血を吸わない、いい吸血鬼との事ですから」

ふーん、と鼻を鳴らすさっちん

「さっちん、
 気配が近い、急ぎましょう」

「その人となら友達になれるかも」

ぼそっと言ってセイバーに遅れないよう足を速める







戦い出して一分そこら

(思ってたほど訓練を積んだ訳じゃないみたいだ)

七つ夜の体術でも基本的な戦い方だ
この年って事は、七つ夜が潰れた時はせいぜい7つか6つだったんだろう

(まともに訓練なんて受けていなかった訳か?)

考えながらも手は止まらない
一撃一撃、必殺の場所へと鉢を打つ

(それでも手強いって事は才能があって、そこそこ場慣れする機会があったんだろう)

全てを見事にかわしながらナイフを振るう男

(大したもんだが、まだ尻の青いガキだ)








目の前まで突き出された鉢が急激に軌道を変える

「っく!」

軌道を変え、首を狙いに来た鉢をナイフで受ける

(折れたりしないでくれよ)

俺が七つ夜の体術を完全に習得した訳じゃないのがばれたらしい
知らない技、コイツだけしか知らないであろう攻撃が繰り出された

もう一本の鉢が俺の頭を砕きに振り下ろされる
それを体ごと後ろに飛んで避けた

「・・・・くそっ」

意思とは反して毒付いてしまう
明らかに俺より技術は優れている

「!」

瞬きした後見た視界に、男がいない

――――ヤバイ!

勘に任せてその場を飛び退いた
そのほんの一瞬後

ヒュ!

と俺の首があった位置に鉢が突き出されていた
男は天井からぶら下がっている

少しだけ驚いたのか、ちょっと目を見開いていた

(化け物みたいな動きをするな・・
 直死の魔眼も、こいつ相手じゃ役に立たない・・)

「そんなに渋い顔するなよ、俺の技を避けるなんて大したもんだぜ?」

す、と天井から降りて気軽に話しかけてくる暗殺者

「殺し合いの最中に話しかけるなんて余裕だな?」

「俺も初めてだな、殺しの最中に話をするなんて」

「ついでに見逃してくれたりしない?」

俺が言葉にくく、と口を歪ませる男

「別にいいぜ、
 俺はサーヴァントかマスターを殺す為に来たんだしな
 大体、最初に喧嘩売ってきたのはお前だろ?」

それは意外な言葉だった

「意外そうな顔するなよ
 実はちょっと嬉しいんだ、七つ夜の連中は全員死んだと思ってたからな
 もしかしたら俺の息子も生きてるかもしれない」

「あんた、あの日居たのか?」

「うん?居たに決まってるだろ俺はあの日死んだんだからな」

その言葉をふーんと聞いた後

「名前は―――?」

と、聞こうとした瞬間


―――ドクン


と、七つ夜が反応した

「なんだ・・・?」

「近くに何かとんでもないのが居るみたいだな
 ったく、お前ともう少し話をしたかったが仕方ない、それは化け物を殺した後にする」

男は面倒臭そうに言った後部屋を後にする

(敵が居るのか、アルクェイドが隠していた事かな?)

ナイフの冷たい感触を確かめた後
部屋を出る













ネロ・カオスが歩く路上
何も無い虚空に突然光が集まり、炸裂する

「ふむ?」

ヒュ!

炸裂した光の中に一筋、赤い閃光が走しり

ドカッ!

瞬間、ネロ・カオスの体は数メートル吹き飛ばされた

「ヒュゥ、まさか目の前に出されるとはな」

「サーヴァントか・・」

「突然で悪いな、礼呪で飛ばされちまったんだ」

俺はいつもの調子で敵に告げる

「なるほど、真祖のサーヴァントか」

「そう言う事
 急いでる所悪いんだが、少し遊んでこうぜ」

「失せろ」

ネロ・カオスの体から獣が飛び出す

「はっ!つまんない奴だなお前!」

現れた獣達を一瞬で薙ぎ払い
必殺の間合いに入る



「ゲイ―――

  ――――ボルグ!」


槍の軌道が捻じ曲がり、心臓を貫く

「・・・?」

「それがどうした」

ネロの体から巨大な口が現れる
それをかわして、距離を置く

(どういう事だ?ゲイボルグが効いていない?)

目の前の敵はコートの中から次々と化け物を出している
まともな獣はほとんどいない
生前、よく見た連中だ

「貴様ゲイボルグと言ったな?
 なるほど、クー・フーリンか」

「どうでもいいけどよ、
 あんたの体どうなってんだ?」

「この身は直、混沌になる 
 666の因子を持つ我が身が、人の体を保っているわけが無かろう」

「訳わかんねぇこと言う奴だな・・
 まぁ、666回殺せばいい話だろ?」

「痴れ者が」

俺を取り囲んでいた神話の住人達が一斉に飛び掛る

(流石に足を止めては捌ききれねぇが)

最初に飛び掛ってきた化け物の頭を一撃で叩き割り
化け物共の中に飛び込む

蟹のような蜘蛛の頭に乗り槍を突き立て
その場を飛び
天馬の首を落とす

(なんてことない、割といつも通りだ)

あっと言う間に化け物共を綺麗さっぱり掃除する

「で、次は何が飛び出すんだ?」

「・・・・なるほど、優秀な英霊だな」

「サーヴァントってんなら誰だってこれくらい出来るさ」

そう、きっと出来ないのはモヒーだけだ

「まぁ、大した問題でもない」

泥になった化け物達がネロの体に戻っていく

「貴様も私を殺す事は出来ないのだから」

そう言ってコートを翻し
再び神話の獣達をその身から繰り出す
ミノタウロスにキマイラ、見たこと無い奴、ジジイ


――――ジジイ?


「失敬」

瞬間ジジイを飲み込もうとネロの体から巨大な口が現れるも

シャシャシャ!

避けやがった・・・
無駄に機敏な動きをしたジジイは
華麗なステップでこっちによって来て

「クカカカカカ!
 ネロ・カオス!油断しおったなネロ・カオス!
 さぁどこの誰とも知れんサーヴァントよ!ワシを自由にするべくネロ・カオスを滅ぼせぃ!」

グシャ

「ひでぶっ!」

「あ、わりぃ
 こんな簡単に死ぬとは」

とりあえず槍を叩き落したら、あっさり頭が潰れて逝った
・・・・まぁ、いいか

2: 微妙 (2004/04/11 18:53:18)[sevenstar_2 at hotmail.com]


「セイバーさん!あそこ!」

私が指差した場所に、無数の獣と対峙したランサーの姿が見えた

「ランサーが戦っているのですか!?」

「よく分かんないけど行こう!」

「分かってます!」












聖杯戦争 もう一杯 まる21








「ん?不幸な嬢ちゃんじゃねーか」

助けに行くと、いきなり酷い事言われた

「お互い元気そうで何よりだね、青タイツさん」

笑顔で返す

「ランサー、状況の説明を」

「そうだな、今なんかひでぇ事言われた」

この人駄目だ

「真面目に話して下さい」

「解ったよ、俺のマスターに言われてコイツを足止め中」

「なるほど、貴方のマスターは確か真祖だったんでしたっけ」

「まぁ、これだけ居ればこんな奴どうにでもなるけどな」

ははは、と気楽に笑って告げるランサーさん


「ふむ、これだけ居れば真祖の姫君であろうとも恐れる事はないか」


ネロ・カオスの言葉

「!セイバーさん、ランサーさん飛んで!」

ネロの意図に気付いた
この男は私達全員を取り込んでしまうつもりだ

セイバーさんとランサーさんは何となく危険を察したのか飛び退いてくれた
私もなんとか難を逃れる

「・・・なんだよありゃ?」

視線の先には襲い掛かってきた泥が居た

「あの泥に包まれるとネロの一部になっちゃうらしいの」

「なるほど、私達を手駒に真祖と戦うつもりですか」

「確かに俺らを取り込んじまえば怖いもんなんてないだろうな」

二人とも理解が早くて助かる

「さっちんとランサーは露払いをお願いします」

セイバーさんは小さな声で言う

「何か手でもあるのか?」

「完全に消し飛ばしてしまえばどんな化け物だって死ぬでしょう?」

「なるほど、分かりやすくていいじゃねぇか!」

言った傍からランサーさんが飛び出し、獣を薙ぎ払う

「お願いだから私に当てないでねセイバーさん!」

「分かってますよ」

私もランサーさんに習って獣達を薙ぎ払う、武器は持ってきていないから爪で
ますます吸血鬼っぽくなってる気がするけど今はそれどころじゃない

(獣達を倒しながら、泥を避ける
 なおかつエクスカリバーで殺せるように一箇所に泥達を集める・・)

大変だけどやるしかない
私の固有結界なんて迂闊に出したら警戒されて手が出せなくなる
セイバーさんのエクスカリバーを全開で使う事ができれば倒せる
前回のがエクスカリバーの力だと思っているのなら、いけるはずだ

私達は倒す手段はない弱者
ネロは時間がないけれど負けることなどない強者
それを演じ続ける

ネロの体に全ての泥が戻った時にまとめて消し飛ばすしか殺す方法がない
全部の泥をネロの体に纏める方法

(全部の獣を一斉に殺しつくすしかない)

私達を取り込もうとする泥をネロが体に戻すかどうかも分からない

(分が悪いんだけどね、やるしかないかな・・!)





「ったく、俺らじゃ殺せない獣が666匹に気を抜けば俺もそいつらの仲間入りかよ!」

近寄ってきた獣を串刺しにし、次の獲物を探す
が、覆いかぶさるように泥が迫ってきた

「ック!」

それを避けた所に獣達が待ち構えている

(単純で俺好みの解り易い作戦かと思ったが!)

待ち構えた獣達、5匹を一瞬にして槍で貫く

(とんでもなく面倒臭いじゃねえか!)

次々に増える獣達を片っ端から潰して回る




私は一番狙われているのか泥の量が二人に比べて多い

(風王結界があれば足止めできるんですが・・)

和服の女の直死の魔眼で殺されたからか
風王結界はもう作動しない

(これじゃエクスカリバー使えるタイミングがないですね)

とりあえず今はこの辺の獣を掃除する事を考える
一撃で殺せる獣達、しかしそれは消える事なくネロの体内へと還る
それが鬱陶しい

「―――!?」

直勘の警告、獣達の中に飛び込んで何かをやり過ごす

「なっ!」

それは獣、だが私達が戦っていた容易く崩れるもの等とは比較にならない

最強の獣


「少々時間が掛かりすぎた
 そろそろ決着を付けよう」

最強の獣が喋る
あれはネロ・カオスなんだろう
ネロ・カオスが体内の獣達を全て使って作り上げた究極の獣だ


「この身の一部になれる事を光栄に思うんだな」


―――早い!








「――っは!」

見えていたが、反応が遅れる

ネロ・カオスの突進は、周りに居た獣をもバラバラにしながらの物だ
私はそれを避ける事が出来ず、まともに吹き飛ばされる

ドガッ!

「い・・ったぁ・・!」

吹き飛ばされてコンクリートに叩きつけられる

(あんなのがいるの・・!?)

あばら骨が何本か壊れた
復元呪詛はこれを治すだろうが、立ち上がるのはちょっとしんどい

「あんなの、相手に出来るわけないじゃない・・!」

言いながら、立ち上がって迫ってきた獣を薙ぐ

(・・?黒い泥がいない?)

折れた骨が痛みを伝えてくるが
それ以上に、黒い泥が消えたのが気になる







「またとんでもない化け物になったもんだ・・!」

突進を避けながら呟く

(だが、あの姿になってから獣達が増える気配はない
 しかも取り込もうとしていた黒い泥は消えた)

好機だ、ここにいる連中を殺し尽くせば
あいつ一匹になる、そうすれば後はどうにでもなる

(とは言え、不幸な嬢ちゃんにゃ
 あれを避けながら獣の相手はしんどいか・・)

「嬢ちゃんはあの化け物の攻撃を避ける事に専念しろ!
 他の獣は俺とセイバーで殺す!」

嬢ちゃんは聞こえたのか頷いてくれた
あの嬢ちゃんに死なれるのはなんだか夢見が悪くなりそうだしな
これでいい、後は

「サーヴァントの中でも最速のランサーをなめんなよ!」

獣達を駆逐する





(ランサーがいてくれて助かった)

さっちんではこれは無理だ
こんな多数の敵と戦う経験なんてないだろうから

(私とランサーで敵を減らす!)

泥がいないなら私も自由に動ける

(さっさと片さないと
 さっちんが死んじゃいそうですしね)

周りの獣達を掃除していく






私がネロの突進を避けることに専念している間に
獣達は姿を消していた

(二人とも慣れてるから早い)

英雄って言うからには多人数と戦う状況もあったんだろう

(タイツさんって呼ぶの止めないとね)

あんなでも居てくれて助かった
後はセイバーさんがエクスカリバーで消し飛ばしちゃえばお終い

「セイバーさん!」



「解ってます・・!」

突進してくるネロを真正面から見据え
エクスカリバーを構える

「・・・正面から行けばエクスカリバーで吹き飛ばそうなどと思っているわけか?」

ネロの声が響き
突進を止め、横に飛んだ

「っつ!」

バレるのは当然か・・!
こうまで獣を減される間、突進だけしかしなかった理由があるんだろう

「この身に666の獣が集まった、
 不完全な状態ならまだしも、完全な状態の我を捕らえられる訳がなかろう?」

「それが突進だけを繰り返してきた理由か」

「なに、どんな作戦があるのか少々興味があってな」

声を聞き終える前に視界からネロが消えた

「――――!」

ガキィ!

剣で死角からのネロの一撃を受け止める

「ふむ、流石はアーサー王だ並みの相手ではないか」

言って再び視界から外れる

(早すぎる・・・!)

捉えられない
ランサーが敵の一撃を受けるも吹き飛ばされる

「ランサー!」

「セイバー、アイツの俺が動きとめてやるって言ったら信用するか?」

立ち上がったランサーの最初の言葉はそれだった

「出来るんですか?」

「あんまり俺を馬鹿にすんなよ?」

余裕有り気に笑うランサー

「信用します、見事に止めて見せて下さい」

「任せとけ」

それだけ言ってランサーは軽く距離を置く







(ネロ・カオスの動き
 俺なら何とか捉える事が出来る)

槍を構える
ゲイボルグ、必殺の槍

(視界にギリギリ黒い何かが写るだけなんだけどな)

ネロの動きに追い付く事は無理かもしれないが
視えるのならどうにか止めてやる

「ゲイ―――

必殺の槍に魔力を込め
   
  ――――ボルグ!!!」

投擲する

視界に写った黒い影に向かって突き進む槍

(手を離れれば確実に心臓を貫く槍、外す訳がねぇ!)

ドカッ!

槍は見事にネロを貫いた

「ぬぅ!?」







(見事ですランサー!)

槍に貫かれ、一瞬失速したネロ

(これならなんなく打ち砕ける!)

風王結界は既に無い
勝利の剣を振りかざし、名を紡ぐ

 エクス―――
「約束された


その名を紡ぐ


   ――――カリバー!!
       勝利の剣!!」


光が炸裂し、辺りの物全て消し飛ばす
















ネロを消し飛ばした後
とりあえず座り込む私とランサーさん、セイバーさんは立ったままだ

「お疲れさん、嬢ちゃん達」

「うん、ランサーさんもお疲れ様」

「確かに今回はランサーのお手柄でしたね」

「ははは!どうだ!見直したか!」

胸を張って堂々と言うランサーさん

「その台詞が無ければかっこ良かったのにねぇセイバーさん」

「台無しですね」

「・・・・まぁ、そんな事だろうと思ったけどよ」

拗ねちゃったかな?

「けどもうタイツさんなんて呼べないね
 命の恩人みたいなものだし」

「その内シロウの御飯を分けてあげましょう」

セイバーさんの中ではきっと最高の感謝なんだろう
多分

「アーサー王の褒美が飯かよ」

呆れた、といった表情だ

「それじゃ、私達はこれで帰ります」

「え、もう帰っちゃうの?」

「シロウがきっとあったかい御飯を作って待っているはずですから」

キリリと表情を締めて言うセイバーさん
こんな事に真剣になんなくてもいいのに

「ま、その内遊びに行く」

ランサーさんもどうやらお開きに賛成みたいだ

「祝勝会みたいのすると思ったのに」








「ランサー?ネロは片付いたみたいだけど・・」

入れ替わりでお姫様の登場だ

「ああ、通りすがりのサーヴァントに手伝ってもらったんだ」

「なにそれ」

納得いかない表情をしているお姫様
まぁ今日はこれで納得してもらおう、いい気分だしな

「あれ?志貴だ」

「なんだ、何かいると思ったんだけど・・」

坊主と・・・

「そっちのサーヴァントさんはどちら様?」

「ああ、その人は味方だから」

坊主が言う

「・・・・」

その味方のサーヴァントは何も言わない

「なんだ?無口な奴なのか?」

「クッ・・」

「・・・何にやけてんだよ・・?」

突然顔を歪ませたサーヴァントに思わず眉をひそめる
今日は大物仕留めたから休みにしたいんだけどな

「は、はははははははははは!
 なんだ!?お前が志貴だったのか!?」

サーヴァントは唐突に大笑いしだす

「そーか!お前がなぁ!生きてたのかよ!ははははははは!」

腹を抱えて笑っている
頭、大丈夫か?コイツ

「大丈夫かあんた?」

当の坊主も困惑していた

「くくくくく!大丈夫、なんだ生きてたのか・・ははは!」

「?」

俺達は顔を見合わせる

「何、気にするなよ
 お前が生きてたのにちょっとびっくりしただけだからさ」

それじゃな、と帰ろうとするサーヴァント
それを坊主が呼び止めた

「名前、聞いてないんだけど」

「サーヴァントは名前を隠すもんだろ?」

心底愉快そうに言いながら歩いていくサーヴァント

「じゃーな、お前が生きていて嬉しいぞ志貴!」

はははは、と高笑いをしながら去っていった

「なんだったの今の?」

「俺が知るかよ」

「・・・・・・」

坊主はぼんやりとサーヴァントが去っていった方を見ていた







家に帰ろうとした所、突然さっちんが
「遠野君の気配がする!愛の予感!?」
と、言うので見に来たんですが・・

「遠野君・・・かっこいい・・・」

草むらに身を潜めながら呟くさっちん
頬を赤くして上の空である

「さっちん、ここまで来たんですから会って来ればいいんじゃないですか?」

私もなんとなく草むらに身を隠す

「え、だ、駄目!今私の服ボロボロだし!」

「だからってこのまま帰るのもどうかと思います」

「う、うん・・・・分かった、そうだね心の準備が出来たら飛び出そう」

ぐっと拳を握って言うさっちん




〜10分後〜







「あ、あそこが志貴君の泊まっている部屋・・・!」

「さっちん・・・部屋番号メモってどうするんですか・・・」

はぁはぁ、と息が荒いさっちん
大丈夫なんだろうか?色々と

「よし!」

「心は決まりましたか!?」

「今日はここまでにして、帰ろう!再会するのは明日!」

「・・・・・さっちん」

「だ、大丈夫だよ!明日はちゃんと再会するんだから!」

絶対明日も再会出来ないんだろうなぁ、などと思いながら家路についた






―――――






諸事情によりネロ・カオっさんの強さが通常の3倍
ナンデコンナコトニ・・


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