ふぇいと/ますく・ど・ないと〜異英霊召喚譚2〜M・無し 傾・異英霊物


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1: ハウス (2004/04/11 02:12:35)[hausu7774 at yahoo.co.jp]


唐突だが夜中の遠坂邸地下室。
遠坂凛はサーヴァントの召喚をしていた。
目指すはセイバー。
触媒の良いのが無かったのは痛いが、そこは根性でカバーである。

「―――――――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば答えよ」

行ける。
自らの魔術行使の成功を確信する凛。
確かに感じた手ごたえを現実のものとすべく、最後の一節を高らかにとなえる。

「誓いを此処に。
我は常世全ての善と成る者、
我は常世全ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――――!」

エーテルが収束する。
不可視の架空元素によって、人の容が創り上げられる。
そして・・・・・・そこに現われた一体のサーヴァントは―――

「あれ、遠坂じゃん。久しぶり」
「―――なっ!?」

衛宮士郎だった。


【ふぇいと/ますく・ど・ないと〜異英霊召喚譚2〜】


「な、なんで衛宮くんが此処に!?」
「なんでって・・・・・・あ、サーヴァントとして呼ばれたのか。だったら答えは一つだろう。英霊なんだ、俺」

暢気な調子で答える士郎。
緊張感がまったく無い。

「英霊って・・・なんで!?」
「それがさぁ・・・」

片手を上げる士郎。
途端、その手がガトリング砲に変形する。

「―――!?」
「そう、あれはセイバールートの闘将・ハングリーハートでの事だった」
「へ?」
「お腹をすかせたセイバーにごはんを食べさせなかった俺は、はらぺこバーサーカーとなったセイバーに撲殺された上、悪の秘密結社トラッカーによって改造人間にされてしまったんだ」
「トラ・・・何?」
「そして俺は、トラッカーとの全27話、劇場版+DVD特典付きに及ぶ闘いの末トラッカーを滅ぼし、更に日本を狙って侵略してきた他の秘密結社とも戦って勝ち続けた。
たまには負けたりしたけど、ちゃんと山篭りして新必殺技を編み出したり謎の科学者ドクター・ティーゲルと弟子一号が作り出した新兵器を搭載したりして戦った。
その果てに・・・・・・いつしか俺は英雄と呼ばれるようになっていたんだ!!」

ぐっと拳を握り締め、滂沱の涙を流しながら語る士郎。
話の意味がまったく不明だったのか、はてな?と首をかしげる凛。
ちなみに士郎の外見が変化していないのは、改造人間だからである。

「えーっと・・・・・・とにかく衛宮くんは、未来の英霊なのね?」
「そうだ。クラスはアーチャー。ライダーの資格もあったんだけどな。よろしく、遠坂」

かくして、凛とアーチャーの聖杯戦争は始まる。

 ◆◆◆

「俺がお前でお前が俺で!?」
「いいか、俺。難しい事は言わない。ただ、セイバーにはちゃんと御飯を食べさせろ。俺のような身体にされるのは、俺一人で十分だ!」
「わかった、気をつけるよ、俺!」
「わかってくれたか、俺!」

ガシッと握手をする二人。
結ばれる熱き友情。

「サッパリ訳わかんないわよ、あんた達!!」

でも凛に怒鳴られた。
なんでさ。

 ◆◆◆

「喰らえっ『蹂躙せし回転弾装砲(ガトリング・カノン)』っ!!」
「■■■■■■■■■―――ッッ!!」

両腕の宝具を一斉射。
かすかに怯むバーサーカー。
しかし、それだけだ。
鉛色の身体には、傷の一つも付かない。

「くっ・・・・・・仕方がない。俺が弾幕を張っている間に、逃げろ三人とも!!」
「貴方はどうするのです、アーチャー!」
「安心しろセイバー。俺にはもう一つ、宝具がある!!―――来いっ『打ち砕く鋼の進撃(タイガー・ロケッティー)』イィィ!!」

現われたのは、トラを模した表面塗装の大型バイク。
車体前面のトゲトゲが悪趣味極まる。

「ひき逃げアターック!!」

Aランク判定の突撃攻撃に流石のバーサーカーも怯んだ。
その隙に、セイバーを横抱きにして逃げ出すアーチャー。

「勝負は預けた! 次は山篭りをしてから帰ってくるぞぉ!!」
「ちょっ・・・・・・放しなさいっ、アーチャー!!」
「うわー、お兄ちゃん卑怯!?」

バルルンバルルン。
非難を背に、そのまま地平線の彼方まで走り去って行くアーチャーだった。

 ◆◆◆

「ふむ・・・それで私に弟子入りしたいと?」
「お願いします! 葛木先生・・・・・・いや、おやっさん!!」
「良いだろう・・・・・・だが私の指導は厳しいぞ?」
「望むところです!」
「あのー、マスター? そのサーヴァントは、一応敵なのですが・・・・・・」
「諦めなさいキャスター。アーチャーは他人の話をまったく聞かない性質です。ええそりゃもう完全に、完璧に」

 ◆◆◆

「参道の上から落ちてくる地蔵を受け止める・・・・・・これを達成すれば、新たな必殺技を身につけられるはず―――こい、アサシン!!」
「心得た―――行くぞ、多重地蔵屈折現象ミサーイル!!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 ◆◆◆

「手酷くやられたな、衛宮士郎」
「遅いぞアーチャー・・・・・・ってゆーか、お前がセイバーを連れてったせいだぞ」
「なに、大丈夫。今夜は俺とお前でダブル衛宮だ・・・・・・ランサーなどに負けはしないさ」
「いや。だから人の話を聞けって」

 ◆◆◆

「俺のタイガー・ロケッティーとお前の天馬、どちらが早いか勝負だ!!」
「ライダーたるこの身にスピード勝負を挑みますか・・・・・・良い度胸です!!」
「あぁぁぁぁ・・・・・・もうすっかり聖杯戦争関係ないし」
「諦めましょう凛。彼にそのような常識的なツッコミは通用しない」
「・・・・・・はぁ、アレが未来の俺かぁ」

 ◆◆◆

「正直感謝するぜ、セイバー。全力で戦えた最後の相手が、お前だった事に・・・・・・少なくとも、アーチャーみたいなワケの分からんヤツとでは無くて」
「私も感謝しますランサー。私とてアーチャーと共同戦線を張ったり、色ボケのギルガメッシュと戦うのは正直気が乗らなかった。貴方が此処で足止めをしていた事に感謝する」
「ハハハ・・・アーチャーってのは、変なヤツじゃないとなれないクラスなのかもなぁ」
「ええ。同感です」
「エライ言われようね・・・・・・まぁ当然って気もするけど」
「ランサーのヤツ、もう消えそうな身体だってのに・・・・・・よっぽどイヤだったんだ」

 ◆◆◆

色々あって(全13話)ギルガメッシュとの最後の闘い!!

「ふん・・・・・・そのボロボロの身体とその不恰好な宝具で、我に勝てるつもりか?」
「どれ程敵が強くても・・・正義の味方に敗北は無い! バイクもキックもバルカンも、それだけではただの武器でしかないんだ!」
「何だと?」
「俺の本当の武器・・・・・・それは、この胸で燃える正義のスピリッツ!!」

傷だらけの姿で見得を切るアーチャー。
ギルガメッシュはその言葉を嘲笑う。

「ふははははははははははははははははははは!! 我を笑い殺す気か雑種! 良かろう、その妄想を抱いたまま死ぬがいい!!」
「割目せよギルガメッシュ。これが俺の最後の宝具だ――――――変っ身!!」

降り注ぐ無数の宝具。
その中で、アーチャーは大きく腕を旋回させ・・・・・・自らの中のスイッチを入れた。
腰に現われる、風車を内蔵したベルト型宝具『改造超人の風車(ヘンシン・ベルト)』!!

「ぬっ!?」
「仮面アーチャー、推参!!」

バッタを模したそのボディ。
100万馬力のその力。
両手に付いたガトリング。
胸に燃えるは正義の炎!!

「とうっ!!」

次々飛来する宝具を避けきって、仮面アーチャーはジャンプする。
空中で反転し、全身を回転させながら片足を突き出して放たれる蹴り―――
その威力で襲い掛かる無数の剣を弾き飛ばしながら、ギルガメッシュの胸を討つ!

「アーチャー・きりもみいぃぃ・・・回転んん・・・・・・キイィィィック!!」
「ぐわあぁぁぁ!? 都市国家ウルクに栄光あれえぇぇぇぇ!!」

ギルガメッシュは、何故か大爆発して―――散った。

 ◆◆◆

聖杯は破壊され、柳洞寺の境内を照らす朝焼けの中。
別れの時が訪れる。

「やっと・・・・・・やっと帰ってくれるのね、アーチャー」
「ああ、答えは得た。もう大丈夫だよ、遠坂」
「私、がんばるから。絶対に士郎をあんたみたいにはしない」

微妙に咬み合っていない会話。
けれど凛の気持ちは本物だ。
ぜったいに、こんな暑苦しい上に人の話を聞かない正義の味方になんか、士郎をさせたりしないと。
消えてゆくアーチャー。
けれど消えない記憶を胸に。
あの夜の排気音と銃声に向かって・・・・・・全速力で正反対に衛宮士郎は歩いてゆくのだ。


―――fin


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