Fate/stay night again 機銑察 憤貮改訂 その2


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1: タケ (2004/04/10 01:12:12)[tamaayu at sweet.ocn.ne.jp]



「洗いざらい、吐いてもらうわよ――――」
優等生モードから切り替えた遠坂が言う






――――夜はまだまだ長くなりそうだ――――





Fate/stay night again  〜The end of Night〜

前編



なんだか不思議な状況になっていた

目の前には学園のアイドルで
――――実はおっちょこちょいなところもある遠坂が歩いていて

背後には寄り添うようにしてセイバーが歩いてきている
正面から見ると背後霊のように見えるだろうことは、十二分に予測できる

――――他のマスターがいるんだから警戒するのはわかるけど、ちょっと近すぎやしないか?


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
みんな無言だ
沈黙を破ったらその瞬間、遠坂に襲いかかられそうな気がする

だから俺は
――――遠坂、よく知らない人の家で迷わずに歩けるよな
あながち場違いといえなくもないことを考えていた


「・・・へぇ、和風の家ってのも結構いいわね。あ、衛宮君、居間はここでいいのよね?」

そう言って居間に入っていく遠坂

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

遠坂には家捜しの才能があるかも知れない





電気を付ける

時計は午前一時を回っている
窓ガラスの割れた部屋はめっぽう寒い

「うわ寒っ!なによ、窓ガラス全壊してるじゃない」
遠坂の言うとおり、なにせ――――

「仕方ないだろ、ランサーに襲撃されたんだからさ。なりふり構ってる余裕無かったんだよ」
         ・ ・
だって武器がアレだったし

「あ、そういう事。てことは、セイバーを呼び出すまで、一人でランサーとやり合ってたの?」

「やり合ってなんていない、一方的にやられてただけだ」

回路が開いた今なら多少はやり合うことが出来るのだろうか?
――――いや、今はそんなことを考えてる場合じゃないか

「ふぅん、へんな見栄はらないんだ。・・・・・・そっかそっか、
――――ホント見た目通りなんだ、衛宮君って」
どこか嬉しいそうに遠坂は窓のほうに近づいていく

「――――――」

―――見栄はらないのが見た目通りってのは褒められてるのか?

そんなことを考えていると
遠坂は、割れたガラスの破片を手に取った
じっとその破片を見つめる

そして――
「――――――Minuten vor Schweiβen」

ぷつり、と指先を切って、窓ガラスに血を零した

遠坂の呪に従い
砕けていた窓ガラスはひとりでに組み合わさり、数秒とかからず、元通りになった

投影と強化しかできない俺と違って遠坂の魔術は多種多様だ

「遠坂、今の―――――」
やり方を教えてくれないか?と続けようとして止めた
覚えたって、どうせ俺には使いこなせない
ステンドグラスみたいなものが出来るだけのような気がする
壊れた窓を直そうと思ったら、それこそ投影して代わりの窓を作るしかない

「ちょっとしたデモンストレーションよ。助けてもらったお礼にはならないけど、一応筋は通さないとね」

「・・・ま、私がやらなくてもそっちで直したんだろうけど、こんなの魔力の無駄遣いでしょ?ホントなら
窓ガラスごと買い換えればいいんだけど、こんな寒い中で話すのもなんだし」

当たり前のように言う

・・・ん?
「俺、いつ遠坂の命助けたっけ?」
むしろ命を助けられたのは俺のほうじゃないか?

「はぁ、何言ってるの衛宮君。さっき、セイバーに殺されそうになってた時、助けてくれたでしょ?」

「いや、でもセイバーは俺のサーヴァントだから俺が止めるのは当然じゃないのか?」

「いいから、人の好意はおとなしく受け取って起きなさい。それとも、衛宮君はこの窓をもう一度叩き
割ってほしいのかしら?」

笑顔でそう言う

「ありがとう遠坂、お前の好意に感謝するよ。俺じゃ、壊れた窓を戻すなんてできないからな」

精一杯の感謝を込めてそういう
土下座せんばかりの勢いだ
命より大切なプライドなんて無いっていうのが俺の人生哲学だ

「?出来ないって、そんなことはないでしょ?ガラスの扱いなんて言うのは初歩の初歩だし、たったの
数分前に割られた窓を修復するなんて、何処の流派でも入門試験扱いじゃない」
苦笑しながら遠坂が言う

――――どうやら、俺が脅されて極端に卑屈になっていると思っているようだ

「いや、ホントに出来ないんだ。俺は親父とある人にしか魔術を習ったこと無いし。
二人とも、基本だとか基礎だとかいうのはほとんど教えてくれなかったからな」

ある人というのが遠坂というのは言うまでもない

「――――――はあ?」

ピタリと、遠坂の動きが止まる

―――しまった、前回に引き続き今回も地雷を踏んだようだ――――


「・・・・ちょっと待って。じゃあなに、衛宮君は自分の工房の管理も出来ない半人前ってこと?」

工房すらないなんて事は口が裂けても言えない

「――――――」
俺が黙っていたのを肯定ととったのか遠坂が続けざまに質問してくる
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・まさかとは思うけど、確認しとく。もしかして貴方、五大要素の扱いとか、パスの
作り方も知らない?」

おう、と素直に頷くことにした

―――どうせもう遅いし・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・・」
睨まれてる

目の前には凄い目つきでこちらを睨みつけてくる遠坂がいる

なまじ美人なだけに黙り込んだ遠坂の持つ迫力は尋常じゃないものがある

「なに、じゃああなた素人?でもそれだと、いくつかつじつまの合わないことがあるわね
――――それに衛宮君、私を助けてくれた時に持ってた剣は何処にしまったの?」

ぐ、鋭い・・・
自分の生死がかかった状況でそこまで周囲に気を配れるのだから
やはり遠坂は、俺なんかとは比べものにならないくらい立派な魔術師なんだなということを、再認識する

「俺が使える魔術は、強化と投影の魔術だけだ、さっき遠坂を助けたのは一応投影で出した剣なんだ。
あっ、でもその剣で攻撃を防げたのはセイバーに殺意がなかったからだし、さっきは上手くいったけど
もう一回投影しろっていっても多分無理だぞ、何せさっきのが初成功だったんだからな。
閂を上げずに家から出られたのは、セイバーが塀飛び越える時に俺がセイバーの体掴んでたからだぞ」
一息にまくし立てる

これが、英雄になった衛宮士郎が手に入れるに至った心眼の能力だ
相手の質問全てを先読みして答えることで、相手に釈然としないものを与えながらも質問を封じるという
48の禁じ手の一つだ

ほんの1%でも誤魔化しきれる可能性があれば、それをたぐり寄せられるこの希有な能力は
日々、藤ねえやら遠坂に弁解をし続けてきた、何の能力も持たない俺が努力の果てに手に入れたものだ

セイバーが何か言いたそうな目でこっちを見てるけど、今、俺の投影について発言されるのはすごく不味い
目線でセイバーを制する


こちらの思惑通り、遠坂は釈然としないものを感じながらも、とりあえずは納得してくれたみたいだ

「強化に投影か・・・また、なんとも効率の悪いものを選んだわね。で、それ以外はからっきしってワケ?」

睨む遠坂

「まあ、端的に言えば、多分・・・・」
あまりの迫力に少し後退する

「――――はあ、なんだってこんな奴に、セイバーが呼び出されるのよ、まったく」

がっかりと溜息をつく

まあ、気持ちはわからなくもない
俺よりも遠坂のほうがよっぽど優れた魔術師なんだから、俺の体に鞘さえなければ
きっとセイバーは遠坂に喚ばれていただろう

「ま、いいわ。そんな終わったことに不平を言ってても何も始まらないし。
そんなことより今は、借りを返さないとね」

ふう、と一息つく遠坂

「それじゃ話を始めるけど、衛宮君はどこで聖杯戦争のことを知ったの?
――――特定の流派にも協会にも所属しないあなたが、知ることの出来る内容じゃないと思うけど?」

――来た
衛宮士郎、一世一代の化かし合いだ
ここで、何かを掴まれるわけにはいかない

――――相手は女狐(一成曰く)

だが、人を騙すという点ではフェイカーの俺だって引けをとらない――――

息を吸い込む
「親父が――――
衛宮切嗣が前回の聖杯戦争の参加者だったんだ。聖杯戦争についての話は、親父が教えてくれた」

嘘の中に真実を織り込む
これがばれにくい嘘の付き方だ
――――以前、遠坂が教えてくれた

遠坂が納得するのがわかる
「なるほどね・・・それなら別に、知っててもおかしくないか。
――――じゃあ、これからあなたが何をすべきかもわかってるわね?」

・・・・・・何かあったっけ?

「なあ、遠坂。何かすることなんてあったっけ?」

呆れられた

・・・・・・しょうがないだろ、何年前のことだと思ってるんだ。よっぽど印象に残ったことならまだしも
細かいところまで覚えていられるような、いい頭を俺はしてないんだから

「呆れた・・・、つまり衛宮君の知識は断片的ってことね。
いいわ、わからないことがあったら質問して。答えられるものは答えるから」

「じゃあ、このあと何をすればいいのか教えてくれないか?」

「そうね・・・とりあえず衛宮君は、教会でマスターとしての登録をしてこなくちゃいけないわね。
教会には聖杯戦争の監視者がいるから、もしサーヴァントを失って聖杯戦争をリタイアしたい時は
そこでかくまってもらえるわ」

「――――もっとも、セイバーみたいな強いサーヴァントがやられる事態なんてそうは起こらないでしょうけどね」

遠坂が苦笑する

セイバーが誇らしげに胸を反らす
「シロウ、彼女はよい魔術師のようですね」

・・・セイバーって案外騙されやすかったんじゃないだろうか
思い当たる節はいくつかあるし


「他に質問がないみたいだったらそろそろ行きましょうか」

「どこにだ?」

「・・・・・・・・・・・・・・」
睨まれた

「教会・・・だっけ?」
正直あまりいい思い出のある場所じゃない
言峰・・・・・・、か
俺はあの変態麻婆狂エクソシストを救うことが出来るんだろうか・・・・

「ええ、隣町だから今から行けば夜明けまでには帰ってこれるわ
まあ、あしたは日曜だから夜明けまでにこだわることはないんだけど、何事も早い方がいいでしょう?」

―――今日はゆっくり休んで明日行こうって発想はきっと遠坂にはないのだろうか

「そういうものなのか?」
一応聞いてみる

「なに、行かないの?・・・衛宮君がそういうならいいけど、セイバーは?」
なぜかセイバーに意見を求める遠坂

「ちょっと待て、セイバーは関係ないだろ。あんまり無理強いするな」

「いえ、シロウと私は一心同体です。関係ないということはありえません」


ありえないんだ


「トオサカと、言いましたね。是非、シロウを教会へ連れて行ってください」

「凛でいいわ、セイバー」

「では、リンと。ええ、こちらのほうが貴方に合っている」

俺をおいて友好を深めるセイバーと遠坂

「じゃ、衛宮君。セイバーの許可もおりたし、さっさと教会行くわよ」

スタスタと歩いていく遠坂を追いかけて、展開についていけない俺を引きずり、セイバーも歩き出す

「いた、痛いってセイバー!自分で歩くから!」
こうして、俺たちは教会に向かって歩みを進めた――――






夜道を奇妙な集団が行く

深紅のコートを着た絶世の美女と、黄色い合羽をフードまで被った少女
楽しげに談笑する彼女たちだけなら、まだ問題はなかっただろう
――――問題があるとすれば、俺が彼女たちに引きずられているってことだ

こんな姿ご近所に見られたら明日から家を出られない

泣きそう






とんでもなく豪奢な教会
それは見る者に緊張を与える

「シロウ、私はここに残ります」

そうセイバーが言った

「そうだな、監視者がどんな奴か知らないけど、俺がどんなサーヴァントと一緒にいるか知られない方がいい」

俺がそういうと、遠坂とセイバーが信じられないモノを見たという顔をした

「っな――――――」
「っえ――――――」

・・・その反応は酷くないか

「・・・・・・・・俺だって少しは考えてるさ、だからその奇妙なモノを見たって顔は止めてくれ」

「あ、ゴメン。かなり意外だったからつい・・・」
「リンに、同じです。シロウがそこまで考えているとは露ほども思わなかった」

「もういいよ・・・とりあえず中に入ろう、遠坂・・・・」
そう言って俺は教会の中へと入っていった


広い、荘厳な教会
これほど広いのだから、任された神父はよっぽどの人格者だと思ったら大間違いだ
遠坂の言うとおり、あれだけエセ神父の名が相応しい奴を、俺は他に知らない

「ここの神父とは10年近くの付き合いになるけど、未だに性格がつかめないのよね・・・」
なんてことを遠坂が言っている
「一応は同門の兄弟子に当たるんだけど
――――なんでかは知らないけど協会を抜けて教会に入ってからは直接合って話したことは、
数えるほどしかないわ」

「遠坂、そういう漢字表記でしかわからない言い方はかなり不親切だと思うぞ?」

「?どういう意味?」

「気にしないでくれ、遠坂。多分気の迷いだ」
俺自身、なんでそんなこと言ったのか全然わからないし

祭壇へ向かっていく
カツカツという音がやけに響く

「それで、言峰神父は一体どこにいるんだ?」
まさか、深夜の礼拝堂で佇んでるって事はないだろう、変態じゃあるまいし

「――――私ならここにいるが、何か用か、少年?」

変態だった


「再三の呼び出しにも応じぬと思ったら、変わった客を連れてきたな。
・・・・・ふむ、彼が七人目という事か、凛」

「そ、一応聖杯戦争についての知識はあるみたいだけど、自分が何をするのかもわかってないみたいでね
見るに見かねて連れてきたってワケ。
・・・・・・・・・・・・・・・たしかマスターになって人はここに届け出を出す決まりだったわよね
――――あんたらが勝手に決めたルールだと」

「それは結構。なるほど、では、その少年に感謝しなければな」

言峰はゆっくりこちらに視線を向ける

「―――――――」
あの時は、奴の視線に怯んだけど
今の俺なら、それくらいワケはない

―――遠坂の方がよっぽど怖いし

睨み返す

「私は、この教会を任されている言峰綺礼というものだ。
君の名前を教えてくれないか、7人目のマスターよ」

「―――衛宮士郎。お前の好きにはさせないぞ、このエセ神父」

「・・・・・君は、私と誰かを間違えていないかね?
――――――私と君とは初対面のはずだが?」
重圧が増す

「・・・・・・・そうかもな、失礼した。神父」
ここは素直に認めることにする
だが、俺という懸念がついたことで言峰の動きは多少は制限されるはずだ

「・・・・・・・・ふむ、衛宮か。」
言峰が嬉しそうに笑う
うわっ似合ってねえ

「ありがとう衛宮士郎。君が連れてきてくれなければアレはきっと最後までここを訪れなかっただろう」
そういって遠坂を見る

「では始めよう、君は確かにマスターで間違いはないのだな?」

「サーヴァントと契約するって事がマスターになるって事なら、俺はきっとマスターってのに含まれるはずだ
だけど、俺はそんなわけわからない聖杯戦争なんてもののために誰も殺すつもりはないし、
誰にも殺させるつもりもない。俺は俺のやり方を貫かせてもらう」

「・・・・・ふむ、珍し奴を連れてきたな、凛。」

「・・・・・ええ、こんな事考えてるとは知らなかったけどね」
遠坂が俺を見る
目線があとで話があると告げている気がする

「どんなマスターであれ、最後に立っていたものに聖杯は授けられる
それが、聖杯戦争のルールだ
聖杯に願えば、その理想もあるいは実現できるかもしれんぞ?」

言峰が告げる
相変わらず、胸の奥にわだかまるような言葉だ

「綺礼、余計なことはしないで、誰も傷を開いてやってくれとは頼んでないわ
――――あなたは、衛宮士郎をマスターとして登録すればいいの。それ以外は私が許さない」

胸にわだかまる暗い感情が払拭される

――――そうだ、遠坂はいつもこうやって最後には俺を助けてくれたんだ


「ふむ、少しばかり道楽が過ぎたか、せめてこの勘違いした道徳を拭い去ってやろうと思ったのだがな
・・・・・・・・・・情けは人のためならずとはよく言ったものだ
久々の楽しい会話に、つい夢中になってしまったようだ」

アレが楽しい会話なのか、お前の
・・・病院行けよ


「では衛宮士郎、お前を七人目のマスターとして登録する。リタイアしたくなったらいつでもこの教会に来るがいい
美味しい飲茶(ヤムチャ)と麻婆を持って精一杯のもてなしをしてやろう」

「断る」
あ、ちょっと凹んでる

どうやら、今度の言峰はややお茶目なようだ
偶にむかつくこと言ってくるけど、こいつとならやっていけるかもしれない


「決まりね。それじゃ、そろそろ帰らせてもらうわ」
遠坂が言う

「ああ、健闘を祈る」

「・・・・・・・・心にもないことを、まあいいわ。
行きましょ、衛宮君」


「ん、ああ、わかった
・・・・・・・・・・・・ありがとうな遠坂」

「何言ってるのよ、教会に連れてきたくらいで大げさな」
苦笑する


「いや、さっき助けてくれただろ?
あのままじゃ俺、暗い考えに囚われてたし。遠坂が止めてくれて助かった」

「あ、あんなの助けたうちに入らないわよ!私だってムカムカ来てたんだから
自分のために止めたの、貴方が感謝する必要はないわ」
赤くなる遠坂

ひょっとしたら、こう面と向かって感謝されるというのには慣れていないのかも知れない

遠坂らしくて微笑ましい気がした

「・・・・・・・・・・・いちゃついているところ悪いが、そろそろ出て行ってもらえないか?
流石に、私もそろそろ眠りたいのでな」

「っな――――――――!?」
「――――――――――!?」
頭に血が上っていくのがわかる
そうか、客観的に見るとそんな風に見えたのか
でも、いくらなんでも俺じゃ遠坂と釣り合わないだろう

ドカッバキ!ドゴッ!
あ、遠坂が無言で言峰を殴ってる
まあ、俺なんかとそんな目で見られたら、そりゃあ怒るよな。うん





夜はまだ、終わらない





――――――――――――――――――――
あとがき
今回は長いので前後編に分けてお送りするつもりです
後編は鋭意執筆中(-_-;)

2: タケ (2004/04/10 01:12:36)[tamaayu at sweet.ocn.ne.jp]



ドカッバキ!ドゴッ!
あ、遠坂が無言で言峰を殴ってる
まあ、俺なんかとそんな目で見られたら、そりゃあ怒るよな。うん





夜はまだ、終わらない




Fate/stay night again 検 The end of Night〜

後編



外ではセイバーが俺と遠坂が出てくるのを待っていた

「――――――――」
無言で俺と遠坂の顔を見比べる

「・・・・・・・・シロウ、中で何かあったのですか?」

・・・まあ、顔を真っ赤にして出てきたら何事かと思うよな


多少、咎められているように感じるのは、あれだけセイバーを愛していたのに、遠坂のことを
可愛いなぁなんて思ってしまったことを、負い目に感じているからだろう
この時代のセイバーは俺のことをただの頼りないマスターと思ってるだけだしな


とりあえず、ここは正直に答えておくことにしよう。心配かけるのも悪いし
「中で、変態神父に絡まれただけだ。襲われたとかそういうワケじゃないから安心しろ」
そうセイバーに答えてやる
そうですか、とセイバーは返してくれた


「行きましょう。こんな胸くそ悪いところ、さっさとおさらばしたいでしょ?」
そういって、遠坂はスタスタと歩いていく

その意見には俺も賛成だ
俺とセイバーは遠坂のあとを追い、教会をあとにした






3人で坂を下る

上ってきたと違い三人とも口数が少ない


―――理由はわかっている

遠坂が不機嫌オーラを周りに発しているのだ
さっきのことを、まだ気にしているのが手に取るようにわかる


・・・はあ
気をそらさせないとな
「なあ、遠坂。お前のサーヴァント大丈夫なのか?」

「え・・・・・?」
―――よし、成功
「あ、うん。アーチャーなら無事よ。
もっとも、セイバーにやられたせいで全身打撲でまだろくに動けないみたいだけどね。」
やりすぎだセイバー・・・
でも、斬り捨ててないぶん、前回よりはましなのか?

「じゃあ、側にいないのか?」

「うん、動くだけでも辛そうだったから、あそこに放置してきたわ」
遠坂が苦笑する
遠坂、それはきっと優しさじゃない

「そうそう、衛宮君。あなた、セイバーの真名はもう聞いたの?」

「?いや、まだだけど?」
やり直してからはまだ聞いてない

「そう、なら早めに聞いておいた方がいいわよ。
どこの英霊でどんな宝具を持ってるのかって言うのがわかっていれば作戦も立てやすくなるし
――――――あ、でも、衛宮君はそういうの聞かない方がいいかもね」

「なんでさ」

「だって、衛宮君。根が正直者だから。隠し事とかできないでしょ」

「・・・・・あのなぁ遠坂。人をなんだと思ってるんだ。一応、それくらいの駆け引きは出来るぞ?」
さっきも、ボロ出しまくった気もするけど、遠坂騙し通せたわけだし

「そう、じゃあ私に隠していることとかってある?」

ありすぎる

思わず顔が青くなった
「い、いや別にやましいところなんて何もないぞ、俺は?」

「ほら見なさい、何を隠してるか知らないけど、動揺がすぐ顔に出るようじゃ向いてないわ
貴方のいいところはきっと他にあるだろうから、駆け引きなんて考えるのはやめなさい」
やれやれっといった風で遠坂が言う

「むぅ・・・・・」
反論できない




――――――そうして、橋を渡る


冷たい空気と吐き出される白い息
水の流れる小さな音と橋を照らす目映い街灯
あの日、記憶に焼き付いた風景がそこにあった

ただ、違うことがあるとすれば、何故か、遠坂がセイバーと談笑しているという点だけ

俺の記憶が確かなら、遠坂は俺を敵のマスターとして認め、この橋は黙って渡っていったはずだ

何かがおかしい
「―――なあ、遠坂。十字路で分かれる時、俺たちはまた敵対するマスター同士って事になるんだよな?」

するとセイバーと遠坂は呆気にとられた顔をした
「何言ってるの、衛宮君。私たちは協力関係を結んだでしょう?」
「何を言っているのですか、シロウ。凛と我々は協力関係を結んだではないですか?」

―――ちょっと待て

「・・・何時の間にそんなことになったんだ?」
そう問うとセイバーが

「先ほど、私がリンと協力関係を結びました」
えっへん、と胸をはる

「衛宮君は、私と協力するのはイヤ・・・・?」
遠坂が不安げな顔でこちらを見ている

そんな捨てられた子犬のような目は止めてくれ・・・
「い、嫌なわけないだろ?こういう展開にならなかったら、俺からそれを頼みたかったくらいなんだし!」

慌ててそう言う

「そう、なら問題ないわね」
そう言って、遠坂は髪をかき上げた


っへ・・・・・・・?


「だから言ったでしょう、リン?シロウは単純ですから簡単に騙せると」

「ええ、でもここまで予定通りに行くと、なんだか衛宮君に同情したくなるわね」


っは――――――


「―――ひょっとして、さっきの全部嘘なのか?」

「ええ、でも、もう遅いわよ。言質はとったんだから。これで、名実共に私たちは協力関係ね」
嬉しそうに遠坂が笑う

その隣で、セイバーもコクコクと頷いている


「セイバーまでグルになるなんて・・・・」

「私とリンは親友だ。親友の手助けをするのは当然です。それに、これはシロウにとってもプラスとなるでしょう?」

出会ってから数時間で親友ですかセイバーさん

「・・・もう、いいや。セイバーの言うとおりだし。仲間は少しでも多いほうがいいもんな」

「そういうこと、安心していいわ。私は裏切らないから」
遠坂が笑ってて、セイバーも笑ってる

――――――こんな風に、みんなと笑い合うことが出来るなら

案外、俺の理想なんてものは簡単に実現できるのかもしれない――――――





「――――――ねえ、お話は終わり?」

ふいに、世界が凍る


「っ――――――!」
遠坂が息をのむのがわかる

声が眠る町に響く
歌うように響くそれは、紛れもなく少女のものだ


視線が坂の上に引き寄せられる


いつの間に雲がはれたのか

煌々と照らす月光の中にソレは立っていた

見上げるほどの巨体に、鋼のような筋肉

月夜に照らされ影絵となったこの町に、ソレはあってはならない異形だった


「「―――バーサーカー」」
俺と遠坂の漏らした声がユニゾンする


―――そう、それは絶対的な力を持って、敵対者に死を見舞う異形の怪物


「こんばんはお兄ちゃん。こうして会うのは二度目だね」

二度目・・・?
ああ、そうか
ランサーに刺される以前にも彼女にあった気がする
その後の出来事に流されて、強く記憶にとどまることはなかったけれども

「―――――――――」

―――――バーサーカー
アレを殺す手段がないワケじゃない。実際、アーチャーはあの化け物を6度も殺していた
セイバーと共に戦えば、決して打ち倒せない相手じゃない

だけど―――
俺の目的は殺す事じゃない
なんとか、イリヤに退いてもらう方法は無いか?

「―――やば。あいつ、桁違いだ」

遠坂が身構える

「あれ?あなたのサーヴァントはお休みなんだ。つまんないなぁ、二人いっぺんに潰してあげようと思ったのに」

不満そうにイリヤが言う
彼女は本気で言っている

―――それは、さながら子どもが蝶の羽をむしるように、無邪気で明確な殺意

遠坂にもそれがわかったのだろう、息をのむのがわかった

そんな俺たちを尻目に、イリヤはスカートの端をつまみ上げていった
「はじめまして、リン。わたしはイリヤ。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンっていえばわかるでしょ?
そして、この子はバーサーカー。ヘラクレスって言った方がわかりやすいかな?」

「っ―――――!?」
遠坂の体が驚愕にかすかに揺れる

その反応が気に入ったのか、イリヤは嬉しそうに笑い

「じゃあ殺すね。やっちゃえ、バーサーカー」
と傍らの異形に命令した
その命令に応え。坂の上からここまで、何十メートルもの距離を巨体が飛び越えてくる


「―――――シロウ、下がって・・・・!」
そう言ってセイバーが、合羽を脱ぎ捨て身構える



ここで下がってしまっていいのだろうか
このままでは彼女はまた前回と同じように大きな傷を負ってしまうことになる




―――何のために衛宮士郎は、戦う力を持ってこの場所に戻ってきたのか―――




一歩前に出る
「・・・シロウ!!」
セイバーが息をのむ

―――セイバーが何と言おうと、ここで俺が退くわけにはいかない

「―――投影、完了」

左手に弓を、右手に剣を投影する

「無駄よ、衛宮君。あいつは、投影なんて生やさしい魔術じゃダメージを与えられないわ!」
遠坂が叫ぶ

―――だがそれは、普通の魔術師が使う投影のこと。俺が使う投影にはあてはまらない―――



弓を引き絞る



――狙うは一点



着地しようとするバーサーカーのその着地点――――!!



放たれる銀光

それは狙いと寸分も違わず、たった今着地しようとするバーサーカーの、左足の着地点を貫き
土砂を巻き上げ巨大なクレーターを形作る


着地の衝撃を両足のバネで殺そうとしたバーサーカーの意図を嘲笑うかのように設けられたそのクレーターは
当然の如くバーサーカーの左足を受け止められずに
バーサーカーのバランスを絶望的なまでに崩した――――――



「あ――――――――」

それは誰が漏らした言葉だったろうか
横転する巨体


それは自らの勢いも重ねて
――――常人なら絶望的なスピードで頭から電柱に突っ込んだ――――



「――――――――」


沈黙
誰一人とすら言葉を発することが出来ない
片足を穴にいれ、頭から電柱に突っ込む異形のソレは
――――あまりのシュールさに、笑いさえ誘う光景だった

誰一人として、バーサーカーがそれで倒されるとは思っていない
ただ、その場の空気が何よりも、バーサーカーの敗北を伝えていた

「っく――――、今日のところは退いてあげる。でも、またすぐに殺しに来るんだから!」

そう言い残し、イリヤはバーサーカーを幽体に戻して去っていく


残されたのは、やけに疲れた顔をした遠坂とセイバー
そして、やり遂げた満足感から輝いて見える(と思う)俺だけだった

「衛宮君・・・・・」
遠坂が話しかけてくる

「どうしたんだ、遠坂?」
俺の持てるカードの中で、最大クラスのものを見せたのだ
きっとそれに対する質問があるのだろう

「今日は、もう疲れたから、衛宮君のうちに泊めて・・・・・
話の続きは明日またしましょ・・・・・・・」
遠坂は、疲れ切った顔でそう告げた
「私もリンの意見に賛成です。今は何も見なかったことにして惰眠を貪りたい」
それ、女の子の言う言葉じゃないぞ、セイバー

そう言って、二人は衛宮家に向かって歩いていった


残された俺は
何故二人がそのような態度をしたのかがよくわからずに
一人、自らの穿った穴を見つめるのであった





――――――――――――――――――――――――――――
あとがき
ようやくバーサーカー遭遇イベントが終わりました
自分では上手くかけたつもりなのですがどうでしょうか・・・?

ここまでの更新は、わりと案が固まっていたので早くできましたが
ここから先は完璧手探りです(-_-;)

次の更新がいつになるかわかりませんが
気長に待っていてください

3: タケ (2004/04/10 01:13:01)[tamaayu at sweet.ocn.ne.jp]



そう言って、二人は衛宮家に向かって歩いていった


残された俺は
何故二人がそのような態度をしたのかがよくわからずに
一人、自らの穿った穴を見つめるのであった





Fate/stay night again 后 a strange day〜

前編



――――そうして俺は夢を見る


夢の中の俺はまだ幼い子どもで、親父と一緒に月を見上げていた


――――これは、親父が死んだ時の夢だ。そして、俺が正義の味方になると決めた日――――


このころには、親父は聖杯からこぼれ出た”この世全ての悪”に体を蝕まれきっていて
自分の死期を悟っていたように思える

だからだろうか
自身の夢を継ぐと言った俺の言葉に、安心したかのように微笑んでこの世を去ったのは

あの時から俺は、正義の味方になるために自分の体を鍛えてきた
前回の聖杯戦争で、その夢は確たるものに変わり、その後俺は正義の味方と呼べるような存在になった

誰からも理解されないその夢は、結局俺自身を死に追いやるものとなってしまったが


――――だからどうしたというのだ

セイバーと遠坂が笑っている姿を見て思った
大切な人が笑ってくれている。なら、俺の生き方は間違っていない

だから、俺が再びこの夢を見る必要はない

こんなもので確認しなくても、衛宮士郎の夢はあの日からずっと変わることはない

あの時、救われることがなかった命

救うことが出来なかった命

それに報いるために、俺は全てを救うという、美しい理想を貫いていきたい
それが、衛宮士郎となった俺の、最初に抱いた感情だったから

――だから――――おれは―――――――――






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ」

目が覚める

懐かしい夢を見ていた気がする

夢・・・・・・・・?

「っ・・・・・・・・!」
頬をつねってみる
痛かった


・・・・どうやら、過去に戻ってきたというのは、夢ではなかったらしい

ほっとして気が抜けた――――

「とりあえず、顔洗ってくるか・・・・」


布団を抜け出す

窓から見える陽が昇っているところを見ると、俺は相当眠っていたようだ



蛇口を捻る

冷たい水が顔を撫で、意識が急速に覚醒されていく

「ふう・・・」

考えることはたくさんある
この世界に来てから、俺はかなりの改変を既に行ってしまった
これがどのような影響を及ぼすのか――――

「とりあえず、洗面所で悩んでても仕方ないか」

とりあえず、居間に行こう
居間には確か、遠坂がいたはずだ


「おはよう、士郎」
遠坂が話しかけてくる

「ああ、おはよう。早いんだな、遠坂」

「何言ってるのよ、士郎。あなたが遅いの」
はあ、と溜息をつく遠坂

「・・・まあいいわ、それであなた、これからどうするつもり?」

起き抜けに浴びせかけられる質問としては、なかなかヘビィだった

いや、これから為さなければならないものは、もう決まっている

ただ、どうやってそれを為せばいいのかが、わからないだけだ
「とりあえず、誰も死なないようにしたい、っていうのがやりたいことなんだけど・・・」

「ええ、それは昨日聞いたわ。誰も死なせないために、あなたはどうしたいのかが私は聞きたいの」
どうするのか
それを遠坂に相談するには、遠坂に全てを打ち明けてしまわなければならない
だが、それはまだ早い
未来から来たなんてことを言っても、警戒されるか、もしくはキチ○イと思われるだけだろう


――――なら、この場で俺に出来るのは話題の変更だけだ

そう、口下手な衛宮士郎に唯一許された話術は、話題を変更するということだけなのだから――――


「って、それはなんか違くないか?」

「っへ?」

「あ、いや。独り言だから気にしなくてもいい。そんなことよりも聞きたいことがあるんだけど」

「いいわよ、私が知ってることだったら答えてあげる」

――――ここで慎重に話題を選ばなければいけない
下手な話だと、彼女の注意をそらすことは出来ない

「何か質問があるんだったら、早くしてくれない?こっちはさっきの話の続きがしたいんだけど」

・・・・ふと思いついた質問

いや、でもいくら何でもそれはあるわけないよな・・・

そんなものがあるなんて、どう考えても都合がよすぎる

・・・ダメもとで聞いてみるか

「なぁ、遠坂」

僅かな期待を込めて、遠坂に問う

「なに、士郎?」

遠坂が答える

「あのさ、聖杯無しでもサーヴァントを現界させる方法って無いかな?」

自分でも馬鹿な質問だとは思う
でも聖杯戦争について知りたいことで言ったら、これに勝るものはきっと無い

「あるわよ」

そうか、やっぱり無いのか・・・・・、って今なんて言った!?

「今、遠坂あるって言わなかったか!?」

「だからあるって言ったじゃない。士郎、あなたその歳で耳が遠くなったの?」

結構失礼なこと言われてる気がするけど今はそんなこと気にしてる場合じゃない

「一体、そんなのどうやってやればいいんだよ?相手は人間を超えた存在だろ?」

そう、英霊は人間を超えた存在、だから聖杯の力無しでは現界させ続けることが出来ないはずだ

「いい、衛宮君?もともと英雄っていうのは膨大な魔力量と魔力生成量を持った存在よ?」

それはわかる。だからこそ人間程度の力でその身を拘束させ続けることなんてできないんじゃないのか?

「つまり、サーヴァントは現界するだけならマスターと聖杯の力無しでもできるの」

「ごめん、遠坂。全然わからない」

ちんぷんかんぷんだった

「例えばサーヴァントが毎日生成する魔力量が10だとするでしょ?そのうち、サーヴァント自身を現界させるのに
必要な魔力量は全体の7か8割くらいでいいのよ。わかる?サーヴァントは一応、現界に必要な魔力量を自分
でまかなうことが出来るの。」

おかしい、遠坂の言っていることには矛盾がある気がする
その矛盾をぶつけてみることにした

「なぁ遠坂、それっておかしくないか?それだったら別にサーヴァントはマスターなんていらないわけだ
ろ?それなのにマスターのいないサーヴァントが消えるってのは、なんか矛盾してないか?」

そういうと遠坂は、大きな溜息を吐いた

「衛宮君、マスターがいなくてもいいって発想は、それ自体がまず間違ってる。聖杯戦争はマスター
が聖杯を手に入れるためにあるの、衛宮君が言ってることは大前提からして間違ってるわ。それに、
さっき言った数字は現界するのに必要な魔力量を表したものであって、サーヴァントが行動するのに必要な
魔力量は含まれてない。戦闘となれば、消費する魔力量は格段に上がるから、どうしてもマスターからの供給が
必要になるわ」

「う・・・・・・、確かにそうかもしれないけど、でも、マスターのいないサーヴァントが消えるってのの説明
にはなってないぞ」

現界するだけならマスターの魔力供給が必要ないのだとしたら、マスターの殺されたサーヴァントが、すぐに
消滅してしまうなんて事は起こらないはずだ

「いい?サーヴァントとこの世界を結ぶ架け橋として、聖杯、そしてマスターは存在するの。英霊の受肉
――この世界での英雄の再構成をするのが聖杯の役割なら、マスターの役割は、サーヴァントを、自身と
霊的に繋げることで、この世界とサーヴァントを間接的に繋ぎ、サーヴァントをこの世界に維持することと、
魔力の供給をすることにあるの。もっとも前者の方が比重としては大きいんでしょうけど」

ひょっとして、自分はかなり馬鹿なんじゃないだろうか・・・?
遠坂の言うことの意味が全くわからない

「普通にサーヴァントを召喚するだけじゃ、そのサーヴァントはなんの霊的繋がりのないこの世界に
長い間とどまることは出来ないわ。せっかく召喚した英霊も、この世界に拘束することが出来なければ
すぐに英霊の保管庫的な場所に戻ってしまう。それじゃ、こちらとしては都合がよくないでしょ?だからマスター
との霊的繋がりを持たせることでサーヴァントを”この世界に関係があるもの”という枠で拘束し、サーヴァント
を現界させるのに、世界の力も借りるの。それに、聖杯戦争中は魔力の消費が激しいから、マスターと霊的
繋がりを持つことで魔力の供給も出来る。
――――誰が考えたのかは知らないけど、とんでもなく合理的なシステムよ」

わかったようなわからなかったような・・・

「一から作るのと、それを維持するのに必要な労力は決して一緒じゃない。まあ、マスターとのレイラインが
しっかり繋がっているなら、サーヴァントは現界し続けられると思ってもらって構わないわ。もっとも、現界に
必要な魔力をサーヴァント自身が支払っているんだから、サーヴァントの現界していたいって意志も重要
なんでしょうけど」

なるほど・・・
でもなんでこんなことを遠坂は知ってるんだ?

「なんとなくわかった気がするけど、なんで遠坂はこんなこと知ってるんだ?」

すると遠坂は、悪魔のような微笑みを浮かべてこう言った

「衛宮君、サーヴァントっていうのは、言うなればとんでもなくハイレベルな使い魔よ?この世に止めておく価
値なんていくらでもあるわ」

――あれは赤いあくまだ
俺はアーチャーの未来を思って涙せずにはいられなかった―――







サーヴァントといえば、セイバーはどこに行ったのだろうか



「なあ、遠坂。セイバーどこ行ったか知らないか?」

「セイバーなら確か、道場の方へ行くって言ってたわよ」

「そっか、ありがとう」
遠坂に礼を言って道場へと向かう




ともあれ、サーヴァントをとどめる方法が見つかったのは幸いだった
今回はセイバーとのレイラインをしっかり繋げることに成功したみたいだし、あとはセイバーの意志さえ
あれば現界させ続けることが出来るだろう

「だけど・・・・」

セイバーはこの地にとどまることを望むだろうか?

彼女がサーヴァントになった理由はただ一つ

自分というアーサー王を無かったことにするという願いだけ

確固たる目的を持って聖杯を望む彼女が、この地にとどまりたいと思うだろうか――――



「っと、危ない危ない」
道場の前を通り過ぎるところだった

扉を開ける――

静まりかえった道場にセイバーはいる

昨日までの鎧姿ではなく、上品そうな洋服を着て、凛と背筋を伸ばし正座をしていた


「――――――――――」

静寂に佇む彼女の姿は、清らかに流れる清水を思わせた
その身に纏っているのは紛れもない聖の気

――彼女が俺の味方をしてくれている限り、俺が道を間違えることはない
心からそう思った

「セイバー」
声をかける

「目が覚めたのですね、シロウ」
慌てることもなくそう答える。
彼女のことだ、俺が入ってきたのに気づいていたのだろう

「セイバーは、ここで一体何を?」

「体を休めていました。シロウは眠っていましたから――――空腹に耐えるには休むより無かった」
まじめな顔と口調で、ある意味最も彼女らしいことを言った
「――はい?」

「お腹がすきましたシロウ、何か作ってください」
確かに、召喚されてから今まで、セイバーは何も口にしていないはずだ
セイバーじゃなかったとしても、誰だってお腹がすくだろう
だけど――――
「は――――」
笑いがこみ上げる。それでこそセイバーという気がした

「なっ!何故笑うのですか、シロウ!」

「いや、やっぱりセイバーは、食いしん坊だなと思ってさ」
口元から笑みを消すことが出来ない

「っな!シロウ!貴方は私をそのような目で見ていたのですか!私はそんなに食い意地は張っていま
せん!」

烈火の如く怒り出すセイバー
というか多少は食い意地が張っているってことか、その発言は

「今すぐ作り始めるから、居間で遠坂と待っててくれないか?」

「わかりました」
普段からそうだけど、食事が絡むとすごくセイバーは従順になる

・・・そういえば
「セイバー」

「はい、なんでしょう?」

「その服、似合ってるぞ」

「―――ありがとうございます」
どこかそっぽを向きながら答えるセイバー
彼女なりの照れ隠しなのだろうか

「――――さて、欠食児童のためにも、たくさん料理を作らないとな」
卑怯な手段かも知れないけど、案外食事で釣ったらセイバーは現界していたいと願うんじゃないだろうか
そう考えると、また笑いがこみ上げてきた










俺が作った昼食は、おおむね好評だった

セイバーはしきりに頷きながら食事をしていたし
遠坂も、結構いけるわね。なんて嬉しいことを言ってくれた

これも、聖杯戦争中、料理で遠坂に負けた悔しさをバネに、自らを鍛え続けた成果だ


食後、お茶を飲んでみなでくつろいでいると
「それじゃ、今後の相談をすることにしましょう」
そう、遠坂が切り出してきた

「やっぱり、聖杯戦争に参加するからには、あなた達は聖杯が欲しいのよね?」
そう、俺とセイバーに対して言ってきた

「ええ、私は聖杯を手に入れるためにサーヴァントとなったのですから、言うまでもありません」
そう言いきるセイバー
だけど、この聖杯はセイバーの望むものじゃない
――いずれ、その話はしなければならないとはいえ、なんとも気が重くなる話だ

「―――あなた達は、と言うことはリンは聖杯がいらないということなのですか?」
俺を無視して話は進む

「ええ、私は聖杯戦争で力試しがしたかっただけだし」

「しかし、リンはそうだとしても、アーチャーは聖杯を手に入れることを望むのではないでしょうか?」

「そのことなら大丈夫よ、アイツに私の決定に対する拒否権はないから」
平然と言ってのける遠坂

――――それは酷くないか?

「そうですか、ならば問題はありませんね」

お前もかぶるーたす


「となると、次はどのようにしてマスターを捜すかということですか・・・」

「そのへんはやっぱり、私が地道にマスターの魔力を探るしかないでしょうね。士郎、そういうの苦手そうだし」

「助かります、リン。やはり、あなたが味方でよかった」

もう、俺、完全無視

いくら半人前扱いの魔術師だからといって、この対応は酷いんじゃないだろうか
これでも投影やらせたら、右に出るものはいないんだぞ

そう、大黒柱に語りかける


電話が鳴った
「シロウ、出てきてください」
「士郎、電話とってきて」



・・・俺の家だから俺が出るのは当たり前なんだけど、何となく釈然としないものを感じた

にしても一体誰だろう
俺が経験した聖杯戦争とのずれはだんだん大きくなってきている
この分だと、既にサーヴァントの真名と宝具くらいしか信用できるものが無いのかもしれない


そんなことを考えながら受話器を取る
電話の相手は藤ねえだった
電話の内容は
早い話が、お弁当のデリバリーの注文だった

――――まったく、しょうがない先生だよな

昼食の残りからぱぱっとお弁当の具になりそうなものを見繕う

よし、できた

「二人とも、今からちょっと学校までお弁当届けに行くから、家で待っててくれ」
そういって、お弁当を入れた風呂敷を持って廊下に出る

当然のようについてくるセイバーと遠坂

俺が二人を制止する言葉を口に出そうとすると――――

「サーヴァントの役割は、マスターを守ることにありますから」

「面白そうだから、ついて行かせてもらうわ」

先手を打たれた

セイバーはともかく遠坂、その理由は何だ
かといって、俺が遠坂に逆らえるわけもなく――――





――――結局、三人で弁当を届けに行くことになった





――――――――――――――――――――――――
今回も前後編でお送りしています

とってつけたような新解釈が現れました
これに関しては非難、罵倒多々ありそうですので、それらは感想掲示板の方にお願いします(-_-;)

4: タケ (2004/04/10 01:13:26)[tamaayu at sweet.ocn.ne.jp]



セイバーはともかく遠坂、その理由は何だ
かといって、俺が遠坂に逆らえるわけもなく――――





――――結局、三人で弁当を届けに行くことになった




Fate/stay night again 后 a strange day〜

後編


「二人に言っておきたいことがある」
学校へと続く坂を上っている途中、俺はそう二人に話しかけた

「?」
「?」
俺を見つめるセイバーと遠坂
強力な意志を宿した二組の目線が俺を射抜く

「これからさき、可能な限り、俺の言うことに口裏を合わせてくれ」

弓道場の中にはきっと藤ねえと桜がいるのだろう

あの二人が、俺が女の子を連れてやって来て、何も言わないはずがない

特に藤ねえ。全力で俺をからかってきそうな気がする

今後、セイバーを衛宮家に居候させることを考えても
今のうちからいろいろと決めておいた方がいい

「わかったか、二人とも?」

「それがシロウの命令ならば」
「・・・・・状況次第ね」

・・・頼むぞ遠坂


「とりあえず、セイバーは切嗣の親戚で、観光がてら遊びに来たってことでいいか?」

「ええ、それでシロウの都合がよいのであれば」

「遠坂は――――」

「私はいいわ。同じ学校に元から通ってるんだし、一緒にいたとしてもそこまでの違和感はないはずよ。
・・・・・・・・・それに、弓道場には私の友人もいるしね」
ふむ・・・
遠坂がそう言うのならきっと大丈夫ということなのだろう

「そういや、遠坂」

「どうしたの、士郎?」

「いや、セイバーの服用意してくれてありがとうな
・・・・・・・・・・・・・・正直、俺じゃそこまで気を配れなかった」

「どういたしまして。まあ、いつまでも鎧姿ってのも何だしね。
――――で、感想は?」
口元ににやりと笑みを浮かべて遠坂が聞いてくる

だが、甘い
過去の俺ならまだしも、パワーアップしたν士郎はそれくらいじゃ動じない

「セイバーの清楚な感じだとかを十二分に引き出した、素晴らしい服のチョイスだった。やっぱり、女の子の服は
女の子に任せた方がいいって事だな」
さらっと切り返す

女の子、という言葉に二人の体が、ビクッと揺れる
面白い



そんなことを話しながら、学校の門をくぐる
――――違和感
世界の色が変わった、そんな感触

「あ―――――――」
思わず声が出る

そうか、慎二が張った結界か
正確には、ライダーがだけど

「シロウ、ここは――――」
セイバーが驚きの声を上げる

「――――ええ、この場所には結界が張ってあるわ。それも、とびっきりたちの悪い」
その言葉に反応して、セイバーが俺を守るように身構える

「そんなに警戒しなくても大丈夫よ。結界の発動自体は私が邪魔しておいたからまだ時間がかかるはずだし・・・
それに、今は藤村先生にお弁当を渡しに行かなくちゃいけないでしょ?」

「・・・・では、リン。結界のことは――――」

「今後の課題ね。私たちは、結界を張ったマスターを締め上げて、結界を解かせなければならない」
セイバーの言葉に頷く遠坂
それで、セイバーの体から力が抜けていくのがわかる

「話の続きは、また家に帰ってからにしよう。ここじゃ、誰に聞かれるかわからない」
俺がそう告げると、二人はコクン、と頷いた





弓道場の前には懐かしい人物がいた

「あれ、衛宮だ。なに、食事当番?」

「―――――――」
気心の知れた友人はこういう時に、便利ではある
弓道部主将・美綴綾子は、俺の顔を見ただけで、俺の用件を看破した

・・・俺がしょっちゅう藤ねえの弁当届けに来ていたせいも、あるかも知れない

にしても、懐かしい顔だ。最後に会ったのは、果たしていつのことであったか

「助かったわ。藤村先生、空腹でやたらテンションが高くて。部員をいびり倒してるからさ
今から、下のトヨエツまで、食料品買い出しに行こうと思ってたのよ」
美綴が苦笑する

「下のトヨエツまでって、非常食くらい無いのか?」

「当たり前でしょ?ただでさえ備品で金食ってるんだから。そんなもの買う余裕はないわ」
さすが倹約家美綴。まさに日本の母、という感じだった

「・・・・そりゃ、災難だったな。ほれ、弁当だ。藤ねえに渡してやってくれ」
ほら、と紙袋を差し出す

「お、豪華三段セット。いいね、久しぶりに見た。衛宮こういうこまかいの得意なのよね」
何が嬉しいのか、にんまりと笑う美綴

そう言うこいつは、大量生産が上手だった
合宿の夕食は大抵こいつが用意していた
皮だけ剥いたジャガイモカレーが美味しかったという、料理の奥深さを教えてくれたのもこいつだったはずだ

・・・いやまあ、それはいいとして
美綴は袋の中を覗いただけで、弁当を受け取ろうとはしなかった

「なあ、差し出したままの体勢って結構腕が疲れるんだ。早く受け取ってくれないか?
それに、今頃藤ねえが遅いって暴れてるはずだろ?」

「そう思うんだったら、さっさと中に入って、そのお弁当を藤村先生に届けてあげな。だいたいね、
入り口であんたを帰したとあっちゃ、藤村先生が余計怒るのは目に見えてるでしょ?ここまで来たら観念して
さっさと中に入りな」

まあ、藤ねえに会いたい気もするし、中に入ってもいいか・・・・

「・・・・了解。そのかわり藤ねえが怒ってたら止めるの手伝えよ?」
そう、美綴に言う

「それはいいんだけどさ――――」
と、唐突に体を寄せると、内緒話でもするかのように耳元に口を近づけていった
「・・・・・で、衛宮。何で遠坂凛があんたをじっと見てるの?それと、隣にいる外人っぽい美少女は誰?」
二人を小さく指さす美綴

「――――――――」
二人が何故か俺を睨んでくる
理不尽だ、俺は何もしてないのに

「どうなのよ衛宮。あの二人、あんたに何か関係があるの?」

「説明すると複雑なんだが、そういうことにしてもらえると助かる。・・・ついでに、あいつらが部室に入っても
みんなが騒がないように言い含めてくれると、とんでもなく恩に着る」

「・・・・・OK、その交換条件は気に入った。衛宮、あとでチャラにするとかそういうのは無しだからね」

扉を開ける
二人は無言のまま俺と美綴についてきた




・・・・・・・・・昼休みのあとの道場は、さながら戦場のようにさわがしかった


「藤村先生ー!岬さんがお腹が痛くて死にそうって言ってます!さっきのカンパン、いつの時代の
ものだったんですか!?」

衛生兵!衛生兵ー!!なんて声が聞こえる
「私も一緒に食べたけど大丈夫だったでしょ?食い合わせが悪かったんじゃない?」
藤ねえの胃袋と常人のそれを比べるのは間違っている気がする

「タイガ先生ー、巻藁練習するんでストーブ移動させてくださいー!道場は凍えそうなほど寒いッス!!」
悲痛な叫び。だが、それに対して藤ねえは

「はい、いい度胸してる君は半ズボンで道場三週」
鬼のようなことを言った

・・・・・懐かしい
やっぱり藤ねえは藤ねえだった

そんなことを思っている間にも一年生の部員の悲鳴が響き渡る
さすがに、二年は慣れた物だ。なるべく藤ねえに近寄らないようにしている



まあ、いつまでも阿鼻叫喚を眺めているわけにもいかない

桜を見かけたので声をかける
「おーい、桜」
桜は弓を置いてこちらに駆け寄ってきた

「先輩、どうしたんですか?今日は、あ、もしかして、その」

先輩と呼ばれるのも久しぶりだ

「ああ、藤ねえに弁当を届けに来たんだ
悪いけど、あそこにいる飢えた虎を連れてきてくれ」
そう桜に頼むと、さくらははい、と答えたものの、動こうとしない

「?どうした桜?」
尋ねてみる
「はい、先輩。あの藤村先生を呼んでくるのはいいんですが、あの・・・」
ちらりと、俺の後ろに視線を向ける
そこには、遠坂とセイバーが立っていた

「・・・先輩?」
「ん?なんだもう手遅れなのか?せっかく桜の分のお弁当も用意したんだけど、残念だな」
そういうと桜は
「あ、いえ。そんなことないです。わたしもお腹減ってます!あ、いえ、藤村先生にお弁当半分あげちゃったから」

「うん、多分そうだろうなと思ったから、桜のはすぐ食べられるようにしといたぞ。
まったく、しょうがない先生だよな。まあ、今日は俺もせっかくだから部活が終わるまでここにいることにするよ。
藤ねえの監督もしなくちゃならないし」
俺がそういうと、桜は嬉しそうに
「ホントですか、先輩!勝手に帰ったりしませんよね?」
と言ってきた
「ああ、今日は最後まで付き合う。だからとりあえずお昼にしよう」
そういうと、はい、と桜は嬉しそうに返事して藤ねえを呼びに行った

振り返れば、突然の珍客にざわめき始める部員に、美綴が説明をして回っているところだった



昼食後
ようやく藤ねえは落ち着いたようで、先ほどよりは幾分優しく指導を始めた
周りを見ると、桜は射場でていたり、遠坂は美綴と話をしていたりして
俺とセイバーは手持ちぶさたになってしまった

「なあ、セイバー。退屈じゃないか?」
一応セイバーに聞いてみる
するとセイバーは
「いえ、なかなか興味深い。それに鍛錬場というのは気持ちが落ち着く」
「そっか」
それで俺たちの会話は終わった
お互い、沈黙に苦痛を感じるタイプでは無いし、これはこれでいいのだろう







日が暮れ始めて、部活はお開きとなった

自宅に帰る
その途中、藤ねえと桜に。セイバーと遠坂について説明しておいた
――――建前の事情を

理詰めでせめる遠坂のやり方に、藤ねえは簡単にやりこめられてしまう
桜は、納得がいかない様子だったが、口を出すようなことはしなかった

遠坂までもが俺の家に住むと言った時は流石に、俺も驚いて声を出しそうになったが
遠坂の一睨みで喉から出かかった声が詰まり
ぐぇ、とかえるの鳴き声のような音が口から漏れただけだった



5人で食べる夕食
夕食は、遠坂が腕を振るった中華料理だった
味付けの濃い中華料理にもかかわらず、口に合うその一品はまさに絶品と言うほか無かった


9時頃になり藤ねえが桜を送って帰っていく

全員が風呂に入り、落ち着いたところで、いつの間にか私服に着替えた遠坂が切りだした

「それじゃ、今後の方針なんだけど、学校の結界を張ったマスターを捜すって事でいいわよね?」

「ああ、それでいいと思う」

異論があるわけがない

もっとも、俺は既に犯人を知っているのだから捜すことに意味はないだけど

「なら、明日から犯人捜しを始めましょう」

「?今日からじゃないのか?」

「今日からがいいならそれでもいいけど、せめて、私たちの部屋を用意してもらってからでいいわよね」

「私もリンの意見に賛成です。敵マスターとの対決は、こちらの体勢が万全である時が望ましい」
セイバーも同意する

ああそうか

寝るところもまだ決めていなかったな

「それもそうだな。まあ、部屋数は結構あるし、好きなところ使ってもらって構わないぞ」

「うん、士郎ならそう言うと思って、実はもうアーチャーに準備させた」
俺の言った言葉が嬉しかったのか、遠坂が嬉しそうに答える
・・・アーチャー、全身打撲だって言ってなかったか?

「へえ、なんていうか手際がいいな。それで、一体どこにしたんだ?」
遠坂に尋ねた

「士郎の隣の部屋よ」
へえ、俺の隣の部屋か
ということは、セイバーと一緒に遠坂は寝るって事だな

「ってことは、遠坂はセイバーと一緒に寝るって事か?」
「無理よ。家具とか実験道具とかで、もうスペース無いもの」
「そうか、無理なのか・・・・って、ならセイバーはどこで寝るんだよ?」
ていうか、そんな大型家具をアーチャーに運ばせたのか・・・

「私は、シロウの部屋で寝ます」

待て待て待て待て!

「――っな、ダメに決まってるだろ!?」

隣の部屋で遠坂が寝ているという状況ですら既にアウトに近いのに
セイバーが同じ部屋で寝るなんて致命的だ

「しかし、シロウの隣の部屋は既にリンが使っている。なら、防衛上の面から見ても
私がシロウの部屋で寝るのが最も好ましい」

「そういう問題じゃなくて、一応俺とセイバーは男と女なんだから間違いがあったら不味いだろ!?」
頼むからもうちょっと、そういうことに気を配ってくれ!

「あら、衛宮君はそんなことで間違いをおかしちゃうような人だったんだ」
遠坂がにんまりと笑いながらそんなことを言ってくる

「っば、そんなわけないだろ?一般論を言ってるんだよ!」
反論をしてみる
――――だけど、こういう遠坂には勝てない、と冷静に見つめる自分もいた

「でも、その一般論は衛宮君にはあてはまらない。自分を制御することが出来てこその魔術師なんだから
――――違う?」

「う・・・・」
旗色が悪い

「それに、もしセイバーに襲いかかってみなさい。きっと、五体満足じゃいられないわよ?」
さらりと恐ろしいことを言う

「シロウ、私はあなたを信用している。どうか、同じ部屋で寝かせて欲しい」

「・・・・・わかったよ。ただし!間にしきりは入れさせてもらうからな」

「ええ、構いません」




悶々とした日々のはじまりだった








――――眠れない
こんな状況で安眠しろと言う方が間違っている

部屋の中からは、自分以外の寝息が聞こえる
普段は髪を上げているセイバーも、眠る時はやっぱり髪を下ろす

髪を下ろしたセイバーは騎士ではなく、本当にただの少女そのもので――――


「っ――――――――」

だめだ、こんな事を考えていたら眠れるわけがない



土倉へ向かう

日々の鍛錬を行った場所
セイバーと出会った場所

肌寒い土倉の中が、とても温かい場所のように思えた

土倉の床に正座して鍛錬を始める


「―――投影、開始」

俺の魔術は、自分の内側に働きかけるもの

だから、日々の精神鍛錬を怠ってはならない

想定の定まらない空想は、妄想に成り下がってしまうのだから

「―――投影、完了」

手にするのは干将莫耶
俺が唯一担い手になれる双剣

両手にかかるずっしりとした重みが、投影の成功を告げていた




――双剣に写り込んだ自らの顔を見つめながら思う



――――あの日々に衛宮士郎が見た夢は、俺が叶えてみせる――――




――――――――――――――――――――
あとがき


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