Fate / Next Legend  0章.プロローグ  (M:セイバー? 傾:セイバーエンド補完)


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1: ふぇい  (2004/04/05 00:51:05)[fay at mxi.netwave.or.jp]

Fate / Next Legend
 

0章.プロローグ

 
 
静かな森の中、大樹の根本で一人の王が息を引き取ろうとしていた。
 
「王!しっかりしてください」
 
輝かしい栄光に彩られた偉大なる王は国を外敵から守り、公平無私の善政を敷き祖国を繁栄へと導いた。
だがその偉大なる王が森の中たった一人の騎士を伴っただけの孤独な最後を向かえようとしていた。
誰も王を理解しようとしなかった、誰も王の真実の姿を見ていなかった。
かく言うベディヴィエール自身、王の心の内を秤知る事は出来なかった。それどころか、常に王として振る舞い心安らかな表情すら見た事がなかった。
そんな王だからこそ力になりたい、役に立ちたい。王の喜ぶ姿、笑顔が見たかったのだ。
 
だが、その願いの一つが叶い、頼りとされたのが皮肉にも王の最後の願いになろうとは。
ベディヴィエールは己の無力さと運命を呪った。
 
「胸を張るがよい。そなたは、そなたの王の命を守ったのだ」
 
王に褒められても今のベディヴィエールには何ら嬉しくはなかった。
結局、王の助けになるどころか出来た事はこうして王を看取る事だけだったのだ。
 
「−−−−すまんな、ベディヴィエール
     今度の眠りは、少し、永く−−−−」
 
それが永遠の眠りだという事、どのような手段を持ってしても避けられない事は王自身、そしてベディヴィエールには解かっていた。
だがベディヴィエールはその時もう一つの自分の願いが叶えられている事を知った、眠りにつこうとしている王の姿は安らぎ、穏やかな表情だった。
王は死してやっとその責務から解放され、安らぎを得られたのだった。
それはベディヴィエールにも安らぎをもたらした。
最後の最後。一瞬の時とはいえ願いが叶えられたのだ。
 
「王よ・・・・・・良き夢を・・・・・・」
 
ベディヴィエールはせめて夢の中だけでも王が幸せに心安らかに暮らせるように願わずにはいられなかった。
そして夢とはいえ王に安らぎをもたらしてくれた”何か”に感謝した。
 
 
 
 
−−−全て、終わった−−−
 
アルトリアという少女として生まれ、アーサーと呼ばれる偉大な王として生き、遙かな未来ではセイバーと呼ばれ恋をした。
王という道を選び、王としてなすべき事は全て成し遂げてきた。結果として国は滅びようとしているが悔いはない。
自分に誇りと信念に従って突き進んだ道なのだ、どのような結果であろうと受け入れられた。
もう自分にやり残した事はない。
しかし、全て事をやり遂げたはずなのに心の中に何かが引っかかっていた。
 
−−−何かを忘れている?−−−
 
考えてみたがやり残した事もなく、今更何かを忘れていたとしても既に必要のない事。
聖杯を拒み、英霊となる事を拒否したこの身はこのまま輪廻の輪の中へと帰っていくはずだった。
 
−−−私、私は?−−−
 
既に自我もなくなりつつある。
自分が誰なのか、何者だったのか、何をしてきたのかそれすらも虚ろになってきていた。
全てが曖昧になっていくなか、たった一つの事だけが鮮明になってきていた。
 
−−−私は・・・・・だ−−−
 
そう、あの夜に誓った。
闇夜の中、一時だけ差し込める月光の中、自分の求める対とは知らずに誓った。
何故かその事が薄れゆく思考の中、ハッキリと蘇った。
 
−−−私は、貴方の剣となり、敵を討ち、御身を守る−−−
 
誓いは果たされ、夢は終わった。
別れが夢の終焉であったとしてもお互いに留める事は出来なかった。
それは必ず醒める夢だとわかっていた。
夢は所詮夢、現実ではないと言われればそうなのだろう、だが彼女には夢でも良かった。
一時の夢、死に逝く者が最後に見た夢。
だから生涯にたった一度の告白をした。
 
−−−シロウ、貴方を愛している−−−
 
夢は叶えられるはずの無かった一人の少女の夢を叶えた。
 
−−−私は貴方の剣。貴方は私の鞘−−−
 
消えゆくはずの自我の中に灯火が宿った。
それは無くしたはずの鞘、愛する人から返された大事な宝具。だが、それには宝具としての価値以上に込められた”想い”があった。
 
−−−私は貴方の剣となり、敵を討ち、御身を守る−−−

             ソレ 
剣は有るべき所に返したが、鞘だけは彼女の身に残った。
否、これはこの世界に存在していない物。”想い”という形で彼女の中にのみ顕現する。
     ソレ
だからこそ鞘は彼女の中にあり続けた、彼女の一部として”想い”を受け継ぐモノとして。
 
−−−私は、貴方を愛している−−−
 
それこそが彼女の存在の証明であり全て。”想い”を具現化する為の要となった。
 
−−−私はいつまでも貴方を守る剣で在り続る−−−

永遠の”誓い”。たとえ全てが失われようとそれだけは変わらないと確信していた。
            ソレ  ア ヴ ァ ロ ン
なぜならば想いを託された鞘は「全て遠き理想郷」、自らが夢見た理想、彼との絆
何者にも侵されない”想い”と”誓い”の込められた鞘は絶対の存在だった。
そしてその強い”想い”に”誓い”が応える。 
永遠の”誓い”をもって”想い”に応え”願い”を叶える。
叶うはずの無い”願い”は場所を越え、時を超え、世界すら隔てた彼方からの”想い”に応え”誓い”を果たす。
 
「私は永遠に貴方を守る剣となろう」
 
そして、それは一つの奇跡を起こす。
叶えられない願い、届かないはずの想い、果たされるはずのない誓いを現実にするために。
 
 
 
 


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