終わりと始まりの丘 その9(傾:たぶんシリアス M:?


メッセージ一覧

1: オルガット (2004/04/04 23:07:28)[sktaguro at yahoo.co.jp]




 「やめろーーーーーーー!!!」

 
 衛宮士郎の左手の呪印が紅く輝く。

 呪印は三画の内の一つの輝きを失う代償として、

 主の願いを叶えるために己の従者へ戒めを与える。
  
 その力によって群青色の侍、いや、佐々木小次郎の動きは急停止し、

       
 「―――全投影緊急停止! 全投影、破棄!!」


 それに合わせた様に弓兵は自らの放った剣の弾丸の軌道を逸らし、

 投影品を破壊するために自らの理念を覆す。想像と現実のギャップを意図的に

 激しくされた投影品は、存在を維持できなくなり次々と世界へ解けていく。

 故に放たれた二十七の弾丸は、群青色の侍に当たることなく世界から消え去った。


 無言で佐々木小次郎に背を向け霊体化し、己の主の、遠坂凛の下へ戻る

 弓兵・エミヤシロウ。そして目を伏せ、腕組みをし、月を眺める佐々木小次郎。
                      
 そして対峙するのは弓兵の主たる遠坂凛と剣の騎士の主である衛宮士郎の二人。
 

 「―――こんばんわ、こんな所で会うなんて奇遇ね、衛宮君」

 
 凛は迷うことなく魔術師としての自分で衛宮士郎に声を掛ける。

 だが、己の目の前である人物を敵と判断できずにいるのも確かである。

 それに衛宮士郎に令呪を一画使わせてしまった負い目もある。

 ならばこの後、凛が彼にどうでるかは語るまでもないだろう。

 不思議そうな顔の士郎と、不機嫌そうな凛。

 対照的な二人を見つめながら、霊体と化して漂っているのはシロウである。

 そう、英霊エミヤではなく、英霊シロウである。


 かの赤い騎士の名はエミヤ。

 それは正義の味方たる父キリツグと同じ道を辿った者の末路。

 故に名乗る名はエミヤ。それが正義の味方の姓であり、名である。

 今の弓兵は志をエミヤたる義父から継いだものの、在り方はエミヤとは違う。

 故にこの者の名を表すのはシロウが妥当であろう。


 二人の会話に懐かしさを感じながら耳を澄ます。そして当然飛び出てくる言葉。


 「まった遠坂。それはおかしくないか? 
  俺のサーヴァントもセイバーだって言ってたぞ」


 凛が己のサーヴァントのクラスを

 剣の騎士・セイバーだと思っている時点で、矛盾は必ず生じる。


 「それって本当なの?」


 士郎ではなくその横に立つ佐々木小次郎睨みながらも士郎に問う。


 「いかにも。この身は剣の騎士・セイバーとして召還されし者だ」


 答えたのは佐々木小次郎。だがそんな事は凛には関係なく、

 その言葉を聞き、すぐさま虚空を、シロウがいるであろう方角を睨む。


 「そう、あなたセイバーじゃなかったのね」

 
 落胆と怒りの混じった声をシロウに掛ける。だがシロウは自らのクラスがセイバー

 だと語った覚えは無い。それらしい答えを返し、太陽剣・グラムを投影しただけだ。

 謝る事はないと思いながらも一応は凛の前で実体化し、バツの悪そうに頭をかく。


 「セイバーが召還されている以上、あなたのクラスはセイバーではない事にるわ。
  残されているクラスはアーチャーとアサシン。そのどちらかになると思うんだけど」


 確かに、現在確認されているクラスは、目の前の侍、異例のセイバー。

 ランサー、ライダー、キャスター、バーサーカー。この五つのクラスを除き、
      
 消去法で考えれば確かにそのどちらかのクラスということになるだろう。

 だがシロウはアーチャーとして召還された身であるが、その名で呼ばれるのを嫌い、

 既に架空のクラスを考えついている。

                            
 「凛、思い出したから言うけどオレはフェイカーのサーヴァントだ」  


 フェイカー、それがこの聖杯戦争で名乗る偽りのクラスの名である。


 「フェイカー? それってもしかして特殊クラスなの?」


 基本はセイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、

 バーサーカーの七クラス。それに該当しない特殊クラスが存在するのを利用し、

 シロウが考え付いたクラスがフェイカーである。 

 「そのとおり。フェイカーのクラスは自らの宝具を持たず、
  知名度や能力が低いサーヴァントが該当する特殊クラスだ。
  故にオレは宝具を持ず、代わりにフェイカーの固有能力【贋作】
  を所持している。聖杯から他の英霊の宝具を一時的に借り受ける能力だ」

 他人の宝具を持っていても怪しまれないために考え付いた固有スキル。

 そして、それに合うクラスの名前。これなら怪しまれないであろう。

 
 「断っておくが最強でも万能でもない、何故なら借り受けた宝具の真名を
解放することができない。すなわち、宝具の真の力を引き出せないんだ」


 これは本当の事である。シロウは宝具を完全に投影する事ができても、

 シロウは担い手ではない。創り手なのだ。宝具は人間達の幻想を骨子にして

 作り上げられた武装であり、固体化した神秘である。それを創り手であるシロウ

 が使いこなす事ができるか? 答えは否。どんなに優れた宝具もシロウでは
                            
 切れ味の良い剣、等で終わってしまうのである。例外的にルール・ブレイカー

 のように真名を解放さずに効力を発揮する宝具、すなわち担い手を必要としない

 宝具であれば、創り手であるシロウでもその力を発揮する事ができる。


 「決定打に欠けるが、どんな相手でも堅実に戦える。それがフェイカーのクラスだ」


 故に決め手に欠けるはしかたのない事だろう、だがシロウはそれを補うだけの

 鍛錬を積んでいる。宝具の真の力を解放できなくとも、その戦闘技術を用いて

 他のサーヴァントを葬る事は十分に可能である。


 「オレのクラスを簡単に説明するとこんな感じかな、他に質問があれば答えるけど」

 
 今はあえて説明しなかったがシロウの考え付いた固有スキルはもう一つある。

 もう一つのスキルは色々と知りすぎているのをごまかすために考えたスキル。

 もっともこれらは全てシロウが考え付いた偽りのクラスの説明で、この様なクラスは

 実際には存在しないが、細かいところまでもシロウなりに考えられているのだ。

 
 「そう、思い出したのね。じゃあ貴方の真名を聞かせてもらえるかしら?」


 サーヴァントの真名、その名で強さがある程度把握できるので、

 戦略を立てるためにも知っておきたいとこだろう。

 だがシロウは己の名を語るわけにはかない。

 故にその質問には、偽りでしか答える事ができない。


 「真名か、そんなものはないよ。英霊名無し。強いて言うならそれが
  オレの名だろう。この身は自らの名前を忘れるほどに磨耗しきっているのだから」

 
 真名を晒すにはまだ早い、いやこちらが言わなくとも時がくれば彼女は気付くだろう。


 「それとオレの事はフェイカーと呼んでくれ。オレはこの名に誇りを持っているから」

 
 そう、彼は言う。彼は英雄王との対決で知った。

 たとえ偽者であっても、何も恥じることではないと。


 「フェイカー・・・その名に誇りがあるの?」


 凛の言い分はもっともだが、彼には誇りがある。絶対の誇りが。


 「無論だ、何故なら偽者が本物に劣るワケではないのだから」

 
 それが彼の答え。それに彼は偽者であるが本物の心を持っている。


 「そう、じゃあ貴方の事はフェイカーって呼ばせてもらうわね」


 優しい笑みを浮かべながら凛は答える。彼の心中を察したのだろう。


 「そう呼んでくれると、こちらとしても嬉しい」


 彼は誇らしげに胸に手を当て、そう答える。そして彼女に握手を求め、手を差し出す。

 凛は不思議そうな顔をしているが、かまわず告げる。


 「凛、オレは大概の事は思い出した。そして今お互いの
  名前の交換は済んだ。 だからここに改めて凛と契約を結びたい。」


 凛はしばらく、赤くなってうろたえていたが。

 赤くなった顔を隠すようにそっぽを向きながらその手を握る。 

 彼は満足そうに目を細め、彼女の手の暖かさを感じる。

 そうしてここに契約が完了した。シロウが凛の守るという絶対の契約が。



 そして倒れている一成や僧を助けるように凛と士郎に告げ、自らもそのために動く。

 僧達に外傷は無く、眠っているだけであったので、一箇所に纏めて寝かせておく。



 佐々木小次郎はそれを見ながら、自らの思いに耽る。

 偽りの英霊、その身は亡霊であるが生前果たせなかった自らの全力を賭した戦い。

 シロウとならそれができると思った。そのために現界したのにも関わらず、

 あろうことか己のマスターに阻まれる。なんと口惜しいことか。

 だが、望みはある。何故ならこの身は名乗ることができ、この聖杯戦争で、

 戦う機会はいくらでもあるだろう。故に落胆せず、次の機会のために剣を振るう。

 燕は切った、次はただ月を目指して無心で剣を振るう。

 ただ生涯を賭し磨き上げた剣技で、強者と戦うために。

 

 そして四人は教会へと足を運ぶ。

 凛が士郎に聖杯戦争の事を教えながら教会への道のりを三人が歩く。


 
 シロウは霊体となり憑いていきながらも考える。考える事はただ一つ。

 この機会に英雄王・ギルガメッシュを殺すこと、ただそれだけを考えて。

 彼は絶好の機会だと考える。図らずとも教会行くことができ、凛は言峰と話している。

 ギルガメッシュを誘き寄せ、そこで仕留める。それが彼の計画だ。

 戦闘があった事はバレるだろうが、固有結界の事は彼女には知られなくて済む。

 故に、今回のチャンスを逃せば、しばらくチャンスは訪れないだろう。

 そのため彼は策を二つ用意してある。必勝の策を。


 
 士郎は歩きながら、凛から聞いた情報を必死に整理する。

 憧れていた遠坂凛が魔術師であった事にも驚いたが、

 何故自分が戦争に巻き込まれたのか考える。

 色々な事を考えても彼の頭で全ては理解できない。

 しかし、一画減った令呪を見て、これは現実なのだと認識する。

 ならば衛宮士郎は逃げるわけにはいかない。何故なら正義の味方を志したのだから。


 
 凛もまた考える。己のサーバントのこと、そして何も知らない半人前の魔術師、

 衛宮士郎の事。セイバーを半人前の士郎に引き当てられた事は悔しかったが、

 自分のサーヴァントも満更ではない。不思議と頼りになると思ってしまう部分がある。

 が、彼の言うことにたまに赤面させられる。それは勘弁してほしい。

 彼はたまにドキリとさせる事をなんでもないように言うのだ。

 今でも彼の言葉を思い出せば赤面してしまうだろう。そんな事を考え顔を赤くする。

 きっとアイツは生前は女たらしだったのだろう。そう決め付け夜を歩く。



 そして教会へ着いた。霊体化しているシロウは扉をすり抜け、

 一人ギルガメッシュを探しに教会の奥へと進む。


 教会に入る二人とそれを見送る佐々木小次郎。腕組みをし頭上にて輝く月を眺める。

 自らの全力を賭けた戦いを願いながら、ただ月を眺める。

 ただそのためだけに召還に応じ、現界したのだから。

 その手に握るは古びた長刀。年季が入り所々錆びているものの、

 それは生前自らが愛用した刀に違いない。

 自身は『物干し竿』と呼んでいるものの、

 その刀は全くの無銘。その無名の長刀を腰に掛け、

 剣の騎士として現界した侍はただ一人、月を眺めて物思いに耽った。


 あとがき

 9話投稿完了。アーチャーの真名が何故シロウじゃなくてエミヤなのかと

 不思議に思ったので、自己解釈をいれてしまいました。あとシロウが宝具を

 使えないのも。シロウ君原作だとルール・ブレイカーとロー・アイアスしか

 使ってないような、偽・螺旋剣は真名解放してるのかは不明ですし。

 やってしまった感がぬぐえない第9話。・・・・10話をがんばろう。

2: オルガット (2004/04/05 00:40:04)[sktaguro at yahoo.co.jp]

えー、シロウ君が宝具使えないという所を宝具の力を完全には発揮できない、と
修正したいのですが、この提示版だと修正できない罠。
えー、宝具の力を完全には発揮できないと脳内修正して読んでいただけると幸いです


記事一覧へ戻る(I)