DARK HERO プロローグ〜二十話(M:凛・イリヤ・セイバー 傾:ライトシリアス H:十八話のみ有り)


メッセージ一覧

1: kazu (2004/03/31 21:49:06)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO プロローグ








誰かの声を聞いたのを覚えている―――――

俺が何も知らない子供だった頃から、その声はずっと聞こえていた。

何を言ってるのかわからない、それでも声の主の事は気に入っていたのは覚えている。

そんな不思議な事を除けば遠野士郎の日常は、平穏で満ち足りたモノだった筈だ。

大きな背中の父が居て、暖かい母が居て―――――それが当たり前だと信じて疑わなかった。

それがあの夜に全て蹂躙された。

その頃、覚えていないがガス漏れ事件や通り魔が近所で続発していて、真夜中に外出するなんて大人だって考えなかった。

まだ小学生の頃の俺が、夜の街を彷徨っているのは異様でありオカシかった。

何故外に出たのかはよく覚えている。

何時もの声の主が哭いていた―――――まるで生れ落ちる赤子の様に。

ただビックリして、その後に心配になって靴も履かずに夜の街に駆け出した。

痛む足と苦しい呼吸に泣きながら走った。

――――それでも速度は緩めない、声の主の元に急ぐ。

どれぐらい走ったかなんてわからなかった。

酸素不足でぼやけた頭に、夜の街に響く剣戟の音と銃声が意識を覚醒させた。

何かが――――衝突の余波だけで自分なんか消し飛んでしまいそうな程強大な何かがぶつかっていた。

ただソレが怖くて――――――それでも好奇心と義務感に突き動かされて、身を隠しながら剣戟の音に近づく。

音の発生源を視認できる位置まで、恐怖に耐えながら進みゆっくりと覗き込んだ。

瞬間――――――世界が凍りついた。

その少女は肩で息をしながらも、悲壮なまでに強い意思が篭った澄んだ瞳は輝きを失っておらず―――――

身に纏った鎧は凛々しさを引き立てていて、威厳を醸し出している。

整い過ぎた顔は血に汚されながらも一切美を損なっていなかった。

ソレは芸術を超えて神秘だった。

少女に対峙する金の鎧を纏った男は、背後から多数の武器を出しながら彼女を見下ろし、威厳に満ちた声で語りかける。

「どうした騎士王よ、それで終わりか?―――――余り我を失望させないでくれ」

「っ・・・!・・・・ハァ・・・ハァ・・・」

少女は言い返す力も無いのか、肩で息をするだ。

―――それでもその瞳は死なず、一層力を増す。

「そろそろ聖杯も現れる―――――早めに片付けろ、アーチャー」

そんな声が無粋にも差し込まれた。

二人に見惚れて気が付かなかったが、もう二人男が居た。

無精髭を生やした顔で無表情に銃を構える男と、神父の様な格好の巨躯の男。

二人は対峙したまま静止し、睨み合っている。

「言峰、貴様―――――既に聖杯を呼んだのか?」

「全てのサーヴァントを捧げる必要は無いからな。それに―――――」

巨躯の男――――言峰と呼ばれた男が、言い終わる前に世界が変わった。

黒い塔、その上に黒い太陽――――――

アレはダメだ――――

逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろにげろにげろにげろにげろ――――!!

俺の短い生の中で始めての死の直感。

アレは見てはいけない、触れてはいけない、アレは―――――

其処まで考えて、何かを感じた。

違和感―――――そう呼ぶには大き過ぎるモノ。

考えている内に全てが終わった。

無精髭の男が黒い太陽を見た途端、血相を変えて終わりの言葉を発した。

「セイバー!聖杯を破壊しろぉぉぉぉぉぉ!!!」

「な――――衛宮、きさ」

ダンッ!

ま、と言う前に言峰は衛宮と呼ばれた男に胸を撃ち抜かれて倒れる。

その光景に少々の動揺を示す金色の鎧の男を尻目に、鎧姿の少女が異を唱える。

「な―――何を言ってるのですかキリツグ!」

「説明する暇は無い。エクスカリバーで聖杯を破壊しろ!」

衛宮は力強く命令すると、左手を輝かせた。

「命呪――――!?」

その光に操られる様に黒い太陽に剣を構える少女。

それに呼応する様に頭に響く哭き声が悲鳴に変わる。

タスケテ―――――

そんな叫びに聞こえた。

まさか―――――

そう、まさかと思った。

それでも、その声が見捨てられなくて――――――

「止めて・・・!」

俺は振り下ろされる剣と黒い太陽の間に割って入る為に駆け出した。

「子供―――!?」

「チィ!!」

衛宮と少女は驚愕に目を開く。

たが、剣は止まらず―――――――眩い光と共に黒い太陽を切り裂いた。

そして地獄が始まった。

少女は溶ける様に消え、黒い太陽の中からヘドロの様なモノが溢れ出した。

金色の鎧を纏った男は避け損ない、そのドロを浴びもがき苦しんでいた。

そんな様子を呆然と見ている俺の頭上には―――――大量のドロが迫っていた。

「逃げろ――――――!!」

衛宮の声を遠くに感じる中、俺はそのドロ津波に飲み込まれた。





















意識がゆっくりと浮かび上がる。

ぼやけた視界には大量の武器の陳列された棚が映る。

そっか・・・・・昨日鍛錬の後そのまま寝ちまったんだ・・・・・。

この地下室で寝てしまうのは滅多に無い、がーねぇに毎朝朝飯集られてる身としては迂闊に此処で寝る訳にも行かない。

そんな事を考えながら武器に埋め尽くされた部屋を見る。

がーねぇにこんな部屋を見られたら何言われるか・・・・・・。

想像するだけで恐ろしい。

いや、藤村組の武器庫にされてしまうかもしれない。

何にしても良い事なんて何一つ無い。

それに―――――

ふと思い出したように床に描かれた魔法陣を見る。

「魔術師の工房に他人を入れるのも・・・・な」

そんな呟きが口をつく。

聖杯戦争までのタイムリミットは僅か。

何度やっても成功しないサーヴァント召喚にはウンザリするが、それでも今回はパス――――なんて真似は出来ない。

頭にわだかまる召喚失敗のイライラを外に追い出し、一つ伸びをして気合を入れる。

「さて―――」

今日も一日頑張ってみよー


















続いたりするらしい




あとがき

やっちまった・・・・・
駄作&意味不明・・・・
哂って許して・・・・




補足

ここの士郎は性格が少しヒネてるので、藤ねぇを嫌がらせの意味も篭めて「タイガー姐さん」を略して「がーねぇ」と呼んでます。

士郎の旧姓について
ギルっちの「雑種」発言にヒントを貰い混血の遠野の分家出身にしちゃいました。

ざっしゅ 【雑種】

(1)いろいろ入りまじった種類。
(2)異属間・異種間・異品種間の交配によって生じた個体。一つ以上の遺伝子に関してヘテロである個体。ハイブリッド。

上記の説明も読むと意外と納得できると思います(多分

2: kazu (2004/03/31 21:50:14)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第一話「取立てあくまと逃亡者」



「・・・・ねみぃ・・・・」

大欠伸をしながら、地下室からゾンビの如く這い出る。

朝飯・・・・・・・・別に食いたくないけど、虎に餌をやんないと暴れるしな・・・・・。

ズリズリと死徒の様な歩みで台所に辿り付く。

「納豆と・・・・この前藤村組の若衆に貰ったアジの開きがあったよな・・・・」

あそこの組はヤクザの癖にアットホームってか、なんてーか・・・・・。

煮物を御裾分けしに来たり、旅行の土産持ってきたりとか・・・・・・強面が普通に近所付き合いしてるから凄まじい。

近所の人は馴れたもので、組の人にもよく声をかけたりしている。

それで負け無しだからなんかずっこい。

なんて考えながら、昨日の残りの味噌汁をコンロで温める。

アジも良い具合だし、米は炊き立てだ。

「じゃ、居間に運ぶわよ」

「ああ、頼む」

さて、米を盛り付けて、と・・・・・。

「おはよーしろー!」

虎も丁度来たし飯でも食うか。



・・・・・・アレ?

なんか居てはならない奴が、俺の天敵が居たような気がしたが・・・・・。

「ま、まさかな・・・・・」

自分の恐ろしい錯覚を否定しつつも、恐る恐る居間を覗く。

すると――――

居た、居やがった。

「味噌汁は少し味が濃いわね。士郎もまだまだ甘い」

なんて俺の分の飯を食いながら、丁寧に批評までしてくれやがった。

「だったら食うな。ってか朝っぱらから不法侵入はやめれ」

「失礼ね。玄関から(こっそり)入ってきたわよ」

「世間一般ではそれを不法侵入というんだが?」

この女――――――遠坂凛は俺の正論にも全く堪えずに、普通に言い返す。

「だって、こうでもしないと逃げるじゃない」

「そりゃあ、お前の取立てが苛烈だからだ」

そう、この女は事有る毎に俺から何かを要求する。

ソレもコレも親父―――――衛宮キリツグの所為だ。

親父がこの土地の管理者に滞在の代償――――――簡単に言えばショバ代を支払わずに居座ったのだ。

まぁ、存在自体が気付かれてなかったのでその必要も無かったのだが。

親父が死んで、すぐに俺が魔術師だと遠坂にバレてショバ代を要求された。

その時はまだ払える額だったので良かったのだが、俺がバカ正直に親父も魔術師だった事を喋ってしまってからは―――――

思い出すのも恐ろしい取立て地獄。

隣のアットホームヤクザよりもヤクザらしい取立てを敢行する学校のアイドル。

俺に何か支払える代償――――つまり魔術的な道具だとか、術で生成した石・札なんかが作れれば問題ないのだが、いかんせん普通の魔術の才能はからっきしだ。

だから金で支払うしかないのだが―――――――中学生にそんな金は無いっつの。

そんな俺の事情を察したのか、ある日遠坂がこんな提案をしてきた。

「だったら・・・・・月に一回の取立て日に、私から逃げ切れればその月の取立ては免除。借金もその月分減らすわ」

なんて素晴らしい提案をしてきた。

この時は本気で遠坂に惚れた。

マジ惚れって奴だ。

だが直後にその淡い想いは消え失せた。

「但し、私に捕まったら二倍払ってもらうわね。借金も1/2しか減らさない―――――うん、平等なルールね」

取立てのあくまが居た。

さようなら俺の初恋。

なんて思い出して涙を流していると―――

「今月の分、払って貰うわよ?」

突然泣き出した俺に対してノーリアクションで言ってのけた。

そうだ、迂闊―――――この日の為に準備をしてきたのに忘れるなんて!

「あれー?何で遠坂さんがいるのー?」

そんな暢気ながーねぇの声が合図だった。

「じぇい!!」

掌に瞬間的に士郎くん印のスタングレネードを投影して床に叩きつける。

カッ!!

「なんですとぉぉぉぉぉ!?」

「甘い!」

がーねえの咆哮と、遠坂の得意げな声を背中で聞きながら一気に塀をよじ登る。

ドンッ!!

壁を飛び降りた直後髪の毛に掠るガントの雨。

ってか朝っぱらから飛ばし過ぎだ!!

そんな声にならない叫びを飲み込んで、サングラスをつけたまま追いかけてくる遠坂を振り切るために走り出す。

無論トラップは忘れない。

「踏み倒しバンザァァァァァァァァァイ!!」

そんな叫びで自分を奮い立たせて、朝の街に駆け出した。












おまけ



「きゃっ!?」

私とした事が、こんなトラップに―――!!

塀を越えた場所の地雷式催涙弾を避けて、士郎追おうと一歩踏み出した瞬間、ブービートラップのワイヤーを足に引っ掛け転倒―――――その後起き上がった私の顔面に時間差で消火器の噴出が直撃。

真っ白だ。

あ、駄目―――切れそう。

そんな時にアイツの間抜けな叫びを聞いた。

「踏み倒しバンザァァァァァァァァァイ!!」

何処か遠くで聞こえたが確かに士郎の声だった。

ブチィ―――!!

「バカ士郎ォォォォォォォォォォォ!!!!!」

私の怒声に驚いた雀達が一斉に飛び立つ。

そう――――これが殺意と言うモノなのね―――

ありったけの宝石を握り締めて微笑む私の姿を見た藤村組の人達が逃げ出した。

「失礼ね」

なんて事を言った後にゆっくりと歩き出す。

「フフフフフフフ―――――衛宮くん、待っててね♪」

















どうやら続くらしい

3: kazu (2004/03/31 21:50:49)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第二話「在りし日々」




「ヒィィィィィィ!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

何とか人気の無い森まで逃げて来たが、それが仇となった。

遠坂が人目を気にする事無く戦える場所に来てしまったのだ。

しかもガントに混ざって時折宝石が飛んでくる。

ピシィ!

うわっ!今すっげぇ魔力篭った宝石が掠った!?

そろそろ強化して盾代わりに使っているカー○ルおじさんも限界だ。

バギン!

「おわっ!?」

カー○ルおじさんの頭が砕け散った!?

ごめんカー○ルおじさん、今度チキンをたらふく食いに行くから許せ!

そう心の中で謝罪しながらありったけの魔力で煙幕を大量に投影する。

「南無三っ!」

煙幕のピンを抜いてひたすらばら撒く。

「クッ・・・・・考えたわね、衛宮くん」

その声の発生源に、強化した筋力でカー○ルおじさんの惨殺体を投げつける。

「カー○ルおじさんの恨みの一撃!!」

が――――

「甘い!!」

ガガガガガガガッ!!

マシンガンの様な凄まじいガントの連射で、カー○ルおじさんは見事に討ち死になされた。

だが――――!

「へ―――――?」

遠坂の間抜けな声が聞こえる。

その原因はカー○ルおじさんの残骸と共に降り注ぐ音響手榴弾。

あらかじめ仕込んで置いたのだが、見事に引っかかってくれたようだ。

地面に落ちる前に耳栓を取り出し、更に耳をふさいでニンマリ遠坂に笑顔を向けてやった。

「覚えてなさいよぉぉぉぉ!!」

キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!

遠坂捨て台詞を口の動きで読み取った直後に、頭に響くような嫌な音が耳栓越しに聞こえる。

暫く経って音が止んだ後には、目を回して倒れている遠坂がぽつんと存在していた。

「みっしょんこんぷりーと」

いぇーい。

正義は勝つのである。

そこ、借金踏み倒すのは悪だ、なんて無粋なツッコミしない。






そこでふと気が付く。

「ここ・・・・・何処よ?」

遠坂を背負って途方に暮れる俺はかなり間抜けだった。












凛視点



懐かしい夢を見た。

まだ母が生きていて、魔術の勉強が遊びと大して変わらなかった頃。

父は不器用な人だった。

転んで、もう歩けないと泣く私を見て困ったような表情をするだけで、何も出来ない――――――そんな人だった。

自分が泣いている、ただそれだけの事で普段は銅像の様な父がオロオロして表情を崩す。

それが妙におかしくって、知らずに泣きながら笑っていた。

父もそんな私を見て、困ったように苦笑いをしたのを覚えている。

そして、その後に迷いが解けたように父は無言で私を背負って歩き始めた。

暖かい、大きな背中――――。

少し肌寒い風すらも眠気を誘い、そのまま眠ってしまった。

それでも、意識が暖かい闇に閉ざされていく中で確かに聞こえた父の呟きが、やけにハッキリと頭に響いた。

「凛――――――すまない」

何で謝っているのかわからなかった。

今でもわからない。

それでも――――――あの背中は温かかった。

それが、私にとって父におんぶをして貰った最初で最後の思い出。

なのに、何で今こんなにも心地良いのだろうか。

まるであの時のような―――――

あの頃に比べれば少し頼りない広さの背中に揺られる感覚。

私が大きくなったからかな?

ねぇ―――――――

私、頑張ってるよ・・・・・父さん




















士郎視点



「・・・・・父さ・・・ん」

そんな寝言と共に、遠坂は俺の背中をギュッと抱きしめた。

同時に胸が押し当てられて少しドキドキするが、それも大して気にならない。

初めて聞いた少女の甘えるような声――――。

それは俺の男を刺激したが、それ以上に何か暖かい感情に包まれた。

この背中にかかる重みが心地よい。

「バーカ、無理し過ぎなんだよお前は・・・・・」

そんな事を背中の少女に向けて優しく言う。

もうすぐ始まる聖杯戦争。

それに参加すると意気込んでいた遠坂。

この少女が人を殺すのだろうか?

必要なら何の関係も無い人も――――?

過失と言う事もある。

その時、この少女は耐えられるのだろうか?

この柔らかく、軽く、華奢な女の子が―――――。

いや、きっと耐えるだろう。

遠坂は強い。

ホントは人並みに弱い癖に、甘えたい癖に魔術師としての強さを纏っている。

そして、その強さのまま自分を殺そうとするのだろうか?

この少女は引かない、俺も引かない。

ならば、戦うしかない。

どちらかが力尽きるまで。

この優しい少女に、自分を殺させる――――?

そんなの認められる筈が無い。

正義の味方にとっては見逃せない事柄だ。

奴を、親父を越える為にも俺は正義の味方でいなければならない。

それが復讐―――。

十年前、10を生かす為に1の人間を・・・・・俺の家族を焼いたあの男への復讐。

「お前がそう選択するしかなかったのは無力だからだ。俺は誰も殺さなかった」

そう言って親父を責めるのだ。

貴様が破れた夢を、俺は手に入れたぞ―――――そう言って親父の墓に唾を吐いてやる。

それこそが俺の復讐。



俺の―――――全て。




















続くらしいや







補足

士郎は武器、武具なら何でも―――当然銃器なんかも投影できます。
理由はこの先に出る・・・・・筈です(ぉ

カー○ルおじさんは拾い物です・・・・・投影した訳じゃないです




あとがき

ギャグが短すぎるかも。
なんか自分的には微妙な出来でやんす。
つーか士郎君歪み過ぎですね。
作者の性根が移ったんでしょうかねぇ・・・・・・・

4: kazu (2004/03/31 21:51:54)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第三話「開戦の狼煙」




はぁ・・・・・・疲れた。

あれから俺は、遠坂をおぶったまま学校までの道を歩んでいる。

色々問題がある様に思えたが、もう昼近くなっているので人もおらず、大した問題にはならなかった。

月一回の取立てのルール、それはお互いが負けを認めるか相手を行動不能にすること。

だから、今日は別に起こして一緒に歩いても危険はない。

だけど起こさない。

俺の背中に縋りつく細い手が―――柔らかく暖かい少女の重みが心地よかったから。

色欲の類は自分でも驚くほど萎えている。

この感情は、素直じゃない妹か娘を持った様な気持ち。

まぁ――――

「こんな事本人に言ったら殺されるな・・・・」

そんな事をククッと笑いながら呟く。

色々と考えている内に、学校の裏門に着いた。

その瞬間、世界が変わったような――――なんか体が蜂蜜漬けにされたような変な感覚が体に走った。

「ん?」

・・・・・・ま、いっか。

気のせいだろ。

しかし―――――なんか今更授業を受けるのもアレだな。

なんつーか、ダルい。

ついでに遠坂も巻きこんじまおう。

そんな傍迷惑な怠け癖を発揮した俺は、誰にも見つからないように外側の非常階段を使い、屋上にコソコソと上っていった。












凛視点


ふと、目が覚めた。

周りを見渡すと、何故か黄昏時の学校の屋上に居た。

少し肌寒くてぶるりと震える。

この地域の冬は暖かいっていっても―――――まさか外で半日近く寝てられるなんてね。

そんな事を寝ぼけた頭で考える。


「呆れたな」

そんな皮肉気な声が耳に届く。

声の主を確認しようと、声のした方に顔を向ける。

「今は戦争の真っ最中だぞ――――――君は少し軽率過ぎやしないか?」

黄昏を背に、手摺に座って外套を揺らす赤い騎士は不機嫌そうに文句を連ねる。

「五月蠅いわねアーチャー。アンタも見てたんなら起こしなさいよ」

「何を言う。今日の事―――――衛宮士郎との鬼ごっこには口を出すな、と言ったのは君だろう?」

そうだ、確かにそう言った。

これは冬木の管理者としての勤め。どうしても自分の手でこなしたかったから―――――――なんてのは言い訳になっちゃうかな?

「全く。借金の取立てなんかに掛ける時間は無いんだぞ?私が出れば一瞬で取り立てられたものを―――――」

「良いのよ、これは私の仕事―――――『遠坂』としての、ね」

父さんごめん、言い訳に家の名前を出してしまいました。

本当の所、何故私が衛宮士郎に拘るのか未だわからない。

友情ではない、恋でもない――――――筈だ。

だったら、魔術師である私がこんな無駄な――――――心の贅肉を貯めているのは何故だろう?

寝転がったままそんな事を考えながら、胸に抱きしめていた暖かいモノをギュッと抱きしめる。


「どうでもいいが――――――」

「何よ?」

呆れた様なアーチャーの声につい不機嫌になる。

「君が抱きしめている男が天に召されそうだぞ」

「抱きしめている――――男?」

ふと、胸元を見ると、見慣れた赤茶の頭。

少し見える肌は紫色に染まっていた。

「キャァァァァァァ!?」

「ぐはっ!?」

こきぃ!

慌てて胸に抱えている士郎の頭を投げ捨てる。

な、なんでよ!?

「私が君を起こさなかった一番の理由だがな―――――――――その男を抱きしめて、幸せそうにニヤけながら眠る君を起こすのは気が引けたのだよ」

なんて言って、ククッと皮肉気に笑う。

「な――――!このバカアーチャー!」

「本当にどうでも良いのだが―――――君はそんなに衛宮士郎を殺したいのか?」

そう指摘されて、血の上った頭で士郎を見ると――――

「なぁ・・・六文なんて言わずに・・・三文で・・・・え?賽の河原の船渡しを値切るな?何事も節約なのだよ・・・・・フハハハハ・・・・」

なんて虚ろに呟く首が変な方向に曲がった士郎が居た。

「キャァァァァァァ!?士郎、その船に乗っちゃダメェェェェェェ!!」

と、つい力任せに首の位置を元に戻す。

ぐべきょ!

「はおうっ!?」

そうすると士郎は、一度ビクンと震えた後に安らかな寝顔になる。

「な、治ったの・・・・?」

「凛、止めを刺してどうするんだ。小僧が息をしてないぞ」

あうっ!?

ヤバイ・・・・・!

「セット・・・・」

治癒魔術で間に合うかな・・・・?

「以下略!」

時間が惜しいのでスペルは全部すっ飛ばす!

「フム・・・・。治癒は苦手だと思っていたが中々――――」

そんなアーチャーの批評も聞き流す。

でも、呼吸が停止した状態からの治癒なんて私に出来るのか疑問だ。

なのに――――

「なんでこうもアッサリと目ぇ覚ましてるのよ!アンタは!」

と、反射的に目を覚ましかけていた士郎をブン殴る。

「ジオン公国に栄光あれ!?」

そんな意味不明な言葉を残し再び気絶する。

「ふむ、アッサリと目覚めるのは当たり前だ。その小僧の怪我は重度の捻挫と、その巨大なタンコブだけだからな」

・・・・?

と言う事は―――――

「アーチャー・・・・騙したわね?」

魔術回路を起動させつつバカ弓兵を睨む。

「なかなか楽しませて頂いたよ」

なんて言って、ククッと笑うバカにガントを打ち込む。

「何をするんだ凛」

「いいから当たりなさぁぁぁぁぁい!」

余裕顔でひょいひょいとガントを避けるアーチャーに、ますます思考はヒートアップする。


「それよりも凛。気付いているか?」

急に真面目な顔になったアーチャーに、私も魔術師としての思考に切り替える。

「ええ――――結界ね。しかもかなり性質が悪い」

「どうするのだ?恐らく聖杯戦争関係の物だが」

そんな事は決まっている。

「こんな性質の悪いの、ほっとける訳ないじゃない」

少し顔を険しくして言い切る。

「クッ―――本当に君は予想通りの反応をしてくれるな」

なんて楽しそうに言うアーチャーは無視。

「士郎を保健室に運んでおいて。時間がかかりそうだし――――――そのバカか風邪を引いたら面倒」

「不本意だが仕方があるまい。君の集中にこの小僧は邪魔だろうからな」

そう言って、珍しく素直に命令を聞くアーチャー。

「30秒で戻る」

そう言って士郎をまるで荷物のように抱えると、目で追えない速さで保健室に向かった。

さて、始めますか―――――。























続くらしい




あとがき

次回はやっと戦闘か?
にしても拙い文だなぁ・・・・

5: kazu (2004/03/31 21:52:24)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第四話「狙撃」





最初に目に映ったのは白い天井。

おかしいな――――?

俺は屋上にいたはずだ。

頭に大量の?を浮かべながら周りを見回す。

すると、ドアを開けて出て行こうとしてる赤いのが居た。

「む、目が覚めたのか」

声も掛けてないのに俺に気が付く赤いの。

ってか、コスプレですか?

そんな言葉を背を向けたままの赤いのかけたくなる。

「一つ聞く――――――貴様、何者だ?」

いや、それはこっちのセリフです。

「まぁいい。忘れてくれ」

なんて勝手に自己完結して出て行く赤い不審者。

「・・・・保健室だよな・・・・ここ」

そう呟いて、ふと気が付く。

「この学校のセキュリティーはどうなってるんだ?」

あんなコスプレ不審者が進入してるのに、警報の一つもないし。

そんな妙な心配を、既に暗くなった外を見ながらする。

「あ、そういや遠坂・・・・・」

すっかり忘れていた。

こりゃ・・・・・殺されるなかな。

でも待てよ―――――遠坂も俺の隣で寝ていた筈なんだが。

俺だけ保健室、さっきの赤い不審者が善意で運んでくれたにしろ遠坂が居ないのはおかしい。

先に起きていれば叩き起こされた筈だし。

「ん――――少し心配だな」

おちおち寝てられんな。

居るとは思わないが一応屋上に急ぐか。








アーチャー視点


屋上への道を急ぎながら思考のの海に潜る。

おかしい。

衛宮士郎は剣製のみに特化した存在だった筈だ。

だが―――あの衛宮士郎は現代兵器を軽々と投影した。

しかも、それはちゃんと機能していた・・・・。

磨耗の果てに見出した希望が崩れる。

「世界は――――解放を許してくれないのか」

そう、直感で解った。

奴は同一であり別物だ。

奴の歪み方では自分へ至らないだろう。

あの在り方は反英霊と言うよりも英霊に近かった。

だから、奴を消したとしても自分は―――――――

いや、あるいは聖杯なら―――

そんな馬鹿げた希望に縋る自分が滑稽で、知らずに顔を顰めているのに気が付いた。











士郎視点


さて、一応屋上に着いたが・・・・。

居ないな、遠坂。

キィン

カッ

闇に染まった校舎を見下ろしながら途方に暮れていると、僅かな剣戟の音が聞こえた。

「ん?―――――――なんだ、アレは」

瞬時に思考が魔術師としての衛宮士郎に切り替わる。

校庭では青い突風と赤い疾風が火花を散しながら衝突していた。

更に少し離れた所に制服姿の女子が立っている。

もっとしっかりと見るために、目を強化して目を凝らす。

「遠坂・・・・?何やってんだあんな危ない所で!」

そう、遠坂凛がぼけっと突っ立っていた。

更によく見ると、赤い疾風はさっきの不審者で、青いのは――――――知らん。

二刀を振り回す赤い不審者と槍を操る青いのが、人を超えた戦いを繰り広げていた。

まさか――――

「サーヴァント、か?」

ありえる。

少なくともあの二人が死徒で、遠坂を取り合って戦ってるってのよりは納得できる。

「遠坂って、召喚に成功していたのか」

むぅ・・・・・・、ならどっちが遠坂のサーヴァントだ?

そんな事を考えていると、空気が凍った。

青い槍使い―――――恐らくランサーだろう。

ランサーが無防備とも言える構えを取った直後、赤いのは死ぬと直感した。

もし赤いのが遠坂のサーヴァントなら―――――ヤバイ。

遠坂のサーヴァントが負けたら確実に遠坂は殺される。

それは嫌だ。

なら援護するしかない。

「投影開始――――」

時間がない。

様々な工程を無視し、心の中の武器庫から武器を引き抜く感じでスナイパーライフルを投影する。

更に弾と炸薬を強化。

その上に、一度だけ見た事がある火葬法典を弾頭に刻み添付する。

それらの魔術を結界の基点の魔力に隠れて、気付かれない様に細心の注意を払い行う。

これで頭を撃ち抜けば、あるいはサーヴァントでも―――――

わからない、これは賭けだ。

だがやらなければ遠坂が死ぬ。

だが――――本当にランサーを撃っていいのだろうか?

もしアイツが遠坂のサーヴァントなら――――遠坂は俺が殺したことになる。

だが、迷っている暇は無い・・・・!

あの赤い不審者は俺を保健室に運んだ。

サーヴァントが善意から赤の他人に対してそんな事をするなんて考えられない。

万が一にも、善意からの行動だったとしたら遠坂も運んでいる筈だ。

つまり、遠坂が何らかの理由で運ばせた?

まぁ良い――――

迷いは消えた。

心の中で銃と自身の境界を無くし、更に自身を空気と一体化させる。

弓と同じ集中方。

当てるのではなく当たる。

殺気も思念も消し去る。

この距離でこの一撃なら、サーヴァントですら探知できないだろう。

リンゴが木から落ちる―――――それと同じように、当たり前に撃つのだから。

撃鉄を下ろしてスコープを覗く。

既に弾丸は止められない。

後は、当たるだけ。

ゆっくりと引き金を引く。

タァァァァァァン!!

強力な反動と共に、青い槍兵は弾かれたように前のめりに倒れる。

「Direct hit」

口をつく口癖を無視して槍兵を観察する。

直後、火葬法典の効力により燃え出す槍兵の頭。

着弾を確認してライフルを消すと、念の為にウージーを投影して校庭に向かった。




















続くみたい


補足

アチャの「あの在り方は反英霊と言うよりも英霊に近かった」ですが、これは書き間違いではないです。
たしかマテ本ではアチャは反英霊扱いでしたんで。
何かを犠牲にして何かを救う、それだけは士郎にとって死んでも出来ない事、つまり禁忌なんです。
キリツグと同じには死んでもならないって執念めいた考えなんで、ここの士郎がアチャになること無いです。




とがき

さてさてどうなるのやら・・・・・
ちなみにコレ、士郎最強ものではありません。
むしろ此処の士郎の方が原作の士郎より弱いです。
ま、今現在は、の話ですが。

6: kazu (2004/03/31 21:53:02)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第五話「反転衝動」


凛視点




「――――――ほう。よく言ったアーチャー」

途端、殺意の突風に意識が消し飛ばされそうになった。

ランサーの腕がゆっくりと動く。

その独特の構えは必殺。

故に、逃げる事は出来ない―――――!

「――――ならば喰らうか、我が必殺の一撃を」

最後通告。

これにアーチャーが答えれば、肉食獣よりも禍々しく素早い牙が彼を襲うだろう。

「止めはしない。いずれ超えねばならぬ敵だ」

その返答に答えるようにランサーの体が沈む。

―――瞬間、空気が凍結した。

マナはその流れを止め、体からは嫌な汗が噴出す。

その直後――――

タァァァァァン!!

呼吸すらも許されない沈黙の中で、全てを解かす銃声が響く。

それと同時に、後頭部に衝撃を受けたように――――弾かれるようにうつ伏せに倒れるランサー。

「なっ・・・!?」

アーチャーの驚愕に震える声が聞こえる。

クールな彼には考えられない程顔が歪んでいる。

多分私も同じような顔なのだろう。

ボッ

一瞬の事だった。

倒れて数瞬後にはランサーの頭が燃えていた。

「これは・・・・・・衛宮士郎の仕業か」

そう呟きながら、狙撃者が居るであろう屋上を睨む。

そう――――恐らくアーチャーの言う通りだろう。

大方私の事情を察して余計なお節介をしてくれたのだろう。

「チッ――――何処のどいつだか知らんが、アジなマネをしてくれるな」

そう言いながら何事も無かったかのように立ち上がるランサー。

「な・・・・幾らサーヴァントでも頭を撃ち抜かれれば無事じゃ――――」

「フン――――確かに弾丸の空を切る音が聞こえなかったらヤバかったが・・・・。一発程度なら五感が感知すれば当たる直前の無意識の回避で避けられるのさ」

なんて事を事も無げに言うランサーは、右耳が皮一枚で繋がっている状態だった。

「ま、その後の炎は予想外だったけどな」

その一言にぼんやりと見ていた彼の顔を、しっかりと見る。

「な――――」

あの、頭は―――

「どうした、嬢ちゃん?何でありえないものを見るような目で人の頭を見てるんだ?」

く・・・くくくく・・・・

「プッ・・・あははははははははははははははははははっ!!」

耐えられる訳が無い。

その証拠に、あのアーチャーですら腹を抱え俯いて痙攣している。

決して笑い声を出さないのはポリシーだろうか?

「―――?まぁいい、興醒めだ。今日は引かせてもらおう」

そう言って校舎の方向に消えるランサー。

「あーっはっはっはっはっはっはっはっはっ!ひー、もうだめー!」

「ぷっ・・・・くくくく・・・」

彼の去った校庭には、アーチャーの含み笑いと私のバカ笑いが絶え間なく響いていた。



む、なんか忘れているような気が・・・・

一分弱ほど笑って、落ち着いた頃にふと思い出す。

あ―――士郎!

ランサーは校舎に向かった。

士郎は屋上からランサーを撃った。

そしてランサーは自分を狙撃した人間を見逃すようなタイプでは無い。

ああ・・・・またとんでもない所でポカをしてしまった。

「アーチャー!何時までも笑ってないで校舎に士郎を助けに行って!」

「く・・ハハ・・・く・・・。む?何時までも命令が無いから見捨てたのだと思ったのだが」

「んな訳あるか!後から私も行くからさっさと行け!」

「仕方がない。了解だ」

そう言って消えるアーチャーを見送った後に、自身も走り出す。

「士郎――――死んだら借金倍にするわよ・・・・!!」










士郎視点



「いってぇ・・・・・」

槍に切られた脇腹を抑えながらも視線はランサーから離さない。

ってか、ウージーの連射を全弾捌き切るってどんなバケモンだよ・・・・!

「信じられないって顔だな。生憎と俺には矢避けの加護ってのがあってな、狙撃じゃない限り俺には当たらんぞ」

「その点さっきの攻撃は偶然にしては良かったぞ」なんて講釈をたれながらゆっくりと歩いてくる。

くっ・・・・・こんな、こんな―――――

「こんなふざけた尻尾付きアフロに殺されるなんて!!」

「オメェが原因だろうがっ!!」

そう、奴の頭は後頭部の尻尾を残し全てアフロになっていた。

火葬法典で頭焼かれてアフロで済むコイツに呆れるべきか、この状況に呆れるべきか自分でも判断が付かない。

俺に襲い掛かった当初は気がついていなかったらしく、指を刺して笑う俺にハテナ顔だったが―――――

窓ガラスに映った自分の頭を見て一変。

激怒して容赦無しで襲って来たのだ。

つーか、そんなに怒るなよ。

もう髪の毛が少しずつ戻り始めてるのに――――――

「心の狭い槍使いだ。そんなんだからアフロになるんだ」

「関係ねぇ!」

さっきから奴は叫びっぱなしだ。

「フン――――まぁいい。遊びは終わりだ」

瞬間、ゾクリとするような殺気が体を突き抜けた。

まずい。

なにがまずいって、奴が本気になったことと――――それ以上に自分が抑えられそうもないことが。

殺気のせいで俺の中の魔の血が目を覚ましてしまった。

ヤバイ―――――!ここで理性を無くせば逃げられるものも逃げられなくなる!

「坊主・・・・お前――――髪の色が」

奴の言いたい事は良くわかる。

普段の赤茶なんかとは比べられない程、髪が真っ赤に染まっていくのが自分でも理解できる。

「ハッ―――――冗談、こんなの人間の気配じゃねぇぞ。こんな隠し玉を持ってやがったとはな」

楽しそうに言うランサーの声が酷く耳障りだ。

お前――――何笑ってんの?

邪魔なんだよ。

俺を殺す?何様だよ――――

悪意と暴力性が理性の殻を突き破り嘴を見せる。

駄目だ、反転する・・・・!

「投影開始―――」

1・2・3・4・5・6・・・・・校舎内ならこの数が限界か。

「この魔力の動き・・・・・何をする気だ?」

別に態々聞かなくても――――

「教えてやるよっ!」

発動寸前で止まっていた投影を一気に解凍する。

「な・・・にぃぃぃ!?」

慄く奴を、俺が投影した小型ミサイル6発が襲う。

多少爆風でのダメージを覚悟した自爆技だ。

どんなに素早かろうとあの爆風は避けられない!!

ドドドドドドォァァァァァァァァ!!

爆風を盾に奴の濃密な気配に向けて突っ込む。

「チィッ・・・・」

両腕で顔を庇っている奴の正面に走り込むと、ショットガンを投影してポンプアクションで弾を篭める。

顔を顰めて迎撃しようとする奴の動きを、顎にショットガンを押し付け止める。

「さぁ、避けてみろ」

ニィッと口元が歪むのが自分でもわかる。

それ程の昂揚。

ランサーはこの状況が我慢ならないのか、槍を握り締めてブルブルと震えている。

「なめるなぁ!!」

怒声と共にランサーにショットガンを弾かれる。

まだだ!

両手に一丁づつ投影したアサルトライフルを至近距離で奴に対して放つ。

ガガガガガガガッ!!

だが、それも奴には掠りもしない。

「ったく、なんてデタラメな坊主だ」

なんてランサーが耳元で囁いた後に――――

ドガァ!

初めて斬撃や突き以外の攻撃―――――蹴りによって俺は廊下を滑空し、窓を突き破って校庭に転がり落ちた。

「カッ・・!」

アバラがボロボロだ。

立つ事も出来ない。

俺が痛みに喘いでいると、ランサーが悠然と校庭に降り立ち、俺の近くまで歩いてきた。

「良い勉強になったぞ、坊主。銃器か―――――中々に厄介な武器の様だ」

そんな事を嬉しそうに言うランサーを尻目に、俺の意識は闇に包まれ始めていた。

「じゃあな。楽しかったぜ」

なんて言ってランサーが槍を振り下ろす光景を見ながら、俺は意識を手放した。














続くらしい


あとがき

なんか燃え尽きました。
投稿速度が下がるかも・・・・・・

7: kazu (2004/03/31 21:53:26)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第六話「運命と出会う」



ある少女の夢を見ている。



その少女は孤独だった。

王であるが故に、剣に選ばれたが故に―――――

「その剣を抜けば――――」

君個人の人生は終わる。

そんな忠告に何度躊躇ったか。

何度――――人知れず泣いたか。

期待という名の重圧に耐えられない時もあった。

「無理だ」って叫んで、そのまま普通の女の子みたいに泣き崩れたくなる時もあった。

言外の叫びも聞き入れられず、救った筈の民にすら憎まれる。

それでもこの国が大好きだった。

だから、年頃の女の子らしいことも全部我慢して頑張った。

だから、人の心が無いと言われても食事が雑でも、我慢して冷徹な振る舞いを続けた。

その末に、丘に立ち尽くす。

それでも―――――

それでも崩れ落ちそうな膝を必死で奮い立たせ、王として振舞う彼女に対して向けられたのは―――――



夢は此処までだった。

なんだよこれ。

ふざけてる――――!!

こんな小さな・・・普通の女の子を犠牲に成り立つなんて――――――

それを当然と甘受し、その才能を妬む者さえいる。

許せない。

せめて一人でも――――たった一人でも彼女が甘えられる存在がいたのならば――――!

女の子一人犠牲にしなければ成り立たない国なんて――――




いっそ、滅んでしまえば良いのに。





そこで、体を走る激痛に叩き起こされた。

どれぐらい意識を失っていたのかわからないが、ランサーがまだ居る事から大した時間は経っていないだろう。

自分が死んでいない事も不思議だが、ランサーを追い詰めている鎧姿の少女の存在も不思議だった。

見覚えがある――――

必死に記憶を手繰り寄せるが、痛みが邪魔をして上手くいかない。

「目が覚めましたか」

俺が彼女を凝視していると、少女は安心したように振り向く。

「戦いの最中に背中を向けるとは何事かっ!!」

そんなランサーの怒声に彼女は冷たい視線を向ける。

「今日は日が悪いようです。見逃してあげますから早く去りなさい」

「―――っ!!・・・・チッ、臆病なマスターからも帰還命令か。仕方がない、この勝負預けたぜ!」

捨て台詞を残し消えるランサーを見送る。

暫く無言だった少女は、ゆっくりとこっちに歩み寄り―――――

「サーヴァントセイバー、召喚に応じ参上しました」

と、凛々しく俺に挨拶をした。

「問おう――――」

わかりきった問いだった。

「貴方が私のマスターか?」

ここに俺しか人が居ない以上答えは決まっていた。

「契約は完了した。ここに貴方の剣となることを誓おう」

それは儀式だった。

騎士たる者が主に仕える際の儀式。

だが―――

そんな思考も左手に命呪が浮かび上がった直後に掻き消された。

「づ――――がぁぁぁぁぁぁ!!」

繋がったレイラインに体内の何かが反応して、俺の体が内側から腐り落ちていく。

「マスター!?」

セイバーの悲痛な声も何処が遠い。

腐り落ちているのは錯覚だったのか、今度は無理やり体が作り変えられるような、体から剣が生える様な痛み。

「う・・・・ギィ・・・・・!!」

体内の何かが逃げ場を求め、体を駆け巡る。

それがまた耐えられない苦痛になって俺を襲う。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

瞬間―――

黒い、昏い炎が体の中から噴出した。

「マスター・・・!それは――――――」

驚いたセイバーの声がハッキリ聞こえるようになってきた。

一度噴出した炎は、落ち着いたとでも言う様に体内に戻っていった。

苦痛も消え失せたので、荒い息を整える。

「セイバー・・・・お前―――」

そう、激痛の中で確かに思い出した。

眼前で心配そうに俺を見つめるこの少女は―――――

「十年前・・・・聖杯を破壊したのは・・・・」

言うな。

止まらなくなるぞ。

正義の味方は復讐なんてしちゃいけない。

復讐で復讐に失敗するなんて滑稽な話があるか。

だから止めろ!

親父に負けるんだぞ・・・・!!

だけど――――

―――――母さんは空に腕を上げた体制のまま死んでいた。

父さんはそんな母を護るように炭化した体で母を抱きかかえていた。

俺が止めるキリツグを振り切り死に体で家にたどり着いたときに、父は肉が削げ落ち炭化した体でも生きていた。

混血故の悲劇だろう。

そんな状態の父が俺の生存に、乾いた瞳を涙で濡らし喜んだ。

そして、母が死んでいるとも気が付かずに母を抱きしめ泣いて喜んだ。

そして、そのまま「士郎、退院したら旅行に行こうなぁ・・・・家族全員無事記念。快気旅行って奴・・・だ・・・」なんて言って息絶えた。

目頭が熱くなる。

俺の・・・家族を奪った相手を前にして―――

何を我慢する?

思い出すだけでも涙が溢れるような姿に両親を変えた張本人を前に、お前は何をやっている?

止められない――――――

「お前、だな?」

止める道理も無い・・・・・!























続く










あとがき

士郎君ぷっつんの巻き。

ちゅーか、珍しくギャグなしです。
次回にはギャグ復活する予定ですが。

8: kazu (2004/03/31 21:53:49)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第五話外伝「水と油」


ランサー視点


「チッ――――今日は厄日か?」

自分の運の悪さについつい悪態を吐く。

「それは結構な事だ。なら君が厄日の内に倒してしまった方がいいかのな?」

癇に障る。

マスターの嬢ちゃんは好みだが、この野郎だけは気に食わねぇ・・・・。

「で、何の用だアーチャー?俺は戦う気は無いぞ」

帰還命令が出ている以上、不本意だが撤退しなければならない。

「フン、私とてアフロの相手をしている暇など無い」

「アフロって言うな!」

人が気にしている事を―――――!!

「ふむ、これは失礼した。――――尻尾付きアフロだったな」

プチンッ

あ、これは切れた。

あの坊主も、この野郎も――――――

「アフロアフロ五月蠅いわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

怒声と共にゲイ・ボルクを投げつける。

「ああ、そう言えば――――――」

ひょいと避けながら、奴の顔が厭らしく歪む。

「このセリフ、君に返そう」

――――何を言っているんだ、こいつ?

「・・・・いいぜ、訊いてやるよ。テメェ、何処の英雄だ。アフロ頭の槍兵なぞ聞いたことが無い」

態と俺の喋り方を真似て、皮肉気に言うクソ野郎。

「上等だこの野郎!そんなに死にてぇなら殺ってやらぁ!!」

ゲイ・ボルクを出し、一気に間合いを詰める。

――――が。

「なぁぁぁにやってんのよ、このバカアーチャー!早く士郎を探しなさい!!」

ドゴメシッ!!

突然後ろから現れた嬢ちゃんに、野郎の頭が在り得ない速度でぶれる。

ゲンコツ、というやつか。

そんな様子にすっかり毒気を抜かれて、槍を消して背を向ける。

「じゃあな嬢ちゃん。サーヴァントの躾ぐらいはしっかりしろよ」

一言残して去ろうと、窓を開けて窓枠に足を掛けるが―――――

「あ、居たの?アンタの頭、アフロと直毛が混ざって悲惨なことにな――――――あれ?」

居たの?発言に足を踏み外し落下していく中、最後に聞こえた言葉を思い出し、ふと窓ガラスに映る自分を見てみると――――――

「ブッ!!」

なんともお魚くわえたどら猫を裸足で追いかけていきそうな頭になっていた。

「流石にこれは酷いぞバカ野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

ベチィィィィン!!

誰に向けたか自分でもわからない罵倒を残し、余りのショックに着地できずに校庭に叩きつけられた。













第七話に続く






あとがき
息抜きです。故に短いです。
つーか、最初は書く気無かったんですけど、なんか期待されてたんで。
ちょいちょいと書いたんで出来の方は目を瞑って頂けると幸いです。

にしても・・・・・ギャグは書くのが楽だなぁ・・・・・

9: kazu (2004/03/31 21:54:48)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第七話「魔弾」



セイバー視点

膝をついて荒い息を吐くマスターが、こちらを見上げ静かに口を開く。

「十年前・・・・聖杯を破壊したのは・・・・」

激情を耐える様に、マスターはただ静かに私に問う。

「お前、だな?」

この質問に答えれば私は恐らく彼に殺されるだろう。

だけど――――

「はい、その通りです」

彼の涙が溜まった真っ直ぐな瞳から逃れる事は出来なかった。

直後、マスターの手には以前キリツグが使っていた「銃」という武器が握られていた。

「お前が・・・・!」

彼の呟きは憎悪に満ちている。

「ですが、あれは―――――」

私の言い訳じみた言葉が始まりの合図だった。

タァン!

マスターは銃を躊躇いなく私に向けて撃つ。

私もまだ殺されるつもりは無いので、避けながら必死にマスターを説得しようと声をかける。

「聞いてくださいマスター!」

タァン!

返答は弾丸で返される。

「チッ・・・!」

飛び道具では無理と悟ったのか、彼は舌打ちと共に赤い槍を手に生み出す。

「それは――――!」

ランサーの宝具!?

何故人であるマスターがそんな物を!?

「ゲイ―――――」

まさか、人の身で宝具の発動を!?

恐らくマスター自身も頭に血が上って、自分がどんなにとんでもない事をしているのか気が付いてないだろう。

発動させては拙い―――――!

「ハァ!」

マスターの槍を気合の篭った一閃で払いのける。

数瞬の睨み合い―――――

一体彼は何者なのだろう?





士郎視点


ゲイ・ボルクを払い除けられてやっと冷静になる。

俺は確かに今、宝具の投影に成功した。

しかも発動まで成功しそうだった―――――

確かに宝具の投影はリスクが大きい。

魔術回路は一回の投影だけで半数がズタズタ。

その上相手はセイバーだ。

接近戦では宝具の発動すらさせてもらう余裕は無いだろう。

だからゲイ・ボルク再投影は無しだ。

だがどうする・・・・・?

あれ以外にセイバーを打倒し得る武器は俺には思いつかない。

やっぱゲイ・ボルクで―――――

いや、待てよ。

ならゲイ・ボルクを、セイバーに邪魔されずに発動できる程の距離から攻撃できる武器に作り変えれば――――?

元々ゲイ・ボルクは投函用だ。

そのまま投げてしまう手もあるのだが、動作が大き過ぎて多少の距離ならセイバーに邪魔されてしまうだろう。

だか、コンパクトな動きで遠距離から放てる物にしてしまえばあるいは―――――

正に思い付きだった。

だが、投影魔術とはイメージから成るモノ。

イメージさえしっかりしていれば、現存する武器を掛け合わせて全く新しい武器を作り出す事も可能―――――!

右手にリボルバーの銃を投影して、左手に赤色の弾丸を投影する。

難しいことじゃない―――――

ゲイ・ボルクの概念の設計図をそのまま弾丸に組み込んで編み上げるだけ。

そう、それだけでいいのだ。

そうして完成した赤く装飾の付いた弾丸をリボルバーに篭める。

撃鉄をゆっくりと下ろし、未だ事態が飲み込めていないセイバーに標準を合わせる。

「ゲイ――――――」

「まさか・・・・、そんな馬鹿な!?」

セイバーもやっと気が付いたのか、こちらに駆け出すがもう遅い。

「ボルク――――――!!!!」

ドウッ!!

真名と共に放たれる赤い魔弾が唸りを上げ、彼女の体を食い破ろうと迸った。




勝った!その思いが心を占める。




が―――――

セイバーは魔弾を見えない剣で軌道を逸らし、難を逃れていた。

「迂闊――――」

そうだ、あの宝具は投函に使用すれば因果の逆転は極端に弱まり、威力のみにその機能を発揮する。

飛び道具の効かないセイバー――――恐らくランサーと同じ矢避けの加護だろう――――相手に威力だけの飛び道具は無意味だ。

更に言えばセイバーの幸運は計算に入れていなかった。

そんな思考を、赤い魔弾によって中破した体育館を見ながら張り巡らせる。

「士郎、止めなさい!」

次の武器をボロボロの魔術回路で投影しようとしている所に、凛とした―――――正に名前通りの彼女の声が響いた。









アーチャー視点


「士郎、止めなさい!」

凛の怒声に衛宮士郎は動きを止める。

本当に謎の状況だ。

何故セイバーを攻撃するのだ――――?

そんな疑問も小僧の次の言葉で吹き飛んだ。

「邪魔をするな遠坂。復讐ぐらいさせろよ」

復讐・・・・?

確かに奴はそう言ったな?

「どういう事よ?」

怪訝そうな凛の声に私も同調する。

おかしい。

サーヴァントと、英霊と出会う機会なんて聖杯戦争でもない限り無い筈だ。

「こいつ、十年前の火事の犯人なんだよ」

そうか――――そういう事か。

磨耗した記憶を掘り返してみると、私の時は火事の中で一度心が死んだ事を思い出した。

だが、奴は何故か心が死なずにそのままの状態で生き残った。

そして、どういった経緯かは知らないが火事の―――聖杯戦争の顛末を知ってその原因、つまり家族と奪った者を憎むのは当然の帰結と言える。

現に私はそうして恨まれてきた。

救いの代償――――か。

複雑な物だな、自分と同じ存在が代償の被害者として復讐を遂げようとする様を見るのは。

そう、当然の怒りなのだ。

誰しも大切なものを奪われれば怒る。

やはり――――――――勝手に生贄として誰かを殺して人を救った私は最悪のエゴイストなのかもしれんな。

まだぶちぶち言っている衛宮士郎に説教をしている凛を見ながら、そんな事を考えて自嘲した。

















続く



補足
凛とアチャの到着がここまで遅くなったのは、逃げようとしてたランサーとばったり会って小競り合いをしていたからです。
正確には、小競り合いをしているアチャとランサーを発見した凛によって仲裁。ってな感じです。






あとがき
考えてみれば、大を救う為に小を殺す、の考えで小の側の人間が采配者を憎むのって当然なんだと思うんですよね。
所詮命は一つだけ、大を救えてもその後に家族が、恋人が、友人が残っていなかったら意味が無いですしね。
そんな決断を他人に勝手にされたんですから士郎の怒りは尋常じゃないと思います。

士郎の魔弾ゲイ・ボルクはアーチャーのカラドボルクと同じ考えですね。
思いの他好評ですね・・・・シリアス。
感想に圧されて魂込めてマッハで書きましたよ。

も、燃え尽きたぜぃ・・・・・真っ白に・・・・


追伸:ギャグ、無理でした・・・・・・・

10: kazu (2004/03/31 21:55:16)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第八話「笑顔」


あれから遠坂に宥められた俺は、俺の家の居間でセイバー・遠坂・アーチャーと対峙している。

別にセイバーを許した訳じゃない。

あの状況じゃどう考えても手も足も出ないからだ。

魔術師としてかなり高位の遠坂と、サーヴァントのアーチャーとセイバー――――――

そんなメンバー相手にボロボロの魔術回路と体で向かって行くのは、無謀を通り越してバカだ。

それに、何やらセイバーも言い分があるようだ。

―――――それこそ、親父みたいな事を言ったらその場で殺すが。

「で?何か言いたそうだが――――何だ?」

自然と声に殺気が混ざるのだけは止められない。

「では一つだけ。聖杯の破壊は私の意志によるものではありません」

そう、家に着くまでの間に何となく予想はしていた事だ。

完全に忘れていたが、彼女は親父に逆らっていた気がする。

「そうか―――――」

彼女の言葉を聴いて納得する。

流石に殺気は消えたが、複雑な思いは残る。

「ですが―――――私が貴方の家族の仇である事には変わりがありません」

・・・・・・予想外の言葉だった。

許しを乞うでもなく、ただ強い意思と威厳を持って彼女は自分を断罪した。

その姿に、あの夢を思い出した。



その少女は孤独だった。

王であるが故に、剣に選ばれたが故に―――――

「その剣を抜けば――――」

君個人の人生は終わる。

そんな忠告に何度躊躇ったか。

何度――――人知れず泣いたか。

期待という名の重圧に耐えられない時もあった。

「無理だ」って叫んで、そのまま普通の女の子みたいに泣き崩れたくなる時もあった。

言外の叫びも聞き入れられず、救った筈の民にすら憎まれる。

それでもこの国が大好きだった。

だから、年頃の女の子らしいことも全部我慢して頑張った。

だから、人の心が無いと言われても食事が雑でも、我慢して冷徹な振る舞いを続けた。

その末に、丘に立ち尽くす。

それでも―――――

それでも崩れ落ちそうな膝を必死で奮い立たせ、王として振舞う彼女に対して向けられたのは―――――



自分に虫唾が走った。

そう、確かに俺の怒りは間違っていない。

その罪は決して許せるものではない。

だが―――――――

威厳を纏い、それでも消えぬ不安げな表情。

こんな小さな女の子にこんな表情をさせているのは誰だ?

これではあの夢の中の騎士や臣下達と一緒ではないのか?

クソッ!どうしろって言うんだ!!




―――――そんなの簡単だ。許してしまえばいいのだ。



だが、それだけはしてはならない。

俺は、あの両親の姿を糧に生きて来た。

血反吐を吐いても、何度膝を折りそうになっても――――――

この少女を許してしまえば、衛宮士郎は矛盾に耐え切れなくなり崩壊する。

「わかりました、今回の聖杯戦争は諦めます」

俺の沈黙をどうとったのか、彼女は寂しげな表情を見せていた。

――――――それは、普通の女の子の様で―――――

やめろ、そんな顔をするな―――!

「私の命で、貴方の気が済むのなら――――」

それ以上言うな!

止めてくれ!

「士郎は―――――それでいいの?」

セイバーの言葉を遮って俺に問う遠坂の目は、逃げる事は許さないと如実に語っていた。

「俺は―――――」

死んでいった父さんと母さんの為に、何より今までの俺の為に―――――――

「許しはしない。だけど―――――」

そこまで言ってセイバーに不器用に微笑みかける。

「復讐は、止めるよ」

それが精一杯の妥協点。

「そう、ですか―――――」

ああ、そうか―――

「ありがとうございます」

笑顔がこんなにも綺麗だから、俺は彼女にあんな表情させたくなかったんだ。




















おまけ


「だがセイバーよ、一つ条件がある」

「何ですか?」

ふむ、不安そうに聞いてくる顔が子犬チックで良し。

「今日から俺の性奴れ――――い゛!?」

湯飲みが音速で鼻を押し潰す。

「な、な、なにを言ってるのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

む、やるな、赤いあくまめ。

服どころか顔まで真っ赤にして降臨するとは――――

「冗談だ。ただしセイバー、条件があるってのは嘘じゃないぞ」

「次、ふざけたらその口にガンド叩きこむわよ」

なんて怖い事を言う遠坂は無視。

「一回の絶対命令権を貰う。命呪とは別だ」

「それはつまり――――」

「そうだ、サーヴァントとしてのお前ではなく、お前個人に対する権利だ」

「わかりました。その制約は剣に誓います」

ま、遺恨が無いって言ったら嘘になるしな。

手綱は強力な方がいいだろう。

「・・・・・あんた、まさか―――――」

なんて顔に手を当てて、変態を見るような目を向ける我が学園のアイドル。

「信頼ゼロですか・・・・」

ちよっとへこむ。

「普段の仕返しよ」

なんて言って口に手を当ててニンマリと笑うあくま。

非常にムカつくが―――――今回は勘弁してやる。

ま、それはそれとして

「なぁ、アンタ」

さっきから銅像みたいに動かない赤い不審者に声をかける。

「何だ、小僧?」

「実体化したままで居る意味ってあるのか?」

そう、コイツは一言も発していない。

下手をしたら影すらも薄くなっている。

「・・・・・・・気にするな」

そんな下手な誤魔化しに、衛宮邸の居間はシンと静まり返った。
















続くらしい






あとがき

第一の山場終了。
ふぃー・・・・難産だった・・・・
なんか士郎がアッサリとし過ぎていますが、一応裏が――――というかそういう設定があるので、今回は軽く見逃してください。

さてさて、このまま人数が増えていくと動かすのが大変だなぁ・・・・・・。
セイバーも結構難しいし・・・・。
基本的に女性の一人称はキツイです。精神的にも。

11: kazu (2004/03/31 21:55:45)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第九話「贖罪」





一件落着といった所で、時間が時間なので遠坂を帰す。

さてもう寝ようか、といった時に肝心なことを忘れていたので、お茶を飲んで正座しているセイバーに声をかける。

「なぁ、そういやセイバーって寝る時はどうするんだ?あの赤い不審者みたいに霊体に戻ったりするのか?」

「赤い不審者・・・・?ああ、アーチャーですか。すみませんマスター、どうやら召喚が不完全だったようで霊体に戻ることが出来ないようなんです」

赤い不審者で理解するか、セイバーよ。

ふむ、大体の現状は解った。

「じゃ、普通に寝る訳だな?」

「はい、そうなります」

んじゃ、部屋を割り振らないとな。

「じゃあお前の部屋に案内するから付いて来てくれ」

そう言って返事も聞かずに、離れを目指して歩き出す。

「ま、待ってくださいマスター!」

「あん?」

慌てたような彼女の声に、ついチンピラみたいな声で返してしまう。

「私に部屋は必要ありません。マスターと同じ部屋で寝させて頂きます」

なんて言い切りやがった。

当然男女の機微なんてストロベリってる理由じゃないだろう。

護衛の為、って奴だな。

「ふむ・・・・・いきなり大胆だな、セイバー」

「はい?マスター、それはどういう――――」

そんな子犬チックな小首の傾げ方をするな。

歯止めが利かなくなったじゃないか。

「フッ、俺に言わせるなよセイバー。照れるじゃないか」

なんて態とらしく顔を明後日の方向に向ける。

「・・・・・?」

まだわかっていない御様子。

これは中々の強敵だ。

良かろう、我が障害と認識するぞ、サーヴァント。

「流石に出会った初日に子作りはなぁ〜。いやぁ、全然OKだけど照れるなぁ〜」

自分でも少しアレだと思う演技だが、セイバーは気付いた様子も無く反論する。

「な、何を言ってるのですかマスター!私が言ってるのは護衛の都合じょ――――――ふぇ?」

五月蠅く喚くセイバーを意にも介さず抱えあげる。

鎧を着たままなのに予想以上に軽く、小柄な体はすっぽりと腕の中に納まり、素晴らしい抱き心地を演出してくれる。

通称お姫様抱っこ。

その伝説の形を俺は今正に体現していた。

「あぅ・・・・・ま、マスター、下ろしてください!」

「はっはっはっはっ!照れるなセイバー。愛の巣へGOだ!」

そのまま、真っ赤なセイバーを抱いて一直線に自室に向かう。

「はな、離して下さい!ちょ、マスター!?―――――ぅ〜!!」

セイバーは抵抗しているつもりなんだろうが、ポカポカと胸を叩く姿がなんとも愉快で癖になりそうだ。

そんな押し問答をしている内に部屋に着いた。

足で襖を乱暴に開けると、万年床の布団の上にセイバーを下ろす。

「ま、マスター、そんな、困ります・・・」

既にパニックも限界なのか涙目で「ぅ〜・・・・」と呻きながら半泣きのセイバーの頭を、クシャクシャと乱暴に撫でてやる。

「・・・・・・ぅ?」

混乱から一転、頭を撫でられる犬のように大人しくなる。

「セイバー、この髪型禁止な?頭が撫でにくい」

そんなどうでも良い不満を漏らすと、セイバーと同じ布団に寝転がる。

そのままの体制で、無造作に積んである服の山からパジャマの上下をセイバーに投げてよこす。

「マスター?」

「その格好じゃ寝にくいだろ?あ、それからマスターっての禁止。名前で呼べ、名前で」

不思議そうに問うセイバーに、寝転がったままぶっきらぼうに応える

その返答に、セイバーは暫く不思議そうにしていたが、その後に花の咲いたような笑顔で一言零す。

「ありがとうございます。―――――シロウ」

その礼に、セイバーに背を向けたまま軽く手を振って応える。

シュル――――

その後、静かな部屋に布擦れの音が響く。

その音に少々驚き、セイバーに対して抗議の声を上げる。

「オイ、こんな所で着替えるな」

「でもシロウは覗いたりしないのでしょう?」

さっきまで混乱していたセイバーが、幻だったかのような余裕の声がクスリという笑いと共に返ってきた。

「チッ・・・」

負け惜しみに近い舌打ちを漏らす。

何か見透かされているようで悔しい。

――――――本当に覗いてやろうか。なんて考えていると、後ろから静かに布団に入る音が聞こえた。

気になって寝返りを打つと、髪を解いたセイバーと目が合った。

余りにも近い顔に、顔が瞬間的に赤くなる。

「・・・・・キスするぞ。もっと離れろ」

「さっきまでの行動で貴方がどのような人か理解しました。ですから――――――」

「離れません」と、静かに微笑みながら言って、俺の手を握った。

完全に予想外だった。

思いっきりはしゃいで、俺に対する罪悪感をふっ飛ばすつもりで――――――上手くいけば素直じゃない王様が甘えられるように振舞ったつもりだった。

あの夢はセイバーの過去だろうと予想していた。

その予想は恐らく間違いじゃなく――――

だからこそ、夢に感じた憤りを晴らすように振舞った。

だが、ここまでの反応は予想外だった。

「シロウは温かいですね」

その姿に―――――

「士郎は温かいね」

―――在りし日の母を見た。

不覚にも滲む涙を見せないように、セイバーを胸に押し付けるように抱きしめた。

「寝るぞ。お前のせいで魔力もスッカラカンなんだ」

そんな言葉を吐き捨てて、そのまま目を瞑った。




セイバー視点


眠ってしまった彼の頭を撫でながら私は物思いに耽る。

少しは、奪ってしまった母の代わりは出来ただろうか?

私に父の代わりは出来ない。

それは生前の経験で身に染みている。

だからせめて―――――この優しい少年の母になりたかった。

少年が自分を気遣い、はしゃいでいた事実を知った瞬間に決意した事だ。

この優しい少年から私が奪ってしまったものを少しづつでも返していこう―――――と。

この少年は幼い心のまま、強い父性を持っている。

甘えられないから、甘えさせる側に回るしかなかった―――――そんな悲しい心。

私が家族を奪ったから、だから――――

せめて、私には甘えて欲しい。



それが贖罪なのだから。



















続くらしい






あとがき

士郎の変わり身の速さは性格です。(ぉ
お互いがお互いを甘えさせようとしている変な状況完成。
現在はセイバーが年上の余裕で一歩リード。
なんかどんどんヒロインとの恋愛から離れていってる気がしてならない作者の危機感は・・・・。

追伸:俺に萌えは無理ッス隊長!!(半泣き

12: kazu (2004/03/31 21:56:24)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第十話「協定」



「うわぁぁぁぁぁん!士郎が変な外人に取られたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

今日も今日とて目覚めは最悪だった。

「・・・・・追いかけなくて良いのですか?」

隣から、微妙に心配そうな声がかかるが無視。

がーねぇの事だ、腹を空かせれば帰ってくるだろ。

が―――――

「帰ってくる前に出かけるぞ。色々と面倒だ」

目を閉じたままおざなりに言う。

「ですが――――」

「あー、うっさい。んな事より起きるぞ」

セイバーの言葉を強引に打ち切って、勢いよく立ち上がる。

視界の隅に、ダボタボのパジャマを着たセイバーが目を擦る姿が映る。

何となく微笑ましい。

まだ完全に彼女を赦せている訳じゃない。

だが――――

もう彼女を知ってしまった。

小さな、凛とした王を知ってしまった。

俺は彼女を許す事も出来ないが、彼女を憎むことも出来ない。

「あ・・・わっ・わ・・・」

パタッ

立ち上がろうとして長過ぎるズボンの裾を踏んづけて倒れるセイバー。

「ぅ〜・・・」

と、小動物ちっくに恥かしそうに立ち上がり、上目遣いにこちらをチラチラと見る。

こんな姿見せられたらさ――――

「何やってんだよ・・・・・・」

憎しみを持続するなんて出来ないって。無理無理。








それから俺たちは手っ取り早く家を出て、遠坂の家に向かっていた。

「遠坂・・・?アーチャーのマスターですか?」

昨日の命令を律儀に守り、髪を下ろしているセイバーが小首を傾げる。

ちなみに今のセイバーの格好は、俺が昔履いていたジーパンとシンプルな白いTシャツといった服装だ。

普段凛とした表情をしているっぽいセイバーには、少々アンバランスな格好かと思ったがそうでもない。

細くふわふわな髪が柔らかい雰囲気を醸し出し、陽光を反射して煌めく金髪は健康的な服装によく映えていた。

「何故態々敵マスターに会いに行くのですか?もしかして―――――彼等から倒すつもりなんですか?」

ふむ―――――そういや遠坂って敵だったな。

「冗談。戦うにしても邪魔なのを掃除してからだ」

そう、戦うにしても最終決戦だ。

「先ずは他から潰す。が――――昨日のランサーを見ての通り一筋縄じゃいかない」

そう、あの男が本気で殺しに来ていたら遠坂は死んでいるし、セイバーだって無傷では済まなかっただろう。

ま、もしもの話なんてしても無意味だが。

「一人よりも二人。協定組んで手っ取り早く掃除するって事さ」

ま、切羽詰らない限りは最終決戦でも遠坂と戦うつもりは無いが。

「成る程。確かにそれは効率がいいのですが―――――」

そう言って、俺を見つめるセイバー。

言外に「軽率ではないのか?」と、問いかけてくる。

「ま、大丈夫だろ。アイツの目標は勝つ事であって、聖杯を手に入れる事じゃないからな」

だから、アイツは決して後味が悪くなるような戦法は取らない。

「わかりました。マスターの判断に従います」

俺の言葉の意味を汲み取ってくれたのか、意外にアッサリと引くセイバー。

「士郎、だ。ったく、あんま畏まられるとこっちも疲れるから止めろ―――――あ、そろそろだな」

遠坂の家が見えて来たので会話を打ち切る。

「に、しても―――――相変わらずすっげー結界だなオイ。オメーは封印指定の魔術師かっつの」

まぁ、あれが普通の魔術師の工房なんだろうな。

そう考えると、俺の家の結界に対しての遠坂の酷評も頷ける。

ピピピピピンピピピピピピンポ〜ン

とりあえず基礎を押さえて呼び鈴を連打する。

「だぁ〜!うっさいわよ、士郎!!」

赤いあくま召喚成功!

「よく俺だってわかったな」

「ここに訪ねて来る魔術師なんてアンタしか居ないじゃないの。魔力でバレバレよ」

ふむ、じゃあ―――――

「ピンポンダッシュなんて考えない方が身の為よ」

見事に思考が読まれた。

「それより、どういうつもり?敵の前に態々出て来るなんて―――――」

唐突に遠坂の顔が魔術師のソレに変わる。

魔術刻印すらも発動させようとしている。

「や、とりあえず協定組もうかと」

遠坂が怖いので、あは〜なんて誤魔化し笑いを浮かべながら素直に言う。

「・・・・・・っ―――――!!」

あ、なんかヤバイ。

「アホかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!アンタ脳味噌詰まってるの!?それとも白味噌でも詰まってる!?ア○パンマンの後釜狙ってアンポンタンなんて言うんじゃないでしょうねぇぇぇぇぇ!?」

ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?

赤いあくまが赤い魔王になった!?

「落ち着いてください、アーチャーのマスター」

「何よ?アンタもこいつのサーヴァントなら何か言ってやりなさいよ!このアホバカ間抜けノータリンのプラナリアに!」

ギロヌ、って擬音がピッタリな眼光をセイバーに飛ばす遠坂。

「いえ、私もこの方針に賛成です」

「ちっょと・・・・・本気?」

遠坂、マジですかいアンタ?って目はやめろ。

「貴方や士郎の様な魔術師ばかりではない、と言えば解りますか?」

真っ直ぐに遠坂の目を見つめて言うセイバー。

「確かにそうね―――――学校の結界といい、昨日のランサーの宝具といい、一筋縄にはいかないものばかりね」

「ですから、私たちで組んで他を始末してから戦いましょう」

俺の言いたい事を全て代弁してくれたセイバー。

遠坂も完全に納得した訳じゃないだろうが、結構好感触だ。

「アーチャー。貴方の意見を聞かせて」

む、赤い不審者ってアーチャーだったのか。

何気に昨日聞いた気がする。

セイバーもなんかそれっぽい事言ってたし。

「私はマスターの判断に従うだけだ。だが、贅沢を言わせて貰えば一つ条件がある」

遠坂の言葉に、赤い不審者が実体化して俺を睨みながら言う。

「小僧、貴様の正体を明かしてもらおうか。正体不明のバケモノと共同戦線を張るのは気分が良い物ではないのでな」

真っ直ぐと、俺の瞳を睨めつけながら言うアーチャーの目には、確かに俺に対する敵意が存在していた。




















続く




あとがき
少し早いかもしれませんが次回、士郎の正体が明らかに・・・なる予定です(ぉ

13: kazu (2004/03/31 21:56:58)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第十一話「正体」



「小僧、貴様の正体を明かしてもらおうか。正体不明のバケモノと共同戦線を張るのは気分が良い物ではないのでな」

その言葉を聞いた瞬間、ああ、やっぱりなって思った。

この身は十年前から人ではない。

この男がそれに気がついていても不思議じゃないだろう。

「・・・・酷いな。バケモノ扱いか?俺はただの――――」

「半人前の魔術師、とでも言うのか?貴様が」

やはりバレている。

ここまでか・・・・・。

「わかったよ。正直に話そう。だが――――なんでアンタはわかったんだい?」

俺の開き直りにぎょっとする遠坂とセイバーを見ないで問う。

こりゃ、遠坂とはもうじゃれ合えないな――――

それがどうしようもなく悲しかった。

「お前の魔術回路だ。普通魔術師の魔術回路は生まれた時に既に決定している。それ以降は増えもしないし減りもしない」

それは当たり前の話だ。

そう――――――普通の魔術師にとっては。

「お前の魔術回路の数は80から100の間を行き来している。つまり―――――」

遠坂が俺の魔術回路の数と、回路の変動に茫然自失になって俺を見ている。

その目には僅かな畏怖。

――――ああ、やっぱりな。

「魔術回路が変動しているお前は人間ではない。通常の生物からすらも外れている」

そう断罪するように言い切ったアーチャーは、敵意を隠そうともしていなかった。

「そう――――か」

わかっていた事だ。

自分の体の異常性も。

それを人が異端と恐れる事も――――

「十年前な、ちょっと厄介な毒を浴びたんだ」

そう、アレは正に毒。

体に浸透して意識を殺し、神経を溶かす極上の毒。

「その時に魔術回路が全滅したらしいんだ」

そして、その後――――

「どういう理屈か知らないが、俺を助けようとした奴が強力な魔具を使って、俺は何とか死は免れたんだ」

あの男、衛宮キリツグの言っていた事をなぞる様に語る。

「一度形を失うほど、元の形を体が忘れてしまうほど崩壊した魔術回路を、その魔具は強制的に再生した。その結果―――――」

あの苦痛は忘れられない。

内側から神経が体を食い破らんと増殖する苦痛は―――――

「魔術回路は体内で爆発的に増殖し、元の数を通り過ぎて在り得ない程数を増やした」

痛む体を引き摺り、焼け野原を両親を求めて歩いた。

体中は麻痺し、表情すら動かぬその体で父の最後の言葉を聞いた。

―――――泣けなかった。

増殖した魔術回路は通常神経すら侵食し、一時的に代謝能力を奪った。

その結果が――――――今尚続く悲しみ。

幾度涙を流したとて悲しみは流れず、ただ心の中に居座っている。

あの時泣けていれば、あるいは―――――

そんな愚かな考えを振り切り語り続ける。

「そこでめでたしめでたし、なら良かったんだけどな。まだ俺の中に残ってるんだよ、その毒は」

既に言葉も出ないのか、遠坂とセイバーは呻くだけで、その目は少し虚ろだ。

「俺の体内の魔具と毒の戦い。それが魔術回路変動の正体だ」

此処まで言い切って言葉を切ると、僅かに目を見開くアーチャーに不適に笑いかけて一言問う。

「本当に聞きたい事はそれだけじゃないだろ?」

その一言に奴の目に冷静さが戻る。

「ああ。ならば最後だ。何故お前は正気でいられる?」

は?

どういうこっちゃ?

「絶えず魔術回路が破壊と再生を繰り返す――――人の耐えられる痛みではない。その上半分覚醒しているお前がまともなのはおかしい・・・・!」

「ああ、痛みは随分前に無くなったよ。大方強過ぎる痛みに危機感を感じた脳が痛みを絶ったんだろ?」

それから―――、と言葉を紡ぐ。

「覚醒、か。その辺は魔具の効果らしい。よくわからんが下手な精神強化薬より強力な効果があるアイテムらしいからな」

確か――――紅赤朱だっけか?覚醒状態の名前は。

時々完全に歯止めが効かなくなる時は理性が飛ぶが、普段はなんとか体内の魔具のお陰でやっていけている。

「覚醒って何の話よ?」

と、此処に来てようやく遠坂が冷静になり俺に質問する。

不機嫌なのは俺の魔術回路の多さのせいだろう。

ま、そりゃそうだ、品種改良もなしに魔術の名門を回路の数で抜くなんて不条理もいいところだからな。

「あー、俺って混血なんだ。そう言えば遠坂には言ってなかったな」

これが、止めだろう。

これで俺と遠坂は―――――

パァン!

瞬間、遠坂は俺の頬を張った。

「私を甘く見ないで。アンタが何であろうと、それによって付き合い方変えるような女じゃないわよ」

俺の恐れを察知したのだろう。

赤くなりながら、それでも俺の眼を見据えて真っ直ぐに言う遠坂は、とんでもなく綺麗だった。

「俺はいつ暴走するかわかんないバケモノなんだぞ?」

「だったら殴り飛ばして目を覚ましてやるわよ!」

それでも俺は止まらない。

「たけど―――」

「五月蠅いっ!!だったら私が聖杯を手に入れて、士郎を私と一緒にいても問題ない奴に変えてやるわよ!!」

言葉が詰まった。

彼女の言葉があんまりにも真っ直ぐだから、鋭く俺の心を叩いて過ぎて行く。

「だから―――――お願いだから私から逃げないで」

俺の頬を両手で包みながら、涙目の遠坂が縋り付くように言った。

逃げる?

俺が、遠坂から――――?

――――ああ、そうか。

言われて始めて気付いた。

遠坂の反応を恐れる余り俺は勝手に遠坂の前から去ろうと決意を固めていた。

共に戦う為に真実を話したのに、それが原因で相手から逃げてちゃ本末転倒だな―――――

折れかけていた心は何時しか真っ直ぐ立っていた。







凛視点



「あー、俺って混血なんだ。そう言えば遠坂には言ってなかったな」

パァン!

瞬間、私は士郎を衝動的に叩いていた。

「私を甘く見ないで。アンタが何であろうと、それによって付き合い方変えるような女じゃないわよ」

士郎は何でもない事のように混血であることを告げたが、その瞳が恐怖と悲しみに揺れているのが見て取れた。

逃がさない!このまま士郎と別れたら、彼は二度と私との関わりを持とうとはしないだろう。

「俺はいつ暴走するかわかんないバケモノなんだぞ?」

まるで「早く俺から離れてくれ」とでも言わんような、自を傷つける言葉を吐く士郎。

「だったら殴り飛ばして目を覚ましてやるわよ!」

―――――だから、逃げないで。

「たけど―――」

「五月蠅いっ!!だったら私が聖杯を手に入れて、士郎を私と一緒にいても問題ない奴に変えてやるわよ!!」

言った。言い切った。

勢いもあるがこのバカはこうでも言わないと意味が無いだろう。

それでも迷うような士郎の目が耐えられなくて、目頭が熱くなる。

「だから―――――お願いだから私から逃げないで」

そう、初めて気がついた。

私が魔術師としてでもなく、優等生としてでもなく、遠坂凛として付き合えるのは彼一人だったという事を。

――――――――彼に今までずっと甘えて来たという事実を。




















続くらしい







補足:士郎が銃を投影できる訳ですが、魔術回路がほぼ全て再構成されたことにより属性が「剣」から「武器」にまで変化したのが原因です。
   筋は通ってませんがコレが作者の限界ですのでどうかご容赦を。(作中ではその事実を誰も知らない為に書けませんでした)
   ついでに付け足すと、士郎がセイバーとレイラインをつなげた時に苦しんだのは、セイバーとの繋がりにより急にアヴァロンの力が増して呪いが行き場をなくし暴れ狂ったからです。


   なんでもアヴァロン任せにすんなって意見は無しの方向で・・・(半泣き




あとがき

さてさて、いよいよ士郎達の人間関係がおかしくなってきましたねぇ・・・・・
母性本能全開の小動物・セイバーと意外と甘えん坊な姐さん・凛。
そして未だ出番の目処が立たない女・桜。
さてさてどうなるやら・・・・・・

えー、今回の魔術回路云々に関してはツッコまないで頂けるとありがたい。
自分ですら、お世辞にも筋が通ってるとは思えませんので・・・・・


それと、ここの士郎ですが、いくら魔術回路が多かろうと魔術では凛に勝てません。
更に、少しでも無理すると毒に回路が蝕まれてボロボロになるので宝具の投影はかなりアレです。
例:ゲイボルクの投影

毒が無ければぽんぽん宝具出せるんですけどねー

14: kazu (2004/03/31 21:57:25)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第十二話「団欒」




・・・・・・・。

俺は今非常に困っている。


「ック・・・・ヒック・・・」


あの後感極まって泣き出してしまった遠坂が、俺の胸にしがみ付いたまま離れてくれない。


「あ〜・・・・う〜・・・・」


まさか泣くとは思ってなかった俺は、どうする事も出来ずに頬をぽりぽりと掻きながら、謎の呻きを発している。

いや、参ったねこりゃ。

あの強い少女が、幼児退行してしまったかのように泣いている。

震える肩は何時もより小さく見えて、俺の軽率さを責め苛む。

とりあえず―――――


「赤い不審者、貴様のせいだ。とりあえず遠坂を泣き止ませろ」


責任を擦り付けた。


「アーチャーと呼べ」


赤い不審者―――アーチャーも遠坂が泣いてるのがよほど意外だったのか、反論にはどうもキレがない。

ふむ、ならば―――


「セイバー、何時もの芸だ」


彼女ならきっと期待に応えてくれるだろう。


「芸、ですか?」


何だ、その不機嫌そうな声は。

まるで、俺が女子と仲良くしている時のがーねぇみたいなオーラを発するセイバー。


「ほら、アレだ。人間ポンプやると見せかけて、実はただの金魚の踊り食いでしたって奴」


「そんな事した事ありません!」


流石生真面目、キッチリと予想通りの反応を示してくれる。


「そうだったか?」


まだ不満そうなセイバーをサラリと流し、遠坂の様子を見てみる。


「うっく・・・・ぐすっ・・・・」


効果無しかよ。

しゃーない、最終手段だ。


「泣くな鬱陶しい。泣き止まないならキスするぞ」


これを言えば真っ赤になってガンドでも撃って来るだろ――――――――う?


「・・・・うぅ・・・」


シカトですか、遠坂さん。

も、もう一手!


「泣き止まないなら、その貧しい胸を俺のゴールドフィンガーで揉みしだ――――」


ズドンッ!!


「――――ガブァ!?」


言い終わる前に鳩尾を衝撃が突き抜けた。

衝撃が上に逃げるように体が跳ね上がり、意識が消えてゆく。


『衛宮、本物の寸勁ってのは、喰らった相手が跳ね上がるんだよ』


消え行く意識の中、嬉しそうに格闘技について語る美綴のセリフが頭を過ぎった。

つーか、気にしてたんだな・・・・・遠坂・・・・。

















目を覚ますと遠坂の部屋だった。

どうもかなり気絶していたらしく、外は既に真っ暗だ。


「あ、目が覚めたの?士郎」


あの弱々しい遠坂の面影も無い、凛とした遠坂が俺に気付く。

敵だなんだと言っていたくせに、セイバーと仲良くお茶をしていたらしい。


「ふむ、ならば小僧の分も用意しよう」


アーチャーよ・・・・・・楽しそうに紅茶を煎れるな。

妙に所帯じみているサーヴァントに呆れながらセイバーの方を見ると――――――


「ふぁ?ひほう、ほひはもへふは?」


ハムスターが居た。

口一杯にお菓子を頬張るセイバーからは、あの出会った当時の凛々しさなんぞ欠片も見出せなかった。

英霊ってマトモな奴いねぇのかよ・・・・・・。

ってか、口の中に物入れたまま喋るな。


「んぐんぐ・・・、はぁ・・・幸せです・・・」


解いた髪のふわふわさと相俟って完全に小動物と化したセイバーに、遠坂が面白がって餌付けしたんだろう。

この菓子のゴミの山で想像できる。

恐らく遠坂もセイバーに引っ張られて菓子を大量に食ったのだろう、口の周りに少しお菓子のカスがついている。


「遠坂、セイバー―――――」


これだけは、言わなければ――――


「太るぞ」


ピシィ!


物の見事に石化する二人を眺めながら、アーチャーの煎れた紅茶をのほほんと啜る。


「中々のお手前で」


「当然だ」


そんな白々しい会話が、静まり返った部屋の中でハッキリと響いた。

















おまけ


「しかし小僧よ」


「ん?」


「セイバーはサーヴァントだから太らない筈だが?」


そーいえばそうだな。


「・・・・・・・天然め・・・・・」


凛々しかった彼女を返して下さい。

思わず、そんな切なる願いが口に出そうになった。







おまけのおまけ


その後、我に返った遠坂にキッチリボコられた。

セイバーも助けてくれずに、極寒の視線を贈ってくれた。

天国のお父さん、お母さん。

僕はこのメンバーで本当に聖杯戦争を戦わなくてはならないんでしょうか?

とても不安です。

追伸:もしかしたら近い内に、仲間の手によってそちらに逝くかもしれません。
















続くらしい



あとがき

シロウの固有結界「無差別な幼児化」が発動中。
彼と共にある者は人格が幼児化するという傍迷惑な能力。



いや、嘘ですよ?

微妙にセイバーが嫉妬してるようにみえますが、嫉妬とゆうよりは大好きな年下の友達が盗られそうで気に食わない。って感じです。

重ね重ね言いますがヒロインは未定です。
まぁ・・・・・セイバーとの18禁シーンは予定に入ってるわけですが(ナニ


――――体はネタで出来ている。

血潮は活字で 心はカラス。(つまり真っ黒

数多の感想を貰い感涙。

ただの一度も納得は無く、

ただの一度も自賛はしない。

彼の者は常に独り ネタの山で感想に酔う。

故に、その小説に後悔はなく。

その体は、きっとネタで出来ていた。


謎の嘘っぱちスペルで締めてみる実験(ぉ

15: kazu (2004/03/31 21:58:05)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第十三話「言峰」


あの後、遠坂の部屋で作戦会議をしていたのだが、俺がまだ教会で登録を済ませてない事を知った遠坂はブチ切れた。

曰く「教会を敵に回す気!?」とか。

「面倒くさい!?次そんな事言ったらゼロ距離でガンド撃つわよ!!」とか。

そんなこんなで俺は今、ものごっつ豪華な建物の前に居た。

教会の人間を信用する気は無いので、霊体に戻れないセイバーには待機してもらう事にした。


「入るわよ」


遠坂が何の臆測も無く巨大なドアを押し開けて、ズカズカと入り込んでいく。

も少し慎みを持とうよ。

そんな感想を飲み込んで、遠坂に続いて建物に入っていった。


「へぇ・・・・」


入った直後に教会独特の匂いが鼻を突き、広い礼拝堂はなんとも神秘的だった。


「遠坂、ここの管理者ってまさか―――――」


「そ、代行者よ」


やはりな。

聖杯戦争なんて厄介なものを監視するには、多少位が高いだけの神父には荷が重い。

それこそ、有事の際に対応できる戦闘要員が必要だろう。


「珍しいわね―――――士郎なら調べてると思ったんだけど」


そう、確かに調べていた。

俺の様な外様の魔術師には、教会がいつ牙を剥くかわからない。

だから敵状視察は常識なのだが――――


「どうも此処だけは苦手でな」


ここがあの火事で親を失った子供が身を寄せている場所だと知った時から、何故かここがどうしようもなく苦手になった。


「じゃ、教えといてあげるわ。ここの神父の名前は言峰綺礼。父さんの教え子でね、もう十年以上顔を合わせている腐れ縁よ。・・・・ま、出来れば知り合いたくなかったけど」


ああ、噂の兄弟子さんか。

そういや何度か聞いた覚えがあるな――――兄弟子が居るって。


「―――同感だ。私も、師を敬わぬ弟子など持ちたくはなかった」


俺達の来訪に気付いたのか、見覚えのある男が祭壇の裏から現れた。


「再三の呼び出しにも応じぬと思えば、変わった客を連れてきたな。・・・・ふむ、彼が七人目というわけか、凛」


「一応ね。登録を嫌がるもんだから首に縄つけて引っ張って来たって訳。アンタ達が勝手に作ったルールに従うのは癪だけど、不必要に敵を作る気はないもの」


一応って何だ、一応って。

ちゅーか、そのセリフ自体が敵を作ってると思うぞ。


「それは結構。成る程、ではその少年に感謝しなくてはな」


言峰は気にした様子もなく言う。

聞き覚えがある名前だからまさか、と思ったが―――――


「前アーチャーのマスターさんよ、感謝なんて必要ないぞ。それより――――」


俺のセリフに、表面上は微塵も動揺しない言峰。


「何で生きていやがる?心臓撃たれて生きてる、なんて話は聞いたことないが?」


風化した記憶を辿ってみてもあの位置は確かに心臓だった。

生きているのはおかしい。


「ほう―――――何処まで知っている?」


「俺が知ってるのは最終戦の顛末だけだ」


無表情ながらも、興味深げに問う言峰に、自分のカードを隠したまま答える。


「成る程、結構――――――知っていると思うが、私はこの教会を任されている言峰綺礼という者だ。君の名前はなんと言うのかな?七人目のマスターよ」


事も無げに話を逸らす言峰。

成る程、カードを明かす気は無いか。


「―――衛宮士郎、あんたを殺した男の息子だよ。――――戸籍上はな」


何となく気に食わないので、嫌味たっぷりで答える。


「衛宮―――――――士郎」


言峰はそう呟きながら、嬉しそうに笑った。

ゾクリとした。

この男はヤバイ。

完璧に、修正のしようがないような根幹が壊れている。


「礼を言う、衛宮。よく凛を此処まで連れて来てくれた。君が居なければ、アレは最後までここには訪れなかっただろう。そして――――――」


言葉を切り、溜める言峰の顔は歓喜の表情をしていた。


「聖杯戦争に参加してくれてありがとう。君のお陰で今回は存外に愉快なものになりそうだ」


断言してもいい。コイツぜってぇサディストだ。

遠坂も兄弟子の表情に、露骨に「げっ」って顔をしている。


「では始めよう。衛宮士郎、君はセイバーのマスターで間違いないな?」


歓喜の表情を消した言峰は、厳かに俺に問う。

俺のサーヴァントがセイバーだってばれてたか・・・・・。

まぁ、最後だったらしいから当然といえば当然かな。


「あー、ないない。セイバーのマスターだ」


面倒くさいので適当に答えておく。

ついでに鼻ほじってたりするのは、言峰に対する嫌がらせだ。


「それでは君をセイバーのマスターと認めよう。この瞬間に今回の聖杯戦争は受理された。――――これよりマスターが残り一人になるまで、この街における魔術戦を許可する。各々が自身の誇りに従い、存分に競い合え」


俺の挑発に近い嫌がらせを無視し、心にも無い事をほざくエセ神父。


「終わったんなら帰るぞ」


「好きにするがいい。ただ、今後この教会を訪れる場合は、サーヴァントを失って保護を求める場合のみだ。それ以外にここを頼ることは禁止されている」


「ああ、そうですかい」と適当に答えて、まだ何か聞きたそうな遠坂を引っ張って外に出る。


「ああもうっ!まだ聞きたい事があったのに!」


外に出ると、遠坂は俺に対してガーッと吼える。


「あいつの情報だけは信用しないほうがいい。―――――奴は異常だ」


そう一言だけ遠坂に告げると、セイバーの元に真っ直ぐと向かう。

言峰綺礼は壊れている―――――

それは恐らく間違いだろう。

今まで出会ったどんな人間よりも、奴の存在は寒かった。

まだ遠坂はブツブツ言ってるが、この選択は間違ってないと思う。

少しでも奴にこちらのカードがばれる危険が減っただけでも良しとして置こう。

そう考えながら、セイバーとセイバーに愚痴っている遠坂を眺めた。


















つづくらしい





あとがき
次回、第十四話「ロリ一直線」をお楽しみに(嘘

16: kazu (2004/03/31 21:58:30)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第十四話「抂戦士に無いモノ」









あのエセ神父の相手をするのに疲れて、帰りの道は無言で歩いた。

既に交通手段なんて物は終わってる時間だ。

結果歩きになっている訳だが――――――


「あ、そうそう。クレープってお菓子も美味しいのよ」


「そうなんですか。それは是非とも味わってみたい」


そんな事もお構いなしで仲良く話す女二人。

食べ物の話題しかしてない。

まぁ、それしか共通の話題なんてないんだろうな。


「おい、遠坂の家はあっちだろ?」


普段別れる場所、つまり交差点を過ぎようとしても一向に遠坂が俺達と別れる気配が無い。


「ああ、それなら―――――」


そこまで言いかけた時に、遠坂が何かに気が付いたように固まった。

ズキリと、左手が痛む。


「――――――ねぇ、もう帰っちゃうの?」


幼い声が静寂を切り裂く。

場違いな声。

こんな時間にこんな声が聞こえること事態おかしい。


「―――迷子、って訳じゃなさそうだな」


声の発生源である坂の上を睨みながら、セイバーに見配らせする。

月が顔を出し、その声の主を照らし出す。


「――――――っ!?」


正に異形、この夜の住宅地に存在してはならない存在である巨人と、雪のような無垢さと儚さを備えた少女が寄り添っていた。


「バーサーカー・・・!」


まるで、亡霊の名前でも呼ぶかのように呟く遠坂。

考えるまでも無い。

奴は間違いなく敵で、とんでもないバケモノだって事は。


「はじめまして、お兄ちゃん」


まるで巨人の存在を無視した笑顔で言う少女。

だが、どうにもその笑顔が無邪気に見えない。


「やば。士郎、アイツ―――――」


「――――ああ、桁違いどころか先が見えねぇ・・・・」


これがサーヴァント、これが聖杯戦争か―――――

正直、甘く見ていた。


「あ、二匹とも揃ってる。ちょうど良かった。まとめて潰してあげるね」


まるで、ゴミ掃除をする気軽さでそう言い切った。


「はじめまして、リン。わたしはイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンって言えばわかるでしょ?」


「アインツベルン―――――」


余りにも有名な名に、遠坂の体がビクンと揺れる。


「ああ、あの粘着質の塊みたいな家か(セイバー、あのロリっ娘がバーサーカーに指示を出したら仕掛けるぞ)」


「(了解です)」


イリヤと話しながら命呪を通じでセイバーに指示を出す。

遠坂の方は、多分上手い具合に合わせてくれるだろ。


「じゃあ殺すね。やっちゃえ、バーサーカー」


瞬間、強化した筋力を使って、全力でイリア目掛けて手榴弾を投げつける。

虚を突かれた様なイリヤに対し、バーサーカーは雄叫びを上げてイリヤを守ろうと手榴弾とイリヤの間に立ちはだかる。

元々あのガキに当てる気は無い。こうなる事は計算済みだ。


「セイバー!」


「はいっ!」


一人で突っ込もうとするセイバーの背中につかまり、尋常じゃない速度で坂を上る。


「シロウ、なにを・・・・!?」


「いいから行け!」


止まろうとするセイバーに檄を飛ばし、そのまま行かせる。


ドガァ!!


直後、手榴弾はバーサーカーに直撃。

たがそれでも、気を逸らせたのは一瞬。

だが―――――

それがサーヴァント同士の戦いならば、その隙は決定的な隙だ。


「■■■■■■■――――!!」


異形が吼えるがもう遅い。

キィィン!!

セイバーの剣がバーサーカーの斧剣とぶつかり合う。
その衝撃を利用して、セイバーの肩を蹴りバーサーカーの頭上へと跳ぶ。


「■■■■■■■――――!!」


バーサーカーが俺を見上げ咆哮を上げる。

正に狙い通りだ。

セイバーがバーサーカーと鍔迫り合いしている限り、バーサーカーは俺を迎撃することは出来ない。

危機を感じなかったというのも、俺を迎撃しなかった理由だろう。

だが、セイバーの背後から急に現れた俺を反射的に目で追ってしまう。

それでも無理に迎撃しようとしないのは、サーヴァント故の油断もあるだろう。

人間如きに何が出来る――――――

どんなサーヴァントにしろ、そんな考えを少なからず持っている筈だ。

それこそが、人間が唯一突けるサーヴァントの弱点であり――――


「投影開始」


戦略を通す突破口・・・・・!!


「態々弱点を開いてくれてどーも。じゃ、さよならだ―――――」


上空で瞬間的にゲイボルクを投影し、槍投げの要領で構え、奴の開き切った大口に狙いをつける。


「ゲイボルクッ!」


ブシャァ!!


「■■■■■■■――――!!」


必殺の槍が、馬鹿でかい口からバーサーカーの巨体を貫いた。

ドミノのように固まったまま倒れるバーサーカーを尻目に、転がって衝撃を逃がしながら着地する。


「バーサーカー!?」


イリヤが悲痛な叫びを上げるが、口から見事に串刺しになった巨人はぴくりとも動かない。


「硬そうだから手榴弾で防御力を試させてもらった。どうにも外側にゃ俺のコピーの槍じゃ歯が立たないっぽいからな。ま、手榴弾でダメージ受ける程度だったらセイバーの攻撃と俺の駄目押しで普通に倒すつもりだったが―――――――」


敗因は狂った事。

どんなに強大な力を持っていても、穴は必ず存在する。

その穴を埋めるのが、知恵であったり技であったりする。

それを捨てた時点で獣と同じ。

ならば倒せない道理は無い。

獣であるが故に奇襲に弱く、咄嗟の判断が野性的なのが致命的だった。

まぁ、冷静に腕辺りで顔をガードされてたら俺は死んでたんだがな。


「ま、悪く思わんでくれよ」


未だに呆然としているイリヤに、少しの申し訳なさを篭めて一言残し、背を向けてセイバーと共に坂を下りた。







アーチャー視点


在り得ない。

その思いだけが脳を占める。

あの小僧が飛び出した直後に、凛の指示により実体化し援護を開始しようと、バーサーカーに向けて弓を構えた時には―――――――

「―――――バカな」

あの小僧の槍が、最強の巨人を貫いていた。

脆弱なヒトが、強大な存在を仲間と共に知恵と勇気で打ち倒す―――――

まるで物語ではないか。

在り得ない。

それでは奴はまるで――――――


英雄ではないか。


その考えに至った時、知らずに震えていた。


――――私は今、伝説の発生の現場に居合わせているのかもしれない。























続くかもしれない




あとがき

さて、微妙に大袈裟になってきたぞぉ・・・・

作者はこの風呂敷を畳めるのか微妙だぞぉ・・・・・(ぉ

17: kazu (2004/03/31 21:58:58)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第十五話「反転衝動-供



ドスリと、隣から生々しい音がした。


「まさかヒトがバーサーカーを一回殺すなんて。びっくりしちゃった」


無垢な声が、背中を叩く。

体が恐怖で凍りつく。


「ぐっ・・・・・・シ・・ロ・・・」


背中から感じる強大な気配が怖いわけじゃない。

ただ、隣を―――――セイバーの方を見るのがどうしようもなく怖かった。

それでも、逃げる訳にはいかない。

ギシギシと鳴る首を、ゆっくりとセイバーの方に向ける。


「あ―――――」


言葉が出ない。

喉はカラカラに乾き、口はバカのように開いたまま閉じない。

セイバーは、俺が投影したゲイボルクに腹部を貫かれ、それでも強い意志を持って立っていた。


「はや・・・・逃げ・・・・くだ・・・」


その言葉を聞いた瞬間、体は嘘の様に素早く反応した。


「セイバー!!!!」


崩れ落ちる彼女を必死で抱きとめて、ゲイボルクを瞬間的に消す。

槍が消えた事で傷口からは血が大量に噴出し、俺の服を汚す。


「落ち着きなさい士郎!サーヴァントにとって、その程度の傷は重傷じゃないわ」


いつの間にか俺の後ろに来ていた遠坂の声も、何処か遠い。

遠坂の更に後ろでは、アーチャーが双剣を振るいバーサーカーと打ち合っていた。


「―――――遠坂。セイバーを連れて逃げろ」


「何言ってるのよ!私もたた―――――」


「いいから黙って言うこと聞けっ!!!!!」


言外に、お前は邪魔だと告げる。

その意味が読み取れたのか、遠坂は悔しそうに意識を失ったセイバーを背負う。


「アーチャー!暫くは士郎の指示に従って!」


「非常に不本意だが、致し方ない。君は早く逃げろ」


遠坂はそれだけをアーチーャの背中に向けて言い放つと、俺を一睨みしてそのまま坂を駆け下りていった。


「――――――行ったか」


遠坂の背中が消えると同時に、押さえつけていた感情を爆発させる。

出会って間もない、両親の仇と言っても過言ではない少女。

だが―――――

彼女の手は柔らかくて――――

ただひたすらに綺麗で、母のように暖かかった。

俺はあの同衾した一夜から、彼女を愛しいと、失いたくないと思ってしまっていた。

俺の中でたった一晩で彼女は、がーねぇや遠坂と同位置に存在していた。

だからこそ―――――


「許さない・・・・!!」


その言葉はバーサーカーに向けたものでも、イリヤに向けたものでもない。

許せないのは何より自分自身。

何故油断した。

何故マスターを押さえて置かなかった。

何故何故何故何故何故なぜなぜ―――――――!!

何故俺はこんなにも無力なんだ!!


瞬間、俺は躊躇いなくトリガーを引いた。

呪いの浄化にあてられていた『力』が、意識の補強に回される。

俺の中の魔が急速に力を増し、髪を真っ赤に染め上げてゆく。


「阿呆が!死ぬ気か!?」


バーサーカーと戦いながらこちらに声をかけるアーチャー。

意外と余裕なのかもしれない。

アーチャーの言う通り、確かに死ぬかもしれない。

だが、俺はまだ何も成していない。

復讐も終えてない。

そして何より―――――

様々な顔が浮かぶ。

がーねぇ、雷画爺さん、遠坂、セイバー、美綴、一成―――――――

みんな、泣かせる訳にはいかねぇよな・・・・・。

だから――――――


「死んでも死なねぇ!!」


そんな矛盾した言葉に決意を乗せる。

まだ死ねない。

だが、止める気も無い。

ならば、後は己を解放するのみ―――――!


「・・・・グッ・・・・ガァ・・・・」


指先から呪いが体を腐らせてゆく。

幾千、いや、もしかしたら数十億の呪いが俺の体内で死ねと叫ぶ。

だから何だ?俺は死なねぇんだよ!!

決意が、心が一瞬で最後の壁を叩き割る。

直後、頭に響くように声が聞こえ始める。

通常では絶対に聞こえない筈の声が。


皮肉気に、それでも主に尽くし気遣う声が聞こえる。

雄大に、ただひたすら力を振るう為に叫ぶ声が聞こえる。

そして――――――


弱々しいながらも悲痛な、決して小さくない幼い叫びが聞こえた。


ついつい殺気が萎えるが、なんとか持ち直す。

これは―――――見逃せないな。


「キリツグの野郎――――――何人不幸にすりゃ気が済むんだ」


真紅の髪を逆立たせ、嫌悪が篭った声を発する。


「さて―――――素直じゃないお姫様にはお尻ぺんぺん、だな」


そう呟くと、アーチャーの双剣の片割れである干将を投影して逆手に持ち、バーサーカーに向けて斬りかかった。




















続く





あとがき

あー・・・なんかバトルって意外と筆のノリがいいかも・・・・
ちなみにここの士郎。バーサーカーの宝具をまだ知りません。
ただ単に殺しきれてなかったと思っています。

18: kazu (2004/03/31 22:00:14)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第十六話「拳骨」




キィン!

ガッ!!


アーチャーとバーサーカーの剣戟の音が絶え間なく響く。

いくら反転したとはいえ、所詮ヒト。

バーサーカーとマトモに打ち合えば、一瞬で真っ二つだって事ぐらいは理解しているので、バーサーカーの『声』を聞き分けては絶好のタイミングで茶々を入れている。

だが―――――


「キリがないな」


正にジリ貧。

俺の援護のお陰で押しているアーチャーだが、決定打が無い。

たが、既に俺の四肢の壊死は左手の機能を奪っている。

恐らくタイムリミットはそう遠くない内に訪れるだろう。

――――どうする?

簡単だ。

弱点を突くのが戦略の定石。

ならば――――


「しゃあねぇな・・・・・バーサーカーは後回しだ」


余りやりたくなかったが、マスターであるイリヤを狙うしかない。


ザッ!


「どうした小僧?手が止まっているぞ」


一時的にバーサーカーから距離をとり、アーチャーが俺の隣に降り立った。


「アーチャー。5秒でいい、バーサーカーの動きを完全に封じてくれ」


無茶だとはわかっている。

だが、これが現時点のカードで実行できる唯一の術。


「無茶を言ってくれる」


「やらなきゃ死ぬだけだ。俺はお前がバーサーカーを抑えている間にイリヤを押さえる」


一瞬の睨み合い。


「―――――3秒だ。それ以上はもたん」


やれやれ、といった感じに背を向けながらハッキリと言う声には、絶対的な頼もしさが感じられた。

戦っている内に随分離れたのか、イリヤまでの距離は目算50〜70メートルもある。

その間にはバーサーカー。

安全圏まで50メートル―――――

アーチャーがバーサーカーを押さえ切れなければアウト。

俺の速度が足りなくてもアウト。

さて―――――


「大博打だな。しくじるなよ、赤い不審者」


「貴様こそな。それと――――――」


お互い不敵に笑いながらも、周囲のマナを震わせる程の魔力を発する。

残った魔力を根こそぎ足の強化に使う。


「アーチャーと呼べ・・・・・!!」


それがスタートの合図だった。

既に走り出している俺の眼に留まったのが、剣だった。

アーチャーの背後から大量の剣が出現し、バーサーカーに雨の如く襲い掛かる。

絶え間なく降り注ぐ剣は、バーサーカーに弾かれ砕けてゆく。

何本か刺さるが、それも決定打にはならない。

1秒

バーサーカーが俺の存在に気付く。

2秒

アーチャーの剣が俺に振り下ろされるバーサーカーの斧剣を弾く。

3秒

俺はバーサーカーの横をすり抜け、坂を駆け上がる。

追撃しようとするバーサーカーはアーチャーの剣に阻まれている。


――――――安全圏に抜けた!!


ゴッ!


直後、後ろで打撃音が響き、巨大な気配が凄まじい勢いで追ってくる。

――――アーチャーがやられたか!?

それでも振り返らない。

ただ、イリヤの元に全力で向かう。


残り10メートル

巨大な気配が攻撃態勢に入る。

残り5メートル

更に加速。

左手の壊死が肩まで達する。

残り0メートル―――――――

そのまま、イリヤを盾にするようにイリヤの後ろに回りこむ。


「わたしを、殺すの?」


振り向きながらそう問いかけるイリヤに、無言で干将を振り上げる。

バーサーカーはイリヤを盾に取られ動けない。


「無駄だよ。お兄ちゃんにわたしは殺せない」


干将を振り上げたまま固まっている俺の眼を、イリヤが真っ直ぐに見つめる。

魔眼、か――――


「――――え?何で?何で魔眼が効かないの!?」


イリヤの目を見ても変わった様子が無い俺に、初めてイリヤが取り乱す。

つ-か、体中が腐り落ちてゆく痛みの中で、魔眼に惑わされてる余裕なんて無いって。


「チェック・メイト――――」


諦めるように、怖がった様子もなく俺を真っ直ぐと見据えるイリヤの頭に、真っ直ぐに―――――――


ゴンッ!


「いったぁぁぁぁぁい!なにするのよ!」


ゲンコツを振り下ろした。


「小僧、何故殺さない!?」


かなり向こうの方から、膝を突いて苦しそうにしているアーチャーの抗議の声が聞こえてくるが無視。


「レディの頭をぶつなんて、なに考えてるのよ!」


「悪い子にはお仕置き。世界共通の常識だ」


そう、この少女はわかっているのだ。

わかっているのに―――――


「殺す事がどんな事か理解している癖に、殺すだの殺さないだの軽々しく言っちゃ駄目だ」


「―――――っ!」


ハッとしたように俺を見上げるイリヤ。


「・・・・・」


その後に、拗ねたように俯いて無言になる。


「駄目だぞ?」


微妙に怒気を乗せて念を押す。

すると――――


「・・・・うん」


弱々しい声が耳に届いた。


「――――うしっ、良い子だ」


自然に顔から笑みが零れる。

そのままイリヤの頭を帽子越しに優しく、それでも力強く撫でる。


「あ―――――――」


不意に、イリヤの目からポロリと涙が零れ落ちた。


「お兄ちゃんは――――シロウはわたしと一緒に居てくれる?」


何の脈絡も無い、唐突な質問だった。

それでも、怯えたような目と、きつく結ばれた口を見ていると答えないわけにはいかない気がする。


「ん、お前が望むんならな」


頭を撫でたまま、何でもないことのように言う。

普通に考えればこの会話は異常なのだろう。

先程まで殺し合っていた者同士がこんな会話をするなんて――――――

それでも俺は、あの幼い叫びを無視することが出来なかった。


「シロウ・・・!」


そう言って俺の腰に抱き付くイリヤ。

決して泣き声は漏らさすまいと、小さな嗚咽を噛み殺すその姿が痛々しかった。

暫くそのままイリヤの頭を撫で続けていたが、急に膝から力が抜ける。


「――――あれ?」


はは・・・忘れてた。

タイムリミット、か―――――

もう全身が壊死しているのか体が倒れたまま動かない。

ヤッバいなぁ・・・・。

あんだけ死なねぇなんて言っておいて・・・・・。

ちっくしょぉ、我ながら――――――


「かっこわりぃ・・・」


「シロウ?ねぇ、シロウッ!!」


イリヤが取り乱すが、答えてやることが出来ない。

そのまま意識がぼんやりとしていく。

壊死が、脳にまで、来たのか・・・な・・・

自分が、言った・・・事も、守れ・・い・・て・・


「・・・・最・・悪に、かっこ・・・わ・・ぃ・・・な」


そのまま、俺の意識は闇に閉ざされた。























続く



あとがけ

燃え尽きた(ぉ

19: kazu (2004/03/31 22:00:58)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第十七話「最終手段」



「――――し・・ろ・・!!」


ん・・・?遠坂の声・・・?


「士郎!!」


あ?・・・・・・なんで俺の部屋で寝てるんだ、俺?

動かない体を苦々しく思いながら、目だけで周りを確認する。


「目が覚めたか、小僧」


「シロウが起きたの!?」


「大丈夫ですか、シロウ」


「バカ士郎・・・。無茶し過ぎよ」


俺を覗き込む皆の声が何処か現実離れして見える。

そうか――――

俺はあの後倒れたのか。

死んだと思ったんだけどな―――――我ながらしぶとい。


「セイバー、傷は?」


「イリヤスフィールの治療で今は無傷です」


それは良かった。

しっかし―――


「お前――――遠坂もだけど、よくイリヤを攻撃しなかったな」


「初めはそりゃ頭に血が上ったわよ。でも、泣きながら士郎を救おうと治療魔術を施している姿なんて見ちゃったら、一時休戦にするしかないじゃない」


そっか、イリヤにはお礼しなくちゃな。


「小僧、よく聞け。お前はこのままでは助からない」


真剣な顔のアーチャーが、俺にそう告げる。

その言葉を聞いて、遠坂とセイバーは目を見開き震えだす。

イリヤは理解していたのか、悲しそうに目を伏せていた。


「肉体の壊死はイリヤスフィールの治癒で何とかなった。だが、神経系の損傷が大きい。手足の指等の末端はもう全滅しているといっても良い」


そして、と言葉を続ける。


「お前の体内の魔具の力が極端に弱まっている、その所為で呪いが浄化を上回っている状態だ。その上深刻な魔力不足――――――今直ぐにではないにしろ、お前は確実に死ぬ」


全く、アッサリと言ってくれる。

しっかし――――

まだ死ねねぇなんて言っておいてこの様だ、我ながら呆れるな。


「アーチャー、もったいぶらないで。方法があるんでしょ?」


「何故そう思う」


「本当に方法が無いならこんな面倒な事を、貴方がする訳無いでょ?」


遠坂の言う事も一理ある。

コイツなら見込みが無い場合は、スッパリ切り捨てるだろう。

下手したら介錯されてた可能性もある。


「本当は話したくなかったのだがな」


ヤレヤレ、といった感じで嫌そうに言うアーチャー。


「簡単な事だ。小僧がセイバーを抱けば良い」


ほわい?

イリヤとアーチャー以外は全員目が点になって、口をぽかんと開けたままで固まった。


「ふざけるな・・・・ンな事・・・」


か細い声しか出せないせいのに、俺の声は妙に大きく聞こえた。

その声が切っ掛けとなり、時間が再び動き始める。


「なななななななな――――!?」


セイバー、驚くのはわかるが武装して剣を構えるな。

尚且つ、アーチャーに振り下ろそうとするな。


「セイバー、落ち着いて。アーチャー、どういう事よ?――――下らない冗談、って訳じゃないでしょ?」


セイバーが取り乱して逆に落ち着いたのか、遠坂が魔術師の顔でアーチャーを睨む。


「簡単な話だ。魔具の力が不足しているなら、より強力にすればいい」


「だから、それがどうしてセイバーを抱くって結論になるのよ!」


うん、それは俺も知りたい。


「小僧に埋め込まれた魔具は、本来セイバーの物でな。コイツを埋め込んだ奴がどう弄ったのか知らんが、セイバーが持たなければ本来の力は出ない。小僧の受けている恩恵は力の一部、と言った所だろう」


「つまり―――――セイバーとの繋がりを強くする事によって、その魔具に士郎をセイバーだと錯覚させるって事?」


確かに、セイバーの前マスターの親父ならセイバーの物を所持していてもおかしくないだろう。


「その話――――信じるに値する証拠は在るのですか?」


「別に信じてください、とまで言うつもりはない。小僧が死ぬならそれはそれでマスターが一人減って楽が出来るのでな」


アーチャーの反論にセイバーは辛そうに沈黙する。

このまま行けば、生真面目なセイバーは頷いてしまうだろう。

だが―――――


「ンな事・・・出来る訳ねぇだろ」


呪いなんて気合で吹き飛ばす。

だから―――――


「お前が思いつめる必要は無いんだ、セイバー」


その言葉に、唇をきつく噛み締めていた彼女がはっと顔を上げる。

俺の為に誰かが苦しむ必要は無い。

それは、俺が無力である証拠なのだから。


「良い雰囲気のところ悪いが、小僧がセイバーを抱いても助かる可能性は五割といった所だ」


「抱かねぇって言ってんだろ」


「士郎は黙ってて。どういう事?アーチャー」


いい加減腹が立ってきたので、少し強めに文句を言うが、冷静な遠坂に一睨みされて押し黙る。


「絶対的な魔力不足だ。その上サーヴァントとの性交渉は魔力の消耗が激しい。今の小僧に耐えられるかどうかは完全に賭けだ」


そこで、と言葉を続けるアーチャー。


「イリヤスフィールとの性交渉による魔力の補充でそこを補う。既に彼女はここに向かう道中にその決意を固めている」


馬鹿な、と――――

そんな思いだけが頭を占める。


「イリヤ―――――――本気か・・・・!?」


「うん、わたしシロウが死んじゃうのはイヤだもん。大丈夫よ、わたしは立派なレディなんだから」


少し震える手を隠しながら言うイリヤ。

心底自分を殺したくなってくる。

こんな小さな子にまでこんな決意をさせるなんて――――――!!


「ちょっと待って。宝石じゃ魔力補充は無理なの?」


「無理だ。無機物からの補充は僅かだが魔力が必要だ。そんな魔力、この小僧には欠片も存在しんよ」


そこまで―――――と、遠坂が絶望したように呟く。


「アーチャー、魔力の補充はイリヤじゃなくても可能よね?」


「ああ、余程魔力量が低くない限りは――――――待て、凛。君はまさか」


アーチャーが初めて表情を変える。


「魔力補充の役目、私が引き受けるわ。流石にイリヤはマズいしね」


「駄目よ、わたしがやる!」


・・・・・・なんでセイバーを抱く事を前提で話が進んでるんでしょうか?


「凛、考え直せ。君が態々――――」


「黙りなさい。次口を出したら命呪を使うわよ」


「クッ―――――!」


切り札に押し黙るアーチャーを一瞥すると、イリヤと口論を始める遠坂。


「私が――――」


「だからわたしが―――」


いや、お二人さん?


「だったら二人一緒に―――」


「良い考えね。そうすれば助かる確率も上がるわ」


あの?


「いい加減にしろ・・・・・俺は誰も抱く気はない・・・・」


そう、俺なんかの為にそんな事をする必要は―――――


「少し黙ってなさい!」


ドスッ!!


腹部を突き抜ける衝撃に意識が遠くなる。

遠坂の奴―――――人の腹を踏み抜きやがった・・・・。

つーか、熱くなったら後先考えなくなる性格はどうにかしろ・・・・。

そんな事を考えながら、意識は闇に沈んでいった。























続いちまうらしい





あとがき

かなりやっちまった系。

今回はお酒って怖いねってお話。

士郎の体についてはツッコミは無しの方向で。

いきなり4ピ・・・ゲフンゲフン!!
マルチタップ使用しないと無理な人数が初体験!?
・・・・これが若さ故の過ちというものか・・・・

18禁、書くべきなんだろうか・・・・・

20: kazu (2004/03/31 22:01:46)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

今回の話は18禁です。
別に飛ばしてもストーリーに支障は無いので、そういうのが苦手な方は飛ばしちゃってください。







DARK HERO 第十八話「男女逆転」



ぴちゃりと、淫猥な音が耳についた。

股間が妙な熱を持ち、男根に絡みつく無数のヌメヌメとした、それでいてザラついている生暖かい物体の感触を感じた。

その感触に急速に意識が覚醒する。


「ん・・ぁ・・・」


熱の篭った声が聞こえる。

その声の主を探し視線を彷徨わせると―――――


「んぷ・・・はぁ・・・」


頭がハンマーで殴られたような衝撃を受けた。

俺の股間に顔を寄せるイリヤの、セイバーの、遠坂の舌が俺の肉棒を這い回っていた。

恍惚とした表情で行為を続ける彼女達は、下着一つ身に纏っておらず完全に生まれたままの姿だった。

余りの光景に声が出ない。

だが己の心とは裏腹に、例え様の無い背徳感が俺に伝わる快感を倍化させる。


「ちゅ・・・・・あ、シロウのが出てきました・・・・」


亀頭付近をぺろぺろと舐めていたセイバーが、先端から溢れ出したソレを見て淫猥に微笑む。


「あ、ズルイわよセイバー。ふふっ・・・ピクピク動いてる・・・・かわいい・・」


遠坂が不満そうな声を上げながら竿の裏側を下から上まで丁寧に舐め上げる。

頭が痺れる。

その快感は自慰なんかとは比べ物にならない程甘美で、こみ上げてくる射精感を堪えるのに一杯一杯で声を出す余裕なんて無い。


「ん・・く・・はぁ・・・・シロウの・・・おいしい」


幼い顔に俺の分泌物を擦り付けながら幼い顔を赤く染めるイリヤ。

その淫猥さは幼さを引き立てるほどのモノで、イリヤの舌さえも蠱惑的に魅せる。


「・・・士郎・・・・我慢しなくて良いのよ・・・・ちゅ・・・はぁ・・・んっ」


竿を舐めていた筈の遠坂が、いつの間にかイリヤを押しのけて俺の正面に跪いていた。

そして躊躇い無く亀頭を一気に咥える。

直後、ずっ、じゅるり、と力強く亀頭を吸われた。

完全な不意打ちだった。

我慢できずに腰が跳ね上がる。


「んぷ・・・・」


強力なバキュームと、鋭く尖らせた舌で尿道を穿る。

そんな行為が交互に続き、いい加減限界も近いのにそんな事をされたのが止めだった。

ドクリと肉棒が脈打ち、遠坂の口内に俺の精液が根こそぎ放たれる。


「っ!?・・・けほッ・・んん・・・・凄い量・・・・」


初めこそ唇を窄めて精液を漏らさない様にしていた遠坂だが、予想外の量に咽ながら口を離す。

離れる瞬間、遠坂の唇と亀頭の間に精液と唾液の混ざり合った粘液が橋を架ける。


「あ・・・リン、ズルイです・・・・」


「じゃあセイバーも飲む?」


くちゅりと、遠坂の口を吸うように遠坂にキスをするセイバー。

コクコクと喉を鳴らし、遠坂の舌と自分の舌で俺の精液を転がし飲み込んでゆく。


「ぷぁ・・・これがシロウの味・・・・」


暫くしてうっとりとした表情で遠坂から口を離すセイバー。

唾液が糸を引き、名残惜しそうに千切れ落ちる。

その光景に暫く見惚れていたが、射精後の脱力感でハッと我に返った。


「何やってんだよ・・・・このバカ娘共が・・・・!!」


何でこんな強姦みたいな真似を――――


「五月蠅いわね。ん・・・もうそろそろ大丈夫・・・よね?」


俺をまるで無視して肉棒を自身の入り口に押し当てる遠坂。

自分で準備をしたのか、ソコは既に充分に潤っていた。


「くぅ・・・はぁ・・・いたっ・・・」


すぶずぶと遠坂の体内に俺の肉棒がゆっくりと入ってゆく。

肉棒は湿った柔肉に力強く締め付けられ、快感以上に苦痛を伝えてくる。

それ以上に、痛みに顔を顰めながらも、自ら腰を振り始める遠坂が心に深く突き刺さった。


「頼む・・・止めてくれ、遠坂・・・」


これ以上俺に、自身の無力を突きつけないでくれ――――!!

目頭が熱くなり悔し涙が溢れそうになる。

遠坂の体内の肉壁とひだが肉棒を擦る度に、胸の奥から無力感がジワジワと浸透してくる。

そんな抗い難い感情に耐えていると、ずっ、じゅ、と出し入れされる動きが幾分かスムーズになり、こちらも例えようが無い快感に襲われるが―――――

ソレが尚更俺を責めたてる。


「もういいから・・・・頼むから止めてくれ・・・」


「良くない!!」


瞬間、唇で口を塞がれた。

ズルリ、と口内に遠坂の舌が侵入し、歯茎の裏から頬の内側を掃除するように這い回る。

抗う力も無くされるがままに遠坂の唾液を飲み下し、口内を舌で洗浄される。


「む・・・んぁ・・・・・はぁ」


程なくして満足したのか、ズルリ、と俺の口内から舌を引き抜く。

その時に唾液が糸を引き、その光景に魅せられた。

が、それ以上に魅せられたのは――――――


「っく・・・・死んじゃうじゃない・・・・止めたりしたらアンタが死んじゃうじゃない―――――!」


泣きながら激しく腰を振る遠坂の涙の美しさだった。


「私は大丈夫だから、ちゃんと気持ち良いから―――――」


熱っぽく荒い息を吐きながら、俺を見据えて必死に言う遠坂。

嘘だ。

血が出ているのに、さっきあれだけ痛がってたのに気持ち良い筈が無い。

だが、俺はもう爆発寸前だ。

涙を流す遠坂の姿に欲情してしまった自分に殺意が湧くが、射精感だけはどうにも押さえきれない。


「くっ・・・・遠坂・・・離れろ・・・・出・・・」


言い終わる前に、肉棒がキュッと締め付けられた。

それが完全な止めだった。

発射する寸前に遠坂が腰を引き、俺の肉棒がズルリ、と抜け落ちる。

その直後、ドクリ、と欲望が迸り、遠坂の太腿を白く汚した。


「ぁ・・はぁ・・・上手く・・・いった・・」


そう呟くと、遠坂は余程疲れたのか倒れこんでしまった。

それから暫くは何も考えられなかった。

ただ、遠坂の涙だけが頭の中をぐるぐると回っている。


「――――じゃあ、次はわたしだね」


幼い声が聞こえた直後、まだ敏感な――――それでいて硬さを失っていない男根の先端が、再び湿った感触を伝えてくる。

ズブリ、と遠坂のソレよりも狭い入り口が亀頭の先端を包んだ。


「いっ・・・ぎっ・・・・うぁぁぁぁぁ!!!」


絶叫。

正に絶叫だった。

肉棒があまりの圧迫感に悲鳴を上げる。

だが、それすらも無視してイリヤは強引に腰を落とした。

その目には涙が溢れ、痛みの凄まじさを物語っている。


「うっ・・・く・・・ぎっ・・・・」


歯を食い縛りながら必死に動くイリヤだが、結合部から流れ出る血とキツ過ぎる締め付けで快感など発生しない。


「バカ!早く抜け!」


遠坂との交わりで少し余力を取り戻した俺は、極力大きな声でイリヤに怒鳴る。


「や・・・く束・・・破る・・・の?」


良き絶え絶えに言うイリヤの目には絶対の意思が篭められていた。

死なせない――――と。

だが、何度イリヤが動いてもキツ過ぎる締め付けで何時まで経っても射精には至らない。

終わらない拷問に近い交わりだ。


「ごめん・・・シロウ・・・わたしじゃ無理みたいだから・・・・ズルするね・・・」


イリヤもその事を悟ったのか、動きを止めて俺に言った。

そんなイリヤの目を見つめた直後―――――


「う・・・ぐぅ・・・」


俺はイリヤの体内に射精していた。

どうやら魔眼の類らしい。


「はぁ・・・ひぁ・・・・・シロウ・・すご・・・い」


余りにも無理な交わりを続けた所為だろう。

俺がイリヤの中に放つと、イリヤは安心したように俺の上で意識を失った。

かなり体が動くようになったので、なんとかイリヤを優しく押しのける。

俺の肉棒がイリヤの蜜壺からズルリと抜け落ち、イリヤの体内からゴポッ、と溢れるように血と愛液と精液が混ざり合った液体が流れ出る。

その光景に不覚にも目が奪われるが、なんとか振り切り立ち上がろうと上半身を起こす。


「クソッ・・・・何だって俺なんかの為に―――――!」


何だってこんな何も出来ない無力な奴の為なんかに、体を許したりするんだよ・・・!!


「その言葉、撤回してください。その言葉は私達に対する侮辱だ」


凛とした声が降ってきた。

その声の主は間違いなくセイバーで―――――

出会ってから、初めて聞いた怒気の混ざった声だった。


「だが―――――!!」


セイバーに反論しようと、セイバーの顔を見上げようとした直後―――――

無言で唇を塞がれた。


「――――んっ」


そのまま、その小柄な体からは信じられないような力で押し倒され、舌を絡めた情熱的なキスに移行される。


「ちゅ・・・ふ・・・ん・・・」


そのキスは何かを振り切るような必死さで、遠坂のものとは違った激しさがあった。

舌を吸われ、そのまま舌を甘噛して口内で転がす様に愛撫される。

その最中に、股間の男根が何か柔らかいものに包まれる。

視線だけ動かして確認してみると、セイバーの手が三回の射精によって萎びた俺の肉棒を包み込んでいた。

決して強くない、むしろ焦らす様な弱さでやわやわと竿を扱き上げられる。

激しいキスと相俟って、俺の肉棒は現金にも硬さを取り戻す。

それをセイバーは目だけで確認すると、キスを交わしたまま自身の体内に押し入れ始めた。


「づぁっ!?」


苦痛に耐え切れなかったのか、俺の舌を噛んでしまった事にも気付かず顔を顰めるセイバー。

キスを続ける余力なんて無いのだろう、何時しかセイバーの顔は離れていた。

スブズブと柔肉を切り裂いてセイバーの体内に肉棒が埋まってゆく様は、まるで現実味が無く夢のようだ。


「っぅ・・・・うぁ・・・ひぎぃ!?」


遠坂やイリヤにもあった、ブツッ、と何かを千切る感触。

その直後から結合部から血が流れ落ち、セイバーの目には涙が溜まっていた。


「もういい・・・止めろ」


その余りの痛ましさに自然と声が出た。

だが、その声が逆に切っ掛けとなりセイバーは歯を食い縛りながら激しく動き始めた。

ずるっ、にちゃ、と淫猥な水音が部屋を満たし、肉棒からはキツクひだが締め付け、膣の壁が蠢く感触が伝わってくる。


「っく・・・はっ・・これ以上・・・ぁふ・・・奪えと言うのですか・・・?」


辛い筈なのに、しっかりと俺の眼を見て厳かに問うセイバー。


「貴方から・・・っく・・・・両親を奪い・・・平穏な人生を奪い・・・っあ・・・命まで奪えと・・・言うのですか・・!」


心臓が鷲掴みにされた。

彼女は、まさか彼女は――――――


「貴方の様な優しい子から・・・ふぅっ・・・はぁ・・・私はこれ以上何も奪いたくない―――――!」


それだけ言って、一層激しく腰を振り始めるセイバーの顔を直視する事が出来なかった。

俺は――――――

復讐に託けて何をした?

なのにこの少女は―――――

ダメだ――――今直ぐにでも自分を殺したくなった。

だけどそれだけはダメだ。

遠坂が、イリヤが、セイバーが体を許してまでも救ってくれたこの命――――――

ちっぽけな自己嫌悪なんかで捨てる訳にはいかない。

そんな思考の中でも行為は続く。


「ふぁ・・・・ん・・あぁ・・・」


次第にセイバーも慣れてきたのか、嬌声じみたものが漏れる声に混ざり始めた。

キツかった締め付けは何時しか丁度いいものになり、まるで精を搾り取ろうとするかのように蠢き始める。


「ん・・ああ・・・はぁ・・・」


堪えきれぬ射精感を腹筋に力を入れて耐える。

だが――――――


「くふぅ!?・・・んぁ・・・はぁ・・・」


それが肉棒の膨張につながり、それに反応したセイバーの膣がキュッと締め付けてくる。

それが最後の防波堤を突き破る。


「くぅ・・・!」


4回目とは思えないような量の精液がセイバーの胎内に放たれる。


「ふぁ・・・く・・・あは・・あぁぁぁぁぁぁぁ!!」


俺の欲望がセイバーの胎内に叩きつけられると同時に、セイバーは電気が走ったように仰け反り声を上げると、そのまま俺の胸に倒れこむ。

俺もいい加減限界なのか、そのままの体制で意識が薄れてゆく。

男根を挿入したままという異常な状態なのに、セイバーの胎内の暖かさが不思議と心地よく、俺はそのまま気絶するように意識を手放した。
























つづく








補足:イリヤは18歳以上です。決してそう見えなくても、例え原作で違っても・・・この小説では18歳以上なんです!!お願いだから納得して!!








あとがき

やっちまった系。

つーか、エロ難しいです。
官能小説家を普通に尊敬できるようになりました(ぉ

21: kazu (2004/03/31 22:02:23)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第十九話「終わったモノ、始まったモノ」






目が覚めると、セイバーの顔が正面にあった。

後頭部に感じる素肌の暖かい感触に、自分は今膝枕をされているのだと思い至る。

お互い・・・・というか、この部屋にいるイリヤ、遠坂、セイバー、俺は素っ裸だ。


「目が覚めましたか?」


セイバーはずっと俺の顔を覗き込んでいたらしく、俺の変化にすぐさま気付き微笑みかけてくる。

その微笑に拭いきれない後悔の念が押し寄せてくる。

俺がもっと強ければ――――――

彼女達にこんな事をさせずに済んだだろう。


「あーあ・・・・どうなっちまうんだろうな・・・・・俺達」


このまま恋人に―――――なんてゲームや漫画のように行かないのが現実だ。

一回情を交わした程度では人の心は繋ぎ止められない。

それに、こんな切っ掛けは俺の望む所ではない

下手をすれば、もう遠坂とは友達でいることすら出来なくなるだろう。

セイバーはサーヴァントだ、こんな理由では離れたり出来ないだろうが気不味さは残る。

イリヤにしても、一緒に居ると言っても協定を交わして無い以上は敵なのだ。


「士郎の不安はわかります。確かに今までの関係を続ける事は無理でしょう。ですが―――――」


そう言って、ひまわりの様な笑顔を浮かべるセイバー。


「同時に、始まったモノだって在る筈だ。それを忘れてはいけません」


王の威厳に、野原のたんぽぽの様な飾りっ気の無い言葉。

ダンデライオン――――

そんな言葉が、ポカポカと温まってゆく心に浮かんだ。


「すまんセイバー、一眠りさせてもらう。暫く膝を貸してくれ」


「はい、喜んで」


そのまま、セイバーと言う名の春の太陽に照らされながら、まどろみに沈んでいった。

幸せな夢が約束された眠りは、やっぱり幸せなものだった。























なんて綺麗に終わると思っていたら――――――


「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


虎、暴走。

男の部屋で部屋の主と女3人が同衾していて、尚且つ全員全裸。

誤解するなって方がおかしい。

ってか、誤解じゃねぇし。


「落ち着いてください」


「あー!昨日の変な外人!やっぱりアンタが士郎ぅをぉぉぉぉぉ!ああ!?遠坂さんまで!?何よこの小さな子は!!犯罪よ!ロリコンは罪なのよ士郎!」


セイバーの説得、効果無し。

ってか、爆弾のスイッチを押した?


「みんなズルイよぉぉぉ!!士郎はおねえちゃんのモノなんだから取らないでよぉぉぉ!!」


なんて言って泣き出すがーねぇ。

何時からそんな事になってるんだよ・・・・・。


「あ、あのな、がーねぇ――――」


「もうこうなったら私も士郎とえっちする!もうそれしかないのよ!!」


説得失敗。

寧ろ悪化だ。


「つーか脱ぐな!セイバーも見てないで止めろ!遠坂とイリヤも寝てないで手伝えぇぇぇぇぇ!!」


がーねぇが脱ぎたしたのでセイバーと一緒に必死で止める。

ってか、この騒ぎの中寝てるなんて遠坂とイリヤはどんな神経してんだ?


「士郎はわたしの事嫌いなんだぁぁぁ!酷いよ、お嫁さんにしくれるって言ったのに!!」


なんて事を言いながら、パンツ一丁の状態で婚姻届を取り出すがーねぇ。

どこから出したのか疑問に思いながら良く見てみると、なんと夫の欄には俺の名前と実印。

流石ヤクザの組長の孫、書類捏造もバッチリだ。

・・・・ってオイッ!!


「捏造すなっ!!」


一瞬で取り上げて細切れに千切る。

俺の人生、こんな紙っきれで決められてたまるか!!


「ふっふっふっふっふっ・・・・まだまだこんなにあるのだぁぁぁ!!」


と、ポイポイ婚姻届を取り出してばら撒くがーねぇ。

しかも全て俺の名前と実印入り。

他の欄も全て記入されているので、お役所に持っていけばその日から夫婦になれるステキなバリューセットだ。


「NOoooooooo!!アンタ何回結婚するつもりだ!?」


俺も拳を強化して次々と婚姻届を四散させる。

それは決定的な隙。

敗因は婚姻届に目を奪われた事。

そんな隙を野生の虎が見逃すはずが無い―――――!!


「士郎ゲトー!!」


それは芸術的なタックルだった。

姿勢は低く、加速も充分。

ウェイトの不足は技術で、とでも言わんばかりの技巧。

つまり―――――――


「わー!顔を近づけるな!唇を突き出すなー!!」


虎、捕食体制に移行。


「士郎、本当に嫌なら諦める」


突然真剣な目で俺を見るがーねぇ。

そっか、不安、なのかもしれないな――――

家族である俺が誰かに盗られちまうとでも思ってるのだろう。

そんな心配は―――――


「なーんちゃって!士郎の意思なんて関係無いのだー!大人しくおねえちゃんのものになりなさい!」


擬態かよっ!!

おーかーさーれーるー!

つーかセイバー、お前婚姻届を興味深そうに見てないで助けろよ!遠坂もイリヤのいい加減起きろや!!


「しーろーうー!!」


「い、いぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

















アーチャー視点



「しーろーうー!!」


「い、いぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


近所一体に響く絶叫に、私は不覚にも驚き屋根から落ちそうになる。

全く、何をやってるんだか・・・・。

あの男を一瞬でも英雄だと思った私が愚かだった。


「女に抱かれて腹上死しろ」


言ってみて意外と語呂が悪い事に気がつく。

こんな奇妙な事を呟くほどイラつく理由が自分でもわからない。

もしや――――


「英霊であろうともこの身は男、と言う事か」


答えに至って自嘲する。

まさか、嫉妬とはな・・・・。


「まだまだ私も若い、という事か」


――――全く、我ながら度し難い。

















続くらしい






あとがけ

フッ・・・・やっぱりギャグは楽だ・・・・

22: kazu (2004/03/31 22:02:51)[kazuyan at alto.ocn.ne.jp]

DARK HERO 第二十話「作戦会議」




あの後、何とかがーねぇを落ち着かせ、遠坂達を起こして今後の方針を相談した結果、俺と遠坂は学校を休む事にした。

どうやってがーねぇを落ち着かせたのかは、思い出したくもない。


「それにしても、士郎もタラシよね。あんな歯の浮くようなセリフをよくもまぁ・・・・」


「だぁぁぁぁぁ!!忘れようと努力してるのに掘り返すな!!」


やはり遠坂はあくまだ。

むしろ魔王レベルかもしれない。

それはともかく、現在居間で俺、遠坂、セイバーが机を囲んでいる。

イリヤは目が覚めた後にあっさりと帰っていった。

次に会う時は聖杯戦争が終わった時だと良いんだがな、とイリヤに言った時に見せた寂しげな表情が妙に引っかかった。

さて、それより今は作戦会議だな。


「それで、これからどうするの?学校の結界だってほっとけないわよ?」


「は?学校の結界って何?」


それは初耳だ。

すると遠坂は急に険しい顔―――――バカかアンタ?みたいな表情で俺を見る。


「あんなわかり易い結界になんで気付かないのよ?魔力持ってたら誰でも気付けるレベルよ?」


「いや、つーかそんな結界仕掛ける意味あんのか?」


結界とは本来気付かせない為に使う物の筈だ。

仮に攻撃用の結界だとしても、発動までに見つかってしまったら本末転倒だ。


「攻撃用・・・・しかも発動中、か?」


「攻撃用ってのは的を射てるけど発動中じゃないわ。つまり、見つかっても並の魔術師じゃ解除できない物なのよ。だからああも堂々と設置できるの」


つまりアレか、消せれるもんなら消してみろ、と。


「で、並みの魔術師でないお前さんは消せるのか?」


「無理。せいぜい発動を遅らせる程度ね。それもランサーに邪魔されちゃったし」


ふむ・・・・。

しっかしなんで即座に結界を発動させないんだ?

俺達が狙いだったとしたら辻褄が合わない。

遠坂の話を聞く限りでは、ランサーと戦った時には既に設置済みだったと推理できる。

だったらさっさと発動させてしまえば良いのに―――――


「で、その結界の効果は?」


「人体を溶解して魂を摂取。ただし魔力の通った存在には効果無し。多分狙いはサーヴァントのエネルギー収集ね」


ああ、そういう事か―――――

それでも腑に落ちない。

さっさと発動しないのは何故だ?

誘き寄せる為の餌?いや、だったら何故学校なんかに?

仕掛けた人間の思考を模索していると、ある考えに思い至った。

ん?ああ、そうか、そういう事か。


「多分その結界を仕掛けたマスターは素人で臆病者だ。下手すりゃ魔術師ですらないぞ」


「は?何言ってるのよ?魔術師じゃなきゃマスターには――――」


「いえ、マスターになるだけなら魔術回路が存在しなくてもなれます」


ここで初めてセイバーが口を挟む。


「命呪自体が独立した魔術なんです。ですからそれを使用するだけなら素人でも出来ます」


「それにしたっておかしいわよ。召喚には魔力が必要なのよ?」


「簡単な話だ。サーヴァントによるマスター殺し、それが起きないとは言い切れないだろ?」


そう、サーヴァントといっても自由意志が存在する。

マスターが気に食わないから殺した――――なんて事も有り得るだろう。


「それについては理解したわ。でも何で仕掛けたマスターの性格までわかったの?」


「少し考えてみれば簡単な話だ。エネルギーら摂取が目的なのに即座に発動しない、つまり発動させてしまう度胸も無いが、何もせずには居られない。そして、あの結界の目立ち易さが理解できていない。慎重派って考えもあるが、そもそも慎重な奴はそんなバカな真似はしない。それに相手の手札も調べずに闇雲に誘うのは、ただのバカか好戦派のやる事だ」


そして、ただのバカや好戦派はこんなまわりくどい真似はしない。


「確かにそうかもね―――――」


そう呟いて一人考え込む遠坂。

人と話している途中に勝手に自分の世界に入るのはこいつの悪い癖だ。


「で、だ。俺達は好戦派の戦法を取ろうと思う」


「つまり、こちらから誘うの?」


やらなきゃ最悪全校生徒が死ぬしな。

学校に結界を仕掛けたマスターから仕留める。


「ああ。今日から毎日結界にちょっかいを出す」


「成る程。臆病なマスターは結界の心配をして様子を見に来る、と」


流石に鋭いセイバーがこくこくと頷きながら言う。


「その通り。こっちは二人もサーヴァントが居るんだ。余程の事が無い限り負けないだろ」


それに、と続ける。


「臆病者ならサーヴァントだけ寄こすだろうよ。つまり命呪を含めたマスターからのサポートは無い。バーサーカー級のバケモノじゃない限りそんな相手に負ける道理が無いさ」


それと後一つ、保険を掛ける事にする。


「遠坂、結界の発動を遅らせるってのはどれくらい制御できる?」


「最大で一週間。あとは一週間以内なら自由に出来るわ」


ふむ、なら文句無し!!


「だったら発動を日曜日にしてくれ。それなら居るとしても残業の職員だけだろ?結界の外に運び出すのは簡単だ。タイムオーバーでも最悪の事態だけは避けれる」


なんと我が高校には警備員が居ない。

安全上どうなのかと問い詰めたいが、今回は最悪の場合助ける人数が減る分ありがたい。


「それ良いわね。発動するにも仕掛けた本人が結界内に居る必要があるしね。見張っていれば見落とす可能性も無いでしょ。本人が居るなら結界発動前にケリをつければいいんだしね」


流石遠坂、理解が早くて助かる。


「じゃ、放課後になったら行くわよ」


「いや、学校関係者を調べたい。今日は昼から行くぞ」


みんな帰った後、じゃ遅いしな。

素人がマスターなら学校関係者全員が容疑者だ。

気張って調べんとなぁ・・・・・。

それにかかる途方も無い労力を想像して、げんなりとしながら登校準備をするために部屋に戻った。

しかし遠坂よ・・・・、何時の間に離れの部屋を占拠した?















続くらしい






あとがき

例によって矛盾点等に対するt(しつこい


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