ふぇいと/すていないトラ M:藤ねぇ、セイバー 傾:主にギャグ


メッセージ一覧

1: 唄子 (2004/03/31 03:56:51)[orange.peco.chipi@m2.dion.ne.jp]

*誰かが書いていたかもしれない、でも、やっぱり書いてみたいのです。
*キャラクターのイメージをそこはかとなく壊しています。
 大事にしたい人は見ないほうが良いです。






























ハァハァハァ―――――――

あいつは直ぐ其処まで迫ってる。
強化した藤ねぇのポスターだけが頼りってのが
この場面で悲しかった。

土蔵に逃げ込んで、後はただ何とかなるのを待つしかない。

「おーい、出て来いよ?居るんだろ、坊主?」

ちっ!一体どうすりゃ良いんだっ!?


ヒュンッ!



!?

気づいた時には、もう青い奴は、閃光のような突きを繰り出していた−――




薄目を開けて…
生きてる?

どうやらとっさにポスターを開いて凌いだ様だ…。
その代わり、ポスターはもう強化する前の状態に戻ってしまったが…

「へっ、もうお終いか?」

心臓の上、左の胸にピタリと槍を当てられる。
息する事も忘れてしまうほどに、頭には死が埋め尽くされていた――――

俺―――死ぬのか?
もう一度心臓を貫かれて…。
せっかく生き返ったのに、1日に2度も…

「じゃあな…坊主!」

胸に槍が吸い込まれていくのが見える。
それは悪い夢のように、ゆっくり、ゆっくりと…
胸に吸い込まれてどうなる?
心臓が貫かれて…、そして死ぬ…




―――――死ぬ?
馬鹿な!
1日に2度も死んで…、
人の命を何だと思ってるんだ…、
そんな馬鹿みたいに何度も死んで―――――


たまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!!





その時―――――――――
眩い閃光が土蔵を包み――――

ギィン!
「な、馬鹿な!7人目だとっ!?」

そう言い残し、剣戟と共に青い奴は退いていった。

青い奴が居なくなった後には―――――

月の明かりのみで照らされた、薄暗い土蔵の中、

少女は、

月光を美しい金の御髪に受け、

整然とした空気を纏っていた。


視線は、ただ座り込んでいるしかできない俺の方を――――






通り越してその奥の、ガラクタで佇む…

「あれー、士郎?あはは、ちょっと探し物してたら寝ちゃってたみたい、へへ。
ん?この子…誰?」

藤ねぇに向かっていた。

チクッ!

とした刺激で、ふと右手の甲を見ると、

ただの虫さされだった。

彼女は、藤ねぇへ向かって

「サーヴァント・セイバー、召還の命を受けて参上した。
貴方が私のマスターか?」

と、聞いていたりしていた。





『ふぇいと/すていないトラ』






衛宮邸――居間

今や家のちゃぶ台は、二人の客人を迎えている。

一人目、セイバーと名乗る金髪の外人さん。
あの青い奴、ランサーとか言ってたけど、それと凄い戦いを繰り広げた
見た目と全然違う剣術美少女。
あ、理由はわかんないけど、日本語ぺらぺら。

二人目、こっちは知った顔だ。遠坂凛、同じ学年、才色兼備の美少女だ。
加えて、実は魔術師だったのだ。完璧超人かお前は?
なんでも、セイバーみたいに現れてきた奴も居たらしいが、セイバーが
切り捨ててしまったらしい。現在、遠坂家で療養中との事。どんな奴なんだろ?

三人目、藤ねぇ。
いまさら説明もあったもんじゃないが、俺の学校の英語教師。
っていうか、小さい頃から家族みたいにして育ったから、そっちの
印象が強いが…。
なんでも、セイバーが言うには、藤ねぇが“マスター”っていうものらしい。


それで、こうして夜中集まったのは、
『聖杯戦争』ってものに、藤ねぇが巻き込まれたのが原因なのだが…

「はぁ〜、ねぇ、士郎分った?」

藤ねぇはやる気が無さそうに俺に振ってくる。

「まぁ、少しは。藤ねぇ、さっきの話だと魔術師しかマスターになれないらしいじゃないか。
藤ねぇって、魔術師だったのか?」

「ふぇ?」

気のない返事、手にはみかん。
ほんとに藤ねぇ分ってるのか?
命のやり取りするんだぞ、ったく。

「魔術師だったのかって聞いてるんだよ。
なぁ、藤ねぇそうなのか?」

うーん、と考え込む藤ねぇ。

「おお!魔術師、私は魔術師だったのだ、驚いた〜士郎。フッフッフ」

いや、そんな風に思い出すような事かそれって…
そもそも藤ねぇが魔術師ってのが眉唾もんなんだよなぁ。
そんな片鱗なかったじゃないか…。

なぁって顔で遠坂に合図すると、コクンと頷き返す。
ほらね。

ここは一つ…

「じゃぁ、なんかやって見せてくれよ」

びくっ!
藤ねぇのみかんを食べる手が止まってる。
やっぱり…ガセか?

「や、やぁ〜ね、士郎。そんな大したもんじゃ…」

「藤村先生、私もぜひ拝見したいんですけど」

「え!遠坂さんまでっ!?」

「大河、私も今不安を感じています。ぜひお願いしたい」

「くっ!」

藤ねぇ、逃げ場なし。
苦しそうに唸っている。

「それじゃぁ、やるよ…?」

観念したのか、藤ねぇはのろのろと新しいみかんを取り出した。
まだ食うのかよ。

「えっと、ほんじゃぁ、えいっ」

そう言って、藤ねぇが取り出したみかんは…

ぱこっ。
皮だけが、綺麗に花びらみたいにむけた。

…は?

なにそれ、これがまじゅつってやつですか…?
俺がジト目で睨んでると

「す、すごい…!藤村先生がここまでの使い手だったなんてっ!?」

遠坂さん、なんで誉めるの?

「うん、大河。あなたは私のマスターだ。安心して背中を任せられます」

って、嘘。これって凄いことなのですかー?
俺があっけに取られているのを見て、遠坂が

「あららー。衛宮君はいまの魔術の凄さが分ってないみたいね?」

なんて言ってきやがった。
そんな、だってみかんの皮を剥いただけじゃん。
手で剥けば良いじゃないのか?

「シロウ、いくら大河の弟のような貴方でも、マスターを馬鹿にすることは許さない」

ってセイバーさん、ご立腹のご様子。
なんでさ!?

「ちょっと、ちょっと待ってくれ。今のってそんなに凄いことなのか?」

「はぁ〜、物分りの悪い衛宮君に分るように、説明してあげるわよ。
いい?
まずは固有時間結界を用いて、時間を限りなく止め、
まぁ、この場合は藤村先生が限りなく早く動くことで私達が遅くなったということね。
そして、カマイタチのような真空の刃で、手加減しつつみかんの皮のみを切り、
そして、最後は程よい−4℃で冷凍みかんを作ったというわけよ…これはもう魔法の領域ね…。
ただ、手間をかければ出来るから、やっぱり魔術なんでしょうけど」

………

ペチペチ。

確かに冷凍みかんだ。
ああ、給食を思い出すよ。


「更に言えば、大河は水圧か何か使ったのでしょう…、みかんの筋が綺麗に取り除かれている…
恐ろしい人だ…」

そういいながら、セイバーは冷凍みかんを口へ運んでいる。
もぐもぐ、こくこく。
…可愛いなぁ。

ええっとそうじゃなくて…、それじゃあ、やっぱり藤ねぇは――――

「そう、士郎、分ってくれた〜?」

なにさ、そのはにかみ笑顔!!
う、うさん臭っ!
なんで今更、確信に満ちてるんだよ、藤ねぇ。
てか、なんかむかつく…。

「そういや、魔術は親父に習ったのか?」

「うん。体を引き換えに」

「ぎにゃー!」

お、親父の理想が、おれの正義の味方が…

「はぁ、惜しい人を無くしたわ…。
最後が腹上死だったなんて…」

と、藤ねぇは遠くを見つめて溜息をこぼす。

仇はあんただったのかっ!!

おとうさーんっ!
縁側の儚い微笑みは、疲れていただけなのか?
葬式の時、藤ねぇがツヤツヤしていたのも?
もう、涙が止まらない――――

「まぁまぁ、シロウ。青臭い青春の涙は、湿ったエロ本といっしょに草むらに捨てておくとして…、
ここに10年前に預かった、恐らくあなた方への手紙があります」

と、セイバーは俺の肩をたたいて朗らかに言ってきた。
エロ本といっしょにってお前…

「んなっ!?セイバーは10年前にも、こうやって召還されたのか?しかも親父に…!?」

「ええ。その時に次のマスター達にと、預かった手紙があります」

カサカサ…
なにやらセイバーが懐から封筒らしきものを取り出している。
懐って言うか、胸元から取り出しているが、こりゃ、エロい…

「ちょっと衛宮君、なんで腰浮かして、覗き込もうとしてるのよ?」

「もぅ、シロウ。体に興味があるのでしたらそう言っておいて下さい…」

セイバーが気のせいか少し頬を赤らめていた。
…うそ?
いや、人間正直が一番だよな、やっぱ。

「ちょっとセイバーあんた何言って…」

「いえいえ、凛。キリツグも十年前は凄かった。3度の食事後は必ずと言って良いほど…。
まぁ、しょうがないので…」

「セセ、セイバー俺っ――――」

「よく、飛び掛ってくるたびに、こうして矯正したものですよ」

と、取り出したのはさっきの不可視の剣にタオルをぐるぐる巻いたものでした。

「セイバーちゃん、それって?」

「ええ、これで股間をカキュンと打てば暫くはおさまる発作のようです。
よくキリツグは股を抑えて言っていました。
『僕はフェニミストなんだよ』と」

どこがどうフェニミストかは分らないけど、
親父は意外とタフだったんだなぁ。

「で、シロウ、興味の有無の確認ですが…」
「ありません」
「そうですか…。残念」

と、巻いていたタオルごと、どこかにしまうセイバー。
もうしません、もうしません、カキュンだけは勘弁してください。

「で、話を戻すけど、その手紙ってなんなの?」

「ああ、そうでした。ついカキュンとする方向に進んでしまいましたね。
これですが…」

カキュンが怖いため、遠巻きで見ている俺。

少し汚れてはいたが、意外と達筆な字で書かれた
『マスターになった者へ』
という封筒がちゃぶ台の上に置かれた。

「へー、切嗣さんってそんなもの書いてたんだ?」

「はい、切嗣は筆まめな人でしたから…。
それに、バラエティー溢れる人でした。
よく他のマスターには新聞や広告で切り抜いた文字を張って手紙を作っていましたっけ…。
あの時のキリツグ…少年のようにはしゃいでいました…」

遠い目をして、懐かしそうにセイバーが語る。
もう、親父の笑顔が思い出せない…

「ああ、それ私も良くやるわよ。
定規の線だけで文字を書いて手紙を送ったり、封筒にカミソリの刃を仕込んだり…」

「ほぅ、凛もなかなかこだわる方なんですね。
キリツグなんか、『やっぱり筆の走りが違うね』って言って
猫のし…」

「わーわー!!もう分った!分ったから、手紙を読んでみよう、な?そうしよう、そうしようよ〜!!」

「うわっ!?士郎泣いてるの?フフ、お父さんのこと思い出しちゃったのね、よしよし」

藤ねぇが俺の頭を撫でてくれていた。

勘違いもいいとこだ、藤ねぇ。
これ以上俺の美しい思い出を、黒い思念と鮮血で染めないでくれ…

「それじゃあ、読むわよ〜」
むせび泣く俺を無視して、藤ねぇが勝手に読み始めていた。


『マスターになった者へ』

言っておくが、僕はフェニミストだ。
だから股間にカキュンなどという暴挙はありえてはいけないと感じる。
それに女性のくせに君は大食らいすぎる。過食症は病気だぞ。
セイバー、君はもう少し…



「セイバーちゃん、なんかこれ恨み言から始まってるんだけど…」

フェニミストを自称しておきながら、行き成りの差別かよ、親父…
手紙から目を上げて、汗をたらしつつ藤ねぇがセイバーに聞いてくる。

「端折ってしまいましょう」

「う、うん…」
切嗣の恨み言を無視するのは少し同情したような藤ねぇ。
しかし、笑顔で切り捨てるセイバーに負けたようだった…

藤ねぇが、手紙を目で追って、恨み言を端折っていった結果、
50枚近くあったそれは、残り1枚になっていた…
一体何があったんだ親父!?
ひょっとして、セイバーって悪い子ですか!?

「えっとなになに…、」

〜最後に〜

これを受け取ったということは、セイバーが君に召還されたという事だろう。
合掌…。

さて、済んでしまった事は仕方がない。
もし君が男であれば、股間を抑えて戦うことは必須だろう。
安心しろ、僕もそうだった。
これはしょうがない事なのだ。万歳。

しかし、女の子であれば話は別だ。
むしろ連絡して欲しい。電話番号は、
○○○−××××−△△△△だ。
いろいろ力になれると思う。
魔力不足や夜の一人寝が不安な場合は確実に力になれる。
なにせ僕はフェミニスト、決して下心があるわけではない
事もない。

連絡を待っている。


P.S セイバーは基本的に4合半は食べる。
   そして、寝る。また食べる。
   だが、それも許せてしまえる可愛さがある。
   しかし、気をつけろ。
   あいつは常に股間に…


藤ねぇは、黙って封筒に手紙を仕舞った。
…なにを伝えたかったんだ、親父よ…

「藤村先生、教会に行きましょうか」
いち早く、役目を済ませたいような遠坂。

「登録だっけ?行こうか」
眠たげだが、しょうがないといった藤ねぇ。

「私は待機していていいですか?眠いので」
はっきりと己の欲望を口にするセイバー。

「藤ねぇ、俺もなんかいろいろ考えたいから、行かなくていいだろ」
黄昏てきた俺。

「やっぱり明日にしようか?遠坂さん」
やっぱりめんどくなった藤ねぇ。

「そですね。今日は泊まっていって良いですか?」
もうどうでも良いといった表情の遠坂。

「それでは、おやすみなさい」
セイバーは事なしげに居間から出て行く。。

こうして、一同はテンションが上がらぬまま、未登録で一夜が更けるのであった。






「くっしゅん!」

「■■■■■――?」

「うん?そうだね、お兄ちゃんたち遅いね」

「■■■!」
「うーん、寒いけど、もう少しだけ待ってみよ?」

「■■■■■―――――」
「ううっ、今日は一段と冷えるね、心配してくれてありがとう」



そして、白い少女と黒い巨人はまだ寒い風の中、
健気に待ち続けるのであった






後日、風邪を引いた少女が殴りこみに行くのは
余談である。






次回予告!!
大河&セイバーの前に現れる天才魔法少女ロリッ子イリたん。
「みんなクルクルのパーになっちゃぇ〜♪」
咲き乱れる恐ろしい魔弾の雨!

「ふはははは!見よっ!これが魔法剣!!」
冬木の虎の魔剣がうなる―――!

「藤ねぇ!待ってろ今虎竹刀をっ!ここに――――」
明らかになる、士郎の隠された力!

「士郎、飯が美味いのが唯一のとりえなのですから、お代わり!」
セイバーの叱責が厳しく士郎へ放たれる!

以下次号
ふぇいと/すていないトラ 第2話
確かに神父は黒かった
に好ご期待!!



−後書き
 長編の続きも書かずになにをやっているんだろう。
 でも、やってしまったからにはしょうがない!
 長編は今週末だ!仕事がいけないんです!
 脳は癒されたがっているんです!

 すいません。
 あっちのSSはきっちり書き上げます!
 でも、ギャグも書きたかったんですよ(泣

 注:カウントが1個でもつけば自動的に作者が書き始めます。たぶん。

2: 唄子 (2004/04/02 01:58:03)[orange.peco.chipi@m2.dion.ne.jp]

チュンチュンッ――――


窓の外から、遠慮がちな朝の光が入ってくる。


遠くの方でスクーターの排気音――新聞配達のものだろうか、
遠ざかって行くように聞こえてくる。



俺、昨日は一体…。


ふわぁぁぁ…それにしても眠い…。


回らない頭で、昨夜から寝る前までの記憶を呼び起こす…


昨夜――――あの後、遠坂がだるいので泊まっていくって言うもんだから、
客間に部屋を準備してやったのが10:30くらい…。


藤ねぇを見送ってった後、居間でお茶を一杯飲んで、湯飲みを片付けたのが11:00。


そして、もう一人の客人、金髪の少女に休む為の部屋を案内しようと…














「う…ん?あぁ…朝は早いのですね、シロウ」

半身を起しかけていた、俺の肘にサラサラとした髪がかかる感触が…








そうして、昨夜の記憶が一気に甦っていた-――――!!!



「ん♪シロウッ、昨日はごちそうさまでした…」

腕に頬ずりしてくる、無邪気な金髪さん。








パパ、僕汚れちゃった…












『ふぇいと/すていないトラ』
     そのに







衛宮家の朝は早い。
大体、俺が起床するのが朝の5時半くらい。
そして、後輩の桜がやってくるのが、6時前後。

そのまま、朝飯は俺や桜によって作られ、
最後に藤ねぇが7時過ぎにやって来てから朝食が始まる。


今朝もその習慣はいつもどおりだった。

ただ、違うといえば、日本食党の俺が
『ハムエッグ、コールスロール、アサリ入りポタージュ』
なる、洋食風モーニングを作っているところだろう。

理由は、まぁ単純。

今朝起きて、横にいた人が

「朝は、洋食がいいのですぅ〜…もう一眠りするのでよろしくぅ…おねがいしま…むにゃ」

と、むにゃむにゃ甘えてきたからなのですが…


ポッ。
や、やばい、目玉焼きがカチカチになっちまった!

半熟にするつもりだったそれを、ボーっとして焼きすぎてしまった事に
慌てて火を止める。
まだ、なんか顔がカッカするのがわかる…

放っておいても、ついつい昨夜のことを思い出している…、
昨日、俺は…








昨夜、台所で湯飲みを片付けて、はたと気づいた。

そういや、セイバーの奴…
寝るっていって出て行ったけど、どこで寝るつもりなんだ、と。

そして、居間を出て行ったあいつを探して回ること数十分-――


どこにもいなかった。


そりゃ確かに我が家は、俺が一人で住んでいる事を差し引いても、
馬鹿みたいに使ってない部屋がある。

でも、どれも掃除もそこそこ、いきなりは泊まれない。
さらに言うなら、季節は冬の終わり。
とてもごろ寝できるような季節ではないのだが…。

それでも遠坂の部屋以外、すべて見て回ったが
どこにもセイバーの姿はなかった。

「まぁ、あいつ確か、藤ねぇの事マスターって呼んでたし…。
勝ってに藤ねぇについて行ったのかもなぁ」

と、一人納得して自分の寝床に行く事にしたのだった。




俺の寝室-――、というかまぁ私室なんだが、寝る時意外には
あまり来ないので、寝室のような部屋。

その入り口を開け、夕食前に敷いておいた布団をめくろうとして、

手が止まった。


ふるふる…、なんかいる!!


なんかは、俺が布団をめくろうとしている事に気がついたようだった-――



「んぁ?……ほほぅ、寝込みの女性を襲おうなどとは、流石は切嗣の息子と言ったとこでしょうか?
フッ、残念でしたね。私には変体フェニミスト撃退宝具『股間カキューン棒』がある事を
忘れていたみたいですねっ!
極彩と散りなさい」



ひっ!
風を切るように股間に迫るそれは

死を暗示していた――――!

ぐっ!思わず目をつぶる-――
衝撃に備えて、股間に手を当てて…







股間を握る手は汗ばんでいたが、
いっこうに衝撃は来ない…。



片目だけ開けてみてみると、
セイバーは、ん?っといった顔でこちらを見ていた。

「…士郎、言い訳はしないんですか?
キリツグは良く悪あがきしていたのですが…」


親父はなんか俺の想像とかなりかけ離れた人みたいだったが、
まぁ、それはともかくとして、

「いや、そりゃまぁこれは誤解だけど、セイバーも寝てるときに布団めくられたら
ビックリするよな…女の子なんだし。
まぁ、だからしょうがないと言えば、しょうがないのかと…。
ごめん」

俺は、やっぱりセイバーに対して悪いと思ったから謝る事にした。
だって、女の子だぞ?
普通はビックリするだろうし…、股間を打たれるのは勘弁して欲しいけど。


俺の胸中を知ったか分らないが、
セイバーがスマキ棒を仕舞ってくれていた。

「こちらこそ、すいませんでした。
シロウはキリツグの息子だからてっきりそうかと…。
どうか今までの非礼も許してもらいたい…」

そう言って、セイバーはペコリッと頭を下げてきている。

「い、いや、分ってくれれば良いんだ。
それに俺と親父は血は繋がって居ないし…、そのそういうところは
似てないと思うから、どうか警戒しないでくれないか…」

えっ!?とセイバーが驚いた顔している。
まぁ、普通はあんまりありえないだろうからなぁ、養子って。

今後の付き合いもあるだろうからと思って、セイバーに俺の事情を少し説明した。
火事で両親を無くしたこと。
その災害から切嗣が救ってくれたこと。
いまは一人で生活していること。


セイバーは黙ってそれを聞いてくれていた。
俺が話し終えると、優しい笑顔で返してくれた。

「シロウはまっすぐに育ったようですね。
キリツグも貴方にとっては素敵な父親だったのでしょう」


っ!
なんだかくすぐったい気持ちになってしまう。

さっきまでのはっちゃけぶりから、こんな笑顔見せられたからだろうか…。

彼女が本当に美しいと改めて認識してしまった。

「フフ、そんないい子育ったシロウにはご褒美を上げないといけませんね?」

「へ?ご褒美だなんて、貰えないよ。俺セイバーに別に何もしてないし…」

「まぁまぁ、良いではありませんか…」

そういってにじり寄ってくるセイバーさん。
い、いや、そりゃ近すぎますよ、ちょっと…
な、なんで照明をおとすの?
いや、まて、待つんだってぇ――――――――!!







で、気がついたら6回戦を終えて、気を失っていました。
すいません、半分は確信犯でした、てへ。




意識は、また現実へ、俺は作った朝食を皿へ移す。


しかし、こんな事になってどうやってこれから顔をあわせていけばいいんだ?
そう考えながら、ポタージュの味見をしようと、お玉ですくって舐めようとした時――――


「先輩、おはよう御座います」

と桜の声が、背中に掛けられた。

「ぶっ!!」

口に含んだ、ポタージュを思わず吹き出してしまう。
あぁ、なんてお約束なんだ、俺!


こっちを尻目に、桜は驚いて俺の顔を覗き込んでいる。

「ちょ、ちょっと!?どうしちゃったんですか、先輩?」

おーいえい。
桜、こんな事考えている時に背後から一声はビビルもんさ。
それが女の子なら尚更なんだけど…。

「いや、なんでもない。いきなり桜の声がして少し驚いただけだ。
ん…、今日はいつもより早いんだな。どうかしたのか?」

今の壁掛け時計を見た後、桜に話し掛けた。

「そんなっ!早く来たらいけなかったんですか!?」

「い、いやぁ、そういうことじゃなくて、どうしたのかなって?
ほら、だって桜いつもはもう10分くらいしてから家に来るじゃないか、だから…」

桜のリアクションにビックリした。
まさかそんな風に返してくるなんて思ってなかったし…。

「ふふふふふふふ…勘ですよ、勘。
私の直感がここに早く来た方が言いと…蟲のしらせでしょう、きっと…」

心なしか『虫』のニュアンスが違うように聞こえてしまった。
なぜか、顔の上半分が暗くなって、桜はぶつぶつ仰っている。

うーん、危ない。
普段がそつのない出来た女の子だけあって、こうなった桜は何時も慣れないなぁ…



そうこうしている内に、ポタージュもいい感じに煮詰まってきたようだった。
とりあえず、火を止めて蓋をかける。
よし、朝食完成〜!



とりあえず、ぶつぶつ言い続けている桜に声をかけて(勇気がいるが)
居間でお茶でも飲もうと促したのだった。








そんで、それから桜とY談していたら、遠坂が起きて来たのだった。





ああ、幻想よ、グッバイ!

遠坂さん、朝はダメダメのようです。

例えるならば、眼はスーパーの鮮度の落ちた魚。
唇はカサカサで、ストロー一本分くらいの空洞から
ヒューヒューと音が漏れています。

「衛宮ぁ、にゅうにゅうは、にゅうにゅうは〜」

きたよ、必殺遠坂語!
もはや人知を超えた発音で牛乳を所望する我が校のヒロイン。

哀れに思い、冷蔵庫から取り出して、コップに注いでやる。

「ほら、遠坂。お前、朝はだめなんだなぁ」

有無を言わず、手に取り飲み干す遠坂嬢。
腰に回した手が、未来の彼女がいい女になる事を約束している様だった。

きゅぴーん!
心なしか、遠坂の眼が光を放つ-――

「おはよう、衛宮君、桜。」

遠坂復活です。

「な、なんで遠坂先輩がここに!?」

桜がいまさら驚いている。
まぁ、確かにさっきまでのあいつはなんか遠坂じゃなくて、
赤いイソギンチャクみたいだったもんな、ゆらゆらしてて。

「先輩、その、遠坂先輩は昨日こちらに泊まってたんですか?
てか、もうやっちゃったんですか?
抜かずの3回ですか!?
ツバメ返しに仏壇崩しデスカ!!?」

そうか、桜は事情を知らない!
その上妄想しすぎている!

昨日まで、こいつが家に来るなんて俺も思いもよらなかったし。

しかし、桜に本当の事情も言うわけにはいかないので、
俺はの味噌フル回転で言い訳を考えていた。


……
………

所詮は俺。とっさの言い訳なんて無理。
合掌。

黙っていると、桜の顔色が見る見る影に覆われていく、そんな気がする。
えろ妄想しているのか?
怖いな、今時の女子高生は…抜かずの…だなんて。
俺はしっかり出したぞ!
6回も。



視界の右下にはHeaven’s Feelの文字が浮かび上がる…なぜに?


いや、よくよく目を凝らすとDemon’s Feelだった!

だから、なんでさ…?




あわや新シナリオ突入というところで、-――助けが入った。


「おはよぅ〜。あら皆そろってるわね。桜ちゃん、遠坂さんには私が泊まっていってって言ったのよぅ。
夜も遅かったしね。遠坂さんにはちょっと進路のことで相談に乗ってたの。
ここを選んだのは、落ち着いて話もできるからなのよ、私の家じゃごっついのがウロウロして…」


うまい!良くやった藤ねぇ!
普段のボケキャラとは打って違った名演技!
なんか見てて寒イボ立っちゃったぞ。

「ええ、藤村先生、昨日はありがとう御座いました」

なんて言って、遠坂は藤ねぇに合わし始めてる。

「そうだったんですか…、すいません。先輩、遠坂先輩も…いきなりで取り乱しちゃって」

取り乱すと48手の知識が増えるのか、桜よ。

いつもの笑顔に戻ろうとしている桜。
万事がうまくいくかのように思えた。


が、やっぱりそうはいかないのが人生なんだね。



ちらっと視界を掠めたそれは、なんとも言えない格好ででウロウロしているのだった。

もう鎧は着ていない。

代わりに、勝手に借りたのであろう、俺のシャツ、ぶかぶか。

下は素足。

高校生の俺には、まさに夜の聖女張りのセクシービームを醸し出している
裸ワイシャツセイバーさんがご降臨されたのだった。


そして目が合った瞬間-――

あいつは爆弾を投げてきたのだった。




「ああ、シロウ。今朝は洋食をと『寝床』で言ったのを叶えてくれたのですね♪
ありがとう御座います。フフッ、それとも昨夜のお礼でしょうか?」

と。





瞬間、大気は凍った。
ここはいまや零下の世界。
けっきょく南極探検体-――――





ほえっと言う表情から、だんだん考え込む藤ねぇ。

桜は死んだような眼で、顔に刺青みたいな影がちらほらと…、早いんじゃないのかそれって?

へぇ、っと遠坂は冷たく見つめてくる。


「ええっと、違うんだ。そう、皆誤解してる…」




「士郎、あんた昨日の夜…、まさかセイバーちゃんと…」
「先輩、その人は…ダレデスカー、ダレデスカー…駅弁、松葉崩し、乱れ牡丹…」
「衛宮君、ちょっと軽率なんじゃない…?」





「ああ、シロウ。幸せにしてくださいね」

ピト。
そんな状況無視して、幸せそうな隣の人。

もはや、明日はない――――――!!!

右ポケットには冷たい感触、『七ツ夜』がっ!
先代、貴方の形見を使う時が来たのですね!!

さぁ、殺しあおう-――――

眼鏡がないのが残念だが、俺が覚悟を決めて絶倫眼鏡に変身しようと


そう覚悟した時-――










「内輪もめは後にしてくれる?ケホッ、ケホッ!」


可愛い少女の声がこだました-――――

振り向いた庭先には、

白くてちいさいのと
黒い大きいのがいた。


二人とも、おそろいのマスクをして――――――







「あんた達、一体なんなのよ?てか黒い人マスクの紐伸び切ってるじゃない。
顔でかっ!
なんかちっこいのは、ブルマーなんか履いちゃって!!
お腹が痛いんなら、ジャージでも着て見学でもしてなさいってーの!がー!!」

不機嫌遠坂、八つ当たりショー開園。

「そうです、今はそれ所じゃないから帰ってください!
先輩と私は夜の乱れ雪月花決めるんですから!!」


桜―、おれ頭に豆電球でも灯らない限りそんなの出来ないぞ。




「なんで昨日は教会に来なかったのっ!?
私も、バーサーカーも風引いちゃったじゃない!!
お兄ちゃんのばか!うんこ、うんこ、やーい!!」

「■■■!■―――■!!」

放っておいたらしびれを切らしてか、白い女の子と黒いマッチョが吼えて来た。



かちん!
うんこは良いとしよう。




■■■ってなんじゃい!!

馬鹿にし腐りやがってぇぇぇぇ!!

きぃぃぃ!!先代から貰ったドスは飾りじゃないぜよ!

と、俺が先代から教わった17分割張りの殺人術で黒いのに飛び掛ろうとするのを
セイバーが制してきて、

「シロウ、落ち着いて。貴方が■■■でないことは私が保障します。
私が身を持って6回も体験したのですから…ポッ」

と、セイバーがフォローなんだか、後ろの人たち煽ってんだか分らない慰めを言ってきてる。

「ろ、6回もっ!?士郎!!おねーちゃんはそんな絶倫超人に育てた覚えはありません!!
それになによ、そんな金髪小娘なんかにほだされちゃってさ!
お姉ちゃんは悲しいよ!あれだけ、部屋のいかがわしい雑誌を私の生写真と摩り替えてあげたのに!!」

「あんた、なんばしょとねぇ――!!一成が部屋来た時見つかって、1週間は目を合わせてくんなかったぞ、
この馬鹿ドラァ!!俺の青春の一冊返してくれ――――!!」

「先輩、私のでしたら…」

「ああ、それは貰おうか。桜、あとで撮影会だ!」

と、歯を光らせて答えておく。
俺は基本的に女子高生が好きだし。

「あんたっ!?見た目と違って実は、むちゃくちゃムッツリだったの!?
このムッツリ士郎!!!」

「うっさい!貰えるもんは貰っとくったい!そぎゃんムッツリって言うなっ!!」

ついつい地の方言が出てしまっている俺。
おやじ、博多っ子だったからなぁ。

「お兄ちゃん私は…?」

「ああ、君はブルマーで青春だからOKだよ!あとでお兄ちゃんとお医者さんごっこ…」

グべし!

セイバーの肘鉄がわき腹を捉える。

「シロウ、昨日の夜のこと忘れたわけではありませんよね?」

すいません、調子に乗ってました。
もうしません、もうしません。

セイバーに何時の間にか尻に引かれていた。

「■■■…?」
黒いのがもぞもぞしているのが目にはいる。


「きもっ!!!月刊サブにでも投稿しやがれってんだ、この黒キムチマッチョめ!!」

「■■〜」

黒い変体は、涙目でうったえてくる。
勘弁しろ、それは無理!

「じゃあじゃあ、おねーちゃんは?」
「トラじまぁ!!てめーはまず俺の青春の一冊を返してからもの言えっ!!」
「先輩、私もブルマーを履きますから!いや、競泳用水着だって!もちろん裸エプロンも…」
「ムッツリ士郎、ムッツリ士郎…」
「ねぇ、バーサーカー。お医者さんごっこってなんだろうね?」
「士郎は私にメロメロなのだから、他人に出る幕はありません、ねぇシロウ?」
「■■■―――――!!!」

こうして、衛宮家の縁側と庭を挟んで、泥沼合戦は小一時間ほど続いた――――















「で、聖杯戦争をしに来たって訳ね、貴方たち…」

「フフン、お兄ちゃんがマスターじゃなかったのは意外だけど、
貴方なんかにバーサーカーが倒せるのかしら?」

「フッ、これでも冬木のトラの二つ名は伊達じゃないわよ…」

「ベーっだっ。自分で二つ名なんて言う人なんか、大概やられキャラなんだから!
やっちゃえ!バーサーカー!!」

それは風林○高校の青いイカヅチの方の事だろうか…?

いま、正に冬木のトラこと藤ねぇと、
狂気のサーヴァント-――バーサーカーが一触即発のまま対峙している-――




それは、いいのだが。

「セイバー、聖杯戦争はサーヴァントがマスターを守るんじゃなかったっけ?」

「ええ、大概の場合は。しかし、私のように愛を見つけた雛鳥は羽ばたくことを許されるのです」

「そうなのか、遠坂?」

「知るわけないじゃない、このムッツリ」

遠坂がすっかり遠い人になってしまったようだった。
昨日はあんなに…、いやそんなに仲良くはなっていなかったが。
ちょっとがっかり。


ちなみに、桜は撮影用のコスプレを買いに出かけてしまった。
制服で新都に出て行ったようだったが、補導されたらどうするんだろう。

「ちょっと荷物を見えてもらうよ」

交番で開かれた買い物袋には、妖しげなコスチュームで一杯…


桜の無事をなんとなく祈っておく。



イリヤ…
あの白い子は、ちゃっかりコタツに入ってきていた。
みかんをもぐもぐ食べている。

親の躾が心配だ。まぁ、可愛いからいいけど。





そんなこんなで、深山町では正午を教えるサイレンが鳴っていた。



それを合図にぶつかり合う二人-――!


バーサーカーの振るう大剣を、なんとか竹刀で弾く藤ねぇ。

いや、、なんとかって時点でもはやおかしいのだが…。

バーサーカーの岩みたいな剣が藤ねぇを潰そうとした-――
その瞬間-――







冬木のトラは暴走した。

見つめる目つきは、修羅の如し。

なぜか、藤ねぇは『誠』の一文字を背中に背負っていた。

「フッ、調子に乗りやがって、この筋肉ペドロリ野郎…。
あたし達、冬木の虎が背負ったものはそんなロリッ子なんかじゃねぇ。
即ち!ロリ・即・斬だ…!!ばかやろうっ!!!」

上半身の撥条(ばね)のみで繰り出される恐ろしき一撃―――!!

ぼすっと、藤ねぇが投げつけた竹刀がバーサーカーにささった。

うわぁ、痛そう…

その瞬間、竹刀についたクマちゃんストラップが怪しく光っ――――





カカッ!!!






衛宮邸の庭が爆発しました。

その後、駆けつける消防車と救急車。


俺とセイバーは藤ねぇの火遊びであると、警察に事情説明。

警察にしょっ引かれていった藤ねぇは、朝まで帰ってこなかった。



そしてその夜は、新たに加わった家族、イリヤ、バ―坂さんたちと水炊きで
歓迎会を楽しく開いたのだった。





ちなみに桜は、やっぱり補導されていて、藤ねぇ同様帰ってこなかった。



つづく


〜なんだか後書き

    仕事が最近遅いから、こんなもんなのか?
    ああ、テンションが上がらないし、筆は遅いしで
    誰か愛をくださいっ!

    と、ぐちりつつ、次回こそおもしろいのがかけますように。
    だんだんギャグから下ネタY談になっていってるような…!?

    これはギャグじゃなかったの!?
  
    突っ込みお願いいたします♪ 
    癒されますので。

    唄子

3: 唄子 (2004/04/06 02:15:04)[orange.peco.chipi@m2.dion.ne.jp]

はぁ。
これで12回目の溜息。

ここは何処かと言うと、警察署の中。
一般的にいうと『豚箱』である。

はぁぁ。
13回目。

「なんで、なんで…いたいけな女の子がここに居るんですか…先輩ぃ〜」

くすん、と鼻をすすって、手元の袋を空ける…

「さくら」

と書いてあるブルマーが一番上にあった。

「あーあ、先輩との撮影会…と称したコスプレラブラブ♪ブッキングがぁ…」


ぎぃぃ――――

奥の扉、入り口のほうで新しい来客の気配…

「ふん、どうせまた薄汚い犯罪者が豚箱に放り込まれるんだわ…。
ああ、先輩、私を早く助けにきてください…。
私、こんなところじゃ一日も持たない蜻蛉みたいな可憐な少女なんですよぅ」

保護者を呼びなさい――といわれたが、
とてもじゃないが私以外に間桐の家にまともな人はいない。
じじい→蟲、変体、粗○○
兄→臆病、変体、粗○○

であるがゆえ、

「衛宮、衛宮士郎さんをお願いします!」

と、取調室で懇願した、もちろん嘘泣きで。
だが、それは十分ほど前のこと。
そう、一晩泊まった上に、
朝方になってようやく衣装を返してもらったのだった。

「ったく、私の衣装を取り上げようとするなんて、日本の警察もおしまいですね!」

と、理不尽に怒る、間桐桜(16) 前科:1件 猥褻衣装所持罪(なんじゃそりゃ?)

そうこうしているうちに、足音は私の牢の前で止まった。

「え?」

顔をあげてみた先には、



蟲爺の腐った笑顔。

「ほれ、桜や迎えに来たぞ」

意外や意外、ここから出れるならもうこの際、蟲でもいいやと
思ったら。

「なに言ってるんだ、爺さん?あんたも入るんだよ。もう、ボケちゃってるのかな?」

と、若い警察官はじじいを奥へ押し込める。
良く見ると、じじいは…










裸だった。

「ああ、牢が少ないから相部屋だけど我慢してね。その爺さん、新都を裸でうろついててさ…」

ぎぃぃぃ、がちゃん。
カツン、カツン、カツン…
遠ざかっていく足音。






間桐のじっちゃんは、嬉しそうに

「桜や、裸健康法はやっぱり新都じゃな」

と、ボケていらしゃった。




「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」









『ふぇいと/すていないトラ』
     そのさん






じじいはその後何度か話し掛けてきたけど、
ことごとく無視した。

あんな変体じじいと話す口はもたないのだ。

それからさらに10分後。

じじいが蟲で手まぜしているのにも飽きたのか、
いびきをかいて寝始めた頃、

ぎぃぃ――――
カツン、カツン、カツン…
また誰かの足音。


「ああ、今度こそ先輩ですね!
あぁぁ、もう私、危うくじじいに脳みそまでヤラれる所だったんです!
先輩ぃ、衛宮先輩ぃ〜うーう」

伝う涙を拭おうともせず、
鉄格子に顔を近づける私…。
ふっ、可憐だわ…。

そして、案の定目の前で止まる、二つの影。

一人は先ほどの、若い警官と…

「は?」

なぜか兄が居た。

「さ、桜!?お前こんなところで何やってるんだよ?家にも帰ってこないし
衛宮のところに連絡してもいないし…心配したんだぞ!」

「ふん、兄さんなんかには関係ないでしょう?
それよりも、なんで兄さんまで…?」

警官は、私を哀れむようにして…
「ああ、なんだか知らないけど、こいつも新都を…」







ああ、やっぱりなぜか兄も裸だった。






裸の兄はそのまま奥に居る、蟲じじいに駆け寄る。

「おいっ!じじい!お前が言うとおり裸でうろついたけど、マスターになれないじゃないか!?
ったく!このボケじじぃ!!」

「んあ?おうおう慎二かぁ。それは難儀なことじゃったのう…。
おお、きっとそれはお前が粗○○だからじゃよ」

「なんだって!?ばかなっ!僕は○チンなんかじゃない!
そうだよな、桜っ?」

振り向いた瞬間揺れるアレ。

「エッチなのはいけないと思います、兄さん。
アユアユ、適当に噛み砕いて、新都に撒いて来なさい」

私から黒い影が浮上する。

「ほっひ?」
「さ、桜ぁ、ち、ち、ち、ち、ちょっと待って」

ぱくり。


二人を飲み込んで、すぅっとアユアユは消えていった。


「はぁ。間桐の人間って一体…。ふぅ、もっとも遠坂に居ても胸はえぐれるだけですけど。
あの姉さん見たいに」

さり気なく毒舌桜。


アユアユ―――本名アンリ・マユ。
私のスタンドとでも言うのか。最近目覚めたのだが、使い勝手がよく便利だ。

まぁ、お腹がすいて近所の猫を食べるのは玉にキズだが。


はぁ、先輩まだかなぁ。

桜は体育座りで、頬を膨らませる。


もちろん、ビュジュアル的効果を狙っての物だったが―――――――








「ええ、そうよ。士郎なら今学校に行ってるって言ってるでしょ?
…はいじゃぁね」

ガチャン。

まったく、今朝から4度目の電話で、
やっと諦めてくれたようだった、あの女は。

「もうぅ、士郎は学校だって言ってるのに、あのバカ女」

まぁ、なんか最後の電話は、お願いしているというより、
脅迫じみてはいたが…

『先輩が迎えに来ないなら…フフフ…いいんです。いいんですよ?
新都から善良な警察官が1人、2人ほど消えるだけですから…ウフフフフ』

と。
全くもって意味不明だ。

とことこよこっ…

そうして、小さな女の子は居間にある電話の受話器を戻し、
ぺたんと、縁側へ座る。

今日もいい天気で気持ち良い。


目の前の風景さえなければ。



白い大きな割烹着。
お腹の部分には、大きく刺繍で『バ―坂さん』と書かれている。

気色悪い程ご機嫌に、筋肉隆々の大男が、
額に汗を光らせて、洗濯物を干していた。

「■■■■〜♪」

手際がいいのは何故だろうか?

そんな疑問を抱きつつ、
時折、作った少年の事を思い出しているのだろう、
目の前で、割烹着に鼻を寄せ

「■■■――――――!!」

遠吠えするサーヴァントを、
船酔いするような気持ちでイリアは見つめていた。

「ロリペドの次は…サブなのかしら…?」







「どうだい?迎えにきてくれるって?知り合いのお兄さん」

心配そうに若い警官が、女の子に話し掛ける。

が、一瞬でその顔色が凍る――――

「せっかく、せっかく…カツアゲまでして買った衣装でフヘヘヘヘ!
ってあんちきしょうめ!愛しさ余って、肉欲100倍!!」

流れるような動きで、若い警官に飛びつく桜。

「ひ、ひっ!」

そのまま、雪崩式飛びつき腕ひしぎ逆十字固めを決める、桜theデスマスク!



ぐきり。
何かが砕ける音に

にやり。

と、暗黒桜さん。

「待っていてください、いや…待たなきゃ知りませんよ、先輩…。
ぐすっ、可愛い後輩を見捨てるなんて、先輩の薄情ものぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

桜の影が膨れ上がり、

その日、新都の警察署を中心に、半径1kmの人が貧血で倒れた。



後に伝えられる、黒い2・04事件である。







「なぁ、爺さんやっぱ裸はいいなぁ」
「そうじゃろ、そうじゃろ…やっぱり新都はブラブラじゃぁ!」

嬉しそうに、ブラブラさせるボケ老人とアホ孫は
アユアユに吐き出されたおかげで、ちゃっかり助かったりしている。

そうして警官のいなくなった新都を、我が物顔で練り歩いていた、





深山町で捕まるまで。





一方、藤ねぇは―――――――

「んぁ…むにゃむにゃ」

深山町の牢で、臭い飯をたらふく食って寝ていたりした。




次回!

裸の老人と青年を包む幻想的な光!

蟲G「あれはっ…」
慎 「なんなんだっ!?うわっ…」

警官「な!?おまえら、…はだかっ!?」


激しいにらみ合い―――
「先輩、登場人物が全員18歳だといっても、やっていい事と悪いことが…くわっ」


熱く激しいバトル
「くっ!」
「フッ、お前のような奴は、所詮お医者さんごっこ止まりにすぎん…」
「ふ、ふざけるなぁ!俺はっ…お前を超える!」
「シロウッ、それは犯罪です!!」


そして目の前に現れる、神秘――――

「食らえ!これがお姉ちゃんの必殺技ぁぁぁぁ!!
ブロークンファンタズム(汚されたセピア色の思い出)!!」

「俺のビニ本に火をつけるなぁぁぁぁぁ!!」

好ご期待!!

注:ジャ○プばりの適当な予告です


あとがき

長編書き終えて、脳内がマーブルファンタズムです。
びばっ!妄想具現化!

何気に、先に進んでいないですが、長編と異なり
作者はいたってホクホクです。

次回はセイバーさん、学校ではっちゃけるの巻きでお遭いしましょう♪

感想をくれた方、読んでくれた方に幸在らん事を。

唄子

4: 唄子 (2004/04/08 02:04:44)[orange.peco.chipi@m2.dion.ne.jp]


遠坂とは校門で別れた。
季節はまだ冬――寒い首元を隠すように、
滑るように教室に入る。

「おっす、士郎」

「おーっす、寒いな今日も」

クラスの友人と適当に挨拶して、席の横に鞄をかける。

うう、席がひんやりとして背筋がブルルッと震えてしまう。ふるふる…

まだ冷たい手で、だらだらと教科書を鞄から机へ…

「ううう、シロウ。教室に暖房は無いのでしょうか?」





は?


「こう寒いと、体が強張っていけません。
そうだ、もう少し席を近づけても良いですか?良いですね?」

がたがたっ――

なぜかぴったりと付けられる隣の机。
そしてほんのり暖かい肩が、俺の肩へぴったりと。

「おーい!今日の日直〜!!」

「あ、はいっ!」

「これ日誌ね。あと3限目自習だから、先生がプリント配ってくれって」

「わかりました」

パタパタパタ…

「シロウ、葛木先生の授業は自習になりましたから、体育倉庫で…フフフ♪」

と、またぴったり寄せられる肩口。

…なんで制服持ってるんだ?
ってか、なんで葛木先生知ってるんだよ?


「おはようでゴザル〜衛宮殿。
おお!セイバーちゃんは今日も可愛いでござるなぁ、にんにん」

「後藤君ったら」

「セイバーちゃん、昨日の宿題してきた〜」

「ええ、ちゃんとやってきました」

「お願い写させて〜!!」

「はぁ、しょうがないですね。次はありませんよ」

「やたっ!サンキュウ!」


………

みんな…

……なんでさ?








『ふぇいと/すていないトラ』
     そのよん
 






ん?そういや昨日から藤ねぇ見てねぇなぁ…
朝帰ってきた気配もないし…。
いや、居たかも知れないけど、なんだか昨日から朝が凄まじい喧騒で始まるから
記憶が曖昧だ。



んで、HRが始まった。



教卓の前には、見た事もない先生…なのか?
派手な赤いスーツに、銀髪っぽい浅黒の男がいた。

タッパがかなりある、180cm以上だろうか――
まぁ俗にいう『ホスト』見たいな男だったわけだが…


「ええっと、今日から藤村先生が暫く来られ無いそうだから、
短い間だが、君達の担任になる…」


藤ねぇ、帰って来られなかったわけか…。
哀れ、塀の中の女。


カツッカツカツ…

黒板に書かれてるのはきっとこいつの名前だろう―――
なかなかの達筆で




『アチャ岡 士郎』





と書いてあった…。

きっとお父さんは美食クラブかなにかの主賓に違いない。




「んじゃ、日直さん、号令宜しく」

「起立、気を付けー」

「おはよーございまーす」

「はい、おはよう」

つつがなく始まる朝の挨拶。


ざわざわ…
とりあえず、クラスがざわつく。
そりゃまぁ、いきなり藤ねぇと代わって入ってきた奴がこんな奴だからなぁ。
本当に教師か疑わしいもんだ。

「シロウっ、日直とはなかなか面白いですね」

と、こちらはそんな事お構い無しにスリスリ寄って来る金髪さん。

「よーし、それじゃあ出欠をとるぞ〜」

普通にHRやり始めるやがるアチャ岡。

あぁ!みんな馴染んじゃってる。
あの不自然なまでの赤さに不信感を抱かないのか…?
見知らぬ転校生に違和感を覚えないのか?
ていうか

「あちゃ岡先生ってかなりイケ面じゃない?」
「思う思う!かっこいいよねー!」
「昼休み御飯誘ってみよっか?」

なんて盛り上がる一部の女子もいる。ちっ!
俺で盛り上がれ!!

ふっとセイバーと目が合うと、

「シロウ、私はシロウ一筋ですからね!」

ほろり、ええ子や、あんたええ子や…。
セイバーの優しさに心がほだされているところで、
視界の隅に映った光景に、絶句する。


そう、セイバー肩越しに見えた光景…それは――――






なぜか遠坂が、窓にへばり付いて、アチャ岡にガンを飛ばしていた…。
何があった、遠坂よ。
悩みがあるなら相談に乗るが、新任の先生のストーカー行為は
ちょっと応援できないぞ…。


正直に言っておっかない。
クラスの窓側の男子が、数人気づいて、席を窓から離し始めている。
遠坂…そもそも自分のとこのHRは終わったのか?


「えーと、次は江藤」

「はい」

「江藤は出席と…これからよろしくな」


んで、目をあいつに戻す。
そんな遠坂の視線に気づかないのか、アチャ岡はご機嫌に出欠を取っていた。


ってもうすぐ俺か?


「んじゃ、衛宮」


「…はい」


「理想を抱いて溺死しろ!」



え?



「ちょっ、先生いまのは…」

「次、後藤」

「はいっ」

「短い間だけどよろしく」

アチャ岡、シカト…てかイジメか?
俺以外には普通に挨拶していく…。


………
………………

そうして、ようやくHRが終わった。

遠坂は、諦めたようでもういなくなっていた。
なんだったんだ?



「シロウっ、先生に可愛いね、なんて言われてしまいましたよっ」

やっぱり、お隣さんははしゃいでいた。

もう帰りたくなってきたよ、俺…









昼休み――――大概の生徒は教室で食べるか
購買部の横のサロンで食べるわけだが…。

俺は生徒会室を使わせてもらってる。
普段はそう軽々しくは使えないわけだが、

「衛宮は今日も弁当か?」

と嬉しそうに聞いてくる、友人の生徒会長のおかげでその恩恵をこうむれるわけだ。

「ん、あぁ。今日は慌しかったからなぁ。すまん、弁当は作ってきてない」

その返答を聞いて落ち込む――柳洞一成は俺の弁当の愛好家だったりする。

「いや、これは気を使わせた。いくら友人といえども、いつも当てにするのはいかんな。
よしっ!何時も衛宮には世話になっているのだから、今日は私が奢ろう」

「え?いや、そこまでして貰うわけには…。いつも一成には生徒会室を使わせてもらっているし」

「いやいや、構わん衛宮。そのかわりまた弁当を作ってきてくれ」

「ああ、分かった。それじゃ今日は一成の世話に…」

「シロウ」

「じゃぁ、購買部にいくか」

「そうだな。急がねばたいしたものは残っておらんからな」

「シロウ、私は…?」

「やっぱ一成はカツサンドなのか?」

「うむ。肉も食わねば育ち盛りのこの体は悲鳴を上げてしまうからな。
寺の子とは言っても、その前に人の子だ」

「私もお腹がすいたのですが…シロウ…」

「はっはっは、そりゃそうだ。俺はどうしようかな?」

「うむ、好きなものを買うといい。だが、衛宮の弁当ほど旨い物は無いだろうがな」


一成と購買部のある方へあるいていく。






ひっく…。
ふと振り向くとセイバーが泣き出してしまっていた。

「あわわわわ!ごめん、ごめん!嘘、嘘だよセイバー!!
つ、つい面白くて」

「ひっく…すん…、シロウ点酷いです…」



ぽすっ。




俺の胸に寄りかかってくるセイバー。
ふわっと、その髪が俺の鼻を掠める。


優しい匂いがした――――

そして、目が合う―――
潤んだ瞳―――
震える淡い桃色の唇―――
伝わる鼓動――――






食欲グッバイ!
こんにちは性欲!







「一成!ご馳走になるのは次回にとっておく!」

「ふむ、衛宮がそう言うならば。しかし…いつもながら切り替えが早いな」


そういって微笑み、ポケットからすっと差し出されるポケットティッシュ。
および可愛い柄のコンドウさん。
ふっ、『おサルのモンキチ君』か…一成いい趣味してるな。


「すまん、こんど弁当にお前の好物、油ぎっとぎとの肉ばっか入れてくるから―――」

「それと秘蔵コレクション『いけない若妻先生シリーズ』も…つけてくれるか?」








一成…。

固く結ばれる握手。

俺たちは―――――――本当のマブだった。




「さぁ、ぞれじゃあ行こうか、セイバー」
「ええ、シロウ」

二人は仲むつまじく、体育倉庫へ消えていく。
それを暖かく見守る男、一成。

「ふっ、衛宮。良い恋してるな、善哉善哉!喝!
私も坊主の前に、男だからな…」

その胸中では若妻が笑顔で微笑んでいる。
スキップで購買部に向かっていくのだった。





だが…


その更に後ろの渡り廊下では―――
赤い影が静かに彼らを見つめていた。

「フン、所詮は衛宮士郎…天気が良いのに屋上でイベントをこなせないとはな…。
臆病者め」



士郎に手を引かれて―――――
見られているとも知らないセイバーはほくそえむ…

「次回からは…このシチュエーションですね、フフフ…」






どう考えても、
何かが間違っていた―――――











「うっ、まぶしいな…」

暗いところから出てきたせいか。
いや理由はそれだけじゃないが、太陽が緑に見える…。

「はぁ、シロウご馳走様でした」

と、後ろから出てくるセイバー。

今は昼休みが過ぎて、実は6限目だったりする。
俺も、セイバーもサボってしまったのだ。




だから―――校門から入ってくる人なんかいるはず無かった。
ここは校庭の端っこにある体育倉庫。
校門からは5mあるかないか。
いくら目が悪くても、校門までは丸見えだ。
そう、こちら側も。


「どうしたのですかシロウ?立ち止まって…。はっ!
まさかもう一回するつもりなのですかシロウは!?
…恐ろしい人です、12回もしておいて…しかし、望まれれば私も…」

そう、登校…なんて言葉はもう全然使えないこの時間に

なぜかその生徒は登校していた――――


「せ、先輩…」

「さ、桜…」



二人の間には、火山が爆破し、雨が降り、春が来て、冬がきていた。



俺が先に口を開く。

「桜…ご、誤解だ…」

「お約束ですが、12回です」

「セイバー律儀にありがとう、嫌がらせか」

「まぁ、桜に言い訳する士郎への嫉妬がそうさせたと受け取ってもらえれば」

さらっとした受け答えで、俺の明日が決まりそうだ。


目の前には、今にも飛び掛りそうな妄想王。


「12回ですか…。こんな時間に授業をサボって…12回ですか…。
先輩は随分好き勝手やっているようですね、いや、犯っているようですね」


「言い得て妙だな…桜よ…。逆切れする様で悪いんだが…俺は俺の為に生きる!」


俺は覚悟を決めた。



「それはもう私との撮影会は諦めるというんですね…。
今ならまだ許してあげますよ、先輩。
セイバーさんと今後はこんな事しないと、血の血判状で約束した上に、
泣いて謝って、『桜たんハァハァ』と学校の放送室で10回ほど言えば…」


くくっと、桜がにやりと唇を吊り上げて笑う。
いや、キャラ違うし!


「くっ、無念だが諦める…」


本当に残念だった。
どのくらい残念だったかというと、Fate買って
イリヤルートがないと知ったときぐらい残念だった。


「…ううぅ、先輩のバカっ!!
私、私、先輩との撮影会にあんなに浮かれちゃって
バカみたいじゃないですかっ!それも警察のお世話にまでなって!
もう、前科もちなんですよ!責任とってください!桜たんハァハァって言ってください!」


「いや、桜たんハァハァは勘弁して!ってか補導されたの俺のせいじゃないでしょ!」



桜は、意を決したようだった。
ばしっ!
俺の顔に白い手袋がぶつけられる。
そう言うノリなのか!?

「決闘です!」

「いや、わからんが――望むところだ!」

「私が勝ったら…分かっていますね」

「ふ、万に一つも無いと思うが…良いだろう。君の花婿になる」

「では私が負けた場合は…先輩の花嫁に…」

「いや!撮影会だっ!」

「ちっ!」

そうして、血で血を洗う、由緒正しき決闘が始まった―――――


頬を裂くように吹く、突風――

桜は獲物を呼び出した。

「アユアユッ!間桐桜の勝利のために!」

桜の影から、にゅっと一振りの剣が…。

「ふっふっふ、間桐家に伝わる家宝『魔剣レヴァンテイソ』…。
世界をも焼き尽くしたといわれる炎の魔剣で、桜たんハァハァ、萌えー!
と言わせて上げます…」

くそっ!そんな家宝が!!
だれだっ!間桐家なんかに刃物なんか持たせたのはっ!?

だが、こちらとてただで遣られる訳にはいかない!

「セイバー!」
「はい、シロウ様っ」

俺がセイバーの胸元に手を入れる。
ふむ、これは、ゴソゴソ…



「シロウ…それはブラ…」



今度こそ!

「世界を産業革命する力を―――!」

セイバーの胸元から現れる一振りのピンクの剣。

「そ、それは…」

「性剣エクスカリヴァー…セイバーの愛が詰まっているのさ!桜、勝負だっ!」



嵐吹き荒れる校庭は今―――――









陸上部の生徒が、部活を始めていた!

え?





今日の藤ねぇ:しんとでおかいもの。がっこうはしばらくこなくていいんだって。
       はやめのはるやすみだなとおもいました、まる。




あどがぎ

 脳内ネタ切れの予感…。
 前回までノリノリで書いていたのになぜ…?
 
 心配疲労大。ギャグの恐ろしさにはまっています。
 ぎゃぐ、シリアスで進められないのがここまで辛かったなんて!
 うう、下ネタの嵐で溺死しそうです。

 さて、ここから暫くふぇいとら休館です。
 理由はもちょこっと温めたいからです。ネタが今回なんか酷いですもん。
 な、何より藤ねぇが出てきてない!補完SSだったのにw

 リハビリに短編書いて見ます。
 駄目だなぁ。
 他の人の良いSSを読んじゃうと嫉妬で悶えますねw


 ギャグ=下ネタになってきては、マンネリしちゃいますから。
 ああ、神様、私にギャグを、お笑いをぉぉぉ!

 何気に久遠さんのVPネタ読んだ後だったの、でレヴァンテイン出しちゃいました(汗
 では次回はなんかのSSにて

 唄子

5: 唄子 (2004/04/11 18:26:53)[orange.peco.chipi@m2.dion.ne.jp]

騒がしい喧騒。
たくさんの人が互いに背を向け
己の戦いへと身を置く
白く濁った空気の中――――――

冬木のトラは、ここで牙を研いでいた。

「くっ!ここで負けるわけにはっ!」

激しく動く双眼。
何か思いつめたような表情
目の前に泳ぐ数々の魚たち…
鳴り止まない電子音の渦。

それが今、まさに…



揃った。
ピロリロリロリ――――――



「店員さーん、新しい箱持ってきてぇー」


藤村大河(教員免停中)はパチンコで惰性を貪っていた。


「よしゃっ!これで昼はココイチでトッピング二つつけて、オカワリも可能に!」

確変突入である。


なんとか元は取り戻し、ガッツポーズを決める藤村大河(現在家事手伝い)は
ふと視線を横にやる。



そこには、こんな所に居ることが若干浮いてしまうほどの美人が、
泣きそうな顔で台を見つめていた。

残りの玉は見る見る減っていく。
ああっ、とでも聞こえてきそうな表情に
なんだか同情してしまった。


まぁ、余裕もあるし…いいか。


ジャラジャラジャラァァァ――――
何も言わずに、置いてある空っぽのドル箱に
手持ちの一箱を注いでやる。


「えっ?ええっ!?」


その行為に驚いて、私の顔とみるみる増えていくドル箱を
交互に見ている。


「よしっ、と。これで遊んだら帰りなさい。そんなに思いつめて打つもんじゃあ…ないわよ。
せっかくの美人が台無しじゃない、ね?」


「し、しかし見ず知らずの貴方にこんな事を…それに貴方の儲け分が…」

すこし驚きつつも、私の目を見ながら遠慮している。

よくよく見ると、いや、本当に美人だった。
少し影がある…が、それでていて凛とする顔立ち。
かけた眼鏡も、その顔に知性の香りを醸し出している。

なにより肩より遥か下まで伸ばした髪…手入れ大変じゃない?
と思うが、痛みなど微塵に見えなかった。

そう、まさにキング・オブ・ビューティーってやつだったのだ。


「んにゃ!いいってことよ。貴方すごい美人だから、おすそわけ。
私はもう元とったし。良いから良いから、ね?返すって言っても受け取らないよ」

まぁ、こっちは目の保養になったし、とずずいと返そうとするドル箱を押し戻した。


「そこまで言ってくださるのなら…。本当にありがと御座います。
もう後が無かったのでついつい熱くなってしまって…お恥ずかしい話です」

ぺこりと頭を下げて美人さんは、微笑んだ。

ううーん、綺麗な上に礼儀も正しいと来た!
私もこんな器量があればなぁ…いまごろ士郎と…まぁ、青い果実はとっておくか。

いや、もう青い果実はちぎられまくっていたりするのだが…。
そんなこと知らない藤村大河(ほぼ無職)は、うんうんと頷いていた。

「よ、宜しければお名前を伺っても良いですか?」

そっと眼鏡を直しつつ、そう聞いてきた。

「ん?まぁ、べつに名乗るほどのもんじゃぁ無いけど、『藤村大河』っていうの」

と、頬をぽりぽり掻きながら、手を差し出した。
それを一瞬驚いたようにぎこちなく掴むと、握手する私達。
まぁ、パチンコ屋で握手する人なんてあまりいないだろうけど…。

「藤村大河…、いい名前ではないですか。
大河ありがとう。
そうそう私は…」





ライダーと名乗った女性は、屋敷で家政婦をしているらしいのだが
これがまた酷い家らしい。

ボケ老人は始終裸でウロウロ。
孫も裸でウロウロ、しかも、いやらしい目で自分を見つめてくるらしい。
二人揃って粗○んと言うのもまたストレスの一つだろう。

そうして、もう一人の孫は、部屋をアダルトグッズで埋め尽くして、
最近はストーキンググッズまで買い漁る始末。
そんなお屋敷で働いて、ストレスが堪らないはずが無かったのだ。

最近、私もついてないのよね〜と話すと、
これが意外に盛り上がって、私達は意気投合。
そのまま朝まで飲もうと決まったのだった。

そうして今はライダーと、5件目の店を探して
新都から深山町までタクシーで帰ってきたというわけ。

あの後二人して12連チャンしたので資金の問題もなしだ。


「着いたわよ〜」
「ほぅ、これはこれは…奥ゆかしいですね」

古風な佇まいにして、なんとも情緒溢れる風情。
昔ながらの赤提灯に、感慨を覚える、そんな店だった。

「どう?なかなか味があって良いでしょ?」

「ええ、ここが大河の古巣ですか…。良いですね」

二人はゆっくりの暖簾をくぐった。

暖簾には『さつき』と。

10代半ばにしか見えない女将が一人で切り盛りしている。
料理も美味しく、女将の性格も受けてか評判も上場。

時折、目を赤くしている時もあるが、そんな時はあれ。
店を閉めた後、ひっそりと私達は二人で飲んで昔話に花を咲かせる。

女将の辛い過去…、それを肴に熱燗をきゅっと…。


今日はなかなか大入りだった。

「はーい、いらっしゃーい!
ああっ大河ちゃーん、それに綺麗なお連れさんね?
座って座って」




こうして、店を閉めた後も、私達3人は飲み明かした。





「聖杯戦争のヴァカヤロッ〜ひっく!!
職返せーってんだ!
ったくセイバーちゃんは士郎を誘惑する毒婦だし…ううっ、お姉ちゃんは、お姉ちゃんは
うわーん!」

「まぁまぁ、大河ぁ、ほらほら飲んで、ね?
私なんか、私なんか、変体一家になんか仕えてたまるかぁ!
ってな感じよ…へへへ。ったく粗チ○ばっか出しても飯ゃ食えねってつうんだよ!
ねぇ!女将?」

「志貴く〜ん、志貴く〜ん、私を守ってくれるんじゃなかったの〜酷いよぅ、寂しいよぅ
ううううううぅ」



すっかり駄目になっていました。









『ふぇいと/すていないトラ』
     そのご









俺は複雑な面持ちで、ここの面子を見て回った。

時刻は夜の9時。

ここは衛宮邸のいつもの居間である。

いつもと違うとすれば…

「なぁ、なんであんたまでここに居るんだよ…?」

俺は勇気を出して、遠坂の隣でセイバーを8ミリで収めている
赤いスーツの男性に聞いてみた。

「うるさいな!セイバーたんが上手く撮れなくなるだろ!
貴様はそこの桜たんとハァハァしていれば良い!」

一喝されてしまった。

セイバーはなぜか嬉々としていろんなポーズをとっている。
基本的に目立ちたがりなのであろうか…?

遠坂とイリヤは何もいわずにテレビに釘付けだし、
バ―坂さんは夕食後の片付けをしていた。

そして、桜に至っては

「せ、先輩。あの赤いのが仰るとおりです!
さぁ、一緒にハァハァしましょう!」

と言って襟首を掴んでくる。

それを優しく掴んで捥ぎ取る。

「桜、まぁ落ち着け。取り合えず落ち着け」

いや、桜の気持ちは嬉しいが…その力ずくはいけないと思います。

セイバーが居る所でそんなことしようものなら…

フワアアッ!フワワワワワワガクガクブルブル!!

ついさっきの事のように思い出される、撮影会の時のセイバー―――







結局決闘は俺の勝利に幕を閉じた。

桜の振りかざした魔剣を、ピンクの性剣で受け止めた瞬間―――
お約束の爆発が。


俺はとっさに後ろに飛んだおかげで難を逃れたが、
桜は、まぁ、ドリフの爆発ネタみたいなカッコになってたっけか。
けほっと黒煙をはいて。

セイバーが後ろで

「火薬の量を間違えた…いや、ばかな…この私がそんなミスを…」

なんて言ってたとは聞こえなかったことにする。


てな訳で、桜はリタイヤ。
んで、お約束の撮影会になったわけだが…



これが乗り過ぎてしまった。
次々と素晴らしいコスプレに着替える桜。
それを俺の愛器『ペンタックスMX』で次々に収めていく。

「よーし!いいよぅ桜!そいじゃぁ次は看護婦さん、いや、メイド服にウサ耳で逝って見ようか〜」

「先輩ハァハァ、もう桜は辛抱たまりません!」

「んなぁ!?」

どさっと押し倒される俺、
俺を熱の篭った瞳で見つめる桜…、
ちょっと怖い。

しかし、どんなに桜が迫ろうと
この身はもはやセイバーにささげた身!
たとえ、身近な女の子、それも桜みたいな可愛い子が
メイド服で迫ってこようとも、俺は!!!





「や、優しくして…」

あっさり諦めた。

いや、そりゃ、やっぱ据え膳食わぬはってね。
ウサ耳メイドっすよ。
無理無理ー、抵抗する気ゼロっすよ。


「あぁ、先輩。私感激です…へっへっへ。いっただきまーす!!」

桜さんが俺のベルトに手を伸ばしかけたとき…


ドカァァァァァァァッ!!!

俺の秘密のアトリエ&現像室(親父の遺産)の扉が蹴り開けられる。
ばかなっ!
土蔵に巧妙に隠された地下への扉が見つかった!?

モワモワ…と埃がおさまると

そこにはセイバー様が見ていらしゃいました。





「シロウ…、帰ってきてどこにも見当たらないと思ったら、
このようなところで、そのような毒マムシと遊んでいましたか…ふっふっふ」

セイバーから煙が上がる!
まさか…これがうわさに聞く勝身煙かっ!!

パキパキと指が鳴らされる。
こ、怖ぇ!


「セイバーさん…、その、これは…」

むぅっと桜が唸る。

「ちょっと!今からいいところなんです!とっとと出て行ってください!
この貧乳小娘!…あらあら〜図星で怒っちゃいましたか?」

フフンと桜は、自分の胸を反り返って、自慢げにセイバーに向ける。
わなわなと震えてセイバーが赤くなっていく。


「その、セイバー俺は別に気にしちゃいないから…」

「そんなこと当たり前です!」

「はい」

おとなしく引っ込む俺。
セイバーはフンと鼻を鳴らして桜を睨む!

「フッ、サクラ…大きければ良いってものではありません…。
いずれ若い日の過ちだと後悔しますよ、垂れて。
その点私は心配要りません、なにせ黄金率のバストですからね」


もうなにやら訳がわからない自慢をしだすセイバー。
よほど追い詰められているのだろう。
コメカミがヒクヒク動いている…。

「はぁ、垂れる垂れないは日頃のお手入れですよ、セイバーさん。
まぁ、垂れる心配の無い貴方には、関係ないことですが…ニタリ」

どうやらここまでだったようだ。
セイバーはバキッと壁をへこまして
笑顔で言った―――――




「表出ろやぁ」




今まで聞いていた鈴を転がすような声とはうって違った、
低くドスが聞いた声で。

「先輩、少し待っててくださいね」

桜と、セイバーは表に、階段を上って出て行く。






その後、部屋を片付けて俺が、
土蔵を出てみた風景。

めちゃくちゃになった庭。
ところどころ塀が壊れていた。
んで、何個か地面にクレーターが…。
そして…





彫像のように固まったまま動かない二人。

題名は
『血と炎のレクイエム』




セイバーは仁王立ちになって、その指は天を指していた。
その先には―――――――



指が刺さっているのか?
桜が血まみれで気絶していたのだった…。


はわぁぁぁぁぁぁぁぁ!


その後の記憶は…ない。
どうやら気を失ったらしい。

そして目をあけると、この面子が集まってなにやら
飯を食っていたので、混ざったというわけなのだが…、なんで俺のうちに居るんだよ、みんな。


バ―坂さんが食後のお茶を持ってきてくれた。

「■■■ッ――」

ああ、どうぞってことか。

ずずっと啜って、うまい、どうにか混乱しかけた思考を一休み。




まず状況を整理しよう。

セイバー、藤ねぇのサーヴァント。んで俺の彼女候補その1。なぜか藤ねぇと一緒にいない。
     でも可愛いしOK。

藤ねぇ、昨夜から行方不明。現在教職免停中。

イリヤ、バー坂さんのマスター。なぜか家に居候。でも可愛いからOK。

バ―坂さん、イリヤんとこのサーヴァント。意外と家事上手。便利なのでOK。

遠坂、我が校のヒロイン。んでなぜか家に居候。美人だし憧れているからOK。

桜、妹のような、からストーカーに昇進。追い出すと家に火をつけられそうだからOK。

アチャ岡、うちのクラスの新任教師。赤い、ただ赤い。なぜかセイバー、
     それにイリヤを撮影中。



…チキチキチン!
俺の16バイトの脳内CPがはじき出した答えは―――

赤いのがなんで家にという結果だった。
うっ、最初と一緒じゃねーか!

本人に聞いても答えれるような殊勝な性格でない事は理解済み。
取り合えず、一番まともそうな遠坂に聞いてみる。

「なぁ、遠坂、なぁって」

不機嫌そうに振り向く遠坂。
そんな、テレビくらいでそこまで不機嫌になるなよ…。

「なに、衛宮君?私忙しいんだけど」

「…すいません、なんであの赤いのが家にいるんですか?」

遠坂の視線の鋭さに、おもわず敬語になってしまう。

「ああ、あれ?」

赤いアチャ岡の方をチラッと見て、溜息つきながら遠坂は答えた。

「…あれね、私も不本意なんだけど、サーヴァントなの…私の」


…ほい?
これが…これがサーヴァント。
そんな馬鹿な…



と思いを巡らすが、

「いや、遠坂。あれこそサーヴァントだよ。納得。
だって今まで見たサーヴァントって言ったら、アレと」

カメラの前でイリヤと二人でピースしているセイバー。

「んでアレ」

それを嬉しそうに見つめている、お茶を飲んでいるバー坂さん。

「それにアチャ岡だろ?なんかそんなもんなんだろ、きっと。
いや、前見たランサーが一番まともかも知んないけど…」

「…そうね。そう言われたら反論できないわ…。」

そう言って、ガクッとうな垂れた。


そんな遠坂に気づいたか、
アチャ岡がポンっと遠坂の肩に手置いてくる。

「凛、気にすることは無い。お前が引き当てた英霊だ。最強じゃないわけが無い。
マスター君こそ最高だっ!さぁ、次は君の番だぞ凛、笑って!」

ビッと親指を立てて、スマイルが憎らしいアチャ岡。

フルフルと遠坂が肩を揺らしている。



「なぁ、遠坂…なんかいまツボにはまったのか?爆笑中?」

と、俺が言うのを聞いて

「ほほう、小僧。珍しく意見が合うな。なぁマスター、爆笑中?」

と、言ってくるアチャ岡。
二人して、ん〜?と首をかしげて遠坂の顔を覗き込んだ。


「こんのぉ、バカッタレどもがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


ばきぃぃぃぃぃぃぃい!!

頬を打つ凄まじい拳打。

俺とアチャ岡は庭へと飛んでいった。

「アチャ岡…遠坂さ…」

「小僧…、怒ってたんだな」


そのまま、錐揉みしつつ、塀へ刺さる。

そうして、痛みを共有した二人は次の日からマブになったとさ。




なんでさ?




次回予告

とうとう動き出す謎の結社『マスターオブヌード』
「じじい、ひょっとして俺達…聖杯戦争に参加しててないんじゃ…」
「ああ、慎二や、ワシらは…ん。聖杯戦争ってなんじゃったか?」
「ああ!?またお前たち裸でっ!?」

明らかになる藤ねぇの秘密
「士郎…とうとう話す時が来たようじゃな…!」
「っておい!なんで急にヒゲはやしてんだよ、藤ねぇ!!」

衝撃の告白!
「シロウ…認知してください…」
「まじっすかー!!?」
「最低ね、衛宮君…」
「先輩、私は2号さんでも…」
「じゃあ、私は3号さんで…」
「ライダー!」


吹き荒れる暴力
「■■■■―――――!!」
「うわー、バー坂さんお、落ち着いてッ!」
「士郎のばかっ!バーサーカー怒らせちゃって!」
「まて、あれはアチャ岡が…」
「フッ、義兄弟の契り、私は確かに契ったぞバー坂!わははは!!」


現れる真の敵
「我は、俺の出番はまだかぁ!」
「まぁ、そういきむな、ギルガメ」
「やめろ、その略は」
「フッ、イジリ―ギルガメ…」
「ゲートオブバビロン!!」

まて次号!
いや、本当に待てよ、こんな展開…。



あとがき

 いやー、ストレスが無いって良いですね。
 シリアス一本書いたら、見えました刻が。

 シリアスを読んでくれた方、ありがとう御座います。 
 そしてすいません。ページ数が同じなのに時間は3分の1くらいです。 
 またねたに詰まったらシリアスを書くぞうw

 いやいや、こういう一面があるからシリアスが生きるのです。
 他の作者様のSSがより素晴らしく見えるように、私が汚れるんだぁ!
 嘘です。喜んで汚れています。
 では、次こそギルッチが出ますように。
 その前にアサシンか…。

6: 唄子 (2004/04/11 18:41:21)[orange.peco.chipi@m2.dion.ne.jp]

ぎるっちの言い訳。
「我は―って書き間違えやがって!
ハッハッハ!作者のばーかばーか!!」

くすん、すいません。

7: 唄子 (2004/04/14 23:50:01)[orange.peco.chipi@m2.dion.ne.jp]

朝――――
それは平等にやって来る。

それはこの深町町とて同じ。

さんさんと輝く太陽の下。

今日もドラマが生まれる。












壊れているけど。













―――教会

その離れにあるダイニングルームでは、今日も今日とて明け方まで酒盛りが続いていた。





「うぃー、聞いているのかぁ言峰〜!んでー、我はそのとき言ってやったわけだ?
雑種――宝具の貯蔵は充分か?ってな…」

「フッ、ギルガメッシュよ、お前その話は何度目になる…。というか、そんな事を言う
場面無かっただろう?酔いすぎだ…」

金髪に派手なコートを着た男が、神父に絡んでいる。
その目は酔っている為に赤くなっているわけではないが、
酔っている為に、半眼だった。
と言うか、ほぼ薄目でキショい。

「そうだぜ、まったく、うぅー。大体俺達ほとんどあいつ等に絡んでさえいねーじゃねーか。
言峰よぅ、本当にもう聖杯戦争始まってるのかよ?」

蒼いタイツは、プハーと神父に肩を回して、息巻く。

「フンッ、ケルトの英雄もとんだ田舎物だな。
もう貴様がいる時点で始まっているに違いなかろう…うぃっく。
だーかーらー、我は言ってやったわけだ、―――それは心の贅肉よ…ってな…」

「いや、だから言ってないだろう?てか、パチッているではないか。
この酔いどれ妄想サーヴァントが…。
ランサーお前もあんまり引っ付くな!なんかそのタイツ薄くて生々しいから
嫌だと言っているだろう!」

神父は肩をゆすって、酔いどれタイツを弾く。

「うえー、ひでぇな、言峰さんよぅ。だったら俺にも服買ってくれよ〜。
これじゃぁ朝一は外に出られないじゃんかよぅ!」

蒼タイツは股間をゆびさしてアピールしていた。
目が痛い。

「ハッハッハッハ、これはいい!そうだな、貴様のような者は、
朝一は股間を間抜けに膨らませてウロウロするのが似つかわしい!
クッハッハッハッハ!」

ギルガメッシュは大爆笑していた。
薄目で。
眠たいなら寝れば良いのにと、言峰は横目で睨んだ。

「ううっ、ひでーよ。ううっ、なんで俺だけタイツなんだよぅ。」

蒼いタイツのランサーは、袖で涙を拭いながら泣きじゃくっている。

「はぁ。そもそも私はギルガメッシュに服を買い与えてなどいない。
どうせお前は金も持っていないのだから、私のお下がりでも着たらよかろう?」

すると、ぱっとランサーは顔を上げてもじもじし始める…




「えっ、だって綺礼さんのズボンって股間が少し苦しいんですもの…」

「な、なんですってぇー!」

「もう、言峰ったら落ち着いて…」

はしゃぎ合う1人と2匹。
見るものを地獄へと誘う暑苦しいまでの酒盛り――――






いろんな意味で駄目だった。















一方、こっちは飛行機の機内――――――

「宗一郎様…本当にありがとう御座います」

女は、白いワンピースに身を包んでいる。
その顔は今満ち足りた笑顔で、傍らにいる男の顔を見つめていた。

「ふむ、しかし良いのかキャスターよ…?聖杯戦争の最中に海外旅行などと」

宗一郎様と呼ばれた男は、その女の笑顔にピクリとも応えず
表情の無い顔で返す。

「ふふっ、もう聖杯はいいんです。宗一郎様が御慈悲を下さるなら、
聖杯など無くても、現界出来ますから…」

ポッと頬を染めるキャスターことメディア。

「うむ、一日12回はせねばな。激しく4回、優しく4回、そして…」

「わー!その先はいけません!私があのようなカッコをしてるなどと…」

「そうか?私は気にしないが…趣味など人それぞれなのだしな」

真ッピンクの空気を撒き散らしながら、飛行機はハワイへと飛んでいた。
すでに二人の聖杯戦争は終わっていたのだった。
南無。














そして――――――
ここ衛宮家の朝は――――




はっ!

目を覚まして意識が戻る!

俺確か…あの赤い奴と塀に突っ込んで…そして…。




思い出せなかった。
しかし、今は布団で寝ている。
これはいかに?



そして横を見ると………
やっぱり一人ではなかった。








が、横に寝ているのは――――――いつもの少女ではない。










その均整の取れたお姉さん的顔立ち。
胸元まで薄い布切れ一枚でしか隠していない
ボンドガールのような…美しいボディ…!



しかも、時折寝返りを打っては

「ん…」
とか
「ああん…」
と言っていらっしゃった。












そう…、彼女は女神様だったのです。



ごくり…。



頂きます!








『メドゥーサ様が寝てる』
    そのいち














ばきぃ!

そこで意識が戻りました。

「シロウ、折角ここまで運んであげた恩を忘れ、トイレに行っている間に
女性を連れ込むとは、なかなか侮れませんね…フフフ」

マウントポジションで、ネグリジェ一枚のセイバーさんが微笑んでらっしゃる。

拳が赤いのは、俺の血かな?

「すいません、僕じゃありませんよ、勝手にあの女狐が侵入していたんです。
ガクガクブルブル…」

「本当に?」

「嘘ではありません」

「本当に?」

「セイバーさん一筋です」

「本当に?」

「…愛しているセイバー」
チュッ…。


「ああ、シロウ!」




そうして、お姉さんを横に置いたまま、朝から3連チャンでした。





はーい、始まるよぅ…













『ふぇいと/すていないトラ』
     そのろく













「ハァハァ、良いぞ士郎!グッジョブ!グッジョブ!わしょいわしょい!」


イリヤの目の前には、腹這いになって士郎の部屋を
興奮しながら8ミリで収めている、赤いスーツの男がいた。


「アチャ岡…?」

少女は半眼になって睨む。


が、赤い男は気にもしていない…
いや、気づいてもいなかった。


「ねぇってば。
何してるのよ…まさか、あんた盗撮…?」

完全に自分の――いや、襖の向こうの世界に行ってしまっているアチャ岡。

「あ、おぉ…おお!それでこそ男だぞ、士郎!ううっ、こんなに立派になって…。
よしっ!今日はお赤飯を炊いてやろう…、うんうん」

感涙むせんで泣く赤い男、アチャ岡(臨時教師)は
本当に全く完全に、聞こえていなかったようだ。


「んもぅ!あーちゃーおーかー!!聞こえてるの!?
もぅ!うぐ…!ムームー!!」

「イリヤッ!?シーシーー…!」


慌てて口を塞ぐアチャ岡先生。
その目は、充血して、息遣いは獣のように荒い。
イリヤは貞操の危機を覚えた――――



が、杞憂に済んだようだ。



「まぁ落ち着けイリヤ。
フッ、見られたからにはしょうがない…。
ふっふっふ、お嬢ちゃん、いい物を見せてやろう。
ポチッとな」

そう言って、得意げに8ミリの再生ボタンを押すアチャ岡。
なぜか付けっ鼻と出っ歯を装着している。



そうして始まる、士郎主演冒険活劇、




『吹き出だせ青春、士郎の青い果実Part1』












8ミリの向こう側は、そりゃぁもう大人の世界だったのです。











「ごくん…」
すっかり画面に魅入ってしまうイリヤ。





そして…
その後ろには、数人の影がいた。


「あわわ…」
何時の間にか後ろにいる藤村大河。

「うわ………」
さり気無く見ている遠坂凛。

「赤い人、後でダビングお願いします」
素早くテープを渡す間桐桜。



さらに…




「■■■…」
なぜかバー坂だけがハンカチを噛んで泣いていた…。
その姿は漢泣きであったが。



そうして、アチャ岡主催『士郎の青い果実Part1』は20分ほど公開れたのだった―――――――




















「覗きは死罪と知りなさいッ!」

「ひっ…!!ひでぶっ!ぐちゃ!べぼろばっ!!?」
「いたぁーぃ!」
「くぅうう!」
「あいたっ!」
「へへーん!もうテープの爪折りましたからね…へぶしっ!」
「■■■ッ!?」

セイバーさんの鉄拳制裁が始まるまで。








「うーむぅ、粗○ン、はんたーぃ…むにゃ…」

ライダーさんはいまだ眠っていたが。










こうして、衛宮家ではいつもののどかな朝が始まった




筈は無かった。










朝食も不穏な空気のまま進んでいく。

セイバーのオカワリを、聞く前に注ぎ直すバ―坂さん。

「セイバー…、コロッケあげようか?」
妙に優しい遠坂。

「セイバー姉さま、あの妙技をぜひ!」
そっとお茶を差し出す、イリヤ。

桜は、割られたビデオテープを必死にアロンαでくっ付けようとして、


あ。

セイバーにまた割られた。


藤ねぇは、俺とセイバーの方を見て、
「私の、私の青い果実、食べられちゃった、食べられちゃったよぅ、ブツブツ…」
と飯を食いながら呟いている。


そうして、庭には











オブジェとなったアチャ岡が…

なんか、最近見た『犬神家の一族』思い出すような姿で
足をYの字に開いて地面に刺さっていた。








まぁ、それはいいとして。




この藤ねぇの横にいる美しいお姉さまは一体誰?

その視線の意味を察してくれたのか、
美人のお姉さんは自己紹介を始めてくれた。

「えっと、朝はバタバタして自己紹介が遅れましたね。私は…」

ふと、ビデオテープから顔をあげる桜。

「ああ、先輩。彼女はですね…」

ん?桜知り合いなのか?
桜が言葉を続けようとするのを遮るように、お姉さんは口を開く。

「あっと、その前に。知ってましたか?最近は盗聴やら隠しカメラが多いらしいですね?
そんな貴方にこれ」

すっ、とお姉さんが手に取り出したのは、黒い機械。
ラジオっぽいそれは、小さなパラボナアンテナっぽいのが付いていた。

「なっ!?ちょ、ちょっとまって!」

桜が手をぶんぶん振り回して、お姉さんからそれを取り上げようとした。

「まぁまぁ、で?そちらの方は桜さんと仰るんでしょうか?
これが欲しいんですか?」

「何言ってるのよっ!貴方それ分かって…」

「欲しいんで・す・ね?あれっ?機械に反応が…」

「あー!アハハ、欲しいです。はい、知らないお姉さん…」

「ハイどうぞ、知らないお嬢さん」

何故だかぎこちない会話を重ねる二人。
桜はすかさず受け取った機械をバックへねじ込んだ。

うーん。やっぱ女の子だからそう言うの心配するのか?
よく分からない。

考え込む俺を他所に、お姉さんは自己紹介を済ましたようだった。


「てな訳で、ライダーと意気投合しちゃって。朝まで飲んで終電も無いから私がここへ呼んだわけ。
ねっ?すっごい綺麗でしょう?この子」

そう言って自分の子との様に自慢する藤ねぇ。
うん、そう言うだけあってかなりの美人さんだ。


「ライダーさんって言うのか?変わった名前だな」

そう言うと微笑み返して、

「フフ、そんなに誉めても何もありませんよ。もうっ」

眼鏡の美人―――ライダーさんは俺のおでこをピンと弾く。
キュン!
いや、誉めてないけど美味しいからいいや。




俺の顔がにやけていたのか、
横のセイバーが烈火のような視線を浴びせる。


ひぃぃ!

「シロウ…炎の五ヶ条…」



うっ…
アレを言わされるのか。



セイバーさんの視線が有無を言わせません。



「ハハハ、えーと…、
いち、セイバーさんは可憐です。
に、そんなセイバーさんに胸キュンです。
さん、セイバーさん一筋です。
よん、浮気した場合は切除です。
ご、その体は黄金率のバストで出来ていた―――」

「よしっ!」

ううっ、泣きたくなってきた。
セイバーさん恐妻風味は嫌ですよぅ。







「はっはっは!衛宮、すっかり尻に引かれているのか?
くっく、お前らしいといえばそれまでだがな…」



なんだかイリヤの登場を思い出すようなタイミングで後ろから声があがる。



「カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ!
かはっ!?」


ぼてっ。
なにやら落ちる音が。




「ああ!じじいっ!?」


「はぁ、はぁぁ…、慎二や…あとは任せたぞ…」

「うっ、じじぃ…」

「かっか…、泣くでない。裸王国に栄光アレ…」

がくっ。


「じ、じじぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」





一同面倒くさいので無視したのだった。

振り向いたものの居なかったという。
よって、何があったかは音だけでお楽しみください。





「おのれっ!衛宮めっ!
間桐家をなめるなよ!」

とたっ。


「あいたっ!石踏んだ!くそっ!姑息な真似を!?
これだから3流魔術師風情はっ!魔術で勝負しろ!!」

トタトタトタ…
プルンプルンプルン…



ばきっ!
きーん!


「はうわっ…!な、なんでこんなところに置物が…うううっ。
って、これ人が刺さってる!?
ひっ!?し、死んでるのか!
はぁはぁ、これは一時撤退だっ!
お、覚えてろよっ衛宮っ!」


ひょっこひょっこ…




裸王国はこうして幕を閉じたのだった。




なんだったんだ一体?



一同は良くわからないが、やっぱり最後まで振り向くことは無かった。




更に言うなら、だれかじじい片付けろよ。





つづく


次回予告

とうとう奴らがやってくる…
「やーやー、青タイツはいらんかねぇ〜」
「こらっ!フル○ンでうろつき回るんじゃない」
「放せッ、言峰!!俺はこれ売って服を買うんだぁ!」


動き出す秘密組織「シャドウオブヌード」
「じじいも入院して、とうとう覇権は我が手に…」
「そこまでよっ!慎二!!」
「美綴っ!?お前もまさか裸に…」
「馬鹿かっ、この粗○ンがっ!勝手に弓道場を会場にすんなッ!」
「ヘブシッ!」
「…ふっふっふ、今日からここは士郎ラブ開放前線とする…」


動き出す運命
「私は見たのよ…、小麦畑に消えていくオレンジ色の光を…」
「それじゃあ、藤ねぇはその時に令呪を…」
「…ええ。そして銀の円盤の中で…手に…」
「ギャァァァァァァァァァァ―――――スカリー!!」


そして、ラブロマンス
「士郎…、今日は朝までシッポリと…」
「ああ、ライダー、もう放さない…君を」
「100回刺殺して、100回絞殺して、100回毒殺する…
それを繰り返すこと100万回…なんてどうですか、シロウ、フフフフフ…」
「ヘギャァァア!カタストロフィぃぃぃぃぃぃぃ!!!?」

どうなる次号!
というか、いい加減聖杯戦争しようかな?
誰か始めてくださいの巻き。




あとがき

  最近はシリアスなSSで良作が目立ちますね〜。
  其れはありえたかも〜も緊迫してきましたし、
  DARK HEROもいい感じです。
  そのほかも、良作、傑作と言われるシリアスSSが。

  じゃぁ、これは?
  ええ、貴方が思っているとおり、
  シリアスなんですよ。
  大馬鹿な!
  
  最後は泣いても知らないよっ!


  すいません、それも妄想です。
  読んでくださった方、ありがとう御座います。
  良ければ感想や、非難、同意、友情など下されば
  書いてる人悶えて喜びますから。

  酒をのんで書いたら駄目だといったのは誰なのかしら〜唄子

8: 唄子 (2004/04/17 14:04:44)[orange.peco.chipi@m2.dion.ne.jp]

昨夜、祖父はついに聖杯戦争半ばにして床に倒れてしまった。

勇敢だった祖父。

誰よりも志を持ち、その理想は果てしなく高貴。

もちろん、はじめは受け入れられはしなかったけど、
祖父と共に歩んだこの数日…。



その胸に残るのは想い…、やはり祖父は偉大だったと…。







「じじぃ…」


零れそうになるモノを、クッと顔をそらして堪える。
そんなことで祖父は喜ばない。


僕に、僕に頼むぞって…じじぃは言ったんだ。
それを守れずして何が後継者か!
何が志を継ぐ者か!
何がサクセサーオブヌードかっ!!



僕は怯まない。
例え今はひ弱なこの身であったとしても…祖父の野望…聖杯をもってして、必ず…。




「じじぃが戦えない今…、僕は後継者だ。
ならば―――――覇者となろう。
じじぃ…いや、おじい様!必ずや…」


拳を強く結んだ手からは、爪が食い込み
血が滲む――――










「必ずや、この国を裸の王国、夢のヌーディスト天国へっ!!」












「はい、よいしょっとぅ!!」


景気よく発せられる掛け声と共に
繰り出されるヤクザキック!



「へぎゃっ!!!」

ぐちゃ!




慎二は板張りの壁に突っ込んで、
気を失った。

もちろん、すっぽんぽんで。





スクッと、影は姿勢を直し、トランシーバー…









ではなく携帯電話をプッシュした。


「あー、あー、こちらビューティフル・スペルどうぞー」

「はいはい、こちらブラックパンサー、どうぞ」

「無事に基地を『シャドウオブヌード』から取り戻した、どうぞ」

「オッケイ、ご苦労様。こちらはアイスベル及びナチュラルフールと合流した」
「ちょっと、私は天然ボケなんかじゃないよー!」
「こら、コードネームで呼べ、ナチュラルフール」
「そうだぞ、ナチュラルフール!鉄の掟を忘れたのかぁ?」
「酷いよみんな!それだったら、なんで蒔ちゃんや鐘ちゃんはカッコいい呼び方なの!?」
「こらっ、本名はよせって言ってるだろう!」
「軍法会議者だな…」
「うぅ、酷いよぅ。なんで意地悪なの二人とも…」
「わはははは!だってなぁ鐘、じゃなかった!アイスベル…」










プツッ。

通信先が頓挫しそうだったので、取り合えず切ることにする。

「ふぅ…、所詮は烏合の衆。この志が解らないか…」

そっとかき上げた髪を、手で顔から払う―――



そして現れた表情には、強い意思が宿っていた。


「こちら『士郎ラブ開放前線』…ただ今から活動を開始する」


夕闇に照らされた瞳は、燃えるように赤く光っていた。




「くっくっく、衛宮よ…。部活から、いやこの私から逃げて何をしているかと思えば―――
とんだ食わせ者だったとはな。
その赤い髪、キュッとした痩躯、そして、あの某メイドを思い出させるような…
グルグル眼ぅ!!
あぁ!!全部私が貰うから…貰うからね。
―――――衛宮、貴方をゾッコンです…!萌えぇぇぇ!!」


髪を逆立てながら彼女は叫んでいた。








夕日に照らされる、弓道場。

そんな彼女を先ほどから気を取り戻した男が
眩しそうに見つめる。




「美綴…か、可憐だ…」











彼も、べつの何かを逆立てていたが。










いたぁ!












『ふぇいと/すていないトラ』
     そのなな










『士郎ラブ開放前線』―――――

その発足は、3日前にさかのぼる。

謎の転校生、セイバー。
彼女は何事も無くクラスに馴染んでいた。





だが、その違和感に気づいた者もいる。

四人は放課後その疑問をぶつけ合った。

曰く、彼女は遠坂、衛宮と知り合いらしい。

曰く、彼女と衛宮はいい仲らしい。

曰く、遠坂は最近衛宮邸に住んでいて、彼女もやはり衛宮邸に居るらしい。

曰く、衛宮と彼女は既に事に及んでおり、学校でもその行為は繰り返しているらしい。

曰く、最近衛宮邸には色々な人が集まっており、女性も多いとか…


「で、要約するとこういう事か?衛宮はハーレムのような生活を送っており、
そこに遠坂も居ると…」

「なにぃ!遠坂があんな奴のところに!?ゆ、許せん!私の仲間になって、
いい男をあさり放題ツアーの一員になる計画が…」

「うぅ、遠坂さんが、遠坂さんが…うぅ…」


各々に不満や、嘆きを漏らす少女たち。


動揺する二人をスッと制し、少し離れたところに立つ少女が口を開く。

「つまり、私達意外はこの異様な事態に気づいておらず、
その事態に利害をこうむる者がここに4人居るという事…」

「ふむ。美綴よ…、何が言いたいのだ?」

美しい柳眉を寄せ、解りかねると言った口調で
氷室鐘が疑問を投げかける。

「フッ、つまりはこういう事だろう?お前達は遠坂が衛宮に近づきすぎるのを嫌い、
そして私は…」

そう返すのを聞き、浅黒い肌の少女―――蒔寺楓がにやりと笑った。

「そうか綾子は衛宮を…やはりそうか、くっくっく」

「そうだったの?美綴ちゃん…」

不思議そうに三枝由紀香は首をかしげている。


それらの返答に、深く頷き、そして――――――





「衛宮士郎を我が元へ、そして貴方たちは遠坂を。
さぁ、ここに誓いの酒杯を交わそうか、同志諸君!
我々は、士郎ラブ開放前線なり――――――――!!」


こうして、臨時的なものではあるが、利害を共にした組織が発足した。
愛しい女性を清いままでと祈る者、
自分の私欲の為にその魅力を欲する者、
なんとなく面白そうだから付いてくる者、
そして、愛する者を我が手に取り戻そうとする者、
彼女たちは束の間の同盟を結んだのだった。











こうして集まる会合は、意外に多くもう7回目となる。


「チュ―ッス、綾子ぅ!」
「美の字、邪魔するぞ」
「美綴さん〜、こんにちわ」

ぞろぞろと、知ったように弓道場に入ってくる少女たち。
一同はその板張りの床の中央に集まると、
各々腰を落ち着かせた。



そうして始まる会合。






ぶっちゃけて言うと、ただの雑段だった。






「へぇ、ここのメーカーって今度ポッキーみたいなの出したんだ?」

浅黒い手が、シュンと二つ三つばかり菓子を掴んで口に運ぶ。

「そうなんだよ〜、結構いけるよね?
あ、美綴ちゃんも良かったら…」

そっと、控えめに差し出される菓子を一つつまんで口に運ぶ。
ん!
なかなかの触感。悪くない。
チョコの中に、ホワイトムース。
その中にはサクサクのクラッカーが。グットだね♪

「ありがとう、三枝。これ結構いけるね。
おい、氷室も食ってみろよ…ってどした?」

そんな返答に返事もせず、きょろきょろと周りを見渡す少女に向かって
私は不思議に思い声をかけた。

「いや…、ほらお前さんが倒した奴、慎二は何処に行ったのかと思ってな」

そういいつつ、三枝から一つ菓子をつまんでいた。

「へ?あいつならその辺にノビてんじゃないのか?私が見たときゃそうだったけど。
いやぁ、縛ろうにも裸だったもんだから、ちょっと抵抗があったしな」

仮にも乙女な私だ。
いくらあんな馬鹿な粗チ○ン野郎でも、素っ裸には抵抗があるってもんだ。

しかし、暫くは気絶してるもんだと思ってたんだがなぁ…。

そう思っていると、蒔寺が恐る恐る指を刺していった。

「お、おい…。あそこにあるのって、やっぱあいつが…」

その指の指すほうを見る一同。







そこには、
風と遊ぶ、ごわごわと丸められたテッシュがコロコロ転がっていた。







「へっ?え、えぇ!?」

「あれはやはり、アレなんだろうな…」

三枝と氷室は向かい合って複雑な表情だ。


「あいつも腐っても男…。敵には回したくないなぁ…」


そう呟きながら、ジュースを蒔寺が飲んでいる。


くっ、舐められたものだ。
しかし、それと同時に戦慄が走る――――

私に気づかれぬように、オカズにしていたとはな、慎二。
裸の後継者と呼ばれるのは伊達ではないという訳か…。



あの変体!



「まぁ、逃がしたものはしょうがない。美の字も犬にかまれたと思って諦めろ」

なんとも言えない慰めを氷室が言ってくる。
別にどうでもいいが。
しかし、士郎意外に私を汚そうとするその身、決して許さぬと胸に誓って、
口を開いた。



「で、いよいよだ、諸君…。
今夜、聖戦を発動する…!!」



ざわっ!
さっきまでの雰囲気と異なり、
少女たちからは少しばかりの緊張が走る―――。


「綾子、それは計画を実行するという事か…?
くくっ、遠坂まってろよ…」

「ああ、そういう事。もうこれ以上…異人さんに好き勝手されて、
私の衛宮を汚されることには耐えられない!
今夜、計画を実行する!いいだろ?三枝、氷室も!」


「美の字よ、それは分かった。して策はあるのだろうな?
私達は雑談はしても、愚痴ばっかりでどのような方法か聞いてはいないが?」

「そうよね、どうすれば遠坂さん帰ってきてくれるのかなぁ?」

次々に上がる疑問の声。
さもありなん。
しかし、私には確かに策と言えるほどの物は無いが、分かることがあった。


「あの家に人が集まるのは、衛宮が居るからだろう?
ならば…衛宮があの家から出ればいい…」

「というと?」

蒔寺がずずいとこちらに身を寄せてくる。

「うっふっふ、つまりは簡単なこと――――
衛宮士郎が、美綴士郎になればいいと言う事だ」

満面の笑みで私は言った。
もはやこれ以外に策はあるまいといった風に。




「へ?」
「ええっ!?」
「……」

一同、三者三様の驚きの表情。
なんでよ…。


「美の字、それは結婚するという事か?」

氷室が真面目な面持ちで聞いてくる。

「そういうこと。あいつが私の物になって、落ち着けばみんな上手く行くだろう?」

「うーん、そう言われるとそうなのかなぁ?」

蒔寺はうんうん悩んでいた。

何で悩むかな!
完璧じゃないのか、この作戦?

「えっと、美綴ちゃんは、その結婚てことは…」

「うん?ああ、私の家で一緒に住むんだよ。
親にはもう話してるからOKOK!!」


はうわって驚いたよ、この子。
いいじゃん、好きなんだしさ。



そうして、一息ついて、更に作戦をまとめる。

だが、その前に大きな障害があるのだ。


「皆知っているとは思うが、これには大きな障害が付きまとう…。
セイバー…、彼女に戦闘能力では勝てないだろうな…」

一同、その名前が出て嘆息を付く。

彼女の学校での生活。
そして諜報部員(主に三枝)が集めたデータでは、
はっきり言って人間技ではない数々のうわさ、実話…。





だが、彼女の弱点を私は入手していた。



「だが、そんな彼女にも弱点がある事を見つけたんだよ…、ふっふっふ。
ポチッとな」

さり気無く用意したプロジェクターに映し出された映像――――






衛宮家の脱衣所なのだろうか?
鏡の前で、フゥっと溜息をつく金髪の少女―――そう、セイバーその人であった。




鏡を見てまた溜息をつく映像の中の少女。
その目線は、自分の胸へと向かっていた。

『なかなか大きくはなりませんね。愛するシロウの精を貰っていると言うのに…』

そうやって、自分の手で持ち上げたり、もんだりしていた。

2,3分ほど続いたであろうか、少女はキッ視線を上げ、

『これは、1日12回では足りませんね!やはり17回はしなければっ!』

と、腕を震わせていたのであった。



『グッジョブグッジョブ、ハァハァ…』

何気に、カメラを回している人物の声が入っていたのが玉に瑕だが…。



そこで映像は終わっていた。
ふっと、弓道場に明かりが戻る。








「美綴…、あんたこれは…?」

蒔寺が不思議そうに聞いてくる。

「セイバーの弱点、それは――――――
バスト、つまり胸ってわけよ。
そこを付け込めば活路は開けるだろう…」


「わかった、でどうするんだ?」

「セイバーに、胸が大きくなる薬と称して睡眠薬を飲ませる。
そして静まり返った衛宮邸で私が衛宮と事に及び…、
その後は身ごもったと称して責任をとって貰うまでだ…、ふふふ」

「美の字…、恋する乙女はこうまで悪魔になれるものなのか…」
「美綴さん…かっこいい…」

氷室は呆れたように見ているし、なぜか三枝は憧れるように見つめてくる。
まぁいいよ。
私は好きにやるんだからね!

「いや、まぁ、美綴が結婚するのは勝手なんだが、誰がセイバーに睡眠薬を飲ませるんだよ?
私達の誰かが潜り込むのか、衛宮の家に」


「いやいや、蒔寺。そんな危険を冒すことは無い。
私達には協力者がいる。
入って来い!」







私の声を待っていたかのように、
弓道場の更衣室から人影か現れる―――――。







「お、お前は…!!」

「なに…。貴方が協力者だというのか?」

「ええぇー!?」

「そうだ、紹介しよう。ここ連日の衛宮邸を見張ってもらっていた、我らの協力者…」

私の視線の先には――――――――――




「やぁ、こんばんは。先ほど紹介に預かった協力者だ。
残り三人ははじめましてか?
よろしく、アチャ岡士郎だ」

キランッと歯を光らせて、赤い背広の男は親指を立てていた。

右手には、なぜか多量に詰め込んだバックが握られているが…

「おい、アチャ岡…。おまえ女子の更衣室から弓道着持ってきてなにをしている…?」

私が半眼で睨みつけるのを、涼しげに返す赤い教師。

「フッ、協力者の以前に私は教師だ…。教え子の頑張る姿を応援したくなるのは当然だろう?
弓道部員の負荷を考えて、洗濯をしてやろうというのだよ…。
いやいや、礼はいい。私は好きでやっているのだから」

右手で制してきて、頭を振るアチャ岡。



…絶対に嘘だな。だったら何で男子更衣室には行かないんだよ、お前…。


時寺が、ようやく落ち着いたのか口を開いた。


「そうか…あんたが…。で、どうして協力してくれるんだい?
あんたは衛宮の味方だと聞いていたが…?」


フッと遠い目をしてアチャ岡は語り始めた。

「そうだな…。衛宮士郎は私にとって今や弟、親友同然。もっとも最初は羨ましくて殺意を抱いたが…。
なら何故君らの協力者かと―――そう思うのも当然だろう…。
至極簡単な理由だ。
私はあいつに数々の試練を体験して欲しいと思うのだよ。
その試練を通して、あいつに漢になって欲しいと願うだけ…。
あいつの成長、それが目的だ…」


少し感心したように、氷室が頷く。

「ふむ…。修羅場を通して、男をあげるか…。確かに一理あるかもしれないな。
親心に似たようなものか…」

三枝もコクコク頷いている。

「男の人の友情っていいですね。うんうん」


私はどうも府に落ちなかったので、一つ疑問をあげた。

「アチャ岡、私は初めてそんな理由を聞いたよ…。
あんたの交換条件、あれはいらないって事か?」

そう、この男が協力者として現れた時の条件―――そんな事いってなかったが?

それを聞いて、慌てるアチャ岡。

「み、美綴!あれとこれとは話が別だ!
確かに私の大きな目的はさっき話したが、やはり報酬もあって然りだぞ。
だから…」









「だから、ブルマ1枚で先輩を売ったんですか…、貴方は」


5人意外誰もいるはずの無い弓道場から、声が上がる――――



「誰だっ!!」

「動かないで、蒔寺っ!…この声…まさかっ!?」

私はその思考を隅々まで巡らせる。
先輩を売った?
衛宮を先輩と呼ぶ、この闇から響くような声…あいつだ…!


「美綴よ…、こいつは厄介な事ななりそうだな…フッ」

アチャ岡も気づいているようだ。

私は氷室と三枝を自分の後ろへと促す。



そうして、弓道場の床に浮かび上がる、一つの染みの様な影――――

その影からゆっくり浮かぶように、彼女は現れた。


「こんばんは、先輩方…。それにアチャ岡さん。
…やはりそうでしたか。
私の薬箱に入っていた強力睡眠剤『悶絶!爆睡君』が箱ごとなくなっていると思えば、
貴方だったとは…、フフフ」


楽しげに歌うような口ぶりの少女…。
間桐桜は、いまや目の前に対峙していた。


「君の薬箱から拝借した事は謝るが、君にあれは必要あるまい?
夜な夜な士郎の部屋の前で覗いているのだからな…」

桜…、あんたって…。

「フフフ、それは先輩が心配で眠れないからですよ。
ですからあの睡眠薬でゆっくり眠ろうと考えていたわけです。
睡眠薬は貴婦人の嗜みですよ…アチャ岡さん」

アチャ岡は、鼻で笑って返す。

「フッ!よく言うものだな。先日それを士郎のマグカップに混入させ、
セイバーにシコタマ殴られた時に、記憶まで失ったと見える…。この陰険腐女子が」

後ろから、ほぅとか、はわわ真っ黒、とか聞こえてくるが、今はあの子を刺激しないで欲しい。
くそっ!
思わぬ伏兵がここにいたかっ!?


「主将…、貴方がそんな考えを抱いていたとは気づきもしませんでしたよ。
まぁ、最近弓道場を使用禁止にしてるので不審には思っていましたが…。
セイバーさんを倒す共通の目的でしたら共闘できたかもしれませんが、
いささか、結婚とは。残念ですが、諦めてください。
先輩は美綴士郎ではなく、間桐士郎になるんですから…」



士郎が聞いたら真っ青の結婚インフレが始まっていた。


「くっ!アチャ岡!あんた桜がこんなんだと知っていて報告しなかったって事は
倒せる自信在るんでしょうね?
倒せなかったら責任とってもらうからね!!」

私は、横に控えるアチャ岡に向かって叫ぶ。

だが、赤い教師は余裕たっぷりで応えた。






「問題ない。ただし、ブルマーと体操着の上、それで手を打とう」

と。

ふっ、杞憂だったか。
私は悪魔にブルマを売った女。
いまさら失うものなど無い!
衛宮まってて!愛しのぐるぐる眼!

「オッケイ、その条件飲むわ。
頼むよ、アチャ岡!」


それを聞き満足げに頷く赤い教師。
その背中は、限りなく頼もしかった。




「さて、桜よ。
ここ最近君とキャラクターが被ってきたので白黒ハッキリさせておこうか…。
お互いに盗聴器の位置が被っているのも我慢できなかったからな…」

スッとアチャ岡が構える。

「ええ、まったく。
貴方が来てからというもの、私の盗聴器が何個か取り外されたことか…。
残念です、コレクションを共有できると思っていたのに…。
まぁ、所詮はどこまで行っても私達は平行線だったわけですね。
結構です、亡き者にして差し上げましょう!!」

桜の後ろにクラゲみたいな陰がユラリと立ち上がる。


「ほぅ…、それがうわさに名高い『アユアユ』か…。
フッ、全くもって恐ろしい物を持っているな。
だがっ!こちらとて殺られるにいかんのでなッ!
反則には反則で行かせて貰おう!」


そう言ってアチャ岡は、目をつぶって集中に入る…。

「必殺!無限の剣製ショーットカットゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!
体は―――出来ていた、ハイ完成!」

よく分からないが、反則らしい。
アチャ岡を中心に炎が走ったかと思うと、そこには数多の剣が刺さる
丘の様な場所に変わっていた。


「桜、残念だが―――さようならだ。
安心して入院するがいい。一週間に一度だけりんごでも剥きに行ってやるから。
沢山士郎のウハウハY談を土産になッ!
それ〜、いっけぇー!ファン○ル達ぃやっちゃーえー!!」


アチャ岡が、桜に腕を振り下ろす―――


次々に飛来する剣、剣、剣の雨。


そうして、桜は叫び声をあげるまもなく爆発と煙に押しやられたのだった。


「やったのか…?」

恐る恐る私の肩から、顔を覗かす蒔寺。

「アチャ岡…倒したの…?」

私も恐る恐る、尋ねてみる。




そんな不安を消すように、爽やかな笑顔で振り返ったあいつは

「大丈夫だよ、美綴。俺頑張ったから」

なぜか、前髪が降りていた。

意味わからーん!!




だが、そんなあいつの頭に突如飛来する塊――――






カコンッ!!

「グハッ!」

「え、え、え、…アチャ岡…?」

何が起こったというんだ…?


そして、アチャ岡の頭にぶつけられた、それはこちらにコロコロと転がってきた。
ピンク色のそれは――――――――


「す、スケベ椅子…?」


座るところが大きく開いた、それは―――まごうなきスケベ椅子であった…。


先ほどまで待っていた塵煙が薄れていく――。




間桐桜は無傷であった。




「残念でしたね…赤い人。
彼方がそのような隠し技を持っているとは思いませんでしたが…、
所詮は敵ではないということ。
固有結界を使いこなすとは…まぁ流石といったところでしょうが…」

「馬鹿なっ!入院とは建前で、殆どヤルつもりだった私の攻撃を防ぎきるなどと…。
まさか!?」


桜はさも楽しそうに笑った。

「ふっふっふ、固有結界とは強い心象風景が世界を塗り替える究極の一…。
ならばその強い心が、更に上回る強い心によって塗り替えられるのは必須。
私もアユアユのバックアップがあれば真似事ぐらい出来るのです…。
あっはっはっは!さぁ、いざ私の心象風景へ誘ってあげましょう!!
恐れ慄きなさい――――――――――――――!!!!!!!」




桜を中心に風が巻き起こる。

最後に彼女は、ニヤリ―――――と笑った。









『体は―――スケベで真ッピンク

血潮はローションで――心は鋼

幾たびのストーキングを越えて―――前科43犯

ただ一度のほのラブもなく、―――ただ一度のキッスもなし

映し手はここに独り――――

暗い部屋でモニター監視――――

ならば、我が生涯に一片の悔いは無く――――

この体は、無限のエロスでで出来ていた―――――』





ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ―――――――!!


視界を塞ぐ様に、強い風が吹く――――


そして風がやんだ時―――――



目を開けて見たそこは――――――






エロスの園だったのです。




「な、に…。こ、これは…!?」

アチャ岡が狼狽してる。
それもそのはず――――――





まずはその異様さ。

使い古されたように年季が入っているコスプレが
無秩序にマネキンに着せられ、一面に並べられている。

そして、地面にはビデオテープらしきカセットが敷き詰められていた。

さらにはアダルトグッズの山が背景に並んでおり、

衛宮士郎の写真…、一般的には盗撮だろうと思われる
全てカメラ目線ではない写真が、宙を舞っていた…。





「は、ははははは…。な、何なんだ一体…」

私の頭の中がピンク一色に犯されていく―――



そんな視界の端で、高らかに彼女は声をあげていた。


「さぁ、腐女子達…淡い思いやトキメキの貯蔵は充分か!」





「ぎゃわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うっ、これはぁ!」
「ひっ、ひぃぃぃ!!」


ああ、衛宮、好きだよ…。
無念…。

意識が途絶える寸前、アチャ岡の姿が映る。







それは―――その園で楽しげに物色する姿だったが…。


あはは、がくっ。


















「なぁ、イリヤ、今日やけに人が少ないな。
どっか行ったのか?あいつら…」

「さぁ、どっかで遊んでるんでしょ?
ほら士郎の番よ」

そうやって、なんでもなかったようにイリヤは画面に目を向ける。

「はぁ、まぁいっか。そのうち帰ってくるだろう。
ほいっと」

そうやって、俺とイリヤ、バ―坂さんの三人はミンゴルで楽しんだいた。





「セイバーこれなんかどうかしら?」

「うーん、まぁ片っ端から試すしかありませんね…」

セイバーと遠坂はなにやら、部屋の隅で通販で買った器具やサプリメントとにらめっこしている。
そのうちの一つに『豊乳』の文字が見えたが、突っ込むのは辞めておこう…。


「あらあら、無駄な事を…」

風呂から上がったライダーが横目で髪を拭きながら
チラッと見て鼻で笑った。


「なんですってぇぇぇぇ!!」
「くっ、この牛女!そこに座りなさい!説教です!」

こうやって夜は更けていくのであった


藤ねぇは、さっき電話で学校から呼び出しが合って出て行っていた。

なんでも弓道場が謎の爆発を起したとか何とか。


物騒な世の中になったもんだと思いながら、パターを決めるのであった。







桜、お前また警察の厄介にはならないよな…。
胸に一抹の不安を抱えながら。





次回予告!

とうとう動き出した聖杯戦争、冬木のトラが叫ぶ!
「出番がないんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「まぁ、ドラ○もんだって、の○太が主役だしなぁ」
「そうです、タイガ。諦めてください」
「あんた達がエロばっかしてるからでしょうがっ!」

裸の後継者は闇を見つめる
「僕…、そういや今年は風邪を引いてないな」
「馬鹿だからですよ、兄さん」
「おぅおぅ、慎二は馬鹿じゃからなぁ…」
「お前等が言うなっ!!」

ライダーの暗躍の気配
「士郎は私にこそ相応しい…衛宮家乗っ取りですね…」
「ライダー、その野望私も協力しよう。そのかわり…」
「引き換えに、私に下着を差し出せと…?」
「恥ずかしそうに頷く位なら言うなぁ!!この馬鹿!!」

更に事態は加速的に進んでいく―――
「シロウ!あと12回です!」
「し、死ぬ!そんなにしたってペタンコはペタンコ…」
「滅殺〜撲殺〜そこでエクスかリバー〜だ〜♪」
「わ、わーい!セイバーさん僕かぁ幸せだなぁ!が、頑張るぞ〜…」

そしてついに明らかになるセイバーと藤ねぇの過去―――
「実は私がお腹を痛めて生んだ子が…セイバー貴方なのよ」
「お、お母さん!?」
「もはやサーヴァントという事実は無視かよ…」
「先輩!ぜひ私達も子供を!」

アチャ岡の狙いとは
「ふっ、私は未来から来た英霊…アチャ岡」
「ま、まさかあんた…俺の…」
「そうだ…私とお前は良く似てる…それは…」
「私とシロウの子供いうわけですね?」

一体どうなる聖杯戦争!?
その続きは次号で明らかに!
なるんだよ、きっと。
なるって、そう思おうよ。ね?






あとがき

 さいきん掲示板ででている「きついこと」
 なかなか骨身にしみるなぁ。
 これも確実にあれに入っているのだろうか?
 いやぁ、むっちゃ入ってますよ。

 別に不快にさせるつもりは無いけど、やっぱ内容が内容だもの。
 一応注意書きには書いてるけど、私もFateが好きで、シリアスも好きで
 でも、だからハチャメチャな話が面白いから書いてるんですけどね。

 でも、文章とか、構成の事は勉強になるよね。
 根本的な苦情はメールで欲しいですが、お話の出来については
 掲示板でどんどん言ってもらって構いませんよ。

 では、今回も読んでくださった方には感謝を。 
 掲示板で感想を下さった皆様、リンクで推薦文を書いてくださった皆様へ感謝!

 感想を求めると共に、評価もお待ちしております。
 これからもいいお話が書けるようになりますように!

 シリアスとは言わなくとも、そろそろ新しいお話を書いてみようと思う唄子

9: 唄子 (2004/04/17 15:00:04)[orange.peco.chipi@m2.dion.ne.jp]

あら、なんか呼び合う固有名詞が安定してない。
すいません、読みにくくて、以後気をつけます。

10: 唄子 (2004/04/20 01:46:55)[orange.peco.chipi@m2.dion.ne.jp]


はぁぁ。

時期は2月の前半。
体をすり抜けて行く風は、皮膚を切るようだった。
それもそのはず、午前3時過ぎ。
死すら感じるくらいに、四肢は硬く凍ってしまったように感じる。

冷たくなってきた手に、息を吹きかけて温めた。

はぁぁ、っと。


右手に冷たく残る感触が、数枚の硬貨だけだという事実もまた、
この身を凍えさせた。

寒い。
本当に寒い。

今更だが、自分の選択があまり賢くなかったと後悔もしている。

「あーぁ、あんなもんでも簡単に売るんじゃなかったなぁ…」

売値は千円を満たなかった。
更にオマケも付けたのに、たったの1500円ぽっちとは…。

それで何かしろ形に残るものを買えばよかったのだが…。
あまりの寒さにワンカップ大関を4本も買ったら、残りは殆どなくなってしまった。

いい加減酔いも冷めて来て、自分の行動に嫌気がさしてきた所だった。

「はぁ。もう帰ろうかな。
…いやいや、そんな事してみろ、後で何言われるか…くそっ!」

何度も数えたそれを、もう一度数えなおす。

やっぱり右手に握られていたものは―――340円しかなかった。
100円玉3枚に、10円玉4枚…、時間をおいても増えるはずは無い。

今一度溜息をつきそうになり、それをぐっと飲み込んだ。

いい加減決めなきゃな…。


そう思って、腰をあげようとしたとき、自分の隣に座ってくる男が…

立ち上がることに躊躇していると、そいつはスッと隣に腰掛け、
悲しそうな面でこっちを見める。

「な、なんだよ、お前…」

こんな所で男に見つめられなきゃいけない理由なんか、俺には…

すると、そいつは―――
さっき買ったばかりなんだろう、温かいコーヒーを俺に手渡す。

「寒いな、お互いに…」

そう言って前を向いた。
後はだんまり何も言わずに、視線をただ前方に投げているだけだった。

俺はそのコーヒーを飲むわけでもなく、ただ握り
暖かさを感じていた。






どれくらいそうしただろう…。
そいつは相変わらず前を向いたままで独り言のように話し始めた。

「お前を見てると自分の辛い事、…思い出してなぁ。
はぁ…。世の中はままならないものだな…。
どんなに願っても届かない事って…やっぱりあるのかなぁ」


その言葉は、今の俺にも当てはまる…。
あれほどまでに自分の意思でやってしまったことが、
今では憎くてしょうがない。

昔に戻りたいとさえ願っちまってる…。
願って止まなかったことえを叶えようとして、
届かなくてこの様だ。

こいつもそうなのか?
だからこいつは俺なんかに話し掛けてくるんだろうか…?

改めてそいつの顔を見ようとして…
目が合った。

悲しさの中に感じるそいつの強い意志…。
絶望を知ってなお希望を燃やす瞳。

…そりゃぁ今は弱気になっちゃいるが、
こんな目を持ってる奴は必ず立ち上がる、そう俺の勘がいっていた。


「お前さ…、その…クヨクヨするなよな。それ飲んでとっと前に向かって走ろよ。
なんかお前見てると…、今の自分見ているみたいで苛々するんだよ…」

クッ!
不意に目頭が熱くなる。
俺もそうなのか…、また走れるって…そう言ってくれるのか、お前は…




だから…、俺も…声が震えないように、ゆっくりそいつに言った―――

「お前も…、クヨクヨすんなよな…、お前の目はまだ死んでなんか…居ないんだからさ」


そう言うのを聞いて、あいつは一瞬驚いた顔をしてたが…
すぐに照れたように鼻をこすって、微笑んだ。
目は…今の俺と同じように少し赤くしながら…。



「へ、へへっ。ありがとう…な。そのお前も立ち直ったみたいだし…もう行くかな…」

そう言って立ち上がるあいつ。

俺も慌てて、腰を上げる。

「待てよ…。コーヒーご馳走になっちまったんだ、名前ぐらい言わせろよ…」

そいつは歩みだそうとするのを止めて、こっちを振り返る。

「ん、あぁ。そう律儀にならなくてもいいけど、教えてくれるんなら…」

「俺の名前は…」













そこまで言いかけて、いきなり鳴り響くけたたましいサイレン音―――――

「見つけたぞぉー!!」

「お前は右から回りこめ、こっちは右側だ!!」

俺達を5,6人の警官が取り囲む。


「なっ!?」
「え、おいっ!?一体…?」

俺たちは同時に驚きの声をあげていた――――




「ランサー…だな?お前には店からの通報で…」
「お、おいっ、そいつの横にいるのは…」

もう一人の警官が、あいつを指差して何か言い始めた。

「ああっ!お前はまた懲りもせずっ!!
くっそー!暫らく出ないと思って安心していたのに…」

カシャン、カシャン…

俺たちは仲良く手錠をかけられてしまっていた…!

「お、おいっ!なんで俺が…」
「くそっ!なんで僕がっ!!」

トドメとばかりに警官は声高らかに言う―――――――――






「ランサー、及び間桐慎二!二人とも猥褻物陳列罪で逮捕する!!」








やっぱり、二人とも裸だった。





「うおぉぉ!放せエー!!」

さっきまでこんな公園のベンチに座りっぱなしだった所為か力が入らない。

「あぁ!僕には、僕にはやるべき使命ふがぁぁ!!」

しかも、慎二も暴れ出すから、ますます身動きが出来なかった。

「あああああ!あんなタイツでも売るんじゃなかったぁぁぁぁぁ!俺のゲイボルグ返せ―――!
俺は、俺は普通の服が着たかっただけなのにィィィ!!」
「おじい様ぁぁぁ、僕は必ずやこの愚民達も素っ裸にィィィィィィ」

「あー、はいはい、ゆっくり署に帰って聞くから。
暖かいカツどんも食わせてやるから、な?」

そうして、いい年の青年と、少年を乗せたパトカーは闇に消えていく―――

新都の夜は、今日もこうして平和を取り戻すのだった。


















『ふぇいと/すていないトラ』
     そのろくとにぶんのいち












「へぇ、なになに…新都を騒がすストーリートキング逮捕…かぁ」

朝起きると、遠坂が居間で新聞なんか読んでいた。


「へぇ、珍しいじゃないのか?遠坂が早起きなんて…」


そう言う俺の声を聞いて、ムスッと振り返って半眼で応える。

「あんた達の声が五月蝿いのよ…。ったく、朝っぱらから何やってんだか…」

そこまで言って赤くなる…。

うっ、改めてここ最近の生活が凄まじく桃色であることを思い出して、
俺も少しテレが伝染してしまった。




そうして互い黙って居ると、遠坂か話始めた。

「まぁ、ともかくああいった事は人が居ないときに、その、やんなさいよ…」

ははは、そうは言ってもね、遠坂さん。
俺の横に寝てる方がそうはさせてくれんのですよ。

「ははは、まぁ今後は気をつけます…はい」

苦笑いで応えるしかなかった。




「おはよう御座います、士郎、凛」

「おっはよー!二人とも」

そこに颯爽と現れるライダーとイリア。

なぜか二人とも、ランニングウエアだ。

「ん…?どうしたんだその格好?走ってきたのか?」

と、俺が質問すると、

「ええ、そうよ。最近運動不足だったし、早朝ランニングもいいでしょう?」

と元気にイリヤが答える。

「フフッ、どうしても士郎が作る料理は美味しくて食べ過ぎてしまいますから。
こうやって体を引き締めているんですよ。しかし、良いものですね、こうやって
早起きして汗を流すとは。
さらに朝から風呂に入ってその汗を流す…うーん、最高の贅沢です」

と、額に汗を光らせてライダーが楽しそうに答えた。


「へぇ、あんた達そんな事やっててるんだ…。私も明日から走ろうかしら?」

なんて、遠坂も興味しんしんだ。


「なんか健康にも良いし面白そうだなぁ。二人ともすごく充実してるし。
運動不足って言えば、俺も最近ドタバタしてて稽古もろくにしてないからなぁ…」

そう言って、ふと考え込む俺の手をイリヤが引っ張ってくる。

「だったらシロウもいっしょに走らない?健康に良いし、楽しいんだから〜」

うーん、でもなぁ。
そうすると朝飯作るのも遅れるし、
何より朝のお勤めが…

「それはいい考えですね、イリヤ。士郎どうでしょう?明日からは一緒に走りませんか?
もちろんお風呂も一緒に入りますよね?イリヤも私もそれが楽しみなんですから…」

クスッと妖艶な微笑みのライダー姉さま。
イリヤもぺロッと舌を出してだして照れ笑いしていた。

ふっ。

人間正直が一番だよな…うん。


「それじゃぁ…」

と言いかけるのも束の間、ライダーがガシッと腕を組む。

「話が決まれば、さぁ。今日から一緒に汗を流しましょう。明日の予行練習です」

と、脱衣所に引っ張っていかれる。

ふわぁ、腕にマショマロが当たってるよ〜。
と、夢心地で風呂へ向かったのだった。








が、現実は待っているんですね、パパン。




セイバーは、廊下の壁に寄りかかるようにしてこちらを見てました。

瞳は、いつものライトグリーンが燃える様に、深緑に変わっています。
怖いですねー!


「シロウ…、朝から随分と楽しそうですね…。
おやぁ?ライダーにイリヤ、どちらに行くのですか?」

この状況を知ってか知らずか、イリヤは先ほどと同じ口調で答えていた。

「うん?お風呂に入るのよ、シロウと一緒にね。ねー、シロウ?」

「そうそう、私達汗をかいてしまって。シロウに背中を流してもらおうかと思って
誘ったところ、士郎も快く引き受けてくださいましたので一緒に入ろうかと。
だから、貴女が口出しすることなんて何もありませんよ、セイバー」

フッと、口を吊り上げセイバーはこちら見下ろすような目線だ。

「ほほぅ…。奇遇ですね、私も丁度、汗を流そうと思っていたところなのですが…。
シロウ、私の背中は流してはもらえないんでしょうか?」

へっ?汗って、そりゃまぁ、何した後だし汗は俺もかいてたけど、
お前いつも入ってなかったんじゃぁ…。

「セイバー、背中くらいご自分で流したら如何です?
なんなら私愛用のヘチマたわしを貸してあげますよ?」

ライダーがクスリと笑いながら挑発してる…。

「ハッ、だったら貴女こそ、そのヘチマたわしで自分の背中を洗い流せば
いいではありませんか!
シロウは私の背中を流すんです!!」

セイバーが、はっきりと怒りを込めてライダーに向かって言った。

が、当のライダーは涼しげにそれを受け流す。

「いえいえ、私もただで背中を流して貰うわけではありませんよ。
お礼と言ってはなんですが、私も自分のスポンジでシロウの背中を流して
差し上げようというのです。
セイバーは…、ふふ、これは酷でしたね。シロウが痛がってしまうかもしれません」

と言って、自分の豊かな双房を揺すってみせる。

おうっ!そうだったのかぁ!
こいつは一本取られたね!てへっ♪


「フッ、フフフフフウゥ〜フフフフフフフフ…。
ライダー…今日の貴女は随分と口の利き方を知らないようですね…。
その口どうしてくれましょうか…えぇ?
って、…ぅ!?」



と、今にも飛び掛りそうだったセイバーが口元を抑えて、
脱衣所のほうへ走っていった。





そして――――――――
ジャァァァッと脱衣所から溢れ出す水の音――――








俺は何が起こったかわからず、ただ立ち止まって



「まさかね…」
「これは…不味い事になったかもしれません…」

という、イリヤとライダーの呟きを聞いていた…。

セイバーは、暫らく帰ってこなかった。



















衛宮家――――居間。

そこに、朝の食卓の風景は無く、
ただ、ただ重い空気が流れる。


苛立たげににチャンネルを変える遠坂。

怒った顔で、俺とセイバーの顔を交互に見るイリヤ。

ライダーは、溜息をつきつつ、どうしたものでしょうと繰り返すばかり。

アチャ岡はニヤニヤしながら俺の顔を見て、目が合うと、グッと親指を立ていた。

藤ねぇは、朝食が出ない代わりの、この不穏な空気に、俺に質問も出来ず涙ぐんでいる。

そして――――――


セイバーは、俺の肩に頭を寄りかからせ、こちらを優しく見つめながら、










愛しげに、自分の腹部を撫でていた…。





それは…

つまり…、


そういう事なのか…?




「衛宮君…もういい加減諦めなきゃいけないんじゃない…?」

テレビを消した遠坂が、
本当に怖い笑顔でこちらに話し掛けてくる。

「な、なにがさ…?なんだよ、そのみんなも…。い、言いたいことがあったら…」

俺はみんなを見回して、そう言うのが精一杯だった。


「士郎…、率直に聞きます。きちんとしてましたか…ゴム」

ライダーが、深刻に眉に皺を寄せそんな事を聞いてきた。

「えっと…、少しは…」

「正確にいうと、1割ほどでしょうか。学校で使ったくらいです。
ねぇ、シロウ」

セイバーは頭を肩にスリスリしながら嬉しそうに答える。


う…確かに。一成に貰った時ぐらいか使ったのって言えば…。


「じゃぁ次の質問ね。シロウ、きちんと外に出してたんでしょうね?」

なっ!?
イリヤぁ〜お前子供のくせになんちゅう質問するんだぁ〜…。

この質問にも、セイバーが俺の代わりにハキハキ答えた。

「いえ、シロウからのありがたい性。零したことなどありません。
全て受け止めています、ねぇ、シロウ」

今度は頬にスリスリしてセイバーは上機嫌だった。



「つまりはそういう事…はぁ。あんたがここまで馬鹿だったなんてね。
衛宮君とりあえず言っとくわ、オメデトウ」

遠坂は、本当にブッチギレな微笑で祝福してくれた。
い、胃が痛い…。


「フッ、フフフフフ…し、士郎、お前良いぞ。その歳でパパでチュカー?
グッジョブ!よしよしお祝いに…」

どこからとも無く、ベビーグッズを取り出すアチャ岡。
満面の笑みで差し出された、おしゃぶり、よだれ掛け、パンツ…
全て赤色だった―――




「ふふ、ありがとうアチャ岡。その気持ちだけで…」

それをそっと縁側にポイするセイバー。
あ…、アチャ岡涙目だ…。



そして――――
イリヤは泣いていた。

「嫌だよぅ!シロウお父さんになっちゃうの?セイバーと結婚しちゃうの!?
そんなの、そんなの…う、うわぁぁぁぁん!!」

イリヤの頭を優しく撫でながら、ライダーも

「しょうがないですよ、イリヤ…。もうこうなってしまっては打つ手が…。
悔しいのは私とて同じ…う、うぅ」

二人は抱き合って泣いていた。





そうして、ようやくここに来て、トラが気づいてしまったようだ…。


「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って…。
今の話を総合すると…士郎…セイバーちゃん…撫でるお腹、
パパ、ベビー用品、結婚………」


そこでぴたっと止まる、トラ。

前髪の影で、藤ねぇの表情が読めない…。



そしてゆらりと、立ち上がる藤ねぇ…。




「さらば青春の日々…こんにちは絶望と言う明日…。
逝きとし逝ける者に憎悪と嫉妬と血と臓腑を…、くっくっくっく!」


「ふっ、藤ねぇ…?」

どうしようもない嫌な予感と悪寒が全身にへばり付いてくる…。
あ、あ、やばい…



「士郎…とりあえずおめでとうと言っておくわ…。
もう…子供までこさえちゃって、オマセさん…。」

背中が汗でぐっしょりだ…。
初めて藤ねぇにエロ本が見つかった時を思い出す。
まさかまさか…
あれが出るのか―――――――!?


「セイバーちゃん、おめでとう…。
お腹の子には、悪いけど…士郎はここで私と…
死ぬのよ!!!」

藤ねぇの手には何時の間にか、虎竹刀!
くっ、これが出たって事は!!?

俺はとっさにセイバーを押し横に飛ばし、
縁側に向けて、背中から転がり、庭へ落ちた――――




そして、素早く上げた視線の先には…








俺がさっき居たところに、抜き身の刀が刺さっていた…。
ひぃぃぃぃぃぃぃ!!




「タ、タイガ!?」

セイバーが驚いた声で、藤ねぇを見ていた。
みんなも唖然としている。

そりゃぁ、そうだろう。
普段ははっちゃけているだけの藤ねぇ…。

しかし、一度火がつくと…
デンジャラスマーダーと化すのであった。



「あらあら、なかなか良い動きするようになったじゃない、士郎…。
お姉ちゃんは嬉しいよ…。
それにとっさにセイバーちゃんまで庇っちゃって…お姉ちゃんは嫉妬しちゃうぞ?」


刀をスッと畳から抜き、藤ねぇはゆっくりと、縁側を降りてくる。

「久しぶりに見たよ、真・虎竹刀…。藤ねぇ…本気か?」

藤ねぇは、かなーりキている微笑で

「うん、本気だよ…士郎。私に黙って不純異性交遊ばかりか、子供まで作るとは…。
ちょーっと痛い目にあわないとね?」

すり足で徐々に距離を詰めてくる藤ねぇ。

おいー!
それがちょっと痛い目なのか!?
死ぬ、絶対死ぬ!
間違いなく真っ二つだぞ、うわわわわ!?



あああ、認知するまもなく俺はあの世へ行くのか…?
ってか、バットエンドですかー?
このあと、目の前の人とブルマなイリヤで雑談会?

そう思いつつ、和風の襖なんかが見えた瞬間、
突如として頭に声が響く。


『士郎…士郎よ…』

はっ!?その声は先代デスカー?

『そうだ士郎。お前は非常に危機的状況に立っているな…』

そんなん見て分かるじゃないデスカー!?
何デスカー!
暇つぶしなのデスカー?
2作目に向けて特訓中ではなかったのデスカー!?

『うん?いやまぁアルクと毎日楽しくやってるんだけど、そっちはどうかなーと思って』

いやぁ…楽しくっていうか、死ぬっていうか…
てか、なんかアドバイスしてくださいよっ!先代!!

『ハハハ、いやぁまぁ俺もそういう場面たくさん合ったからなぁ。
妹に殺されかけたり、先輩に殺されかけたり、アルクェイドに殺されかけたり…。
まぁ、アドバイスはあるっちゃあるんだけど…』

本当ですか!?
すぐ教えてください、今すぐに!!
じゃなきゃ死んでしまって、トラとブルマぁがぁぁぁ!!

『じゃぁ、一つだけ、愛だ、士郎。Love…。どんな時も相手を慈しむ心。
それこそがお前にとって最大の武器になるんだ…。
がんばれ、それを乗り越えれば…きっと…そうお約束のHイベントだぞ…』

そう言って消えていく先代の気配。


Hイベント…、ってことは藤ねぇと?
シット!
てか、こっちは命狙われてるのにそんな展開になるかぁぁぁ!!


はぁ、はぁ。
しかし、仮にもあの世界を行きぬいた先代の言葉。
あながち外れって訳でもあるまい。

ここはそれにかけるしかっ!





俺は覚悟を決めて、藤ねぇに精一杯微笑んだ。

「藤ねぇ、愛して…」

る、と言いながら踏み出す…


シュンッ!

パサァ…。

前髪が数本…散った。

「チッ!士郎テッキリ右に逃げると思って振るったのに、
まさか踏み出してくるなんてね…やるわ…」





先代ぃぃぃ!!
聞いてないですよー!!
トラにはラブは難しいんじゃぁ!?
うわー、あんな絶倫眼鏡のいう事となんて信じるんじゃなかったぁぁぁぁ!!

と、胸の中でしたたか後悔しながら、ポケットに忍ばした
先代の形見の『七つ夜』を引き抜こうとして――――








「■■■―――――――――――――――!!!」
「駄目ぇー―――――――――――――!!!」

凄まじい声を聞いたのだった。


ビクッとして振り返る藤ねぇ。

そこには、スマキでコロコロ転がっているバー坂さんと桜が
泣きそうになりながらこちらを見ている。



そういやぁ、今日はバ―坂さん見てなかったなぁ。

その横で、しきりに頷いているイリヤ。
その表情がぱぁっと明るくなった。

「タイガッ!止め止めぇーー!!今真相がわかったから!」

「ふえっ!?真相って」

そういって、刀を仕舞って、居間へと藤ねぇは行ってしまった。



一人残される俺…。

助かったのか…?
はははぁ…そうやって俺は気を失っていくのであった…。
先代…愛はいらないっすよ…ラブってなに?











目が覚めると、藤ねぇが膝枕していた。

「士郎…、気がついた?」

「はぁ、これで先代の声を聞いたのは二度目だよ…ったく。
で、何だったんだよ、一体…」

「ふふふ、それについては私が説明するわ」

とイリヤが俺の髪を撫でながら、説明を始める―――









どうやら、昨日桜が夜遅く帰宅すると、セイバーが居間に居たらしい。

良くみると、セイバーは一人でで酒盛りしていたそうだ。
なんとなく上機嫌だった桜は、そのまま珍しくセイバーと意気投合。

で、酔っ払った桜が何気に話した一言がいけなかった。

「んでですね〜主将の奴ったら、妊娠した振りして先輩と結婚するつもりだったんですよ〜!
かー!そんないい手が合ったなんてと、私は舌鼓を打ちましたよ〜!!
あっはっは、まぁ、セイバーさんなんかそんな姑息な手を使う頭もないから楽ですけどねー♪
あっはっは〜ヒック!まぁ手は早いですけど、この獣っ!!」

「ほぅ…。それはいい事を聞きました。桜…感謝します。いや、貴方相手に酒盛りした
甲斐があるというものです。しかし、頭が…とはいい根性ですね!せやっ!」

「ふにゃ?」

桜、スマキへ。





さらに朝の洗面所にて。

「うぇーぃ、昨日はついつい飲みすぎてしまいました。
ったくあの色欲魔と飲むとろくな事になりませんね。
吐いたのはいつ振りでしょうか…、ん?
んん?吐く…私…これは…ふっふっふっふ…使えますね。
シロウ…二人でめでたくゴールインと行きましょう!
あぁ、結婚式はやはり教会ですね、そろそろきっちりけじめを付けたいですし。
命短し嫁行け乙女…、もうライダーなんかには大きな顔をさせません…フフフ」



それを偶然立ちしてしまったバー坂さん。

その恐ろしい計画をイリヤに知らせようとして、

「バ―坂、チャペルが鳴り響くそのときまで、くっくっく」

肩をつかまれていたのだった。

「!?」

バ―坂さんすまきへ。

そうして今朝の騒動に戻る。


結局、脱衣所の横の押入れから何とか脱出して
間に合ったというわけらしかった。

なんだよ、それ?



何時の間にか時刻は正午過ぎ。
居間は、みんなで昼飯を食べていた。

そこには、アチャ岡が作ったらしい親子丼が振舞われていた。





「で、セイバーは?桜も居ないようだけど…」

一言文句をいわなきゃと思いながら、今回の主役を探す。

「それならあそこに…」

ライダーが微笑みながら、指差した方向には…




セイバーと桜が簀巻きになって、木からぶら下げられていたのだった。
二人ともミノムシみたいに揺れていた。



「ああ!なんで私まで―――!!先輩っ!私は命の恩人なんですよ!
ってか私のやろうとしていた事を、この金髪盗作色ボケ娘っぇ!!」

桜、それだけ言えば十分そのに居る資格があると思うよ…。
セイバーがやらなかったらお前がって…、それじゃ俺は今ごろセイバーとトラにかかって…。
――――やっぱミノムシ決定。


「シロウ〜お腹の子の為にも栄養を!親子丼を所望します!」

と、昼食の催促をするセイバー。
なにげにつき通す意思は偉いが…今回はちょっとまずかったよ。
すまん、少し反省してくれ、と心を鬼にして俺も親子丼を手に取った。

「はい、パパ。お茶どうぞ」

といってくる、アチャ岡を殴り飛ばしつつ、
今日もいい天気だなと、庭のミノムシたちを無視し
箸をつけるのであった。

ああ、生きてるって素晴らしいねぇ。
















「セイバーに桜…それに藤村先生…これは一筋縄じゃぁ…行きそうに無いわ、はぁ」


誰にも気づかれぬまま、入るタイミングを逃した―――――
美綴綾子には誰も気がつかなかったが。



そうやって、衛宮家は騒がしくも穏やかな午後を迎えるのであった。




「ああ!士郎、私もどうやら…うっ、蹴った、蹴ったわよパパ♪」

「シロウ、すっぱいものが食べたいの!これって…」

「お姉ちゃん、もう半年は来てないのよ、アレが…責任とってよ、ね?士郎ぅ」

「上がったんじゃないのか、それって」

「藤村先生ってそんなお年だったんですか?お若く見えますねぇ、フフフ」

「おお、士郎!グッジョブ!
なに名前は私がつけてやろう、アチャ彦、アチャ太郎、アチャ美なんてのはどうだろうか」

「センス無いですね、アチャ岡。激しくそう思いますが」

「赤いだけが取り得だもんね、赤いの。ほら、シロウに甘えられないでしょ、どいてよ!」

「ってか、私の代わりに入った教師って、彼方なの!?こんのぅ!!」

「げはっ!これイリヤ水月を蹴り上げるなっ!た、大河よ、話し合おう、
ヒィィッ!日本刀は痛いからいやぁぁぁ」


まぁ、血と喧騒は耐えなかったわけだが。

ははは…はぁ。





つづく






あとがき

  ギャグが今一だったか!!
  クソウ、なんか中途半端にあまあま、荒みだなぁ。
  いやいや、次回こそ!
  今回は、日常を書こうと日頃日の目を見ないキャラの
  補完が目的でしたが、トラは目立てたでしょうか?

  次回こそきっちりギャグで
  七話で会いましょう。

  おやすみなさい。

  唄子

11: 唄子 (2004/04/20 01:52:31)[orange.peco.chipi@m2.dion.ne.jp]

がはっ!そのななと二分の一です!
なんで過去にタイムスリップしてんだよ!
ごめんなさい。

12: 唄子 (2004/04/25 20:27:51)[orange.peco.chipi@m2.dion.ne.jp]

*注意 本当に最近は壊れ方が酷いので、心にシールドを張って読みましょう。
*イメージはそこはかとではなく、確実にぶっ壊しています。
*しかし、作者はFate/stay nightが大好きです。
さぁ、上記の心得を見て、逝ける人は逝ってください。

今回はちと長いです。頑張ってください。









それはある晴れた夕方。

時刻も5時回って、そろそろ夕食の準備時だった。






本日の夕食は、ビーフシチューとヒラメのムニエル、及びシーザーサラダ。
そして、デザートには紅茶シフォンのオマケつき。

最近の衛宮邸台所事情は非常に助かっている。

なぜなら、食事及び家事全般が出来る者が急に増えたからだ。



まず、俺、そして遠坂、桜……二人は最近泊り込むようになってから、手伝ってくれている。
さらに、意外なことにバー坂さんとアチャ岡。
この二人もそつ無くなんでもこなしてしまう。


こうして、食事の準備も二人、もしくは三人で分担することにより、
前よりずっと時間が短縮されることとなった。
ただし、食事は男性陣がメインだが。



しかも、一番料理が上手いのが――――



『バ―坂さん』というのが意外と思わないか? 

特に中華の火加減は遠坂さえも凌ぐ。
彼は料理の鉄人だったのだ。

まさに漢!
中華を作るバー坂さんの背中は、すこし憧れてしまうのだ。
それくらいカッコよかった。

まぁ、今日の献立はそこまで火加減は要求されないから、
横でチンマリとサラダを作ってたりする。

本当に器用だなぁ、バー坂さん。
あのぶっとい指で、なんでそんなに綺麗に盛れるんだよ?
今度シーザードレッシングの作り方教えて貰うことにしよう。



俺がそんな風に考えながら、ビーフシチューの仕上げにかかっていると

玄関の方から、
ピンポーン、ピンポーン……

とチャイムを押す音が聞こえてきた。




居間を振り返ると、


セイバーとライダーはビールを飲みながらドラマの再放送を見ている。
もちろん、玄関に出る気なし。

イリヤは、なにか難しそうな顔して本を読んでいて気づきすらしていない。

藤ねぇ、桜は部活で戻って居ないし、遠坂は実家に着替えを取りにいっている。



アチャ岡は――――


「ハァ、ハァ、ここからが良い所なんだ、済まんがパス」

なんて言いながら、嬉しそうにムニエルにホワイトソースを落としている。
ううっ、アチャ岡、息遣いが荒い上に、なんだかホワイトソースが汚れて見えるから止せ。


バ―坂さんは……

「■■■――?」

出て行こうか、とこちらを振り返る、けど……

いや、好意は嬉しいけどご近所にうわさになりそうだから、ちょっと。

ああ、寂しそうにサラダの盛り付けに戻るバー坂さん。
すまん! お前は見た目がかなり怖い上に、意思疎通が素人には厳しいから。


そんなわけで俺が出るしかなかった。
居間でのほほんとしている3人を睨む!

くっ! この役立たずぐーたら部隊どもがっ!! 

……なんて言えないけど、怖いから。





「はーぃ、いま出まーす」

とりあえず、1、2分待たしたかも知れないので走って玄関へ。



慌てて引き戸を開けた。







そこにはきっちりとスーツを着込み、涼しげな美形のお兄さんが立っていた。

「夕食時だとは思ったのだが、準備中であったか? すまない」

そう言って頭を下げてくる――美形のお兄さん。




ん? なんで準備中って……はっ!?
自分の体を見下ろすと、俺はエプロンつけたままだった。

『セイバーちゃんラブ』

と勝手に書かれたエプロンを。

くっ! 痛い、これは。
素早く腰の紐を解きつつ、そいつを外してごまかす。

「えっと、どういった御用でしょうか?」

なんとか平常心を保ちつつ、その男性に用件を聞いた。

「いやなに、この隣の借家に越してきたゆえな。今日は挨拶に来たというわけだ。
何かと世話になるやも知れぬし、これは蕎麦の代わりに蕎麦饅頭だ。
良ければ家族と食べて欲しい」

と言って、スッと枯れ草色の上品な包みを渡してくる。


「あっ、これはご親切にどうも」

いまどき珍しく、律儀に蕎麦にこだわる心遣いがなんとも嬉しい。
ありがたく引っ越し蕎麦饅頭を頂いた。



あ……。
肝心な事この人忘れてる。

「あの、うちは衛宮って言うんですけど、これからもよろしくお願いします。
で……」

そこで、しまったと言う顔の男性。
いまどき珍しい長髪を流しながら、爽やかな笑顔で答えてくる。

「佐々木……という。まぁ、有り触れた苗字だが、今後とも一つよろしくたのむ」

佐々木さんか……。
まぁ、確かにありふれてる。
いや、それはいいが借家住まいって事は結婚でもしているんだろうか?
平屋とはいえ、隣の家はどう見ても独身男性が住まうには、
ちょっと広いと感じるのだが。

そんな視線を受けて、少しはにかむ、佐々木の兄さん。

「ははは、誤解しているようだが私は一人身だ。
そうそう、君位の歳の弟も一緒に住んでいる。
今日から学校にいっているはずだが、君の学年はいくつだろうか?」

ああ、それで借家へ。
いや、色々事情があるのだろうが、それは聞かないほうが良いだろう。

そう思いながら、今日の学校での出来事を振り返る――――
うーん、転校生はうちの学年には居なかったなぁ。

「えっと、俺は2年ですけど、弟さんは?」

「うん、1年だ。それでは気づかぬやも知れぬな。
おぉそうそう、弟の名は『破格の財がその身に産まれますように』と祈りを込めて……
破産というのだが、知らぬか?
あれは根が不器用な上、内気でなぁ。まぁ、一つ宜しくしてやってくれ」

いや、そんな大手銀行が怖がるような名前は、聞いたことが無かったが、
もっと名前の付け方あったと思うのは俺だけだろうか?


「あー、いや、まだ聞いてませんね。でも、まぁそのうち会うかも知れませんし、
そのときは宜しくさせていただきます」

と適当に相槌打っておいた。
まぁ、兄ちゃん似だったらかなりモテるだろうから、そのうちに分かるだろ。







と、そこでが帰宅してくる桜。

「ただいまー! あぁん、先輩むっちゃラブ! デス!
んん〜あら、お客さんですか、先輩?」


恥ずかしい挨拶もなんのその、素でお客さんの顔をまじまじと見つめる桜。
お前に恥は無いのか?

そうだ、1年と言えば……

「桜、この人はお隣に越してきた佐々木さん。
佐々木さん、この子は1年の桜って言うんですけど……」


「どうも、衛宮桜と申します。主人がいつもお世話になっております」

と、すかさず妻気取りであった。

まぁいいや。セイバーはどうせドラマ見てて気づいてないし
適当に。

佐々木さんは、妻の部分を無視して嬉しそうに桜に聞いてくる

「おお、君は1年生と? 今日転校生が来なかったか? 私の弟なのだが」

少し考え込むように、首をかしげながら
視線はすこし上のほうを見る桜。

「うーん? 佐々木さんのですか? そんな美形の人は居ませんでしたけど……。
ああ! 先輩それよりも聞いてくださいよ!! 今日は学校で痴漢に会ったんです!!」

佐々木さんの質問も適当に、俺に愚痴ってくる。

「転校生くらい気づくだろうに……で、痴漢って」

「なんか右手だけが妙に長いんですよ、そいつ。それでですね、
そいつの肘が私豊満なの胸に!!
先輩の大事な豊満でタワワで、
弾けんばかりのこの胸に当たって、謝りもしなかったんですよ!!」

桜は、鼻息も荒く捲くし立ててきた。

「いや、そりゃ事故だろうけど、でどうしたよ?」

桜は俺の返答に更にヒートアップして答えた。
満面の笑みで。







「ンフフフフフ〜♪ 首根っこ捕まえたら顔がいやらしかったので、ロッカーに閉じ込めて、
重しつけて川に流してやりましたよ? ブイッ!!」

誇らしげににピースしてくる桜、すごく爽やかだ。


「顔は白い面ではなかったか……?」

あれ、佐々木さん、顔が青いけど。


んん!?
もしかして……



「そうそう、青白い顔してニヤニヤ笑ってるんですよあいつ、恐るべき常習犯ですね!
先輩、あれは犯罪者の顔です、きっと」

と、さらりと肯定してきて、犯罪者扱いだった。








俺は何となくわかってきた。

あー、多分やっちゃった。
桜またやっちゃったよ。







「は、はさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」


佐々木さんは玄関を飛び出していった。



さらば衛宮家の評判。
赤点確実だ。





「あ、蕎麦饅頭。 先輩食後のお茶受けが出来てよかったですね」

何事も無かった様に、蕎麦饅頭を持ってすたすた奥へ上がっていく桜。




俺の胸に一陣の乾いた風が吹き抜ける――――


「桜……、少し前まではまともだったのに、どうして?」



居間の方で声があがる――――――――――――


「ああ!セイバーさんもライダーさんもビール飲んでるじゃないデスカー!?」

「ああ、サクラは五月蝿いですね。まぁ、貴女も飲みなさい」

「あ、こりゃセイバーさん……おーっとっと」

「桜お帰りなさい、では乾杯」

「はい、ライダーさん乾杯ぁーい!」

「フフ、サクラ良い呑みっぷりですね」

「ぷっはぁぁぁ!! うーん、帰宅後の一杯は外せませんね」

「うわっ汚い、サクラ! ビールがかかって本が汚れたじゃないっ!」

「それではそろそろ酒行きましょうか、酒。アチャ岡、熱燗を入れなさい」

「セイバー、私は冷で。バー坂、ツマミはまだですか?」

居間がぐーたら部隊達によって、異世界へと染められていく。




ううっ、目が霞んできた。
赤い夕日が目に染みる。



「パパン、俺、頑張ってるから……」


夕日の向こうで、親父が股間を抑えて微笑んでいた。


やはり涙は止まらなかった。












『ふぇいと/すていないトラ』
     そのはち














そして、我が家のぐーたら部隊は、今日もひたすらぐーたらだった。





「フフフ……、こうゆう式場でシロウと結婚したかったですね」

寝転がって、お猪口片手にドラマの再放送を見るセイバー。
何気に、夜の寝床と、学校意外はオヤジなのか、お前は……?


「もぅ、ちょっとセイバー! いい加減テレビ私にも見せなさいよ!!
私これからゲームするんだから」

イリヤがソフト片手に、セイバーを起そうとしている。

お前も学校とかいいのか? 義務教育はどうしたんだ?
まだまだ少女のお前が、ウィザ○リィなんて夢がなさ過ぎるし、
せめてゼ○ダか、ポ○モンにしとけよ。


そんな、二人を尻目に、桜と飲んでるライダー。

「まぁまぁ、良いではないですか、イリヤ。それに私もこのドラマは気になります。
セイバー?貴女もやっぱり結婚は憧れるものなのですか?」

イリヤを嗜めつつ、セイバーと25過ぎの結婚論なんか話し始めていた。

「愚問ですね、ライダー。やはり憧れますよ。
でなければこの前のような策は使いません。
やはり女と生まれてきたからには、愛する男性と生涯の愛を誓いたいものですね。
それでは、貴女はどうなのです?」

そう言って、ライダーのコップに日本酒を注ぐセイバー。


「ああ、セイバーどうも。
私は、特には憧れはありませんね。このドラマじゃ結婚というのが
ゴールのように描かれていますが、そうは思いません。
結婚したから人生が終わるわけではないでしょう?これからもその人を愛していくのに
何故儀式めいたことを?そんな契約みたいな愛は冷めてしまいそうで……嫌ですね」


ドンッと、コップを打ち下ろして……これに桜が口を挟む。


「私はやはり憧れます。結婚と言うのはこれから生活を共にする二人が、
新たな誓いを胸に門出を祝う場面でしょう?
それ無しではダラダラ恋愛に過ぎないんじゃないですか?
こう、家族とかそういうものって良いなぁって思ってますし。
癪ですけど、セイバーさんと同意見です、私。
結婚もせずに二人でチンタラなんて、なんだか怠惰的でちょっと……、
どうかと思いますけど。
やっぱりこう妻として夫と共に幸せを紡いでいく……それが幸せですよ、ねぇ先輩?」


グビッと日本酒を飲み干して、それを鼻で笑うライダー。
酔いが回ってきたのか目が怖い。

「フフフ、家族とは……。よく言いますね桜。
士郎の前だから良い子ぶってしまって、フッ。
どうせ貴女のことです、ナニをナニして、ナニする事しかないのではありませんか?
そのどす黒いピンクの頭の中は……クフッ」


それを聞いてうんうんと頷くセイバー。


「そうそう、色欲魔はそれしかありませんから、私とは違いますね。
いいですかサクラ?私はシロウと二人で……こうなんというか、
夜は娼婦、昼も娼婦の関係で、明るい家庭を築くのが理想なのです。
そのようにふしだらな考えと一緒にしないで欲しいですね」


「なっ!昼も娼婦でってどんな家庭を築くつもりですかっ!?
私は先輩と夫婦円満で、子供も含め4、5Pしたいと願うほどの家庭的な女ですよ!
そのように見境の無いセイバーさんこそまっピンクでド変体です!!
そうですよね、先輩!」


桜が俺の方を、熱が篭った目で見つめる。
いやぁ、幾分かは昼も娼婦のほうが良いけどなぁ。


「やれやれ、二人とも体だけの関係ではないですか。
いいですか? 愛とは心を重ねるもの。そのような関係では先が見えますね、フフフ。
士郎、私にしなさい。あなたを永遠に虜にして差し上げます」

そういって目を細くして笑うライダー。
正直色っぽいぞ!

「そういうライダーこそ、どうなんですか?
貴女もどうせナニをナニしてナニすることしか頭にはないではないですか? 
この長身エロめがね!
シロウは私が好きなんですよ、ねっ士郎?
この聖女のようなロリータ体型にメロメロなのです。
タワワに実った、ヤシの実さげている貴女は論外でしょうから、
大人しく隅で呑んでいなさい」

「セイバー、貴女今言ってはいけない事を言いましたね!
フッ、貴女のちっさい幼児体型を八つ当たりしてはいけませんよ、私の八頭身に。
まぁ、ロリーな胸でも心は純ではないんですから、そのジャンルも狙えないでしょうけど。
士郎はあなたの暴力が怖くて、毎夜ともに過ごしているだけとは気付かないんですか? 
私はそう、夜のジャンヌジルク。
士郎を開放する為にここに使わされたのです。
貴女は人参でも大根でも突っ込んでなさい!」



なぜか部屋の気温が上昇した錯覚に見舞われる。
いや、セイバーとライダーの間には……蜃気楼かよっ!? 

今まさに、獅子と大蛇がお互いの喉元を食いちぎらんとしている――――――――
そんなオーラすら見えてしまった。

何時からこれは少年漫画に……。







そこに遅れて遠坂さん、何気に帰宅。
後ろから藤ねぇもひょっこり登場した。


「あんた達、大声で叫ぶのは辞めなさいよ、ったく。
外まで聞こえてるわよ? こっちが恥ずかしくなってくるじゃない。
あ、それと桜、人参はいいけど、大根はどうかと思うわよ。若いとはいっても
ガバガバじゃね。それと使った野菜は自分で食べてね、私は食べたくないから」

そう言いながら、自分の部屋に荷物を置きにいく遠坂さん。


「遠坂先輩っ!? わ、私じゃなくてセイバーさんがですっ!!
私には通販で買った――――」

「誰が人参使ってますかっ!!」



ドバキッ!




無常にも、ライダーの台詞の所為で、桜は縁側に飛んでいってしまった。
合掌。



それから程なくして、夕食が始まった。

桜は右頬腫らしながら、セイバーを始終睨んでたけど。












そして食後のお茶の時間――

「へぇ、なになに? あんた達、結婚なんか語ってたの?」

面白い事を見つけたように、遠坂がセイバー達に聞いている。

ああ、蒸し返すんじゃない! せっかく忘れてたところを!!
見ると、遠坂の横には楽しげに事の顛末を見ている赤い影――アチャ岡が。

あの野郎! さては遠坂の奴に吹き込みやがったな? 

アチャ岡は、遠坂と一緒に話の輪に混ざっている。


「ふっふっふ、どうせ皆の事だ。衛宮士郎が狙いなのだろう?
この際だ、結婚するなら誰がいいのか決めてもらってはどうだろうか?」

!!!?
馬鹿な! なんちゅう事を!?
俺に死ねと? そう言うのか、アチャ岡ぁぁぁぁぁぁ!!

俺の気も知らず、こちらをチラッと向いてウインクを一つ。
あの馬鹿は、なにげにキューピッドをやっているつもりらしい。

いらん事すなぁ!

「え、なになにー?」

イリヤも楽しそうにその輪に加わってくる。





こうして衛宮家茶の間は、不思議な話し合いが始まった。

どこからとも無く、馬鹿で赤いのがホワイトボードなんか出してくる。
何処にあったんだ?

そこにスラスラとペンで書かれた議題――――――――

『第一回 士郎との結婚 愛のある風景』

で、話し合いはスタートした。

なんなんだよ、アチャ岡。お前は何がしたいんだ? 
そんな俺に、またウインクするアチャ岡。
なんとなく、一成の家にお泊りしたくなって来たのだった。






「諸君。それでは第一回 士郎と結婚について今日は話し合おうと思う。
議長は私、愛の戦士 アチャ岡。そして有能な性の伝道師 琥珀先生に来てもらっている。
一同、拍手〜」


まばらに起こる拍手――――――――

琥珀先生どうぞっ、というアチャ岡の呼び声に――――襖を開けて登場する女性。




「あは〜♪ どうも皆さんはじめまして。性の伝道師 琥珀でございます。
なにとぞお見知りおきを〜♪」

すっごく楽しそうな笑顔で、そくささと皆に一礼して、アチャ岡の斜め横に座った。


てか、誰だよ、この人?


スラリと着物を着こなして、まだ18才くらいか……妙な落ち着きが伺える琥珀先生。
その琥珀先生が、ニコニコとこちらを見ながら、こちらに手を振ってくれたのだった。



キュン!
いやん、むっちゃカワエエ!!

思わずニヘラと手を振り返す俺。


キッ!!!!!!!

すかさず女性陣に睨まれしまった。



「はっはっは、先生その辺で。士郎、お前は話し合いの進行を妨げるんじゃないぞ?
ではでは、まずは皆さんの理想の結婚生活を聞かせてください。
うーん、ではこちらから順にお願いします。まずは凛から」


赤いのは何時の間にか、俺の背後に回り、猿轡をかませ、手足を縛り上げる!
お、おいちょっと!!
赤いのはニヤリと笑って定位置へ。
ああ、もう逃げられないのか…?


「へ? 私からって、ちょ、ちょっとなんで私まで……」

「まぁまぁ、別に士郎とではなくても良いから、お前にも理想の結婚像とやらがあるだろう?
参考までに教えてくれ」

「う、うーん。まぁ、いいけど……」

乗り気ではない、というか恥ずかしがっている遠坂を無理やり参加させるアチャ岡。
うーん、遠坂の理想の結婚生活かぁ、一体どんなだろ?


「私の理想は……そうね、お互いを主張し合える対等の関係かしら。
なんか甘い結婚生活なんて想像できないし。
結婚後もお互いを励ましあい、自分の時間も大切にして、自立した関係で居たいわね。
子供は、まぁ暫くはいらないかな」

「フッ、実に凛らしい意見だな。独立した女といったところか? 
実にカッコいいではないか」

フムフムと頷きながら、ホワイトボードに書き込むアチャ岡。
遠坂は、フンッと恥ずかしそうに横を向いた。

琥珀先生は、そんな遠坂をニコニコ見つめて、ゆっくりと口を開く。


「まぁ! なかなかしっかりした考えかたですねぇ〜♪ 
でも、逆に言うとお互いの時間を大切にしすぎちゃって、
都合のいい女になってしまいますから気をつけてくださいね〜♪
女は自由に、男は生かさず殺さずが基本ですよ〜。飼われている事を気付かせないように、
さり気無く躾けて、適度に自由にしてやりましょうね」

ぶはっ!!
この人とんでもない事サラッて言ってるよ。


「先生、貴重なご意見ありがとう御座います。
では、次はイリヤ君」

深々と琥珀先生にお辞儀して、礼を言うアチャ岡。
お前の知り合い初めて見たけど、こんなんばっかりか!?

意外なことに、女性陣は感心したようにメモまで取ってる奴がいる。
さ、桜ぁ! お前には飼われないぞ! ブルブル!!





「じゃぁ、次は私ね。コハクの意見はなかなか参考になるわね。私も似た様な物だもの」

と、次はイリヤの理想論が始まった。

「やはり基本は拘束ね。飼うってコハクは言ったけど、
私だったらもっと簡単な方法をとるわ。
まずはシロウの魂を抜き取って、それを人形に移し変えるの。
これで浮気なんか絶対にしないし、
それどころか一人で出歩く事も出来なくなるわ。
フフフ……あとは一生私の傍で、私だけを見ているの。
二人はそうやって未来永劫いっしょに居るのよ。ね、素敵でしょ?
もちろん結婚式は私の腕に抱かれて、厳かに教会で行うのよ!」


ザワッ!
皆固まった。

というか俺が固まった。

お人形さんへ魂を移し変える?
俺一生、イリヤの腕に抱かれたままですか!?
 
そんな悪夢みたいな結婚生活なんて――――――――い、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


ちびっこ悪魔大将軍は、俺の方を向いてペロッと舌お出してテレている。
何をテレてるんだぁ!! 俺は絶対いやだぁぁ!!


「ふむ。ある意味、魂の監獄送り……まさに必殺技だな。イリヤ、100点をあげよう」

「わーいっ!」

アチャ岡は、イリヤを撫で撫でしている。
馬鹿かぁ! お前人の気も知らないで!!


琥珀先生もなかなか困ったような笑顔だ。

「ハハハ……、見た目の割りに、なかなか黒い……ゲフンゲフン!
可愛い夢を持っていますね〜♪
でも、先生は100点はあげれませんよ〜! なぜならその方法には欠点があるからです!!」

ビシッとイリヤを指差しする琥珀先生。

「な、なんで? 完璧じゃない、この方法! シロウを独り占めできるのよ?」

イリヤは、ムスッとして言い返す。
それを優しく見つめる琥珀先生。

「イリヤちゃんはまだ子供だから分からないかもしれませんが……
女の一人寝は寂しいものですよ?
お人形相手に嬉しいのはもうすぐ卒業してしまいます。ですからきちんと男性としての機能、
それに一緒にデートに行けるくらいの自由は残さなければ、殺してしまっているのと一緒です。
肉体的に自由を奪うのではなく、まず心を奴隷にするのです。
洗脳! これが大事なんですよ〜」

サイコさんかよ……。
琥珀先生、これ以上ここのメンバーにいらないことを言わないで下さい。

感心したようにメモを取るイリヤさん。
やめて、その歳で黒くなるのはやめてぇ!。



「コハク先生、私頑張ってみるわ! あぁ、先生っ!!」

イリヤはヒシッと琥珀先生に抱きつき、優しく頭を撫でられている。
悪魔誕生であった。




「フッ、皆考えが妄想みたいなものに過ぎませんね。
見なさい、士郎が怖がっているではないですか。
体を縛ったところで所詮は抑圧された心がいつか爆発するでしょう?
人を縛るにはいつも心を……。琥珀が言う基本は、私も共感を覚えます。
私の考えは、――――――快楽による士郎の支配。
フフ、想像して御覧なさい?
泣いて許しを請う士郎――――
『ああ、ライダー様、私は貴女の奴隷です! もう我慢できません! どうか御慈悲を……』
そういって泣き付く士郎、しかしまだまだ許しません。
そうやって蛇の生殺し――いかさず、出させずを3ヶ月ほど続けて、
事切れそうになったときに……フッ。
やさしく、指先でチョンと突付いて、イカセテあげるのです!
もちろん、その際は条件をつけます……。
貴女は私の犬に成りますか?と、甘く耳元で囁いて、ウフ、フフフフフフフフフフ!!!」

ライダーは考え通りに事が運ぶのを想像しているのか、
自分の体を抱いて、プルプル震えていた。


お前の考えが一番妄想じゃぁぁ!!
もはや結婚の二文字も出てないじゃないか!!
何の話だバカヤローーー!





とうとう我慢出来なくなったのか、藤ねぇが叫ぶ!


「あんた達〜、黙ってきてればいい気になってぇー!!
士郎は私の物なのっ! 士郎は私が貰うんだからっ!」

ガバッと立ち上がって藤ねぇ、右手には虎竹刀が。
ま、まずい……!

俺の頭に警告の二文字が赤く点灯する。


「ああああ! 何を言ってるんですかぁ! 先輩は私の物なんです!
そう決まってるんです! これは決定事項なんです、覆す者には……ふっふっふっふ」

桜もアユアユを従えて、ゆらりと立ち上がる。



「アチャ岡さん、では今日はここまでという事で〜♪」

すかさず逃げる琥珀先生。
あぁ、せめてこの場を纏めて行けェ!



「ふむ、これは議題が士郎と結婚から、恐怖!虎竹刀の秘密に変更する必要があるな」

おい! なにのんびり議題を書き直してるんだ、この赤い変体!!


「フ、分かってましたよ。貴女方が所詮力づくで来る事くらい。
私とてただで引く気はありません。士郎との愛欲の日々のため!
ペガサスを背負う英霊を舐めるんじゃありませんよ!!」

ライダーもスチャッと構える。
なぜか背中にはペガサス座が描かれたりしていた。
なんでさ!?


気付けば、遠坂とイリヤは逃走していた。
お前ら、人を見捨てて……。








そうして場の緊張感がギリギリと高まってくる中、
シフォンケーキを食べ終わったのか、セイバーがスクッと立ち上がる。


「はぁ、懲りない人たちですね。もはや説明は不要でしょう?
シロウと私以外の組み合わせは、存在しないのです。
人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られてゴウ・トゥ・ヘルです!!」


セイバーの声が合図になったか、とうとう戦いが始まった。


まずは桜が動き出す!

「ふんっ、戦はマージャンが基本!! 一番弱そうな藤村先生、
また来世でお会いしましょう。
食らえ! 無限のスケベ椅子っ!!」 


宙に突如と出現した、何十ものスケベ椅子――――――――
それが一斉に藤ねぇへと牙をむいた。


「ふふーんだっ! 桜ちゃん、見くびらないで欲しいわね?
こう見えても私は魔術師、いえ魔法剣士! 伊達に主役張ってないのよ!」

飛んでくるスケベ椅子を、すべて一刀の元に打ち砕く藤ねぇ。
桜の顔に焦りが浮かぶ。

「そんなっ!? あれを防ぐなんて!
ば、ばかなっ!」

フフフと藤ねぇの顔に灯る残忍な微笑み。

「桜ちゃん、本物の魔法剣士の闘争を教えてあげる。
……冬木トラ式制御、3号、6号、限定解除――――――。
くっくっく、行くぞ桜……。
――我がトラはクルクル捻り狂う!
出来上がったら、ホットケーキッ!!」


桜に放たれる、一枚のホットケーキ!

ホットケーキ?
なんじゃそら?

桜は拍子抜けしたように、飛んできたそれを見つめる。

「へ? ホットケーキ……?」




カカッ!!





が、目の前でそれは弾けて凄まじい光と熱の奔流に変わる!

「な、なんでですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」


桜はその光の渦に飲まれてしまった。



一方、その後ろではセイバーとライダーが対峙していた。



「いつも目の上のたんこぶでしたよ、セイバー。
士郎との出会いが早ければ、私になびいていたはずの彼を今は貴女が……!
フッ、しかしそれも今日限りです。貴女はここでリタイヤしていただきます。
覚悟はいいですか?
ハァァァァァァァァァァ――――――――――――」

なぜか唯のお手伝いさんのはずだったライダーから
凄まじい小宇宙の高まりが感じられる。

「やはり猫を被っていましたか。初めから私は貴女がサーヴァントだと気付いていましたよ」

セイバーは余裕しゃくしゃくでライダーへ冷たい目線を投げかけていた。

嘘付け!
今分かっただろお前?


「流石はセイバーといったところでしょうか?
ですが、貴女の戦いぶりはここ連日でお見通しです。
まるで力任せの拳のみ。そんな貴女が果たしてこの技を捌けるでしょうか?
吹っ飛びなさいセイバー! ペガサスのサーヴァント最強奥義!
ペガサス流○けぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」

俺の目には捕らえられない程の高速で打ち出されるライダーの拳!
セイバーはそれを――――――――――――――









「クスッ」


全て片手で受け止めていた。



「ば……そんな筈が……?
貴女はそんなスピードまで身につけていると言うのですか!?」

「これがメインルートも無く、しれっと眼鏡っ子の地位に収まる者の拳か……。
ライダーよ、所詮は貴女の拳は1秒間に100発打ち出されるに過ぎません。
私のようなメインヒロインには止まって見えますよ。
フフッ! ではこちらも拳には拳で持って応える事としましょう。
大食漢の獅子の拳を受けなさい!
ライトニングゥゥゥ・プラ○マァァァァァ!!」


セイバーの拳が輝くと共に、
光の筋が幾重もライダーに向かって放たれる!



「ご、ごーるどデスカァァァァァァァァァー!?」


コマの斜め上に反り返って飛んでったライダーが、
頭からちゃぶ台に……


ゴシャァァ!


と。




「所詮はブロンズ。ゴールドである私には、フフフ……まだまだ届きませんね」

と、何時の間にか初めて見たときと違う、金に輝く鎧を身に着けているセイバーさん。

「く、無念……ガクッ」

ライダーはリタイヤしてしてしまった。







そんなセイバーの背後には、抜き身の真・虎竹刀を持った藤ねぇが構えている。
後ろで焦げてるのは……たぶん桜だろう。
またアフロにでもなるのかな? 

「やっぱり最後に残ったのはセイバーちゃんだったのね。
分かっていたわ、私と戦えるのは貴女ぐらいだとね。
今までマスターとサーヴァントという関係だったけど、それもここまで。
貴方を倒した後、士郎と二人で新婚旅行に行かせて貰うわよ、ハワイへね。
お土産はまずいチョコを期待して待ってて」


「フッフッフ、大人しく許しを請えばマスターのよしみで
結婚式くらいは呼んであげるつもりでしたが……。
明日の朝日を拝めない己のふがいなさを呪いなさい、タイガッ!
ハワイへは私とシロウが行ってきますから、大人しく病院で天井のしみでも数えていなさい!」



新婚旅行といえばハワイなのか? 
一昔前だろそりゃ?
俺は別の場所でもいいんだけど。





そんな俺の思いとは別に、ぶつかり合う金色とトラ縞。

その激しさは、熾烈を極める。

全力で振り下ろされる、藤ねぇの一撃を、拳で払うセイバー。

セイバーの烈火の様な打ち込みを、紙一重で交わす藤ねぇ。

お互いに決めの一手が決まらぬまま、
その打ち合いは100と飛んで、8回続いた。

お互いに最後の攻防で距離をとる。





「ハァ、ハァ、やるわね、セイバーちゃん。伊達に元主役は張ってないわね」

と、肩で息をする藤ねぇ。
セイバーもまた、

「くっ……! やりますね、タイガ。流石は私のマスター。ですが、私は元ではなく、現主役です。
間違えないでもらいましょうかっ!」

疲労が色濃く残っている。


そうして、僅かに息を整えた後、

お互いに最後になるであろう、必殺の構えに入った。

藤ねぇは、刀を斜め下に構え、静かに目を閉じる。

それを必殺の予備動作と見て、セイバーが構えた。

「それじゃあ、セイバーちゃん、さよならね。
この一撃を耐えた者は今まで居ないわ。
最初で最後、この技を出させた事を、深く反省しなさい。
うわぁぁぁぁぁ! 轟け必殺のっ!! 
――――――封神トラ式烈光流星天地両断宇宙剣ぇぇぇん!!!」




セイバーに襲い掛かる、トラ縞模様の剣風!
それは、一つ一つが恐ろしい魔力を秘めていることもさながら、
数は数百を超える――――――――――――!
床の畳を剥ぎ取りつつ、その剣風は、一気に牙をむく。









それらのをすべて見た上で、彼女は高らかに声を上げた!


「見事です、タイガ。よもや私の宝具を出させるとは……
すべての英雄を倒してきたこの技ッ! その身に刻むが良いでしょうっ!!!」



迫り来る剣風を一閃の元に、全てかき消したセイバー。











その手から振るわれる……黒い太刀筋。

彼女には似つかわしくないほどの毒々しい黒い魔剣が握られていた――――――

それは、

「嬢ちゃん、呼んだか?」

と、喋っているではないか!しかも、

「フッ! よもや彼方を呼んでしまうとは私も落ちぶれたものですが、
勝つ為にはしょうがなかったのです。カオス、存分にその力を振るってもらいますよ?」

「はぁ、しょうがねぇなぁ。その代わり……」

「ええ、後で桜の入浴シーンをたっぷり見せてあげます」

「おお、それはそれは! ぼいん最高!!」

と、なにやら商談を成立させていた。


藤ねぇは、そんなセイバーと魔剣との会話を唖然として見つめている。


「なんで? 何で効かないのよぅ!!
反側だよ絶対っおかしいって! 士郎は渡さないんだもんっ!!」

あれほどの自信があった技を防がれてか、
泣きそうになって、瞳に涙を滲ませる藤ねぇ。
そんな藤ねぇに、セイバーがニタリと笑って、黒い刀身を翻す。



「さぁ、逝って来なさいタイガッ!
そ〜れっ!
セイバー・アタックゥゥゥ!!!」





セイバーが、地面に叩き付ける様にその魔剣を振るって――――――――――――









ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!













広がっていく、真っ白い閃光と耳が割れるほどの爆発音。
そこで俺の意識は途絶えてしまった。















体が寒くなってきて、自然に目が覚める。
掛け布団を探して、手を彷徨わせるうちに、
自分の状況が徐々に思い出される。


「んん……? 俺は一体……生きてるのか?」

猿轡はもうはずれていた。
何とか現状を確認しようとして、目を開いて――――――



彼女の膝の上に居ることが分かった。

「セイバー……」

申し訳無さそうな瞳でこちらを見ている彼女。
その目は、先ほどの戦いの中では微塵と見えなかった
少女特有の愛らしさが戻っていた。


「すいません、士郎……。私がつい激情に任せて剣を振るったばかりに、
この屋敷を破壊してしまいました。
本当に、本当にどうお詫びしていいか……う、ううっ」

瞳から零れた、暖かいしずくが俺の頬をぬらしていく……。
彼女らしくもない、驚くほど泣き様だった。


そうして、首を起してみた衛宮邸……。

ああ、なるほど。

居間を中心に、屋敷の4分の1が倒壊している。

でも、おもったよりショックは受けなかった。
彼女が流した涙の暖かさが、心をを少しずつ温めてくれる。


「いいよ、セイバー。家はまた建て直せば良いさ。
お前や、みんなが無事ならそれでいい。
もう泣くなよ、なっ? でも困ったなぁ、今日はどうやって寝たらいいかな?」

とりあえず、家はいつ壊れるか分からないから、ここでは寝れない。

そう思って思案に暮れているところで、セイバーが切り出してくる。

「シロウ、今日はとりあえずそこで寝ませんか?」

そう言って指差されたところには、見た事もない掘っ立て小屋があった。

「えっと、これって……?」

セイバーは恥ずかしげにモジモジしながら答える。

「その、シロウと寝たかったので、とりあえず落ちている木材でこれを……」


その仕草、気持ちに完全にノックアウトな俺。

「セ、セイバーぁぁぁ!」

「アアンッ♪ とりあえず中に入りましょうシロウ」

そうして、俺達は朝までくんずほずれになっていた。

人間死にかけると性欲が増すってのは本当なんだなぁと思いながら。














「おーい、バー坂! これはそこな、ほらっ! あー! 桜も休むなぁ!!」

「なんで私がぁ!? これってあの金髪小娘の仕業じゃないですか!! ったっく!」

ぶつくさ言いつつ、トンカチ片手に木材を打ちつける桜。
それを見て、頷くアチャ岡。


実は、セイバーと士郎が小屋に更け込んだ後、残った人手で
衛宮家復旧作戦が急ピッチで進められていた。

アチャ岡は、家の見取り図をみて、木材を投影している。

バー坂は、アチャ岡が投影してくる木材をせっせと運び、

ライダーと桜がそれを打ちつけたり、はめ込んだりしていた。

ぶつくさ言いながら、次の木材に取り掛かる桜。
口には、玄人の様に釘が咥えられているところが、なんとも憎い。

ライダーは、身軽さを利用して天井を修復している。

意外とみんな息が合っているようで、朝までにはある程度は元通りになりそうな勢いであった。



加えてアチャ岡は、何気に満足そうだった。

「くくっ!ここまで壊れての復旧となれば、さり気無く設計を変えても気付かれまい!
風呂場の横の秘密スペース……士郎待っていろ、覗きのいろはをお前に授けてやるからな!」


せっせと木材を運ぶバー坂。
その表情に微笑らしきものも浮かんでいる。

「■■■〜♪」

満足げに、汗を拭くタオルには『バー坂用』と刺繍が。
恐らく、この作業が終わったら、あの少年が誉めてくれることを想像しているのであろうか? 
足取り軽く、木材を運んで行くのであった。


そして……
不機嫌そうに、釘を打ち付ける桜の元に、ライダーがスススと寄ってくる。

「桜、しょうがありません。敗者が勝者の言う事を聞くのは世の常。
悔しいですが、今のままではセイバーには勝てませんので。
彼女が本気を出したら、この町自体が消し飛んでしまいますし。
力づくでは無理となってしまった今は、作戦を練らないと……」

「なに?ライダー、貴女は私とは縁もゆかりも無いんでしょう?」

「フフッ、そのような冷たい事を言わずに。マスター、協力しようと言っているのです」

「……へぇ。一時休戦という訳? おもしろそうね、ふふふふふ」

「ええ、ですから……」





こうして復旧作業は朝まで続いた。
様々な思或と共に。


彼らの熾烈な戦いはまだまだ続く。










そのころ、ここに居ない彼女はというと……





「くぁぁぁぁ!悔しいよう、キーちゃん」

「おいおい、呑みすぎだぞ、大河」

「うっさいわね!キーちゃんも呑むのだ! 
こうらっ! 金髪、お前も呑め!」

「お、我は呑んでいるぞ!?」

「んなにぃ! ウーロンばっか飲んでんじゃねーぞ! ヘタレ小僧っ!!
ああ、それともなに? 私の注ぐ酒は飲めないって言うんだ? へぇ……」

「ひっ! の、呑みます。わーい、大河のお酒は美味しいなぁ、はは〜……」

教会を占拠して自棄酒をあおっていたのだった。



「おい、ギルガメッシュ……。お前には英霊としての誇りは無いのか?」

「ばか者! 我は誇り高い英雄王なるぞ! 今回は雑種の余興に付き合っているだけだ、
でなければ……」

こっそり二人で話しているところにやってくる、大河。

「雑種って……私のこと?」

真っ青になる英雄王。

「ばっ!ちちちちち、違いますよぅ。
雑種犬のように言峰は何でも食べるなと思って、
そうであろう? なっ? 言峰?」

「酷い言い草だな、ギルガメッシュ。私は好き嫌いが無いだけだ」

やれやれといった風に、頭を振る神父。

「あはは、キーちゃんは昔から変なもの食べるもんねぇ。
未だにあそこのマーボー食べてるの?」

それを見て、大笑いの大河。

「無論だ。あれは食すたびに体が熱くなって最高の一品だ。お前も食べにいくか?
この前、店主からタダ券を2枚もらったのだが……」

「えぇ〜! 私は良いわよ。あ、そうだ。
おい、金髪。あんた行って来なさいよ。
せっかくキーちゃんが誘ってるんだから、無碍にするのも勿体無いでしょ?」

急に振られて、英雄王はフルフルと顔を横に振るだけで精一杯であった。


「ああもう! なん〜か、あんたスッキリしないわ〜。
もう一回ぶん殴らないと分からない見たいねぇ……」

ユラリと迫ってくる、トラ縞。

マーボーとはあの赤い食べ物のことであろう。
一度口にして、死ぬかと思った。二度と口に入れれるはずがない!

だが、断れば死ぬ。
哀れ、ギルガメッシュは、首を縦に振るしか出来なかったのである。

「おお、ではギルガメッシュ明日の朝食は、商店街でな。
私は寝るので、客人の世話は任せたぞ」

「はーい、おやすみキーちゃん。
ほらほら、金髪、朝まで時間はあるんだからどんどん行くわよ!」

そう言って、なみなみとグラスに注がれる日本酒。

もはや救いは無かった。

「おおおお! エンキドゥ!! 我に救いの手をぉぉぉ!!」

バキッ! 

「ヘギャァァァァ!!」

「うっさいわねぇ。とっと呑みなさい!」


こうして、慌しかった一日が幕を閉じたのであった。
ギルガメッシュが、暫く寝込んだのはまた別のお話。


こうして聖杯戦争は佳境へと進んでいく。



そうそう、

「ねぇ、リン? 来週あたり新都に買い物に行かない?
そろそろ春物がちょっとづつ出てくると思うんだけど」

「あら、いいわね。そんじゃぁ、明後日くらいに行きましょうか?」

なんてファミレスで雑談しながら、過ごしていたのだった。


続く



次回予告

修復もすんだ衛宮邸。
新たなドラマが紡ぎだされる――――――――――

衛宮家に突如として現れる、謎の下宿人――――――
「こんにちは皆さん、この家に新しく下宿させていただく、間桐桜です、キャッ」
「嘘付け! そんな設定作って、1からやり直せるかぁ!」
「静かに!! これ以上突っ込むようであれば命は無いですよ……」
「ラ、ライダー!?」
「シロウ、とりあえず殴っときますか?」

帰ってくるライバルたち
「エレ姉さん! 私の影技とくと見ていてください!!」
「ふふんっ!そうやっていきがれるのも今の内だぞ、美綴……」
「っ!? お前は慎二っ! 貴様ぁぁぁってお前? パンツを……」
「そうだ、これが神聖パンツ王国の継承者のみ許される、銀のブリーフだ、ふっふっふ」
「だからって被るなぁ!!!」
「ヘブシッ!!」

そして暴かれる戦慄の真実……
「今まで黙ってましたが……私はサーヴァントなんです……」
「いや、知ってるし。なぁ、セイバー?」
「ええ、思いっきり前の戦いで言ってました。
ライダーも歳ですからボケが始まったんでしょう。」
「25過ぎでも夢くらい見れるモンッ!士郎の馬鹿ぁ!」
「モンッて、似合わねぇ……。ってアチャ岡!?」
「今日から俺、ライダーたん萌え」

そしてとうとう、やっと現れる影の軍団
「ふははははははは!貴様らは敵に回してはいけない方を敵に回したのだぁ!」
「おい、金髪の後ろに居るのはっ!?」
「ええ、士郎。間違いないわ……」
「うっふっふ! 士郎!! 破廉恥三昧はそこまでよっ!」
「冬木のトラもここまで落ちたか……」
「肩に骸骨のプロテクターは、ちょっとねぇ……」
「シロウ、落ちかまないで下さい。リン、帰りに大判焼き買っていきましょう」
「ああ、今日は家でゆっくりしようか」
「ぐすっ、良いじゃない、悪乗りしたってさ……」

どうなる次号!
つづけっ!もうちょっと続け!ふぇいと/すていないトラ!
てか、聖杯の話は全く持って出てきません。
ここまで来たらやってやるわヨッ!





あとがき

 はぁ。やっと更新ですよ。
 今週は言い訳すると、仕事が酷かったなぁ。
 SSのネタ、喫煙室意外考える時間無かったデスヨ。

 そんなこんなで今回は他所のネタ多いです。
 分からなかったら聞いてくださいね?
 今後も使うんだったら、私もネタ元書こうかな?

 ちなみに、カオスは鬼畜王ラン○からです。
 わかるかな?
 セイバーさんくらいになると、更に上の鬼畜・アタックまでつかえます。
 ちなみに町が一つ消えます。 SSでつかえないじゃん!!

 では遅くなりましたが、読んでいただいた方ありがとう御座います。
 もはやこのSSは皆さんの推薦文と感想が糧です。
 めざせ、ハッピーエンド!
 ん?今は不幸なのか?
 では次回は早めの更新にて。 

 今から御飯の唄子 


記事一覧へ戻る(I)