ふぁんしーしょっぷぶりてん♪ (傾:ほのラヴ M:セイバー


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1: める (2004/03/27 20:07:31)[ejima_hkmn21121 at ybb.ne.jp]





「セイバー、セイバー?」

 今日は一日中家に居るって言ってたのにセイバーの姿が見当たらない。

「まったく、今日の夕飯何がいいか聞こうと思ったのに……」

 一人で悩んでいると、探されている当の本人が庭を通り過ぎて玄関へ向かい歩いているのが見えた。

「あれ? 今のセイバーだったよなあ……」

 セイバーは誰かの視線を避ける如く、何かに集中して家を出て行った。

「なんだったんだ? まあいいか。どうせ切れたしょうゆをセイバーに買ってきてもらおうと思ったから、一緒に買い物でもするか」

 そこで今夜の献立を考えるのを後回しにして、エプロンを外しながらテレビを見ながら爆笑している藤ねえに留守番を頼む。

「藤ねえ、ちょっと買い物行ってくるから留守番しててくれ〜」

 半分首だけ回して、こちらを向きながらだるそうに返事をする藤ねぇ。

「んあ〜〜〜〜? わかった〜〜〜。んじゃあおみやげよろしく〜〜〜」

 首をまたテレビの方を向けながら手をひらひら振ってさりげなくおねだりをする藤ねぇ。

「ああ、わかったよ藤ねぇ。(でもそんな事ばっかやってると太るぞ・・・。)」

 最後の一文はボソボソッと言ったつもりだったのに、さながらはっきりと聞こえてたかのように虎の一撃が飛んでくる。

 ヒュッ!!!!と凄まじい風切り音と共に、びよんびよん震えている飛来物。

 さっきまでケーキを食べるのに使っていたフォークが、士郎の顔を舐めるように通り過ぎてその先にある柱に突き刺さった。
 冷や汗が背中にたれるのを感じながら柱の方を振り返ってフォークがまだ振動しているのを見ながら言葉少なに藤ねぇに抗議する。

「危ないだろ、タイ――じゃなくて、藤ねぇ!!」

「何いってんの、士郎が失礼なこと言った気がしたから無条件反射で投げちゃったのよ」

 無条件反射とは……。危なすぎる虎の一撃はまさに一撃必殺である。
 今の一撃はまさに紙一重の差でフォークが士郎の頭に突き刺さる事は無かったが、
 はっきり言って命の危険を感じる一撃だったのは間違いない。
 藤ねぇのカンのよさはセイバー並、いやセイバー以上であった事を再認識して再度頭に叩き込む。
 ……そんな教訓を体に染み込ませている場合じゃなかったと気付き、セイバーに追いつく為に急いで家を出た。

「いや……。マジでやばかったな、っと早くセイバーに追いつかないとな」

 駆け足でセイバーの跡を追う。
 遠目にセイバーが歩いているのを見つける。商店街を抜けて、海浜公園方向にずんずんと歩いていく。
 何処に行くんだろう、と少し疑問も起きたが素直にセイバーを追うことに決めた。
 しかしセイバーは何の迷いも無く海浜公園を抜けて冬木大橋を渡って新都の方向へ歩を進めていく。

(何だって新都の方向へ向かうんだろ? 聖杯戦争以来、新都の方へはまったく用は無いはず……。)

 疑問が拭われぬままセイバーは進んでいく。
 知らず知らずのうちに、セイバーの後を付ける格好になってしまっている事に今更気がついた。
 本来の目的をすっぱり忘れて、何だか探偵になった気分でセイバーを追い始めた。
 セイバーとの生活が始まってから結構一緒に居る時間が多かったから、
 セイバーのプライベートを除く事に一種の子供じみた好奇心を感じていた。

 新都に入ってもセイバーの歩みは止まらない。
 どこか一ヶ所に向かっているようだった。
 ふと、そこでセイバーが何の気なしにこちらを振り返った。

(やばい!!!!)

 咄嗟に木の陰に隠れた。

(見つかったか?)

 別に見つかってもいいはずなのだが、付けているといった後ろめたさがあるために咄嗟に隠れてしまった。
 やはりセイバーも藤ねえと同等にカンがするどい。
 さすがセイバーと感心しながらも自分でかなり矛盾した事を考えているのに気が付く。

(なんでもっと早くに簡単に気が付かなかったんだろう? セイバーならこのぐらいの気配いつもなら簡単に感じ取るのに……。)

 そっと木の陰からセイバーの居た方向をのぞきこむ。
 既にセイバーは前を向いて歩き出していた。
 先の疑問に関しての答えとして、一心不乱に目的地へ向かって歩いているから気付かない、という事なのだろう。
 見つからない事が判明すると、見失わないように後を付ける。
 段々と気分が乗っていくのを感じながら忍者の如く後を追いかける。

 ――しかし、自分も周りの痛い視線に気が付いてない士郎であった。



 そして急にセイバーが立ち止まる。
 一つ深呼吸をしてセイバーは何かの店の扉に手を掛けちょっとはずかしそうに入っていった。
 そこでセイバーの後を追ってその店の前に立ち店の看板を見上げる。

『アナタの夢をかなえる、ふぁんしーしょっぷぶりてん???』

 看板に書いてある店名とキャッチコピーを棒読みしながら頭を捻る。
 周りの人に更に痛い視線を送られながらも、店の中を覗いてみるとセイバーが店員さんとなにやら話していた。
 そして何か見た事のある店だと感じていたらこの店は以前セイバーと来た事があった事に気が付いた。
 そのときにセイバーの好きな物がぬいぐるみで動物のライオンが好きだという事を知ったんだった。

 そんな物思いにふけっていると買い物を終えたようだった。

 ここは一つセイバーを驚かせようと店の脇で待機する。
 セイバーが店の扉から出てきて家へ帰ろうとするところに後ろから、

「セイバーこんな所で何してるんだ?」
「へっ!?」

 突然声を掛けられたセイバー。何が何だか分からないといった顔をして士郎を見ている。

「お〜〜〜い、セイバーどうしたんだ〜〜〜〜?」

 セイバーの顔の前で手を振ってもまったく反応なし。ちょっと心配になってセイバーの肩を抱いて揺すってみる。

「えっ、あ、う、い? し、士郎なんでこんなところに?」

 引きつった笑顔で、俺が聞いた質問とまったく同じものをぶつけてくる。

「だからそれは俺の質問だって」
「あ、ああそうでしたね士郎。わ、私は何も悪い事など……」

 ……セイバーの顔がみるみるうちに真っ赤になる。んでもって言葉は尻切れトンボでちっとも聞こえない。

「どうしたんだよ? 顔も真っ赤だし、具合でも悪いのか?」
「い、いえ。そのような事は……私はどこも不調などありません」

 真っ赤な顔をして店で買った何をブンブンと上下に振り回す。
 あんまり元気よく手の中のものを振るもんだから、包装紙が少しだけ破けて何かの手が飛び出した。

「セ、セイバー、落ち着けって。……ってこの手は?」

 ―――――ササッ!

 まさに神速の速さでブツを袋ごと後ろ手に隠す。
 その速さはエクスカリバーが繰り出されるときの速さに匹敵する物だった。

「―――――――っ!?」

 セイバーがその場で硬直する。見られてはいけないものを見られてしまったという感じだ。
 そして、真っ赤だった顔が更に紅潮し、まさに完熟トマトのように真紅に染まっていた。

「……えーと、セイバーさん? この店で何かを買って来たのはバレバレなんだけど……」
「ま、まさか!!わ、私がこのようなかわいらしい店で何かを買うなど、ありえません!!」
「……だったら、その後ろに隠してる物、見せてくれてもいいだろ?」

 ちょっと意地悪く言ってセイバーの後ろを覗き込む。
 すがさずセイバーは後ろに隠した物が見えないように体を回転させる。

 サッ!
 ササッ!!

 ズサッ!
 ズサササッ!!!

 後ろを見ようとするとセイバーも体を反転させる。
 さすがにセイバーの後ろを取る事は出来なかった。

「なあセイバー、そんなに俺に見せたくないのか?」
「い、いえ……。その、見せたくないというか、見られたら終わりと言うか……」
「……それじゃあしょうがないか。……あっ!!あんなところにライオンのぬいぐるみが!!!!」

 バッ――――

 俺が指差した方向にセイバーは顔を向けるが、無論ライオンのぬいぐるみなど無く、その隙に後ろに隠していたものを自分でも驚くぐらいの速さで奪い去って、包装紙から半端に飛び出たぬいぐるみの手らしきものを引っ張って取り出す。
 そこには15センチぐらいの人形が入っていた。
 その人形はジーパンにTシャツといった何とも無いデザインだったが顔を見てみると、
 何だか何処かで見た事のあるような顔である事に気が付いた。

「セイバーこれってもしかして俺???」

 セイバーはまだ一心不乱にライオンのぬいぐるみを探していたが、
 さすがに騙された事に気が付くと俺の方を向いてまたフリーズしてしまった。

「あ、ああ……。一生の不覚……士郎には悪いですが……」

 セイバーの服装がいきなり戦闘体制の鎧に変わる。

「セイバーさん? え〜と何してるのかななんか俺悪いことした??」
「ええ、士郎。貴方は絶対に知ってはならないことを知ってしまいました。ですから……ちょっと痛いかもしれませんが、お仕置きをさせてもらいます」
「ちょ、ちょっと待ったぁ!! そ、それちょっと痛いぐらいじゃすまないんじゃないかな……」
「そんなことありませんよ、ほんの一瞬んですから痛みなんてないに等しいです。ふふふ……」

 不敵な笑みを浮かべて俺に迫るセイバーに、俺はセイバーの歩調と合わせてじりじりと後退する。
 セイバーもやろうと思えば一瞬で間合いをつめられるのに一歩一歩にじり寄ってくる。
 背水の陣、四面楚歌、絶体絶命三つを足して三で割る雰囲気の中、最終手段を講じる。

「ああ!!、今度はライオンの親子のぬいぐるみが!!!」

 バッ――――

 またしてもセイバーは俺が指差した方向に顔向ける、しかし前回と同じくライオンの親子のぬいぐるみなど無く、俺に逃げる隙を与えてしまう。

「そんじゃ!そういうことでじゃなセイバー!!」
「あっ!!またしても士郎…………図りましたね!!!」

 セイバーがいつの間にか出した剣を、振り回しながら猛然と追いかけてくる。
 追いつかれたら確実に死が待っていることを感じながら必死にダッシュする。

「士郎〜〜〜〜!!待たないと……」

 セイバーが何か叫んでるのを聞きながら、人形をまだ持っていたことに気づいて走りながらその人形を眺める。
 なんだか変な気分であるのは間違いない。
 自分の分身みたいな人形が自分に向かって笑っている。

「あ、危ない! 士郎、前……」

 人形ばかり見ていたせいで、すっかり前方不注意で突っ走って河川敷まで来ているのに気がついていなかった。
 前には悠然と流れる川が見える。
 河川敷の急な下り坂に完全に足を取られて、前のめりになって転がりそうになる
 しかし、手に持った人形だけは何故だか守らなければならない気がして、それを咄嗟に胸に抱き、春特有の匂いが香る草むらの上を転げ落ちていく。
 視界が二転三転する中で、セイバーが心配そうな顔で駆け寄ってくるのだけがしっかりと確認できた。
 そこで視界がだんだんと、白みがかっていって俺は気を失った。


 /


「し  ろ う……士郎!!」

 誰かが一生懸命呼んでいる。
 今日はあんなに晴れてたのに、いつの間にか雨が降ってきたようだ。
 頬に一粒、二粒と水滴が落ちてくる。
 これじゃあ早く起きないとびしょぬれになると分かっていても、なんだか頭が気持ちよく良くて、目覚めたくないと心がしきりに訴えている。
 心地よい気持ちに包まれながら、そして呼びかけに呼応するように視界が開けていく。
 
「士郎!大丈夫なのですか? どこか不調なところはありませんか??」
「――――っ!!」

 目覚めて起き上がろうとした瞬間、眩暈が襲ってくる。
 セイバーは捨てられた子犬のような目で俺のことを見下ろしている。

「士郎、あなたは何処までお人よしなんですか! なぜ自分の体をもっと大切にしようとしないのですか。何故……何故、あなたはそんなことばかりで……」
「なに泣いてんだよ。そんなんじゃ『セイバー』の名が泣くぞ」
「分かってます、分かってるつもりだったんです。士郎はいつでも誰かの為に簡単に自分の体を投げ打ってしまう事は……」
「おい、ちょっ、落ち着けって。そんな俺の顔の上から泣かれたら……」

 今更ながら自分の状況を確認すると、セイバーに膝枕をされているようだ。
 それでなんだか目が覚めるのが嫌だったんだな。
 こんなに気持ち良くちゃあ何時までだって飽きないという自信があるぞ、うん。
 まあそんな事は置いといて、

「え〜と、セイバーさん? 泣き止みました??」

 気丈に涙を拭いて、少し腫れた目で、今度は怒った目で見下ろしてくる。

「まったく、アナタという人はどうしていつもそうなのですか? 人形なんかの為に自分の体を庇うのをやめるなんて……本当にどうかしてます。どれだけ私が……」
「わ、悪かったと思ってる。反省してる。なんだか分からないけどそうしないと後悔しそうでさ」
「はぁ……。まったく今までもマスターとしての自覚が足りないと思っていましたが、まさかここまでとは……」
「ごめん、ごめん謝るからさ。それにこの人形、はい。大事な物なんだろ? 俺が言うのもなんだけど、大切にしてくれよな」
 
 照れ笑いで人形を渡す。
 今度はセイバーの怒っていた顔が、見る見るうちに紅潮していく。
 今日は何だか変な一日だと感じながら、セイバーの泳いだ目がおかしくて笑った。
 その笑いに気付いたのかちょっと拗ねたような口調で、

「まあいいです、マスターの心得はじっくりと教えて差し上げますから。とにかく、人形を守ってくれて有難う御座いました。」

 セイバーが今日見せた史上最強の笑顔に今度は俺の顔が紅潮してきて、セイバーと一緒に笑った。


 /


 「「ただいま〜」」

 二人で玄関で声を上げるが、一向にいるはずの藤ねぇの声が返ってこない。
 おかしいと思いながらもリビングを覗くと、一体の人間が転がっていた。
 
 「はだへっだ〜〜〜〜。しろ〜何してたのよ〜」
 「ごめん、ちょっと買いものに手間取っちゃって」

 セイバーもリビングに入ってきて藤ねぇに対して、

 「すみません、大河。私のせいでちょっと時間が掛かってしまいました」

 セイバーがすかさずフォローを入れてくれた。
 心の中にセイバーに感謝しながら、早速自分専用のエプロンをつけて料理に取り掛かろうとするのだが何かが足りない事に気が付いた。

 「あっ!やべ。醤油買い忘れた。そもそも醤油を買うついでにセイバーに追いつこうと思ったんだ。藤ねぇもうちょっと我慢してくれ、すぐに買ってくるから。」
 「そんな〜〜〜〜しろ〜〜〜〜〜〜〜。」

 エプロンを外して再度買い物に行こうとすると、セイバーが何度もこっちを見ているのに気付いて声をかける。

 「セイバーも一緒に来てくれないか? 明日の献立の材料も買おうと思ってるからさ」
 「……は、はい。行きます……」

 照れ隠しなのか紅潮した顔を俯き加減にして、答えが返ってきた。
 
 
 ―――――玄関を出て再度商店街に向かう二人の足取りは何かが吹っ切れたように軽い。
 今日は変な一日だったが、『マスター×セイバー』ではなく『士郎×アルトリア』として大切な何かを得た日であった――――

 そして、アルトリアのスカートの中で不思議な人形が太陽の如く笑っていた。


 /


 P.S 

 士郎とセイバーが帰ってきたときには虎が飢えてましたとさ……南無。


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