Re.聖杯戦争 ァ〃后Дロスオーバー M:多分士郎


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1: あるとす (2004/03/25 21:07:46)[zeru46 at hotmail.com]



 お爺様がおかしい。
 いや、最初からあの人はおかしかったが、最近輪をかけたように狂っている。
 原因はわかっている、あの女の人だ。
 先週やってきたあの人はお爺様となにやら話していた。私がその会話の中で聞けたのは「聖杯戦争」というキーワードだけ。
 私にとってそれだけで十分だった。お爺様は聖杯戦争を起こそうとしている。また、あの戦いが起ころうとしている。
 兄さんに魔術回路はないから何か言われるわけでもないだろう。お爺様も自分でサーヴァントを一体現界させるかもしれないが、恐らく私もサーヴァントを現界させる事になるだろう。

 再び私はあの戦いに参加しなければならない。

 怖い、とても怖い。私の身体はまだお爺様に握られたまま、結局先輩にも姉さんにも話せなかった。
 助けて欲しい、でも今先輩と姉さんは倫敦だ、助けてくれるわけがない。それでも、私は助けて欲しいと切に願った。
 そんな折、藤村先生が虎の人形を抱えて先輩の家に入っていくのが見えた。
 チャンスだ。多分先生はまた先輩の家を虎の館にするつもりなのだろう、とても困るけど、チャンスだ。
 私は月に一回はしている倫敦にいる先輩との電話でその旨を話すことにした。


「先輩・・・こっちに遊びに来ませんか?」
『へ?』
 私の言葉に先輩は少々間の抜けた感じで返答する。あの人の声は三年たった今でも変わらない。何処か優しくて、暖かくなるような声。
『どうかしたのか?何かあったとか?』
 何かがあったと思ったのか、先輩は心配そうな声で私に尋ねてくる。
「あ、いえ!そういうわけじゃないんですけど・・・あの・・・」
 焦ってしまう。心配してくれるのは嬉しい。嬉しいが顔が赤面してしまう、これでは上手く喋る事が出来ないではないか。先輩は本当に罪作りな人だ。
 私が言いよどんで、言いたい事を再び整理していると先輩は、
『・・・藤ねぇ?』
 と、酷く草臥れた口調で藤村先生の名前を口にした。
 私は多少間を空けてから「はい」と答える。ずきりと胸が痛んだ。嘘ではないが、私は本当のことを隠しているのだから。
「実は藤村先生、また先輩の家にこもり始めて・・・」
『また!?』
 頭の中に用意しておいた言葉を並べる。返答してきた先輩の声を聞くたびにずきりずきりと胸が痛む。
『・・・どれくらい日にちがたってる?』
「多分一昨日からです、この前見かけたときに虎の人形を山ほど抱えてました」
 それも嘘、本当に藤村先生を見かけたのは先日。私はその日電話しようと思ったが、お爺様と女の人の監視の眼を潜り抜ける事ができなかった。
 少々時間を食ってしまったのが失敗だが、それでも電話をする事には成功した。
 前回藤村先生が先輩の家を虎の館にするには二週間かけていた。
 先輩のことだからきっとすぐ帰ってきて、虎の館化を止めようとするはず。
 確証はない、だからこそ断られたらどうしよう、と私は思う。
『わかった、急いで帰るから桜もなんとか・・・藤ねぇと説得、いや、止めていてくれないか?』
 電話口からそんな言葉が聞こえてきた。
 心臓が脈打つ、不純な動機とはいえ、先輩が帰ってきてくれることを約束した。
「は、はい。頑張ります」
 私は多少どもりながらも何とかそう返答し、二言三言会話してから受話器を置いた。

「ごめんなさい」

 受話器を置いたまま私は呟く。嘘をついた。藤村先生の件は確かに大変だ、しかし私は先輩に聖杯戦争の事を話していない。
 嘘をついた。きっとあの人はまた何も知らぬまま戦争に巻き込まれてしまう。
 否、彼は戦争の経験者だ、それでも始まりは唐突、零の状態から先輩は戦争へと巻き込まれる。
 覚悟も何もなく。自分の我侭で私は先輩を危険にさらしている。教えればなんとかなっただろうか、私も魔術師で、お爺様が聖杯戦争を起こそうとしてると言えたら、なんとかなるのだろうか。


「ごめん・・・なさい・・・っ」


 それでも、私は怖くてそんな事をいう事は出来ない。

































 ごめんなさい先輩、私は嘘をつきました。




























       ――Re.聖杯戦争
                生粋の暗殺者




































 とりあえず情報を整理しよう。
 多少混乱している頭を軽く振ってから、私はとりあえず考えはじめた。
 目の前には黒髪ボサボサの和服男が胡坐をかいて座っている。あの女性――どうやらライダーだったらしい――は既にこの場から離脱している。その時の戦闘は正直眼を疑いたくなるほどのものだったのだが、それは置いておこう。
 黒髪の和服男はポリポリと頬をかきながらこちらの様子をうかがっている。
 私はというと尻餅をついた体勢のままでいた。
 理由は簡単、魔力切れと、純粋に腰が抜けてしまっているからだ。腰が抜けた理由はもっと簡単、要するに私はサーヴァント同士の戦いを甘く見ていたのだ。
「おいマスター」
 と、呆けている所に男が話しかけてきた。
 和服男・・・じゃない、さっきの女性がライダーだとすると、この男のクラスは・・・
「何?アサシン」

 アサシン――暗殺者。
 隠密行動を得意とし、音なく敵を殺す。ギリギリまで敵サーヴァントに自分の位置を知らせずに近づくことが可能である。だがその戦闘能力自体にたいした期待は出来ず、宝具もそんな威力を持たない・・・というのが、私があの男から聞いたアサシンというクラスである。
 だが――

「あんた――」
「貴方本当にアサシン?」
「――あー・・・は?」
 何か言いかけたアサシン?の言葉を一刀両断して直球を投げてみる。
 私の言葉にアサシン?は数秒静止してから、少々面倒くさそうに。
「・・・らしいな」
 と、顔を横に向けながら皮肉気に笑った。
「らしいなって・・・」
「あぁ、気にするな。生前も似たような事やってたんでな・・・というより召喚される事自体初めてだ」
 なかなか貴重な体験だった、と言いながらアサシンはしみじみと語る。
「召喚されるのが初めて?」
「あぁ」
 それはおかしい。今私の背にしょったリュックには英蘭の英雄のアイテムが入っている。
 先に行った即席の召喚もその英雄を呼び出すために使ったのだ。
 だか召喚されたのはこの男。しかもクラスはアサシン。

 考えうる理由は、セイバーもバーサーカーも既に現界している、という事である。まぁこれが一番有力。
 次に優先順位。というより召喚するにあたって必要なシンボルの重要性、だろうか。
 私の持ってきたアイテムよりも、このアサシンを召喚するに必要なシンボルの方がよりアサシンという人物に近かったから、という考えもある。

 まぁどっちにしろ、このアサシンは”アサシン”としての能力が高い。故にサーヴァントとして現界していると思ったのだが、そうでもないらしい。
「・・・アサシン、貴方聖杯戦争って知ってる?」
「知らん、だがわかっている」
 私の問いにアサシンは簡潔に答える。知らないがわかっている。これは要するに、あの男のいう”英雄”というカテゴリーに保存されたときに添付される情報のようなものだろう。
 多分このアサシンは聖杯戦争なんてものは知らない。だが聖杯により現界を命じられた時に、聖杯戦争の成り立ち、次いでその情報が植えつけられたはずだ。だから知らないけどわかっている。今自分が召喚された理由も、そしてなすべき事も。

 とはいえ、私の目的は聖杯ではない。その旨をどうやって話すかな、と考えようとしたが、その前にやることがあった。

「・・・で、マスターよ――」
「ティグリア=フォートリア」
「――・・・は?」
「私の名前よ」
 私は胸に手を置きながら少々間の抜けた顔をしているアサシンに向かって自己紹介をした。
 まぁとりあえず、自分の立場的なものから。
「英蘭で師匠を持って魔術を学んだ身よ、両親はその師匠に殺されて二人とも他界、今は友人の家に世話になってるわ。私は正式な魔術師ではなくもぐりだった師匠の弟子だから、私ももぐりの魔術師なの。ちなみに十七歳、若いからって襲わないでね」
「ガキに興味はねぇ」
 特に反応を示さなかったアサシンがその部分にだけ反応する。しかも即答で。
 なんかむかつく。しかもガキじゃない、十七歳はもう立派な大人だ――多分、恐らく、きっと。
「うっさい・・・で、属性は土、まぁ大した支援は出来ないから期待はしないでね・・・と、こんなもんかな?」
「む?一番大事な事を聞いてないのだが」
 と、私が自己紹介を終えたところでアサシンが話しかけてきた。一番大事な話って・・・あぁ。
「聖杯に何を求めてるかはパス、後で説明するわ」
「・・・・いやまて、なんでわかった」
 本当に不思議そうにアサシンは私に問い詰める。軽くため息をついてから、
「意図的に避けてたからに決まってるでしょ」
 と、答えてやった・・・あ、なんか面白い顔してる。
「――マスターよ、あんたなぁ」
「ティグリア=フォートリアって言ったでしょ」
「長い、もっと省略しろ」
「他の人からはティアって呼ばれてるけど」
「最初からそれを言え」
 なにやら不遜的な態度のアサシンだ、会話が楽しいと思うのは久々かも。
「いい?特に異常がないときはティアと呼んで、それ以外ではマスター。理由はわかってるわよね?」
「他のマスターに気取られんためだろ?」
 アサシンに言葉に私はコクリと頷いて、彼の名を呼ぼうと――
「あ」
 ・・・忘れてた、真名!

「ねぇアサシン、貴方の真名は?」

 そう、真名。それがわからなければ意味がない。この場――血の気配と死の香りが近い、この場に呼ばれて現界したアサシン。真名さえわかれば宝具や、彼に関する記述もわかるかもしれない。
「真名?」
「本当の名前よ、まさかアサシンなんて名前だったわけじゃないでしょ?」
 その言葉にアサシンはあぁ、と頷いてから面白くなさそうにその名を語った。

「俺の名前は―――」







「七夜 黄理という」
















「ん・・・むぅ・・・」
 眼が覚める。空気はひんやりとしていてまだ眠たそうにしている身体を少しずつ覚醒させていく。
 寝床の感覚が普段と違う事に気づく・・・と、当たり前か。あっちではベッドで、こっちは布団だ。
 久々の布団の感覚に喜んで、ばふばふと意味もなく叩いてみる。
 身体を起こして軽く動かしてみる、うむ、快調。いい目覚めだ。
 とりあえず朝食を作ろう。ご飯を食べて、藤ねぇに挨拶して、それから冬木の町を歩いてみよう。帰りには買い物をしておこう。晩には桜達が家に来るから、上達した料理を食わせてやりたい。それに本場の材料を使って和食を作りたいし、何より桜の上達具合や料理を習い始めた美綴の料理も食ってみたい。
 よし、と気合を入れて台所へ向かう。
 起床から台所へ向かうのは倫敦でも変わらない、衛宮 士郎の当たり前の一日の始まりなのだから。


「あぁ!しろーオハヨウ!」
「・・・・・・・・」
 と、居間につくと異様なテンションの虎がいた。
 にこにこと笑みを浮かべて俺の方を見ている。ずきずきと痛み始めた頭を軽く抑えてため息をつく。
「あれ?しろー、オハヨウは?朝の挨拶の基本は?」
 ころころと表情を変えながら虎は語りかけてくる、とても機嫌がよさそうだ・・・いや、機嫌がいいわけじゃない、テンションが高いんだ、異常に。
「・・・おはよう藤ねぇ、今日は早いんだな」
「早いわけじゃないわよぅ、ちょっと前にお掃除がひと段落ついたところなんだから」
 腰に手を当てて虎――藤ねぇはしれっと言い放った。
 掃除・・・?あ。そういえばそれが俺の帰国理由だった気がする。

 倫敦の時計台にて俺は遠坂と一緒に魔術の勉強をしていた。そこにかかってきた桜からの電話がきっかけで俺は日本に戻ってきた。理由は明白。藤ねぇが俺の家を虎の人形やらポスターで埋め尽くし、通称”虎の館”を作り上げようとしたからだ。
 昨日帰国した俺は正直いって愕然とした。虎の館になるのは今回で二度目なのだが、虎は日々進化を続ける野生の生き物だという事を理解した。家がどうなっていたかは、その言葉で判断して欲しい。
 というわけで怒った俺はライガ爺さんに直訴。二秒で有罪判決を受けた藤ねぇは罰として衛宮邸の掃除。更に藤村組の方々が「藤ねぇを止める事が出来なった」という名目で同じく有罪を受け、掃除を手伝って貰う事になる――いや、一応藤ねぇよりは罪は軽いが。
 ライガ爺さんは掃除が終わるまで部屋を貸してくれると言ったが、前回全く自分の家に入れなかったので、せめて俺の部屋だけをすぐさま片付けさせて、そこで寝ることにした。

 で。俺の部屋から居間に至るまでの掃除は終わっているようで、台所も綺麗だ。
 恐らく藤ねぇが率先してやったのだろう、そこだけは優先的に行われたみたいだ。他の部屋を見たが相変わらず黄色かった。
「ね?士郎、お疲れ様とか、ご苦労様とか、労いの言葉はない?」
 立ち上がって笑顔のまま俺に近づく藤ねぇ。
「・・・あぁ、お疲れさん。ホントこんな時間までご苦労だったね――」
 といいながら俺はすっと藤ねぇの頭の上に手をのせようとする。
 わーい、なんていいながらすっかり油断している虎。
「――なんていうと思ったかこの馬鹿虎ーっ!」
「私を虎と呼ぶなぁー!?」
 藤ねぇの無防備な頭にチョップをぶちかます。綺麗な垂直で入ったチョップの威力は凄まじいだろう。むぅ、自分が恐ろしい。
 その完璧なチョップを喰らった藤ねぇはぐぉぉーなんて唸りながらしゃがみこんで頭を抑えている。とりあえず無視して台所へ向かう。
 久々に入った台所は全く変わっていなかった。
 調理器具の配置も、食器も何も変わっていない。多分桜が度々やってきて料理を作っていたのだろう、使い込まれた感じがする。
 振舞った相手は恐らく藤ねぇ及び藤村組の方々、そして美綴やら慎二やら、弓道部の連中といった所だろう。
 倫敦へ立つ時に言った言葉を桜はちゃんと守っていてくれたようで、それが嬉しい。

『俺は暫く家を空けるけど、その間、自分の家のように気兼ねなく使ってくれ』

 それを守ってくれたことが嬉しい反面、その言葉が恐らく虎の暴走を引き起こすきっかけになっただろうが、この際無視。ともかく台所が以前のままというのは嬉しい事だ。
「士郎ー!何すんのよー!」
「む、座っててくれ藤ねぇ。眠いだろうけどご飯作るから――ああ、それとも寝てお――」
「それじゃテレビ見て待ってるから」
「――あ、うん、んじゃ三十分で用意するから」
 久々に藤ねぇを見て会話をして、なんとなく頬が緩むのを感じた。

 ――あぁ、帰ってきたんだな。

 嬉しい。もう一年は帰ってこないつもりだったが、やはり帰ってきてよかったと思っている。
 藤ねぇに料理を振舞うのは久しぶり。桜や一成は夜に来るが、ひとまず先にこの飢えた虎とご飯を食べる事にしよう。
 倫敦から持ち帰ったMyエプロンを装備し、包丁を手に持って俺の儀式は完了する。
 さて、一体どんな料理を作ってやろうか。







 随分と進歩したからといって、冬木の町はやはり冬木の町である。
 少し寒い町を歩きながら、俺はそんな事を考えていた。

 二年前に比べるとかなり様変わりしている。ビルも増えて、店も増えて、何より人が増えている。
 知らない店では安値のものが高値で売ってたり、質のいいものが安値で売っていたりとして、なかなか面白い。俺は色々な店を歩き回る。
(ウィンドウショッピングをするのが好きなわけじゃないけど――うん、やっぱ楽しいな)
 にやける口元を軽く押さえながら、俺は知っているけど知らない冬木の新都を更に歩いていく。

「――やっぱ、まだ残ってるよな」
 眼前にある白い建物を見つめながら俺は小さく呟いた。
 ――教会。冬木町に一つしかない教会であり、前回聖杯戦争にて監督者がやってきていた教会。自分の親代わりを殺した人間のいた教会。イリヤを殺したサーヴァントのマスターの、教会。十三年前、この町で起こった大火事の生き残りが、その魔力をすわれ続け、殺されず生かされていた、教会。
 この教会にいい思い出はないな、なんて考えてから、俺葉その教会の入り口へと足を向けた。
 変わらないけど変わった町の中で、その教会だけはずっと同じままだった。
 扉に手をかけて引いてみると、扉は存外にすんなりと開いた。驚いたがちょっと前に遠坂が話していたことを思い出す。そういえば別の聖職者の人がここに入ったんだっけか。
 特に話したりお祈りしたりするつもりではないが、とりあえず中へと入る。
 変わらない。何一つ変わらない教会の中で、俺は三年前の事を思い出していた。


 聖杯戦争。
 全ての願いを叶えるという奇跡の杯、聖杯を巡る七人の魔術師と七人のサーヴァントがただ一組になるまで殺しあう、戦争。
 倫敦で遠坂と調べた結果、それは第三法である「ヘブンズフィール」へ至る儀式である事がわかった。
 そうして具現した聖杯は正に人の願いを叶えるトンデモない代物。教会やら協会は監視と称して聖杯戦争に勝利するか、勝者に襲い掛かるかをして虎視眈々と成敗を狙っていたらしい。
 俺も三年前にそれに巻き込まれ、そして生き残った。
 実際に完成しかけた聖杯は聖杯なんて呼べる代物ではなく、俺のサーヴァントであったセイバーがそれを”約束された勝利の剣”(エクスカリバー)にて完全に破壊した。
 故に、この町では二度と聖杯戦争は起こりえない。
 魔力の残滓は残っているが、それは年々少なくなっているし、問題はない筈だ。

「・・・なんて、な」
 どうも三年前の事を考えてしまう。教会にはあまりいい思い出というものがないからだ。
 ため息をついてから教会から出ようとする。虎の館掃討作戦はあと二日はかかるだろうが、一成たちが入る余裕くらいは出来ているはずだ。
 ドアノブに手をかけて押して開けようとすると、ドアは勝手に開いた。
「あ?」
「え?」
 声が重なる。
 ドアを開けたのはドアの外にいた人物だったらしい、声からすると多分女の人・・・ってあれ?今ここにいるのって初老の聖職者って話じゃなかったっけか。
 お互い突然の登場に驚いていたが、先に女性の方が我に返ったらしい。
「えーと、どちら様でしょうか?」
 倒れかけていた身体を起こして女性の顔を見る。
 女性の蒼い短髪が教会に吹いてきた風にふわりと揺れる。
 顔立ちは整っていて美人の部類に入るだろう、かけている眼鏡がアクセントだ。服装はカソック服。両腕には大量の荷物――玉葱、人参、牛肉、そしてカレーのルウが見える・・・ちょっとまった、多くないか?あ、いや、そんな事は割かしどうでもいい。
「あ、えっと・・・その・・・」
 きょとん、とした表情がまた綺麗で赤面する。その顔を抑えてなんと言ったものかと言い訳を考えてみる。
 その様子を見て、青い短髪の女性はくすりと静かに笑った。
「焦らなくても大丈夫ですよ」
「え、っと・・・あ、すみません」
 女性の落ち着いた様子に中てられたのか、何故か気持ちが落ち着いてくる――あ、すげぇ。なんかほんと落ち着いた。
 とりあえず姿勢を正してから女性に向き直る。さて、一体なんと言ったものか・・・って悩む必要もないか。
「どうもすみません。この町に久々に戻ってきて、この教会はまだ残ってるのかなって思って入ったんですよ」
「あら、そうなんですか?」
「はい」
 嘘ではない。しかし三年というのは長いのか短いのか。冬木の町も大分様変わりした感じがするが本質的なところは全く変わっていなかった。
 教会もまだ残っているとは思っていた、思っていたのだがまさか補修もされていないとは思わなかった。
「成る程ー、そうだったんですか・・・あ、でも無断で入るのは駄目ですよっ」
 納得してから女性は「めっ」と注意してくる、顔は少し起こった様子だが、少し眼が笑っている。
「すみませんでした。ではこれで失礼します」
 そういって女性の横を通り抜けて外へ出る。とりあえず家に戻ろう、まだ掃除は終わってないだろうし――ていうかあれは後二日はかかるな、うん。

 と、帰ろうとしていたところに、
「折角だからお茶でもしていきませんか?」
 女性が声をかけてきた。
「え?」
「お茶ですよ。ここ人が来ないから本当に教会として機能してるのかなーと不安に思ってたんです。ですから人が来て嬉しいんですよ」
 女性は笑顔のまま俺の両手を掴んでグイグイと引っ張っていく。って待て、力強いなこの人。
「まぁ時間がなければ諦めるのですが・・・」
 嘘だ、眼が逃がさないと語っている。
「どうです?お茶しませんか?」

 まぁ別に断る必要性はない。桜達が来るまでまだ十分時間があるし、何よりやることがないから暇だ。
 何か微妙に怪しいけども、何かの縁だしお茶をご馳走になるとしよう。
「えと・・・じゃあお願いします」
「はい、わかりました」
 OKの返事を出すと女性は嬉しそうに笑って教会の聖堂の奥へと歩いていく。
 女性の後ろについて歩きながら、とりあえず俺は自己紹介をする事にした。
「名前わからないと思うんで名乗っておきます。俺、衛宮 士郎って言います」
「衛宮君ですか、いい名前ですね」
 振り返らずに女性は少し弾んだ声で答える。
 少し歩いてから客間のような部屋に通して貰った。とりあえずソファーに腰を下ろして一息つく。
 そこに女性がやってきて、テーブルの上にカップを置く。そして俺の向かい側に腰を下ろして、人懐っこそうな笑みを浮かべて名乗ってくれた。


「私の名はシエルといいます。気軽に呼んで下さいね」





    後書きらしき言い訳。
回を増すごとに長くなってる感が否めないというか実際に長くなってますね。
アサシンの正体は黄理でした(SE:拍手)まぁ理由とかはちゃんと劇中に語る予定です。
そしてシエル先輩の登場。
暫くは士郎とオリキャラのティア視点が中心というか入り乱れ、聖杯戦争が起きるまで続くと思います。

で、某所で言われましたパクリについて。
えーと、三話を読み返したのち、某お方の小説を読む・・・あ、こりゃあかん。
設定とかは自分で考えたのでまずパクリでないことを主張します。ですが流石に被りすぎ。
ここで謝罪するのは場違いですが謝辞を述べます、申し訳ございませんでした。
とりあえず「これはやばい」というわけで書き直し決定。
物語の進行上アルを使った聖杯とかナイアと臓硯が組んでいるとかははずせないので、文回しを書き直したいと思います。
再投稿ってのもあれなので返信機能を使って次回辺りにアップしたいと思います。

色々と不手際が目立ち申し訳ありません。
完結まで結構長いですが付き合っていただければ幸いです、ではまた次回。


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