凛と剣と永久の旅人 その5(傾:クロスオーバー)


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1: レッドアイ (2004/03/23 14:13:02)[had40802 at ams.odn.ne.jp]


 ―――黒い髪が舞い踊り。

 ―――銀色の刃が煌く。

 ―――繊細で、力強く。

 ―――その姿は美しく。

 ―――ダンスを踊っているかのようだ。







 凛と剣と永久の旅人 その5






 
「――――――――」

 剣舞を続ける女の子に、あたしは見惚れていた。

 彼女は止まることなく剣を振り続け、その速度は上がり続ける。

 少女の腕の動きは視認出来るものではなくなっていく。
 
 前後左右に死角はなく。

 まるで竜巻のようだった。




 ―――――カキン―――――




 と、彼女は剣を鞘に収める。


 彼女は腰を落とし。

 
 剣の柄に手を添える。


 その瞬間――――


 ―――――ミシリ―――――


 と、道場全体が軋んだ気がした。


「―――――あ――」 


 背筋が凍るような寒気。 


 彼女から放たれる絶対的な殺意。


 ヤバイ。


 本能的に、彼女があの姿勢から打ち出す攻撃がとんでもない物だと理解する。


 逃げ出そうか、とも思ったが、足がすくんで動かない。


 ……ヤバイ。




 

 ――――しかし、その刀が抜かれることはなかった。

 彼女はその身に纏っていた殺意を雲散させると、刀を床に置き、道場の床に寝転んだ。

「………ふぅ」

 あたしは安心してため息を吐き、その場を動こうと思ったが――――

「……ありゃ?」

 ドサリ

 柱の影から出たとたん、こけてしまった。

 ………どうやら腰が抜けたようだ。

 ――――と、女の子がこちらに気がついたようだ、眼が合った。

 彼女は寝転んだまま、首を動かし、こちらを見ている。

 ちなみにあたしは、両手を地面につき、土下座一歩手前のような状態で、かなりかっこ悪い。

「………お〜い、助けてくれ〜」

 もうどうでもいいや、という気持ちになり、あたしは彼女に助けを求めていた。








  
「で、あんたここで何やってんだ」

「……人を待ってる」

「最近は人を待つときに剣舞をするのか?」

「………………」
 
「授業中だぞ、今」

「……それは、キミも」

「………………」

「………………」

 道場の中心で向かい合い、女の子と話をする、二時限目の始まりのチャイムはとっくに鳴り終えている。

「あんた、うちの学校の生徒なのか?見たこと無いぞ」

 制服を着てはいるが、こんなに目立ちそうなやつ、あたしが気づかないはずがない。

「…………………今日転校してきた」

「今の間は何だ」

 彼女が部外者であることは間違いないようだ。
 
「………で、誰を待ってるんだ、この学校の生徒か?」

「……………凛」

「……凛?遠坂凛のことか?」

「……知ってるの?」

「ああ、あたしのライバルだよ、あいつは」

 友達よりそっちのほうが正しいだろう、強敵と書いて『とも』と呼ぶ、そんな感じ。

「で、あんたいつまで待ってるんだ、学校が終わるまでか?」

「昼休みになったら来てくれる」

「あ、じゃあ私も行くよ、まだ話したいこともあるしな」

 二時限眼終了のチャイムが鳴っている、当初の目的も果たしたことだし、いつまでもサボっているわけには行かない。

「あ、そういえば名前聞いてなかったな、あたしは実綴綾子だ、綾子でいい」

「……ボクは、葉月」

「じゃあ葉月、昼休みにな」

 そういい残してあたしは駆けて行く。

 走りながら思い出すのは葉月の剣舞、今思い出しても鳥肌が立つ。

「――――――ハハッ」

 高揚する、こんな気持ちは久しぶりだ、この後の授業も葉月のことばかり考えてしまい、手につかないだろう。

 葉月、あいつはすごいやつだ。




 遠坂凛Side




「何であなたがここにいるのかしら?」

「よぅ遠坂、遅かったな」

「………………」

 葉月の分の食事を持って弓道場に参上した私は、異様な光景に出くわした。

「……何やってんのよ二人とも」

「何って、練習試合だよ、見りゃわかるだろ?」

「………………」

 なぜか綾子と葉月が互いに竹刀を持ち、向かい合っていた。

「何で、そんなことしてるのかって訊いてるのよ!」

「まぁそう言うなって、ちょっと見てろよ!」



 ―――と、綾子が葉月に向けて踏み込み距離を一気に詰める、竹刀を高く掲げ、面を狙うつもりだろう、

「――――――ぐっ!」

 しかし、それまで下げられていた葉月の右腕が上がり、振り下ろされる、それを、綾子は竹刀を横にして受ける。

 それはものすごく早く、強い一撃だった、綾子は顔をしかめ、あとずさる、そこに葉月の横薙ぎの一撃が襲い掛かる。

「――――――くっ!」

 後ろに飛び、紙一重でそれをかわす、しかし―――

 ビシッ

「あっ痛〜〜〜〜」

 かわされた葉月の竹刀は、瞬時に軌道を変え、綾子の頭にクリーンヒットしたのだった。







「見たか?片手で、しかも手加減してこれだぜ、あたし一応有段者なのにな〜」

「パワーとスピードが段違いね……って言うかあなたたちいつの間に知り合ったのよ」

「あぁ、そりゃもう運命の導きってやつよ、偶然あたしが道場に忘れ物をとりに来たら、葉月がいてな」

 綾子はやたらと嬉しそうに語る。

「『美人は武道をしていなければならない』葉月はその模範だよ」

 当人は、我関せずとサンドイッチを頬張っている。

「葉月、食べ終わったら昼休みが終わるまで手合わせしてくれ」

「………凛、いいのかな」

 その問いに私は、いいんじゃない?と適当に返しておく。

 その昼休みは、綾子が頭をぼこぼこ殴られてるのを見ながら過ぎていった。

  








 空が紅く染まる。

 教室から生徒の姿は減っていき、日が完全に落ちれば学校に残る人間はいなくなるだろう。

 夕日を背に、私と葉月は赤い教室に立っていた。

「葉月、始めるわよ、どんな結界かを調べてから、消すか残すか決めましょう。」

 陰になり、表情が見えない顔がコクリと俯く。

「さあ、行きましょう」

 私たちは、マスターとサーヴァントとして、行動を開始した。








「これで七つ目、とりあえずここが起点みたいね」

 校内を軒並み調べ、屋上に出たとき時刻は八時。

 学校に残っているのは、私と葉月だけだ。

「まいったな、これ、私の手には負えない」

 私は屋上に刻まれる刻印を見てそうつぶやく。

「…………凛、これは」

「……これが発動すれば結界内の人間は溶解するわ……完全に消したいところだけど、私じゃ邪魔するのが精一杯ね」

 左手を地面につけて、一気に魔力を押し流す、それで、とりあえずはこの呪刻から色を洗い流せるのだが―――



 「よう、嬢ちゃんたち、なかなかいい夜だな」

 唐突に。

 結界消去を阻むように、第三者の声が響き渡った。















 あとがき


 どうも、SS投稿のとき、いつも何かを忘れている作者、レッドアイです。

 前回はタイトルを間違え、前々回は傾向をつけるのを忘れました、ごめんなさい。
 
 剣道やった事ないです、どうやるのかさっぱりわかりません。
 
 さて、やっとこバトルに入りそうですね。

 登場人物増えそうです。

 まだまだ続きますよ〜

 自分がんばれ。


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