錬剣の魔術使い・序 (M:遠坂凛 傾:シリアス


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1: 福岡博多 (2004/03/15 01:17:34)

 聖杯戦争より五年。私こと遠坂凛が倫敦に渡って四年が経とうとしていた。聖杯戦争の生き残りとして、特待生という待遇を与えられたのは正直気に喰わない。ただ、利用できるものは利用する。それも魔術師としての正しい資質の一つだろう。

 五年。それが、私が時計塔でやりたい事をやり尽くす為に、掛かる時間の目算。けど、その目算は、一年近く短縮されていた。その理由。

 ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト。

 遠坂凛の総てに賭けて、負けられない人間。大師父を同じくし、同じ『五大元素』の属性を持ち、同じ鉱石学科で、時計塔主席を毎回争い、民族の違いはあれど容姿も拮抗。ついでに、かぶってる猫の数も甲乙つけ難い。だと言うのに。

 なぜ、そんな奴と隣り合って座っているのだろうか?

 この状況に至った経緯を考える。
 三年ほど前まで遡る。時計塔にある噂が流れた。あの「ミス・ブルー」が弟子を取ったと言うもの。彼女のことを僅かでも知ると言うか、知らない者など居ない時計塔において、この噂は失笑を買うものだった。協会に届出も無い事から、三日後には話題に上る事は無くなった。
 しかし、半年前、噂が再燃した。ミス・ブルーに協会が依頼した幻想種の退治を、件の弟子が遂行したと言うのだ。ミス・ブルーに依頼した仕事は、協会の戦闘専門の魔術師の精鋭数人が、犠牲を前提に事に当たらなければならない程らしい。それを五体満足で成し遂げた人物に、協会は注目し、登録をミス・ブルーに促したのだが、

 「あの子は魔術師じゃないから、協会に所属する必要は無いわ。」

 この返答に協会は抗議したが、

 「あんまりしつこいと、時計塔、更地にするわよ?」
 これにより、時計塔は沈黙せざるを得なくなった。それから、ミス・ブルーは退治の依頼を積極的に受け、弟子に解決させていった。ミス・ブルーとその弟子は行動を共にしており、接触は困難を極め、存在を確認されて半年が経過しながら、「彼」について分かった事は、身長190cm近い長身、白に近い銀髪で、褐色の肌をしており、青い外套を纏っていると言う事だけである。名前も出自も分からない。ただ協会としては、その弟子が、いかなる魔術を行使するかくらい把握して居なければ、面目が経たない。けれど、ミス・ブルーを刺激もできない。
 そんな中、進展があったのは昨日。時計塔でやりたい事の大詰めに入ってた私は、突然執行部に召還された。何事かと困惑する私に幹部の一人が説明した。

 「ミス・ブルーの弟子が、君の管轄地であるフユキに入ったと言う情報を得た。君には彼と接 触し、最低でも彼の魔術がいかなるものか探って貰いたい。」
 と、その日の内に、機上の人となったのだ。戦闘専門の魔術師を動かせば、時計塔が更地に成りかねないので、冬木に行くのは不自然では無い私に白羽の矢がたった訳だ。そこまでは良い。そりゃ、後二ヶ月程で冬木に帰れるくらい研究が進んでいて、波に乗っている所を止められたけれど、報奨もそれなりだし、目を付けていた宝石のローンも組むことができた。だから良い。魔術を行使するもの同士の交渉が、穏やかでない事も分かっている。幹部連中が、手持ちの最良の札を出したい気持ちも納得できる。だからと言って、

 「あら、どうかしまして、ミストオサカ?」

 何故、こいつと共に里帰りしなければならないのか。

 「いいえ、何でもありませんわ、ミスエーデルフェルト。」

 ファーストクラス。本来ならば、優雅な旅を満喫できるはずの乗客と、それを演出すべき乗務員は、ハイジャックが些事の如き緊張の中に居た。その緊張の中心は、見目麗しい二人の女性。微笑みながら和やかに会話をしている様にしか見えないのが、余計に恐ろしかった。そんな周りの恐慌など眼中に無い様子で、遠坂凛は、再び思索に耽る。
 ミス・ブルーの弟子に心当たりがある。思い出すのは、半人前で、へっぽこで、弱っちいくせに、私が知る中で誰よりも強い少年。高校卒業後は、私の誘いを断り、長年見守っていた姉のような人、家族として受け入れられていた後輩、血の繋がりの無い妹に、泣きながら引き止められるも、結局、長年の夢を叶える為、旅に出た戦友。のようなもの。

 「遠坂も頑張れよ。応援してる。」

 お互い発つ時、握手して別れた。この時の事を思い出すと、何でか右手と頬が熱くなる。首を振り、熱を振り払う。C.Aに毛布を貰い、日本までの長い時間を睡眠で潰す事にした。あいつが、「彼」だという確信はある。だが確証はない。まあ、確証は冬木に行けば、嫌でも手に入るだろう。総ては向こうに着いてから。今は、滅多にと言うか、初めて利用するファーストクラスのシートの心地好さを満喫しよう。



 あとがき:初めてなのに、長編に挑戦。無謀ですなー。駄文ですなー。生温かい目で見守って下さい。更新はまったりといきたいと言うかまったりとしかできないと言うか。
 


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