桜の弓 (M:桜 傾:ほのぼの、コメディ?)


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1: moki (2004/03/11 17:10:05)

(Prologue)
第6回目の聖杯戦争が始まった。
わたしはあの人のいない蔵で、あの人の愛用のスパナで、彼を召喚する。

「で、君が私のマスターなのか?」

「はい。あの先輩ってよんでいいですか?」

「それで。君が私のマスターである証は何処にある?」

「あ、令呪のことですね。はい、これです」

「……はあ、まいったな。令呪があればマスターなのか?
 令呪などサーヴァントを律する道具に過ぎないだろう」

「あの、ダメなんですか?前はこれでよかったのに……」

「私が見たかったのは君が忠誠を誓うにふさわしい人物かどうかだ」

「はあ、つまり先輩を従わせればいいんですね。
 わかりました、じゃあ令呪を使っちゃいます。
        ――――Anfang……!」

「な――まさか……!?」

「Vertrag……! Ein neuer Nagel Ein neues Gesetz Ein neues Verbrechen――!
 姉さんだけじゃなくて、ちゃんとわたしも女の子として扱ってくださいッッッ!!!」

「正気かマスター? そんなことで令呪を使うとは」

「えと、ダメだったんですか?」

「誤算だった。先ほどの命令では、”少しはマスターのことを女の子らしく扱うか”
 という程度の心変わりにしかならない。だが、今の私は君の言葉に強い強制を感じている。
 君の意見に異を唱えると、体が重くなって動きづらいといったところか」

「それじゃあ……」

「命令の意味はよくわからんが、君をマスターとして認める」

「はい、こちらこそよろしくお願いします、先輩。
 じゃあさっそくお仕事お願いしちゃいますね」

「さっそくか。好戦的だな君は。それで敵は――」

「わたしを抱いてください」

「――待て、君はサーヴァントを何だと思っている」

「わたしの一番大切な人です。姉さんに盗られちゃいましたけど」

「意義あり、そのような命令ことわ――」

「いいですよ、動けなくなちゃった先輩を犯しちゃいますから」

「む、動け……」

「わたしもうがまんできません、いただいちゃいますね先輩。あ、それと桜って呼んでください」

「ま、待て、桜、うわ、やめろ、なにをあsdkfぁjlsk」

この日、わたしたちは、彼氏と彼女になりました

「地獄に落ちろ。マスター」





               桜 の 弓





先輩たちがロンドンに行ってしまった後は、わたしが衛宮のお屋敷を管理していた。
だからここを拠点に動いてる。実際わたしの家よりずっと安心できるし。
昼は普通に過ごして、夜は先輩と一緒に探索または戦闘、それが今の生活だ。
わたしたちは順調に生き残っていた。それも当然、だってわたしと先輩のコンビなんだから。
でも人生というのはそんなときに限って巧くいかないものなのだろうか。
そう、先輩と、姉さんが帰ってきた…

「ちょっと桜、いったいどうなって、え、アーチャー? うそ……」

「む、君はいったい……」

「私よ、凛、遠坂凛、忘れちゃったの、アーチャー?」

「リン、りん、凛……、ああ、この響きは実に懐かしい」

「ね…遠坂先輩、そんな、どうして、いえそれより先輩……」

先輩が前回姉さんのサーヴァントだったのは知っている。だからこうなることは覚悟していた。
でも、だからといってそんな目で姉さんを見なくてもいいじゃないですか!

「おーい遠坂って、げアーチャー、なんでおまえがここにいんだよ!」

「エミヤシロウ、そうか果てしなく0に近い確立だと思ってた、この時を――」

「アーチャー、先輩に何かしたらあなたでも許しません!」

「桜それはどういう……、いやそれよりも先輩とは私のことではなかったのか?」

「何を言ってるんですか、私の先輩は世界でたった一人だけです。
 でもそんなことはいいんです。それよりアーチャー、と…遠坂先…輩を、…殺してくだ さい!」

うわ、わたしとんでもないことを言ってしまった。
いくらなんでもこれは言いすぎだ。でも……

「「な」」「何を言い出すんだ君は、……それはマスターとしての命令か?」

「……」

「フン、お断りだ、どうしてもというのなら令呪を使うんだな」

でも、もう後には引けない。

「そう、やっぱりそうなのね、わかりましたあなたがやらないのなら、自分でやります。
 遠坂先輩、覚悟してください。―― ”I am the green-eyed monster ”」

「お、おい桜そのセリフって、ぅっうわ影が体に…巻きついて、動け…」

「先輩には悪いですけど、
 ちょっとそこでじっとしててくださいね、”Unknown to Tenderness”」

「どうしてだよ桜、お前本当に遠坂を殺すつもりなのか……!?」

「――はい、私自身の手で遠坂先輩をこえる。
 それだけが間桐桜の、たった一つの願いなんです、”Nor known to Life”」

「な――に。マスター、君はまさか」

「……ええ、そうです。――私はね、アーチャー。
 遠坂先輩に劣等感を持っていたんです。私の目的はこの人を倒すことだけ。
 それを阻むのなら――あなたでも容赦はしません。
             ”■■■――unlimited jealousy works”」

「これが、桜の、心象世界――って、
 はぁ、わざわざ付き合うなんて私もノリがいいなぁ、
 アンタいったい何がやりたいのよ、桜」

当然何も起こるはずはない。だってわたしは固有結界なんて持ってないんだから。
これはただの恨み言……

「う、いいんです、ちょっとやってみたかっただけなんです。
 もう逝っちゃってください、姉さんッ!」

「え、ちょっと、本気? うわ、やめな、あれアーチャー?」

そこには姉さんを庇うようにアーチャーが立っていた。

「ふぅ、幻滅したぞマスター、今の君はとても理性的には見えん。
 魔術師として失格だな」

「どうして、どうしてどうして、いっつも姉さんばかり!
 先輩だけでいいじゃないですか。私のアーチャーまでとらないでください!」

「とにかく落ち着くんだ、マスター」

「あなたもあなたです。あなたは私のサーヴァントなんだから私の言うことだけ
 きいていればいいんです。それを姉さんの方ばかり。もう、顔も見たくありません!」

「む、どこに行くつもりだ、マスター」

「ついて来ないでください。これは命令です」

「いいんだけどさ、衛宮君は置いていってくれないかな?」

え、先輩……?
そういえば忘れてた。えっと、わたしの影で縛り上げて、それから、それから……、
ここまで引きずってきて……、うぁ先輩気を失ってる……、どうしよ……

「こ、これは……、そう戦利品です。返して欲しければ私の家まできてください。
 でも今日中に取りに来ないと、喰べちゃいますよ」

そんな捨て台詞を吐きながら、わたしは外に飛び出した。
ああ、なんでこうなっちゃうんだろう、せっかく上手くいっていたのに。

「ほら、アーチャー、家に帰りましょ。家に帰れば弱音を吐いてもいいんだから」

「凛、君はなにを言ってるんだ? いや、そもそも何故にやついている?」

†  †  †

「で、何がどうなってんだよ、桜?」

それはわたしの方が聞きたい。状況に流されて先輩を拉致してしまった。
いったいどうしてこんなことに……

「……すみません、先輩。あの、縄きつくないですか?
 きつかったら言ってくださいね、すぐ緩めますから」

「はぁ、わかった、桜の言うとおりにするよ」

先輩の言葉にココロが軽くなる。でもそんな時、唐突にドアが開けられた。

「――へえ。驚きだね桜。まさか衛宮を拉致してくるなんて」

「に、兄さん」

「でもな、いくら惚れてるからってこれはやりすぎだろう!」

「いまさら善人ぶらないでください。兄さんだって散々悪いことしてきたくせに」

「なに、本気で言ってんの? お前いつから僕にそんな口―――」

「――先輩が欲しいんですか、兄さん」

「え……? あ、ああ、当然じゃ、――何言ってんだよ、お前は」

「くすくす、何怯えてるんですか? それよりわたしは少しここを離れますけど、
 その間、先輩のことよろしくお願いしますね。
 ――そういえば、兄さんは前より後ろの方が好きでしたよね?
 だめですよ、いじめたりしちゃ」

そう言ってわたしは部屋を出て行く。

「すまない衛宮、桜のこと許してやってくれないか?」

「ああ、それはいい、それよりさっきの話は――」

「ぼ、僕が衛宮の尻に興味なんてあるわけないだろッ!!」

「……スマン、忘れてくれ」

†  †  †

「随分遅かったんですね、姉さん」

「桜、士郎はどこなの?」

「先輩ならわたしの部屋に置いてきました。でも急いだ方がいいですよ。
 じゃないと兄さんに……」

「な――、それなら急いだ方がよさそうね」

「わたしと姉さんとの間に言葉は必要ありません、いきます姉さん!」

†  †  †

「う、慎二のヤツちょっと本気にしちゃったじゃないか。
 それよりあの2人は……、――おい、アーチャーどうなったんだ?」

「エミヤシロウか、フン、今決着がついたところだ」

「決着って、え、○○○○モンスターズ?……あいつら何やってんだ?」

†  †  †

「ひっかかりましたね、姉さん、罠カード”アンリマユの黒い影”。
 このカードが場に出ると姉さんの場にいるサーヴァントはぜんぶっこっちの味方です。
 これで終わりです、姉さん。」

「甘いわ、桜。リバースカード、オープン。魔法カード”平行世界の泥棒猫”。
 このカードの効果はすべての敵サーヴァントの破壊。
 残念ね、これであなたを守るものは誰もいないわ」

「そ、そんな、ずるいです、姉さん……」

「ずるくもなるわよ。あなたが士郎を好きなのは知っていたけど、
 士郎はわたしのものなの。誰にも渡さない」

「……ひどいな。姉さんはいつもそう。でもわかっていました。
 先輩が姉さんのこと好きだって。だから、わたし……」

「――だからアーチャーを召喚したっていうの? はぁ、あんたねぇ、
 あいつと士郎は別人よ。それを士郎の変わりにしようっていうのは筋違いでしょ」

「違います! 確かに最初はそんなことも思ってたけど、でも、でも今は……」

「ふぅん、意外だった、あんた本気なんだ。ならちゃんと捕まえとかなきゃダメでしょ。
 ほら、さっさと行って謝っておいで。あいつ、顔には出してないけど、
 さっきのこと気にしてるんだから」

そう言って姉さんはわたしの背中をポンッと押す。
それがあまりにも自然すぎて、このことに気付いたのはちょっと後のこと。
わたしは姉さんにあんなに酷いことを言ったのに、姉さんは全部受け止めてくれて……、
―――ああ、やっぱり勝てないなぁ、この人には。
でも前よりずっとうれしかった。

「桜、もういいのか?」

「はい、すみませんでした先輩。もう大丈夫です。
 先輩、姉さんのことお願いします。姉さん、先輩にべた惚れみたいです。
 ――先輩が、支えてあげてください」

「ああ、そのつもりだよ、桜」

これはちょっとした反攻。
だから姉さんが真っ赤な顔して膨れっ面をしたのは予想通りなんです。
でも姉さんは顔を上げてこう言いました。呟くように、でもはっきりと。

「桜! ……あなた初めて姉さんって呼んでくれたでしょ、
 ――その、うれしかった、……ありがと」

そういえば、わたしはいつの間にか遠坂先輩のことを姉さんって呼んでたんだ。
どうやら姉さんは照れていたみたい。
とにかく、わたしはアーチャーに向き直る。
アーチャーは目をそらしてわたしの方を向いてくれない。やっぱり怒ってるんだろうか?

「アーチャー、その、ごめんなさい。
 さっきは言い過ぎました。あの、怒ってませんか?」

「この程度で怒ることは無い。サーヴァントというのは、どんな理不尽な命令でも
 従わなければならないものだからな。だが、忠告しておくぞマスター。
 この戦争で生き残りたいなら、私を遠ざけないことだな」

「……アーチャー、わたしは初めあなたに女の子として扱ってくださいと言いました」

「何がいいたい、マ――

「桜って呼んでくださいとも言いました」

 ――、桜」

「……わたしは、あなたと、先輩と恋人の関係になりたかった。
 ただ守られるだけの存在じゃなく、先輩と対等の関係に。
 ……その、ダメ、ですか?」

「ふぅ、何故かは知らんが、君にそのような顔をされると、困る」

「えっ、それじゃ……」

「ああ、これも契約のうちだ。聖杯戦争の間くらい我慢してやる」

「じゃあ、これからもよろしくお願いし――」

「対等の関係になるのだろう、桜。なら頼むのはおかしいのではないのか?」

「……はい、一緒にがんばりましょう、先輩」

今、わたしはどんな顔をしているのだろう。
きっとあの時から忘れていた幸せな顔をしているのだろう。
やっぱり、わたしはこの人が好きだ。本当は優しいこの人が……
だからわたしはこの人と一緒に生きていこう。
この人といればもう少しだけ自分に自信が持てると思うから……

「ところで桜、さっきから君は私のどこをさわってるんだ……?」

「え、えと、実はさっきから体が火照ってきちゃってて、その、がまんが……」

「む、なぜ体をこすり付けるのだ、それになぜ腕を首に巻、んプ、ん、ん――、
 ん――――――、ぷは、はぁはぁ、し舌……」

「ごめんなさい、先輩、もう抑えられません!」

「え、ぅぁ、あっあっあぁぁぁslkjぼlksdflks」

†  †  †

(Answer)
打ち合わせた腰の火花。何十合にも及ぶ未熟な攻防。
そんなものが何故あの時の誓いを思い出させたのか?
   ――それはありえない光景だった
偽りでもいい。俺は俺の正義の味方を貫き通す。
しかし、それを誓った筈の理想の自分の一人は、
自分の一番身近な少女に圧倒され、蹂躙され、陵辱されていく。
睦み合いの激しさは自分たちの非ではない。少女はがむしゃらに腰を振るう。
それは、反発しあいながらも溶け合う、両者の心の具現だった。
少女は一撃放つたびに息があがり、倒れそうになり、踏みとどまって、再び腰を振るう。
あいつが何を言っているのかは聞き取れなかった。それほど彼の声は弱く苛烈だった。
あるのはただ、全力で絞り上げる一声だけ。
   ――悪い夢だ
   ――しかし、それならば何故この目はその姿を直視し続けるのか?
かつて自分が信じた理想の姿。その今の姿を見て涙があふれた。
   ――ひとつ選択肢が違えばあそこにいたのは自分かもしれない
後悔はない。そう、
――俺は間違えてなどいなかった――

「うわぁ、すごい……、ん、ちょっと士郎、どうしたのよ?」

「え……、あのさ、俺、遠坂のこと好きでよかったなって」

「ば、ばかぁ、なに泣きながらそんなこと言ってんのよ。
 
 ――でもちょっと、うんうん、かなりうれしいかも。アリガト、士郎」

「ところでさ、アーチャーのヤツまだ俺のこと殺すつもりなのかな?」

「さあ、今のアイツにそんな余裕ないんじゃない」

――――――――――
あとがき
まずはもしかしたら続きを待っていたかもしれない人(いないとは思うけど)、
遅くなってすみませんでした。
あと、ここの掲示板を貸していただいたことに感謝を。

読んでもらえばわかると思いますが凛ルートのパロディになっています。
ですので多少強引な展開には目をつぶって欲しいです。
特に何で桜がアーチャーのことを知っているかとか……ダメ?
初めは桜がアーチャーを召喚したらという軽いノリだったのに、文章力ないせいでこんなことに。
もう、凛のお姉ちゃんぶりや桜の一喜一憂だけでも楽しんでもらえれば幸いです。
最後にアーチャーファンの人、扱い酷くてすみません。


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