その身は、剣で出来た聖剣の鞘 第一部その4 M士郎


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1: kouji (2004/03/07 15:14:19)

9セイバー視点

「あぁ、凛も人のことが言える様な召喚ではなかったからな、
生憎私は自分の真名が思いだせんのだ、
まぁ、そちら二人のような有名な英雄ではないだろう」

言いながら、アーチャーはサクラへと近づいた
彼はああ見えてなかなか気配りの効く人物だ、
正直なところあまり相性がよくないと思うことはあるものの
シロウに対してもときに厳しいながら気づかってくれるところがある
今回も、動けないシロウや私に代わり進んでサクラを―――

「何する気だよ、御前」

私の思考は、いつの間にかアーチャーの方へ向かっていたシロウの言葉により覆された

「何も知らんやつはのんきなものだな、この女はココで殺しておくべきだ」

あっさりとそう言うと、彼はその両手に双剣を構えていた

なぜ?

「士郎の言う通りよ、アーチャー、納得の行く説明をしてくれる?」

私同様、疑問に思ったのだろう、リンがすぐに聞いてくれた

「凛、おかしいとは思わんか?
ここは住宅地で、今はさほど遅い時間ではない、
にもかかわらず、誰も先ほどからのことを問いただしに来ていない」

アーチャーはこちらを見ずにそう答える
ライダーは臨戦体制だ、私も多少のことは出来るだろう
いまだふらつく足を何とか押しとどめ、庭へと降りる
だが、確かにそうだ、この時間にアレだけの騒ぎが起きれば人も気づくし
先ほどの天馬の来訪など、いくら無関心な人間でも、気にならない方がおかしい
しかし、そうは言っても

「それがどうしたのです、まさか貴方は、サクラがやったとでも言うつもりですか?」

「その通りだセイバー、近所の家の幾つかを覗いてみろ、もぬけの殻になっているぞ」

「なっ?!」

言われてみれば、昨夜、新都へ向かう折に通った時、
家の明かりが随分と少なかったような気がする

「……証拠は、あるのか?」

「聞いても信じまいがな、……何せアレがそうだとわかっているのは俺一人だからな」

問い質すシロウに、含みのある言い方で答えるアーチャー
相変わらずの表情にも見えるが、それでいて何処かで見た別の人物の表情に見える

それが何故か、酷く歪んだ既視感のような気がした


10士郎視点

結局、アーチャーは引き下がったもののその理由を説明してはくれなかった
まぁ、期待はして無かったけど
取りあえず、桜を客間に寝かせてから、居間で今後の動向について話し合う

「キャスターは暫く動かんだろう、なら今の内にバーサーカーを始末すべきだ」

「セイバーが動ければね、どの道、今のところは様子見ね、
セイバーに魔力を補充する手があるなら別だけど」

こればっかりはねー、と、遠坂がさじを投げる
ちなみにセイバーは部屋で寝ている
もともとあまり回復していない所を、無理に立ち上がったこともあり、
桜を移動させた直後にバタン、と倒れてしまった
俺たちはその後も、あーでもない、こーでもないと論争した後、
それぞれに床についた

その翌日

俺は、商店街に来ていた
セイバーは寝てるし、遠坂は何か作業中、ライダーは桜についてる、
アーチャーは一緒に行動する気にはなれない
したがって一人だ
まぁ、後で遠坂に見つかって

「昨日の今日で何やってんのアンタはー!!」

とか言って怒られそうだけど
キャスターが動かないのならそう警戒しなくても大丈夫だろう
イリヤも「昼間は戦わない」って言ってたし

「シロウー!」

と、公園を通りがかったところで、白いお姫様に出くわしてしまった


10アーチャー視点

バン!!
と、音を立てて襖が開かれた

「どうした、セイバー」

屋根の上から降り、実体化する
どうやらセイバーは酷く慌てているようだ

「シロウがイリヤスフィールに捕まりました」

簡潔な答えが返ってきた

「あの男は反省が無いのか」

丸一日ずれか、やれやれ、

「あの馬鹿、昨日の今日で何やってんのよ!!」

セイバーの声が聞こえていたのか凛が怒鳴りながらこちらへやってきた

「まぁ、状況から考えて仕方なかろう、
昨日、衛宮士郎が買出しに行って買ってきた分では今日の夕食には足らん、
買い物に行くのは当然だな、
問題は一人で出たことだが、
セイバーはまともに立てる状況ではないし、
君は作業中だった、間桐桜とライダーは論外、
私はやつの付き添いなどする気は無い、
結果として、やつは一人で行くより無かったわけだ」

「もっともらしい様で、微妙にらしくない解説ありがとうアーチャー」

私の説明があまり御気に召さなかったようだ、
凛は不機嫌そうにこちらを見て言った

「凛、どうする?
この際見捨てるのも一つの選択肢だが?」

「そんな訳ないでしょう!!
セイバー、道案内頼むわ、アーチャー、しょうがないから打って出るわよ」

きっぱりと言い切ると、凛は自室へ戻った
恐らく宝石の準備だろう

「やれやれ、衛宮士郎は一体いくらの借金を作ることになるのだろうな」

ふと呟いた、
たしか、億単位だったような気がするが
さて、この衛宮士郎は、あの狂人に勝てるだろうか?


あとがき
次回はバーサーカー戦です、
一応セイバールートなのにアーチャー一人、微妙に凛ルート走ってますね
って、言うか桜殺す気かよ、お前
さぁ、無事ご都合主義な大団円まで到着できるのか
こう御期待

って言ってもそう簡単には終わらないんですけどね


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