Fate〜LastNight〜


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1: blue (2004/03/05 20:34:49)

「ぜーんぶ。声にでているのよね!」
裂帛の叫びとともに、あかいあくまの魔力を込めたグリズリーのような一撃が
士郎の身体を宙にうかせる
ついで
それを空中で追い込み
超必殺技をかけてこようとする、あおいあくま

「お約束の――」


はい。セイバー先生質問です。
貴女が手にしているハリセンはどこから取り出したのですか?
生命の危機にたち
空に舞いながらも、頭の中をよぎるのは
そんなどうでもいいことだった



         「――ツッコミ―」



ハイ、センセイ


     ドウシテ、ソノ「ハリセン」ハ

        

                  星の欠片を鍛えたような光を


                                       ハナッテイルノデスカ?



                       「――ハリセン―――!!」



金色のツッコミが炸裂する。
そうして、居間から庭先に飛ばされ、ハリセンによって屋敷の塀に叩きつける
スーパーコンビネーションコンボ!



「や・・・やっぱり・・・『真名』は・・・・・・・・・・」





……衛宮士郎の意識はそこで途絶えた




Fate〜LastNight〜




「あ、まだ生きてるしぶとい」
そういって、ぴくぴくとヤバい痙攣しながらくたばっている士郎を眺めてとんでもないことを口にするあかいあくま
「だ…大丈夫ですか、シロウ?凛につられてつい手加減なしでやってしまいましたが…」
はっと我にかえって、セイバーは士郎のもとに駆け寄る。




返事はない。ただの屍のようだ。



士郎はすでに口から魂を吐いて、死後の世界もしくは、そこに続くであろうどっかの道場にでも逝ってしまっている。
そんな士郎のわきでおろおろするセイバーに続いて、凛もつかつかと歩み寄り…




がしっっっ
ずるずるずるずるずるずるずるずるずるずる




あの華奢な身体のどこにそんな力があるのだろう。
襟首をつかんで、ころがっている士郎を土蔵にひっぱってゆく。
土蔵の扉をあけて
滑らかなアンダースローで、見るも無残に投げ捨てる―




まさに芸術。
そして何事もなかったかのように
土蔵にかんぬきを掛け
魔術で、破壊された居間と縁側を修復してゆく。
その洗練された優美な一連の動作は、見る者の突っ込む心を奪った。


それほどまでに見る者を呆然とさせる切り替えのスピードとキャラクター方向転換の角度。
あまりにも卓絶していたのは、長年、優等生をやってきた遠坂凛ならではのものであろう。
その証拠に、あまりにも優美で自然な凛の行動に、
天然王様セイバーはただ十数秒前まで、士郎がころがっていた現場ででぼーっっと見つめているだけだった。



「さてっと・・・邪魔者はいなくなったし、」
「え?」
キレイに家屋を修復して、陽当たりのよい縁側に腰を掛けると
まだ塀の所で、ボーっっとしているセイバーに語りかける
「話の続きをしましょうか…。士郎がいて、話しづらかったんじゃない?」
「…あ」




確かに…………
セイバーの知るキリツグと、士郎が語る切嗣では別人かと思えるほどのギャップがあった。
そして、自分が知るキリツグを語れば、彼の中の切嗣を壊してしまうのではないか
士郎の夢であり、理想であるものが
命の恩人であり父であり師父である切嗣から、受け継いだといえるものだけに
士郎に与える影響は多大なモノになるのではないか・・・
だから今まで、セイバーは語らなかったのだし
士郎の前では語りたくなかった。
そして、セイバーは凛の今の一言で
それを察した彼女が、わざと士郎に席をはずしてもらったのだと気がついた。




やり方はあまりにも強引だったが…





「………心遣い感謝します。凛」
「ん、まあちょっとあのニブチンに八つ当たりってのもあるけど」
「……??」
なんのことやら、といった風に小首をかしげるセイバー。
このぶんだと自分自身のことはもちろん、凛のちょっとしたジェラシーなど気づいていない。
セイバーさんは、まだまだ色気より食い気。
現在、士郎くんとセイバーさんの関係は
まさに「お料理する人、食べるひと」
絵本にもある、「ぐりとぐら」。
凛と士郎は一応、恋人同士だが、セイバーが彼女自身の気持ちに気づいたらどうなるか
また、それを士郎が知ったらどうなるか
そんなことを思うと、凛としてはおちおち夜も寝てられない。
士郎が凛をもうちょっと特別扱いしていれば、あかいあくまの心は満たされるのだが…
それはまた別のおはなし。





凛が台所でお茶を煎れなおし
セイバーが戸棚からおせんべいを持ってきて
場所を縁側に移し、ひなたぼっこをしながら話を続ける





ずずずず〜
ことん



「で、セイバー」
「はい、凛」
セイバーの瞳をまっすぐに見つめる
多少、表情は強張っているが、動じることなくそれを見返すセイバー。
その瞳の中に迷いがなくなった事を凛は感じた



「じゃあ訊くわ。まず、衛宮切嗣はどんな魔術を使っていたの?」



セイバーの表情と身体が固まる。
そしてセイバーは視線をそらし、すこしの沈黙の後
期待を裏切るような答えをかえした。


「・・・申し訳ありません、凛。じつは・・・私もキリツグがどんな魔術を使うか、詳しくは知らないのです」


「・・・え?」
あまりにも意外な回答に、凛は非難ともとれる声をあげたあと
「信じられない」といったふうに、まじまじとセイバーに見入る



「・・・そんな目でみないでください・・・・・・キリツグは・・・私にも最後まで手の内を明かさなかった」





泣きそうな
悔しそうな表情で、凛から視線をそらす




士郎との会話の中で、セイバーは言っていた。
キリツグ・エミヤとは、マスターとサーヴァントの関係であったと
だが今のセイバーの言葉は
本当にただ「持ち主と道具の関係」を言い表していた。
持ち主は道具の性能を把握して使いこなさなければならないが
道具は持ち主を知る必要はない




キリツグ・エミヤにとってセイバーは信頼できるパートナーではなく、ただの抜群の性能を持つ道具




セイバーはサーヴァントである
和訳すれば「召使い、使用人、奉仕者」
それはわかっている
だが、それを自らの口から語ることは
誇り高き騎士王にとって
まさに耐え難い屈辱なのかもしれない



――否、



衛宮士郎は今までセイバーを「サーヴァント」として扱ったことも接したこともなかった。
いつも1人の人間であり、パートナーであり、友人であり、家族であり、女性として接してきた
それに影響されてか、現マスターである凛もセイバーを家族であり、友人、パートナーとして接してくれている。
だからその友人の前で、家族の前で
「自分は道具である」
それを明言するのが、なぜかわからないがセイバーにはたまらなく悲しかったのだ。




「―――そう」
セイバーからすこし視線をそらすかのように
うつむいて掌の湯呑みをもてあそびつつ凛は思った。







ああ、だからセイバー





そんなにも辛そうなのね





そして、そんな苦しそうな表情で






バリバリと絶え間なく食べられている
おせんべいは








―――――――やけ食いなのね







つづく


【次回予告(?)】
セイバーの口から語られる
キリツグ・エミヤ
そしてはじまる、十年前の聖杯戦争

『セイバー。お前の役目は相手サーヴァントをひきつけることと、マスターをおびき出すことだ』
『マスター同士の一騎打ちならば、俺が絶対に勝つ』
「切嗣は私にそういいました。そして実際、切嗣は強かった…。私よりも……」




霊体化できないセイバーに対し切嗣は!?


次回!
Fate〜LastNight〜
「めざせシリアス」







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・石、なげないでください


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