Fate/stay night again 検 雰后Д轡螢▲


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1: タケ (2004/03/05 05:54:26)



「洗いざらい、吐いてもらうわよ――――」
優等生モードから切り替えた遠坂が言う






――――夜はまだまだ長くなりそうだ――――





Fate/stay night again  〜The end of Night〜

前編



なんだか不思議な状況になっていた

目の前には学園のアイドルで
――――実はおっちょこちょいなところもある遠坂が歩いていて

背後には寄り添うようにしてセイバーが歩いてきている
正面から見ると背後霊のように見えるだろうことは、十二分に予測できる

――――他のマスターがいるんだから警戒するのはわかるけど、ちょっと近すぎやしないか?


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
みんな無言だ
沈黙を破ったらその瞬間、遠坂に襲いかかられそうな気がする

だから俺は
――――遠坂、よく知らない人の家で迷わずに歩けるよな
あながち場違いといえなくもないことを考えていた


「・・・へぇ、和風の家ってのも結構いいわね。あ、衛宮君、居間はここでいいのよね?」

そう言って居間に入っていく遠坂

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

遠坂には家捜しの才能があるかも知れない





電気を付ける

時計は午前一時を回っている
窓ガラスの割れた部屋はめっぽう寒い

「うわ寒っ!なによ、窓ガラス全壊してるじゃない」
遠坂の言うとおり、なにせ――――

「仕方ないだろ、ランサーに襲撃されたんだからさ。なりふり構ってる余裕無かったんだよ」
         ・ ・
だって武器がアレだったし

「あ、そういう事。てことは、セイバーを呼び出すまで、一人でランサーとやり合ってたの?」

「やり合ってなんていない、一方的にやられてただけだ」

回路が開いた今なら多少はやり合うことが出来るのだろうか?
――――いや、今はそんなことを考えてる場合じゃないか

「ふぅん、へんな見栄はらないんだ。・・・・・・そっかそっか、
――――ホント見た目通りなんだ、衛宮君って」
どこか嬉しいそうに遠坂は窓のほうに近づいていく

「――――――」

―――見栄はらないのが見た目通りってのは褒められてるのか?

そんなことを考えていると
遠坂は、割れたガラスの破片を手に取った
じっとその破片を見つめる

そして――
「――――――Minuten vor Schweiβen」

ぷつり、と指先を切って、窓ガラスに血を零した

遠坂の呪に従い
砕けていた窓ガラスはひとりでに組み合わさり、数秒とかからず、元通りになった

投影と強化しかできない俺と違って遠坂の魔術は多種多様だ

「遠坂、今の―――――」
やり方を教えてくれないか?と続けようとして止めた
覚えたって、どうせ俺には使いこなせない
ステンドグラスみたいなものが出来るだけのような気がする
壊れた窓を直そうと思ったら、それこそ投影して代わりの窓を作るしかない

「ちょっとしたデモンストレーションよ。助けてもらったお礼にはならないけど、一応筋は通さないとね」

「・・・ま、私がやらなくてもそっちで直したんだろうけど、こんなの魔力の無駄遣いでしょ?ホントなら
窓ガラスごと買い換えればいいんだけど、こんな寒い中で話すのもなんだし」

当たり前のように言う

・・・ん?
「俺、いつ遠坂の命助けたっけ?」
むしろ命を助けられたのは俺のほうじゃないか?

「はぁ、何言ってるの衛宮君。さっき、セイバーに殺されそうになってた時、助けてくれたでしょ?」

「いや、でもセイバーは俺のサーヴァントだから俺が止めるのは当然じゃないのか?」

「いいから、人の好意はおとなしく受け取って起きなさい。それとも、衛宮君はこの窓をもう一度叩き
割ってほしいのかしら?」

笑顔でそう言う

「ありがとう遠坂、お前の好意に感謝するよ。俺じゃ、壊れた窓を戻すなんてできないからな」

精一杯の感謝を込めてそういう
土下座せんばかりの勢いだ
命より大切なプライドなんて無いっていうのが俺の人生哲学だ

「?出来ないって、そんなことはないでしょ?ガラスの扱いなんて言うのは初歩の初歩だし、たったの
数分前に割られた窓を修復するなんて、何処の流派でも入門試験扱いじゃない」
苦笑しながら遠坂が言う

――――どうやら、俺が脅されて極端に卑屈になっていると思っているようだ

「いや、ホントに出来ないんだ。俺は親父とある人にしか魔術を習ったこと無いし。
二人とも、基本だとか基礎だとかいうのはほとんど教えてくれなかったからな」

ある人というのが遠坂というのは言うまでもない

「――――――はあ?」

ピタリと、遠坂の動きが止まる

―――しまった、前回に引き続き今回も地雷を踏んだようだ――――


「・・・・ちょっと待って。じゃあなに、衛宮君は自分の工房の管理も出来ない半人前ってこと?」

工房すらないなんて事は口が裂けても言えない

「――――――」
俺が黙っていたのを肯定ととったのか遠坂が続けざまに質問してくる
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・まさかとは思うけど、確認しとく。もしかして貴方、五大要素の扱いとか、パスの
作り方も知らない?」

おう、と素直に頷くことにした

―――どうせもう遅いし・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・・」
睨まれてる

目の前には凄い目つきでこちらを睨みつけてくる遠坂がいる

なまじ美人なだけに黙り込んだ遠坂の持つ迫力は尋常じゃないものがある

「なに、じゃああなた素人?でもそれだと、いくつかつじつまの合わないことがあるわね
――――それに衛宮君、私を助けてくれた時に持ってた剣は何処にしまったの?」

ぐ、鋭い・・・
自分の生死がかかった状況でそこまで周囲に気を配れるのだから
やはり遠坂は、俺なんかとは比べものにならないくらい立派な魔術師なんだなということを、再認識する

「俺が使える魔術は、強化と投影の魔術だけだ、さっき遠坂を助けたのは一応投影で出した剣なんだ。
あっ、でもその剣で攻撃を防げたのはセイバーに殺意がなかったからだし、さっきは上手くいったけど
もう一回投影しろっていっても多分無理だぞ、何せさっきのが初成功だったんだからな。
閂を上げずに家から出られたのは、セイバーが塀飛び越える時に俺がセイバーの体掴んでたからだぞ」
一息にまくし立てる

これが、英雄になった衛宮士郎が手に入れるに至った心眼の能力だ
相手の質問全てを先読みして答えることで、相手に釈然としないものを与えながらも質問を封じるという
48の禁じ手の一つだ

ほんの1%でも誤魔化しきれる可能性があれば、それをたぐり寄せられるこの希有な能力は
日々、藤ねえやら遠坂に弁解をし続けてきた、何の能力も持たない俺が努力の果てに手に入れたものだ

セイバーが何か言いたそうな目でこっちを見てるけど、今、俺の投影について発言されるのはすごく不味い
目線でセイバーを制する


こちらの思惑通り、遠坂は釈然としないものを感じながらも、とりあえずは納得してくれたみたいだ

「強化に投影か・・・また、なんとも効率の悪いものを選んだわね。で、それ以外はからっきしってワケ?」

睨む遠坂

「まあ、端的に言えば、多分・・・・」
あまりの迫力に少し後退する

「――――はあ、なんだってこんな奴に、セイバーが呼び出されるのよ、まったく」

がっかりと溜息をつく

まあ、気持ちはわからなくもない
俺よりも遠坂のほうがよっぽど優れた魔術師なんだから、俺の体に鞘さえなければ
きっとセイバーは遠坂に喚ばれていただろう

「ま、いいわ。そんな終わったことに不平を言ってても何も始まらないし。
そんなことより今は、借りを返さないとね」

ふう、と一息つく遠坂

「それじゃ話を始めるけど、衛宮君はどこで聖杯戦争のことを知ったの?
――――特定の流派にも協会にも所属しないあなたが、知ることの出来る内容じゃないと思うけど?」

――来た
衛宮士郎、一世一代の化かし合いだ
ここで、何かを掴まれるわけにはいかない

――――相手は女狐(一成曰く)

だが、人を騙すという点ではフェイカーの俺だって引けをとらない――――

息を吸い込む
「親父が――――
衛宮切嗣が前回の聖杯戦争の参加者だったんだ。聖杯戦争についての話は、親父が教えてくれた」

嘘の中に真実を織り込む
これがばれにくい嘘の付き方だ
――――以前、遠坂が教えてくれた

遠坂が納得するのがわかる
「なるほどね・・・それなら別に、知っててもおかしくないか。
――――じゃあ、これからあなたが何をすべきかもわかってるわね?」

・・・・・・何かあったっけ?

「なあ、遠坂。何かすることなんてあったっけ?」

呆れられた

・・・・・・しょうがないだろ、何年前のことだと思ってるんだ。よっぽど印象に残ったことならまだしも
細かいところまで覚えていられるような、いい頭を俺はしてないんだから

「呆れた・・・、つまり衛宮君の知識は断片的ってことね。
いいわ、わからないことがあったら質問して。答えられるものは答えるから」

「じゃあ、このあと何をすればいいのか教えてくれないか?」

「そうね・・・とりあえず衛宮君は、教会でマスターとしての登録をしてこなくちゃいけないわね。
教会には聖杯戦争の監視者がいるから、もしサーヴァントを失って聖杯戦争をリタイアしたい時は
そこでかくまってもらえるわ」

「――――もっとも、セイバーみたいな強いサーヴァントがやられる事態なんてそうは起こらないでしょうけどね」

遠坂が苦笑する

セイバーが誇らしげに胸を反らす
「シロウ、彼女はよい魔術師のようですね」

・・・セイバーって案外騙されやすかったんじゃないだろうか
思い当たる節はいくつかあるし


「他に質問がないみたいだったらそろそろ行きましょうか」

「どこにだ?」

「・・・・・・・・・・・・・・」
睨まれた

「教会・・・だっけ?」
正直あまりいい思い出のある場所じゃない
言峰・・・・・・、か
俺はあの変態麻婆狂エクソシストを救うことが出来るんだろうか・・・・

「ええ、隣町だから今から行けば夜明けまでには帰ってこれるわ
まあ、あしたは日曜だから夜明けまでにこだわることはないんだけど、何事も早い方がいいでしょう?」

―――今日はゆっくり休んで明日行こうって発想はきっと遠坂にはないのだろうか

「そういうものなのか?」
一応聞いてみる

「なに、行かないの?・・・衛宮君がそういうならいいけど、セイバーは?」
なぜかセイバーに意見を求める遠坂

「ちょっと待て、セイバーは関係ないだろ。あんまり無理強いするな」

「いえ、シロウと私は一心同体です。関係ないということはありえません」


ありえないんだ


「トオサカと、言いましたね。是非、シロウを教会へ連れて行ってください」

「凛でいいわ、セイバー」

「では、リンと。ええ、こちらのほうが貴方に合っている」

俺をおいて友好を深めるセイバーと遠坂

「じゃ、衛宮君。セイバーの許可もおりたし、さっさと教会行くわよ」

スタスタと歩いていく遠坂を追いかけて、展開についていけない俺を引きずり、セイバーも歩き出す

「いた、痛いってセイバー!自分で歩くから!」
こうして、俺たちは教会に向かって歩みを進めた――――






夜道を奇妙な集団が行く

深紅のコートを着た絶世の美女と、黄色い合羽をフードまで被った少女
楽しげに談笑する彼女たちだけなら、まだ問題はなかっただろう
――――問題があるとすれば、俺が彼女たちに引きずられているってことだ

こんな姿ご近所に見られたら明日から家を出られない

泣きそう






とんでもなく豪奢な教会
それは見る者に緊張を与える

「シロウ、私はここに残ります」

そうセイバーが言った

「そうだな、監視者がどんな奴か知らないけど、俺がどんなサーヴァントと一緒にいるか知られない方がいい」

俺がそういうと、遠坂とセイバーが信じられないモノを見たという顔をした

「っな――――――」
「っえ――――――」

・・・その反応は酷くないか

「・・・・・・・・俺だって少しは考えてるさ、だからその奇妙なモノを見たって顔は止めてくれ」

「あ、ゴメン。かなり意外だったからつい・・・」
「リンに、同じです。シロウがそこまで考えているとは露ほども思わなかった」

「もういいよ・・・とりあえず中に入ろう、遠坂・・・・」
そう言って俺は教会の中へと入っていった


広い、荘厳な教会
これほど広いのだから、任された神父はよっぽどの人格者だと思ったら大間違いだ
遠坂の言うとおり、あれだけエセ神父の名が相応しい奴を、俺は他に知らない

「ここの神父とは10年近くの付き合いになるけど、未だに性格がつかめないのよね・・・」
なんてことを遠坂が言っている
「一応は同門の兄弟子に当たるんだけど
――――なんでかは知らないけど協会を抜けて教会に入ってからは直接合って話したことは、
数えるほどしかないわ」

「遠坂、そういう漢字表記でしかわからない言い方はかなり不親切だと思うぞ?」

「?どういう意味?」

「気にしないでくれ、遠坂。多分気の迷いだ」
俺自身、なんでそんなこと言ったのか全然わからないし

祭壇へ向かっていく
カツカツという音がやけに響く

「それで、言峰神父は一体どこにいるんだ?」
まさか、深夜の礼拝堂で佇んでるって事はないだろう、変態じゃあるまいし

「――――私ならここにいるが、何か用か、少年?」

変態だった


「再三の呼び出しにも応じぬと思ったら、変わった客を連れてきたな。
・・・・・ふむ、彼が七人目という事か、凛」

「そ、一応聖杯戦争についての知識はあるみたいだけど、自分が何をするのかもわかってないみたいでね
見るに見かねて連れてきたってワケ。
・・・・・・・・・・・・・・・たしかマスターになって人はここに届け出を出す決まりだったわよね
――――あんたらが勝手に決めたルールだと」

「それは結構。なるほど、では、その少年に感謝しなければな」

言峰はゆっくりこちらに視線を向ける

「―――――――」
あの時は、奴の視線に怯んだけど
今の俺なら、それくらいワケはない

―――遠坂の方がよっぽど怖いし

睨み返す

「私は、この教会を任されている言峰綺礼というものだ。
君の名前を教えてくれないか、7人目のマスターよ」

「―――衛宮士郎。お前の好きにはさせないぞ、このエセ神父」

「・・・・・君は、私と誰かを間違えていないかね?
――――――私と君とは初対面のはずだが?」
重圧が増す

「・・・・・・・そうかもな、失礼した。神父」
ここは素直に認めることにする
だが、俺という懸念がついたことで言峰の動きは多少は制限されるはずだ

「・・・・・・・・ふむ、衛宮か。」
言峰が嬉しそうに笑う
うわっ似合ってねえ

「ありがとう衛宮士郎。君が連れてきてくれなければアレはきっと最後までここを訪れなかっただろう」
そういって遠坂を見る

「では始めよう、君は確かにマスターで間違いはないのだな?」

「サーヴァントと契約するって事がマスターになるって事なら、俺はきっとマスターってのに含まれるはずだ
だけど、俺はそんなわけわからない聖杯戦争なんてもののために誰も殺すつもりはないし、
誰にも殺させるつもりもない。俺は俺のやり方を貫かせてもらう」

「・・・・・ふむ、珍し奴を連れてきたな、凛。」

「・・・・・ええ、こんな事考えてるとは知らなかったけどね」
遠坂が俺を見る
目線があとで話があると告げている気がする

「どんなマスターであれ、最後に立っていたものに聖杯は授けられる
それが、聖杯戦争のルールだ
聖杯に願えば、その理想もあるいは実現できるかもしれんぞ?」

言峰が告げる
相変わらず、胸の奥にわだかまるような言葉だ

「綺礼、余計なことはしないで、誰も傷を開いてやってくれとは頼んでないわ
――――あなたは、衛宮士郎をマスターとして登録すればいいの。それ以外は私が許さない」

胸にわだかまる暗い感情が払拭される

――――そうだ、遠坂はいつもこうやって最後には俺を助けてくれたんだ


「ふむ、少しばかり道楽が過ぎたか、せめてこの勘違いした道徳を拭い去ってやろうと思ったのだがな
・・・・・・・・・・情けは人のためならずとはよく言ったものだ
久々の楽しい会話に、つい夢中になってしまったようだ」

アレが楽しい会話なのか、お前の
・・・病院行けよ


「では衛宮士郎、お前を七人目のマスターとして登録する。リタイアしたくなったらいつでもこの教会に来るがいい
美味しい飲茶(ヤムチャ)と麻婆を持って精一杯のもてなしをしてやろう」

「断る」
あ、ちょっと凹んでる

どうやら、今度の言峰はややお茶目なようだ
偶にむかつくこと言ってくるけど、こいつとならやっていけるかもしれない


「決まりね。それじゃ、そろそろ帰らせてもらうわ」
遠坂が言う

「ああ、健闘を祈る」

「・・・・・・・・心にもないことを、まあいいわ。
行きましょ、衛宮君」


「ん、ああ、わかった
・・・・・・・・・・・・ありがとうな遠坂」

「何言ってるのよ、教会に連れてきたくらいで大げさな」
苦笑する


「いや、さっき助けてくれただろ?
あのままじゃ俺、暗い考えに囚われてたし。遠坂が止めてくれて助かった」

「あ、あんなの助けたうちに入らないわよ!私だってムカムカ来てたんだから
自分のために止めたの、貴方が感謝する必要はないわ」
赤くなる遠坂

ひょっとしたら、こう面と向かって感謝されるというのには慣れていないのかも知れない

遠坂らしくて微笑ましい気がした

「・・・・・・・・・・・いちゃついているところ悪いが、そろそろ出て行ってもらえないか?
流石に、私もそろそろ眠りたいのでな」

「っな――――――――!?」
「――――――――――!?」
頭に血が上っていくのがわかる
そうか、客観的に見るとそんな風に見えたのか
でも、いくらなんでも俺じゃ遠坂と釣り合わないだろう

ドカッバキ!ドゴッ!
あ、遠坂が無言で言峰を殴ってる
まあ、俺なんかとそんな目で見られたら、そりゃあ怒るよな。うん





夜はまだ、終わらない





――――――――――――――――――――
あとがき
今回は長いので前後編に分けてお送りするつもりです
後編は鋭意執筆中(-_-;)


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