Fate/moon night 機文緤圈法  雰:シリアス


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1: ゆう (2004/03/04 19:05:34)

「っち、逃げたか……」

青年は舌打ちすると、いまだ呆然とする士郎には目もくれず、踵を返してそのままどこかに行こうとする。

「――あっ、お、おい! ちょっと待てよ!」

ふと我に返った士郎は、全身の痛みを堪え慌てて青年を追いかける。生徒たちのことも気にかかるが、この謎の青年のことも気にかかる。

「どこ行くんだよ」
「……この結界の基点を破壊する」

そう言う青年の足は、屋上へと向かっていた。

「え? でも結界はもう解けてるぞ?」
「このテの結界は、術者が魔力を込めれば再び起動するようになってるんだ」

と、その言葉に士郎は遠坂が同じようなことを言っていたことを思い出した。

「もっとも、再起動させるにはかなりの時間が掛かるから、そんなに心配する必要もないけど。念には念を入れていたほうがいいだろう」

それっきり言葉も途絶え、二人の足音だけが無人の廊下に響き渡る。

「……なあ」

その中、士郎がなにかを確かめるような口調で口を開いた。

「お前、サーヴァントなんだろう」

それは質問というより確認だった。
サーヴァントに対抗出来るのはサーヴァントのみ。故に、ライダーを退けた時点で、青年がサーヴァントであることは十中八九間違いない。

「――ああ、そうだ」

訊いた士郎は拍子抜けするほどあっさりと、青年は自らの正体を明かした。
士郎が既に遭遇しているサーヴァントは、セイバー・アーチャー・ランサー・バーサーカー・ライダーの五つ。
残るクラスは、キャスターとアサシン。
だが、目の前のサーヴァントは、キャスターには見えない。
とすれば、自ずと答えは見えてくる。

「アサシンのサーヴァント……」

青年――アサシンは無言で頷く。

「そういうお前もマスターなんだろ。いいのか? こんな呑気に会話してても。俺はお前の敵かもしれないんだぞ」

その言葉に、士郎はきょとんとした顔になり、

「なに言ってんだよ。お前が敵なら俺を助けたりはしないだろ」

アサシンは軽く目を見開き、違いないと苦笑した。

「それよりお前のマスターはどうしたんだよ? 近くにいるのか?」
「いるにはいるが、結界にヤラレて倒れてる」
「……なんだって?」

土地に作用するこのテの結界は、魔術師には効かない。結界の魔力が個の魔力に弾かれてしまうからだ。

「仕方ないだろ。いまの俺のマスターは魔術師じゃないんだから」
「魔術師じゃない?」

それはおかしい。
サーヴァントを召喚できるのは魔術師だけのはず。魔術師でもない人間がサーヴァントを召喚できるはずがない。
そんなのは矛盾している。

「まあ、魔術回路は待ってるようだし、ただの一般人ってわけでもないけどな」

魔術回路を持っているのに、魔術師ではない。なのにマスター。

「なんだよ、それ。わけがわからない。それにいまのマスターって……まさかお前、自分のマスターを……」

声を強張らせる士郎に、アサシンは軽く肩を竦ませる。

「なにを考えてるかは知らないけど、俺はヒトを殺したりはしていない。それに俺を現界させたのはそもそもヒトじゃないしな」
「はあ?」

混乱する士郎。
そうこうしているうちに屋上に出たアサンシは、迷うことなく基点の前に立つ。

「これか」

くるんと短刀を回して、トンと基点を突く。
それで終わり。
基点は跡形もなく消滅した。

「あれ?」

そこで士郎は、ふとあることに気がつく。

「基点を破壊できるんだったら、最初からそうすればよかったんじゃないのか?」
「……そうだな。どこかの誰かが死にかけてなかったら、俺もそうするつもりだった」
「うっ」

小さくうめく――と、突然アサシンが、あさってのほうを睨みつけた。

「……アレは」

そうつぶやいて、身を翻す。

「あ、おいっ!」
「俺もなにかと忙しい。ここいらで退散させてもらうよ」
「って、待て。俺はまだお前に訊きたいことが……!」

霊体に戻ったのだろう。
士郎がフェンスから下を見たとき、アサシンの影はすでになかった。

「なんなんだよ、あいつは。……あっ」

そういえば名前言ってなかったっけ……。
なんて間抜けなことを考える。

「シロウ!」

後ろから聞きなれた声がした。
振り返ると、美しい甲冑に身を包んだ金髪の少女が、屋上に降り立っていた。
七つのサーヴァント中最優と謳われる剣の英霊――セイバー。士郎をマスターとする、サーヴァントである。

「シロウ、大丈夫ですか!」

セイバーは士郎に駆け寄ると、彼の身体を銀の手甲で覆われた手でぺたぺたと触る。

「ちょ、セイバー!? 痛、痛いって!」

痛みに顔をしかめる士郎。

「どうやら大丈夫のようですね」

とりあえず命に関わるほどではない、と安心したセイバーがほっと息をつく。が、すぐさま顔を引き締めると、

「ところでシロウ。これはどういうことですか?」
「え? どういうことって……」
「私にもリンにも内緒で外に出歩いて。シロウはいつもそうだ。もう少し危機感というものを持つべきです」
「ひょっとして、セイバー怒ってる?」
「当たり前です!」
「そっか……」

心配してくれたんだ。
そう思うと不謹慎だと思いつつも顔が緩む。

「シロウ! ちゃんと私の話を聞いているのですか!」

目敏く見つけたセイバーが、がーと腕を振り上げる。

「聞いてるって。……それよりもいまは生徒をどうにかするのが先だ。詳しい話はそれからにしよう」

そうセイバーを促し、一度だけアサシンが去ったほうを見、士郎は屋上を後にした。
                                             
                                             
あとがき
Fateととある作品のクロスオーバー。
とはいっても、バレバレだけど。
なんで彼があんなに魔術に詳しいかについては、まあ先輩繋がりということで一つ。
Fateやってから一ヶ月が経つので、細かい所でちらほらおかしな点がありますが、大目に見てください。
っていうか、長すぎます。今度からもう少し短くまとめるよう努力します。


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