Fate/stay night again プロローグ M:衛宮士郎 傾:シリアス・ギャグ


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1: タケ (2004/03/02 19:10:48)




――数多の剣を内包した剣の丘

そこに、いくつもの剣に貫かれ、止めどなくその血を流しながらも

その男はまだ立っていた

その男の名を衛宮士郎という





「・・・流石に、これ以上は持たないか」

やや自嘲気味に笑う
救える限りの人は救ったはずだった。もうやり残したことはない


切嗣の目指した理想を追いかけて、今日ここまで生きてきた

自らを鋼の剣と化し、いくつもの戦場を駆け抜けた

正義の味方になると決めたこの身に敗北は許されず

ただ、手に届く範囲の人全てを助けたいと思うこの理想は、誰からも理解されなかった

それでも・・・

それでも、助けることが出来た人と、その周りの人が笑ってくれるなら

俺の生涯に意味なんてものは必要じゃなかった

世界が闇で塗りつぶされていく

これが死ぬってことなんだろうか



「ありゃま〜、今回のガイシャさんはボロボロだね〜」

「わーい、ぼろぼろ〜♪」


なんか一瞬袴姿の藤ねぇとブルマをはいたイリヤが見えた気がした
気のせいだ、うん、気のせいに違いない
世界は闇に包まれているのだからそんなものが見えるわけがない
というか、アレが死後の世界だったら俺はまだ逝きたくない


そんなことを考えていたら閃光が世界を貫いた

「・・・・ッ!」

暗かった視界が白で埋め尽くされる
そして、どこからか声が響いた

「契約の時だ、その魂を世界に譲り渡すならば、世界はお前の望みを一つ叶えてやる」

そうか、これが
セイバーが通過していった英霊となる条件ってやつか
ていうか、俺みたいなのを英霊に列して、なおかつ願い事まで聞いていいのだろうか?
昨今は平和だったし、よっぽど英霊と呼べるようなモノがなかったのだろうか?
ちょっぴり、世界に対して同情した



そう

世界が英霊を招き入れるその条件として、その願望を一つ聞き入れる

ここでセイバーは聖杯を手に入れることを望んで、サーヴァントとして聖杯戦争に参加した

だけど、その聖杯は汚れきっていて、彼女はそれを手に入れることを諦めた

そして最後は王として死ぬために彼女の死に場所へと帰っていった

「・・・ッ!」

彼女のことを思い出すだけで胸が締め付けられる

何が未練はないだ、今死のうとしているこの時でさえ

俺は彼女をこんなに望んでいる

なら、俺の望みなんてただの一つしかありはしない

彼女と再び会えるのならば、俺の死後をどのように扱われてもいとわない

「契約しよう、俺の死後は好きにしていい」

「だからもう一度、セイバーに会わせてくれ!」

そして、俺の意識は闇にのまれていった

















胸が痛い



頭がくらくらする、血が足りてない。これは間違いないだろう

「ここは・・・・?」

見慣れていたはずの場所

「この建物は、学校か・・・・?」

壁を支えにしてなんとか立ち上がる

「俺は、たしか死んだはずじゃ・・・・」

そう、俺はあの剣の丘でいくつもの剣を体にはやして息絶えたはずだ

「なんでこんなところに・・・・」

状況が全くつかめない。全ての感覚にフィルターがかかっているような感じがする
フィルターとは言い得て妙だなと内心ほくそ笑む余裕があることだけはわかった
とりあえず、ここをでて今いるところを確かめなきゃいけない
出口が見える場所に向かってとりあえず歩き出す


こつん


足に何かが当たった感触

「これは・・・?」

足に当たったソレをつまみ上げる

「赤い、宝石・・・・」


何かがおかしい


俺はこれを前にも体験したことがあるような気がする
とりあえずその宝石をポケットにしまい込んでまた歩き出す


違和感


俺の来ていた服は物を入れるような場所などあっただろうか
仮にあったとしてもあれだけボロボロになっていたのだ
衣服としての機能を果たしているとはとても思えない


頭が痛い、思考にさっきから妙なノイズがかかっている
ふと、窓に映った自分の姿が目に入った

「っな・・・・!」

そこに映っていたのは、赤い髪をした少年だった
決意を宿した眼差しに、整っている方だと思われる顔立ち
というかコレ、高校生ぐらいの時の自分じゃないか!?

慌てて体を見回してみる
制服の胸に空いた大きな穴
忘れようがない、これはランサーに胸を貫かれた時のキズだ

「ちょ、ちょっと待て?!」

さっきから頭がテンパっている
自分で思いついたことのあまりの突飛さに体がついていってない

とりあえず状況を整理してみよう

1.今の自分の姿は高校生の時の物であるらしい
2.制服の胸にはランサーに刺された時の物と思われる穴がある
3.世界との契約で、俺はもう一度セイバーに会うことを望んだ
4.自分の顔を見て、整っているだとか言ってしまった


・・・4は関係ないか
このことから導き出される仮説は決して多くはない


「まさか・・・!」

・・・思いついた仮説を受け入れるために、心を静かに落ち着ける

「俺はタイム・ストリップしたのか?!」



しっかりまだ混乱していた







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あとがき

守護者となった衛宮士郎をアーチャーという解釈で書いております
傾向とかいろいろ投稿規約破ってたので再投稿です(;´Д`)


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