ネロ・カオス 拾い食いをする 傾:ギャグ M:琥珀


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1: 岡崎 (2004/03/01 01:39:19)

「ぬう、腹が減った。」
666の食い扶持を持つ死徒ネロ・カオスはうめいた。
「不死になったはよいが、こうも燃費が悪いとは。」
666種類の腹の音がオーケストラを奏でている
「ふん、ふん、ふ〜ん。」
そこに通りかかる割烹着の女性。
「喰う!!」
バックリとネロの腹部から出現したワニの口がお手伝いさんを一呑みにする。
「うぬ、これしきでは全然足りぬわ。」
(食べ過ぎ、呑み過ぎはお体に毒ですよー。)
「ぬう!?」
ネロの顔に驚愕の表情が浮かび上がり、やがてそれは満面の笑みに変わる。
「はい♪乗っ取り完了です〜。」
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「あの、どちら様でしょうか…。」
翡翠は遠野家の門の前でコート一丁の中年男におそる、おそる声を掛けた。
「ひ、酷い翡翠ちゃんー!!私を忘れるなんてー!!翡翠ちゃんを殺して私も死ぬーー!!」
異様に渋い声で物騒な事を喚く中年男性。
だがその文法に翡翠は覚えがあった。
「ね、姉さん?」
一卵性双生児の不思議な繋がりか、翡翠は目の前の中年男が血を分けた実の姉だと認識した。
「やっぱり、私がどんなに変わっても翡翠ちゃんだけはわかってくれると思っていましたよー!」
ボロボロと涙を垂れ流しながら翡翠に抱きつく中年男。
苦しいやら獣臭いやらで顔をしかめる翡翠。
「おい、お前何やってんだ!」
「ウチの使用人から離れなさい、この変態!」
偶然通りがかった遠野兄妹。両者とも戦闘モードに入っている。
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全員がボロボロになりながら居間に集まっている。
「それで、きちんとした説明がききたいわね。」
まだ髪が紅いままの秋葉が尋問する。
「ええっとですね。謎の中年男性にパクッと食べられてしまいまして、なんだか海でプカプカ浮いているような気持ちになっていたら、急に回りのたくさんの意識が眠り始めて、気が付いたら私が主導権を握っていたという訳です。」
「たくさんの意識?」
「ええ、この体の中にはたくさんの意識があったんですけど今はほとんど眠っています。たぶん私の持っていた買い物袋の中のアレを一緒に飲み込んだのが原因だと思うのですが…。」
「アレって?」
「今晩の夕食の材料です。」
「……。」
「琥珀…。」
「ハイ?何ですか秋葉様。」
「あんた、クビ。」
「えー、横暴です。資本主義の雌豚。」
「誰が雌豚ですかっ!!ともかくそんなコート一丁の変態中年男をこの遠野の屋敷に置く訳にはいきません!!」
「まてよ秋葉。外見はコンナだけど中身は琥珀さんなんだぞ。」
「姉さんを路頭に迷わせないで下さい、秋葉様。」
「却下します。」
「秋葉、よく考えろ。もし琥珀さんを追い出したら料理を作るのは翡翠だぞ。」
「うっ、それは不味いですね。」
「正に文字通り。」
「酷いです…。」
うるうると涙ぐむ翡翠。
「翡翠ちゃんを泣かせるなーー!!」
巨大な爆発音と共に爆ぜるコートの中の混沌。
再び戦闘の時間に突入する遠野家。
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ボロボロになった居間。更にボロボロになった一同。
「兄さんの能力で何とか琥珀だけを切り離せないのですか?」
「うーん、こう混じり合ってると自信が無いなあ。」
「姉さん…。」
「あら、そんな顔しないで翡翠ちゃん。結構この体も良いですよ〜。秋葉様とも互角に戦えますし。」
「くっ、琥珀の頭脳にあのパワーが加わったら事実上無敵じゃないですか。兄さん、まだ力を完全に制御できないうちにサクッとこの人外を始末してしまいましょう。」
「くるか小娘。」
「げっ、本体の意識が戻り始めた。」
「うぬ、もう少しで不思議ワールドに連れ込まれるところであったわ。このネロ・カオスこんなおかしな精神構造を持つ人間は初めてだ。」
「そう、琥珀は完全に飲み込まれてしまったのね。可哀想な子。だけどこれで遠慮なく始末できるわね。」
壮絶な笑みを浮かべる秋葉。
「まだまだですー。」
「な、何ィ!?」
「姉さん!」
「琥珀さん!」
「ちっ、しぶとい…。」
「あははー、ネロさん、あなたがお休みになっている間、この体の機能のほとんどは私の制御下に置かせて貰いました。これも私の持つ感応能力のおかげでしょうか。」
「うぬ、このネロ・カオスがこんな小娘に隷属しなければならないとは。」
「いきなり意識がもどってびっくりしちゃいましたけど、今のあなたは私の使い魔の1つと変わりません。さあ私の野望のためにちゃっちゃと働いてください。」
「ちょっと、琥珀。何よ野望って。」
「決まってるじゃないですか。遠野家乗っ取りです。秋葉様も志貴さんも翡翠ちゃんもこの体に取り込んでしまうのです!」
「琥珀、あなた…。」
「いやー、これぞ真の一体感。愛する人達と融合できるなんていい世の中になったものです。」
「そんな事してどうしようってのよ、アンタは!?」
「そうですねえ、まず私と翡翠ちゃんは志貴さんを監禁してタナトスの夢です。秋葉様には茶坊主にでもなってもらいましょうか。」
「ふっ、本気で死にたいようねアナタは…。」
こめかみをピクピクふるわせて戦闘態勢に入る秋葉。
「ネロさん、やっちゃってくださいー。」
「ぬう、不本意だが致し方ない。」
3度爆ぜるコートの中の混沌。蛇のようなモノが地を這い秋葉を拘束する。
「あははー、力を使う前に身動きを取らせなければこんなものですねー。」
「止めろ、琥珀さん!」
「止めて姉さん!」
「志貴さん、翡翠ちゃん理解して下さい。秋葉様の独裁を打ち破る千載一遇の大チャンスですよ?」
「……。」
「……。」
「何故黙る、そこの2人!!」
「人望が無いな、小娘。」
「余計なお世話よっ。」
「あれっ!?」
べちゃっとコートの中から出てくる人影は間違いなく琥珀のものだ。
「あれれー!?」
「こいつが私を融合しようとした時、あなたの精神と肉体を逆に略奪したのよ。大半の使い魔がまだ眠った状態だったから識別は楽だったわ。」
「秋葉っ!大丈夫かっ!?お兄ちゃんは心配したぞ!!」
志貴は七夜のナイフで秋葉の拘束を断つ。
「遅いっ!!」
秋葉の裏拳が実兄の顔面にクリーンヒットする。
「ぐばあっ!!」
遠野志貴は地に倒れた。
「さて、後は貴方だけよ。」
「ぬう、使い魔の大半が使えないとなればこの場は不利。撤退させてもらうとしよう。」
「逃がすかっ!!」
追撃する秋葉の目の前に鴉の大群が襲いかかる。
「くっ!?」
秋葉は一瞬で全てを焼き尽くしたが、鴉の羽が舞い落ちる先には誰もいなかった。
「ちっ、逃げ足の速い。」
「いやー秋葉様に恐れをなして逃げちゃいましたねー。流石は秋葉様、マーヴェラス!!」
「琥珀、兄さん、翡翠、あなた達がどのような感情を私に抱いているか今日のことでよくわかりました…。」
「ほら、あの場合は下手に手出しをすると不味いと思って。愛する妹を心から信じた結果であって・・・。」
「惜しかったです…。」
ドッカーンと爆発音が上がり、遠野邸の窓ガラスは全てブチ割れた。
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とある路地裏。
「くっ、しかし大半の使い魔が眠っているということは余計な空腹を覚えずにすむということか…。」
「あーら、こんな所で貴方に会えるなんて。」
「全く、驚きました。」
月夜に浮かぶ純白の吸血鬼と深い青の代行者の影。          BADEND
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『教えて知得留先生』

「メル&シー、僅かなミスで消滅しちゃった全国のネロ・カオスくんを救う、お助けコーナーの時間が来ちゃいました。」
「オッス、オラねこアルク。趣味は園芸。夢はオンリー・ワンになることにゃ。」
「大それた夢ですね〜。」
「たった一つの自分の花を咲かせてみたいにゃ。」
「ぐはっ、ヘドが出ます。そういう戯言は他所でほざいて下さい。」
「はーい、知得留先生は子供の情操教育に非情に悪い存在だと思います。」
「誰が子供ですか。齢800歳を越える猫又が。」
「実質的な稼働時間は一年に満たにゃい。我輩は純粋無垢な魂の持ち主。汚れた人生行路を歩んだオバサンとは違うにゃ。」
「誰が汚れたオバサンですか、誰が!?」
「ニヤリ、誰もあんたのことだって言ってにゃい。」
パンパンパンッ!!
「そういう誘導尋問は禁止です。」
「はーい、都合が悪くなると銃器を持ち出すのは良くないと思います。ノーモア・コロンバイン。」
「無視して本題に入りましょう。さて今回のバッドエンドの理由はただ一つ。琥珀さんを喰っちまったことですねー。」
「琥珀をクう…。何だかイヤラシイにゃ。」
パンパンパンッ!!
「どんなにお腹が減っても道に落ちていたおかしなモノを食べてはいけません。ここはリッチにホテルでお食事などしてはいかがでしょうか?」
「ぐはっ、神の使いとは思えぬこのセリフ。それでソチらのルートではネロ造は助かるのかにゃ。」
「助かりません。どのみち深夜の公園で消滅します。」
「ぐはっ、このコーナー全く意味にゃい!」
「まあ、彼に死んでもらわないと物語が進みませんからねー。」
「うう、思えば不憫なヤツ。悪役の中ではトップの人気にゃのに。」
「ええ、復活シナリオなんか出るといいですねー。」
「さっちんが先だと思うにゃ。…と言うことは永遠に日の目を見にゃいかも。」
「あははー、そうですねー。これで私の4位の座も安泰です。」
「知得留は、はるか下にゃ。ななこといい勝負してるにゃ。」
パンパンパンッ!!
「はい、それでは次の授業でお会いしましょう。」

END


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