金ピカ様の居る風景−居間ー 傾:ほのぼの


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1: にぎ (2004/02/29 18:03:29)






とんとんとん、と。
まな板を包丁で叩く音がよく響く。
珍しく静かな休日の昼下がり。

聖杯戦争も終わって1ヶ月。
すっかり元に戻った日常の風景。
いつもなら騒がしいほどににぎやかな時間だが、今日は実に静かなもんだ。

なんでかって言うと、遠坂が用事があるとかで居ないからだ。
当然、桜と藤ねえは部活中。
そんなわけで、今日は久しぶりにセイバーと2人で昼食な訳である。

セイバーは居間で大人しく待っている。
もっとも大人しいのは表面上だけで、その全身から、
「シロウ、ご飯はまだですか」
というオーラが放たれているのだが。

ちょっと味見、うむ上出来。
よし、これで出来上がりっと。
それじゃさっさとあの腹ペコライオンに持っていってあげるとするか。

「お待たせセイバー、さっ飯にしよう」
「はい、待ちくたびれましたシロウ」
「うむ、我を待たせるとはいい度胸だ」


………なんか変なのが混じってる気がする。










金ピカ様の居る風景  −居間ー










もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ。

何も言わずに黙々と箸を進める。

見てない。
俺は何も見てない。
そうだここにあるのはいつもと同じ光景のはずだ。
こんなものはただの幻に決まってる。
だってセイバーも何も言わないんだから。

「どうだセイバー、今日のは自信があるんだが」
「はい、シロウの料理はいつも美味しいですが、今日のものは一段と美味しい」
「ふんまだまだだな、この程度の味で我を満足させられるとでも思ったか」

うむセイバーが満足そうでよかった。
やっぱりいつもどうりの光景だ。
横から偉そうに言ってくる声なんて、俺には全く聞こえない。

「ご馳走様でした、シロウ。ええ、大変満足しました」
「うむ、腹だけは膨れたぞ。もっと精進するがいい雑種」

にっこり微笑むセイバー。
うんうん、そういってもらえればこっちも作った甲斐があるってもんだ。

………あー、なんだ、やっぱりそろそろ現実を見つめるべきなのか。いやだけど。

「で、何でここに居るんだお前」

いやいやながら正面に座るそいつに問い掛ける。
というか、何でセイバーは何も言わないんだ。

「なっ?!アーチャ―?!貴様!いつの間に!」

ああそうですか、気づいてなかったんですかセイバーさん。
そうですね、ご飯を目前にしたセイバーさんに、そんな事期待した私が間違っておりました。

「雑種、我がわざわざ足を運んでやったというのにその態度は無礼であろう」

等とあくまで偉そうにほざくアーチャ―こと金ピカ、もといギルガメッシュ。

「うるさいいいから答えろ、ていうか何で生きてんだお前」

―――聖杯戦争での最終決戦、確かに俺たちはこの最強の敵、人類最古の英雄王を打倒したはずだ。

   なのに、なんでこいつは俺んちで勝手に飯食ってんだ。

「ふん、我を見くびるな。この我がセイバーを残して一人で死ねるはずがあるまい」
「いや、だからそういうんじゃなくて……いや、やっぱもういいや」

なんかまともな答え返って来そうにないし。

「それはもういい、じゃあ何でここに居るんだお前は」
「ふん、無論セイバーに会いに来た…のが1つ」
「1つ?」

意外だ、こいつの頭にセイバー以外のことがあるなんて。

「うむ、コトミネが死んだのは知っているな」
「ああ、そりゃ勿論。それが何か関係あるのか?」
「うむ、おかげで我の住処がなくなってしまった」
「――――――は?」

いや、まて、それはまさか――――。

「そういうことでここを我の住居にしてやる事にした。光栄に思うがいい雑種」
「うん、でてけ」

即答する。
刹那の間もおかず即答する。
当然だ、誰が好き好んでこんな奴を家に置くか。

「なんだと、我の意向に逆らうか雑種」
「当たり前です!アーチャ―!」

と、突然いままで黙り込んでいたセイバーが怒鳴り上げた。

「あなたは自分がなにをしたか忘れたのですか!あなたのような危険人物をシロウのそばに置ける筈がありません!」

うん実に正論だ。
いいぞセイバーもっといえ。

「大体!あなたが居ては食事の分け前が減るではありませんか!!」

本音はそこかセイバー。

「まあそうゆうわけだ、俺としてもセイバーを養うだけでも精一杯なのに、これ以上食い扶持が増えるのは無理だ」

いやほんと、今でもいい加減限界だ。
ギルガメッシュは、それをきいて納得してくれたかふむ、と考えて。

「雑種、要は貴様の財力の無さが原因か」
「いやそれだけじゃないが…まあ、それはでかいな」
「ふん、よかろう。ならば我が哀れな下民に報奨金をくれてやろう」

――――なんだって。
    いま、こいつはなんていったのか。

「本当か、本当だろうなそれ。いっとくけど円だぞ、日本円だぞ。
 もうどうあがいても使えない大昔の金なんかじゃ駄目だぞ」

まあ、それはそれで価値があるんだろうが。
今の俺に必要なのは、この生活を豊かに出来る福沢さんだけだ。

「ふっ、見くびるなといったはずだぞ雑種。そうだな、この程度でどうだ」

と、何処から取り出したか分厚い封筒を渡してくるギルガメッシュ。
太い、太すぎる。
思わずごくりとのどを鳴らして中を見る。


………………………。

……………………………。

…………………………………、はう。


「ああいいぞ、ギルガメッシュ。困った時はお互い様だよな」
「うむ、よい心がけだ雑種」
「しょ、正気ですか?!シロウ!」

なにやらセイバーが怒鳴ってる。
なにいってんだセイバー、こいつはこんなにいい奴じゃないかー。

「シロウ!あなたはどうしてもいつもそうなのですか!いいですか彼はあなたを殺そうとしたんですよ!
 そんなものをどうして家に置こうというのですか!あなたはそんなに私を困らせるのが楽しいというんですか!」
「セイバーちょっと落ち着け」
「落ち着くのはシロウのほうです!そのような事であっさり懐柔されたりなどして!大体シロウには危機感というものが……」
「セイバー、これだけあれば食事のグレードアップも望めるぞ」
「まあ、仕方がありませんね。困るものを見捨てるのは騎士道に反します」

うん、セイバーもようやく分かってくれたようだ。
さすがセイバー、話が分かるやつだ。

「ふっ、決まったようだな」
「ああ、何でこうゆうことになってんだか疑問ではあるが…ま、よろしくなギルガメッシュ」
「うむ、我の世話を怠るなよ雑種」
「何を言っているのですか、士郎があなたの世話を焼く道理などありません!」
「つれぬなセイバー、これからは共に生きる仲ではないか」
「だっ黙れ!どの口がそのような事を…!」

再び言い争いを始める2人。
まあセイバーが一方的に食って掛かってるんだけど。

しかし改めてよく見てるとギルガメッシュの奴もホントに懲りない。
あれで結構一途な奴なのかもしれない。

今にも斬りかからんばかりのセイバーの様子を眺めながらそんな事を思う。

――と、そこに。


ガラガラガラ。

「士郎ー。いるー?ってなんであんたがここにいんのよ―――――っ!!」

無遠慮にズカズカと入ってきた遠坂の大声が響き渡った。










いつも以上にさわがしい衛宮家の昼下がり。

―――さて、どうやら、
   家族が1人増えたようだ。






                     [END]


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