夢を継ぐ一人の男 7、終わりを告げる鐘の音 M:遠坂凛 傾:シリアス


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1: Hyperion (2004/02/28 15:47:17)

7、終わりを告げる鐘の音    


あれからどれくらいたったのだろうか、そう長くは無かったと思う。
あいつらも、こんな生活に慣れ始めてきていた。

それは突然終わりを告げた。
日が昇ろうと準備をしていた矢先、
小さかった、けれど十分、大空へとただ無常な音を鳴らす。
その音は怪しげで、何か暗示しているような、そんな音だった。


まだ起床までは時間があったけれど、眠ることは出来なかった。
今までは稀薄だったモノが一斉に咆哮を響かせた。
きっとそれが何かの合図だったんだと思う。
この中ではきっと私ですら一介の魔術師でしかなかった。
それは、大抵は予想道理。
少なくとも七つ……私たちの切り札と同じか、それ以上のモノがそこにはあった。

「______不味いわね。辞退できるのかな、これ」

女をそうまで言わせた。
圧倒的、そう思っていた切り札、それすらも凌ぐかもしれないモノ。
女はあの時の事を思い出していた。
あの時は七つ。今感じ取れるのも七つ。
あれを思い出させる七つのモノ。
忘れたかったワケではない。忘れていたワケでもない。
ただ_______不気味だった。

「いるんでしょう?ちょっと相談があるんだけど」

扉越しにいるであろうライダーに声をかける
「失礼します。_______リン、どうやら貴女の予想ははずれてしまったようですね」
「そうね……ライダー。私はただ七つあることしか分からないけど、
あなたはどうなの?……サーヴァントとして」
「いえ、サーヴァントとして現在感じ取れるものはありません。しかし、
力だけで数えるなら私も七つ、その内、六つがともに行動をしているようです」

六つ?これ程のモノが六つも一緒に行動しているというのか、それだけで脅威。
そんなモノが六つも……
「________で、ライダー……」
「そうですね、その内の四つならなんとかできるでしょうが、一つは厄介ですね、
たぶん私でも、苦戦を強いられるでしょう、それと残りの一つと、もう一つですが……」
「分かってるわ、一つは私でも何とかなるかもしれない。
でも、もう一つはね________ていうか何よあれ、
あんなの、この世界からみれば規格外じゃない」

そうだ、それは世界から恐れられて矯正されても、おかしくないほど恐ろしいモノ。
ただ、隠す必要もない。圧倒的なまでのモノ、それは感じるだけで美しいと思った。

突然、一つ増えた。

「_______っ!?……また、増えたっていうの?」
「リン、これはサーヴァントです。私にはそれが強く感じられる。
そうここから遠くはないでしょう、行って見ましょうか?」

サーヴァントだと、確かに今ライダーはそう言った。

「そんなわけ……聖杯は私達が壊したのよ!?何でここにサーヴァントが」

「いいえ、リン。私が言ったのは、前にサーヴァントだったものの
気配を感じるということです。決してサーヴァントという役割ではないはずです。
あの聖杯ではないですが、それに匹敵するモノが降りてくると思っていいでしょう」

匹敵するものが降りてくる。そういったのかライダーは。
そんなこと、それこそあるはずがない。
冬木の街では聖杯を呼び降ろすのにさえ、三つの優秀な魔術師の家系が手を組んで
そうしてやっと呼び出されたものだった。
それに匹敵するものが降りてこようというのか。
だが、何故に。何のためにそれが降りてこようというのか。

「事情は分かったわ。ライダーはすぐに士郎を呼んできてちょうだい。
桜はもう感づいて来てるみたいだし」

と、ライダーが入ってきたドアに眼差しを向ける。

「姉さん!どういうことですかこれ!?言っていたのと違うじゃないですか!
私は、こんな凄い事になるなんて聞いてない。先輩だって、私達だって、
こんなの太刀打ちできないじゃないですか!」
「桜、予想外だったのよ。私だってこんな奴らがノコノコ表舞台に出てくるなんて
思ってもいなかったんだから。ライダー早く士郎を呼んできて!」

ことは一刻を争う、それほどまでに強大なものがこの国に訪れたのだ。

「桜、分かってるわね。自分達とは格が違うものが相手なら
私達は悪魔でも後方支援に徹するのよ。今のあなたの魔力量だけなら
そいつらに匹敵するかもしれないけど。最大出力が桁違いだから。
でも相手が自分より格下の相手ならば容赦なく戦闘不能にしてやりなさい。
そうしなければ、やられるのは私たちなのよ。
たぶん一度参加してしまった以上そう簡単に抜けることはできないはずだから。」
「分かりました……嫌ですけどやります。
それで先輩や姉さんを失うのはもっと辛いことだから」

桜は強くなったな。そう思った。あれから桜に任せて
私がこっちに来ていたのは、ある意味正解だったのかもしれない。

「遠坂!?なんなんだよ。これ。
俺にだって分かるくらい桁違いなのが一人いるじゃないか」

そういって衛宮士郎が部屋に入ってきた。
彼もあの一つには目を覚まさずにはいられなかったらしい。
それもそうだろう。あれはこの世には本来あってはならないモノなのだから。

「そうよ、だからライダーに呼びに行かせたんじゃない。
分かってるんなら桜みたいに、用意してさっさと来なさいよね!」

そう言うしかなかった。動揺している。臆している。私が。

だが同時にそれを見てみたいと思った。
美しいまでに圧倒的なソレを。

「士郎も分かってるはね。前みたいにセイバーの治癒能力があるわけじゃないんだから、
こんな奴らの攻撃、一度でも受けたらゲームオーバーよ。
私たちは後方支援よ。解ってるわよね!?」

「ああ、解ってるって。嫌というほどお前にいいつけられたからな」

桜には無限ともいえる魔力量、士郎には固有結界。
それにライダーだっている。私だってこんなことのために2年間魔弾を用意してたんだ。
その辺のパーティーとは違う。

「解ってるんならいいわ。ライダー、案内して頂戴。
あなたのほうが強く感じ取れてるみたいだし。
私達よりは確実でしょう?
この前と同じ、って言ってたわよね。誰だか知らないけど。
あのときにこれ程までの力を持っていたのはセイバーとバーサーカーしかいなかった。
そのどっちかだと思っていい訳よね?」
「そうですね、誰かはわかりませんが以前の中の一人に間違いはありません。
そうすると、いるのはセイバーかバーサーカーです。
セイバーならきっと私達の力になってくれるでしょう。
バーサーカーだった場合、どうなるかはわかりませんが」

そう言って私達は部屋を後にした。
それと同時にさっきのとは比べ物にならないくらいの壮大な音で
それは始まりを告げた。


A certain day,4:44 a.m.         
A magic convention, a battle section,
This game, start.


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