3、思い出と使い魔の優しさ


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1: Hyperion (2004/02/17 21:50:00)

3、思い出と使い魔の優しさ

歩く、歩く、歩く。
遠坂邸とあいつの屋敷は、同じ深山町ではあるが、相反した場所に位置している。
移動手段としては、色々あるのだが、遠坂の家訓を守り通す為には、
一般では代表的であろう、自転車なんて選択肢はなきに等しい。
そのため、屋敷まではひたすら歩くしかない。
途中、小高い丘に建てられた家が見える、あの家自体は既に空だ。
中にあった書物の類は、物に関わらず協会に売り払ったし、
なによりも、あそこにはもう何もいない。
何もいないせいか、お化け屋敷なんて噂は、噂を通り越して伝説に近かった。
だが、騒ぎ立てる割に、周囲の人間はほとんど気にしてなどいないらしい。
普通なら気にするだろうが、文字道理、この町は普通ではなかったからだ。
______ああ、やめた。陰気臭い話は性に合わないし。

「ライダー、頼んだ私が言うのをあれだけれど、あなた、いったいどうするつもり?」

隣にいる、使い魔に正直に聞いてみる、頼んだのはいいが、できないというのなら
やっても無駄だ。いまから、二人で作戦を練らねばならないだろう。
なにしろ、相手が相手だ、あれはあいつの事となると一筋縄ではいかない。

「安心してください、リン。貴女ほどではないですが、私に名案があります。
断れないというよりも断れないでしょう」

「そう、あなたがそういうのなら真実なんでしょうね。
そうよね……あなただものね。聞いた私が馬鹿だったわ」

ごめんなさい、と手でひらひら空を仰ぐ。
彼女は生前、女神と呼ばれたこともある身だ。
色恋沙汰はお手の物なのだろうか、根はいい奴だし、そう心配する必要もなかったか。

どうこう言っているうちに交差点に差し掛かる、懐かしいことが脳裏に浮かんだ。
何故だろうか、まだ、頭に残っているうちに誰かに話しておきたいと思った。

「私さ、子供の頃あっちのほうにある公園でよく遊んだのよ。
遠坂の家の子なら、周りの者たちとの関係を築くことも勉強だから、
なんて、いつもは厳しい人が言うからうれしくて。
そりゃ、来れるのは毎日ってわけじゃなかったけど、あの時は
楽しかったわ。」

「以外ですね、リンは昔からこういう性格だと思っていましたから、
子供たちとは考えが合わずに、楽しめないと思っていましたから。」

「失礼ね……まぁ確かに初めのうちは特に楽しいなんて感じなかったわ。」

そうだ、私は毎日あんなにも耐えて勉強してるのに、なんでこいつらは
無邪気に笑っていられるんだって、内心ではそう思っていた。
だけど、それが羨ましいとは思わなかった。
みんな、私のことを慕ってくれていたし、楽しくはないけれど
辛くもないし、でもどうでもいいわけではなかった。

「初めは?……何かあったというのですか?」

ライダーは不思議そうに、懐かしむように聞いてくる。
その仕草には、何か嬉しそうな、可笑しいって感情が垣間見ることができた。

「その公園にね、私とは全く違う考えの奴が来たのよ。
真逆!って思うぐらい正反対なやつでさ、そいつの派閥と私の派閥と、
まさに、公園領土争奪戦が勃発よ。
でも、そいつとは考えが合わなかったけど嫌いってわけじゃなかった。
いつでも、真正面から突っ込んでくるんだから、こっちは手の込んだ
策略で地に伏せさせたわ」

「リンらしいですね。私には公園がどんな場所は良くは分かりませんが、
あなたの話から推測するに、とても豊かで暖かい場所だったのですね。」

ふふ、なんて笑いながら、いまのリンはとても楽しそうでしたよ。
なんて、顔に書いてあるかのようだ。
自分で言っておきながら、なんでこんなこと話したんだって顔が熱くなる。
でもそれだけ、ライダーも変わったということかな。
それだけでも恥ずかしいのに、ライダーはとどめの一撃とばかりに
こんなことを言った。

「リンは鈍感で正直じゃないから私が言いましょうか。
そうですね。あなたは子供ながらその子のことが好きだったんですよ。
そんな、真っ直ぐなのに憧れて、不思議で、どうしようもなく
惹かれてしまったのでしょう。
あなたの口調からでもそれが大切な思い出だったと分かりますから。
だから、私にこんなことを話したのでしょう?」

ああ、もう一発KO負けだ。
ライダーがこんなこと言うなんて思ってもいなかったし、
なんか、私の奥で図星ですよ〜。なんて踊り狂っているものがいる。
そんなこと意識していたわけじゃないし、忘れていたことだけれど、
無性に恥ずかしいと感じる。

「_____ば、ばか。そんな真っ直ぐ言わないでよね。
私だって、そうかな〜なんて思っていたんだから!
ああーもう。やっぱり、こんなこと話すんじゃなかった……」

そうですかー。なんて応えなのか、そうでないのか分からないような
言い方で、笑いながらライダーは言った。

「さぁ、着きましたよリン。ここまで、あなたと二人でこれて私は楽しかったですよ。
ですが、これからはちょっと厳しい戦いになりそうですから。
気を引き締めていきましょう。」

ライダーは、初めは柔らかく、しかし後では固かった。
これから始めることを意味するかのように。




「作者の駄文 その2」
みなさん如何でしょうか?
私のSSは奈須ワールドにあっていないかもしれません。
それに、文章を本格的に書くのも久しぶりですので、見苦しい箇所もあります。
特に今回のライダーについては自分でどうなのかいまいちわかりません。
批判でもなんでも、感想掲示板に書き込んでいただけると幸いです。


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