2,何を企む、大師父


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1: Hyperion (2004/02/16 21:42:00)



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    世界魔術大会 招待状             遠坂凛 様 
           
           主催者:キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ

皆様、日々魔術の研究は捗っておられるでしょうか?
冬も過ぎ、四季の移り変わりが激しい国々では、工房から見られる
色とりどりの木々が、研究意欲を向上させてくれていることでしょう。
この度、急な決定ではありますが、魔法使い殿の提案により
記念すべき第一回世界魔術大会(仮称)が開催されることとなりました。
皆さんの研究成果を試される、よい機会だと思っております。
つきましては、能力優秀な方々に、この招待状を送付させて
頂くこととあいなりました。
本大会は部門別に分かれておりますが、
この招待状は「戦闘部門」のみとさせていただきます。
他の部門につきましては、会場にて詳細が説明されます。
本来、予選を勝ち抜かなければならない所ですが、皆様方にはそれを
免除しまして、是非、ご参加願いたいと思っております。
参加される方は当日までに、参加者を揃えて
本部、時計塔までお越しくださいますようよろしくお願いします。
                         
                           降霊科 部門長

「戦闘部門、競技内容・注意事項」

競技は勝ち抜きトーナメント形式とさせて頂きます。
予選通過チーム、招待者、合計65チーム。

・1チーム3名とさせて頂き、言葉を喋れるならば、人外でも良いものとします。
 尚、3名のうちに使い魔は含まれません。
・基本的には何でもありですが、参加者をできるだけ殺害しないように
 していただけると、事後処理に手間が掛からずうれしい限りでございます。
・競技場以外での戦闘は禁止いたしませんが、避けてください。
・また、魔術大会、とありますが、名目上のみですので、魔術師以外の方も
 ご参加いただけます。しかし、普通の人間はご遠慮下さい。
 命を捨てることになります。

以上4項目のルールは主催者の意向をもとに作られています。

では最後に  


優勝賞金:  5000万£  

※税は掛かりません。


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なんなんだろう、これ。
まだ頭の中で収拾がつかない。
そもそも、何故、優秀な魔術師が態々、協会に身を晒さねばならないのか。

「いや、確かに、あればいいなぁーなんて言ったけど……」

暫しの沈黙。それは時が止まっているかのよう。
だって、こんなことありえないんだから。
それになんで主催者が大師父なのか、これは私に対するジョークのつもりなのか。
人外でもいいって何よ。そんなこといったら、世界中から怪物が溢れるほど
集まってくるじゃない。
けれど、5000万といえど、お金に釣られて集まってくる者達なんて
たかがしれているだろう。

「リン……私もこれを見たときには驚きましたが、この時代ではこんなことが
時折、行われているのではないのですか?いえ、私の生きた頃にはこんなイベントは
皆無に等しいものですから。」

あー、でもどうしようか。学校内だったら優勝できるかも、なんて思っていたけれども
こうなると次元が違う。きっと、1000年クラスの吸血種とか、概念のみ存在する怪物とか
でてくるんだろうか。いや、彼らは本来そんなことに興味は無いはず。
ということは、出場するのは半端な魔術師とか、自身を過信した雑魚だけか。

「リン?……」

「ライダー、出るわよこれ。ええ、心配でしょうけど私の勘が当たっていれば
たいした奴らなんていないはずよ。本来の魔術師がこんなものに顔を出すなんて
ありえないもの。」

そうだ、私たちなら簡単に優勝できるだろう。
士郎だって、私と繋げとけば戦力になるし、
こっちにはライダーがいる。
負ける要素なんてないはずだ。
こんなお金だけの競技に高貴な者が参加するはずがない。
ただ、主催者が主催者だけに何かあるような気もするのだけど……
出場するとしたら問題は……


「ライダー、桜引き受けてくれないかしら?
あなただってわかってるでしょう?魔術っていうのは途方も無くお金の掛かるものなの
こんなチャンスが転がってくることなんてほとんどないわ。
このまま行くと、私もロンドンにはいられないし。
もう片方なら問題ないわ、私に任せて、あいつじゃ絶対断れないんだから」

何よりも、あの女にあんなことを言わせておくのも口惜しいし。
それに、これからも衛宮士郎が魔術師として生きていくというのならば
絶対に断れないはずだ。

「分かりました、リン。私もあの屋敷で世話になっている身では何もいえません。
今になってみればセイバーの気持ちが良く解る。
いえ、マスターが反対したとしても押し通しましょう。
本来、あんなもの摂取しなくてもなんら関係は無いのですが……」

「言わなくても分かってるわ、ライダー。
それじゃあ、敵地に赴くとしましょう。
無論、帰りは大漁以外はありえないけど」

そうして、二人は敵地に赴く。
お互い、何にも変えられないもののために。


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