月影検Act.8


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1: アラヤ式 (2003/08/16 10:50:00)[mokuseinozio at hotmail.com ]

「どうして……。 どうして!? 」

アンティークな鏡台は粉々にくだけ、彼女の顔を写すことはない。瓶にはいった化粧水は床にあふれ、彼女の顔を潤すことはない。

リタは、泣いていた。

/1.

悪夢。

あれは、悪夢だ。

スミレが、アルトルージュを助けた。

そんなはずはない。

いや、でも、どうして。

「なんで……うそよ! あの子は自分から戦いに身を投じるような子じゃないわ。 どうして!!」

着飾っていたリタの仮面は剥がれていた。

化粧も、ドレスも、宝石も、目の覚めるような美しい装飾品も、今のリタを着飾ることはできない。

彼女は壊れた鏡台に突っ伏して、嗚咽をもらす。

「リタ様」

ヴァン=フェムが、部屋に入ってきた。

老紳士の突然の訪問に驚愕したリタは、涙を払うと彼に向き直る。

「ヴァン=フェム殿。 ノックぐらいしてもらえ」

「何故、 無理をなさるのですか?」

老人は、悲痛に眉間をゆがめている。

「スミレ様と刃を交えたことは聞きました。
無理はおやめください。
友人同士での争いは、他人のそれよりも悲惨な結果になってしまいます」

リタは散らばった鏡台の上で、ガラスをにぎりしめ、ヴァン=フェムを睨む。

「では、オーテンロッゼ殿はだれが護るのですか!
実験体の死者たちは、まだ完成しておりません!
今、アルトルージュが総攻撃を仕掛ければ、どちらが滅ぶかは明白です!!」

リタは全てを予想していた。

オーテンロッゼの破滅。

自分の思い描く最悪の結末が外れることはおそらくない。

「ならば私が、お護りしましょう」

老骨の吸血鬼は、静かにそういった。

/2.

「おいしい! ホ○、あんたいいお嫁さんになるよ〜」

「おほめに預かり光栄だよウォーター・ボトル。 名前もそろそろ呼んでもらえると嬉しいんだけどねぇ」

水色のTシャツをきたスミレは、ヴラドの焼いたアラスカ産の秋鮭に舌鼓をうつ。

あの壮絶な姉妹戦争から一日。

脱水症状でしばらく寝込んでいたスミレは元の酔いどれに回復し、四次元和室(ヴラドの精神世界)で朝食をゴチになっていた。

「ねぇ水魔、あなたって、水の中でどんな生活してるの?」

「食っちゃ寝♪」

「くっちゃ、ね??」

「うん。 お魚たべて〜、酒飲んで〜、寝て〜、の繰り返しかな」

「へぇ。 楽しそうだね〜。ていうかヒマなの?」

目を輝かせいるアルクェイドは、スミレとすっかり仲良くなっていた。

致命寸前の傷も、今はすっかり回復し、暇なときは海に連れて行ってもらっているらしい。

現在、柩で就寝中のアルトルージュとは、さすがにお互いの心臓をぶち抜かれたため、廊下ですれ違うたびに火花を散らしている。

スミレの処遇については、アルトルージュもあきらめ半分の黙殺ということで落ち着いた。(エンハウンスの説得が大きかった)

ただし、『今後、正門からはいらなければ、即刻出て行ってもらいます』とのお達しである。

納豆に卵をまぜている志貴も、アルクェイドになつかれているスミレの私生活が気になる。

「じゃあ、寝るときはどうするんですか? 海底洞窟で一夜をあかすとか?」

「はずれ〜。 半分寝て、半分起きてるんだよ♪」

「へ?」

なぞなぞのようなスミレの答えに、志貴の頭には疑問符がうかぶ。

「マグロやカツオが睡眠をとるときはな、右脳と左脳を交互に寝かせるんだ。回遊魚はずっと泳いでないとエラから酸素をとりこめないからな」

海苔を醤油にひたしながら、口の周りにごはん粒をつけているエンハウンスが、志貴の疑問に答えた。

「そだよ。あたしにえらはないけど、ずっと泳いでないと身体なまるしね」

スミレの朝食は、あっという間になくなった。

爪楊枝を口にあてているスミレは、一息つくとアルクェイドの肩に手をまわす。

「ねぇ姫さま、海にいかない?」

「行く行く〜!! 志貴、一緒にいこうよ!」

「う〜ん、今日は買出しにいかなきゃまずいんじゃないか?」

志貴は隣でどんぶりにカレーをそそぐシエルに一瞥した。生活監督官の彼女のお許しがないと、幾分ばつがわるかったが、

シエルは親指をたててOKをだしてくれた。

「いいですよ。 今夜はシーフードカレーつくりたいな、とおもっていたところですから。新鮮な海の幸をお願いします。」

「決定〜!! あたしがお魚とるからさ、漁業ついでの海水浴もいいよね♪」

「姐さん、俺もつれてって……ゴフ!!」

身をのりだしたエンハウンスの頭に、カレーどんぶりハンマーが炸裂する。

「エンハウンス。 最近のあなたは、自分が吸血鬼だっていう自覚が非常に欠如してますね〜。
半人半死徒のくせに、直射日光が燦々とふりそそぐ海で泳ぎやがる気ですか?」

「……ハヒ。フヒハヘン」

スミレは、卓袱台に沈んで白煙をあげるエンハウンスの頭を苦笑いでなでる。

「今日は我慢しとけ〜。哀しいけどね、あんたじゃ海には耐えられんのよ。
それじゃあ出発しよっか〜♪」

指を上にかかげたスミレに、部屋中の水蒸気が集中してきた。

スミレをつつむ水の螺旋から巨大な手のかたちが姿をあらわす。

ゆらりと動く水流の巨大手は、志貴とアルクェイドの腹をわしづかみにする。

「スミレさん!? 俺まだ用意も何も……てああああ!!」

「これは! 空想具……!!」

巨大な水の手は瞬く間に三人の身体全体を包み、拡散して消えていった。

/2.

「大丈夫〜?しっかりしてけれ〜」

砂浜で、志貴はスミレに人工呼吸を受けていた。くじらみたいに水を噴き出し、志貴はようやく意識をとりもどす。

「ぷは、死ぬかとおもった……。 ここは?」

「秋真っ盛りのバルト海だよ〜♪」

志貴たちがいるのは、バルト海沿岸。

スウェーデン、フィンランド、ロシア、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、

ポーランド、ドイツ、デンマークに囲まれた海で、面積は約40万km2、最も深い所はマイナス429mを記録する有数の海である。

浅瀬で、ロングスカートをたくしあげながら、アルクェイドは裸足ではしゃいでいた。

波間で遊ぶ、彼女の姿に、志貴は今さらながら、彼女の美しさに見とれる。

おもむろに靴下を脱ぎ始めると、ズボンをたくし上げ、海の中へはいっていた。

秋口の海水は刺すように冷たく、砂の細かい感触が気持ちよい。

「し〜き〜」

隣のアルクェイドがにやけている。志貴が振り向いた瞬間、塩っ辛い水が顔にぶっかけられた。

「このやろ〜」

「えへへ、きゃ!!」

当然志貴もお返しした。二人ともずぶぬれになるのにもかかわらず、はしゃいでいる。

バルト海の水は、透き通るような青ではなく、北欧特有、鈍い深みのある、鉛のような蒼い海だ。

潮と冷涼な風が香り、肌寒いがなんとも心地よい。

アルクェイドと志貴はお互いずぶぬれになり、身震いする。

「なんかいいな。秋の海っていうのも」

「綺麗なところだよね。あれ、水魔は?」

いつのまにかスミレの姿がきえている。

彼女のすがたをさがしていると、遠くの沖合いのほうに、水しぶきがみえた。

美しい水しぶきを絶え間なくあげ、背泳ぎでスミレは波間を漂っていた。

赤毛の髪が海のなかにそのまま溶けていきそうなくらい、恍惚とした笑みでおよいでいる。

Tシャツにジーパンという、海にはいささか不釣合いな格好も、まったく気にならないくらい、彼女は美しかった。

志貴の呆けた表情に最初はムッとしたアルクェイドも、すっかりその姿にみとれている。

「なんだか水魔、いきいきしてるね。 海が故郷みたい」

「そうだな。 あ、クロールしてる。 今度は背泳ぎか!?」

「あれってバタフライっていう泳法だよね? ちょっと速くない?」

「……うわ、あきらかに速いぞ。ていうか漁船追い越してるってどういうことだよ!!」

沖を悠々と自由種目でおよぐスミレは、バタフライ世界新をたたきだした北島選手より三倍は速かった。

漁夫のおっちゃんが甲板で腰をぬかし、超速でおよぐ謎の姉さんに泡吹いている。

「さすが、水魔の名は伊達じゃないわ。 吸血鬼があそこまで流水に順応するなんてね」

「そんなにすごいことか?」

「例えばちょびヒゲ(エンハウンス)がこの昼間の海で泳いだとしたら、あっというまに消え……!!」

アルクェイドの足に、海中から振動が走った。地震のような、なにかのしびれる衝撃が海中に伝わる。

「お〜い!!とれに獲れた、いっぱい獲れたよ〜♪」

沖合いではスミレが、志貴たちに向けて笑顔で手を振っている。なにが獲れたか二人にはさっぱりわからなかった。

水面に、白い斑点が浮かび上がる。

スミレと志貴たちをはさむ海上に、魚たちがわさわさと白いお腹をみせ浮かび上がってきたのだ。

「え? なんで?」「うわ、すごーい!」

一匹をつかんでアルクェイドはうれしそうにはしゃぐ。なにが起こったかわからない志貴は、突然おこなわれた漁業にただ呆然とするばかり。

お魚を口にくわえたスミレが、平泳ぎで志貴たちのところにもどってきた。

「スミレさん?これってどうやったんですか?」

志貴が手にとった魚は、暴れることもなく完全に沈黙している。まるで眠っているようだ。

「浅瀬に追い込んだあと、音をぶつけたんだよ」

「おと?」

「そ。 音波で魚を気絶させたの。 とりあえず食べよ♪」

彼女の魔眼が、淡い蒼に染まる。

スミレの右手が丸い弧をえがくように動くと、海中から、人の背程度の水の柱四本が、魚を取り囲むようにそびえたつ。

水の柱は細かくばらけて網目状になると、気絶した魚たちを一匹残らず包み込んだ。

それを確認したスミレは、浜に向かって指をさした。水の網は魚をかかえたまま陸に揚げられる。

砂浜にあがった彼女は、網にとらえた魚たちに手をあわせた。

「今日もあなたたちの命をゴチになります。 ありがとう」

彼女の行動に、アルクェイドは首をかしげる。

「さて、お刺身でもつくろうかな!」

まるまると太った秋口の鱈は、この時期が一番の旬である。

スミレは鱈を宙に放り投げた。彼女の人差し指に、一本の細い水の糸がきらめく。

重力で落下していく鱈に、スミレの右手が魚体を縫うように通り抜けた。

鱈のうろこが剥がれ、中心が裂かれると三枚おろしになり、細かい切り身となって水で受け止められる。

透きとおるような秋鱈の刺身が見事に完成。その神業に志貴とアルクェイドは拍手喝采を送る。

「いや、スミレさん、本当すごいよ」

「そんなにほめないでよ〜。
今日の漁獲高もなかなかだったからさ、神婦さんにもお土産できたね。 それじゃ、いただこ〜♪」

/3.

夕方のバルト海は、水平線に淡い紫とオレンジをうかべていた。

浜で鱈を焼いている志貴が、火をおこす。

浜辺で焚き火を囲む枝に魚をさして、アルクェイドは火をぼ〜っとみつめていた。

「水魔」

「ん?んんん?」

足を組んで座るスミレは、口いっぱいに焼き魚をほうばっている。

「食べてからしゃべって。 ねえ、あなたさっき、魚に手をあわせたでしょ?」

「んん……命もらったからね」

スミレはそういうと、焚き火をみつめている。

「今日は多めに獲ったからさ、感謝しておかなきゃいけないとおもって」

「感謝……?」

「そ。感謝。
今日のお魚たちはあたしたちの血となって還元されてる。
命貰って命を永らえる。
あたしたちは、何かの犠牲をはらってその上に生きているんだからさ、ありがとうの一言くらい言わないと♪」

犠牲。

スミレの言葉は、アルクェイドに重くのしかかる。

彼女にとってその言葉は、逃れられない業であると同時に、志貴と一緒にいるためには避けねばならない業である。

アルクェイドは目の前のこんがり焼き魚に、静かに手を合わせた。

「俺からも聞いていいかな?」

志貴は、火をたき終わっていた。

「スミレさんは、人間の血を吸っているんですか?」

「吸ってるよ」

スミレは、何も臆することなく言い切った。志貴とアルクェイドは、沈痛に顔を伏せる。

予想していたことではあった。変種とはいえ、彼女も死徒であることにはちがいない。

伏せ目がちの志貴とアルクェイドに、スミレは言葉をつづける。

「あたしが魚食べるのはね、極端に吸血しないようにするためなんだ。
でも、やっぱり人間の血吸わないと基礎は維持できないんだよね。 失望した?」

志貴は、首を横に振った。

「そんなことない。
スミレさん、好きこのんで血を吸ってるようにはみえないから」

「私もそうおもうよ。 あなたの身体からは血の匂いがほとんどしないもん」

焚き火の火の粉が、天に昇る。

「優しいねあんたたち。……うれしい」

スミレは、目を腫らして涙をこぼす。

「ちょっと、なんであなたが泣くのよ」

「だって……お魚なんかしょっぱい」

「スミレさん、涙のせいだよ。これでふいて」

志貴の差し出したハンカチを、涙でくしゃくしゃになったスミレは頷いて受け取った。

「本当いうとね、あたし、リタと仲たがいしてさ、すごく哀しかったんだ」

スミレは砂浜に埋めているビールに手をつけていなかった。彼女からアルコールが抜けたとき、隠された本音が吐露される。

「あの子ね、好奇心旺盛でさ、お調子者だし、化粧臭いけど、本当はやさしいんだ」

「……ごめん。俺、あの人は、受け入れられない」

志貴は、彼女のことをおもい、控えめにいった。

「うん。遠野のいいたいこともわかるよ。
あの子が集落を襲った話は、エンハウンスから聞いた。 あの子がしたことは、何をいっても許されることじゃないよね。
でもね、形はどうあれ、あたしも同じことしてるんだよ」

魚の脂がしたたりおち、火の勢いがつよまる。

「あの時、あたしが遠野を助けたのはね、リタのこと、許してもらえないかなっておもったんだ。
勿論それだけでさ、許してもらえるなんておもってないけど」

「スミレさん……。
俺に、誰かを裁く権利なんかないよ。
俺にも、友達いるんだ。
二人してイタズラやって殴られたりして、バカやってる。 スミレさんがリタさんを想う気持ち、俺にもわかるよ」

志貴の素直な吐露に、スミレは、感極まる。

「遠野〜! やっぱりあんたはいいやつだ〜♪」

スミレは志貴を、きつく、きつく抱きしめた。

突然の抱擁に嫉妬ゲージMAXになりかかったアルクェイドではあったが、スミレの涙に免じて、今夜は見逃すことにした。

「友達か。 私にはいないな」

「そんなことないよ。 姫様には神婦さんがいるじゃない?」

「冗談きついわ。
あんな暴力カレーエクソシストは論外よ。 ろんがい!」

「ま〜たまた〜♪ 姫様と神婦さんとの掛け合いなかなか絶妙だよ。あれはレアだね〜 」

顔を真っ赤にしてアルクェイドは否定する。元の酔いどれにもどったスミレも、元の笑顔に戻っていた。

バルト海の夕日が、鈍色の水平線に沈んでいく。

/4.

―― リタ様。とりあえずここは一旦、姿をお隠しになられて下さい。

森の中を駆ける、一人の女がいた。

「ヴァン=フェム殿、どこに身を隠せばよいというのですか……?」

リタは途方にくれていた。

ヴァン=フェムの粘り強い説得をうけたリタは、オーテンロッゼの居城から事実上の脱走をこころみた。

―― オーテンロッゼ殿は普通ではありません。あなたの身に危険がおよぶでしょう。お早く。

リタは、苦しんでいた。

オーテンロッゼへの裏切り。

ヴァン=フェムを一人にした悔恨で、身を切られそうな思いにかられていた。

オーテンロッゼは絶対にリタを許さないだろう。戻ることは、もうできない。

走るたびに枝にひっかかり、ピンク色のドレスは無残に切り裂かれていた。

装いに異常なほど神経をつかう彼女が、まったくそのことに気付かないほど、リタは追い詰められている。

一時間ほど小走りしたのち、どこともわからない薄暗い森の中で、彼女は膝をつく。

「もう、お終いね」

擦り傷だらけの己の足に、リタは自嘲する。

「二十七祖の一人ともあろうものが、どうしてこんなにも、みじめなのかしら。 あ、はは……」

狂いかけていた。

誰も彼女を助けるものはいない。

今となっては唯一の親友も、リタに救いの手をさしのべることはない。絶望という死刑宣告を、今、彼女は叩きつけられている。

リタは、たった一人で、泣き崩れていた。

「スミレ……」

彼女は、虹色の螺旋に身をつつみ、姿をけす。

リタが再び姿をあらわした場所は、スミレにはじめて連れて行ってもらった場所。

夜に浮かぶ月を鏡のようにうつす、森の泉。

リタは、泉に一歩一歩、あゆみよる。清涼なその水を女は手に取った。流水の浄化作用が、リタの右手を焼く。

彼女は、それに構わない。

陰鬱な日々から開放してくれたスミレとの思い出。ここで果てるなら、リタは本望だった。

「スミレ。 本当は、あなたと、敵になんてなりたくなかった。
ごめんね。
あなたは私を助けてくれたのに、私は、あなたに何もできない。
ごめんなさい……」

リタ・ロズィーアンは静かに、泉に足をしずめる。

「リタ……?」

自決を覚悟したリタは、驚いてふりかえった。

上がり調子のイントネーション、はっきりと筋のとおった声。

もう会うことはないとおもっていた。もう言葉をかわすことはないとおもっていた。

だがそこに、スミレはたしかにいる。

「リタ……なの?」

呆然とするスミレの右手から、ビール缶が滑り落ちた。リタは突然の再会に、言葉一つ発することができない。

「リタ……」

スミレの頬に、涙がつたう。

「リタぁ!」

リタの身体は、スミレの腕に、きつく抱きしめられていた。

痛いくらいの抱擁、それ以上に、リタは困惑する。

自分がスミレに抱きしめられる資格などない。

「リタぁ……ごめんね……あたし、あなたが苦しんでることに全然気付かなかった……親友失格だよ……ごめんねぇ……」

スミレは、幼子のように涙をながす。

その姿にリタは、今まで、必死でせきとめてた想いが、あふれでてしまう。

「スミレ。 違うの。 私がわるいのよ。 あなたは何にも、わるくないのよ……」

二人の死徒の絆を、さえぎるものはもうなにもない。


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