浅上ゴースト・バスターズ! 後編


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1: 間桐 恭二 (2003/07/16 13:11:00)

「次の被害者は誰かなぁ?」

「そりゃ、遠野だろ。 羽居にあたしと来たんだ―――次が遠野でもおかしくは無い」

「あのねぇ・・・」

 と、秋葉が言いかけた時、

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

『!?』

 突如、悲鳴が女学院中に響き渡った。

「遠野さん! 開けるよ!」

 扉を開けて、部屋に環が入ってきた。

「どうしたんだい、寮長?」

「ああ、姫か・・・今の悲鳴、聞いた?」

「聞いたも何も聞こえてるわね・・・それも、全体に」

 腕を組んで秋葉が言う。

「で、場所はわかる?」

「いいえ、わたしも急いでここに来たからね。それに、ここの所、頻繁に発生している女学院の生徒だけを狙った事件もあるし」

「怪談話じゃなくて?」

「確かに、それもあるけれど。 侵入者が居るとかいないとかで・・・」

「・・・そんなのがいたらすぐに捕まるだろうに・・・けれど、寮長の話しっぷりからすると・・・」

「・・・・・・・・・」

 無言で頷く環。 つまり、侵入者は捕まっていないことになる。

「さて、どうする?」

「捕まえるしかないだろ? けれど、怪談話の調査はどうするんだい?」

「『同時に進行』・・・そうするしかないでしょ?」

「そうだね。 よし、寮長と羽居は部屋にいてくれ・・・あたしと遠野で悲鳴の場所まで行ってみるからさ」

「・・・浅女パワータッグの誕生だねぇ」

 羽居が笑いながら秋葉と蒼香に言う。

「あのねぇ・・・!」

「まぁ、落ち着け、遠野。 羽居に説教なんざ、幾らでも出来るんだ。今は悲鳴の場所に行くことが先決だよ」

 そして、秋葉と蒼香は部屋を出た。



「私服だけど、まぁ、いいか」

 蒼香はそんなことを言いながら廊下を歩く。

「で、悲鳴の場所は特定できるかい?」

「無理ね」

「そう、断言できる理由は?」

「・・・場所が特定できないからよ。こうも広いんじゃ、どうしようもないし。 それより、『静か』過ぎる」

「それもそうだね。 悲鳴が聞こえたのなら周辺の教室は相当騒がしいはず。ま、一応でもいいから全部見回ってみようか」

「そうね。 さっさと済ませましょう」



 それから、秋葉と蒼香は学園の至る所を虱潰しに調べていった。

 念の為、部屋にいる生徒たちに話も聞いたが悲鳴は聞こえていないとのこと。

 捜査は断念。 秋葉達は部屋に戻ることにした。



「収穫無し。 それに、悲鳴も聞こえてないってさ」

 蒼香はベッドに座り、羽居に言った。

「そうなのぉ? けれど、悲鳴は聞こえたよね?」

「ああ、確かに聞こえた。 それも、学園全体に・・・だ。部屋にいた連中にも聞いてみたけど、誰も悲鳴なんざ聞いてない。 むしろ、そんなことがあったのかどうかすらも知らなかったとさ」

「本格的にミステリーになってきたねぇ」

 これまた、笑いながら羽居はベッドに寝っ転がった。

「それに、侵入者の件もある。 寮長としてはどんな展開を望む?」

「・・・遠野さんと姫のパワータッグしかないでしょ。で、侵入者を捕まえて、晒しだす」

「やっぱり、それかい」

 はぁ、と溜息をつくように蒼香はがっくりとうな垂れた。

「とりあえずは、そういう展開になるけど。怪談話の調査も同時進行だってこと忘れないでよ、蒼香?」

「ああ、それはわかってる。 ・・・だが、2人で1つのことをやるよりも分担したほうが早くないか?」

「どういうことよ?」

「・・・あたしは怪談話の調査をやる。で、遠野・・・アンタは侵入者の捕獲を―――」

「馬鹿言ってんじゃないわよ! 何で、私が侵入者と取っ組み合いをしなくちゃいけないわけ?まさか、アンタ・・・展開的にそういうのが見たいから提案しているわけ?」

 ぱきぽきと指を鳴らしながら、秋葉が蒼香を睨む。

「いいや、そうじゃない。 展開的にそれを望んでいるのは羽居だ。あたしは・・・ほら・・・家が寺だし」

「家は関係ないと思うけど・・・?」

 蒼香の頭をがっしりと掴みながら秋葉が言う。

「まぁ、いいわ。 私は侵入者を捕まえればいいわけね。けど、どうやって?」

「じゃ〜ん☆」

 羽居がどこからか黒い掃除機を取り出す。コンセントは無い。

「これさえあれば・・・」

「いりません!」

「なんでぇ?」

「・・・羽居・・・あなた、映画に影響されすぎ。私が捕まえるのは人間であってお化けじゃ・・・」

「大丈夫だよぉ、これがあればどんなものだって吸い込めるんだから!」

「コンセントも無いのに?」

 環が冷ややかな目で羽居を見る。

「ほうきと塵取りにする?」

「そっちの方がもっと効率が悪い!」

 秋葉は今にも火を吹きそうなぐらいの勢いで羽居に突っ込んだ。

「落ち着け、遠野。 武器と防具ぐらい持っていってもバチは当たらんさ。あたしも武器が欲しい所だが・・・」

「うん、じゃあ・・・はさみを貸したげる〜☆」

(はさみ?)

 秋葉は怪訝そうな顔で羽居と蒼香を見た。

「兎に角、今日はもう遅いし、明日の朝にでも・・・」

「そうだね。 これ以上、騒いでいたらこっぴどく叱られるしな」

 蒼香はクククと軽く笑うと部屋を出る環を見送った。





/2:女学院怪奇録・後編



 まぁ、実際、ここまで話が進展するなんて思わなかった。

 あまりにも準備が着々と進みすぎたからだ。



 蒼香も蒼香でやる気満々。 羽居は羽居で相変わらず生傷を絶やさない。



 ここは、自分が事件を解決するしかないんだろうなぁ・・・と、ある種の焦燥感に追われる。

 ここまで来たら、やるしかない。



 後は、誰かが都合よく処理してくれるに違いないから・・・



「は? 今、何て言った・・・羽居?」

「だからね、誘拐されちゃった生徒さんがいたんだって〜」

 それは、昨夜のことだった。

 生徒の一人が突如、消えてしまったらしいとのことで、学園の教師達は皆、消えた生徒を探すことになった。



 その時、生徒が消えた場所であろう周辺には金だらいときのこのぬいぐるみが置いてあったそうだ。

 因みに、羽居が持っているきのこのぬいぐるみと周辺にあったぬいぐるみは何ら関係の無い。



「仕事が一つ増えたな・・・」

「そうね。 侵入者探しに怪談話の解明、それに、行方不明の生徒の捜索―――怪談話の方も2つ同時に来たってことは、明らかに人為的な匂いがぷんぷんするし・・・」

「・・・兎も角、今日の夜だ。 それでも見つからなかったら、警察呼ぶしかないだろ?」

「う〜ん・・・今の所、殺人の類もないようだし。もうしばらく、様子を見て動きましょう」

 秋葉と蒼香がそう結論を出すと、

「もしかするとぉ・・・」

「何か分かったか羽居?」

「・・・ううん、何でもないよぉ。言ってみたかっただけ☆」

 蒼香が溜息をつく。 羽居のペースにどうしても狂わされてしまう。けれど、それに悪意はないのだ。

「よし、今日の夜にケリをつけましょう!」

「ああ、そうだね」

「お〜!」



 そして、夜―――

 部屋には秋葉、蒼香、羽居、環の4人がいた。

「で、何でわたしも入ってるの?」

「首突っ込んだ奴は皆、関係者だからね。けど、実際に動くのはあたしと遠野だけだ、安心しな」

「・・・ああ、そう。 後々のこともあるんだから、さっさと決着を付けに行きなさいよ」



 蒼香ルート

「さて、やるか・・・」

 廊下を一人で歩く蒼香。 音を立てずに、だが、確実に一歩一歩歩く。

「・・・何も無い・・・? じゃあ、昨日の悲鳴も何だったんだ・・・?」

 と、蒼香が後ろを振り向いたその時、





金だらいが蒼香の顔面を直撃した・・・



「・・・!」

 悲鳴も出ずに、思わず倒れ込む蒼香。

(・・・誰だ? こんなことが出来る奴は怪談話に詳しい人間か、特定の人物の周囲を対象にして攻撃が出来る人間・・・まさか、『アイツ』か・・・!?)

 そして、そのまま蒼香は気絶した。



 秋葉ルート

「今、何か嫌な音がしたけど気のせいよねぇ・・・」

 自分にそう言い聞かせ、秋葉は侵入者を探した。

 蒼香と同じように音を立てずに一歩一歩進む。

「・・・そこっ!」

 鋭い殺気を感じ、蒼香直伝の上段回し蹴りを放つ!

「・・・・・・? 人形・・・?」

 手に取ってみると例のきのこのぬいぐるみだ。ただし、手にはハンマーではなく、包丁を持っている。

(うわぁ・・・殺意満々・・・明らかに『こんなことをするのはあの人』ってわかる仕組み・・・)

 秋葉はぬいぐるみを壁際に置いておくと、走っていく足音が聞こえた。



 蒼香ルート

「う・・・」

 とりあえず、気絶から回復。

「たくっ・・・嫌な仕掛けを作ってくれたもんだ・・・あの時、あたしも近くにいたから、『遠野の敵』なんて認識されたわけだ。羽居は関係なかったんだろうけど・・・ね」

 ぱきぽきと指を鳴らしながら、階段を上がる蒼香。

 着いた場所は屋上―――そこには、ひとつの人影。

「やっぱり、アンタが『黒幕』だったわけだ・・・」

「・・・・・・・・・・・・!」

 人影はぶるぶると震えていた。



 秋葉ルート

「羽居の傷は自然に出来たとしても・・・蒼香のは明らかに人為的・・・かつ、巧妙なモノ・・・個人を特定して攻撃出来るなんて」

 階段を駆け上ると秋葉も同時に屋上に着いた。

「くっ、来るなぁぁぁっ!」

「よぉ、遠野」

 秋葉が屋上に着くと、そこにいたのは背中から落ちかけようとしている四条とそれをフェンス越しに四条の足を掴んでいる蒼香だった。

「なっ、何やってんの・・・蒼香?」

「ん? ―――ああ、事件の黒幕は四条だったからね。お灸を据えてやってるのさ」

「は? ・・・どういうこと?」





 つまり、こういうことだった。

 連日の怪談話の当事者である四条は、『あの時』、秋葉に上段回し蹴りを喰らって負けたのが納得行かないらしく、ここの所、情報収集に専念していた。

『遠野 秋葉の弱点を握れば、立場逆転になる』と睨んで・・・



 だが、どのような方法でやっても、秋葉を陥れることは出来ず、四条は仕方なくターゲットを蒼香に変更したのだ。





彼女の実力も知らずに・・・





 そんなこんなで、現在に至る。



「ってことは、件のトイレも四条さんがやったってこと?」

「らしいね。 丈夫なゴムを繋ぎ合わせて1つの輪っかにし、足に引っ掛け、引っ張る―――後は、ゴムだとバレないように手を模った画用紙をゴムの周りに貼ればいい。あたしが貯水タンクを破壊した際にゴムを回収すれば、『足を引きずりこまれるトイレ』の完成だ」

「へぇ・・・随分と手の凝っていること・・・」

 殺気をぎらつかせた視線で秋葉は四条を睨んだ。

「・・・ま、今は四条さんを屋上に戻しましょうか。話はそれからってことで・・・」



「行方不明の女生徒も自分で演じたわけか・・・」

「・・・・・・・・・」

「悲鳴に関しちゃ、ラジカセを使ったようね・・・ぬいぐるみの中から『コレ』が出てきたわ」

 と、地面に置いたのは簡易式のラジカセだった。

「『生徒誘拐』の仕掛けは多分、これね・・・生徒が誘拐されるイベントを起こすにはまず、『悲鳴』が必要だった。それに、悲鳴を上げずに誘拐されるなんて、不思議でしょう? だから、自分の悲鳴を入れたテープをぬいぐるみの中に入れて、時間になったら再生ボタンを押す。 そしたら、自分は天井でもどこでもいいから隠れられる場所に身を潜め、蒼香や私が通るであろうルートを確認する。そこで、翌日―――つまり、今日の夜に作戦実行すればいいわけだ」

「う・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!」

 四条は泣きながら屋上を去っていった。完璧に種明かしをされたのが悔しかったのだろう。 自分は何ヶ月も前から練っていた作戦を・・・







/3:後日談・本当に幽霊はいたんだろうか?



「・・・ま、事件も無事に解決したしね」

「誘拐された生徒や怪談話が全部四条さんだってのは納得行かないけど」

 眉間にしわをよせるようにして秋葉はカップに口をつけた。

 事件解決から三日目の夜、3人だけのお茶会の時にこの話が出た。

「それにしても、本当、散々だった・・・」

「羽居のぬいぐるみ顔面直撃や生傷なんかは全部、羽居のミスだったって訳か」

「えへへ・・・」

 顔面直撃をしたのはぬいぐるみではなく、壁に鼻をぶつけたのことだった。

 近くにぬいぐるみがあったので、羽居はそれと勘違いしていたのだ。

「はぁ、今日はもう、お開きに・・・」

 と、秋葉が言いかけた時、扉をノックする音が聞こえた。

「どうぞ」

「失礼します」

 入ってきたのは四条だった。

「どうしたの、四条さん?」

「あ、あの時はすいませんでした!変に逆上しちゃって・・・」

 思いっきり謝る四条。 こちらが何か悪いことをしたみたいで気分が悪い。

「いいのよ、もう済んだことですし。それに、これ・・・返そうと思って」

「?」

 渡されたのは簡易式のラジカセだった。

「あ、・・・ありがとうございます」

「どういたしまして・・・」

「でも、このラジカセのカセットテープの中身が悲鳴だってどうして分かったんですか?」

「え? そうじゃないの?」

「・・・私、あの時は急いでいて・・・『テープなんて入れてなかった』んですよ」

『は?』

 秋葉と蒼香が思わず顔を見合わせる。

「どういうこと?」

「どういうことだ?」

 秋葉と蒼香が2人同時に聞く。

「『生徒誘拐』の仕掛けを準備したのはいいんですけど、ラジカセにテープを入れるのを忘れちゃったんですよ。で、その時に丁度悲鳴が聞こえたから、『これで代用出来る』って思って・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・つまり、あの時に聞こえた悲鳴は・・・」

『本物の幽霊!?』

 秋葉と蒼香の顔が蒼白になる。

「ふ・・・ふふふ・・・あはははは」

 秋葉の引きつった笑い。

「やっぱり、こんなオチか・・・」

 ベッドに倒れ込む蒼香。

「なになに? どうしたの〜?」

 秋葉と蒼香を見る羽居。

「・・・・・・・・・」

 四条は四条であたふたしている。





 事件はこれで解決した。

 後日、誘拐され、殺された生徒の墓参りに出向いた秋葉達。

 ・・・侵入者も幽霊だったようで、生徒と共に自縛霊となっていたそうだ。

 これを最後に、成仏してくれたらいい・・・と秋葉は心の中でそう願っていた・・・



The Fin


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