浅上ゴーストバスターズ! 〜第一話〜


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1: 間桐 恭二 (2003/07/14 13:37:00)

まぁ、多分、始まりは些細なことだったと思う。

 人間、根を詰めすぎるのは体に良くないらしい。

 実際の所、最近の羽居がそうだからである。



 ことの初めは、『浅上女学院にまつわる怪談話』―――と、言った方が早い。

 羽居の第一声もこれだったからだ。



/0:ことの始まり



「本当だよぅ! 寝てたらコレが落ちてきたんだってば!」

「・・・それは、100回聞いた。お前さんの鼻に『それ』が直撃して鼻血が出たこともわかった」

「けどねぇ・・・『それ』で鼻血が出るなんて、おかしいと思わない?」

 それぞれが、寝巻きに着替え(蒼香を除く)、団欒している時に羽居がこんな話を持ちかけてきた。



 夕べのこと。

 彼女が寝ていた時に、何かが鼻に直撃し、翌日、鼻血が出ていたとのことだった。

 その時、彼女の近くにあったのは・・・



「菌糸類のぬいぐるみ・・・ってわけね」

 羽居が持っているのは、手に小さなハンマーを持ったきのこのぬいぐるみだった。

「こんなフニフニしているぬいぐるみが直撃しただけで、鼻血が出るなんてな・・・羽居、お前の鼻は柔らかすぎないか?」

「そんなことないよ〜、本当だよぉ。私が朝起きた時に、これが近くにあったんだもん」

「ふぅ・・・もう少し、日を置いて様子を見ましょう。そうすれば、羽居のことも嘘かどうかなんてわかるわけだし」

「見捨てるの、秋葉ちゃん?」

「ちっ、違います! 私は、後、2日ぐらい様子を見て、それで羽居に何とも無かったら寝相が悪いという結論を出すつもりだけど?」

 ベッドに腰掛けなおし、秋葉は蒼香を見た。蒼香も難しいような顔つきをしている。

「ま、今の所はそれが妥当な案だね。羽居には悪いけど、今はそうするしかない」

 蒼香はベッドに寝っ転がりながら呟く。

『原因の究明は三日後ってことで』

 秋葉と蒼香は見事なハモりで、羽居に言う。

「そんなぁ、蒼ちゃんも秋葉ちゃんも無責任だよぉ〜」





/1:女学院・怪奇録



3日後・・・羽居に変わった様子は無かったが究明すると言った以上、秋葉と蒼香は手分けして情報を探ることにした。

「え? 怪談話ですか?」

「ええ。 瀬尾が知っているものだけでも数点挙げてもらえる?」

 生徒会室には秋葉と瀬尾しか居ない。

「そうですねぇ・・・ポルターガイストや足を引っ張られるトイレ、天井から金だらいが落ちてきたり、菌糸類のきのこが追いかけてきたり・・・」

「・・・わかったわ。 ありがとう、瀬尾」

「いえいえ、どうしたしまして」

 にこやかに笑う瀬尾に秋葉は、

「けど、本当にそんな話があるわけ?特に後半2つはネタとしか思えないんだけど・・・」

「そんなことないですよ。 実際にきのこに追いかけられた人も居るわけですし」

「そ、そうなの・・・?」

 汗を流すようにうろたえながら聞く秋葉。それが、事実なら、女学院はとんでもないお化け屋敷になってしまったのであろう。

「で、それがどうかしたんですか?」

「うん。 羽居がね・・・菌糸類のきのこのぬいぐるみが鼻に直撃したらしくて、鼻血が出たって言うのよ。で、私と蒼香は日を置いて様子を見るって言ったんだけどね」

「それは、多分、ポルターガイストですよ!」

「ポルターガイストって、あの・・・『モノが勝手に飛ぶ』とかそういうの?」

「羽居先輩の話を聞く限りでは!」

 瀬尾はガッツポーズを取りそうな勢いで説明する。

「けど、ぬいぐるみで鼻血が出るなんてねぇ・・・」



「ただいま」

「おかえり、蒼香」

 部屋に入ってきた蒼香はベッドに腰掛けた。

「で、遠野の方でも情報は集まったかい?」

「うん・・・瀬尾に話を聞いたんだけどね」

「ま、いい方法だ。 で?」

「『ポルターガイスト』じゃないかって」

「はぁ?」

 思いっきり呆れた顔で蒼香が言う。

「事実かい?」

「事実も事実―――瀬尾がそう言っていたから原因的には間違いないでしょう。あの子、その手の類の話には何故か、広辞苑並みの知識を持っているから」

「世も末だな」

「そうね」

 一息ついた所で、羽居が帰ってきた。

「ただいま〜」

「おかえり・・・って、羽居!?」

 見れば、羽居の右膝に包帯が巻かれていた。

「大きな怪我でもしたのか?」

 蒼香は冷や汗を垂らしながら聞く。

「ううん。 ちょっと、転んですりむいちゃったんだけど・・・保健室に誰も居なかったから、自分で包帯を巻いてきたんだ〜」

「擦り傷は絆創膏で十分よ、羽居」

「そうなの?」

「まぁまぁ、羽居に大きな怪我は無かったんだ。・・・で、究明するからにはきっちり解決しなくちゃ、いけない。 遠野としてはどう思う?」

「・・・ああ言った以上、やるしかないし・・・」

 がっくりとうな垂れる秋葉。 蒼香ははにかみながらその様子を見ていた。



 原因究明から2日目・・・羽居は相変わらず、生傷が絶えない。

「で、今度は右手の中指?」

「うん、家庭実習で切っちゃった。私はきちんと気をつけていたんだけど、手元が狂っちゃって・・・」

 まぁ、羽居の場合、こんなことはよくあることだろうと、秋葉は絆創膏を羽居の右手の中指に貼りながら思っていた。

「・・・ただいま」

「おかえり・・・って、今度は蒼香?」

 見れば、蒼香は全身ずぶ濡れである。

「どうしたの、一体!?」

「引きずり込まれたんだよ、トイレに」

「はぁ?」

 今度は秋葉が呆れるような顔をしている。

「トイレに引っ張られるなんて、蒼ちゃんも好かれているんだねぇ」

「それは、喧嘩の叩き売り?」

「ううん、違うよ〜。 蒼ちゃんを心配して言ってるんだよぉ」

「それはそれで、置いておいて。蒼香、それは事実?」

「・・・・・・事実も何も被害者のあたし自身がそう言っているんだ・・・事実だよ」

 タオルで頭や身体を拭きながら蒼香が言う。



 蒼香があった出来事は・・・

 トイレから出ようとした所、どこからか声が聞こえたらしく、彼女は声の出所を探っていた。

 すると、何かに右足を掴まれ、蒼香は身動きが取れなかったとのこと。

 一生懸命、動こうとしても前に進む所かどんどん引っ張られて、引きずり込まれる一歩の手前で、壁に左回し蹴りを食らわせたら、老朽化している壁に左足が突き刺さって、挙げ句の果てに備え付けの貯水タンクが暴発―――全身ずぶ濡れになったとのことだった。


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