具間禄:月姫(カイマロク:ツキヒメ)・第二章


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1: 間桐 恭二 (2003/07/09 13:27:00)

/1:接触・故に確執であり、固執



 その日、自分は何気なく商店街を歩いていた。

 空は晴天、雲ひとつ無い青空・・・買い物をするにはうってつけの日かもしれない。

「で、こんな所にあるのか?」

 隣で私服の有彦がぼやく。 私服と言っても白いYシャツである。

「うーん・・・多分」

「多分だとぉ!? それじゃ、俺まで来た意味がねぇだろうが!」

「まぁまぁ、落ち着けって・・・多分だからあるかもしれないし無いかもしれないんだから」

 有彦を落ち着かせ、再び、歩く。



 探しているのは『靴』である。

 ずっと履き続けているのだが、見るだけならいいだろうと有彦を誘って商店街を歩く。

 だが、有彦は有彦で何か目的があるようだった。



「で、お前は何を買おうとしてるんだ?」

「・・・秘密だ。 他の誰かに教える程の高価なもんでもねぇし、な」

 腕を組んで言う。 最もな意見かもしれない。

「兎に角、お前はお前で目的を済ませちまえよ。俺も自分のを探すから」

「ああ、わかった。 じゃぁ、2時間後に駅前の時計台で落ち合おうか」

「そうだな。 じゃあな!」

 有彦が走り出すと同時に、俺は目的の場所とは違う方向へと向かった。



 路地裏・・・

 そこは、かつて、アルクェイドと出会った場所―――そこだけに流れる空気をその身で感じ取っていた。

「・・・?」

 わずかに流れる異質な空気・・・まるで、鋭利な刃物の先端を首筋に押し付けられているような・・・感覚。

「誰だ・・・そこにいるのは!」

 叫ぶ。 辺りを見回し、気配を探ろうとすると同時に愛用している『七夜』と刻まれたナイフを取り出す。

(消えた・・・? いや、どこかに居るはずだ・・・)

 気配を探り、辺りを注意深く見回す。何も無い、誰もいない、単なる路地裏だった・・・

「おかしいな・・・さっきまで変な感じだったのに・・・」

 首をかしげ、裏路地を後にする。

「ま、いいか・・・」



 夜の公園・・・

 一つの影が天から降りてきた。いや、正確には外灯から地面に着地した影だ。

「ここか・・・獣王の巣が果てた場所は・・・」

 影はゆっくりと公園内を歩く・・・そして、自分の背中に刺さる驚異的な殺気・・・

「・・・そこまでです・・・腐食王」

 背後の声を察知し、天を仰ぐ。

「・・・埋葬者か・・・」

「ええ、そうです。 それにしても、贖罪中の貴方がここに存在しているとは・・・驚きでした」

「まぁ・・・ね。 俺には目的がある。それまで、互いの介入は無しでいこうじゃないか」

「いいえ、そういうわけには行きません・・・」

 埋葬者は両手に持つ黒鍵をクロスさせた。戦闘態勢に入ったようだ。

「なら、存分に楽しもうじゃないか」

 影はその『衣』を捨てた。 現れたのは鼠色の髪の毛の男・・・黒いジャケットの背中には真っ二つに割れた逆さまの十字架が刻まれている。右手のある黒いグローブを直視して埋葬者は言う。

「・・・やはり、貴方は腐食王で間違いありません―――対面した以上、更なる罰を与えます!」

「やれるものなら・・・やってみろ!」

 男は構え、叫ぶ。 と、黒いグローブを外すと右手が紫色に光り、輝きだした。

「はっ!」

 地面に手を置くと、煙が立ち込めた・・・

(まずい・・・彼の力は贖罪で半分以下にまで減った・・・けれど、この力の量は・・・それを上回っている!)

 埋葬者は黒鍵を投げるも、溶けた地面の結合による『腐結』の壁により遮られる。

「ちっ・・・」

 思わず舌打ちをし、埋葬者は地面へと降り立った。

「さすが・・・と言うべきでしょうか?腐食王」

「いや、まだまだ序の口さ。 埋葬者・・・お前、俺を捕らえる為にまだこの街に居るつもりなんだろ?」

「ええ、こちらも仕事ですから。貴方如きを捕らえるまでは教会に帰る予定はありません」

 埋葬者は再び笑うと黒鍵を構えた。

「一応、聞いておきますよ。 貴方がこの世界で『名乗っている』名を・・・」

「ふむ・・・良い質問だな。 『彼女』が俺を呼んでいた名前と俺の元の名を組み合わせて・・・『亜紋(あもん) 屍樹(しき)』とでも名乗ろうか」

「『しき』―――吐き気がしますね・・・貴方が『彼』の名を名乗るなんて・・・」

「ククク・・・そうでもないさ、『彼女』はそれでもこの名で呼んでいた・・・」

「『彼女』―――? ああ・・・『彼女』ですか」

 埋葬者は静かに呟くと着ている法衣を脱ぎ捨てた。そこにあるのは大砲のような武器でもある『第七聖典』が握られていた。

「・・・行きます!」

 その言葉と同時に埋葬者は放たれた矢のようなスピードで屍樹の目の前へと飛んだ!

「はっ!」

 その叫びと同時に第七聖典が放たれた。

「がっ・・・馬・・・・・鹿な・・・」

「あっけないですね、腐食王。 やはり、貴方の力の増強は消されていたようで・・・」

 埋葬者の前には左腹部を抉られた屍樹が居た。口から大量の血が流れ出ている。

「く・・・がぁっ・・・」

 血を吐く屍樹。 その姿は死に打ちひしがれた人間の末路でもある。


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