月影供Act.10


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1: アラヤ式 (2003/06/10 08:24:00)[mokuseinozio at hotmail.com ]

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???

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何だ?

何だ?

余はさっきまで、あの忌々しい黒の小娘を追い詰めていたはずだ。

追い詰めていた。

追い詰めて、

追い詰めたら、

突然後ろから……




死徒二十七祖第17位『白翼公』トラフィム・オーテンロッゼ。



彼の顔は、テーブルに埋まっている……。





「……くぁ、……くぅぅぅぅ。
き、き、きさまらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
この最古参の一人である余の顔によくも傷ヲベッ!!」

「うるせぇよバカ。」

ようやく顔をあげたトラフィムに、容赦無く再びテーブルの味を覚えさせる『復讐騎』エンハウンス。

「年端のいかない女をねちねちいびりやがって。
その腐った脳ミソ、前に折角吹き飛ばしてやったのによ。復元してもそのままみてえだな。」

「そうか!?……貴様エンハウンス!!一度ならず二度までも……!!出来そこない風情がよくも余の顔ヲベッ!!」

「黙れよタコ。」

三度めり込むトラフィム。

「志貴くん、どうしてこの場所がわかったの!?」

彼らの突然の乱入劇に驚く『黒の姫君』アルトルージュ。

「エンハウンスがシュトラウトさんに発信機兼盗聴器をつけたのさ。」

「!!」

慌ててシュトラウトは体をまさぐる。

「油断してたおまえさんが悪いのさ。ハッ。」

「……片刃、おまえという奴は……。」

呆れる『黒騎士』シュトラウト。だが大して怒っている様子は無い。

「アハハハハハハハハ!君たちいいねぇ!!サイコーだよ!!アハハハハハハハハハハハハハハ。」

『白騎士』ヴラドは、ずっと笑っている。

「さて、話を戻すぜ『白翼公』殿。
俺たちはな、この会合を知って二十七祖共のツラ拝んでやるぐらいのつもりだったんだ。
だけどなおまえの、あまりのクソっぷりに堪忍袋の尾が切れちまってな。
この場に乱入した次第ってわけさ。おっと!!」

エンハウンスの拘束から逃れ、

トラフィムは深紅の魔眼を全開にし、憎悪をぶつける。

「……出来損ないに人間風情が……!!
契約しよう。余の誇りにかけて貴様らを嬲り殺す!!
分子単位で粉々にして冥府を彷徨わせてやる……!!
出て来い!!死者ども!!」

トラフィムは右手を掲げる。だが。

静寂。

「……どうした死者ども!?早く出てきてこいつらの血を……」

静寂。

「……いない?ばっ、ばかな……。余は300体の死者を配置していたはずだ……。」



「そいつらいないわよ。」


!!!!?????


「まったく。シエルってば本当凶暴よねぇ。ほとんど一人で片付けちゃったんだもん。」

「うるさいですね。弱体化しているくせに空気の断層余裕で創れる吸血鬼に、凶暴呼ばわりされる筋合いはありません。」

扉から入ってきたのは、

完全戦闘服のシエルと、白のハイネックを着たいつものアルクェイドであった。

「……アルクェイド・ブリュンスタッド……!!……それにおまえは、『察戮梁綛埃圈帖帖!」

トラフィムはうろたえる。

「よぉシエル。思ったより手間どったみてぇだな。」

エンハウンスが労をねぎらう。

「ええ。久しぶりにいい運動になりました。でも全然手応えなかったです。」

「姫君相手にケンカしてりゃ誰でもそうなるさ。ハッ。」

「志貴ぃ〜。あなたいい右もっているじゃない。世界狙わない?」

「はぁ?アルクェイド。何いってんだ?」

彼は余裕。無敗。無敵。


優雅に佇む『真祖の姫君』は振り向き、『白翼公』と対峙する。


「……お久しぶりね古狸。貴方の獣臭い刺客にはお世話になったわ。」

「……くっ。忌々しい古き怪物が。しぶとさだけは超越種だな。
だがな、弱体化した貴様如きが、余の首とれる道理がないぞ!!」

トラフィムは、アルクェイドの吸血衝動が限界に近いことを知っていた。

リタからもたらされた情報である。

「いいえ。貴方にとどめを刺すのは私じゃないわよ。彼よ。」

「何だと?」

彼女が指をさした先は、眼鏡をかけた貧弱そのものの少年。

「ふは。……ふははははははははははははははははは!!
仮にも『真祖の姫君』ともあろうものがそんなとるに足らぬ冗談をいうとはな!!あの人間ごときに何ができる?
おい小僧!!貴様も出来そこない同様、よくも余の顔に傷をつけてくれたな!!覚悟は出来ておろうな!?」

深紅の魔眼を彼に叩き込む。

だが、

効かない。

「ばっ、ばかな……。なぜ余の魔眼が……。」

少年は、『魔眼殺し』の眼鏡をとる。

「……覚悟するのは、アンタの方だ。」

深い蒼の『直死の魔眼』。

志貴は、世界の「死」をみる。

トラフィムはようやく理解した。

「……小僧、ま、ま、ま、まさか貴様が『真祖の騎士』……。」

「ご名答よ。『白翼公』。」

「気付かないほうがおかしいですよ。最古参の死徒にしては随分詰めが甘いですね。」

「ハッ。相棒はかなりお冠だぜ?年貢の納め時だな、オーテンロッゼ。」

「きききさまらぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!」

憎しみの怒号をもらすトラフィム。だがそれは、もはや断末魔に近い。

「ダメ!!」

アルトルージュは志貴を止める。

「志貴くん!!彼を殺せば統制を失った死者たちが……」

「知っているよ。アルトルージュ。
でも俺は、コイツが許せない……。
コイツは君を侮辱した。……卑劣な言葉で君を……。
それに……。」

コイツがネロ・カオスを送り込んだから、

アルクェイドは、腹を喰われた。

ホテルにいた人たちはみな、喰われた。

公園にいた女の子も、喰われた。

「俺は、アンタみたいに自分だけ手の届かないところにいて薄ら笑っている奴が一番許せないんだ……!!」

手には『七つ夜』。

静かに深く燃え上がる、『直死の魔眼』。

殺人貴。

「ひ、ひいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!よ、よせ、は、は、はやまるなぁ!!」

トラフィムは幾星霜の年月を重ねた中で初めて、身も凍る恐怖を味わう。

「アルクェイドさん!!彼を止めて!!あのままだと彼も死ぬことになるのよ!!」

『黒の姫君』は、『白の姫君』に詰め寄った。

「止めないわ。」

「〜〜!!あなた、正気なの!?」

「私は志貴がやりたいようにやらせてあげる。例えそれがどんな結果になったとしてもね。」

アルクェイドは、微笑んだ。

「そんな……!!シエルさん!!エンハウンス!!あなたたちはそれでいいの!?」

「数百万の死者ですか?私が全部浄化すれば済むことです。」

「そんなイベントも悪くねえ。シエル、俺も付き合うぜ。」

「あなたたち……。」

シエルもエンハウンスも、余裕だった。

彼は見物にきたわけではない。

最初から覚悟していたのだ。

この会合に乱入した時点で、例え死徒二十七祖全員と戦うことになろうとも。

彼らは、絶対に揺るがない。

「ばかね……。あなたたち……。揃いも揃って……。」

黒い少女は、全てを悟った。


殺人貴は、すでに腰が抜けているトラフィムにマウントポジションを取り、『七つ夜』をかまえる。

「……もう、アンタの顔は見たくない。……『死』ね。」

「ひぁ!!ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

もはや『白翼公』には尊大さも、威厳もなかった。

殺人貴が腕を振り上げる。

トラフィムの「死」の「点」に、刀身が音も無く吸い込まれる。

――はずだった。

「……はひ、は、は、は、ひぃ、」

だらしなく口から涎をたらすトラフィムの顔の真横を、刀身がかすめたのだ。

彼はコロさなかった。

「……でも、やっぱりこの国の人たちが犠牲になるのは、俺、耐えられないよ。
だから今回は見逃してやる。
だが約束しろ。
もうアルクェイドに手を出すな。
もうアルトルージュの前に現れるな。
次にその顔を俺が見た瞬間、アンタは既に『死』んでいるよ……。」

蒼い魔眼を全開にし、殺人貴は凄む。

「……は、は、はははは、……」

『白翼公』は、気絶した。

志貴は立ち上がる。チーム3人へむけて、戸惑いの表情を向けながら

「……こんな感じでいいのかな?」

一言、いった。

「志貴、最高!!」

「トオノくん。さすがです。」

「上出来だぜ。」

3人も最高の笑顔で答えた。







しばらく時が止まっていたヴァン=フェムは、自分を取り戻した。

「……は!!どっ、どういうことだ……?なぜ『真祖の姫君』がここに……?
『復讐騎』に『察戮梁綛埃圓泙如帖帖
〜〜??あの眼鏡の少年は???」

一部始終を目撃したリタ・ロズィーアンは説明をする。

「おほほほほ。ヴァン=フェム殿。
彼が今節最注目筆頭株、『真祖の騎士』ですのよ。」

「真か!!……というか、オーテンロッゼ殿!!!!!!???????」

『魔城』は目撃する。

壁にガックリとうなだれ、

焦点の合わない目をし、

オマケに失禁までしている『白翼公』のこれ以上ない無様な姿を。

「なんともはや……。」

天を仰ぐヴァン=フェムの肩に、エンハウンスが手を置く。

「よお。久しぶりだなヴァン=フェム。相変わらずだな。
どうだ?この我らが王の醜態ぶりは?」

「……君も相変わらずだな。何というか、『直接』だねぇ。」

「ハッ。おまえさんと違って、俺はそんなに世渡り上手くねえんだ。ははははは。」

『魔城』と『復讐騎』。2人は旧知の間柄らしい。

「しかし、どうするのだね……。
こんなことは我ら死徒の歴史はじまって以来の大事件だ……。収拾つかんぞ……。」

「知るか。俺はおまえら二十七祖さえ滅ぼせればそれでいいんだからな。」

「……矛盾しているな君は。まあいい。とりあえずこの場はオーテンロッゼ殿を早々に回収し、私は退散するよ。
リタ様。手伝ってくれませぬか?」

「オホホホホホホ!!よろしくてよ!!」

アルトルージュが駆け寄る。

「ヴァン=フェム殿。……ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。」

「いえいえとんでもない。それよりも今回は、姫様に不愉快な思いをさせて申し訳ありませんでした。
これくらいのことをやっても、余りあるくらいです。」

「不愉快な思いはしていません。今日はとても有意義な会合になりましたわ。」

アルトルージュは満面の笑み。

「ははは。それはよかった。」

老紳士も、黒い少女に微笑み返す。


「オーホッホッホッホッホッホ!!『真祖の騎士』さん?あなたのお名前と身分をお聞かせ願えないかしら!!???」

ドデカイ頭に帆船を取り付け、ウザイほどの光沢のクリスタルドレスを来たキチ○イ『芸術家』。

志貴は、この濃いオバサンに顔を最高潮にひきつらせながらも答えた。

「……遠野志貴です。……学生です。」

「オホホホホホホホホホ!!人間がオーテンロッゼ殿をここまでやり込めるなんて大したものねぇ!!」

「リタ。今回は君の情報収集不足が敗因だよ。その微妙な芸術、1からやり直して出直してくることだねぇ。」

ようやく笑い終わったらしい『白騎士』ヴラド。

この2人、キャラが似ている……。

「オホホホホホホホホ!!次回の私に隙はなくてよ!!また合間見える日を楽しみにしていますわ!!
ところで遠野殿!?あなたは『黒』と『白』。どっちの色がお好みなの!?
それとも両方混ぜ合わせるのがお好きなのかしら!?」

「???」

リタの不意な問い。志貴は意味が理解できない。

リタとヴァン=フェムは二人がかりでトラフィムを抱える。

「オーッホッホッホッホ!!ではこれで失礼いたしますわ!!
『真祖の騎士』!? 先の問題、よく熟慮してくることね!!オーッホッホッホッホッホッホッホッホ……。」

虹色の螺旋ともに、

『魔城』・『白翼公』・『芸術家』は、クロンベルグ城から姿を消した。


「……あの女。マジで訳わからん……。」

「同感だな……。」

珍しく意見の合うエンハウンスとシュトラウト。

「なあ2人とも?『黒』と『白』ってなんなのかな?」

遠野志貴は、リタ・ロズィーアンが出した問題に頭を悩ませていた。

目の前の『復讐騎』と『黒騎士』に尋ねてみる。

「『白』っていうのは姫君のことだろ?」

「『黒』は姫様のことに相違あるまい。」


白・アルクェイド。黒・アルトルージュ。

つまりどっちが好みかということか……。



!!!!!!!!!!!!!!!



そのとき、遠野志貴の脳内でシオンをはるかに凌駕する分割思考が展開される!!

―― 黒と白を混ぜる。

―― 混合。

―― 2人の吸血姫。

―― それすなわち、

「(姉妹ど○ぶりってことですか―――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!)」

志貴の脳内が暴走する!!

「(うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!
タナトス2!!タナトス2!!タナトス2!!タナトス2!!タナトス2!!タナトス2!!タナトス2!!)」

鼻血が止まらない。

彼の顔は、マッハパンチを喰らってしまったときよりも、やばいことになっていた……。


「志貴……。何をそんなに、にやけているの……。」

「志貴くん……。何かよからぬことを企んでいるみたいね……。」


!!!!!!!!!!!


志貴の命運はそこで終わっていた。

金色の魔眼をぎらつかせている、彼の真後ろに、『黒』と『白』の吸血姫がいたのだから……。

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとまってくれ!!2人とも誤解だぞそれは!!」

弁解など通用しない。するわけがない。

「志貴の考えていることなんて、みんなお見通しなんだから!!このエロメガネ小僧〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

「志貴くん。私こうみえても1,000年単位で生きているのよ。あまりなめてほしくないわね!!!!!!!!!!!」

襲い掛かる二つの力!!

「エンハウンス!!たたたた助けてぇぇぇぇぇ!!」

「自業自得だバカ。」

「せせせせせ先輩ぃぃぃぃぃぃぃ―――!!」

「トオノくん……。不潔すぎます……。救えません……。」

「シュトラウトさん!!お願い……」

「見損なったぞ。志貴殿。」

「ヴラドさん!!何とか説得……」

「諦めたまえ。」

「そんなぁ……。」

「志貴!!覚悟しなさい!!!!」

「ブライミッツ・マーダー、やっておしまい!!」

「ガルルルルルルルルゥゥゥゥ!!!!」

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」



遠野志貴、完膚なきまでにリタイア。


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