月影供Act.8


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1: アラヤ式 (2003/06/07 17:05:00)[mokuseinozio at hotmail.com ]

前略、妹様。

秋葉、元気でやっているか。

翡翠と琥珀さん、預けたレンも変わりないかい?

宗玄のじいさんにも、薬はちゃんと飲んでいるっていっておいてくれ。

有彦にも……まぁ、それは別にいいや。

俺は今、アルクェイドの姉さんの家に居候している。

ここには、

アルクェイドの姉さんアルトルージュや、

ポーカーフェイスだけどすぐキれるリィゾさん。

ホ○でショタでロリでヤバキチのヴラドさん。

目つきの怖い白い犬とかがいるから、退屈はしていないよ。

退屈は……な。

しばらくは帰れそうにないけど、

アルクェイドの病気が治ったらすぐ戻る。

それまで家のこと、宜しく頼む。

いつもわがままな兄でごめんな。

ではまた。


追伸 胸じゃないぞ。人は。






ドイツから送られてきたこのエアメールは、

遠野家当主が目を通した瞬間、ビリビリに裂かれたという……。














「起きなさ―――――い!!」

突然、城の中をゆるがさんばかりの怒号が響く。

時刻は、午前8時。

「トオノくん!!起きてください!!
こら、アルクェイド!!涎たらしてないでさっさと起きる!!
エンハウンス!!いつまで寝ているんですか!!」

「〜し得る〜あと5時間〜〜。」

「寝言は起きてからいってください!!(?)」

ドカッザクザクッ!!

声の主はシエルである。

「……んぁ、先輩、おはよう。」

「痛いにゃぁ……何するんだにゃ!!この暴力カレーマニ……(ザクザクザクッ)」

「……おいシエル。朝っぱらから猫のグロ画像つくってどうするんだよ……。っていうか、黒鍵で起こすのヤメロ。」

アルクェイドは壁に磔になり、エンハウンスは頭に刺さった黒鍵を抜く。

「いいですか?これからはみんな規則正しい生活を心がけてもらいます!!
一瞬足りとも油断できません。
ここは死徒の本拠地なんですからね!!」

「俺も死徒なんだけどな……。」

一行が居るところは、『黒の姫君』の居城。

アルトルージュとの契約で、しばらくこの城に滞在することとなったわけだが……。

まず、基本的に自給自足である。

城のもともとの住人たちは、基本的に食事はとらない。

みな、人間の血で体を維持している死徒だからである。

だが彼らはそうはいかない。

遠野志貴とシエルは人間であるため、当然食事を摂らなければいけない。

アルクェイドも同様だ。

エンハウンスは死徒ではあるが、血液は自分で確保しなければいけない。

「今日の食事担当は私です。
トオノくんは城の掃除。
アルクェイドは洗濯。
エンハウンスには街への食材買出しに行ってもらいます。
とりあえず、朝食を摂ってくださいね。 」

「へぇへぇ。んじゃ腹ごしらえでもするか。」

エンハウンスは髪をボリボリ掻きながら。

「アルクェイド、行くぞぉ。」

「志貴ぃ〜〜待ってよ〜〜。」

志貴はアルクェイドから黒鍵を引き抜いて、厨房に向かう。

ここの城には、設備の整った厨房はある。

本来は必要ないものであるが、白騎士ヴラドの日本ブームの一環として造ったものらしい。

スパイシーな匂いがたちこめる

例によってカレーである。

具は、ジャガイモ、ソーセージのみという極めてドイツまるだしなもの。

実食。

「先輩?……もしかしてこれ……」

「はい。バー○ントカレーですよ。」

なぜ、日本からわざわざそんな物を……と志貴はあえて聞かなかった。

ちなみにドイツにもカレー粉はある。

「甘いにゃぁ。こんなリンゴとはちみつ入っているカレーなんか食えるわけないにゃ!!」

ぶうたれるアルクェイド。

「吸血生物?隠し味って単語を知っていますか?それにドイツのカレー粉は高いんですよ?」

「でか尻エルこんなものいつも食べているから太……(ザクザクッ×20)」

テーブルに猫が磔。

「……先輩、それ、弁償ですよ。メレムさんからの送金にも限りがあるんですから……。」

「うめぇなこりゃ。」

頭をかかえる志貴を余所に、うまそうにカレーをほおばる死徒。エンハウンスは甘党である。

「ところで先輩、……アルトルージュたちは??」

志貴は今日、まだ彼らの姿を目撃していない。

「トオノくん。彼らは死徒ですよ。
太陽光は基本的に苦手です。日が暮れるまで棺のなかで眠っていますよ。」

「……ねぇシエル。じゃああれは何なの?」

アルクェイドが窓に向けて指をさす。

「復活してたんですかアルクェイド……全く。……っえ!!??」

シエルは窓の外をみると愕然とする。



轟音とともに漆黒のヘリコプターが城の中庭に降りていたのだ!!



機体には『The dark six 』とロゴが入っている。

パイロットは、黒騎士シュトラウトだ。

「どっどうしてアイツがヘリ飛ばしているんだよ!?」

「志貴。シュトラウトはな、自動車免許をはじめ、大型特殊免許、船舶免許、あらゆる資格をもっている。
奴に運転できない乗り物はねぇ。」

いつのまにかカレーを食べ終え、解説する復讐騎エンハウンス。

「へぇそうなんですか……じゃなくてこの城のどこにあんな16tヘリをおける格納庫があるんですか!!!???」

「シエル。この世にはな、俺たちの想像をはるかに……」

「その台詞はもういいです!!」

そして、城からヘリに向けて歩いて近づく集団があった。

「あ、アルトルージュ!?」

志貴は目撃する。

黒いドレスを身にまとった、美しき『死徒の姫君』の姿を。

彼女の長いブロンドの髪は、プロペラの風圧で優雅に揺れている。

彼女の後ろに、白い魔犬と白騎士が続く。

そして颯爽とヘリに乗り込む3体の死徒。

黒騎士はそれを確認するとレバーを引き、

漆黒のヘリは、青空へ向けて飛び立っていった……。



「……。」

あまりの突飛な出来事に、志貴は開いた口が塞がらない。

「……しぃ〜きぃ〜……!!」

「……あ。」

彼が気が付くと目の前には、両手を腰につけて怒りを露にしている『真祖の姫君』がいた。

「む〜っ!志貴ったら鼻伸ばしちゃって!!アルトルージュに見とれていたんでしょ!!??」

「ちょちょちょっとまてアルクェイド!!……いやそれもあるがそれは誤解だ!!」

「トオノくん。使い魔につづき、また幼子に手を出すんですか……。見損ないました……。」

「志貴はヴラドと同じ幼女趣味なんだな。ハッ。」

「先輩!?エンハウンス!?だから違うって……」

「……志貴の、ばか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」

「Noooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!!!!!!!!」

炸裂・空想具現化。

遠野志貴、リタイア。



「ところでおまえら、あいつらどこに行ったんだか気にならないか?」

ボロクソになって痙攣している志貴を放置し、エンハウンスは話をはじめる。

「ちょびヒゲわかるの?」

目を真ん丸くして興味津々のアルクェイド。

「ああ。」

そういうと彼はジーパンのポケットから、液晶画面のついたトランシーバーをだした。

「前のシュトラウトとのイザコザのとき、奴の体にこっそり発信機をつけておいたのさ。
奴は普段隙が無いから苦労したぜ。
これで位置は特定できる。」

「すごーい!!」

「やりますね。エンハウンス。」

「……。」

「じゃあ奴らを追いかけるぞ。用意しろ。上手くいったら……」

「なんですか?」

「……いや、まだいい。行くぞ。」

一行は、アルトルージュたちを追跡する。









「気が進まないわ……。」

ヘリの中、空の景色を眺め、ため息をつくアルトルージュ。

客席右側から彼女、犬、白騎士の順番で座っている。

「お察しいたします。『魔城』の招待を無下には断れませんからねぇ。
ですが、もし姫様に危害を加えるつもりならば、この私が奴の木偶人形などあっという間に叩いてみせましょう。
それはもう美しくね。」

「……フィナ。彼の前で人形を馬鹿にするのはやめなさいね。
それでなくても前のいざこざで、あなた、彼の自慢の一体を破壊しちゃっているんですから。
それに彼は危ない橋はわたらないわ。」

魔犬の頭を撫でるアルトルージュ。

「わかっております。しかし、今回の会合では本当に『芸術家』もくるのですか?」

黒い少女は微妙な表情をする。

「ほんと、めずらしいわよね。快楽主義者の彼女がこんな面倒そうなことに積極的に介入してくるなんて。」

「全くです。あのフタナリ好きには私もついていけませんよ。はっはっは。」

あなたは幼女好きでしょ。とはいわないアルトルージュ。


「……気付かれましたでしょうか。」

道化をやめ、白騎士にもどるフィナ=ヴラド・スヴェルテン。

「ええ。彼らがここに来た時点で、すでに気付かれてたとみてよいわ。」

アルトルージュ・ブリュンスタッドは、険しい表情をする。

「あの古狸。一体今度は何を企んでいるのかしら。」

「狙っているのですよ。彼らを。」

「……そうね。全くもって忌々しいわ。
でも、『混沌』を滅ぼしてしまった責任はとってもらわなくちゃね。」

妖しく微笑む『黒の姫君』。

それを聞くと『白騎士』は愉快に笑う。

「はっはっは。『白翼公』も今度はボロを出しましたねぇ!
まあ今回は、領地没収くらいでお許しになってはいかがでしょうか。姫様。」

「考えておくわ。」

「姫様、もうすぐ到着します。ご用意を。」

パイロットの『黒騎士』は、着陸態勢に入った。




「なるほど。奴らが向かっているのは『Schlosshotel (シュロスホテル)』。
フランクフルト郊外か。
ギリギリで間に合うといいんだけどな。」

液晶画面と地図を睨みながら、エンハウンスはアルトルージュたちの行く先を予測した。

遠野志貴一行は、途中でタクシーを捕まえて後を追っている。

「エンハウンス。その……シュロスホテルってなんだよ?」

「ドイツ皇帝ヴィルヘルム1世妃ヴィクトリアが、
皇帝亡き後1884年、余生を送るためにここにクロンベルグ城を建てたんだ。それを改築したものさ。
結婚式場でも有名なところだ。」

「じゃあ、アルトルージュ結婚するのか!?」

ゴチン!!

志貴の頭にエンハウンスのゲンコツがヒット。

「そんなわけねぇだろ!!
志貴、これはどうやらチャンスだぜ。
発信機にはな、盗聴器も仕込んである。
どうやら二十七祖がホテルに一堂に会するらしい。」

!!??

「うそでしょ!?そんなことしたら、世界中の退魔機関から目をつけられるわ!!
存在の発覚を一番恐れる吸血種が、そんな危険なことするわけ無いじゃない!!」

「姫君。これはマジだ。……『白翼公』も来る。」

その名を聞いたアルクェイドは、魔眼を全開にして薄ら笑う。

「……へぇ。あの古狸がね……。」

「ですが、アルクェイドのいうとおり、そんな大それたことを堂々とできるわけがありません。
何らかの大きな力が働いているとみて、間違いないでしょうね……。」

「大方、俺たちの上司が糸引いてるんじゃねぇのか?」

「??????????????」

志貴は話についていっていない。

エンハウンスが説明をする。

「志貴、『白翼公』はな、『黒の姫君』の対抗勢力だ。
そいつらが話し合いをするっていうことはどういうことかわかるか?」

「?」

「まさに一触即発なんだよ。
もし会合が決裂した場合、
ドイツの人口は半分なくなる。」

!!!!!!!!!

「そんな、バカな……。」

「まあ今のところは、会合の意図も目的もわかっちゃいないがな。
とにかくだ。こんな一大イベント、見逃す手はないぜ。」

「場合によっては、全員の浄化もやむを得ませんね……。」

「フフフ……待ってなさいよ古狸……。借りは必ず返すわ……。」

第七聖典を丹念に手入れするシエルとワルクェイドをみて、

志貴は冷や汗を止めることが出来ない。

「はわわわわわわわわわ……。
たったのむからみんな、向こうで暴れるのだけはやめてくれよ……。」



虎穴に入らずんば虎子を得ず。



遠野志貴は、今日ほどこの言葉の意味をかみ締めた日はなかった……。










「おひさしぶりですな。アルトルージュ様。
本日はこんな所までご足労いただき、誠にありがたい限りです。」

『黒の姫君』に会釈をし、礼儀正しく話しかける初老の男性。

「いいえ。本日はお招きに預かり光栄ですわ。
財界の魔王、ヴァンデルシュターム殿。」

白髪でヒゲをたくわえ、灰色のスーツをきた老紳士は小気味よく笑う。

「ははははは。姫様。その名は人間社会での通り名ですよ。ヴァン=フェムとおよび下さい。」

死徒二十七祖第14位『魔城』ヴァン=フェムである。

「今日の会合には珍しく、『芸術家』も出席するのですね。」

「そのとおりです。彼女が是非お越しになられるよう、私が事前に種を撒いておきました。」

「ピカソ20枚……といったところでしょうか?」

「はっはっはっはっは!『死徒の姫君』には敵いませんなぁ!!」

割腹の良い老紳士は笑う。

「それとヴァン=フェム殿。地球環境に貢献する新しい発明をしたと聞きましたが?」

「流石にお耳が早いですなぁ。今度の発明は自動車に、我七大ゴーレムの動力源を組み込んだ画期的な……」

ヴァン=フェムのマイブームはエコロジー。口上は長い。

「六大ゴーレムの間違いではないのですかな??」

皮肉たっぷりにいう白騎士。

「……ヴラドくんか……。いやぁすまんねぇ。姫様の愛犬と黒騎士殿の姿しかみえていなかったよ……。」

「いえいえ。工房で人形ばかり造っていると、さぞかしお目が悪くなることでしょう。
お察しいたしますよ。ろ・く・だ・いゴーレムのヴァン=フェム殿。」

場に緊張が走る……。

「フィナ、やめろ。」

ブスリ。

黒騎士の魔剣が、白騎士の胸を貫いた……。

そのまま倒れたフィナを抱え、リィゾはその場を退室する。

「……お許しください。護衛の非礼は私の責任です。」

魔城にフカブカと頭をさげる黒の姫君。

「…いいえ、貴方に頭を下げられては私の立場がありません。
それよりもオーテンロッゼ殿がお待ちです。
あの方は時間にうるさいですからね。
どうぞこちらへ。」

「……ええ。」

黒い少女は人形師とともに、ゲストルームへ向かう。









死徒二十七祖・2大派閥の頂点。

『黒の姫君』。

『白翼公』。

今、邂逅のときを迎える。

そして、『真祖の騎士』たちは……



「なんで渋滞しているんですかー!!」

「しょうがねぇだろ!!今は通勤ラッシュなんだからな!!」

「じゃあ走って行くしかないわね……。志貴、行くわよ!!」

「ちょッちょっとまてえアルクェイドぉぉぉ!!」





果たして間に合うのだろうか……。


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