月影供Act.7


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1: アラヤ式 (2003/06/06 18:13:00)[mokuseinozio at hotmail.com ]

『黒の姫君』アルトルージュ・ブリュンスタッド。

『白騎士』フィナ=ヴラド・スヴェルテン。

『黒騎士』リィゾ=バール・シュトラウト。

『霊長の殺人者』ブライミッツ・マーダー。




死徒二十七祖随一の実力を誇る、『死徒の姫君』とその従者たち。






対決。









「……志貴くん。私が彼女とあまり仲がよろしくないのは知っている?」

玉座に座る黒の姫君。

真祖の騎士は、白の姫君の助命を懇願する。

「……知っています。アルクェイドから聞きました。」

アルトルージュはまぶたをピクリと動かすと、玉座から降り志貴に歩み寄る。

傍らの白い犬も、彼女の後をついていく。

彼女は金色の魔眼を開く。

「……アルトルージュ!?待って!!」

アルクェイドは志貴の身の危険を感じ前にでようとしたが、素早い動きの白い魔犬に体で遮られた。

「〜〜!?
ブライミッツ・マーダー……!?」

「トオノくん!!アルクェイド!!」

「志貴!!」

エンハウンスとシエルも志貴を庇おうとした。

だが、黒騎士と白騎士に阻まれる。

「ここでのオイタは美しくないですよ。代行者。」

「……ヴラド!!」

シエルの首にはフィナのレイピア。

「てめぇ……シュトラウト……」

「大人しくしていろ。片刃。」

エンハウンスにはリィゾの魔剣ニアダークが突きつけられた。

アルトルージュは、魔眼を見開いたままアルクェイドに釘を刺す。

「アルクェイドさん、大人しくしていてください。私は今、彼の話を聞いているんです。」

「〜〜!!」

「志貴くん。彼女は私たち死徒二十七祖の最大の敵である、『真祖の姫君』であることも知っている?」

志貴は、声の調子を落とさず答える。

「……知っています。でも、あなたしか頼れる人がいないんです。お願いします。アルクェイドを助けてください。」

刹那。

静かなる圧力を感じた。

黒の姫君は冷たく憤る。

「……志貴くん。強敵をわざわざ助けるお人好しな死徒がいると、あなたは本気で思っているの……!?」



――ダメダ。

――カナワナイ。

――ケッシテ、カナワナイ。



七夜の血は絶望を告げる。

彼女の殺気は本物だ。

彼女がその気になれば、人間を殺すことなどアリを踏み潰すより容易い。

『直死の魔眼』を持っていようが、七夜の体術があろうが、その結果は変わらない。

飲まれる。

血と契約の支配者に飲まれる。

飲まれて、死ぬ。



だが彼は諦めなかった。

彼は膝を落とし、頭を地につけた。

「……理屈が通らないことだとはわかっています。
でも、俺はアルクェイドを失いたくないんです……!!
あいつがいなくなったら、俺はもう生きていくことができません……。
貴方しか、あいつを助けてやれる人はいないんです。
お願いします……。」

愚直なまでの懇願。

彼の姿勢に、他の3人も閉口せざるおえなかった。

「志貴ぃ……。」

「トオノくん……。」

「……。志貴。」



沈黙が流れる。

玉座の間に、静寂がながれる。










「いいわよ。助けてあげる。」

!!!!!

「……えっ!?」

突然の調子の高い声に、志貴が驚いて顔をあげるとそこには、

腕を後ろに組んでヒナゲシのような優しい微笑を称えた、黒い少女の姿があった。

「助けてあげるっていったのよ。」

「……どっどうして?」

「志貴くん。私、あなたが気に入ったわ。
あなたは真っ直ぐな人。
あなたはとても実直な人。
あなたは自分の命を惜しまない人。
あなたは他人のために全てを捧げられる人。
そんな人の願い、私の私怨で無下にはできないわ。
今時本当に貴重ですもの。そんな人。」

「……アルトルージュ…さん。……本当ですか!?」

「アルトルージュって呼んでよ。志貴くん。」

彼女の微笑みは、アルクェイドとそっくりだった。

「ブライミッツ・マーダー、戻ってらっしゃい。リィゾ、フィナ、二人を放してあげて。」

白い魔犬はアルクェイドから離れ、

白騎士と黒騎士は、シエルとエンハウンスを開放した。

3人は志貴に駆け寄る。

「トオノくん!?ケガはありませんか!?」

「大丈夫だよ。先輩。」

「志貴、やりやがったな。これで第1関門クリアだぜ。」

「ああ。」

「志貴ぃ!!」

『白の姫君』は、思いっきり『真祖の騎士』に抱きついた。

「……アルクェイド。……よかった。おまえ、助かるよ……。」

志貴は、溢れる涙を抑えきれなかった。

「うぇぇ……うぅ………。もう少しで殺されかけてたじゃない……。
でも、志貴生きてる……。よかったぁ……。うえぇぇぇぇん……」

アルクェイドは志貴の胸の中で、泣きじゃくっていた。



「客人さんたち。感動のところ悪いけど、私の話はまだ終わってないわよ?」

アルトルージュは、ちょっと呆れた様子で4人に声をかける。

パッと彼女に慌てて振り向くその4人。

「当然こんな美味しい話には交換条件があります。覚悟は出来て?」

ゴクリ。

4人に緊張が走る。

『黒の姫君』が提示する条件とは?



「みなさん、この城に滞在してもらいます。」



????????


「……アルトルージュさん?それはどういうことでしょう……??」

シエルは、彼女の言葉の意味がサッパリわからない。

「いったとおりですよ。代行者。あなたたち4人はこの城でしばらく生活してください。
無論、私のお呼び出しがあればすぐに駆けつけてくださいね。」

ニッコリと微笑む『黒の姫君』。

『復讐騎』は、とても慌てる。

「ちょちょちょちょぉっと待て!!
それはつまり、おまえの部下になれってことか!?
俺とシエルは教会関係者だぞ!!
周りの二十七祖共が黙っちゃいねぇだろ!?」

「関係ありません。そんなこと。」

しれっというアルトルージュ。

アルクェイドはそんな彼女をキッと睨む。

「アルトルージュ。
あなた……。
志貴をくだらない権力闘争に巻き込むつもりなの……!?」

アルトルージュは冷たく微笑む。

「当然です。
獣の数字の怪物『混沌』。
私も仕留めきれなかった『蛇』。
そして、私が現象化の力をあたえた『虚言の王』。
それらをことごとく撃破した『真祖の騎士』の『直死の魔眼』の力。
是非私の傍らの一人として、居てほしい存在だわ。」

「あなたって人は……!!」

魔眼を見開き、いまにも彼女に飛び掛ろうとするアルクェイド。

志貴が両手でがっちり挟み彼女を止める。

「止せ!!アルクェイド!!」

「だって志貴……」

「いいんだよ。
俺はただで助けてもらおうなんて甘い考えはもっていないよ。
アルクェイドの気持ちはわかるけど、ここはガマンしてくれよ。
その条件、飲みます。」

「……そんな。」

納得が出来ないアルクェイド。

「交渉成立ということでよいかしら。やっぱり志貴くんは素直ね。
でも安心して。
そうそう悪い扱いはしないわ。」

「……わかったわよ。本当に、悪い扱いはしないでね。」

覚悟を決めた志貴のため、アルクェイドはしぶしぶ了承した。

「では、今からみなさんはここの住人になってもらうわ。フィナ、部屋まで案内してさしあげて。」

「かしこまりました。さぁみんな、こっちへいらっしゃい!美しい部屋に招待してあげるよ!!」

あいかわらずのハイっぷりでおどける白騎士。

だが、

何か忘れていないだろうか。


「ちょちょちょちょちょっとまてぇ!!!!
(まってください!!!!!)」


すっかり話から置いてけぼりを喰らっている、シエルとエンハウンス。

「一体どれくらいの期間ここに居なければいけないんですか!?」

「代行者。別にずっと閉じ込めるつもりはありませんよ。教会の仕事の際はリィゾに外出許可証を発行し……」

「そういうことじゃありません!!教会の仮にも死徒殲滅の代行者が、こんな吸血鬼の巣窟に住んでどうするんですか!!
それに、私の名前はシエルです!!」

「……シエルさん。埋葬機関との折り合いは、自分でつけてください。もう子供じゃないんですからね。(ニッコリ)」

「……くぅ!!!」」

志貴は今のアルトルージュが、遠い日本で待っている妹・秋葉とヒジョーにだぶって見えた……。

「志貴、マジか……。」

とてもへこんでいるエンハウンス。嘆きのポーズをとっている。

「……シエル先輩。エンハウンス。色々大変だと思うけど、アルクェイドのために我慢してくれ。頼む。」

拝み倒す遠野志貴に、教会の代行者と抹殺者はため息をつく。

「……わかりました。ここは一つ、トオノくんのためにがまんしましょう。
(ナルバレックに知られたら、絶対にリストラですね……。)」

「ありがとにゃぁ!し得るぅ!」

「あなたのためじゃないですよ!!この期間限定衰弱バカ猫ぉ!!」

またいつもの壮絶なケンカをはじめる猫とカレー。

「わかった志貴。ここまで来たら一蓮托生だからな。」

「……エンハウンス。ありがとう。」

志貴の肩に手をおくエンハウンス。

だが、なんか額に血管を浮かべている。

「……ただ一言いわせてくれ。
シュトラウトと同じ一つ屋根の下なんてな、イ・ヤ・ダ――――――――――――――――――!!!!!!!!!!」

「黙れ片刃!!それは此方の台詞だぁぁ!!!!!!!!!」」

『復讐騎』と『黒騎士』。第2ラウンドのゴングが鳴った。


「……姫様。あのひとたちどう処理すればいいんでしょうねぇ……???」

白騎士は二局陣営の紛争に、全く手の出し様がなかった。

「フィナ。ほとぼりが覚めるまで放って置きなさい……。
……。
騒がしくなったわね。この城も。
先に志貴くんだけ部屋に案内してあげて。
後はまかせるわ。
いこう。ブライミッツ・マーダー。」

「おやすみなさいませ。姫様。」

黒い少女は、白い魔犬ともに玉座の間を後にする。

それに気付いた志貴は、彼女に声をかける。

「……アルトルージュさん!」

振り向くアルトルージュ。

「志貴くん。アルトルージュでいいっていったでしょう?」

「……あっごめんなさい。
そっその、今回はアルクェイドを助けてくれてありがとうございました。」

「私まだ、あの子に何もやってないわよ。これからのあなたの働きしだいなんだから。」

「……1つ聞きたいことがあります。
アルトルージュ。あなたは本当にアルクェイドのことが嫌いなんですか?」

志貴の不意な問いかけ。

「ちょっと待つんだ志貴く……。」

「フィナ。いいのよ。」

志貴を諌めようとしたフィナをとめるアルトルージュ。

「志貴くん。あなたは恋人が助かればいいのでしょう?なぜそんなことを聞くのかしら?」


彼はフランクフルト行きの飛行機の中での、アルクェイドの言葉を思い返していた。



――志貴。私、姉さんって呼べるのかな。

――アルトルージュに。






「だって、この世でたった2人の姉妹でしょう。いがみ合うなんて、哀しいよ。」

アルトルージュは、再びきびすを返す。

志貴に背中を向けたまま、答えた。

「志貴くん。彼女と私はね、違うの……。
おやすみなさい。」

そして、彼女は音の無い足取りで去っていった。

白い魔犬とともに。



「志貴くん。」

フィナの声。

「姫様の奥底に、あまり深く介入しないでくれたまえ……。」

「……すいません。」

普段の道化とは違う、姫を想う『白騎士』の姿。

それを察し、志貴は素直に謝った。

「……いや、いいんだ。気にしないでいいよ。
さて、部屋に案内しよう。」

「はい。」







――アノニンゲンハキケンダ。

――ヒメサマヲマドワスモノ。

――ユルサン。

――クラッテヤル。

――ヒメサマヲカキミダスモノ。

――ワレハユルサン。




白い魔犬は、轟く。


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