月影。Act.4


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1: アラヤ式 (2003/05/29 18:04:00)[mokuseinozio at hotmail.com ]

「はっ!!」

目が覚めた。

そこは、

いつも見慣れた、遠野志貴の部屋。

俺は……

たしか、

あの『復讐騎』に聖葬法典を突きつけられて、

それで……、

アルクェイドは?

そうだ。

俺たちは、あの時、

確実に、エンハウンスにやられてたはずだ。

なのに、

なんで、俺は生きている?

部屋から出る。

走った。

「!!志貴様!!お目覚めになられたのですか!?よかった……。」

翡翠とばったりあう。

「翡翠!!おれは……、」

なんでここに戻ってこれた?と聞きたかったが、

それよりも、

「……アルクェイドは、どこだ!?」

先に口からでた。

すると、

「……。居間に……。」

翡翠は、途中で言葉を切ってしまった。

悪い予感が走る。

まさか、

まさか、

アイツ、俺をかばって、……。

走った。

扉の前に立つ。

意を決して、部屋に入る。

すると、

「―――。」




秋葉。 「兄さん!!」

琥珀さん。 「あらあら、志貴さん、もう起きちゃいましたか。」

シエル先輩。 「治療が早かったですからね。当然です。」

ねこクェイド。「おーす、志貴ぃ!」

そして、

「よっ。お目覚めかい。真祖の騎士。」

くたびれたYシャツの男。有彦ではない。

……。

体をワナワナ震わせる。

そいつは……。そいつは……。

「なんでおまえがいるんだ!!エンハウンスーーーーーーー!!!!!!!」

―――――事の成り行きはこうだ。

シエル先輩に黒鍵を突きつけられたエンハウンスは、

割とあっさり、引いてくれたらしい。

「『察戮両旅罎鮖つおまえとは、世界の矛盾がなくなろうが、
ガチンコではやりたくねえな。」といったとか。

その後、アルクェイドとシエル先輩が、重傷の俺を抱え、

遠野の屋敷まで運んでくれた。

肩がバックリ裂けてる俺を見て、狼狽する秋葉・翡翠を余所に、

先輩と琥珀さんが2人がかりで、傷の治療をしてくれたらしい。

で、現在に至るわけだが……。

「いやあ、メレムの野郎からな、
『真祖の騎士は、ハーレム状態でウハウハ』っていうのは聞いたことあったんだが、マジだったんだな。
姫君、シエル、妹さん、メイドさん2人といい、上玉ぞろいだ。」

にやけながら、琥珀さんの入れた、紅茶をすするエンハウンス。

……。で、なんでこの男が、ここにいるかというと、

替えの包帯を、買いに出かけたアルクェイドが、

パチンコ屋の前で、どっさり景品を抱えたヤツとばったり会ったらしい。

「あっあんた!!エンハウンス!!」

「〜〜!?姫君!?」

その後、2人は意気投合し、(なんで殺しあったヤツとそうなるんだ?)

屋敷に連れてきたとのこと。

……。

「まあ、そうむくれるな。昨日の友は、今日の敵っていうじゃねえか。」

「……。それじゃ逆だろ。大体、最初から友じゃないし。」

ぶははっ、そりゃそうだ。と笑うエンハウンス。

シエル先輩が、あきれたように口をひらく。

「トオノくん。勘弁してやってください。
この人、もともとこういう性格なんです。
今回のことは、ワタシの上司の、性悪女が仕組んだことです。
彼には、悪気はあっても、悪意はありません。」

先輩、それが一番困る。

「そうだよ志貴。話してみたらコイツ、そんなにワルイ奴じゃなかったの。
……そりゃ、志貴に大怪我させたのには、腹立てているけど。」

アルクェイド、おまえが狙われていたんだぞ?自覚してる?

「……まったく。とりあえず、そこの人外女さんはどうでもいいとして。
そこの、無精ひげを生やした人外男さん。」

鋭い目で、秋葉がエンハウンスを睨む。

殺気!!髪が赤い……。

「……。」

気のせいか、翡翠からも同様の視線を感じる。不機嫌モードだ。


「〜〜!!兄さんにここまでのケガをさせておいて、どう償うおつもりですか!?
っというか琥珀!!こんな人にお茶をだすことないでしょう!!」

琥珀さんは、にこにこしながら、構うことなくエンハウンスの紅茶を足している。

割烹着の悪魔。不敵。

「ありがとう、お嬢さん。
……妹さん、わるかったな。
上司のナルバレックっていう野郎は、俺と一方的な契約をしていてな。
あんまり、下手に逆らうとイロイロ困ったことになっちまうんだ。
まあ、志貴も生きていたことだし。結果オーライだろ?」

「……!!というか、あなたに妹よばわりされる覚えはありません!!
兄さんを呼び捨てにもしないでください!!」

「そうだぞー!!ちょびヒゲー!!」

「……。あなたもです。アルクェイドさん。」

「なによ。志貴はワタシの恋人だよー。妹には関係ないじゃない。」

ピキ。

やばい。アルクェイドの奴、とどめの一撃を……。

ごごごごごごごごご。

「……教えてあげますわ。妹であることが、愛の障害ではないということを……!!」

赤手檻髪。発動!!

「なによ。私が志貴を、一番上手く扱えるんだから!!」

魅了の魔眼全快モードで、何いっているんだよ!!

「……うぬぼれないで下さい!!あなたに、魅力があるわけじゃないんですよ!!」

先輩もすでに、第七聖典を装備しているし!!

このままだと屋敷が消滅する!!

「もう、三人ともやめろよ!!おまえもなんか言って……」

ハハっと、可笑しそうに笑ってやがるエンハウンス。

「そもそも、おまえが原因だろうが!!」

「まあまあ。面白いじゃねえか。
それに、今回はオマエにも、手心加えたつもりなんだぜ?」



はあ?



「そうですよトオノくん。彼は、今回の戦いでは、本気をだしていません。」



せっ先輩?



「えー!?志貴、気付かなかったの!?」



アッアルクェイド?



「……。どういうことですか?」



秋葉も臨戦態勢を解く。



先輩が話を続ける。

「彼はですね。前18位の死徒を倒して、その支配から逃れましたが、
彼の体は、完全な死徒のそれではなく、半人半死徒の状態です。
魔剣アヴェンジャーを使えば、人である部分は耐え切れずに崩壊し、
聖葬法典を撃てば、死徒である部分は浄化されてしまうんです。
ですから、戦闘時間には限りがあります。
本人の性格と同じで、肉体も中途半端ってことですね。」

「……中途半端は余計だ。シエル。
まっ、そういうことだ。
でも気にするな。
魔剣アヴェンジャーの超抜能力を、第一形態だけでも、人間に使ったのは初めてだ。
誇りに思えよ。」

エンハウンスが、肩をポンポン叩く。

コイツ、むかつく!!

「そういうことよ、志貴。だからわたし、「アイツは、まだ本気をだしていないわ」って、
言おうと思ったのに、聞かないでいっちゃうんだもん。」

……ああ。あの時、アルクェイドが言いかけたことは、そのことだったのね。

なんか、いきなり、疲れが出てきてしまった。

「でもよ、今回は、シエルが止めに入ってくれてよかったぜ。
こいつ殺したら、5人のお嬢ちゃんに、一生恨まれちまうところだった。」
みんな、志貴にゾッコンみたいだからな。」

「…て、おまえな。」

皆の顔が赤くなる。

コホン。

秋葉が、わざとらしい咳払いをする。

「……本当でしたら、今すぐこの場で、あなたの体中の熱を『略奪』し尽くしてあげたいところですが、
兄さんも無事だったことですし、今回は、治療代くらいで多めにみましょう。」

「いやぁ、そういってくれると助かるぜ。妹さん。」

「……ですから、あなたに妹呼ばわりされる筋合いはありませんっ!!
金輪際、兄さんには近づかないでくださいっ!!」

バァン。

ドアを割れんばかりに閉め、秋葉は退室してしまった。

「はぁ。」

おもわずため息がもれる。

しかし、屋敷の消滅という、最悪の事態は免れた。

「秋葉さまも、大人になられましたね。」

終始、笑顔を崩さない琥珀さん。

対照的に翡翠は、まだエンハウンスを睨んでいる。

「翡翠。」

「何でしょうか。志貴さま。」

「まあ、今回は、俺もコイツに、死ぬようなケガ負わされて、
腹は立っているけどさ。
先輩の知り合いだし、勘弁してやってくれないかな。」

「……。私は、……志貴さまが無事なら、それでいいです。」

顔を赤らめて、うなずく翡翠。

「では、私たちはこれから、お夕飯の用意をいたします。
翡翠ちゃん、お皿洗ってくれる?」

「わかりました。みなさま、お先に失礼します。」

琥珀さんと翡翠は、ペコリとお辞儀した後、台所へ下がった。

「へぇ、着物のお嬢ちゃんの手料理か。食ってみた……」

ブスリ。

エンハウンスがそう言い掛けた瞬間、

シエル先輩の黒鍵が、見事、彼のあたまに命中した。

「何バカなこと言っているんですか。帰りますよ。
いつまでも居座っていると、秋葉さんに『略奪』されて、消滅させられちゃいますよ。」

「……その前に、人の頭を串だんごにでもする気か?シエル。」

血がピューッと吹き出ている。

「『火葬式典』を発動しないだけ、ありがたいと思ってください。
まったく、吸血鬼っていうのは、
どうしてこうも、キチ○イが多いんでしょう……。」

腕を組んで、ため息をつく先輩。

「どういう意味よシエル!!それ、私にもケンカ売っている訳!?」

「あーぱー吸血鬼なんか、その最たるものでしょうが!!」

「でか尻エルがよく言うわよ!シエルインドー!!し得るカレー!!」

「〜〜!!やっぱり、あなたはここで浄化して……」

ゴスッ。

エンハウンスのゲンコツが、先輩のあたまにヒット。

「てめえが帰るっていったんじゃねえか。ここで戦争するな。
早く、俺の聖葬法典のメンテナンスをしてくれよ。」

「〜〜!!
……わかりました。今日のところはここで退いておきましょう。
ですがアルクェイド、今度会ったときは、ただじゃおきませんからね!!」

「いーだ。シエルなんかに、負けるはずないでしょうが。」

エンハウンスは、暴れるシエル先輩を両手で抑えて

「遠野志貴。縁があったらまた会おうぜ。姫君もな。」

「……。できれば、二度と関わりたくないね。あんたとは。」

「またね。ちょびひげ!」

「……ヒゲいうな。じゃあな。」

笑いながら、アイツは去っていった。

何だったんだろう。アイツは。

いきなり俺たちの前に現れて、

殺そうとして、

でも、

すぐに仲良くなって、

理解できない。

不遜で、文句なしに強かったアイツ。

だらしなさそうで、妙に人なつっこいアイツ。

一体アイツはなんなんだろう。

わからない。

ただ……、

「志貴、どうしたの?」

アイツは、アルクェイドを助けてくれた。

アイツが本気で、俺たちを殺しにくれば、

ものの10分で決着はついていただろう。

今、考えれば、

アイツは何も、俺たち2人に同時に挑むことはなかった。

俺たちが離れているときに、

一人ずつ、確実に殺せばよかったんだ。

なのに、アイツはそれをしなかった。

なぜ……

「志貴ッてば!!」

「あっ、なんだ?アルクェイド。」

「何考え事しているのよ。呼んでも全然返事しないし。」

「アルクェイド。」

「何?」

「エンハウンスのこと、どう思う?」

「……。ちょびひげ。」

「真面目に答えろよ。あいつのこと、好きか?」

「……きらいよ。だって志貴にケガさせたもの。
でも、そんなにきらいじゃない。」

「……矛盾しているけど、俺も、そんな感じがする。」

そう。

アイツは、矛盾している。

人間であり、死徒であり、

殺すといって、殺さない。

嫌いといって、好きという。

アイツは、矛盾そのもの。

手加減しないとか言っておいて、手加減してやがったしな……。

「ま、面白いやつではあるな。」

「うん、私もそう思うよ。でも……。」

「なんだ?」

「……なんでもないよ。じゃ、そろそろ私、帰るね。」

「なんだよ。夕飯食べていかないのか?」

「妹も、結構頭にきているみたいだし。長居すると戦争になるわ。」

「……ま、そりゃそうだ。じゃあ、気を付けて帰れよ。」

「えへへ。私を襲う人なんていないよ。それと志貴。」

一歩前に進むアルクェイド。

「ありがとう、志貴。カッコよかったよ。」

アルクェイドのキス。

「……。おまえが無事でよかった。
映画、また、見に行こうな。」

うん。といって、彼女は窓から飛んでいった。







夕飯の後、自室に戻る。

驚く。

布団の上には、

『復讐騎』

と書かれた手紙があった。




今日の夜12時。公園でまっているぜ。
『真祖の騎士』。





まだ、終わらない。


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