吸血鬼の姉妹 中編その


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1: 猫乃真 (2002/09/16 13:25:00)[NEKONOSIN at jp-n.ne.jp]

吸血鬼の姉妹

「はぁはぁはぁ・・・」

膝に手をつけ、肩で息をするアルトルージュ。
黄色い声がしないところ、どうやら女子高生達を撒けたらしい。

「うっ・・・気持ち悪い」

が、傷は深く、手を口に当てて床に膝をつく。
顔は真っ青で、いかに女子高生達の攻めが強かったのがよくわかる。
誰かが背中を擦ったら、今にも吐きそうな感じだ。

「ま、まさか、ただの人間にあれほど力があるなんて・・・」

気持ち悪いのを我慢して、アルトルージュは隠れている場所、
トイレから顔を出して、先ほど自分を揉みくちゃにした人間達がいないか確かめる。
左右を念入りに見るが、廊下には誰もいなかった。

「・・・ん、よかった。誰もいない」

ふぅ・・・っと、安堵の溜息を吐く。
女子高生がいないことに心底を安心するアルトルージュ。
今のアルトルージュの状態を見たら、同種族の吸血鬼たちが見たらどんな事を言うことか。
しかも、吸血鬼でも最高ランクの死祖の姫が。

「お前、こんなところで何やってんだ?」
「――――――!!」

っと、一安心したところにいきなり男の声し、アルトルージュは心臓が飛び出るんではないかと思うぐらいビックリした。
目を向けてみるとそこには赤髪のいかにも悪そうな男子生徒が立っていた。
見覚えがある。確か、遠野志貴と同じクラスの乾有彦とかいう人間だったはず。
遠野志貴になれなれしくしていたのを覚えている。

「ここは、お前みたいな小さい奴が来るところじゃないぞ」

小さい子供に何か嫌な思い出があるのか、乾有彦はとても不機嫌にそう言い、私の襟を掴んで持ち上げた。

「ちょっと! いきなり何よ!!」
「ああん?何って、不法侵入者を学校の外に連れ出そうしてるんだよ」
「何言ってんのよ! 私はここの関係者よ!」
「は? お前みたいなのがここの関係者? ああ、姉ちゃんか兄ちゃんに忘れ物でも届けに来たのか?」
「違うわよ! 兎に角早く下ろしなさいよ!!」
「はん! そんなことを言って下ろすと思うか、このビチクソ」
「・・・(ぷち)」
「ん? どうした。急に黙り込んだりして? ああ、なるほどようやく大人しく退場する事にしたんだな」
「・・・っ・・・す」
「? なんか言ったか? ―――って! うお!?」

アルトルージュの目を見て、威圧される有彦。
その色は黄金色に輝いていた。
有彦は突然の少女の異変に驚き、手を放す。
アルトルージュは有彦の魔手から放されると、綺麗に床に着地して有彦を睨み上げる。

「お、おい、そんな怖い目で見るなよ」
「能力解除OK・・・解放レベルMAX・・・敵が完全に沈黙まで持続・・・結界使用許可」

右手で顔を抑え、ブツブツと言葉を喋るアルトルージュ。
場の空気が一気に濃密になり、有彦は息苦しさを感じた。

「(おいおい、マジかよ。こりゃただことじゃないぞ!)」

流石にこれはただ事ではないことを悟った有彦はその場から逃げ出すことにした。
自分で言うのもなんだが、逃げ足だけはめちゃくちゃ自信がある。
なぜなら、生徒会所属の陸上部エース(全国もいける奴)からも逃げおおせたことがあるのだ。
そして、今回はその時にも増していいスタートダッシュだが―――

「逃がさないよ」
「!!」

そんな少女の声が聞こえたと思ったら、目の前に誰かの手が伸びてきた。
駄目だ!っと、思い目を閉じた瞬間―――

「な!?」

キンッ!っと、いう音とともに少女の驚きの声が聞こえた。
何が起きたんだ?と思うよりも早く、後ろ首に衝撃が起きて俺は気絶した。



吸血鬼の姉妹
中編その


「ちっ・・・何であんたがここに居るのよ」

いつの間にかに大人になったアルトルージュは、自分の攻撃をはじき返した人物に睨みきかす。

「当たり前です。この町には吸血鬼が居ますからね」

目線の先の人物は無表情のままアルトルージュにそう言いかえす。

「それって、私のことかな?」
「いいえ違います。私が言った吸血鬼は貴女の妹さんですよ、死祖の姫君さん」
「・・・相変わらずむかつくわね、教会の犬こと『エレイシア』ちゃん」
「その呼び名は止めてくれません? 私の名前はシエルです」

そう言って、何処からともなく出した黒鍵をアルトルージュに向けるシエル。

「別にどっちだっていいじゃない。貴女が殺人鬼だと言う事実は変わらないのだから」
「それがどうかしました?」
「あら・・・? 暫く、会わないうちにどういった心境の変化かしら? 前ならくってかかってきたのに」
「以前の私と一緒にしないで下さい。私は過去の柵を完全に絶ちました」
「ふーん。何があったかは知らないけど。ロアが死んだからって、わけじゃなさそうね」

にやりと笑って、構えるアルトルージュ。

「不死身ではない貴女が私に勝てると思うの?」
「はい、そう思います。しかし、ちょっと待って下さい」
「何? 偉そうな事を言っておいて、今更命乞いなら許さないわよ」
「違います。この学校を傷つけたくないので場所を移動しましょう」
「移動? 何で、そんなめんどくさい事をしないといけないのよ。無駄な行動だわ」
「・・・やっぱり貴女は吸血鬼ですね。しかし、無理にでも移動してもらいますよ」

右腕を横に伸ばし、袖から小さなナイフを取り出す。

「え!? それはまさか――――」

っと、何かを言おうとした瞬間。シエルはそれを地面に投げつけた。


放課後。

「まったく、アルトルージュのやつどこいったんだ?」

そうぼやつきながら、遠野家に続く坂を歩く俺。
結局、あの昼休みの後、アルトルージュは一度も顔を出さなかった。
代わりに、有彦が廊下でぶっ倒れているところが発見され、一時学校は騒然とした。
俺は空を見上げる。
既に空はオレンジ色に色づき、そこらにある家からはポツポツと明かりが付き始めていた。

「それにしても、先輩までどこに言ったんだろう・・・?」

ぽりぽりと頭を掻く。
放課後に茶道室に行ってみても、いつもきちんと正座をしてお茶を飲んでいる先輩の姿が無かったしな。
ん〜、と首を捻る。それから、ぽん、と手を叩く。

「まあ、明日朝早くにでもシエル先輩の家にでも行ってみるか」

よし、そうと決まったら今日は早く寝床につくことにしよう。
レンにでも頼めば、すぐにでも眠りにつけるだろう―――

「!!」

と、背中に突き刺さるような視線を感じ、俺はその場を飛び退く。

「ほう・・・流石に吸血鬼を倒せるだけはあるな」

すると、そんな抑揚のない声が今さっきまで俺が立っていた場所からした。
ゆっくりと後ろを振り向くと、そこには全身黒づくめの男が立っていた。
短い白銀の色の短髪にブルースカイの瞳が印象的だ。
だが、そんなことはどうだっていい。俺が知りたいのは。

「だれだ、お前」
「私か? 私は埋葬機関第二司祭、クラッカ・D・レオンだ。以後お見知りおきを、遠野志貴君」
「・・・」
「君の名声は聞き及んでいるよ。何せ、唯の人間が吸血鬼を二対も滅したわけだしね。
それも死祖二十七の二人、ネロ・カオスと真祖の姫君の分身とも言える、ロア・バンダムだからね」
「・・・埋葬機関第二司祭てことは、シエル先輩と同業者というわけか?」
「ん? ・・・シエルとは『弓』のことか? まあ、同業者といえばそうだが、あれは穢れし者だ。同胞というと我等教会が穢れる」

その言葉に俺はかちん、ときた。
俺は片手をポケットに入れ、眼鏡を外す。

「お前は何しに来たんだ。まさか、シエル先輩の暴言を吐きに遠路遥々俺のところまできたわけじゃないだろ」
「そうそう、忘れていた。私はね、君を消しに来たんだよ」
「じゃあ、ささっと始めようぜ。殺し合いをな」

俺は腰を低くして、相手を見据える。
既に奴の点の位置はとらえてある。俺はナイフを抜けばいつでも奴を殺せる。

「ちょっとちょっと、待ってくれよ。今日は別に殺しに来たわけじゃないんだよ。君にいいことを教えてあげようと思って来たんだよ」
「いい事・・・?」
「そうそう。今『弓』はね、死祖の姫君と闘争しているよ」
「な、に―――」

奴の言葉に心臓がどくん、と跳ね上がる。
それはやばい。アルトルージュは兎も角、今の先輩は――

「既に不死身じゃなくなった彼女があのアルトルージュと戦って、無事ですむかな〜」

黒い手袋に隠された手で、男は口元を隠し、くく、と笑う。

「どこだ! どこで二人はやりあってるんだ!!」
「知りたいかい?」
「ふざけてないで教えろ!!」

俺はポケットから形見のナイフを取り出し、奴に向ける。
奴はそれを見ると、両手を上げて苦笑いをする。

「おいおい。止めてくれよ。教えてあげるからナイフを下げてくれよ、正直君の能力は怖いからね。
それと、彼女達は最も暗く、そして最も血が染み付いている場所で戦っているよ」
「最も暗く、そして最も血が染み付いている場所・・・? そうか!」

俺は頭に浮んだ場所に一目散へと走りって向かった。










後編へ続く。



あとがき

さてさて、急に話しの方向が変わってしまいました。
ギャグでいこうと思ったのに、いつの間にかにこんな展開に・・・。
まあ、あと2、3話で終わると思うんで、どうか見て下さい。
でわでわー。


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