吸血鬼の姉妹 中編その一


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1: 猫乃真 (2002/08/23 15:31:00)[NEKONOSIN at jp-n.ne.jp]

吸血鬼の姉妹

「じゃあ、行って来るよ翡翠」
翡翠から通学鞄を受け取る。
「志貴さま。今日はいつ頃お帰りになるんですか?」
「んー。今日は昼ドンだから一時頃くらいには帰ってこられると思う」
「そうですか。では、行ってらっしゃいませ、志貴さま」
「ん、じゃ」
礼儀正しくお辞儀する翡翠に軽く手を振って、俺は坂を降りていった。


「はぁ・・・」
坂を降り終えたところで、俺は軽く溜息をつく。
ぽりぽりと頭を掻いて、空を見上げる。
「まさか、アルクに姉がいるなんてな・・・」
俺は今朝のことを思い出す。
いつも通り翡翠が部屋に来て、俺を起こしてくれる。
で、その後どこかに隠れているであろうアルクを見つけて、できるだけ追い払う。
まあ、ここまでは日常茶飯事なことだ。言いかえればレギュラー。
しかし、今日の朝に限ってイレギュラーなことが起きた。
その名もアルトルージュ・ブリュンスダットという小さな吸血鬼の登場。
話によると、アルクの姉である。
容姿は昔のアルクに小っこい版みたいな感じだ(歌月十夜参照だ!)った。
あと、アルクと比べたらちょっとツリ眼がちだったような気がする。
「・・・にしても」
なんだろう、この胸騒ぎ?


吸血鬼の姉妹 中編・その


教室につくと、珍しく有彦が先にいた。
とりあえず、朝の挨拶をして二人揃って席につく。
「なあ、遠野」
と、席についた早々、有彦が興奮した面持ちで俺に喋りかけてきた。
「何かあったのか? 有彦」
「あったも、あったさ。何と、今日臨時のセンコーが来るんだよ」
「は? 何でまた」
「うちのクラスの担任の両親が死んだんだ。で、葬式とかあって数日の間来れないから、その代わりだ」
「ふーん。で、その臨時の先生が女で美人の先生ってわけか」
「お! 察しがいいねー。流石は遠野」
「男だったら、そんなに興奮しないだろうがお前は」
「当たり前だ、男のセンコーが来て誰が喜ぶかつーの。うー、それにしても楽しみだな〜、臨時のセンコー」
自分の体を抱いて、クネクネと悶える有彦。
こう言ってはなんだけど有彦・・・。
「はぁ〜、ん〜、くー!」
「・・・・・・」
正直キモイぞ。

ガラガラ

ドアが開く音がして入り口の方を見てみると、教頭が教室に入ってきていた。
すると、騒がしかった教室が一気に静まり、皆一様に急いで席についた。
皆が席に着くのを確認して教頭は教卓につくと両手を机につき、厳しい目で回りをいっぺいした。
そして、片手を口元に移動させコホンっと、咳をする。
「えー、後藤先生がご両親の葬式で学校に来られないため、かわりに臨時の先生を雇う事にした」
さきに情報を知っていなかった生徒達が騒ぎ出す。
「えー、静かに。それでは先生入ってきてください」
教頭がそう言うと、教室のドアが音を立てて開く。
「「「おお〜!!」」」
瞬間、男子生徒の歓声が教室に鳴り響いた。
入ってきたのは腰まで伸びた金髪の美人だった。
男子生徒たちが喜んだ気持ちはよくわかる。しかし、俺は素直に喜ぶ気にはなれない。
それは、なんだか入ってきた臨時の女の先生が見覚えがあるのだからだ。
それも、アルクェイドに似ているときたもんだ。
けど、アルクェイドの髪は肩ぐらいまでしかないので別人と言う事になる。
それに本人より胸も小さいし、目が少し釣り目だ。紅い目が印象的だ。
どうやら、よく似た他人の空似というやつらしい。
臨時の先生が教卓に着くと、教頭がおそらく癖であろう、咳をする。
「えー、彼女が今日から数日間、臨時にこのクラスの担任をしてくれる先生だ」
「どうも、みなさん。不束者ですが、どうかよろしく」
ペコリと頭を下げる臨時の先生。
その拍子に揺れた髪が、一つ一つ本物の金のように輝いた。
「・・・」
俺はその光景に暫し、言葉を失う。
「では、先生。後はよろしくお願いしますよ」
「はい。教頭先生」
教頭は臨時の先生に出席簿を渡し、教室を出て行く。
途端、教室の男子達が騒ぎ出す。
「先生。何処の国の人?」
「先生。今何歳?」
「先生。スリーサイズを教えてくれませんか?」
「先生。今日は何色のパンツを穿いてきてるんですか?」
「先生。彼氏はいるんですか?」
何か、健全な学生には程遠い質問ばっかだな・・・。
「え、えーと・・・」
臨時の先生も、こういうことに慣れていないのか困った様子だった。
目に見えておろおろし始めている。
「ちょっと、男子! 少しは落ち着きなさいよ!!」
「そうよ、そうよ」
「うるせー! ブスが!!」
「そうだ、俺らは先生に質問してんだ! お前等は口を挟むなよ!!」
女子達が男子に怒鳴ると、クラスの男子達は怒りの表情で言い返す。
「きー!! ブスですってーーー!!!」
突如、クラスの男子と女子が不毛な争いを始め出した。
俺はその闘争の元凶?とでも言うべき先生に目を向ける。
「どうも、志貴君」
「――――!!」
すると、先生が俺の眼前にいた。
一体いつの間に!? 気配を感じなかったぞ。
「? どうしたの志貴君。そんなに驚いて」
ニッコリと微笑み、俺の名前を言う先生。
「い、いやなんでもないです」
「あれ? 何か朝に会った時よりも礼儀ただしいね〜」
「え・・・?」
「あれ? もしかして私が誰だかわかんない?」
コクコクと頷く。
朝に会った?覚えが無いけどな・・・。
「ん〜、その顔だと本当にわかんないんだ・・・、ねえ、君の部屋に朝、誰か見知らぬ人が来なかった?」
「え、来ましたけど・・・」
確かに朝俺の部屋にアルクェイドの姉であるアルトルージュが来たけど、何でそんなこと知ってんだこの先生。
「うー、まだわかんない?」
「はい、すいません」
「はぁ・・・私、アルトルージュだよ」
「へ!?」
俺は不毛な闘争が行われている教室の中、なんとも間抜けな声を出した。


「にしても、学校って五月蝿いところね〜」
気持ち良さそうに背筋を伸ばすアルトルージュ。風で金色の長い髪がはためく。
太陽に照らされた髪は教室にいるときよりも輝きを増していた。
その姿を俺はカレーパンを頬張りながら見つめていた。
「何? 人のことをジロジロ見て」
「いやさ、本当に今朝会ったアルトルージュなのかと、ね」
実際、朝に会ったアルトルージュは130cmそこそこの少女。
けど、今目の前にいるのは誰がどう見たって20代後半の女性である。
身長も俺とさほど変わらないくらい高いし、体も少女のものではなく大人の女性のラインだ。
しかも、めちゃくちゃ美人ときたもんだ。アルクとはまた違った美しさがある。
「あれ? まだ信用してないんだ。じゃあ、真か嘘か見させてあげる」
そう言った次の瞬間、アルトルージュから光が放たれた。
そして、光が収まると同時にそこには今朝会ったアルトルージュがいた。
「ね? これで信用できるでしょ?」
にっこりと可愛らしい顔で俺に笑いかける。
「ま、まあ・・・」
「何よ・・・まだ納得できないの?」
「いや、そういう訳じゃないんだ。ただ、ちっさくなったり大きくなったりする意味が・・・」
「ああ、それね。大きい時のほうが力があるんだけど、小さいと何かと便利だからね」
「便利・・・?」
「ほら、子供だと大人って商品を安くしてくれたり、オマケしてくれたりするじゃない」
「・・・仮にもアルクェイドの姉だろ? そんな庶民的な理由で子供の姿をとらなくても――」
「アルちゃんとは腹違いよ」
「・・・」
「悲しい事実よね。私は母が死徒だからって、他の真祖たちは私に何ひとつ財産をくれなかったのよ。
それで私は貧乏さん。酷いと思わない〜? アルちゃんだけお金がもらえるなんて〜」
「ま、まあ・・・」
俺にしがみ付いて、泣きじゃくるアルトルージュ。
確かに俺も遠野家に行ってからというもの、小遣いがまったくなし。
昔、貯めていた貯金も今やロウソクの火のようなものだ。
まあ、あんまり食べないほうだから昼飯代の浮いた分で今のところ金は何とかなっているけど。
「あ、そういえば、アルトルージュも日の光は大丈夫なんだ」
「うんん、全然。この姿で直射なんてくらったら一瞬にして灰だよ」
「その割には大丈夫そうだけど・・・?」
「ほら。ブレ○ドっていう吸血鬼の映画は見た事ある? あれ、ボスさんみたく日焼け止めを塗っているのよ」
「へ〜、それで肌が変に白いんだ。それはそうと、アルトルージュ」
「ん?何、志貴君」
「クリームが取れかけているぞ」
「えっ!? うわ! マジだ!!」
驚きの声をあげるアルトルージュ。
「じゃ!志貴君、私先に教室に戻っているね」
「ああ―――って、おい!」
っと、アルトルージュの姿を見てあることを忠告しようとするが、アルトルージュはそれを無視して、叫び声をあげて屋上から一目散に去っていく。
「はぁ・・・」
俺はアルトルージュが出て行った扉を見ながら溜息を吐く。
「まったく、小さいままで出てくなよ」
俺は新たな悩みの種が出来上がり、苦悩するのであった。
一方、屋上から逃げ去ったアルトルージュは―――




「きゃ〜♪ この子何〜?可愛い〜♪♪」
「プニプニしてるわよ〜♪」
「家に持って帰りた〜い♪」
「ふにゅ〜、たすけて〜(T.T)」

吸血鬼も、人間のこういったところには勝てなかったらしい。
吸血鬼、アルトルージュ・ブリュンスダッドは女子高生パワーに揉みくちゃにされてましたとさ。




中編その△紡海。




後書き

どうも、遅れてすみません。久しぶりの投稿です。
見た感想はどうですか?すこしでも興味がそそれば幸いです。
っということで、書くことがないのでここら辺でおいとませて頂きます。
次の中編その△呂任れば一ヵ月後、遅くなれば2ヵ月後に更新します。
それでは、でわでわー。


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