仮面の復讐騎 空に架かる蒼い月編


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1: ししりい (2002/05/16 00:27:00)[yurikamome6 at hotmail.com]

    仮面の復讐騎 空に架かる蒼い月編


「――――――? 何だ。『コレ』は?」
 チッ!こんな時に限って式が居ないとは――――!
「一体なんだって言うんだ。『何』が私の元に近づいて来ている?」
「どうかしましたか?燈子さん」
 呑気なことを・・・。まあ、黒桐にはこの『予感』めいた物は分かるまいな。
「黒桐、式を連れて来い。今すぐに、急いでだ」
「え?でも、今朝から来ない所を見るとなんか用事があって何処かに・・・」
 やれやれ、これだから・・・。いや、だからこその黒桐か
「それこそ人探しは君の専門だろう。急がないと職を失うかもしれんぞ?」
「も〜、わかりましたよ。行ってきますからクビも給料滞納も無しですよ?」
 訳もわからず部屋から出て行く黒桐。
 バタンッ ドアの締まる音、遠ざかっていく足音――― 
 
 やれやれ、全く分かってないなアイツは。さて、式を連れて帰るまで私の首が胴と
繋がっているかな? と、煙草に火を着けながら一人ごちる―――
「まあ、その時はどの道 黒桐にとって同じことか、フフフ・・・」
 
 その『何者か』が今まさに、ドアの向こうにいる。―――数は二人 か?
 コンコンッ 律儀な事にノックの音が。 さて、来訪者を迎えるとしよう。
「鍵は開いている、入ってきたまえ」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「本当なんだってば〜」
「何かの見間違いだろ?ンなわきゃねえって」
「いやいや、実は三つ子だったとか?」
教室に入るとそこには弓塚さん、四季、そして有彦といったいつもの
面々。何やら盛り上がっていた様だが・・・・
「よお、やっと来たか兄弟」「おはよ〜、遠野くん」「おう!遠野」
「うい、おはようさん」
 挨拶をかわし、席に鞄を置くとそのままみんなの所に足を運ぶ

 更に論議は白熱しているんだけど三つ子って・・・
「何の話だ?三つ子だの見間違いだのって〜」
「ああ、実はな、さつきが今朝の登校途中、琥珀だか翡翠を見たって言うんだよ」
「―――はい?」
・・・・なんだよそれ? 朝からいきなりとんでもないネタを――――
「さつきと俺たちの家は位置が正反対だぜ?俺は今朝二人には会っているんだか
らそんな事あるわけないよな?志貴」
「ああ、二人とも朝はずっと家にいたよ」
 そんな俺達を見て ム〜、と膨れる弓塚さん。
「そんな〜、私たしかに見たんだから〜!」
 弓塚さんは引き下がらない。そんなに似てたのか?
「で、話したりしたのか?そのそっくりさんとよ」
 良い所を突く有彦。すると弓塚さんはそのツインテールと共に首を縦に振る。
「したよ〜。挨拶したんだけど、その人は私の事知らないみたいで困ったカオし
て行っちゃった」
  ―――――う〜ん、これが二人のどちらかなら顔見知りの弓塚さんを無視し
て通りすぎる筈は無いよな。とは言え・・・ 一体?




 その日の夕方近くの遠野家。玄関には双子の姉妹、見送る姉はいつもの割烹着だ
が見送られている妹の方は青いパンツとピンクのパーカー。活発な翡翠に実に良く似
合ってたりする。

「じゃあ お買い物いってきま〜す!」
「はい、いってらっしゃい」
 今日は翡翠の買い物当番の日。流石に若い身空でお屋敷に閉じこもるのも何なので、
交代で買い物と称して街へ遊びに行く事にしている。。
 この二人、遠野家当主及び御曹司お付の使用人なのでかなりの高給取だったりす
る。ちなみにその御曹司ふたりは秋葉の命によりお小遣い無し。
「私の番はあさってだから、どうしようかな?」
――――― そうだ、お小遣いの無いお二人と待ち合わせして何か奢ってあげようかな。
あ、でもこれってデートになっちゃうかも?じゃあ、弓塚さんに悪いから志貴さんだけ
お誘いしましょう――――   哀れなり遠野四季・・・
 
 なんて事を考えながら屋敷に入ろうとすると誰かの視線に気が付く。
「――? 誰ですか?」
 視線を感じたのは中庭の方。琥珀がそちらを見ると今しがた出かけていった筈の翡翠
がそこに居た。
「え?翡翠ちゃん なの? 何か忘れ物でもしたのかしら?」
「・・・・・・」
 思い詰め憔悴しきった表情で何も答えない妹を心配して、パタパタと駆け寄ると翡翠
は目に涙を溜め、嗚咽を堪えていた。
「どうしたの?翡翠ちゃん。何があったの?――誰かに何かされたの?」
 最悪の事が頭を掠めるが、時間的に有り得ない事を考え胸をなでろす。が、明らかに
様子のおかしい妹を案じて、いつに無く動揺を露にする琥珀。
「・・・姉さん・・・ 琥珀姉さんっ!!」
 何度も姉の名を呼び、そして弾けるようにして姉にすがりつく翡翠。 
「翡翠ちゃん・・・大丈夫。大丈夫だからね、」
 優しく、何度も語り掛け頭を撫でて、妹を安心させようとする琥珀。どれくらいそうし
ていただろうか。やっと落ち着いたかと思ったが―――

「ただいま〜、腹減ったから晩飯の前になんか軽い物頼む・・・って、何やってんだ?」
 帰るなり屋敷の前で抱き合っている幼馴染の姉妹を見て固まる四季。
「――――ッッ!!? シキさま?」
 ビクッ!と顔を上げ、 学校から帰って来た四季を見るや驚いたような、そして悲しそ
うな複雑な表情をする翡翠。
「な、なんだよ? 」
「四季くん? まさか貴方が翡翠ちゃんになにかしたんですか?」
 四季を睨みつける琥珀。
「へ?何ってなんの事だよ? おい、お前何泣いてんだよ、翡翠?!」
 いきなり濡れ衣を着せられ慌てて翡翠に駆け寄る心配顔の四季。
「――――――――ッッ!!」 
 翡翠は何かに耐えられなくなったって四季の手を振り払う様に森の方に逃げ出していった。
 ―――――しばし呆然とする残された二人。

「ええと、そのなんだ? 俺は何にもしてないぜ」
「・・・・四・季・く・ん? 貴方、まさか翡翠ちゃんにっ!!!」
 普段大人しい琥珀は本気で怒るとかなり怖い。ケンカ友達の翡翠とは違い、昔から
琥珀には頭が上がらない四季だが身に覚えが無い以上答え様もない。
「ホントに何もしてないって、翡翠とは朝会ったっきりだったんだぜ?」
「じゃあ、なんで翡翠ちゃんは泣いて四季くんから逃げてったんですか!!」
「あいつが何かされて黙って泣くタマか?俺はホントに何もやってねえよ〜」
 理不尽な琥珀の追求に、懇願して無実を主張する四季。
 冷静さを無くしている二人の論議が頂点に達したその時『ただいま』の声が―――
「外まで声が聞こえてたぜ。お前、今度はなにやったんだ」
 そこには下校途中に自分を待ち伏せていた人物に買い物袋を持たされ、それを両手
に下げた志貴、そして――――
「なになに♪ で、なにやって琥珀姉さんをここまで怒らせた訳?」
      ―――――『え?』―――――
 ゆっくり声の方を向く四季と琥珀、そして、絶句し翡翠を見詰める二人
「な、なによ二人とも。私の顔がどうかした?」
  


「――――――、姉さん・・・ シキさま・・・」
 遠野邸の森の中で蹲り、声を堪えて嗚咽する翡翠。 
「大丈夫ですか?翡翠・・・」
 何時の間にか翡翠の側に小柄な少女が気遣う様に寄り添っていた。
 長い黒髪に翡翠と同じ紅い瞳、とても美しい容姿、優しい雰囲気を纏った青い
衣装の少女―――― アルトルージュ=ブリュンスタッド。
「私、うれしいんです。姉さんが、シキさまが―――ここでは皆が幸せに暮らしている」
 望んでも叶わない光景が『ココ』にはあった。でも『ココ』は自分の居場所ではない。
しかしそれでも・・・・
「ごめんなさい。貴方には辛い想いをさせてしまって」
 顔を曇らせるアルトルージュに翡翠は首を横に振って―――
「いいえ、私はとても幸せな気持ちです。むしろ『ココ』に私を連れてきてくださった事に感
謝しているくらいなのですから」
 その泣き顔で笑顔を作る翡翠。しかしそれは本当に満足さを称えていて・・・
「翡翠・・・・」
 アルトルージュも自分のパートナーに笑顔を返す

「『ココ』に長く居ては貴方の負担が大き過ぎます。これから件の人物に会いに行きましょう」
「―――やはり、居たのですか?」
 コクン、と頷く少女。
「ええ、『直死の魔眼』の持ち主はやはり『ココ』に存在していました」 
 
 

   「あとがき」
 ああ、先延ばしになっているアルトルージュの話抜きで仮面の〜が進み
過ぎてしまいました〜。
 アルトルージュは真祖と死徒の合いの子である為、死徒としてもポテンシャルは
とても高いのですが、真祖として存在するにはあらゆる要素が足りず、かなりの条件
を満たしていなければ真祖としてのアルトルージュになれません。
 あまりに条件が厳しい為、過去数回しかなった事が無いとか・・・。
そこで、翡翠のサポートでブリュンスタッドたる『力』を使えるという設定です。
その為、翡翠の眼が紅いのですが死徒になった訳ではありません。
あ、アルトルージュの設定はオフィシャルじゃありませんから。(笑
 
 感想おまちしてます〜。


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