Red Venus With Masking Smile!!「発端供


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1: 天戯恭介 (2002/05/14 23:39:00)[mad_piero at hotmail.com]


志貴はタバコを吸っている。

マルボロのライトだ。

誰に薦めてもらったわけでもない。
ただ、普通に志貴はタバコの味を覚えてしまっていた。

「……ふぅ……」
自分が吐いた紫煙を見つめ、志貴は自嘲の笑みを零した。

「あらあら、タバコ吸っているなんて、すっかり不良ねぇ」
どこからからの自分を嘲る声。
志貴はそれで誰が自分を呼んだか理解した。

「……俺はもう不良って年じゃないですよ、もう二十歳になってます。」
そういって志貴は声のした方向へ振り向く。

「あら、ごめんなさいね。そう…君と出会って十年近く起つのね…」
真紅の髪を腰まで伸ばした女性は志貴に微笑みかけた。

「おひさしぶりね、志貴…二年ぶりかしら?」

「ええ、先生もお変わりなく…ちなみに三年前ですよ。」




「発端供
Kyousuke Amagi Presents…
Red Venus With Masking Smile!!
Featuring 【ITIKO INUI】






それは月下の逢瀬…。

それは恩師と教え子のつかの間の談笑。

その二人の再会をいつもそこにある月が見つめている。

緑の草原が風に揺れ微かに二人の髪を揺らし、暖かくも冷たくもない、ほどよい風が二人を、草原に座り語り合う二人を突き抜けて行く。

「ところで先生」
「何?」
「どうして俺をこんな所に呼び出したんですか?」

そう、志貴は蒼崎青子に呼び出されたのだ。

しかもとっても非合法な手で…どこらへんが非合法なのかというとまあ、

【その方法、なんて蒼崎的な…】って奴

敢えてその方法は書かないでおくが志貴の意思が尊重されなかった方法だったと記しておく。

「うん、いくつか君に聞きたい事があって」

「聞きたいこと?」

「そう…とても重要なことだから慎重に答えて」
真剣な瞳で志貴を見つめる青子
「は、はぁ…」
その迫力に志貴は圧されてしまう。

「じゃぁ、一つ目…志貴は女を知っている?」
「え?」
唐突な質問に志貴の目が点になった。

―女を知っているか?―
いくら鈍感で朴念仁な彼でも今は二十歳。そのぐらいの意味は悟れる。
だがそれは今の志貴には少し辛いものがある。

「……っ!!」

心に微かな痛みと脳裏に一瞬、忌まわしき過去が蘇る。

それはとても辛い出来事。

あの時以来、彼女はその想いを封印した。

いやせざるをおえなかった。

あの出来事で彼女は……。

目を閉じれば鮮明に思い出せる。

忌まわしき過去でしかない、あの一夜。

もし、封印が解ければ彼女はもっと辛い思いをする。

だから自分も想いを封印せざるをえない。

「……知りません」

苦痛に耐え絞り出すような声
青子はそんな志貴を楽しそうに眺めながら次の質問へと移った。

「じゃあ…好きだった人とかいる?」

亀裂が走った。

何気ない、本当に何気ない日常の会話でもよくある質問。

でも何故、こんな時に?

その後も志貴への質問は止むことはなかった。
                  ・・・・ 
青子の質問は志貴の過去の質問ばかりであの情事で覚えた敗北感と背徳感を呼び起こさせるのに十分だった。

「じゃあ…「先生!!」

次の質問をしようとした彼女の声を志貴の怒声が掻き消す。

青子は驚いた表情で志貴を見ている。
「私、悪いこと聞いたかなァ?」と顔に書いてあるようだ。

「……もう、やめてください…」

消え入りそうな志貴の声…だがそんな彼を見て青子は何故か笑みを浮かべる。

「やっぱり…ね」

「?…なにがやっぱりなんですか?」

不機嫌そうに志貴は青子を見つめる。いや睨んでいる。
しかし、彼女はそんなことどこ吹く風か、一人立ち上がり、さっきいいかけた質問をした。

志貴の恩師「蒼崎青子」が志貴の顔を見ず、未だ手に届かぬ月を見上げて訊ねた。

「志貴は今、付き合っている人とかいるの?」

「……いませんよ」
志貴はとうとうソッポを向いてしまった。

…だが志貴の脳裏にはアルクェイド、シエル、秋葉、翡翠に琥珀が浮かんでいた…。

楽しいこと、哀しいこと、辛いこと、嬉しいことを800年知らなかった神祖。

無限の輪廻に捕まり不老不死となり、異端を狩りつづけた空の弓。

自分の中の“魔”に必死で戦いつづけ、何も知らなかった兄に背徳感を覚えた志貴の妹。

あの日、何も出来なかったことを責め、姉になろうとしたメイド服の使用人。

ただ、性欲と衝動のはけ口として辱められ、いつしか心も体さえ何も感じない不感症になった割烹着の使用人

みな、志貴に救われた女性達

みな、志貴に思いを寄せる女性達

しかしそのなかには志貴の心を突き動かす女性はいない。

七夜志貴は…優しいから。

「他人の痛みを自分の痛み」と背負い込むほど…。

「傷ついた人間をほっとけない」と自分から戦いの中に入っていくほど…。

彼は優しすぎるのだ。誰にでも…。

―しかし、志貴の中で一番になりたいと思う人にとってはそれは酷い現実。―

彼は誰にでも優しい。故にみなに対する思いは皆均等。

―故に、志貴は残酷な優しさを持つ―

「そう…」

青子は満足げに頷くと志貴を見下ろした。

その瞳は…冷たい。

「……先生?」

―まるで母親の冷たい態度に恐怖をもつ幼子のような―

「志貴、あなた…やっぱり女を知っているでしょう?」

「……っ!!」

「隠しても無駄よ、自分にもつけない嘘は他人を不快にさせ、傷つける…そう、教えなかった?」

「……だから、何だと言うんです……!!」
志貴にしては珍しい、怒りの感情をあらわにする。しかも相手はあの蒼崎青子だ。

「守れなかった……」

ギシ…!
「!!」

「何もできなかった。変わっていく彼女を…」
ビシ…!
「やめて…」

「人であって人でなくなる彼女を…」
ズキ…!
「やめて…よ」

まるで心を読むかのように青子は志貴の心の傷を抉っていく。

――まるで獲物を弦で絡み取る蜘蛛のように。


「貴方は指を咥えて見ることしか出来なかった。」

「せ、先生!!」
志貴の心がついに歪んだ。

メガネが外れ、志貴の直死の魔眼が発動する。

ポケットから愛刀の飛び出しナイフ「七夜」を取りだし青子に突っ込む…

感情に任せた直線的な攻撃衝動…故に誰でも避けられる。

そして青子はその志貴の動きを当然と見透かしていたかのように…

「ごめんなさいね?こうでもしないと……。」

怒りで直線的にしか動けない志貴の左手を簡単につかみ、青子はその薬指に銀色に輝く指輪をはめた。
合気道のような流れるように、一切無駄がない動作。

「え……………!!」

志貴の瞳が一瞬だけ光を失う。

「あなたは……あっちの……人間に……」

「せ、先生……?」

青子の悲壮の顔を視界に収めたまま、志貴の意識はブラックアウトした・




…………
………
……





「え……?先生なにこれ?」
数分後、志貴は左手の薬指にはまっている銀色の指輪を繁々と見つめていた。

「……ちょっとしたお守りよ…いい?絶対に外しちゃ駄目よ?」

「……はい」

…そう答える今の志貴は以前の志貴と微妙に雰囲気が異なった。
どこか…復讐を考えていた頃の琥珀にも似た…人形のような表情。

「……ねぇ、志貴……」

青子は志貴の柔らかい頬に手を添える。

「……私のこと…好きでしょ?」

志貴はその質問に動揺の色を浮かべるが彼にはめられた指輪が微かに発光すると
志貴の瞳から生気の色が消えうせる。そして…

「……はい」

と答えた。

「私もよ…志貴」

そう答えると青子は志貴の唇に自分の唇を重ねた。

―二人つのシルエットが月光を背に重なり合う。―

To be Next SS……「発端掘

See you again!!

あとがき/買っちまったさGOF!!だけどCPUが処理できなくてフリーズするのさスペシャルゥゥゥゥ!!
ども、腰痛であまりの理不尽な痛みに耐えている天戯恭介です。
発端の第二話をお送りします。
発端は全部で五話の予定。結構力を入れているSSなので書くほうも必死です。
で、今悩んでいるのは「引き」です。(業界用語で次へ続くという意)
要するにどこで話を切るか、です。
今、それで悩んでいるんですがこのSSも引きが効いているかどうか少々の不安が残ります。

でも、私って卑怯かもしれませんな…

これを読んでいる読者さんも
「天戯ィぃ!!続き書けコラァァァ!!」
と、思っている方も多いはず。
ごめんなさい。

出来る限り頑張るから…応援のメールを下さるとうれしいです。
それでは……。

追伸…序章と発端気砲動貉劼叛鳥劼気鵑稜齢の記述ミスがありました。正しくは
一子さん「24歳」
青子姉さん「26歳」
です。申し訳ありませんでした。

戦闘BGM「ILLUMINATI」


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